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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1294769
審判番号 不服2014-337  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-08 
確定日 2014-12-24 
事件の表示 特願2010-219409「監視装置,及び電子制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月12日出願公開,特開2012- 73900,請求項の数(7)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成22年9月29日の出願であって,平成24年3月7日付けで審査請求がなされ,平成25年7月23日付けで拒絶理由通知(同年7月30日発送)がなされ,これに対して同年9月27日付けで意見書が提出されたが,同年10月11日付けで拒絶査定(同年10月22日謄本送達)がなされたものである。
これに対して,「原査定を取り消す,本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」との請求の趣旨で,平成26年1月8日付けで本件審判請求がなされた。


第2 本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1-7に係る発明(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は,上記平成22年9月29日付け願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1-7に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
演算内容が予め対応付けられた宿題番号を取得すると,その取得した宿題番号に対応する演算を実行する演算実行手順,及び前記演算実行手順での演算結果を表す回答番号を生成して出力する回答出力手順とを実行する制御処理装置との間で送受信した前記宿題番号及び前記回答番号に基づき前記制御処理装置の状態を監視する監視装置であって,
設定された前記宿題番号を出力する宿題出力手段と,
前記宿題出力手段で出力した宿題番号に対して用意された答えに基づいて,前記制御処理装置からの回答番号の正誤を判定する正誤判定手段と,
前記正誤判定手段での判定の結果,前記回答番号が正答であれば,前記宿題番号を,先に出力したものとは異なる宿題番号へと,予め規定された順序に従って変更して設定し,前記回答番号が誤答であれば,前記宿題番号を,先に出力した宿題番号に維持して設定する宿題更新手段と,
前記正誤判定手段での判定の結果,同一の宿題番号に対する回答番号が,予め規定された規定回数連続して誤答である推定異常状態であれば,該誤答に対応する宿題番号を,再起動されても記憶内容を保持する記憶部に格納すると共に,前記制御処理装置及び当該監視装置を再起動するリセット信号を出力するリセット手段と,
前記リセット手段にてリセット信号が出力され,前記制御処理装置及び当該監視装置が再起動されると,前記記憶部に格納された宿題番号を設定して,前記宿題出力手段に出力させる番号再設定手段と
を備えることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記リセット手段は,
前記宿題出力手段にて出力した宿題番号に対応する回答番号を,該宿題番号を出力してから,予め規定された規定時間以上未取得であれば,前記推定異常状態であるものとすることを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
同一の宿題番号への各回答番号に対する前記正誤判定手段での判定の結果,予め設定された設定回数連続して前記推定異常状態となると,前記リセット手段による前記リセット信号の出力を継続させる動作禁止手段
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の監視装置と,
前記制御処理装置と
を備えることを特徴とする電子制御システム。
【請求項5】
前記制御処理装置,及び前記監視装置は,それぞれ,
プログラムに定められた処理手順に従って処理を実行するコンピュータであることを特徴とする請求項4に記載の電子制御システム。
【請求項6】
前記制御処理装置,及び前記監視装置は,それぞれ,
一つの中央演算処理装置に設けられた互いに異なるプロセッサコアであることを特徴とする請求項4に記載の電子制御システム。
【請求項7】
前記制御処理装置,及び前記監視装置は,それぞれ,
自動車に搭載され,かつ自動車に設けられる機器を制御する電子制御ユニットであることを特徴とする請求項4に記載の電子制御システム。」


第3 原査定の理由の概要

1.平成25年7月23日付け拒絶理由通知

平成25年7月23日付けで拒絶理由が通知されたが,その内容は下記のとおりである。

『この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



≪引用文献等一覧≫
1.特開2004-259137号公報
2.特開平5-53852号公報
3.特開平1-312638号公報
4.特開2000-293408号公報
5.特開2007-28118号公報

[請 求 項]1-2,4-7
[引用文献]1-2
引用文献1には,
受信した宿題番号に応じて,予め決められた宿題演算処理を行い,解答信号を送信するマイクロコンピュータ(制御処理装置に対応)を監視する監視回路(監視装置に対応)であって,(【0028】,図1-3等参照)
宿題番号を送信するシリアル通信部(宿題出力手段に対応)と,(【0032】等参照)
前記解答番号と正解番号とを比較して正誤を判定する手段(正誤判定手段に対応)と,(【0033】等参照)
前記解答番号が正答であれば,宿題番号を一つ増やした宿題信号を出力し,誤答であれば,同じ宿題番号の宿題信号を出力する手段(宿題更新手段に対応)と,(【0033】-【0034】等参照)
前記正誤を判定した結果,連続三回誤答が続いた場合(推定異常状態であることに対応)や所定時間内に解答番号の更新が行われなかった場合はリセット信号を出力する手段と,(【0035】-【0038】等参照)
を備える監視回路,の発明が記載されている。

