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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1294748
審判番号 不服2013-22743  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-20 
確定日 2014-12-04 
事件の表示 特願2012-173064「ロータ、回転電機及びロータの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月20日出願公開、特開2014- 33549〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年8月3日の出願であって、平成25年6月10日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成25年6月18日)、これに対し、平成25年7月26日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年8月20日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成25年8月27日)、これに対し、平成25年11月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に手続補正書が提出されたものである。


2.平成25年11月20日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年11月20日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「中央に孔部が形成され、その孔部周囲に磁石が配置されたロータコアと、
周面に部分的にローレットが形成されることにより、ローレットが形成されたローレット形成部とローレットが形成されていないローレット非形成部とが該周面に配置され、前記孔部内に前記ローレット形成部と前記ローレット非形成部とが存在するように前記孔部に緊密に挿入されたシャフトと、を有し、
前記シャフトと前記ロータコアとは、焼き嵌めによって結合されており、
前記ロータコアの材質が、珪素鋼板であり、
前記ロータコアの外周面と前記孔部との間に、該ロータコア内部に磁石を挿入するための空隙部が、前記孔部を中心として放射状に形成されているロータ。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ロータコア」について、実質的に「材質が、珪素鋼板」と限定し、ロータコアの孔部周囲の磁石の配置について、「前記ロータコアの外周面と前記孔部との間に、該ロータコア内部に磁石を挿入するための空隙部が、前記孔部を中心として放射状に形成されている」と限定するものであって、請求人が審判請求書で主張するように、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。


(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-26256号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

1-a「第7図及び第8図において、31はシャフト、32a,32bはシャフト31と嵌合するロータコア、33はロータコア32a,32bに挟まれた環状のマグネットである。シャフト31には長手方向に第11図に示されるようにステーキング加工用の刃すなわちステーキング加工具34によってステーキング加工が施されており、35及び36はステーキング加工具34を打ち込んだことによって形成された溝及び峰部である。なお、第9図はステーキング加工部37を拡大した斜視図である。
このように本例ではシャフト31のステーキング加工が施された部分にロータコア32a,32bが嵌まっており、ステーキング加工部37の峰部36がロータコア32a,32bの中央貫通孔の内側部にくい込んでいる。峰部36がロータコア32a,32bにくい込むことによってロータコア32a,32bとシャフト31との回転方向のスリップが防止される。」(第1頁右下欄第3行-第2頁左上欄第1行)

1-b「-方、シャフト31は旋盤等によって所定の太さになるように切削され、第11図に示されるようにステーキング加工が施される。」(第2頁左上欄第14-17行)

1-c「そして、シャフト31はマグネット33を挟んだロータコア32a,32bの中央貫通孔に圧入される。」(第2頁左上欄第19行-右上欄第1行)

上記記載及び図面を参照すると、ロータコア32a,32bの中央貫通孔は、ロータコア32a,32bの中央に形成されている。
上記記載及び図面を参照すると、環状のマグネット33(注:図中「マグネットの『31』」は誤記)はロータコア32a,32bに挟まれており、ロータコア32a,32b及び環状のマグネット33の中央貫通孔にシャフト31(注:図中「シャフトの『33』」は誤記)が挿入されるから、ロータコア32a,32bの中央貫通孔を通るシャフト31の周囲には環状のマグネット33が配置されている。
上記記載及び図面を参照すると、シャフト31の軸方向に延びて形成されるステーキング加工部37は周方向約90°ごとに計4個であり、シャフト31の周面にはステーキング加工部37が形成された部分とステーキング加工部37が形成されていない部分とが配置されるから、シャフト33の周面には部分的にステーキング加工部37が形成されている。
上記記載及び図面を参照すると、シャフト31がロータコア32a,32bの中央貫通孔に圧入されて、圧入後、シャフト31の部分的にステーキング加工部37が形成された箇所がロータコア32a,32bの中央貫通孔内に存在するから、ロータコア32a,32bの中央貫通孔内にステーキング加工部37が形成された部分とステーキング加工部37が形成されていない部分とが存在するようにシャフト31はロータコア32a,32bの中央貫通孔に緊密に挿入されている。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「中央に中央貫通孔が形成され、その中央貫通孔を通るシャフトの周囲に環状のマグネットが配置されたロータコアと、
周面に部分的にステーキング加工部が形成されることにより、ステーキング加工部が形成された部分とステーキング加工部が形成されていない部分とが該周面に配置され、前記中央貫通孔内にステーキング加工部が形成された部分とステーキング加工部が形成されていない部分とが存在するように前記中央貫通孔に緊密に挿入されたシャフトと、を有し、
前記シャフトと前記ロータコアとは、前記シャフトを前記ロータコアの中央貫通孔に圧入することによって結合されており、
前記環状のマグネットは、2つのロータコアで前記環状のマグネットを挟むことによって配置される、ロータ。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「中央貫通孔」、「環状のマグネット」、「ステーキング加工部」、「ステーキング加工部が形成された部分」、「ステーキング加工部が形成されていない部分」は、それぞれ本願補正発明の「孔部」、「磁石」、「ローレット」、「ローレットが形成されたローレット形成部」、「ローレットが形成されていないローレット非形成部」に相当する。

