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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04R
管理番号 1294596
審判番号 不服2003-16330  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-25 
確定日 2005-12-06 
事件の表示 平成 8年特許願第 12463号「プレス嵌め耳あかバリヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月11日出願公開、特開平 8-265898〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年1月29日(パリ条約による優先権主張1995年1月27日、アメリカ合衆国)の出願であって、その請求項1ないし10に係る発明は、平成15年9月24日付け手続補正書により補正された明細書並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「中に音響出力口及びレシーバーを配置したシェルを有し、レシーバーはレシーバー出力口を有する、補聴器に使用するための耳あかバリヤにおいて、
音響出力口とレシーバー出力口との中間に少なくとも部分的に受け入れられるようになったハウジングを備え、前記ハウジングは、音響出力口とレシーバー出力口とを連結する音響通路を有し、
前記ハウジングによって支持される耳あかバリヤ要素をさらに備え、
前記ハウジングは、所定の直径のほぼ円筒形の部分を有する外壁面と、前記円筒形部分の直径より大きいベース部分の直径を有するあご状部分と、を有し、ベース部分の直径はハウジングからほぼ半径方向に延び、次いで、あご状部分は、音響出力口とレシーバー出力口との中間の位置に前記ハウジングを少なくとも部分的にプレス嵌めするために、より小さい直径まで直線的に先細る、バリヤ。」
2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された実願平2-129940号(実開平4-86399号)のマイクロフィルム(平成4年7月27日公開、以下「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。
ア.「本考案は補聴器に関し、特に音声送出部が外耳道内に挿入される補聴器、例えば挿耳式補聴器に適用して好適なものである。」(明細書2頁1行?3行)
イ.「挿耳式補聴器1は第3図に示すようにケース2の根元側に設けられたパネル3にマイクロホン4を有し、マイクロホン4によって集音された外部音をケース2の内部に設けられた補聴処理回路において所定の補聴特性を有する補聴音に変換して、ケース2の先端側に形成された補聴音放出口5から放出するようになされている。」(明細書2頁16行?明細書3頁2行)
ウ.「イヤホン11において発生された補聴音をチューブ12でなる音道を通じて補聴音放出口5に導出すると共に、補聴音放出口5に耳垢侵入防止用ネット13を補聴音送出部6の先端方向から抑え用リング14と共に嵌め込むような工夫がされている。」(明細書4頁4行?9行)
エ.「耳垢侵入防止用ネット13は、その円板状先端部に複数の音孔13Xを穿設することにより各音孔13Xの外耳道内に向けて開放される開口面積をできるだけ小さくし、かくして開口面積よりも大きな耳垢の補聴音放出口5への侵入を防ぎ、」(明細書4頁10行?14行)
3.対比
本願発明と引用文献に記載される発明(以下「引用発明」という。)とを以下に対比する。
引用文献の上記記載事項及び第3図、第4図を検討すると、引用発明は挿耳式補聴器に関するものであり、その「耳垢侵入防止用ネット13」は、耳垢の侵入を防止するためのものであることから、本願発明と同様の「補聴器に使用するための耳あかバリヤ」であるといえる。
また、引用発明の「補聴音放出口5」、「イヤホン11」、及び「ケース2」は、それぞれ、本願発明の「音響出力口」、「レシーバー」、及び「シェル」に相当する。
そして、イヤホン11には、明示的な記載はないが補聴音を出力する出力口が当然設けられているものと認められるため、引用発明は本願発明の「レシーバー出力口」を有しているものと認められる。
また、引用発明の「耳垢侵入防止用ネット13」は、第4図の記載から見て、その形状がほぼ円筒状の構造(外壁面)を含むハウジングを有しており、音響出力口とレシーバー出力口との中間に少なくとも部分的に受け入れられる形で抑え用リング14と共に嵌め込まれているといえる。
そして、「耳垢侵入防止用ネット13」に設けられた、耳垢の侵入を防止するために円板状先端部に開口面積をできるだけ小さい音孔13Xを穿設する構造は、本願発明の「耳あかバリヤ要素」に相当するものと認められ、それはハウジングに支持されているものといえる。また、その円筒内に音響出力口とレシーバー出力口とを連結する音響通路を有しているものと認められる。
さらに、この「耳垢侵入防止用ネット13」は、第4図の記載から、耳あかバリヤ要素設けられた端部と反対側のレシーバー出力口側の端部に、ハウジングの円筒形部分からほぼ半径方向に延びた、円筒形部分の直径より大きいベース部分の直径を有するあご状部分を有しているものと認められる。
したがって、両者は、
「中に音響出力口及びレシーバーを配置したシェルを有し、レシーバーはレシーバー出力口を有する、補聴器に使用するための耳あかバリヤにおいて、
音響出力口とレシーバー出力口との中間に少なくとも部分的に受け入れられるようになったハウジングを備え、前記ハウジングは、音響出力口とレシーバー出力口とを連結する音響通路を有し、
前記ハウジングによって支持される耳あかバリヤ要素をさらに備え、
前記ハウジングは、所定の直径のほぼ円筒形の部分を有する外壁面と、前記円筒形部分の直径より大きいベース部分の直径を有するあご状部分と、を有し、ベース部分の直径はハウジングからほぼ半径方向に延びる、バリヤ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
本願発明の「あご状部分は、音響出力口とレシーバー出力口との中間の位置に前記ハウジングを少なくとも部分的にプレス嵌めするために、より小さい直径まで直線的に先細る」構造を有しているのに対し、引用発明のあご状部分は、耳垢侵入防止用ネット13を補聴音送出部6の先端方向から抑え用リング14と共に嵌め込むために、円筒形部分の直径より大きいベース部分の直径を有する構造を有しているのみである点。
4.当審の判断
上記相違点につき、以下に検討する。
まず、上記「3.対比」で検討したように、引用発明の耳あかバリヤは、音響出力口とレシーバー出力口との中間の位置にハウジングを少なくとも部分的に嵌合されるものである点において本願発明と差異はないが、その嵌合の際に、本願発明は耳あかバリヤをその中間の位置にプレス嵌めするものであるのに対し、引用発明は抑え用リング14と共に嵌め込むものである。
しかしながら、引用発明の構造は、耳あかバリヤと抑え用リングとシェルの3種類の構成要素が弾性的に結合し一体化しているものと考えられるため、引用発明の耳あかバリヤは、シェルと抑え用リングの構造体に対してプレス嵌めされることと構造的に相似している。よって、本願発明のような、耳あかバリヤのあご状部分をシェルに対してプレス嵌めするという構成を導き出すことは、引用発明の構造から当業者が容易に想到し得ることと認められる。
さらに、一般的に構成部品の弾性力を利用し部品どうしを嵌め込むものにおいて、挿入側を先細る形状とすることは、引用文献の第4図においてもあご状部分が先細る形状をしているようにも見受けられるように、慣用手段であり、また、その先細る形状についても、直線的に先細るように構成することは、当業者が適宜選択し得る事項にすぎないものと認められる。
また、本願発明の効果も、引用文献に記載の技術及び慣用技術から予測することができる程度のものにすぎない。
よって、本願発明は、引用発明から当業者が容易に発明することのできたものと認められる。
5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-05 
結審通知日 2005-07-11 
審決日 2005-07-22 
出願番号 特願平8-12463
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松澤 福三郎  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 新宮 佳典
清水 正一
発明の名称 プレス嵌め耳あかバリヤ  
代理人 大塚 文昭  
代理人 中村 稔  
代理人 小川 信夫  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 村社 厚夫  
代理人 今城 俊夫  

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