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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1294730
審判番号 不服2013-11174  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-13 
確定日 2014-12-04 
事件の表示 特願2009-104577「光学式位置検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月11日出願公開、特開2010-257089〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年4月22日の出願であって、平成25年3月14日付けで拒絶査定がなされたものである。これを不服として平成25年6月13日に本件審判請求がなされると同時に同日付けで手続補正がなされ、その後、当審により平成26年6月27日付けで拒絶理由が通知され、平成26年8月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされた。

2.本願発明
本願の請求項1-11に係る発明は、平成26年8月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-11の記載により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「検出領域に入力される指示体の指示位置を検出可能な光学式位置検出装置であって、該光学式位置検出装置は、
検出領域周辺の少なくとも一部を覆うように配置され検出領域周辺に着脱可能に構成される再帰反射部材と、
検出領域の周辺の1カ所に配置され再帰反射部材からの反射光を用いて指示体の指示位置を検出するための検出ユニットであって、検出領域の面方向に沿う光を照射する光源部と、該光源部から発せられ再帰反射部材で反射する反射光を撮像するカメラ部とをそれぞれ有する少なくとも2つの検出部を含む検出ユニットと、を具備し、
前記光源部は、検出領域全体に光を照射可能な照射角を有し、
前記2つの検出部の各カメラ部は、超広角レンズ及びイメージセンサからなり、超広角レンズが光源部に近接して配置され、2つのカメラ部の視野軸が平行であり検出領域全体を撮像可能な画角を有し、
前記2つの検出部は、その間の距離が検出ユニットから検出領域方向を見る検出領域の幅よりも狭くなるように配置される、
ことを特徴とする光学式位置検出装置。」

3.刊行物に記載された発明
(1)刊行物1の記載事項
当審により通知した拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-182423号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は座標入力装置に関し、特に、複数の表示装置を組み合わせた複数の表示画面に用いる座標入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近来、複数の表示装置を組み合わせて、複数の表示画面を1つの表示画面の如く利用する所謂デュアルモニタやマルチモニタ方式の表示装置が用いられるようになってきている。このような表示装置にタッチパネル等の座標入力装置を付加してタッチ入力可能に構成するために、従来ではマルチモニタに用いられる表示装置ごとにそれぞれタッチパネルを設けていた。感圧抵抗被膜方式や、LEDと受光素子をマトリックス状に組み込んだ光学式等の従来の座標入力装置は、大型の検出領域を作るのが困難であり、個々の小さい表示画面に対してそれぞれタッチパネルを用いるしかなかった。しかしながら、製品のコストは検出領域の大きさに比例して高くなるため、マルチモニタ用の座標入力装置は高価なものであった。また、複数のタッチパネルを用いると、それぞれの制御や処理が必要になってくるため、装置も複雑化していた。
【0003】
大型の検出領域を作るのが容易な方式として、CCD等のイメージセンサからなるカメラを用いた光学式座標入力装置が存在する。これは、例えば特許文献1に記載のように、検出領域近傍の所定の2ヶ所から指示体を撮影して三角測量の原理で指示位置を算出するもの等である。
【0004】
さらに、タッチパネル固有の2次元座標系と画面表示用2次元座標系は異なるものであるため、これを制御プログラム等により一致させるものとして、特許文献2に開示の技術がある。」

「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようにマルチモニタに複数のタッチパネルを用いたものは、コストが高くなり現実的ではなかった。また、特許文献1のようなカメラを用いた光学式座標入力装置により検出領域を大きくして複数の表示画面に適応したとしても、そのままでは検出領域の2次元座標系と画面表示用の2次元座標系が異なるため、意図通りの位置指定操作を行えないといった不具合が生じ、これに対して特許文献2に示すような1つの座標変換手段を用いた場合には、画面の継ぎ目部分において表示画面の座標系が不連続となるため、表示画面の座標系で入力座標を扱うアプリケーションでは、表示画面の座標系とタッチパネルの座標系とが一致しないという問題が発生していた。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、マルチモニタ用の使い勝手の良い安価な座標入力装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による座標入力装置は、複数の表示装置を組み合わせた複数の表示画面に用いられるものであり、複数の表示画面のすべての領域を含む検出領域と、検出領域外の少なくとも2ヶ所に配置され、検出領域内に置かれた指示体を撮影するために検出領域全体が画角に入るように設置されるカメラと、カメラからの情報を基に指示体の指示位置座標を算出する処理部と、を有するものである。
【0009】
ここで、指示体は直接的に又は間接的に光を発するものであれば良く、その先端近傍に光源を有するか、再帰反射部材を有しカメラ近傍に光源が設けられ光源が検出領域全体を覆うように検出領域上の近傍で平行な投光面を形成するものでも良い。
【0010】
また、指示体は指や指示棒を含み、さらに、カメラ近傍に光源が設けられ、該光源は検出領域全体を覆うように検出領域上の近傍で平行な投光面を形成し、少なくとも検出領域の周辺3辺に再帰反射部材が配置されるものであっても良い。」

