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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1294641
審判番号 不服2004-10734  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-21 
確定日 2005-12-08 
事件の表示 特願2001-242006「樹脂製コネクタと樹脂製チューブの接続構造」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月26日出願公開、特開2003- 56782〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年8月9日の特許出願であって、原審において、平成15年8月25日付けで拒絶理由通知がなされ、平成15年10月24日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成16年4月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年5月21日付けで審判請求がなされ、平成16年8月23日付けで、同審判請求書を補正対象とする手続補正がなされたものである。
そして、その請求項1ないし5に係る発明は、上記平成15年10月24日付け手続補正により補正され明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】樹脂製チューブと他の管状体とを流体密に連結するための樹脂製コネクタにおいて、前記チューブの最外層がポリブチレンテレフタレート共重合体であり、前記コネクタを構成する樹脂がポリブチレンテレフタレートもしくはそのガラス繊維強化体であって、前記コネクタの一部がチューブに融着されていることを特徴とする樹脂製コネクタと樹脂製チューブの接続構造。
【請求項2】樹脂製コネクタの内面の一部が前記チュ-ブの少なくとも最外層に融着されていることを特徴とする請求項1記載の樹脂製コネクタと樹脂製チューブの接続構造。
【請求項3】前記コネクタを構成する樹脂が前記チューブの最外層および最内層の樹脂の双方と融着されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製コネクタと樹脂製チューブの接続構造。
【請求項4】コネクタを成形するための成形型内に前記チューブの一端を挿入した状態で、当該コネクタを構成する樹脂のオーバーモールドによる射出成形が行われ、コネクタの成形と同時に前記チューブとの融着がなされていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の樹脂製コネクタと樹脂製チューブの接続構造。
【請求項5】前記チューブの端部が拡径された状態で融着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の樹脂製コネクタと樹脂製チューブの接続構造。」
2.引用刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された
刊行物1:特開平5-157190号公報
には、次のa?eの記載がある。
a.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液体の輸送ライン、特に食品・医薬等の製造に用いられる水や、超純水等の輸送ラインに好適に使用される電気融着継手の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂管の接合に使用される電気融着継手としては、通電発熱体よりなる溶接手段が管受口の内周部に埋設されていて、熱可塑性樹脂管を管受口に挿入後、通電発熱体に通電してこれを発熱させ、管受口の内周部及びこれに接する熱可塑性樹脂管の外周部の樹脂を溶融、融着することによって、熱可塑性樹脂管と電気融着継手とを「スリーブ接合」するものが使用されている。」(下線は当審が付した。以下、同じ。)、
b.「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の電気融着継手は、通電発熱体が電気融着継手の管受口の円筒状内周部のみに設けられているので、熱可塑性樹脂管の端面と電気融着継手のストッパが当接していても、熱可塑性樹脂管あるいは電気融着継手の端面部の樹脂は融着するのに充分なほど溶融されず、当接面でのいわゆる「バット接合(突き合わせ接合)」は不完全な状態で行われる。その結果、この突き合わせ部に樹脂の溶融不良による間隙ができて水が滞留し、腐敗や細菌の生息・増殖によって水質が低下する。このため、食品・医薬・半導体等の製造ライン等、きわめて純度の高い水質が要求される用途には、上記従来のような電気融着継手を使用することは不可能であった。