請求項1に係る発明と引用文献1に記載の発明を対比すると,以下の点で相違する。

(1)請求項1に係る発明は,推定異常状態であれば,誤答に対応する宿題番号を,再起動されても記憶内容を保持する記憶部に格納すると共に,制御処理装置及び監視装置を再起動し,再起動後に,前記記憶部に格納された宿題番号を用いて宿題を実行させるものであるのに対し,引用文献1に記載の発明はそのようなものではなく,本願明細書(【0006】等参照)で指摘されているように,宿題番号を初期値から再出力してしまう点。

次に,上記相違点について検討する。

(1)引用文献2には,異常が発生してシステムの再起動を行った後に,格納されているテストの番号を用いてテストを再開する発明(【0002】,【0016】?【0020】,図1等参照)が記載されている。
引用文献1に記載の発明と引用文献2に記載の発明は,いずれも装置のテスト方法という同一の技術分野に属するものであるから,引用文献1に記載の発明に,引用文献2に記載の発明を適用し,異常が発生してシステムの再起動を行った後に,格納されている宿題番号を用いて宿題信号を出力するようにすることは,当業者が容易になし得たことである。

よって,請求項1に係る発明は,引用文献1-2に記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
また,請求項2,4-7についても同様である。

[請 求 項]3
[引用文献]1-5
リセットした回数が予め設定された回数を超えた場合,動作を停止させることは,例えば,引用文献3(第3頁左下欄第13行-右下欄第5行,第5頁右上欄第7行-右下欄第15行,第1図等参照),引用文献4(【0001】-【0005】,図3等参照),引用文献5(【0016】等参照)に記載されているように周知技術である。


拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。』

2.平成25年10月11日付け拒絶査定

平成25年10月11日付けで拒絶査定がなされたが,その内容は下記のとおりである。

『この出願については,平成25年 7月23日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
A.請求項1-2,4-7について
出願人は,意見書において以下の点を主張している。
「本願発明(請求項1に係る発明)と,引用文献1に記載の発明とを対比すると,両者の間には,次の相違点1が存在します。
[相違点1] リセット(再起動)された直後に出力する宿題番号具体的には,再起動後に出力する宿題番号が,本願発明では,記憶部に格納され,かつ,推定異常状態の要因となった宿題番号そのものであるのに対し,引用文献1に記載の発明では,宿題番号の初期値であるという点で相違します。
次に,本願発明と,引用文献2に記載の発明とを,対比すると,両者の間には,次の相違点2が存在します。[相違点2] リセット(再起動)された直後に出力する宿題番号具体的には,再起動後に出力する宿題番号が,本願発明では,記憶部に格納され,かつ,推定異常状態の要因となった宿題番号そのものであるのに対し,引用文献2に記載の発明では,推定異常状態の要因となった宿題番号の次の宿題番号であるという点で相違します。
したがって,引用文献1,2の記載に基づいて,引用文献1に記載の発明と,引用文献2に記載の発明とをどのように組み合わせたとしても,以下の監視装置(以下,「想定発明」と称す)が考えられるに過ぎません。
"想定発明"
宿題番号を取得すると,その取得した宿題番号に対応する演算を実行することで生成した回答番号を出力する制御処理装置との間で送受信した宿題番号及び回答番号に基づき制御処理装置の状態を監視する監視装置であって,
リセット(再起動)された直後に,制御処理装置に対して最初に出力する宿題番号を,
推定異常状態の要因となった宿題番号の次の宿題番号とする監視装置。
したがって,本願の請求項1に記載の発明と,想定発明との間には,上記相違点2が存在します。
すなわち,想定発明では,再起動の直後に,推定異常状態の要因となった宿題番号そのものを出力することなく,その推定異常状態の要因となった宿題番号の次の宿題番号を出力しています。このため,想定発明では,推定異常状態の要因が解消されたか否かを検証することができないという課題が生じます。」

上記主張について検討する。
引用文献1に記載の発明は,出願人が指摘しているように,再起動後に,宿題番号の初期値を出力するものであるから,正常状態に復帰した後に,当然に推定異常状態の要因となった宿題番号の宿題も行うことで,正常性をチェックするものである。このような引用文献1に記載の発明に引用文献2に記載の「異常が発生してシステムの再起動を行った後に,格納されている,異常発生の要因となった宿題番号を用いてテストを再開する」発明を適用するに際して,前回異常状態の原因となった宿題番号の宿題もチェックするようにすることに,格別の困難性を見いだすことはできない。
したがって,出願人の上記主張は,拒絶の理由を覆すのに十分であるとはいえない。

よって,請求項1に係る発明は,依然として引用文献1-2に記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
また,請求項2,4-7についても同様である。

B.請求項3について
先の拒絶理由通知書で指摘した通りである。


≪引用文献等一覧≫
1.特開2004-259137号公報
2.特開平5-53852号公報
3.特開平1-312638号公報
4.特開2000-293408号公報
5.特開2007-28118号公報』


