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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1294542
審判番号 不服2002-15963  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-22 
確定日 2005-12-08 
事件の表示 平成8年特許願第219669号「電子部品保持装置」拒絶査定不服審判事件〔平成9年5月6日出願公開、特開平9-121096〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本特許出願は、平成5年4月2日に出願した特願平5-100299号の一部を、平成8年8月21日に新たな特許出願としたものであって、平成14年7月16日付けで、拒絶をすべき旨の査定がされたところ、同査定に対して平成14年8月22日付けで審判が請求され、それに伴い、平成14年9月20日付けで手続補正書が提出された。
2.本願発明について
本特許出願の請求項1乃至2に係る発明は、平成14年6月3日付け、及び平成14年9月20日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載されている次のとおりのものと認められる。(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】部品保持部において、負圧により電子部品を吸着して保持する吸着ヘッドと、
自身の軸線まわりに回転可能に設けられ、前記吸着ヘッドを吸着面において負圧により吸着して保持するホルダと、
そのホルダを前記軸線まわりに回転させる回転装置と、
前記ホルダ内に設けられるとともに、前記吸着面に前記吸着ヘッドが接触させられた状態においてホルダと吸着ヘッドとによって囲まれる空間に開口させられ、その空間に前記吸着ヘッドを吸着するための負圧を供給するヘッド用通路と、
前記ホルダ内に前記ヘッド用通路とは別個に設けられ、ホルダにより前記吸着ヘッドが保持された状態で、その吸着ヘッドの前記部品保持部に、前記ヘッド用通路とは独立に負圧を供給する部品用通路と、
前記ヘッド用通路と前記部品用通路とを互いに独立した状態で負圧源に連通させるとともに、それらの連通を維持した状態で前記ホルダの回転を許容する継手装置と
を含むことを特徴とする電子部品保持装置。
【請求項2】前記ヘッド用通路および前記部品用通路が、いずれも前記軸線から外れた位置においてその軸線に平行に設けられるとともに、前記継手装置が、前記ホルダにそのホルダに対して相対回転可能に嵌合された継手部材を備え、その継手部材が、その継手部材に形成された前記ヘッド用通路のための配管接続部と前記部品用通路のための配管接続部とを互いに独立にヘッド用通路と部品用通路とにそれぞれ接続することを特徴とする請求項1に記載の電子部品保持装置。」
3.引用刊行物等及びその記載事項
刊行物1:特開昭61-63097号公報
技術例1:特開平4-107999号公報
技術例2:特開平4-94599号公報
技術例3:特開平4-85898号公報
技術例4:特開平3-227595号公報
技術例5:特開平3-157993号公報
技術例6:特開平3-78296号公報
技術例7:特開平4-85998号公報
技術例8:特開平4-107995号公報
技術例9:特開昭62-297005号公報
技術例10:実願昭63-54766号(実開平1-156806号)のマイクロフィルム
技術例11:実願平2-47129号(実開平4-5588号)のマイクロフィルム
技術例12:実願昭63-66269号(実開平1-168090号)のマイクロフィルム
(1)刊行物1の記載事項
刊行物1には、第1図?第13図とともに、以下の事項が記載されている。
(a1)「2.特許請求の範囲
回動自在な操作レバ-およびその復帰ばねを有し前記操作レバ-の回動により内部の正圧経路と負圧経路とを選択的に開閉可能な切換バルブと、この切換バルブを一定経路に沿つて間欠的に移送する移送装置と、前記一定経路に沿って設けられて前記操作レバ-を回動させる固定カムと、前記移送経路の停止位置に設けられて進退移動し前記切換バルブを回動させる押し部材とを備えたバルブ切換装置。」(第1頁左下欄第4-13行)
