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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1294643
審判番号 不服2004-12785  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-22 
確定日 2005-12-05 
事件の表示 平成 7年特許願第208336号「フィンチュ-ブの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月14日出願公開、特開平 9- 42573〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年7月25日の出願であって、その請求項3に係る発明は、平成16年4月22日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第3項に記載された次の事項により特定されるものである。
「金属管と該金属管に巻き付けられる金属帯材とによって構成されるフィンチューブの製造方法において、予め所定ピッチをもって成形された螺旋状金属帯材の内周端部により形成される軸方向の円形空間に金属管を挿入し、前記螺旋状金属帯材を金属管の長手方向に引張ることにより、前記円形空間領域を縮径して、螺旋状金属帯材の内周端部を金属管の外面に密接せしめ、次いで前記金属管に密接する螺旋状金属帯材の少なくとも長手方向の両端部において螺旋状金属帯材と金属管とを一体にろう付けまたは溶接して形成することを特徴とするフィンチューブの製造方法。」(以下、「本願発明」という。)
2.引用例
原査定の拒絶の理由に用いられた特開昭50-57061号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「チューブに装着するスパイラルテープを円筒状素材から切り出し、前記スパイラルテープをチューブ外周面に同心状に装着した後前記テープを前記チューブに接触させ溶接するようにしたことを特徴とするスパイラルフィンチューブの製造法。」(特許請求の範囲)
ロ.「第1?3図によりボイラー等に使用されるスパイラルフィンチューブの従来例について説明すると、・・・(中略)・・・、次いで金属管(チューブ)02に巻付けて溶接しスパイラルフィンチューブ03を作っている。」(第1頁左下欄第17行?同右下欄第3行)
ハ.「次に第4?6図により本発明をその一実施例を以って説明すると、1はスパイラルテープを切り出す為の円筒状素材(金属管)であり、該円筒状素状(「材」の誤記と思われる。)1を図示しない加工装置に取付けて軸回転させカッター2を一方の端面側から押しあてて、所要の厚さのスパイラルテープに切り出していく。」(第2頁左上欄第20行?同右上欄第6行)
ニ.「4はチューブであり、該チューブ4の外周面に前記スパイラルテープ3の内周側3bが夫々等間隔になるように同心状に装着し、適当に仮付けした後スパイラルテープ3を加圧機5よって外周側3aから加圧し、・・・溶接トーチ6で上記接触部を連続的に溶接する。」(第2頁右上欄第18行?同左下欄第6行)
以上の記載によれば、引用例1には、
チューブと該チューブに装着されるスパイラルテープとにより構成されるスパイラルフィンチューブの製造方法において、スパイラルテープをチューブ外周面に同心状に装着し、適当に仮付けした後、連続的に溶接して形成するスパイラルフィンチューブの製造法(以下、「引用例1発明」という。)
が記載されている。
同じく、原査定の拒絶の理由に用いられた特開平2-80115号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ホ.「鋼管の外表面に小断面線状材の予め遊嵌寸法のスパイラル状に成形したリブをフレア溶接する際、該リブのスパイラルピッチを小さめに予成形しておき、鋼管外表面に遊嵌した当該リブの一方端を仮付けした後、機械的操作にて該リブの他方端を管軸方向に引延ばしてスパイラル径が鋼管外表面に押し付けられるまでに小化させてフレア溶接を施こすとしてなることを特徴とする鋼管表面への線状材よりなるスパイラル状リブの溶接方法。」
(特許請求の範囲(3))
ヘ.「所謂ドリル鋼管杭、合成鋼管に於ける外套管等の如く鋼管の内面、外面または内外面等の表面の全長若しくは一部に円形、矩形もしくは類似の小断面の線状鋼からなるリブをスパイラル状に付設したものを製造する手段としては、予めスパイラル状に成形したリブを既製鋼管に後加工でフレア溶接する方法が妥当である。」(第1頁右下欄第20行?第2頁左上欄第6行)