第4 当審の判断

1.引用文献

(1-1)引用文献1に記載されている技術的事項及び引用発明

本願の出願日前に頒布され,原審の平成25年7月23日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2004-259137号公報(平成16年9月16日出願公開,以下,「引用文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0006】
本発明の目的は,マイクロコンピュータが正常に動作しているか否かを確実に監視できる安価な電子制御装置の提供にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1について〕
監視回路は,通信部と比較判定部とを有し,通信部が宿題番号をマイクロコンピュータへ送信してマイクロコンピュータからの解答を受信し,比較判定部が解答と正解答とを比較してマイクロコンピュータの機能をチェックする。
マイクロコンピュータは,アクチュエータを制御するとともに,受信した宿題番号に応じて予め定められた自己機能チェック演算を行い,その演算結果を解答として監視回路へ送信する。
【0008】
電子制御装置は,受信した宿題番号に応じてマイクロコンピュータが自己機能チェック演算を行い,その演算結果としての解答を監視回路でチェックする構成であるので,マイクロコンピュータが正常に動作しているか否かを確実に監視できる。また,マイクロコンピュータを一つしか使わないので安価である。
【0009】
〔請求項2について〕
監視回路は,宿題番号選択部と通信部と比較判定部とを有する。
監視回路の宿題番号選択部は,マイクロコンピュータに送信する宿題番号を選択する。
監視回路の通信部は,宿題番号選択部が選択した宿題番号をマイクロコンピュータへ送信し,マイクロコンピュータから解答を受信する。
【0010】
監視回路の比較判定部は,受信した解答と正解答とを比較し,両者が一致する場合には,宿題番号選択部が選択する宿題信号を更新して,次の宿題として更新された宿題番号をマイクロコンピュータに送信し,受信した解答と正解答とを比較する。
また,受信した解答と正解答とが一致しない場合には宿題番号選択部が選択する宿題番号を更新せず,先回送信した宿題番号を再選択し,通信部がその宿題番号をマイクロコンピュータに送信し,受信した解答と正解答とを比較する。
【0011】
マイクロコンピュータは,アクチュエータを制御するとともに,受信した宿題番号に応じて,予め定められた自己機能チェック演算を行い,その演算結果を解答として監視回路へ送信する。
【0012】
電子制御装置は,受信した宿題番号に応じてマイクロコンピュータが自己機能チェック演算を行い,その演算結果としての解答を監視回路の比較判定部でチェックする構成であるので,マイクロコンピュータが正常に動作しているか否かを高精度で監視できる。
【0013】
受信した解答と正解答とが一致しない場合には,同じ宿題番号を維持し,その宿題番号を再度,マイクロコンピュータに送信し,受信した解答と正解答とを比較する構成であるので,同じ条件(同じ宿題番号)でマイクロコンピュータの機能チェックが行える。
また,マイクロコンピュータを一つしか使わないので安価である。
【0014】
〔請求項3について〕
何らかの原因でマイクロコンピュータが異常状態になると,解答が送れなくなったり,誤った解答を送信する状態に至る。
このため,監視回路は,マイクロコンピュータへ宿題番号を送信してから所定時間以内に解答が受信できない場合,または,受信した解答と正解答との不一致が所定回数連続した場合には,マイクロコンピュータが異常であると判定する。
【0015】
これにより,マイクロコンピュータの暴走や停止においても確実に検出でき,且つ,α線によるソフトエラー(一時的なRAMのビット化け)等の故障でない一過性で,且つ,稀な演算エラーは異常検知しなくなるため,マイクロコンピュータの故障を確実に検出できる。」

B 「【0025】
〔請求項12について〕
監視回路は,マイクロコンピュータが異常であると判定されると,マイクロコンピュータにリセットをかけ,マイクロコンピュータを再起動させて,再初期化する構成である。このため,マイクロコンピュータを,ノイズ等による暴走等の一過性の異常から復帰させることができ,制御の中断が好ましくないシステムに好適である。」

C 「【0027】
【発明の実施の形態】
(第1実施例)
本発明の一実施例に係るABS制御用の電子制御装置A(請求項1?11,および請求項14に対応)を,図1?図3に基づいて説明する。
電子制御装置Aは,四個の車速センサのセンサ出力に基づいて油圧シリンダ(何れも図示せず)を制御するマイクロコンピュータ1と,マイクロコンピュータ1の機能を監視する監視回路2とを備える。
【0028】
マイクロコンピュータ1は,図2のフローチャート(ステップs1?ステップs12)に基づいて作動する。
マイクロコンピュータ1は,受信した宿題番号21に応じて,マイクロコンピュータ1自身の機能チェックのための予め決められた宿題演算処理(ステップs3)を行い,その演算結果に応じて,解答補正処理(ステップs4)を行い,解答番号11を算出する。
この解答番号11を解答信号10に乗せて監視回路2へ送信する。」