(a2)「空気経路を説明すると、切換バルブ120の出口121からチャック取付軸26の上端の配管連結部90に、フレキシブルなパイプ122が接続されている。切換バルブ120の下面の負圧入口123は、パイプ125を介し、回転主軸の下端の真空用マニホールド126に接続されている。真空用マニホールド126は、回転主軸27内を貫通した主軸内負圧経路125´に接続され、主軸内負圧経路125´の上端はロータリジョイント127を介して負圧供給源に配管接続されている。」(第3頁右下欄第18行-第4頁左上欄第8行)
(a3)「次に、上記構成の動作を説明する。部品装着ヘッド6に搭載された各チャック9は、第8図に示すように、位置S_(1)で部品供給カセット22から電子部品8を吸着ノズル13で吸着し、位置S_(6)で回路基板2に装着する。この間チャック9側の規正爪14と部品位置規正装置10の規正爪106とで電子部品8の吸着ノズル13に対する心出しを行なう。また、部品検出装置11では、電子部品8が吸着ノズル13に適正な姿勢に吸着されているか否かを検出する。さらに、チャック回転装置12により、チャック9を回転させて電子部品8を回路基板2に対して任意角度に角度規正する。チャック戻し回転装置12´は、チャック回転装置12で回転させた角度θだけ、逆方向にチャック9を回転させ、原点角度に戻す。
吸着ノズル13および切換バルブ120の動作を説明する。第8図に示すように、吸着位置S_(1)から装着位置S_(6)の間では、バルブ用固定カム135(第9図)によるバルブ操作レバ-132の押下げは行なわれず、切換バルブ120は負圧経路141´が開いた状態を維持する。そのため、吸着ノズル13は電子部品8の吸着状態を維持する。装着位置S_(6)に致ると、部品装着ヘツド6が停止している間に、バルブ操作レバ-132がバルブ用上下ドグ136で押下げられ、切換バルブ120は正圧経路142´が開いた状態となる。また、この位置S_(6)では回転枠内制圧経路128が、ハウジングない正圧経路129と整合する。そのため、吸着ノズル13から圧縮空気が吹出される。この吹出しにより、電子部品8が吸着ノズル13に付着したまま残ることが防止され、確実に回路基板2´に整合する。」(第4頁右下欄第2行-第5頁左上欄第13行)
したがって、刊行物1には、
「位置S_(1)において、負圧により電子部品8を吸着し、吸着状態を維持する吸着ノズル13を含む装置」が、記載されている。
(2)技術例1の記載事項
技術例1には、第1図?第16図とともに、以下の事項が記載されている。
(b1)「上下動体(18)の構造について詳述する。第2図及び第3図に於いて、(24)はノズル(19)を先端に有するツールであり、部品(7)を吸着するための部品吸着真空通路(25)が内部に形成されると共に光線を拡散させて部品(7)に照射するための乳白色の拡散板(26)が設けられている。ツール(24)は部品(7)の大きさ及び形状に応じてノズル(19)及び拡散板(26)の大きさが異なったものが多数用意されている。
(27)はツール(24)を吸引保持するシャフトであり内筒(28)及び外筒(29)とより成り、内筒(78)内にツール(24)の部品吸着真空通路(25)に連通する部品真空通路(30)を有すると共に内筒(28)と外筒(29)の間にツール(24)を吸引するツール真空通路(31)を形成している。外筒(29)の下端部には一対の板バネ(32)が取付けられており、ツール(24)はツール真空通路(31)よりの真空吸引と板バネ(32)とによりシャフト(27)下端に取外し可能に保持される。
(34)はシャフト(27)の上部に取付けられた二重管継手であり、フランジ(35)が形成された回転案内ナット(36)とナット(37)とより成る。回転案内ナット(36)はシャフト(27)に対してベアリング(38)を介して回動が可能であり、ツ-ル真空通路(31)に連通させるため真空用パイプ(39)がシャフト(27)の外筒まで嵌入されている。
シャフト(27)の真空用パイプ(39)が達している部分には全周に亘り溝(40)が刻設されており、該溝(40)の一部分が開口(40A)し、シャフト(27)が回動機構(21)により回転案内ナット(36)中を回転しても真空通路(31)が前記開口(40A)及び溝(40)を介して真空用パイプ(39)に連通する。