【0006】そこで発明者は、このようなきわめて高純度の水を取扱う用途に使用可能な電気融着継手を提案した(・・・号)。この新規な電気融着継手は、管受口の内周部のみならずストッパにも通電発熱体が埋設されていて、スリーブ接合は勿論、当接面でのバット接合も完全に行われることを特徴とするものである。
【0007】しかるに、この新規な電気融着継手の場合、ストッパにも通電発熱体が埋設されているために、従来の電気融着継手と異なり、ストッパ部分で通電発熱体を電気融着継手の軸と垂直な面内で渦巻き状に巻付けることが必要であるが、前記従来の製造方法では不可能であった。」
c.「【0008】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、上記の新規な電気融着継手の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の電気融着継手の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる管受口の内周部及びストッパに通電発熱体が埋め込まれた電気融着継手を製造する方法であって、
・・・・・
・・・上記通電発熱体を巻きつけたマンドレルを金型内に固定し、上記マンドレルと外型で形成されるキャビティに、溶融した熱可塑性樹脂を射出充填する工程、
・・・金型を開いて製品の電気融着継手を取り出し、マンドレルを抜く工程、
を含むことを要旨とするものである。
・・・・・
【0011】また、熱可塑性樹脂の射出充填工程に先立って、上記電気絶縁層をその溶融温度以上に加熱し、表面を溶融・融着することを要旨とするものである。本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリアミド等の汎用熱可塑性樹脂、ポリ弗化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド等の結晶性または非晶性の熱可塑性エンジニアリング樹脂等が用いられるが、接合される熱可塑性樹脂管と同じか、あるいはこれと相溶性の良い樹脂であることが好ましい。」
d.「【0018】
【実施例】以下、本発明を、実施例により図面を参照して説明する。図1は、本発明によって製造された電気融着継手の実施例を示す断面図であって、概ね円筒状の電気融着継手1には、両側の管受け口2a,2bの内周部及びストッパ3の両側面、即ち熱可塑性樹脂管々端の当接面の近傍に、通電発熱体4が埋設されていて、その両端は端子5,5に接続されている。より詳しく説明すると、通電発熱体4は、左の管受け口2a側と右の管受け口2b側とでは反対方向に螺旋状に巻かれており、またストッパ3の両側面近傍では、両側面に沿ってストッパ3の内面付近から管受け口2a,2bの内周部まで、渦巻き状に巻かれている。そして通電発熱体4の渡り線部41がストッパ3の一箇所を横切って、左の管受け口2a側から、右の管受け口2b側へ連続した構造となっている。」
e.「【0034】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の電気融着継手の製造方法によれば、管受け口の内周部だけでなく、ストッパにも通電発熱体が埋設された電気融着継手の製造が容易にでき、きわめて高純度の水を取扱う用途等に適した電気融着継手の製造等に利用できる。」
したがって、これらのa?eの記載から明らかなように、刊行物1には、「熱可塑性樹脂管を接合するための電気融着継手1において、前記電気融着継手1を構成する樹脂が、熱可塑性樹脂管と相溶性の良い樹脂であるポリブチレンテレフタレートであって、前記電気融着継手1の一部が熱可塑性樹脂管に融着されている電気融着継手1と熱可塑性樹脂管の接合構造。」
という発明が記載されている。
(2)原査定の拒絶の理由に引用された
刊行物2:特開平4-83992号公報
には、次のaの記載がある。
a.「従来より、材質の異なる異種管同士の接続に用いる継手としては、・・・公報に見られるようなものが知られている。
すなわち、第9図に示すように、この継手aは、樹脂管本体bの一端部cに金属部材dが組み込まれ、この金属部材dに、金属管eと螺合するための螺子目fが施される一方、樹脂管本体bの他端部gにヒータコイルhが埋設され、このヒータコイルhの発熱によって、他端部gに挿入される樹脂管iが融着されるようになされたものである。」(第1頁右下欄7?16行)
(3)原査定の拒絶の理由に引用された
刊行物3:実願平2-84589号(実開平4-42987号)のマイクロフィルム
には、次のa?eの記載がある。
a.「[産業上の利用分野]
本考案は、熱可塑性合成樹脂製の管と鋼製の管とを接続する管継手に関するものである。」(明細書第2頁12?14行)