D 「【0031】
監視回路2は,カウンタ3(宿題番号選択部)と,シリアル通信部4(通信部)と,比較判定回路5(比較判定部)と,駆動禁止部6と,駆動禁止解除回路7とを備える。
カウンタ3は,所定の宿題番号(8ビット)の宿題信号20を作成する役目を有する。カウンタ3が出力する宿題信号20は,正解番号30(正解答)を出力するデコーダ31およびシリアル通信部4に入力される。
【0032】
マイクロコンピュータ1とシリアル通信を行うシリアル通信部4は,所定時間毎に宿題信号20をマイクロコンピュータ1へ送信し,マイクロコンピュータ1から解答信号10を受信し,8ビットの解答番号11(解答信号の解答)が比較判定回路5の比較判定器51に入力される。
【0033】
比較判定回路5は,比較判定器51とインバータ回路52とを備える。
比較判定器51は,解答番号11とデコーダ31が出力する正解番号30とを比較し,両者が一致する場合(解答番号11=正解番号30)には,インバータ回路52を介して宿題更新信号をカウンタ3に出力して,カウンタ3が出力する宿題信号20の宿題番号を一つ増やす。
【0034】
また,解答番号11と正解番号30とが一致しない場合(NG;解答番号11≠正解番号30)には,インバータ回路52を介して宿題更新信号がカウンタ3に出力されないので,同じ宿題番号の宿題信号20をカウンタ3が出力する。
【0035】
駆動禁止部6は,NG三回判別器61,更新無し判別器62,OR回路63,およびフリップフロップ回路64からなる。
NG三回判別器61は,比較判定器51が判定したNG回数が連続三回に達したか否かを判別し,NG回数が連続三回に達していると判別するとHiレベルの出力を送出する。
【0036】
更新無し判別器62は、シリアル通信部4からの解答番号更新信号に基づいて、所定時間(30ms)内に解答番号の更新が行われたか否かを判別し、更新が行われない場合にはHiレベルの出力を送出する。」

E 「【0037】
OR回路63は,NG三回判別器61や更新無し判別器62からHiレベルの出力が入力するか,またはCPUリセット信号が入力すると,マイクロコンピュータ1が異常動作状態に陥ったと判別してHiレベルの出力をフリップフロップ回路64に送出する。この場合には,フリップフロップ回路64は,マイクロコンピュータ1による油圧シリンダの制御を禁止(駆動禁止状態)する。
【0038】
なお,マイクロコンピュータ1が異常動作状態に陥った場合には,監視回路2のリセット信号送出回路(図示せず)がマイクロコンピュータ1にリセット信号を出力する。そして,リセット信号によりマイクロコンピュータ1が正常状態に復帰した場合には,監視回路2の機能チェックを行うために,宿題信号20に対して故意に誤った演算結果の解答信号10を送出して監視回路2の機能をチェックしている。」

F 「【0041】
(第2実施例)
次に,本発明の他の実施例に係るABS制御用の電子制御装置B(請求項1?5,および請求項12?14に対応)の請求項12,13の動作を図4に基づいて説明する。
【0042】
電子制御装置Bも電子制御装置Aと同様に,四個の車速センサのセンサ出力に基づいて油圧シリンダ(何れも図示せず)を制御するマイクロコンピュータ1と,マイクロコンピュータ1の機能を監視する監視回路2とを備える。
電子制御装置Bでは,第1実施例に記載した駆動禁止解除回路7の替わりに,以下のリセット回路8を設けている。そのリセット回路8はパワーONリセット回路81,リセットパルス発生回路82,カウンタ83,OR回路84,およびインバータ回路85からなり,マイクロコンピュータ1が異常と判定されると,リセット端子へ繋がる信号線80にリセット信号を出力してマイクロコンピュータ1をリセットする。
マイクロコンピュータ1は,通常,図2のフローチャート(ステップs1?ステップs12)に基づいて作動する。なお,この動作は電子制御装置Aと同じである。」

ここで,上記引用文献1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「監視回路は,通信部と比較判定部とを有し,通信部が宿題番号をマイクロコンピュータへ送信してマイクロコンピュータからの解答を受信し,比較判定部が解答と正解答とを比較してマイクロコンピュータの機能をチェックする。マイクロコンピュータは,アクチュエータを制御するとともに,受信した宿題番号に応じて予め定められた自己機能チェック演算を行い,その演算結果を解答として監視回路へ送信する。」との記載,上記Cの「マイクロコンピュータ1は,受信した宿題番号21に応じて,マイクロコンピュータ1自身の機能チェックのための予め決められた宿題演算処理(ステップs3)を行い,その演算結果に応じて,解答補正処理(ステップs4)を行い,解答番号11を算出する。この解答番号11を解答信号10に乗せて監視回路2へ送信する。」との記載からすると,監視回路はマイクロコンピュータとの間で宿題番号及び解答を送受信し,解答と正解答とを比較してマイクロコンピュータの機能をチェックしていることは明らかであるから,引用文献1には,
「アクチュエータを制御するとともに,受信した宿題番号に応じて予め定められた自己機能チェック演算を行い,その演算結果を解答として送信するマイクロコンピュータとの間で前記宿題番号及び解答を送受信し,前記解答と正解答とを比較して前記マイクロコンピュータの機能をチェックする監視回路」
が記載されていると解される。

