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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1294534
審判番号 不服2002-11879  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-27 
確定日 2005-12-08 
事件の表示 平成 8年特許願第119937号「静電複写機」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年11月28日出願公開、特開平 9-304988〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 本願発明
本願は平成8年5月15日の出願であって、その請求項1ないし5に係る発明は、平成14年3月26日付け、平成14年6月27日付け及び平成17年9月2日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の記載により特定されるものであって、特に請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
なお、本願明細書及び図面の記載全般からみて、特許請求の範囲の記載における「最大通紙サイズの複写機より小さな複写紙」(下線は合議体により付加。以下この段落において同じ。)は「最大通紙サイズの複写紙より小さな複写紙」の誤記であるものと認定する。
「複写機本体と、該複写機本体の上面に配設されて複写すべき原稿が載置される透明板と、表面に配設された感光体に沿って露光域及び転写域が規定された回転ドラムを含む作像手段と、該原稿の像を該露光域に投射する光学系であって、該透明板に対して相対移動させることにより露光走査を遂行する移動部を含む光学系と、該複写機本体の前面側に引き出し自在に該複写機本体に装着された給紙カセットを含む複写紙送給手段と、該複写紙送給手段により送給された複写紙を該転写域を通して搬送する複写紙搬送経路とを備え、該複写紙搬送経路における、該給紙カセットの下流であって該転写域の上流にはレジスト手段が、また該転写域の下流には定着装置及び排紙ローラ対が、それぞれ配設されている静電複写機において、
該給紙カセット、該レジスト手段、該作像手段、該定着装置及び該排紙ローラ対は、該光学系の最大露光走査長の範囲内において該複写機本体内の一側部から他側部に向かって順次に配列されると共に、該複写紙搬送経路は実質的に直線状に配設され、
該給紙カセットは、該複写機本体内の該一側部寄りの下方に該複写機本体の前面側に引き出し自在に配設されると共に、最大通紙サイズの複写紙より小さな複写紙をセットする小サイズの給紙カセットからなり、該給紙カセットの上方には複写紙載置手段を含むバイパス複写紙送給手段が配設され、最大通紙サイズの複写紙は該バイパス複写紙送給手段により該複写紙搬送経路に送給され、
該複写紙載置手段及び該給紙カセットは、共に、該レジスト手段、該作像手段、該定着装置及び該排紙ローラ対と実質的に直線状に配設される、
ことを特徴とする静電複写機。」
第2 刊行物の記載事項
1.当審において通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平8-59002号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下に列挙する事項が記載されている。
(1)【0013】ないし【0017】
「【0013】
【実施例】図示される例にしたがって、本発明の画像形成装置を説明する。図1に示される画像形成装置1は、デジタル方式の電子写真複写機として構成する場合を示しており、装置本体の上部には、デジタル方式の走査装置30を配置して、原稿の画像を走査した情報を、電気信号として画像形成装置本体に伝達する手段を構成している。また、装置本体の内部には、その一方の側に偏らせた位置に、給紙部10を配置しており、前記給紙部10の上部には、最大サイズ未満のサイズの用紙を収容する小型の給紙トレイ13、13a……を配置し、下部には、最大サイズ以下のサイズの用紙を収容する給紙トレイ14、14aを配置している。前記給紙部に配置する給紙トレイには、それぞれ給紙装置15、15a……を配置しており、前記給紙装置から給紙路16、16a……を介して用紙搬送路17に向けて用紙を送り出すようにする。前記用紙搬送路は、図示される例の場合には、最大サイズ以下のサイズトレイ14、14aの側部から、最大サイズ未満のサイズトレイ13、13a……の側部に沿わせる状態で湾曲させた経路として構成し、前記用紙搬送路17には所定の間隔で搬送ローラ装置を配置して、用紙の搬送作用を行うようにする。