b.「[従来の技術]
従来の上記管継手としては、継手本体内に管を挿入して袋ナットでシールパッキンおよび食込部材を締付けて接続するいわゆるメカニカル方式の管継手が主流で、一方をポリエチレン管用、他方を鋼管用としたものが多かった。」(明細書第2頁15?20行)
c.「[考案が解決しようとする課題]
しかしながら上記のメカニカル方式の管継手では、・・・ポリエチレン管の表面に食込部材を食込ませて接続強度を得るため、ポリエチレン管の表面に大きなキズが生じ、管の長期耐久性の面でも問題があった。」(明細書第3頁1?10行)
d.「[課題を解決するための手段]
上記の課題を解決するために本考案では、一方の管受け口は該受け口内面に発熱体を内装した熱可塑性合成樹脂製筒状体からなり前記受け口に挿入されるポリエチレン管との間で溶融接続するとともに、他方の管受け口は該受け口内面にめねじを形成した金属製筒状体からなり挿入される鋼管との間でねじ接続し、
・・・・・
たことを特徴とする鋼管とポリエチレン管との接続用継手である。」(明細書第3頁13行?第4頁12行)
e.「[実施例]
第1図は本考案の一実施例を示す縦断面図である。図において1は金属製筒状体で鋳鉄で形成され、その端部側内面に鋼管と接続するための管用めねじ11が設けてある。2は合成樹脂製筒状体で本実施例ではポリエチレン管と接続するため同材質のポリエチレン樹脂で形成される。この合成樹脂製筒状体2の内面側には発熱体21が埋設してあり、コネクタ22、22’より通電することにより発熱体が発熱し、合成樹脂製筒状体2内に挿入したポリエチレン管の外面と共に溶融され一体的に接続される。」(明細書第5頁2?13行)
(4)原査定の拒絶の理由に引用された
刊行物4:特開平6-147387号公報
には、次のa?eの記載がある。
a.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は二層管用管継手に関する。更に詳細には、剛性の高い熱可塑性樹脂の外層と、物質が溶出し難い熱可塑性樹脂の内層からなる二層管を接続する二層管用管継手に関する。」
b.「【0013】
【実施例】次に、本発明の実施例を示す。図1?2は本発明の一実施例を示すもので、図1は二層管用管継手を示す断面図、図2は図1の二層管用管継手を使用して二層管を接続する手順を示し、(イ)は接続する前の二層管と二層管用管継手とを示す説明図、(ロ)は二層管の管端部外周面と二層管用管継手の継手本体の内周面を加熱している状態を示す説明図、(ハ)は二層管用管継手で二層管を接続した状態を示す説明図である。図3は本発明の他の実施例を示すもので、二層管用管継手を示す説明図である。図4は本発明の別の実施例を示すもので、二層管用管継手を示す説明図である。」
c.「【0014】図1?2において、1は二層管用管継手であり、この二層管用管継手1は継手本体11と突条12とからなる。継手本体11は耐熱性ポリ塩化ビニル製の円筒状である。又、突条12はポリフェニレンサルファイド製であって、継手本体11の中央部内面に突出し、円周方向に長い帯状のものである。2は接続する一方の二層管であり、この二層管2の外層21は耐熱性ポリ塩化ビニルであり、内層22はポリフェニレンサルファイドである。
【0015】3は接続する他方の二層管であり、この二層管3は、一方の二層管2と同様に、外層31が耐熱性ポリ塩化ビニルであり、内層32がポリフェニレンサルファイドである。そして、継手本体11の内径は二層管2、3の外径とほぼ等しいし、突条12の頂の内径は二層管2、3の内径とほぼ等しい。
【0016】尚、この二層管2、3の管端の外周面は二層管用管継手1の管口に挿入し易いように丸く削られている。4はヒーターであり、このヒーター4は支持板41の両側に円筒状の加熱板42、43が設けられたものである。一方の円筒状加熱板42の外径は継手本体11の内径より若干小さくなっているし、他方の円筒状加熱板43の内径は二層管2、3の外径より若干大きくなっている。」
d.「【0017】次に、この二層管用継手を使用して二層管を接続する方法について説明する。図2の(イ)に示すように、二層管用管継手1の両側の管口近傍に接続する二層管2、3を配置し、図2の(ロ)に示すようにヒーター4を、この二層管用管継手1と二層管との間に置き、加熱板42を二層管用管継手1の継手本体11の中に挿入し、加熱板43の中に二層管2、3の先端部を挿入して、継手本体11の内面と二層管2、3の外周面とを加熱して、表面を溶融する。
【0018】表面が溶融すると、ヒーター4を取り外し、直ちに、継手本体11の中に二層管2、3の先端を挿入して、二層管2、3の先端を突条12に突き当てる。すると、図2の(ハ)に示すように、継手本体11内面と二層管2、3外周面とが、又、突条12と二層管2、3の先端とがそれぞれ一体に融着し、二層管2、3が接続される。このように二層管2、3が接続されると、内面に凹部が生ぜず、又、内面には剛性の高い熱可塑性樹脂の外層21、31が顕れないから、内部の水質が悪化することがない。」