「【発明の効果】
【0014】
本発明の座標入力装置によれば、検出領域が大きい座標入力装置も容易に実現可能なため、表示装置を多数組み合わせた巨大なマルチモニタであったとしても、使い勝手の良い座標入力装置が安価に実現可能であるという利点がある。また、複数の指示体の同時入力が可能となるため、それぞれの表示装置に対して別々の操作が同時にできるようになる。さらに、マルチモニタをサポートするOSであれば、座標変換はドライバレベルで処理可能なため、外部回路等を設ける必要もないという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の座標入力装置の一例を説明するための概略図である。第1表示装置1及び第2表示装置2によりデュアルモニタを構成する。各表示装置には、パーソナルコンピュータ等の電子計算機3に設けられる第1グラフィックボード4及び第2グラフィックボード5が接続されている。なお、グラフィックボードによっては、1枚のグラフィックボードで複数の出力を有しているデュアルモニタ対応のものもある。第1表示装置1及び第2表示装置2のそれぞれの表示画面は、1つの画面となるように近づけて並べられている。図示例では、第1表示画面6と第2表示画面7が横に並べられている例を示している。なお、マイクロソフト株式会社のWindows(登録商標)等のOSでは、このようなマルチモニタをOSレベルでサポートしている。以下、本明細書では2画面のデュアルモニタにおける例を中心に説明するが、本発明はこれに限定されず、より多くの表示装置を組み合わせたものであっても構わない。
【0016】
本発明の座標入力装置は、第1表示画面6と第2表示画面7の全体の領域をカバーする部分を検出領域10としている。そして、検出領域10の上の両側2ヶ所に、検出領域10全体が画角に入るように設置されたカメラ11を有する。図示例の座標入力装置は、光遮蔽タイプの座標入力装置であり、カメラ11の近傍にLED等の光源が設けられている。光源は、検出領域10の全体を覆うように検出領域上の近傍で平行な投光面を形成する。また、再帰反射部材12が検出領域10の周辺3辺に配置されている。再帰反射部材とは、入射した光をその入射方向に反射する性質を持った反射部材である。光遮蔽タイプの座標入力装置は、検出領域10に指やペン等の指示体13が置かれていない状態だとカメラには全体が明るく写る。指示体13が置かれると、それにより光源による投光面の光が遮蔽され、再帰反射部材12では遮蔽された部分が影になり、カメラ11には光が戻らなくなる。この影の位置を、所定の2ヶ所に設けられたカメラ11で撮影して特定することで、三角測量の原理で指示体13の指示位置座標を算出するものである。この処理自体は、座標入力装置をUSB等のインタフェースを介して電子計算機に接続し、電子計算機内で行っても良いが、DSP等を座標入力装置内に設けて内部で処理するものであっても良い。」

「【0022】
ここで、本発明の座標入力装置は、カメラ方式であるため、複数の指示体の同時入力も容易に実現できる。したがって、複数の人間により同時に画面を操作することも可能となる。なお、複数の指示体の同時入力を可能とするためには、図3に示すようにカメラ11の位置を中央に近い位置に設けることが望ましい。これは、一方の指示体が他方の指示体の影になった場合には検出できなくなってしまうので、一方の指示体が他方の指示体の影になりにくい構成にするためである。複数の指示体の同時入力を実現するために、複数入力を処理するための画像処理装置30が設けられる。これは、カメラ11からの複数の影又は光に基づき、指示体の数をカウントしたり指示位置を決定したりするものである。なお、画像処理装置30により行われる処理は、接続される電子計算機内で行われても勿論構わない。本発明の座標入力装置によれば、マルチモニタにより大きな表示画面が作れるため、複数の人間による操作が可能であり使い勝手がより良くなる。なお、複数の指示体の同時入力を処理する具体的な手順は、例えば特開2001-228971等を用いることが可能である。
【0023】
このように本発明の座標入力装置では、カメラを用いた光学式であり検出領域を大きくすることが可能なため、複数の表示画面のすべての領域を検出領域とすることが可能となる。」