(イ)上記Aの「監視回路は,宿題番号選択部と通信部と比較判定部とを有する。監視回路の宿題番号選択部は,マイクロコンピュータに送信する宿題番号を選択する。監視回路の通信部は,宿題番号選択部が選択した宿題番号をマイクロコンピュータへ送信し,マイクロコンピュータから解答を受信する。」との記載,上記Dの「監視回路2は,カウンタ3(宿題番号選択部)と,シリアル通信部4(通信部)と,比較判定回路5(比較判定部)と,駆動禁止部6と,駆動禁止解除回路7とを備える。カウンタ3は,所定の宿題番号(8ビット)の宿題信号20を作成する役目を有する。カウンタ3が出力する宿題信号20は,正解番号30(正解答)を出力するデコーダ31およびシリアル通信部4に入力される。 …(中略)… マイクロコンピュータ1とシリアル通信を行うシリアル通信部4は,所定時間毎に宿題信号20をマイクロコンピュータ1へ送信し,マイクロコンピュータ1から解答信号10を受信し,8ビットの解答番号11(解答信号の解答)が比較判定回路5の比較判定器51に入力される。」との記載からすると,監視回路は宿題番号選択部,通信部を備えることが読み取れるから,引用文献1には,
「宿題番号を選択する宿題番号選択部」,「宿題番号選択部が選択した宿題番号をマイクロコンピュータへ送信し,前記マイクロコンピュータから解答を受信する通信部」を備える「監視回路」
が記載されていると解される。

(ウ)上記Aの「監視回路の比較判定部は,受信した解答と正解答とを比較し,両者が一致する場合には,宿題番号選択部が選択する宿題信号を更新して,次の宿題として更新された宿題番号をマイクロコンピュータに送信し,受信した解答と正解答とを比較する。また,受信した解答と正解答とが一致しない場合には宿題番号選択部が選択する宿題番号を更新せず,先回送信した宿題番号を再選択し,通信部がその宿題番号をマイクロコンピュータに送信し,受信した解答と正解答とを比較する。」との記載,上記Dの「比較判定回路5は,比較判定器51とインバータ回路52とを備える。比較判定器51は,解答番号11とデコーダ31が出力する正解番号30とを比較し,両者が一致する場合(解答番号11=正解番号30)には,インバータ回路52を介して宿題更新信号をカウンタ3に出力して,カウンタ3が出力する宿題信号20の宿題番号を一つ増やす。 …(中略)… また,解答番号11と正解番号30とが一致しない場合(NG;解答番号11≠正解番号30)には,インバータ回路52を介して宿題更新信号がカウンタ3に出力されないので,同じ宿題番号の宿題信号20をカウンタ3が出力する。」との記載からすると,監視回路は比較判定部を備え,比較判定部は,マイクロコンピュータから受信した解答と,通信部がマイクロコンピュータに送信した宿題番号に対する正解答とを比較すると解され,また,宿題番号に対する正解答が一致する場合の宿題番号の更新について,宿題番号を一つ増やす態様が読み取れるから,引用文献1には,
「マイクロコンピュータから受信した解答と,通信部がマイクロコンピュータに送信した宿題番号に対する正解答とを比較し,両者が一致する場合には,宿題番号選択部が選択する宿題番号を一つ増やす更新をし,受信した解答と正解答とが一致しない場合には宿題番号選択部が選択する宿題番号を更新せず,先回送信した宿題番号を再選択する比較判定部」を備える「監視回路」
が記載されていると解される。

(エ)上記Aの「何らかの原因でマイクロコンピュータが異常状態になると,解答が送れなくなったり,誤った解答を送信する状態に至る。このため,監視回路は,マイクロコンピュータへ宿題番号を送信してから所定時間以内に解答が受信できない場合,または,受信した解答と正解答との不一致が所定回数連続した場合には,マイクロコンピュータが異常であると判定する。」との記載,上記Dの「NG三回判別器61は,比較判定器51が判定したNG回数が連続三回に達したか否かを判別し,NG回数が連続三回に達していると判別するとHiレベルの出力を送出する。」との記載,上記Eの「OR回路63は,NG三回判別器61や更新無し判別器62からHiレベルの出力が入力するか,またはCPUリセット信号が入力すると,マイクロコンピュータ1が異常動作状態に陥ったと判別してHiレベルの出力をフリップフロップ回路64に送出する。」からすると,監視回路がマイクロコンピュータの異常を判定するための態様として,受信した解答と正解答との不一致が所定回数連続した場合を検出することが読み取れる。
また,上記Bの「監視回路は,マイクロコンピュータが異常であると判定されると,マイクロコンピュータにリセットをかけ,マイクロコンピュータを再起動させて,再初期化する構成である。」との記載,上記Eの「なお,マイクロコンピュータ1が異常動作状態に陥った場合には,監視回路2のリセット信号送出回路(図示せず)がマイクロコンピュータ1にリセット信号を出力する。そして,リセット信号によりマイクロコンピュータ1が正常状態に復帰した場合には,監視回路2の機能チェックを行うために,宿題信号20に対して故意に誤った演算結果の解答信号10を送出して監視回路2の機能をチェックしている。」との記載,上記Fの「電子制御装置Bでは,第1実施例に記載した駆動禁止解除回路7の替わりに,以下のリセット回路8を設けている。そのリセット回路8はパワーONリセット回路81,リセットパルス発生回路82,カウンタ83,OR回路84,およびインバータ回路85からなり,マイクロコンピュータ1が異常と判定されると,リセット端子へ繋がる信号線80にリセット信号を出力してマイクロコンピュータ1をリセットする。」との記載からすると,監視回路がマイクロコンピュータの異常を判定した場合の動作の態様として,マイクロコンピュータにリセット信号を出力し,マイクロコンピュータを再起動させて,再初期化することが読み取れ,監視回路はそのための再初期化手段を備えていると言えるから,引用文献1には,
「受信した解答と正解答との不一致が所定回数連続した場合には,マイクロコンピュータが異常であると判定し,マイクロコンピュータにリセット信号を出力し,マイクロコンピュータを再起動させる再初期化手段」を備える「監視回路」
が記載されていると解される。