e.「【0020】次に、図4に示す実施例について説明する。図4に示す実施例では二層管用管継手1bの継手本体11bの内面にニクロム線からなる発熱体5が埋め込まれていることが異なる。この二層管用管継手1bは継手本体11bの管口に二層管の管端部を挿入した後、発熱体5で加熱して継手本体11b内面と二層管の外周面とを融着させることが異なる。その他は図1?2に示す実施例と同じである。」
(5)原査定の拒絶の理由に引用された
刊行物5:特開平11-141787号公報
には、次のa?cの記載がある。
a.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性樹脂製複層管用電気融着継手に関する。」
b.「【0015】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳しく説明する。図1は請求項1の継手の実施の形態をあらわしている。
【0016】図1(a),(b)に示すように、この継手1aは、ソケットであって、両側に受口2,2を備え、最外層である外層31と最内層である内層32の2層構造を有し、管端に内層32の露出部33を備えている複層管3の接続にしようできるようになっている。すなわち、受口2は、大径部21と小径部22とを備えている。
【0017】大径部21は、接続される複層管3の外層31の外径と略同じ内径をしていて、外層31と同じ熱可塑性樹脂で形成されている。小径部22は、複層管3の露出部33の外径と略同じ内径をしていて、複層管3の内層32と同じ熱可塑性樹脂によって形成されている。
【0018】また、この継手1aは、大径部21および小径部22に沿って通電発熱体4a,4bが埋設されている。両通電発熱体4a、4bは、別回路になっていて、それぞれ端子41,41あるいは端子42,42に電気融着機(図示せず)のプラグを接続し、電気融着機から所定の電気量が供給されることによって発熱し、内層32を構成する熱可塑性樹脂の融点+50℃?融点+100℃の温度まで小径部22と露出部33との融着面およびその近傍を加熱溶融する、あるいは、外層31を構成する熱可塑性樹脂の融点+50℃?融点+100℃の温度まで大径部21と外層31との融着面およびその近傍を加熱溶融するようになっている。
【0019】すなわち、図1(b)に示すように、複層管3の管端部を受口2に嵌合させた状態で、通電発熱体4aに通電すると、大径部21と外層31とが融着され、通電発熱体4bに通電すると、小径部22と露出部33とが融着されるようになっている。
【0020】この継手1は、以上のように、露出部33の外周面が小径部22の内周面と融着されるようになっているので、外層31を配管内を流れる流体から完全に隔絶できる。したがって、流体によって外層31が腐食されて漏水することを防止することができる。」
c.「【0022】図3は請求項2の継手の実施の形態をあらわしている。図3(a),(b)に示すように、この継手5aは、ソケットであって両側に受口6,6を有し、受口6と受口6との間に接続される複層管7の管端面を受けるリング状の突条8を内部に備え、最外層である外層71と最内層である内層72の2層構造を有する複層管7の接続にしようできるようになっている。
【0023】すなわち、突条8は、複層管7の内層72と同じ熱可塑性樹脂で形成されていて、その内径が複層管7の内径と同じになっている。また、この継手5aは、受口6,6の内周面、および、突条8の接続される複層管7の管端面が当接する当接面81に沿って通電発熱体9aが内部に埋設されている。
【0024】通電発熱体9aは、一回路に連続していて、端子91,91に電気融着機(図示せず)のプラグを接続し、電気融着機から所定の電気量が供給されることによって発熱するようになっている。また、通電発明体9aは、埋設密度を変えることによって、図3(b)に示すように、受口6に複層管7を嵌合した状態で通電した時に、受口6と複層管7の最外層71との融着面およびその近傍を複層管7の最外層71を構成する熱可塑性樹脂の融点より50?100℃高い温度まで加熱でき、複層管7と突条8との融着面およびその近傍を、複層管7の最内層72を構成する熱可塑性樹脂の融点+50?融点+100℃まで加熱できるようになっている。
【0025】この継手5aは、以上のように、継手本体51が複層管7の外層71と同じ熱可塑性樹脂で形成され、すなわち、受口6と複層管7の最外層71とが同じ熱可塑性樹脂で形成されていて、受口6の内周面と最外層71の外周面とが融着されるとともに、複層管7の管端面が最内層72と同じ熱可塑性樹脂で形成された突条8によって受けられて、突条8と最内層72とが融着される。したがって、最外層71が配管内を流れる流体から完全に隔絶され、流体による最外層71の腐食を防止することができる。」