(2)刊行物1発明
(2-1)「検出領域10に入力される指示体13の指示位置を検出可能な光学式座標入力装置」

刊行物1には、「座標入力装置」(【0001】)に関する発明が開示されており、この座標入力装置は、「検出領域10に指やペン等の指示体13が置かれていない状態だとカメラには全体が明るく写る。指示体13が置かれると、それにより光源による投光面の光が遮蔽され、再帰反射部材12では遮蔽された部分が影になり、カメラ11には光が戻らなくなる。この影の位置を、所定の2ヶ所に設けられたカメラ11で撮影して特定することで、三角測量の原理で指示体13の指示位置座標を算出するものである」(【0016】)から、刊行物1記載の座標入力装置は、「検出領域10に入力される指示体13の指示位置を検出可能な」ものであり、その方式は「カメラを用いた光学式」(【0023】)である。
したがって、刊行物1には、「検出領域10に入力される指示体13の指示位置を検出可能な光学式座標入力装置」が記載されている。

(2-2)「該座標入力装置は、検出領域10の周辺3辺に配置される再帰反射部材12と、近傍にLEDの光源が設けられ、該光源から発せられ再帰反射部材12で反射する反射光を撮像する、検出領域10の一辺の中央に近い位置の2カ所に配置された2つのカメラ11を具備し、」

刊行物1記載の座標入力装置では、「再帰反射部材12が検出領域10の周辺3辺に配置されて」(【0016】)いる。
また、刊行物1記載の座標入力装置は、「検出領域10の上の両側2ヶ所に、検出領域10全体が画角に入るように設置されたカメラ11を有する」ものであり、「複数の指示体の同時入力を可能とするためには、カメラ11の位置を中央に近い位置に設けることが望ましい」(【0022】)との記載と【図3】によれば、刊行物1記載の座標入力装置は、検出領域10の上の中央に近い位置の2カ所に配置された2つのカメラ11を具備しているといえる。
さらに、「カメラ11の近傍にLED等の光源が設けられて」(【0016】)おり、「検出領域10に指やペン等の指示体13が置かれていない状態だとカメラには全体が明るく写る。指示体13が置かれると、それにより光源による投光面の光が遮蔽され、再帰反射部材12では遮蔽された部分が影になり、カメラ11には光が戻らなくなる。この影の位置を、所定の2ヶ所に設けられたカメラ11で撮影して特定することで、三角測量の原理で指示体13の指示位置座標を算出するものである」(【0016】)から、カメラ11は、該光源から発せられ再帰反射部材12で反射する反射光を撮像するものであるといえる。
したがって、刊行物1の座標入力装置は、「検出領域10の周辺3辺に配置される再帰反射部材12と、近傍にLEDの光源が設けられ、該光源から発せられ再帰反射部材12で反射する反射光を撮像する、検出領域10の上の中央に近い位置の2カ所に配置された2つのカメラ11を具備」するものであるといえる。

(2-3)「前記光源は、検出領域10の全体を覆うように検出領域上の近傍で平行な投光面を形成するものであり、」

刊行物1の座標入力装置において、「光源は、検出領域10の全体を覆うように検出領域上の近傍で平行な投光面を形成する」(【0016】)ものである。

(2-4)「前記カメラ11は、検出領域全体が画角に入るように設置されている」

刊行物1の座標入力装置は、「検出領域10の上の両側2ヶ所に、検出領域10全体が画角に入るように設置されたカメラ11を有する」(【0016】)ものであるから、「前記カメラ11は、検出領域10全体が画角に入るように設置されている」といえる。

(2-5)刊行物1発明
以上をまとめると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると認められる。