ナット(37)は外筒(29)に固定されており、シャフト(27)の回動に伴って回動する。(41)は真空通路(31)をナット(37)内にて真空が漏れないよう密閉するナットOリングであり、(42)(42)は回転案内ナット(36)内にて溝(40)よりベアリング(38)を介して真空が漏れないよう密閉する回転ナットOリングである。真空用パイプ(39)及び部品吸着真空通路(25)は夫々図示しない真空源に図示しないバルブを介して接続されている。真空用バイブ(39)は図示しないバルブを介して更に圧縮空気源にも接続されている。(43)はシャフト(27)に固定されている回動機構(22)により回動が規制される被規制部材である。・・・
次に、回動機構(22)について詳述する。第2図及び第3図に於いて、(60)は取付板(49)に垂設されたブロックであり、(61)は該ブロック(60)に埋設された回動ベアリング体であり、(62)は該回動ベアリング体(61)に案内されてθ方向に回動する上下動ガイド体である。シャフト(27)は上下動ガイド体(62)に案内され上下動可能である。
上下動ガイド体(62)の下部の外周にはタイミングプーリ(64)が嵌着されており、ブロック(60)に設置されたノズル回動モータ(65)の下部にはモータタイミングプーリ(66)が軸着されている。モータ(65)の駆動により両プーリ(64),(66)及び両プーリ(64),(66)の間に張着されたタイミングベルト(67)を介して上下動ガイド体(62)は回動を行なう。
上下動ガイド体(62)の上部には回り止めローラ(68)を有する一対の回り止め(69)が形成されており、シャフト(27)に固定されている被規制部材(43)に該ロ-ラ(68)(68)が両側より係止してシャフト(27)のθ方向の回動を規制している。従って、上下動ガイド体(62)がモータ(65)により回動すると、回り止め(69)及び被規制部材(43)を介してシャフト(27)及びノズル(19)がθ方向に回動することになる。」(第2頁左下欄第4行-第3頁左下欄第16行)
4.当審の判断
(1)本願発明1と刊行物1記載の発明との対比
刊行物1記載の発明の「位置S_(1)」、及び「吸着ノズル13」は、本願発明の「部品保持部」、及び「吸着ヘッド」に相当し、刊行物1記載の発明の「負圧により電子部品8を吸着し、吸着状態を維持する」ことは、「電子部品保持」を意味する。
したがって、本願発明と刊行物1記載の発明の一致点及び相違点は、それぞれ、ア.及びイ.のとおりである。
ア.一致点
「部品保持部において、負圧により電子部品を吸着して保持する吸着ヘッドを含む電子部品保持装置」
イ.相違点
(A)本願発明が、「自身の軸線まわりに回転可能に設けられ、吸着ヘッドを吸着面において負圧により吸着して保持するホルダと、そのホルダを前記軸線まわりに回転させる回転装置と、前記ホルダ内に設けられるとともに、前記吸着面に前記吸着ヘッドが接触させられた状態においてホルダと吸着ヘッドとによって囲まれる空間に開口させられ、その空間に前記吸着ヘッドを吸着するための負圧を供給するヘッド用通路と、前記ホルダ内に前記ヘッド用通路とは別個に設けられ、ホルダにより前記吸着ヘッドが保持された状態で、その吸着ヘッドの前記部品保持部に、前記ヘッド用通路とは独立に負圧を供給する部品用通路と、前記ヘッド用通路と前記部品用通路とを互いに独立した状態で負圧源に連通させるとともに、それらの連通を維持した状態で前記ホルダの回転を許容する継手装置」の構成を有するのに対して、刊行物1記載の発明においては、かかる構成は特定されていない点。
(2)判断
ア.相違点(A)について
技術例1においては、記載事項(b1)からみて、本願発明の「自身の軸線まわりに回転可能に設けられ、吸着ヘッドを吸着面において負圧により吸着して保持するホルダ」に相当する構成要素であるシャフト(27)が、本願発明の「ホルダを軸線まわりに回転させる回転装置」に相当する構成要素である回動機構(22)が、本願発明の「ホルダ内に設けられるとともに、吸着ヘッドを吸着するための負圧を供給するヘッド用通路」に相当する構成要素であるツール真空通路(31)が、本願発明の「ホルダ内にヘッド用通路とは別個に設けられ、ホルダにより吸着ヘッドが保持された状態で、その吸着ヘッドの部品保持部に、前記ヘッド用通路とは独立に負圧を供給する部品用通路」に相当する構成要素である部品吸着真空通路(25)が、そして、本願発明の「ヘッド用通路と部品用通路とを互いに独立した状態で負圧源に連通させるとともに、それらの連通を維持した状態で前記ホルダの回転を許容する継手装置」に相当する構成要素である二重管継手(34)が、それぞれ記載されている。