3.対比・判断
(1)対比
本件の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)を、刊行物1に記載された発明と対比する。
刊行物1に記載された発明における「電気融着継手1」は、本件発明の「樹脂製コネクタ」に相当すると認められる。
また、刊行物1に記載された発明における「熱可塑性樹脂管」と、本件発明の「樹脂製チューブと他の管状体」とは、「管状体」である点では共通性を有している。
(2)一致点
したがって、両発明は、
「管状体を流体密に連結するための樹脂製コネクタにおいて、前記コネクタを構成する樹脂がポリブチレンテレフタレートもしくはそのガラス繊維強化体であって、前記コネクタの一部が管状体に融着されていることを特徴とする樹脂製コネクタと管状体の接続構造。」
で一致する。
(3)相違点
そして、両発明は、次のA及びBの2点で相違する。
《相違点A》
本件発明1は、「樹脂製チューブの最外層がポリブチレンテレフタレート共重合体」であり、樹脂製コネクタの一部が、「チューブ」に融着されていることを特徴とする樹脂製コネクタと「樹脂製チューブ」の接続構造となっている。
これに対し、刊行物1に記載された発明では「接合される熱可塑性樹脂管」が、上記のような樹脂製チューブとされていない。
《相違点B》
本件発明1では、樹脂製コネクタが「樹脂製チューブと他の管状体とを」連結する。
これに対し、刊行物1に記載された発明では、電気融着継手1が熱可塑性樹脂管同士を接合しており、本件発明1のように、「樹脂製チューブと他の管状体とを」連結していない。
(4)相違点についての検討
《相違点Aについての検討》
“ポリブチレンテレフタレート共重合体製のチューブ”は周知の技術にすぎない。
(もし、周知文献が必要であれば、
・特開平6-23930号公報
「【0015】この課題は、特に請求項2記載の1つまたはそれ以上のポリエステルからなる少なくとも1つの遮断層を有する多層ポリマーーホースまたはパイプによって解決される。
【0016】意外なことに、ポリエステルは自動車用燃料に対して顕著な遮断作用の性質を有することが判明した。この遮断作用は、純粋な炭化水素ならびにアルコールおよび同時にその混合物に対して予想できない程の高さを有し、この場合アルコール含量は、他の濃度範囲に亘って変動可能である。
【0017】本発明の範囲内でポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PB)またはポリエチレンナフタレート(PEN)がこれに該当する。テレフタル酸とともに、イソフタル酸ならびにポリエステル形成成分も適当である。また、ポリエーテル軟質セグメントを有するブロックコポリエーテルエステルを使用することができる。」
・特開平7-299854号公報
「【0005】 ・・・・・
車輛燃料にはしばしば炭化水素とアルコールとの混合物が使用される。
・・・・・
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は十分に低い透過性を有し、上述の欠点を生ずることなく現在の環境保護及び安全性の要求を満足させる上述のタイプのホース又はチューブを提供することである。
・・・・・
【0010】特に、その目的は請求項2に従った1又は複数のポリエステルバリア層を少なくとも1つ含む多層ポリマーのホース又はチューブによって達成される。
【0011】
【作用及び発明の効果】ポリエステルが車輛燃料に対して十分なバリア特性を有することはドイツ国特許C1公報第・・・号に示されている。そのバリア特性はアルコールの場合と同様に純粋な炭化水素、同時にそれらの混合物に対して予期せぬ大きさを有し、アルコール含有量は濃度の広い範囲を越えて変化させることができる。
【0012】例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)あるいはポリエチレンナフタレート(PEN)は本発明の意味におけるポリエステルとして考慮される。さらに、テレフタル酸、イソフタル酸はポリエステル製造用のビルディングブロックとしてまた最適である。また、可塑化されたポリエーテルセグメントを有するブロックポリエーテルエステルを採用することも可能である。」
等を参照。)
そして、この周知技術を、刊行物1に記載された発明に組み合わせるにあたり、同発明では、「電気融着継手1を構成する樹脂が、熱可塑性樹脂管と相溶性の良い樹脂であるポリブチレンテレフタレートであって、」(上記2.(1)末尾参照)とされているので、組合せには、上記周知技術における「(チューブの)ポリブチレンテレフタレート共重合体」が、刊行物1における「(電気融着継手1の)ポリブチレンテレフタレート」と相溶性の良い樹脂であることが前提条件になる。