[刊行物1発明]
検出領域10に入力される指示体13の指示位置を検出可能な光学式座標入力装置であって、該座標入力装置は、検出領域10の周辺3辺に配置される再帰反射部材12と、近傍にLEDの光源が設けられ、該光源から発せられ再帰反射部材12で反射する反射光を撮像する、検出領域10の上の中央に近い位置の2カ所に配置された2つのカメラ11を具備し、前記光源は、検出領域10の全体を覆うように検出領域上の近傍で平行な投光面を形成するものであり、前記カメラ11は、検出領域10全体が画角に入るように設置されている光学式座標入力装置。

4.対比
(1)本願発明の「検出領域に入力される指示体の指示位置を検出可能な光学式位置検出装置」について

刊行物1発明は、「検出領域10に入力される指示体13の指示位置を検出可能な光学式座標入力装置」であり、「位置検出装置」ともいえるものである。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「検出領域に入力される指示体の指示位置を検出可能な光学式位置検出装置」である点で一致する。

(2)本願発明の「検出領域周辺の少なくとも一部を覆うように配置され検出領域周辺に着脱可能に構成される再帰反射部材」について

刊行物1発明の再帰反射部材12は、検出領域10の周辺3辺に配置されるものであるから、「検出領域周辺の少なくとも一部を覆うように配置される再帰反射部材」といえ、この点で本願発明と共通する。
しかしながら、この再帰反射部材が、本願発明では、「検出領域周辺に着脱可能に構成される」ものであるのに対し、刊行物1発明では、着脱可能か否か明らかではない点で、両者は相違する。(相違点1)

(3)本願発明の「検出領域の周辺の1カ所に配置され再帰反射部材からの反射光を用いて指示体の指示位置を検出するための検出ユニットであって、検出領域の面方向に沿う光を照射する光源部と、該光源部から発せられ再帰反射部材で反射する反射光を撮像するカメラ部とをそれぞれ有する少なくとも2つの検出部を含む検出ユニット」について

刊行物1発明は、「近傍にLEDの光源が設けられ、該光源から発せられ再帰反射部材12で反射する反射光を撮像する、検出領域10の上の中央に近い位置の2カ所に配置された2つのカメラ11」を具備している。
この2つのカメラ11は、検出領域の周辺に配置されており、再帰反射部材からの反射光を用いて指示体の指示位置を検出するためのものである。
また、刊行物1発明のLEDの光源は、「検出領域10の全体を覆うように検出領域上の近傍で平行な投光面を形成するもの」であるから、「検出領域の面方向に沿う光を照射する光源部」といえ、刊行物1発明の上記2つのカメラ11は、該光源部から発せられ再帰反射部材で反射する反射光を撮像するものである。刊行物1発明のカメラ及びその近傍の光源は、本願発明の「検出部」に対応づけられるものであるから、まとめると、本願発明と刊行物1発明とは、「検出領域の周辺に配置され再帰反射部材からの反射光を用いて指示体の指示位置を検出するための、検出領域の面方向に沿う光を照射する光源部と、該光源部から発せられ再帰反射部材で反射する反射光を撮像するカメラ部とをそれぞれ有する少なくとも2つの検出部」を具備する点で共通しているといえる。
しかしながら、指示体の指示位置を検出するためのより具体的な構成が、本願発明では、「検出領域の周辺の1カ所に配置され」た、「少なくとも2つの検出部を含む検出ユニット」として構成されているのに対し、刊行物1発明では、2つの検出部が2カ所に別々に配置されており、検出ユニットとして構成されていない点で、両者は相違する。(相違点2)

(4)本願発明の「前記光源部は、検出領域全体に光を照射可能な照射角を有し、」について

刊行物1発明の光源は、「検出領域10の全体を覆うように検出領域上の近傍で平行な投光面を形成するもの」であるから、検出領域全体に光を照射可能な照射角を有するものであることは明らかである。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「前記光源部は、検出領域全体に光を照射可能な照射角を有」する点で一致する。

(5)本願発明の「前記2つの検出部の各カメラ部は、超広角レンズ及びイメージセンサからなり、超広角レンズが光源部に近接して配置され、2つのカメラ部の視野軸が平行であり検出領域全体を撮像可能な画角を有し、」について