【0014】前記給紙部に配置する最大サイズ未満のサイズトレイの側部で、最大サイズ以下のサイズトレイの一方の側の上部には空間部12を形成しており、前記空間部12に対して、感光体ドラム2と転写ローラ3、現像装置4およびクリーニング装置5等のプロセス装置を配置している。さらに、前記感光体ドラムの下部の位置には、画像記録装置8と画像情報処理装置9等を配置するが、その他に、制御装置の基板等を配置することもでき、それ等の装置を比較的大きな空間部12に余裕を持って配置することができる。また、前記給紙部10に配置する給紙トレイのうち、最上部の最大サイズ未満のサイズトレイ13に配置する給紙装置15に対して、レジストローラ装置18、感光体ドラム2、および、定着装置7を結ぶ搬送路19は、ほぼ一直線状に構成している。そして、最上部の給紙トレイ13から給紙する用紙に対して、レジストローラ装置18により整合し、感光体ドラム2からトナー画像を転写して、定着装置7を通して搬送する際に、用紙に対して余分な曲げ作用を付与したりすることなしに、搬送路19を通過させ、排出ローラ20を介して排出トレイ21に排出させることができるので、厚い用紙類や特殊なシート類等を最大サイズ未満のサイズトレイ13に収容して、給紙を行うことができるようにする。
【0015】前記構成に加えて、本発明の画像形成装置1においては、装置本体の上部に用紙反転搬送装置22を配置しており、両面コピーや多重コピーを作成する場合には、用紙反転搬送装置22に設けた用紙反転搬送経路を使用することができる。前記用紙反転搬送装置22では、搬送路19の排出部に設けた分岐部19aを介して戻し路23に接続するが、前記分岐部19aでは、用紙の処理モードに応じてUターン状に分岐させるか、あるいは、スイッチバック状に戻すことができる。そして、戻し路23に対して反転路25を接続し、搬送路19に向けて接続する合流路27を設けることにより、片面コピー用紙として定着装置から排出される用紙を、用紙反転搬送装置22を介して反転させて、裏面のコピーに対応させた給紙を行い得るようにする。
【0016】また、前記用紙反転搬送装置22に配置する搬送ローラ装置は、正逆方向に駆動可能なローラ装置として構成し、用紙反転搬送装置の用紙搬送路に配置するセンサ等の検知信号にしたがって、用紙に対する処理を行うことができるようにすることは、従来の反転装置と同様である。なお、前記搬送路19の端部には排出トレイ21を配置するが、前記排出トレイに代えて、ソータ等の後処理装置を接続できることは、一般の画像形成装置の場合と同様にされる。したがって、前記図1に示される画像形成装置1において、給紙部に配置する最大サイズ未満のサイズ対応の給紙トレイを、装置本体上部の一方の側部に偏らせた状態で配置することにより、前記給紙部の他方の側部に余裕空間部を形成することが可能になる。さらに、本発明においては、給紙部に多数の給紙トレイを段積み状に配置した場合でも、その給紙部の上部にプロセス装置を配置する必要がなくなるので、装置全体の高さを制限するために、給紙トレイの数等を制限する必要がなくなる。
【0017】前記図1の画像形成装置を構成することの他に、本発明においては、図2に示されるような画像形成装置1aを構成することもできる。前記図2に示される例においては、画像形成装置1aの本体に配置する給紙部の給紙トレイ、および給紙系統は、前記図1の場合と同様に構成されるが、装置本体の上部に配置する用紙反転搬送装置22に対して、縦型の手差しトレイ28と給紙装置29を設け、用紙反転搬送装置の反転路25、合流路27を介して画像記録部の搬送路19に向けて給紙する手段を構成している。前記用紙反転搬送装置22に対応させて配置する手差しトレイ28は、複数枚の用紙をセットして、給紙装置29によりさばきながら給紙する手段を構成することができるトレイとして構成し、手差し給紙モードを選択した場合には、特殊サイズの用紙類等を連続して給紙することも可能である。」