しかし、「ポリブチレンテレフタレート共重合体」に「ポリブチレンテレフタレート」と相溶性の良いものがあることは周知の技術にすぎない。
(もし、周知文献が必要であれば、
・特開平11-256014号公報
「【0006】
【課題を解決する方法】本発明者らは、上記の如き優れた特性を備えたポリエステルエラストマー組成物を見いだすべく検討を重ねた結果、特定のポリエステルブロック共重合体はポリブチレンテレフタレートと相溶性がよく、溶融時は殆ど透明になること、更にこれにカルボン酸ナトリウム等を添加すると成型物が透明になることを見いだし本発明に至ったものである。
【0007】即ち本発明は、(A)テレフタル酸及びテトラメチレングリコールがジカルボン酸成分当たり60モル%以上のポリブチレンテレフタレートを主たる成分とするハードセグメント20?70重量%と、芳香族ジカルボン酸とHO(CH2 CH2 O)iH(i=2?5)の長鎖ジオールがジカルボン酸成分当たり60モル%以上であるポリエステルからなるソフトセグメント80?30重量%とのポリエステルブロック共重合体100部、(B)ポリブチレンテレフタレート0?200部、及び(C)炭素数7?40の有機カルボン酸ナトリウム塩、有機燐酸部分エステルのナトリウム塩から選ばれた少なくとも1種0.5?10重量部からなるポリエステルブロック共重合体組成物である。」
・特開2001-164101号公報
「【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、ハードセグメント(ア)20?70重量%とソフトセグメント(イ)80?30重量%とからなるポリエステルブロック共重合体であって、ハードセグメント(ア)がポリブチレンテレフタレートであり、ソフトセグメント(イ)が芳香族ジカルボン酸99?90モル%および炭素数6?12の直鎖脂肪族ジカルボン酸1?10モル%をジカルボン酸成分とし、炭素数6?12の直鎖ジオールをジオール成分としてなるポリエステルである、
・・・・・
【0008】[ポリエステルブロック共重合体(A)]ポリエステルブロック共重合体(A)は、ハードセグメント(ア)20?70重量%とソフトセグメント(イ)80?30重量%とからなる。ハードセグメント(ア)は20?40重量%が好ましく、ソフトセグメント(イ)は60?80重量%が好ましい。ハードセグメントが70重量%を超えると、硬いポリエステル樹脂組成物が得られることになり、塩化ビニールの代替として使用しにくく好ましくなく、ソフトセグメントが80重量%を超えるとポリエステル樹脂組成物の結晶性が少なくなり、取り扱いが困難になる。
【0009】[ハードセグメント(ア)]ハードセグメント(ア)はポリブチレンテレフタレートであり、これはテレフタル酸をジカルボン酸成分の好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上の成分、テトラメチレングリコールをジオール成分の好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上の成分としてなるポリエステルである。
・・・・・
【0012】[ソフトセグメント(イ)]ソフトセグメント(イ)は、芳香族ジカルボン酸99?90モル%および炭素数6?12の直鎖脂肪族ジカルボン酸1?10モル%をジカルボン酸成分とし、炭素数6?12の直鎖ジオールをジオール成分としてなるポリエステルである。ソフトセグメント(イ)を構成するポリエステルは非晶性または低い結晶性のポリエステルである。
【0013】芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸およびイソフタル酸が挙げられる。炭素数6?12の直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられる。
【0014】芳香族ジカルボン酸としてはイソフタル酸が好ましく、ソフトセグメントを構成する全ジカルボン酸成分の20モル%以上の成分として用いることが、非晶性か、低い結晶性のポリエステルを得るために好ましい。
【0015】直鎖脂肪族ジカルボン酸は、ソフトセグメントを構成するポリエステルの全ジカルボン酸成分あたり1?10モル%、好ましくは2?5モル%である。1モル%未満であるとソフトセグメントの柔軟性が損なわれ、ポリエステル樹脂組成物の軟質性が損なわれる。10モル%を超えるとポリブチレンテレフタレート(B)との樹脂組成物としたときに相溶性が不足し白濁する。
【0016】ソフトセグメント(イ)は、共重合成分を共重合したものであってもよい。ポリブチレンテレフタレート(B)との組成物として用いる場合の相溶性を良好に維持して、良好な透明性を得るためには他の共重合成分は存在しないことが好ましく、存在する場合でも共重合成分は全ジカルボン酸成分または全ジオール成分の好ましくは10モル以下、さらに好ましくは5モル%以下である。」