刊行物1発明の2つのカメラ11(本願発明の「2つの検出部の各カメラ部」に相当)は、「検出領域10全体が画角に入るように設置されている」から、換言すれば、「検出領域全体を撮像可能な画角を有」するといえる。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「前記2つの検出部の各カメラ部は、検出領域全体を撮像可能な画角を有」する点で共通する。
しかしながら、本願発明では、カメラ部が、「超広角レンズ及びイメージセンサからなり、超広角レンズが光源部に近接して配置され、2つのカメラ部の視野軸が平行」であるのに対し、刊行物1発明では、カメラの構成の詳細は明らかではない点で、両者は相違する。(相違点3)

(6)本願発明の「前記2つの検出部は、その間の距離が検出ユニットから検出領域方向を見る検出領域の幅よりも狭くなるように配置される、」について

刊行物1発明において、2つのカメラ11及びその近傍の光源(本願発明の「2つの検出部」に相当)は、検出領域10の上の中央に近い位置の2カ所に配置される(【図3】も参照)から、「その間の距離が検出部から検出領域方向を見る検出領域の幅よりも狭くなるように配置される」ものであるといえる。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「前記2つの検出部は、その間の距離が検出部から検出領域方向を見る検出領域の幅よりも狭くなるように配置される」点で共通する。
もっとも、上記(3)で述べた相違点2と同様に、指示体の指示位置を検出するためのより具体的な構成が、本願発明では、検出部を含む「検出ユニット」として構成されているのに対し、刊行物1発明では、検出ユニットとして構成されていない点で両者は相違する。

(7)一致点及び相違点
以上をまとめると、本願発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
検出領域に入力される指示体の指示位置を検出可能な光学式位置検出装置であって、該光学式位置検出装置は、
検出領域周辺の少なくとも一部を覆うように配置される再帰反射部材と、
検出領域の周辺に配置され再帰反射部材からの反射光を用いて指示体の指示位置を検出するための、検出領域の面方向に沿う光を照射する光源部と、該光源部から発せられ再帰反射部材で反射する反射光を撮像するカメラ部とをそれぞれ有する少なくとも2つの検出部と、を具備し、
前記光源部は、検出領域全体に光を照射可能な照射角を有し、
前記2つの検出部の各カメラ部は、検出領域全体を撮像可能な画角を有し、
前記2つの検出部は、その間の距離が検出部から検出領域方向を見る検出領域の幅よりも狭くなるように配置される、
ことを特徴とする光学式位置検出装置。

[相違点]
(相違点1)再帰反射部材が、本願発明では、「検出領域周辺に着脱可能に構成される」ものであるのに対し、刊行物1発明では、着脱可能か否か明らかではない点。

(相違点2)指示体の指示位置を検出するためのより具体的な構成が、本願発明では、「検出領域の周辺の1カ所に配置され」た、「少なくとも2つの検出部を含む検出ユニット」として構成されているのに対し、刊行物1発明では、2つの検出部が2カ所に別々に配置されており、検出ユニットとして構成されていない点。

(相違点3)本願発明では、カメラ部が、「超広角レンズ及びイメージセンサからなり、超広角レンズが光源部に近接して配置され、2つのカメラ部の視野軸が平行」であるのに対し、刊行物1発明では、カメラ11の構成の詳細は明らかではない点。

5.当審の判断
(相違点1)について
刊行物1発明は、パーソナルコンピュータに接続する表示装置をタッチパネルを用いたものにするとコストが高くなるという課題を解決するために、表示装置にカメラや再帰反射部材を設置して使い勝手のよい安価な座標入力装置を実現するものである(【0006】-【0010】、【0014】を参照)から、再帰反射部材は、既存の表示装置に後から取り付けたものである。既存の表示装置に後から取り付けた再帰反射部材を取り外すことも当業者に想定し得ることであり、また、ディスプレイ等に用いられる再帰反射部材を備えた同様の光学式位置検出装置において、再帰反射部材を検出領域周辺に着脱可能に構成する構成自体は、引用文献2に記載されているように知られている(下記(*)を参照)ものであるから、刊行物1において、再帰反射部材を検出領域周辺に着脱可能に構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