したがって、技術例1には、「自身の軸線まわりに回転可能に設けられ、吸着ヘッドを吸着面において負圧により吸着して保持するホルダと、そのホルダを前記軸線まわりに回転させる回転装置と、前記ホルダ内に設けられるとともに、前記吸着ヘッドを吸着するための負圧を供給するヘッド用通路と、前記ホルダ内に前記ヘッド用通路とは別個に設けられ、ホルダにより前記吸着ヘッドが保持された状態で、その吸着ヘッドの前記部品保持部に、前記ヘッド用通路とは独立に負圧を供給する部品用通路と、前記ヘッド用通路と前記部品用通路とを互いに独立した状態で負圧源に連通させるとともに、それらの連通を維持した状態で前記ホルダの回転を許容する継手装置」に関する構成について、記載がされているが、この構成は、その他にも技術例2?6等、同様の技術が記載された多数の特許公報が発行されていることからも明らかなように、電子部品実装の技術分野において、周知技術であると認められるものである。
また、「ホルダ」に「吸着ヘッド」を吸着するという本願発明の基本的な思想も周知であることは、既に、拒絶査定の備考欄で技術例7及び8を引用して示されたとおりであって、技術例1?8にも示されるこれらの周知技術を、刊行物1記載の発明に適用することについても、技術分野が共通しており、さらには、記載事項(a2)のロータリージョイント127に関する記載は、負圧の供給通路と負圧源の接続手段として継手装置を使用することを示唆するものであるから、当業者が想到するのに、構成上の困難性は認められない。
また、本願発明においては、ヘッド用通路が、「吸着面に吸着ヘッドが接触させられた状態においてホルダと吸着ヘッドとによって囲まれる空間」に開口させられているが、負圧による吸着を行うにあたって、かかる空間を設けるか否かは、単に圧力経路の形状を変更するものに過ぎず、当業者が、必要に応じて選択しうる設計的事項であって、明細書の記載あるいは技術常識を勘案しても、格別の技術的意義は認められない。
したがって、相違点(A)に関して、刊行物1記載の発明に係る「部品保持部において、負圧により電子部品を吸着して保持する吸着ヘッドを含む電子部品保持装置」に対して、上記の設計的事項を考慮しつつ、かかる周知技術を適用して、本願発明を構成することは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。
また、念のため、継手装置の構成に関して実施例レベルで見ても、本願発明の例えば【図2】に記載された形式の継手装置は、周知(必要であれば、技術例9?12を参照。)であって、ヘッド用通路と部品用通路の負圧源への接続手段として、かかる周知の形式の継手装置を適用し、「前記ヘッド用通路と前記部品用通路とを互いに独立した状態で負圧源に連通させるとともに、それらの連通を維持した状態で前記ホルダの回転を許容する」ように構成することに、格別の困難性は認められない。
イ.小括
さらに、上記相違点によって奏される効果は、当業者が予測できる範囲のもので、格別のものではなく、請求人の主張を総合的に検討しても、本願発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
5.むすび
したがって、本特許出願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本特許出願についての拒絶をすべき旨の査定を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-03 
結審通知日 2005-10-04 
審決日 2005-10-24 
出願番号 特願平8-219669
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新海 岳深澤 幹朗  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 柴沼 雅樹
田々井 正吾
発明の名称 電子部品保持装置  
代理人 神戸 典和  

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