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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1294785
審判番号 不服2012-19020  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-28 
確定日 2014-12-05 
事件の表示 特願2008-162567「溶解性または経口吸収性の改善された組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月20日出願公開、特開2008-280352〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2001年11月30日(優先権主張 2000年12月1日 2001年4月25日)を国際出願日とする特願2002-545676号の一部を平成20年6月20日に新たな特許出願としたものであって、平成23年10月21日付けで拒絶理由が通知され、同年12月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年6月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年12月5日付けで前置報告がなされ、平成26年1月9日付けで審尋がなされ、同年3月20日に回答書が提出されたが、同年6月26日付けで拒絶理由が通知され、同年8月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明は、平成26年8月26日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された発明(以下、「本願発明1」という。)であり、以下のとおりのものである。

「難水溶性薬物を、界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム、ならびに
ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルピロリドンの中から選ばれる1種または2種以上である親水性高分子と共に、
難水溶性薬物:界面活性剤:親水性高分子の重量比を1:0.5?20:0.1?10の割合にして、水を滴下しながら湿式造粒する工程を含むことを特徴とする難水溶性薬物、ラウリル硫酸ナトリウムおよび親水性高分子を含む組成物の製造法。」


第3.当審の拒絶理由
当審の拒絶の理由は、要するに、2)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1:特開昭61-8号公報

というものを含むものである。


第4.当審の判断
1.刊行物の記載事項
本願の優先日前に頒布された特開昭61-8号公報(当審における平成26年6月26日付け拒絶理由通知における刊行物A。以下、「刊行物A」という。)には、以下の事項が記載されている。

A1「
[実施例]
実施例1
第1表の組成に従って核層を製造した。即ちニフェジピン、乳糖、結晶セルロース、ポリアクリル酸及びラウリル硫酸ナトリウムを混合したものと、5%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液にポリソルベート80とステアリン酸ポリオキシル40を溶解したものを、練合法により造粒し乾燥する(第1造粒物)
・・・

」(4頁右上欄5行-右下欄末行)

2.刊行物Aに記載された発明
摘示記載Aの記載からみて、刊行物Aには、下記発明(以下、「刊行物A発明」という。)が記載されているといえる。

ニフェジピン10.0mg、乳糖12.0mg、結晶セルロース10.0mg、ポリアクリル酸0.1mg及びラウリル硫酸ナトリウム5.0mgを混合したものと、5%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(固形分1.0mg)にポリソルベート800.1mgとステアリン酸ポリオキシル400.2mgを溶解したものを、練合法により造粒し乾燥した第1造粒物の製造方法。

3.対比・判断
A.本願発明と刊行物A発明との対比
刊行物A発明における「ニフェジピン」、「ラウリル硫酸ナトリウム」、「ヒドロキシプロピルセルロース」及び「第1造粒物」は、本願発明における「難水溶性薬物」、「界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム」、「ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルピロリドンの中から選ばれる1種または2種以上である親水性高分子」及び「組成物」に相当する。

また、刊行物A発明における「ニフェジピン」、「ラウリル硫酸ナトリウム」及び「ヒドロキシプロピルセルロース」の含有量はそれぞれ「10.0mg」、「5.0mg」「1.0mg」であることから、ニフェジピンを基準としたそれぞれの含有割合は、ニフェジピン:ラウリル硫酸ナトリウム:ヒドロキシプロピルセルロース=1:0.5:0.1となり、本願発明における「難水溶性薬物:界面活性剤:親水性高分子と重複する。

さらに、刊行物A発明における「練合法」は湿式造粒の一つであることが明らかであるから、本願発明における「湿式造立する工程を含む」に相当する。

以上をまとめると、本願発明と刊行物A発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
難水溶性薬物を、界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム、ならびに
ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルピロリドンの中から選ばれる1種または2種以上である親水性高分子と共に、
難水溶性薬物:界面活性剤:親水性高分子の重量比を1:0.5?20:0.1?10の割合にして、湿式造粒する工程を含むことを特徴とする難水溶性薬物、ラウリル硫酸ナトリウムおよび親水性高分子を含む組成物の製造法。

〔相違点〕
本願発明は、湿式造粒する工程において「水を滴下しながら」と特定しているのに対し、刊行物A発明は、上記特定をしていない点。

B.相違点について
造粒する際に、結合液(精製水等)を滴下して造粒することは、例えば特開平10-298062号公報(段落【0027】、実施例)、特開平7-277990号公報(実施例)、特開2000-198736号公報(実施例)、特開昭62-269739号公報(3頁右上欄)に記載のとおり、本願優先日前に通常行われていることである。このように、医薬製剤の湿式造粒法において、水を滴下しながら造粒する手法は、汎用されている一手法であることから、刊行物Aにかかる手法について明記されていないとしても、同じく医薬製剤の湿式造粒法において汎用されている水を滴下しながら造粒する手法を、刊行物A発明に対して適用することは当業者が容易に想到することである。
そして、本願発明において、「水を滴下しながら」湿式造粒する手法を採用することにより格別予想外の効果が奏されたものとすることもできない。
4.請求人の主張
請求人は、平成26年8月26日付け意見書中において、「水を滴下しながら湿式造粒」した実施例は、比較例に比べ高い溶解性を有する固体組成物が得られることが本願明細書において確認されている旨の主張をしている。 しかし、本願明細書に記載された比較例は乾式造粒法により製造する手法であるのに対して、刊行物A発明は湿式造粒法に関するものであるから、本願明細書の実施例および比較例の対比によって、刊行物A発明と比較した場合の本願発明の効果が示されているとはいえない。
よって、上記請求人の主張を採用することはできない。


第4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、刊行物Aに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2014-09-26 
結審通知日 2014-09-30 
審決日 2014-10-20 
出願番号 特願2008-162567(P2008-162567)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 清子  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 加賀 直人
小川 慶子
発明の名称 溶解性または経口吸収性の改善された組成物  

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