(*)特開2001-84109号公報(刊行物2)には、図10とともに以下のように記載されている。
「【0042】図10は、実施の形態2の座標検出装置の、図7のU部に相当する部分の構造を示す切断面を表した図である。座標検出装置200は、U字構造を有する再帰性反射部131と、再帰性反射部131内側表面に構成され、受発光部(図示せず)からの照射光を再帰的に反射する反射面132と、反射面132の各種反射不良から再帰的に反射されない反射光を遮る遮蔽板108と、再帰性反射部を取り出す際に使用する押出棒134等とから構成される。すなわち、座標検出装置200の再帰性反射部131は、取り外し可能な構造を有する。なお、点線で表した133は、後述する固定片を表す。
【0043】図11は図10のX-X’における断面図である。再帰性反射部131は、遮蔽板108側に固定片133を介し、バネ135の弾性力によって押さえつけられ固定される。図において固定側136は、バネ135の他端を保持する部位である。」

(相違点2)について
刊行物1発明は、所定の2カ所に設けられたカメラで指示体を撮影して三角測量の原理で指示体の指示位置座標を算出するもの(【0016】を参照)であるから、2ヵ所のカメラの間の距離を正確に把握することが指示体の座標位置を正確に算出するために必要であるのは当業者には明らかである。また、2つのセンサで対象物を撮像して三角測量の原理で対象物の位置を検出する装置において、検出に用いる2つのセンサを、それらの相対位置を固定するユニット構成としたものは、刊行物3に記載されているように知られたもの(下記(**)を参照)であり、このようにすることにより位置検出が正確に行えることは当業者には当然に理解し得ることである。
したがって、刊行物1発明において、位置検出を正確にするために、2カ所に別々に配置された2つの検出部(カメラ及びその近傍の光源)を、刊行物3に記載されたもののように、2つのセンサの相対位置を固定するユニット構成とすること、すなわち、「少なくとも2つの検出部を含む検出ユニット」として構成することは当業者が容易に想到し得ることであり、そうした場合には、検出ユニットは、「検出領域の周辺の1カ所に配置され」たものとなる。

(**)特表2003-515800号公報(刊行物3)には、図1、図7、図10とともに以下のように記載されている。
「【0044】
この電子入力装置は、ホルダーを有する通常のペンに類似している。ユーザは、この装置を通常のペンと同様に使用して紙、ノート、またはその他の平らな表面上に筆記する。この装置は、手書きの文字または絵を取り込むために使用される。このペンは、センサ測定値をメモリに記録することによって使用時のすべての移動を記憶する。次いで、ペンはこれらの測定値をコンピュータ、パーソナル・デジタル・アシスタント、ハンドヘルド・コンピュータ、または携帯電話にダウンロードする。次いで、ページ上に現われている手書きの文字または絵がセンサ情報から再構築される。
【0045】
図1に示すように、ペン、または文字または絵の目に見える軌跡12を通常の方法で用紙または他の筆記表面14上に残すその他の筆記用具10は、ペンの動きを自動的に追跡する際に使用される赤外線(IR)光18を放出する光源16を有してよい。光は、近傍の位置、たとえば、紙の縁23の近傍でペンに対して固定的に保持されたIRセンサ20、22によって検出される。
【0046】
センサは、連続する各測定時間にペンからの光が受け取られる、筆記表面上のペンの位置(たとえば、角度24)を表す信号のシーケンスを供給する。センサに関連する回路は、アルゴリズムを使用して方向情報(およびセンサ間の既知の距離26)を処理し、筆記表面上を移動するペンの一連の位置を判定する。このアルゴリズムは、センサの画素信号を筆記表面上の位置に変換する数学モデルを使用することができる。アルゴリズムは、較正されたパラメータ(レンズからセンサまでの距離と、レンズとセンサの屈折率の中心間の水平方向のずれ)を使用する準三角測量アルゴリズムであっても、多項近似であってもよい。」
「【0072】
図7に示すように、筆記表面に平行なx-y座標系40内のペンの位置は、2つのセンサ20、22によって検知される2つの角度αおよびβと、センサ間の既知の距離26とから判定される。」
「【0079】
ペン・ホルダー
図1および図10に示すように、センサは、ペンを使用していないときに保持できる代表的なペン・キャップ70内に収容することができる。ペンを使用する際、ペンはキャップから取り外され、キャップは、筆記表面の近くで、かつペンの近くの固定位置に位置決めされる。いくつかの例では、センサは線形CMOSアレイ(たとえば、Photo Vision Systems, LLS(PVS)(P.O Box 509, Cortland, NY 13045)(部品番号LIS1024)から1024画素アレイとして市販されている)である。同じ数または異なる数の画素を有する、PVSまたは他の会社の他の線形CMOSセンサを使用してもよい。各センサのアナログ出力は、各センサ画素から1つの1024個のアナログ信号のシーケンスである。
【0080】
図10に示すように、ホルダーは、紙パッドまたはノードの縁にホルダーを取り付けるクリップ62を含んでよい。」
以上の記載から、刊行物3には、2つのIRセンサ20、22を用いて三角測量アルゴリズムを使用してペンの位置を判定する装置が記載されている。
ここで、「ペンキャップ70(ペン・ホルダー)」は、2つのIRセンサ20、22を備えるもので、この2つのIRセンサ20、22間の距離は既知の距離26である。すなわち、「ペンキャップ70(ペン・ホルダー)」は、2つのIRセンサ20、22の相対位置を固定するものと認められ、本願発明でいう、イメージセンサの相対的な位置を固定するための「検出ユニット」に相当するものである。
以上のとおり、刊行物3には、「2つのセンサで対象物を撮像して三角測量の原理で対象物の位置を検出する装置において、検出に用いる2つのセンサを、それらの相対位置を固定するユニット構成としたもの」が記載されていると認められる。