(2)【0020】ないし【0022】
「【0020】
【実施例2】前記図1、2に示されるように、画像記録部を通る搬送路の下部に感光体ドラムを配置することに代えて、本発明においては、図3に示すように、搬送路19の上部に感光体ドラムを配置して用紙搬送装置を構成することもできる。前記図3に示される画像形成装置1bの例においては、感光体ドラム2を搬送路の上部に配置して、給紙部10の上部に画像記録装置8等を設け、感光体ドラムに対する画像情報の書き込みを行うようにする。また、給紙部10に配置する最大サイズ未満のサイズトレイ13……の側部に形成する空間部12に対して、用紙反転搬送装置22を配置して、両面コピーまたは多重コピーに対応させ得るように構成している。前記画像形成装置1bにおいて、画像記録装置8には、2つのレーザビームを照射して書き込みを行う手段を構成し、感光体ドラム2に対して2つの現像装置4、4aを配置することにより、2色の画像を形成可能にする。なお、前記画像記録装置に配置する2色の画像形成手段としては、従来のレーザビームプリンタに使用されている2色の画像記録装置の場合と同様に、感光体ドラムに対して2箇所で書き込みを行うようにするために、画像記録装置の内部に多数のミラー等を配置して構成することができる。
【0021】前記図3に示される画像形成装置1bにおいて、給紙部10に配置する複数の給紙トレイにおいては、上部に最大サイズ未満のサイズトレイ13、13aを、下部に最大サイズ以下のサイズトレイ14、14a……をそれぞれ配置し、前記各給紙トレイに対して給紙装置15……をそれぞれ配置し、給紙路16……を介して用紙搬送路17に接続している。前記給紙部の最上部に配置した最大サイズ未満のサイズトレイ13では、給紙装置からの給紙路16と、画像記録部の搬送路19とを一直線状に構成し、給紙トレイ13に厚紙等を収容した場合にも、その用紙を直線状の搬送路に沿わせて案内することができる。また、給紙部10の最大サイズ未満のサイズトレイの側部に形成する空間部12には、用紙反転搬送装置22を配置することができるもので、前記実施例と同様に、戻し路23と反転路25を直通させる状態で接続し、その2つの経路の途中から、合流路27を用紙搬送路17に向けて接続している。なお、前記反転路25には正逆搬送可能な搬送ローラ装置を配置し、戻し路23と反転路25の接続部に分岐ゲートを介して合流路27を配置する。そして、戻し路23から反転路25に導入した用紙を、反転させるようにして合流路27に向けて送り出す機構を構成し、用紙搬送路17を介して画像記録部に対応する搬送路19に向けて片面コピー用紙を送り出すようにする。
【0022】また、前記図3の実施例では、最大サイズ未満のサイズトレイ13、13aを大容量の給紙トレイとして構成し、使用頻度の多い用紙類を収容させることにより、用紙搬送路内での搬送距離を短くして、用紙搬送路に配置する搬送ローラ装置に対する負担を軽減させ、単位時間あたりのコピー作成枚数を向上させることができる。また、最大サイズ以下のサイズトレイ14……では、最大サイズ以下のサイズの用紙類の他に、必要に応じて最大サイズ未満のサイズの用紙も収容可能であるから、従来の電子写真複写機等の場合と同様に、任意のサイズの用紙を最大サイズ以下のサイズトレイと最大サイズ未満のサイズトレイにそれぞれ収容してコピーの需要に対応させることができる。」
(3)【0026】
「【0026】さらに、前記各実施例において、空間部12に対して用紙反転搬送装置を配置する場合に、前記空間部に対して画像情報処理装置を配置することができるものであり、その他に、画像情報処理装置は装置の内部の任意の空間部に配置しても良い。前記構成に加えて、本発明の画像形成装置においては、最大サイズ未満のサイズトレイを装置本体の一方の側に偏らせて配置し、その最大サイズ未満のサイズトレイの側部に形成される空間部に対して、プロセス装置や用紙反転搬送装置等を配置することができるので、給紙部に収容可能な用紙の枚数に比較して、装置全体の高さを低く構成することが可能になる。そして、給紙部の最上部に配置した給紙トレイからの給紙路と、画像記録部を通る搬送路とを略一直線状に形成することにより、最上部の給紙トレイから送り出した用紙に対して、余分な曲げ作用を与えたりすることがないような搬送経路を構成することができる。」