したがって、両者は、
「中央に孔部が形成され、磁石が配置されたロータコアと、
周面に部分的にローレットが形成されることにより、ローレットが形成されたローレット形成部とローレットが形成されていないローレット非形成部とが該周面に配置され、前記孔部内に前記ローレット形成部と前記ローレット非形成部とが存在するように前記孔部に緊密に挿入されたシャフトと、を有するロータ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
ロータコアに対する磁石の配置に関し、本願補正発明は、ロータコアの孔部周囲に磁石が配置されるのに対し、引用発明は、ロータコアの孔部を通るシャフトの周囲に磁石が配置される点。
〔相違点2〕
シャフトとロータコアとの結合に関し、本願補正発明は、焼き嵌めによって、ローレットが形成されたシャフトとロータコアとが結合されるのに対し、引用発明は、ローレットが形成されたシャフトをロータコアの孔部に圧入することによって、シャフトとロータコアとが結合される点。
〔相違点3〕
ロータコアの材質に関し、本願補正発明は、ロータコアの材質が珪素鋼板であるのに対し、引用発明は、ロータコアの材質が不明である点。
〔相違点4〕
ロータコアにおける磁石の配置に関し、本願補正発明は、ロータコアの外周面と孔部との間に、磁石を挿入するための空隙部が孔部を中心として放射状に形成されるのに対し、引用発明は、2つのロータコアで環状の磁石を挟むことによって、当該磁石を配置するものであり、磁石を挿入するための空隙部が存在しない点。


(4)判断
相違点2について
回転電機の分野において、シャフトとロータコアとの結合に関し、圧入はシャフトに負荷がかかること、及びシャフトをロータコアに挿入する際に、シャフトになるべく負荷をかけないようにすることが好ましいことは、何れも周知の事項である。また、シャフトとロータコアとを結合するために、一般に、圧入、焼き嵌め、冷し嵌め、溶接等が本願の出願前から広く用いられており、その内、焼き嵌めは、シャフトに負荷をかけないようにシャフトをロータコアの孔部へ挿入できるために用いられるものである。さらに、ローレットが形成された軸と嵌合部とを焼き嵌めによって結合することも周知の事項(特開平7-31099号公報、特開昭63-254225号公報等参照。)である。
そうであれば、引用発明において、ローレットが形成されたシャフトをロータコアの孔部に圧入することに代えて、ローレットが形成されたシャフトとロータコアとを焼き嵌めによって結合するようにすることは、当業者が容易に考えられることと認められる。
なお、用語法として、焼き嵌めが圧入に含まれるとの考え方もあり(実願昭58-166102号(実開昭60-77248号)のマイクロフィルム第2-3頁参照)、これに基づけば、引用発明において、ローレットが形成されたシャフトをロータコアの孔部に圧入する際に、焼き嵌めによって結合するようにすることは、当業者が適宜なし得る程度のことと言える。

相違点3について
ロータコアの材質を珪素鋼板とすることは、本願の出願前において周知の技術(必要があれば、特開2010-4722号公報、特開平10-271723号公報等参照。)であるから、引用発明のロータコアの材質を珪素鋼板とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。

相違点1、4について
磁石の配置に関し、ロータコアの外周面と孔部との間に磁石を挿入するための空隙部を、孔部を中心として放射状に形成すること、即ち、孔部周囲に磁石を配置することは、永久磁石形回転子において周知の事項(必要があれば、特開平7-312852号公報参照。)であるから、引用発明において、ロータコアに磁石を配置するために、孔部周囲に磁石を配置するようにして、ロータコアの外周面と孔部との間の磁石を挿入するための空隙部を、孔部を中心として放射状に形成することは、当業者が適宜なし得ることと認められる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成25年7月26日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「中央に孔部が形成され、その孔部周囲に磁石が配置されたロータコアと、
周面に部分的にローレットが形成されることにより、ローレットが形成されたローレット形成部とローレットが形成されていないローレット非形成部とが該周面に配置され、前記孔部内に前記ローレット形成部と前記ローレット非形成部とが存在するように前記孔部に緊密に挿入されたシャフトと、を有し、
前記シャフトと前記ロータコアとは、焼き嵌めによって結合されているロータ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び、その記載事項は、上記「2.[理由](2)」に記載したとおりである。


(2)対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、ロータコアについて、実質的に「材質が、珪素鋼板」との限定を省き、ロータコアの孔部周囲の磁石の配置について「前記ロータコアの外周面と前記孔部との間に、該ロータコア内部に磁石を挿入するための空隙部が、前記孔部を中心として放射状に形成されている」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.[理由](4)」に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-18 
結審通知日 2014-09-30 
審決日 2014-10-20 
出願番号 特願2012-173064(P2012-173064)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02K)
P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 謙一  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 堀川 一郎
矢島 伸一
発明の名称 ロータ、回転電機及びロータの製造方法  
代理人 梶 俊和  

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