(相違点3)について
カメラの構成として、レンズ及びイメージセンサからなるものは普通に知られたものであり、刊行物1発明のカメラとしても適宜採用し得るものである。また、刊行物1発明におけるカメラ11は、検出領域10全体が画角に入るように設置されているものであるから、【図3】のような取り付け位置では、画角を、少なくとも180度程度に広くする必要があると当業者には理解でき、カメラの画角を広くするための構成として超広角レンズ用いることは周知であるから、刊行物1発明において、カメラの構成を、「超広角レンズ及びイメージセンサ」からなるものとすることは当業者が容易に想到し得ることであり、カメラの構成を、「超広角レンズ及びイメージセンサ」からなるものとしたときには、カメラの近傍の光源部は超広角レンズの近傍にもあるといえる。すなわち、「超広角レンズが光源部に近接して配置され」ることとなる。

また、刊行物1には、2つのカメラ11の視野軸については言及されていないが、上述したように、【図3】のような取り付け位置では、検出領域10全体が画角に入るようにするには、画角を、少なくとも180度程度に広くする必要があると当業者には理解でき、そうした場合に、【図3】に示されるカメラ11の形状や取り付け態様、すなわち、直方体形状の2つのカメラ11が検出領域10の鉛直下方向に揃えて取り付けられている取り付け態様からみて、2つのカメラ11の視野軸を、いずれも検出領域10の鉛直下方向(すなわち、平行)となるようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。

ところで、本願発明の「2つのカメラ部の視野軸が平行であり」は、平成26年8月25日付け補正書で新たに追加された特定事項であるところ、請求人は、その補正の根拠として明細書の【0027】、【0034】-【0039】、図面の【図1】、【図2】、【図4】を挙げ、上記「2つのカメラ部の視野軸が平行であり」は、これらの箇所の記載から自明な事項であるとしている。
しかしながら、請求人の挙げる上記箇所は上記特定事項を直接記載するものではなく、しいて言えば、図1において、2つの検出部21を意味する長方形の2つの辺が平行であることを根拠に、上記特定事項が自明であるとするものである。
そして、この論理は、刊行物1の図3に示される上記カメラ11の取り付け態様にも該当するといえ、上記と同様当業者であれば「2つのカメラ部の視野軸が平行」であることを普通かつ自然に想定し得るというべきである。

したがって、刊行物1発明において、2つのカメラ11を、「超広角レンズ及びイメージセンサからなり、超広角レンズが光源部に近接して配置され、2つのカメラ部の視野軸が平行」であるように構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

よって、請求項1に係る発明は、刊行物1-3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-03 
結審通知日 2014-10-07 
審決日 2014-10-22 
出願番号 特願2009-104577(P2009-104577)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 笠田 和宏山崎 慎一  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 千葉 輝久
乾 雅浩
発明の名称 光学式位置検出装置  
代理人 生井 和平  
代理人 生井 和平  

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