等を参照。)
そうすると、上記の組合せにあたり、「(チューブの)ポリブチレンテレフタレート共重合体」の内から、「(電気融着継手1の)ポリブチレンテレフタレート」と相溶性の良いものを選び、上記の前提条件を満たした上で組み合わせを行うことは当業者であれば容易である。
また、相違点Aでは、樹脂製チューブの「最外層が」ポリブチレンテレフタレート共重合体であるが、管状体を継手に融着するに時に、管状体の最外層を溶融される材料で形成することは、刊行物4及び5にも記載されているように周知の技術にすぎない。(特に、上記引用箇所2.(4),(5)の下線を付した箇所参照。)
したがって、上記周知技術を、刊行物1に記載された発明に組み合わせ、相違点Aにおける本件発明の構成に到達することは当業者であれば容易である。
《相違点Bについての検討》
樹脂管と金属管のような異種管を継手で接続することは、刊行物2及び3にも記載されているように周知の技術にすぎない。(特に、上記引用箇所2.(2),(3)の下線を付した箇所参照。)
また、樹脂製「チューブ」を継手で連結することも周知技術にすぎない。
(もし、周知文献が必要であれば、
・特開平9-100961号公報
「【0002】
【従来の技術】・・・熱可塑性フッ素系樹脂でできたチューブは、薬品に対する耐蝕性がすぐれかつ耐熱性もすぐれているので、電子部品製造工場、化学工場などにおいて、超高純度の水、腐蝕性のある化学薬液、腐蝕性のあるガスなどを送る管材として汎用されている。
【0003】フッ素系樹脂チューブからなる管路を工場内に設置するに際しては、チューブ同士を連結したり、チューブを継手等のフッ素系樹脂成形品に接続することがしばしば必要となる。そこで、フッ素系樹脂チューブの継手方式が種々提案または採用されている。
【0004】その代表的なものの一例は、図4に示したように、まず継手等の成形品(12)の通孔(12a)にチューブ(11)の一端側を冷間で嵌合し、成形品(12)の外側からはヒータ部材(14)を嵌め込み、チューブ(11)の一端側からはピン形のヒータ部材(13)を挿入し、ついで両ヒータ部材(13),(14)に通電して、成形品(12)を外側から通孔(12a)側に達するまで加熱ゲル化させると共に、チューブ(11)を内部から外面に達するまで加熱ゲル化させることにより、両者を融着一体化させる方法である。図4には、熱の移動状態を矢印で付記した。この方法は、内外国を問わず現実に広く実施されている工業的方法である。」
・特開平2-256996号公報
「そしてポリオレフィンチューブ等の被接続体5を非架橋ポリオレフィン層3の内側に挿入して接続部材6の挿入部6aに突合わせ、電熱線4に通電すると、非架橋ポリオレフィン層3が溶融して被接続体5に融着して一体化する。」(第3頁右下欄19行?第4頁左上欄3行)
・特開平2-253093号公報
「こうして製造されたエレクトロフュージョン継手1は、ポリオレフィンチューブ等の被接合体4,5の突合せ部7付近に、非架橋ポリオレフィン層2bが被接合体4、5と接するように取付け、電熱線3に通電すると、非架橋ポリオレフィン層2bが溶融して被接合体4、5に融着して一体化する。」(第3頁右上欄9?15行)
等を参照。)
したがって、上記周知技術を、刊行物1に記載された発明に組み合わせ、相違点Bにおける本件発明の構成に到達することは当業者であれば容易である。
(5)発明の効果についての検討
本件発明の効果は、刊行物1に記載された発明及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に推測できた程度のものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、刊行物1に記載された発明及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件の請求項2ないし5に係る発明については検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-14 
結審通知日 2005-10-17 
審決日 2005-10-28 
出願番号 特願2001-242006(P2001-242006)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 富夫  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 岡本 昌直
会田 博行
発明の名称 樹脂製コネクタと樹脂製チューブの接続構造  
代理人 的場 基憲  

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