ト.「第3図a,bは請求項2(「3」の誤記と思われる。)記載の発明を示し、遊嵌可能なるよう鋼管1外径より若干大きい径に成形されるスパイラル状リブ9は、そのピッチを所定値(溶接予定のスパイラルリブのピッチ)より小さめに予成形してある。当該リブ9は、鋼管1外面に嵌装した後、端面を仮付け10する。ついで、機械的操作によって、リブ9全体が、所定のスパイラルピッチとなるよう管轄方向11に一様に引伸ばす。本操作に伴ってスパイラル径は次第に減少し、所定のピッチにまで引伸ばされた時、リブ9と鋼管1外表面とが密着するようにする。」(第4頁左上欄第11行?同右上欄第3行)
チ.「以上の如く、本発明方法によるならば、線状材よりなる遊嵌寸法に予成形のスパイラル状リブの鋼管表面に対する溶接に際し、溶接トーチによるフレア溶接の速度を制約する要因は一切解消され高能率な溶接が期し得る。」(第4頁左下欄第12?16行)
以上の記載及び図面によると、引用例2には、
鋼管と該鋼管に遊嵌され、スパイラル状に成形された線状鋼からなるリブとによって構成される、リブ付設鋼管の製造方法において、予め遊嵌寸法のスパイラル状に成形したリブを、鋼管外面に嵌装した後、管軸方向に一様に引伸ばすことにより、リブと鋼管外表面とが密着するようにし、その後、リブを鋼管表面に溶接するリブ付設鋼管の製造方法(以下、「引用例2発明」という。)が記載されている。
3.対比・判断
そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「チューブ」は本願発明の「金属管」に、以下同様に、「装着される」は「巻き付けられる」に、「スパイラルテープ」は「金属帯材」に、「スパイラルフィンチューブ」は「フィンチューブ」に、「スパイラルテープをチューブ外周面に同心状に装着し」は「螺旋状金属帯材の内周端部に金属管を挿入し」に、「適当に仮付けした後、溶接し」は「少なくとも長手方向の両端部において一体に溶接し」に、それぞれ相当する。そして、引用例1発明のスパイラルテープは、図面からみて、その内周端部に軸方向の円形空間を形成しているものと思われる。
そうすると、両者は、
金属管と該金属管に巻き付けられる金属帯材とによって構成されるフィンチューブの製造方法において、螺旋状金属帯材の内周端部により形成される軸方向の円形空間に金属管を挿入し、螺旋状金属帯材の内周端部を金属管の外面に密接せしめ、次いで前記金属管に密接する螺旋状金属帯材の少なくとも長手方向の両端部において螺旋状金属帯材と金属管とを一体に溶接して形成することを特徴とするフィンチューブの製造方法
の点で一致し、次の点で相違している。
1)本願発明では、螺旋状金属帯材は、予め所定ピッチをもって成形されているのに対し、引用例1発明では、この構成が、明瞭ではない点。
2)本願発明では、螺旋状金属帯材を金属管の長手方向に引張ることにより、円形空間領域を縮径して、螺旋状金属帯材の内周端部を金属管の外面に密接せしめるものであるのに対し、引用例1発明では、該構成についての記載がない点。
そこで、上記相違点について検討する。
まず、相違点1)についてみると、
螺旋状金属帯材を用いてフィンチューブを形成するに際し、螺旋状金属帯材を、予め所定のピッチをもって成形することは、製品の仕様に応じた設計をする上で、当業者であれば、容易に想到し得た設計的事項である。
次に、相違点2)について検討する。
引用例2には、螺旋状金属線材(「スパイラル状に成形した線状鋼からなるリブ」として記載されている。)を長手方向(「管軸方向」)に引張る(「引伸ばす」)ことにより、螺旋状金属線材を縮径して、螺旋状金属線材の内周端部を金属管の外面に密接(「リブと鋼管外表面とが密着するようにし」)するようにした技術が記載されている。
そして、螺旋状金属線材を螺旋状金属帯材としたものは、本願出願前、周知の技術である(一例として、特開昭60-161815号公報参照。)。
そうすると、引用例1発明において、螺旋状金属帯材を金属管の長手方向に引張ることにより、円形空間領域を縮径して、螺旋状金属帯材の内周端部を金属管の外面に密接せしめるようにした点は、引用例2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しえたことである。
また、本願発明を全体としてみても、その奏する効果は、引用例1発明、引用例2発明及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。
4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明、引用例2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-12 
結審通知日 2005-10-13 
審決日 2005-10-25 
出願番号 特願平7-208336
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丸山 英行  
特許庁審判長 小椋 正幸
特許庁審判官 岡本 昌直
櫻井 康平
発明の名称 フィンチュ-ブの製造方法  
代理人 押田 良輝  

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