以上,(ア)乃至(エ)で指摘した事項から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「アクチュエータを制御するとともに,受信した宿題番号に応じて予め定められた自己機能チェック演算を行い,その演算結果を解答として送信するマイクロコンピュータとの間で前記宿題番号及び解答を送受信し,前記解答と正解答とを比較して前記マイクロコンピュータの機能をチェックする監視回路であって,
前記宿題番号を選択する宿題番号選択部と,
前記宿題番号選択部が選択した前記宿題番号を前記マイクロコンピュータへ送信し,前記マイクロコンピュータから前記解答を受信する通信部と,
前記マイクロコンピュータから受信した前記解答と,前記通信部が前記マイクロコンピュータに送信した前記宿題番号に対する前記正解答とを比較し,両者が一致する場合には,前記宿題番号選択部が選択する前記宿題番号を一つ増やす更新をし,受信した前記解答と前記正解答とが一致しない場合には前記宿題番号選択部が選択する前記宿題番号を更新せず,先回送信した前記宿題番号を再選択する比較判定部と,
受信した前記解答と前記正解答との不一致が所定回数連続した場合には,前記マイクロコンピュータが異常であると判定し,前記マイクロコンピュータにリセット信号を出力し,前記マイクロコンピュータを再起動させる再初期化手段と
を備える監視回路。」


(1-2)引用文献2に記載されている技術的事項

本願の出願日前に頒布され,原審の平成25年7月23日付けの拒絶理由通知において引用された,特開平5-53852号公報(平成5年3月5日出願公開,以下,「引用文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

G 「【0008】図3は本発明の一実施例でのテストの流れを示すフローチャートである。以下にその動作を示す。
【0009】21…構成機器識別部3が構成機器4上のIDが書き込まれているROMを読みとることで構成機器4が何であるかを確認する。
【0010】22…テストシーケンス管理部2が,テーブルを参照し,構成機器4に応じたテストを選択し,記憶する。
【0011】23…最初のテスト番号をセツトする。
24…テストT(n)を実行。
【0012】25…テスト結果をテストシーケンス管理部2に記録する。
26…次のテスト番号をセットする。
【0013】27…テストが終了したかどうかを判断し,終了していなければテストを続行する。
【0014】テストが実行されている間,検出部5はソフトウェアでは復帰不能なエラーが発生していないかどうかを監視している。図4は,検出部5の動作の流れを示すフローチャートである。以下にその動作を示す。
【0015】31…検出部5より1次クロックパルス7をCPU装置1に対して送りそれに応じてCPU装置1より発生される2次パルス8を検出する。
【0016】32…2次パルスによってCPUが正常に動作しているかどうかを診断する。
33…前記32で異常が認められれば,CPU装置1に対しハードウェア割り込み9をかけ,システムのリセットを行なう。」

H 「【0017】検出部5によってリセットがかけられたトステムは,テストシーケンス管理部2によってテストの続きを続行する。図5は同実施例中の検出部5でソフトウェアでは復帰不能なエラーが検出されてからテストを復帰させるまでの流れを示すフローチャートである。以下にその動作を示す。
【0018】41…システムを再起動する。
42…テストシーケンス管理部2においてテストシーケンスとテスト結果を参照する。
【0019】43…テストが全て終了しているかどうかを判断する。
44…テストが未終了であればエラーを起こした次のテスト番号をセットする。
【0020】そして5に戻りテストを続行する。このように本実施例によれば,構成機器識別部により構成機器の有無を判別し,テストシーケンス管理部が持つテスト項目のテーブルを参照することによって最適なテスト項目を選択実行することができる。また,テスト中にシステムが制御不可能なエラーを起こし,ソフトウェアでは復帰が不可能な状態に陥っても,検出部によりそれを検出し,システムをリセット再起動した後にテストシーケンス管理部に記録されたテストの実行記録を参照することにより,残りのテストが続行でき,効率的にテストを行なうことができる。 」

J 「【0022】
【発明の効果】以上のように本発明は,複数の構成機器の接続の有無を判断する構成機器識別部と,それぞれの機器に必要なテスト項目を記録したテーブルを用い,構成に応じたテスト項目を選択実行しながら,テスト結果を記憶するテストシーケンス管理部と,テストでエラーが発生し,ソフトウェアでは復帰が不可能な状態になっても,それを検出し,ハードウェア割り込みによって初期状態に復帰させる検出部を有し,機器構成に応じ最適なテストを行なうことができ,テスト中にソフトウェアでは復帰不能なエラーが発生してもテスト全体を停止させたままにすることなく残りのテストを再開することができる優れたテスト装置を実現できるものである。」