(4)【図1】

(5)【図3】

以上の記載からみて、刊行物1には以下のとおりの発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「画像形成装置において、
装置本体の上部に、その全幅にわたって配置され、原稿の画像を走査する走査装置を配置し、
装置本体の内部には、その一方の側に偏らせた位置に配置され、その上部に最大サイズ未満のサイズの用紙を収容する小型の給紙トレイを配置し、下部には最大サイズ以下のサイズの用紙を収容する給紙トレイを配置するとともに、給紙トレイに配置された給紙装置を配置した給紙部と、前記給紙部の最大サイズ未満の給紙トレイの側部で最大サイズ以下の給紙トレイの一方の側に設けられ、レジストローラ装置、感光体ドラム、定着装置、排出ローラ等が配置された空間部とが配置されており、
前記給紙部に配置する給紙トレイのうち、最上部の最大サイズ未満の給紙トレイに配置する給紙装置に対し、レジストローラ装置、感光体ドラム、定着装置、排出ローラを結ぶ搬送路はほぼ一直線状に構成され、厚紙や特殊な用紙類等を用いた場合にも給紙トレイを使用可能とし、
前記走査装置と感光体ドラムとの間に位置し、感光体ドラムに画像情報の書き込みを行う画像記録装置を設けるとともに、
前記装置本体の前記最上部の最大サイズ未満の給紙トレイの上部に、特殊サイズの用紙類等を給紙する手差しトレイ及び該手差しトレイに配置された給紙装置を設けた画像形成装置。」
第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「感光体ドラム」は、表面に配設された感光体に沿って露光域及び転写域が規定されたドラムであるから、本願発明における「回転ドラム」に相当する。してみるに、本願発明における「作像手段」に対応する構成が引用発明に開示されているものである。
引用発明における「最上部の最大サイズ未満の給紙トレイ」は、複写機本体に備えられ、最大通紙サイズの複写紙より小さな複写紙をセットする小サイズの給紙カセットであって、レジスト手段、作像手段、定着装置及び排紙ローラ対とともに、複写機本体内の一側部から他側部に向かって順次に配列され、実質的に直線状に配設されるものである点で、本願発明における「給紙カセット」と同様の機能を有する。
引用発明においても、給紙トレイから用紙を送り出す手段を有することは当業者に自明である。してみるに、前記給紙トレイから用紙を送り出す手段と給紙トレイと併せたものは、本願発明における「複写紙送給手段」に相当する。
引用発明における「レジストローラ装置」、「定着装置」及び「排出ローラ」は、本願発明における「レジスト手段」、「定着装置」及び「排紙ローラ対」に相当する。
引用発明における「搬送路」は、レジスト手段、回転ドラムの転写域、定着装置及び排紙ローラ対を複写機本体内の一側部から他側部に向かって順次に配列して実質的に直線状に配設され、複写紙送給手段により送給された複写紙を該転写域を通して搬送するものであるから、本願発明における「複写紙搬送経路」と同様の機能を有する。
引用発明における「手差しトレイ」は、給紙カセットの上方に配設された給紙カセット以外の給紙手段であるから、本願発明における「複写紙載置手段」と同様の機能を有する。
引用発明においても、手差しトレイから用紙を送り出す手段を有することは当業者に自明である。してみるに、前記手差しトレイから用紙を送り出す手段と手差しトレイと併せたものは、本願発明における「バイパス複写紙送給手段」に相当する。
以上のとおりであるから、両者は
「複写機本体と、表面に配設された感光体に沿って露光域及び転写域が規定された回転ドラムを含む作像手段と、該原稿の像を該露光域に投射する光学系と、該複写機本体に装着された給紙カセットを含む複写紙送給手段と、該複写紙送給手段により送給された複写紙を該転写域を通して搬送する複写紙搬送経路とを備え、該複写紙搬送経路における、該給紙カセットの下流であって該転写域の上流にはレジスト手段が、また該転写域の下流には定着装置及び排紙ローラ対が、それぞれ配設されている静電複写機において、
該給紙カセット、該レジスト手段、該作像手段、該定着装置及び該排紙ローラ対は、該複写機本体内の一側部から他側部に向かって順次に配列されると共に、該複写紙搬送経路は実質的に直線状に配設され、