2.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(2-1)引用発明の「マイクロコンピュータ」は「監視回路」にチェックされることは明らかであり,「監視回路」から「受信した宿題番号に応じて予め定められた自己機能チェック演算を行い,その演算結果を解答として」「監視回路」に送信することから,引用発明の「監視回路」は本願発明の「監視装置」に対応するものであり,引用発明の「マイクロコンピュータ」は本願発明の「制御処理装置」に相当すると言える。
また,引用発明では,「宿題番号」に演算内容が予め対応付けられていることは明らかであることから,引用発明の「宿題番号」,「解答」はそれぞれ,本願発明の「宿題番号」,「回答番号」に相当すると言える。

(2-2)引用発明の「監視回路」は「マイクロコンピュータ」から受信した「解答と正解答とを比較して前記マイクロコンピュータの機能をチェックする」ところ,送信した「宿題番号」と「解答」に基づき「マイクロコンピュータ」の状態を監視するとみることができるから,引用発明の「アクチュエータを制御するとともに,受信した宿題番号に応じて予め定められた自己機能チェック演算を行い,その演算結果を解答として送信するマイクロコンピュータとの間で前記宿題番号及び解答を送受信し,前記解答と正解答とを比較して前記マイクロコンピュータの機能をチェックする監視回路」と本願発明の「監視装置」は “演算内容が予め対応付けられた宿題番号を取得すると,その取得した宿題番号に対応する演算を実行する演算実行手順,及び前記演算実行手順での演算結果を表す回答番号を生成して出力する回答出力手順とを実行する制御処理装置との間で送受信した前記宿題番号及び前記回答番号に基づき前記制御処理装置の状態を監視する監視装置”である点で一致すると言える。

(2-3)引用発明の「通信部」は宿題番号選択部が選択した宿題番号をマイクロコンピュータへ送信するところ,設定された宿題番号を出力するとみることができるから,引用発明の「通信部」は本願発明の「宿題出力手段」に相当すると言える。
また,引用発明の「比較判定部」は,「マイクロコンピュータから受信した前記解答と,前記通信部が前記マイクロコンピュータに送信した前記宿題番号に対する前記正解答とを比較」するところ,通信部が出力した宿題番号に対する正解答に基づいて,マイクロコンピュータからの解答の正誤を判定していると言えることから,引用発明の「比較判定部」と本願発明の「正誤判定手段」は,“前記宿題出力手段で出力した宿題番号に対して用意された答えに基づいて,前記制御処理装置からの回答番号の正誤を判定する正誤判定手段”である点で共通すると言える。

(2-4)さらに,引用発明の「比較判定部」は,受信した解答と送信した宿題番号に対する正解答が「一致する場合には,前記宿題番号選択部が選択する前記宿題番号を一つ増やす更新をし,受信した前記解答と前記正解答とが一致しない場合には前記宿題番号選択部が選択する前記宿題番号を更新せず,先回送信した前記宿題番号を再選択する」ところ,通信部が出力した宿題番号に対するマイクロコンピュータからの解答の正誤の判定の結果,解答が正答であれば,宿題番号を,先に出力したものとは異なる宿題番号へと,予め規定された順序に従って変更して設定し,解答が誤答であれば,宿題番号を,先に出力した宿題番号に維持して設定すると言えることから,引用発明の「比較判定部」と本願発明の「宿題更新手段」は,“前記正誤判定手段での判定の結果,前記回答番号が正答であれば,前記宿題番号を,先に出力したものとは異なる宿題番号へと,予め規定された順序に従って変更して設定し,前記回答番号が誤答であれば,前記宿題番号を,先に出力した宿題番号に維持して設定する宿題更新手段”である点で共通すると言える。

(2-5)引用発明の「再初期化手段」は「受信した前記解答と前記正解答との不一致が所定回数連続した場合には,前記マイクロコンピュータが異常であると判定し,前記マイクロコンピュータにリセット信号を出力し,前記マイクロコンピュータを再起動させる」ところ,比較判定部での判定の結果,同一の宿題番号に対する解答が,予め規定された所定回数連続して誤答である推定異常状態であれば,マイクロコンピュータを再起動するリセット信号を出力すると言えることから,引用発明の「再初期化手段」と本願発明の「リセット手段」とは,後記する点で相違するものの,“前記正誤判定手段での判定の結果,同一の宿題番号に対する回答番号が,予め規定された規定回数連続して誤答である推定異常状態であれば,前記制御処理装置を再起動するリセット信号を出力するリセット手段”である点で共通すると言える。

以上から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)