該給紙カセットは、該複写機本体内の該一側部寄りに配設されると共に、最大通紙サイズの複写紙より小さな複写紙をセットする小サイズの給紙カセットからなり、該給紙カセットの上方には複写紙載置手段を含むバイパス複写紙送給手段が配設され、最大通紙サイズの複写紙は該バイパス複写紙送給手段により該複写紙搬送経路に送給され、
該給紙カセットは、該レジスト手段、該作像手段、該定着装置及び該排紙ローラ対と実質的に直線状に配設される、
ことを特徴とする静電複写機。」
である点で一致し、以下に列挙する点で相違している。
1.本願発明における静電複写機は、複写機本体の上面に配設されて複写すべき原稿が載置される透明板と、透明板に対して相対移動させることにより露光走査を遂行する移動部を含む光学系とを有し、原稿の像を回転ドラムの露光域に投影するものであるのに対して、引用発明における画像形成装置は装置本体の上部に、その全幅にわたって配置され、原稿の画像を走査する走査装置と、感光体ドラムに画像情報の書き込みを行う画像記録装置とを有し、画像記憶装置は走査装置と感光体ドラムとの間に位置するものであるが、原稿の像をどのように取得し、感光体ドラムに導くかについて規定されていない点。
2.本願発明における「給紙カセット」は、該複写機本体の下方前面側に引き出し自在に複写機本体に装着されているのに対して、引用発明における「最上部の最大サイズ未満の給紙トレイ」は、画像形成装置本体に配置されているものの、その位置及び引き出し方法については規定されていない点。
3.本願発明における「複写紙搬送経路」は給紙カセット、レジスト手段、作像手段、定着装置及び排紙ローラ対を、該光学系の最大露光走査長の範囲内に配列しているのに対して、引用発明における「搬送路」は、最上部の最大サイズ未満の給紙トレイ、レジストローラ装置、感光体ドラム、定着ローラ及び排出ローラを画像形成装置の全幅の範囲内に配列してはいるが、光学系との関連については規定していない点。
4.本願発明におけるバイパス複写紙送給手段は、最大通紙サイズの複写紙を送給するものであるのに対して、引用発明における手差しトレイは特殊サイズの用紙類等を給紙するものである点。
5.本願発明においては、複写紙載置手段及び給紙カセットは、共に、レジスト手段、作像手段、定着装置及び排紙ローラ対と実質的に直線状に配設されるのに対して、引用発明では最上部の最大サイズ未満の給紙トレイは、レジストローラ装置、感光体ドラム、定着装置及び排出ローラと実質的に直線状に配設されているが、手差しトレイはレジストローラ装置、感光体ドラム、定着装置及び排出ローラと実質的に直線状に配設されていない点。
第4 相違点についての判断
1.相違点1について
原稿の像を感光体に投影する手段として、複写機本体の上面に配設されて複写すべき原稿が載置される透明板と、透明板に対して相対移動させることにより露光走査を遂行する移動部を含む光学系とを有し、原稿の像を回転ドラムの露光域に投影するものを採用した複写機は、たとえば特開平4-189228号公報及び特開平4-191248号公報に記載されている様に当業者に周知の技術事項にすぎない。
刊行物1の第3図(第2の1(5)参照)に画像形成装置の上部に画像記憶装置を配置することが開示されていることからみて、走査装置から原稿の像を感光体ドラムに投影することに格段の困難を要するものではない。また、組み合わせることにより顕著な作用効果を奏するものでもない。
したがって、引用発明における走査装置及び画像形成装置を、原稿の像を透明板及び移動部を有する光学系を介して感光体ドラムに導くことにより構成することは、当業者が容易に想到し得るものである。
2.相違点2について
1つの給紙カセットを複写機本体の下方前面側に引き出し可能に複写機本体に装着することは、たとえば特開平4-189228号公報及び特開平4-191248号公報に記載されている様に当業者に周知の技術事項にすぎない。
また、刊行物1及び上記周知例の記載を斟酌しても、組み合わせることで顕著な作用効果を奏するものでもない。
したがって、引用発明に記載された最上部の最大サイズ未満の給紙トレイを含む複数の給紙トレイを有する画像形成装置において、その給紙トレイを最大サイズ未満の給紙トレイ1つのみとして他の給紙トレイに係る構成を省いて結果として最大サイズ未満の給紙トレイが下方に位置するよう構成するとともに、給紙トレイを画像形成装置本体の前面側に引き出し可能に画像形成装置本体に装着するよう構成することは、当業者が容易に想到し得るものである。
3.相違点3について
原稿の像を感光体に投影する手段として、複写機本体の上面に配設されて複写すべき原稿が載置される透明板と、透明板に対して相対移動させることにより露光走査を遂行する移動部を含む光学系とを有し、原稿の像を回転ドラムの露光域に投影するものを採用した複写機において、その透明板の全幅が複写機の全幅に近いものは、たとえば特開平4-189228号公報及び特開平4-191248号公報に記載されている様に当業者に周知の技術事項にすぎない。
この周知技術を引用発明に付加するにあたり、引用発明の最上部の最大サイズ未満の給紙トレイ、レジストローラ装置、感光体ドラム、定着ローラ及び排出ローラを光学系の最大露光走査長の範囲内に配列する様、これら構成及び透明板の位置関係を設定することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計変更程度の事項にすぎないし、顕著な作用効果を奏するものでもない。
したがって、引用発明において、原稿の像を感光体に投影する手段として、複写機本体の上面に配設されて複写すべき原稿が載置される透明板と、透明板に対して相対移動させることにより露光走査を遂行する移動部を含む光学系とを有し、原稿の像を回転ドラムの露光域に投影するものを採用するにあたり、その最上部の最大サイズ未満の給紙トレイ、レジストローラ装置、感光体ドラム、定着ローラ及び排出ローラを光学系の最大露光走査長の範囲内に配列することは、周知技術に基づき当業者が容易に想到し得るものである。
4.相違点4について
最大通紙サイズの用紙は手差しトレイを介して給紙可能であることは刊行物1の記載から自明であるから、相違点4に係る技術的事項である「最大通紙サイズの複写紙を送給するバイパス複写紙送給手段」は、実質的に刊行物1に記載された事項にすぎない。
5.相違点5について
複写紙載置手段及び他の給紙手段を備え、複写紙載置手段及び他の給紙手段からの給紙経路を共に排紙までほぼ直線状に構成することは、たとえば実開平4-298463号公報及び特開平5-35024号公報に記載されているように、当業者に周知の技術事項にすぎない。
引用発明に記載された、給紙カセットから排紙ローラ対までを直線状に配した複写機において、上記周知技術に基づき複写紙載置手段においても同様に配することに、格段の困難を要するものでもないし、顕著な作用効果を奏するものでもない。
したがって、引用発明において、手差しトレイと最上部の最大サイズ未満の給紙トレイを、共に、レジストローラ装置、感光体ドラム、定着装置及び排出ローラと実質的に直線状に配設することは、周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。
6.まとめ
以上のとおりであるから、相違点1ないし5に係る構成は、いずれも、刊行物1に実質的に記載されているか、または周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。
また、刊行物1及び上記周知例の記載を斟酌しても、当業者がこれら周知技術を刊行物1に記載された発明に組み合わせることに格段の困難を要するものではなく、また、組み合わせにより顕著な作用効果を奏するものでもない。
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第5 むすび
以上述べたとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により拒絶すべきものである。
したがって、他の拒絶の理由につき検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-29 
結審通知日 2005-10-04 
審決日 2005-10-21 
出願番号 特願平8-119937
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 公夫  
特許庁審判長 山下 喜代治
特許庁審判官 井出 和水
伏見 隆夫
発明の名称 静電複写機  
代理人 小野 尚純  

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