「演算内容が予め対応付けられた宿題番号を取得すると,その取得した宿題番号に対応する演算を実行する演算実行手順,及び前記演算実行手順での演算結果を表す回答番号を生成して出力する回答出力手順とを実行する制御処理装置との間で送受信した前記宿題番号及び前記回答番号に基づき前記制御処理装置の状態を監視する監視装置であって,
設定された前記宿題番号を出力する宿題出力手段と,
前記宿題出力手段で出力した宿題番号に対して用意された答えに基づいて,前記制御処理装置からの回答番号の正誤を判定する正誤判定手段と,
前記正誤判定手段での判定の結果,前記回答番号が正答であれば,前記宿題番号を,先に出力したものとは異なる宿題番号へと,予め規定された順序に従って変更して設定し,前記回答番号が誤答であれば,前記宿題番号を,先に出力した宿題番号に維持して設定する宿題更新手段と,
前記正誤判定手段での判定の結果,同一の宿題番号に対する回答番号が,予め規定された規定回数連続して誤答である推定異常状態であれば,前記制御処理装置を再起動するリセット信号を出力するリセット手段と
を備える監視装置。」


(相違点1)

リセット手段に関し,本願発明では,制御処理装置が推定異常状態であれば,「誤答に対応する宿題番号を,再起動されても記憶内容を保持する記憶部に格納する」と共に,前記制御処理装置のみならず「当該監視装置」も再起動するリセット信号を出力するのに対して,引用発明では,マイクロコンピュータが異常であると判定した際に,前記マイクロコンピュータにリセット信号を出力し,前記マイクロコンピュータを再起動させるものの,誤答に対応する宿題番号の記憶部への格納や監視回路の再起動については言及されていない点。

(相違点2)

本願発明は,「制御処理装置及び当該監視装置が再起動されると,前記記憶部に格納された宿題番号を設定して,前記宿題出力手段に出力させる番号再設定手段」を備えるのに対して,引用発明はそのような手段を備えることについて特に言及されていない点。


3.判断

上記相違点1及び相違点2について検討する。

(1)相違点1について

原審において引用された引用文献2には,上記G乃至Jの記載からすると,テスト装置において,それぞれの機器に必要なテスト項目を記憶したテーブルを用い,機器に応じたテストを選択し,記憶し,順次テスト番号をセットしてテストを実行し,テスト結果を記録し,テスト中にエラーを検出した場合には,当該機器を含むシステムを初期状態に復帰させ,テスト全体を停止させたままにすることなく残りのテストを再開する技術が記載されていると解される。
そして,引用文献2(上記G,Hを参照)には,CPU装置より発生される2次パルスによりソフトウェアでは復帰不能なエラーが発生していることを検出してシステムのリセットを行うこと,テストが未終了であればエラーを起こしたテスト番号は再度テストすることなく,次のテスト番号をセットする旨についても記載されていると解されることから,引用文献2記載の技術を引用発明のような,マイクロコンピュータから受信した解答と正解答との不一致によりマイクロコンピュータの異常状態を検出し,宿題番号を再選択して異常状態を繰り返し検出した回数に基づきマイクロコンピュータが異常であると判定する発明にそのまま適用することはできず,当業者が適宜なし得たものであるとすることはできない。
また,引用発明では,リセット信号により監視回路も再起動することについて言及が無いことから,再起動されても誤答に対応する宿題番号を保持する記憶部を監視回路に設けることを想到し得たとは言えず,仮に引用文献2記載の技術を引用発明に適用できたとしても,本願発明の相違点1に係る構成とすることはできないものである。

(2)相違点2について

原審において引用された引用文献2には,上記(1)で検討のとおり,テスト装置において,テストが未終了であればエラーを起こしたテスト番号は再度テストすることなく,次のテスト番号をセットする旨について記載されていると解されることから,引用文献2記載の技術を引用発明のような,宿題番号を再選択して異常状態を繰り返し検出した回数に基づきマイクロコンピュータが異常であると判定する発明にそのまま適用することはできず,当業者が適宜なし得たものであるとすることはできない。
また,引用文献2に記載の技術は,エラーを起こしたテスト番号の次の番号をセットして,テストを再開するものであるから,仮に引用文献2記載の技術を引用発明に適用できたとしても,誤答に対応する宿題番号の次の番号をマイクロコンピュータに出力するにとどまり,本願発明の相違点2に係る構成とすることはできないものである。

(3)小結

上記で検討したごとく,引用発明に引用文献2に記載の技術を適用することは,当業者が適宜なし得たものであるとすることはできず,しかも,仮に適用できたとしても,本願発明の相違点1及び相違点2に係る構成とすることはできないものである。


4.まとめ

以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明は,引用発明,引用文献2に記載の技術的事項及び当該技術分野の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないものである。


5.請求項2乃至7に係る発明について

請求項2乃至7は請求項1を直接又は間接に引用して記載したものであるから,上記3.?4.で示した理由により当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないものである。


第5 むすび

以上のとおり,本願の請求項1乃至7に係る発明は,引用発明,引用文献2に記載の技術的事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-12-11 
出願番号 特願2010-219409(P2010-219409)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大塚 俊範  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 辻本 泰隆
木村 貴俊
発明の名称 監視装置、及び電子制御システム  
代理人 名古屋国際特許業務法人  

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