• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A63F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1294801
異議申立番号 異議2003-73493  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2015-01-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-12-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3441803号「遊技機等のコイン選別装置」の請求項1乃至6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3441803号の請求項1乃至6に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3441803号の請求項1乃至6に係る発明は、平成6年7月19日に特願平6-187880号として特許出願されたものであって、平成15年6月20日に設定登録がなされ、その後、佐藤亮より特許異議の申立てがなされ、平成17年6月17日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年8月29日付けで訂正請求がなされたものである。
第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容(下線部訂正箇所)
i.訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載を以下のように訂正する。
【請求項1】投入されたコインの中から適正なコインを選別し、不適正なコインを排出する遊技機等のコイン選別装置において、
基板、該基板の一方の面に取り付けられた押し板、及び前記基板において前記押し板を取り付けた面に設置された案内部材により、適正な外径のコインがその自重によって通過できるように形成されたコイン通路と、
前記コイン通路に対して移動可能でかつ、該コイン通路を通るコインの厚み方向の間隔として規定される、ガイド端と前記コイン通路の通路面との間隔を変更可能に設置され、前記適正な外径のコインが入ってきた場合には該適正な外径のコインの端が拘束されるとともに、前記適正な外径のコインよりも小径のコインが入ってきた場合には該小径のコインの上端が引っ掛からないように設置された可動ガイド板と、
前記コイン通路における前記可動ガイド板が存在することにより前記適正な外径のコインを拘束する位置で先端部が自ら出没可能に設けられ、前記可動ガイド板が前記コインの厚み方向の間隔を前記適正な外径のコインの厚さより僅かに大きくとる位置にあるコイン受付可能状態、及び前記可動ガイド板が前記コインの厚み方向の間隔を前記適正な外径のコインの厚さよりも大きくとる位置にあるコイン受付不可能状態のいずれの場合でも、その先端部が突出するように付勢され、前記適正な外径のコインが前記コイン通路を通過する場合には該コインに押されて引っ込むような力に定められている第1突起部材とを備えたことを特徴とするコイン選別装置。
【請求項2】請求項1記載のコイン選別装置において、前記可動ガイド板と連動して少なくとも先端部が、前記第1突起部材を前記通路面から没して前記適正な外径のコインがその自重によって前記第1突起部材を通過した後の前記コイン通路の通路面から出没可能に設けられ、その先端部が前記コイン通路の通路面から突出しないとき、前記第1突起部材を通過した前記適正な外径のコインの通過を可能にし、その先端部が前記コイン通路の通路面から突出したときは全てのコインを前記コイン通路の途中で排出させる第2突起部材を備えたコイン選別装置。
【請求項3】請求項2記載のコイン選別装置において、前記第1突起部材と前記第2突起部材の各々の先端部には、コインの移動方向に傾斜した円弧状の斜面が形成されているコイン選別装置。
【請求項4】請求項1記載のコイン選別装置において、前記第1突起部材の先端部が前記コイン通路の通路面から出没したとき、その動きを検出して検出信号を出力する第1検出器を備えたコイン選別装置。
【請求項5】請求項4記載のコイン選別装置において、第2検出器として、その先端部が前記コイン通路の通路面から突出したときは全てのコインを前記コイン通路の途中で排出させる第2突起部材を通過した後の前記コイン通路の出口近傍でコインの移動方向に互いに近接して配置された複数の検出器であり、前記コイン通路の通路面に配置され、前記コインの通過を検出して検出信号を出力する1個目の検出器と、該1個目の検出器を前記適正な外径のコインがその自重によって通過した後の前記コイン通路の通路面に配置され、前記コインの通過を検出して検出信号を出力する2個目の検出器と、を含んで構成される複数の検出器を配置したコイン選別装置。
【請求項6】請求項1記載のコイン選別装置において、前記押し板は、前記コイン通路を通るコインの厚み方向の間隔として規定される前記基板の一方の面上に形成された前記コイン通路の通路面と前記押し板との間隔が移動可能で、操作者が前記遊技機のコイン返却ボタンを押していない場合には、前記コイン通路を通るコインの厚み方向の間隔を一定に保持するように取り付けられているが、前記操作者が前記コイン返却ボタンを押す場合には、該コイン返却ボタンと連動して、前記コイン通路を通るコインの厚み方向の間隔が大きく開くように取り付けられているコイン選別装置。
ii.訂正事項b
特許明細書の段落【0060】に記載の、
「このとき、第2検出器として通路面20に設けられた2個のフォトセンサ26,27により、コインの通過が検出される。」の部分を「このとき、第2検出器として通路面20の出口32の近傍に設けられた2個のフォトセンサ26,27により、コインの通過が検出される。」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
上記訂正事項aは、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1乃至6を限定及び明確化するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、上記訂正事項bは、前記特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるため、発明の詳細な説明の記載を訂正する、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、これらの訂正事項a及びbは、特許明細書及び図面に記載された事項の範囲内において訂正するものであるから新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
3.まとめ
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
第3.特許異議申立てについての判断
1.本件発明
特許第3441803号の請求項1に係る発明は、訂正が認められるから、本件の訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1(以下、「本件発明」という。)に記載された事項(前記第2.1.i.参照)により特定されるものである。
2.特許異議申立て理由の概要〔特許法第29条第2項違反〕
異議申立人は、下記の証拠方法を提出し、本件発明は、刊行物である下記の甲第1号証乃至甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。
甲第1号証:実願昭62-16581号(実開昭63-126977号)のマイクロフィルム
甲第2号証:実願昭59-54748号(実開昭60-170881号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願昭59-54749号(実開昭60-170882号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実願昭63-72656号(実開平1-175380号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実願昭54-133401号(実開昭56-53262号)のマイクロフィルム
甲第6号証:実願昭56-32186号(実開昭57-148273号)のマイクロフィルム
甲第7号証:実願昭56-133385号(実開昭58-39682号)のマイクロフィルム
甲第8号証:実願昭60-19594号(実開昭61-138083号)のマイクロフィルム
甲第9号証:特開平5-168744号公報
甲第10号証:実願昭54-137040号(実開昭56-53255号)のマイクロフィルム
3.取消理由の概要
当審が平成17年6月17日付けで通知した取消理由1乃至3は、以下のとおりのものである。
(1)取消理由1〔特許法第29条第2項違反〕
異議申立人の上記特許異議申立て理由を踏襲したものである。
なお、同文中、「甲第1号証」乃至「甲第10号証」とあるのは、それぞれ、「第1引用例」乃至「第10引用例」と読み替える。
(2)取消理由2〔特許法第29条第2項違反〕
本件発明1乃至6は、刊行物である下記の第1、4、9、11引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1乃至6の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
第1引用例:実願昭62-16581号(実開昭63-126977号)のマイクロフィルム(甲第1号証)
第4引用例:実願昭63-72656号(実開平1-175380号)のマイクロフィルム(甲第4号証)
第9引用例:特開平5-168744号公報(甲第9号証)
第11引用例:特開平4-253883号公報
(3)取消理由3〔特許法第36条第5項第1、2号違反〕
本件発明1乃至6は、下記の点で、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではなく、また、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものでもないから、その特許は、特許法第36条第5項第1、2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
i.請求項1においてコインの厚み方向の間隔とは、可動ガイド板との関係で具体的にどことどことの間隔なのか不明である。
ii.請求項1において、「適正コイン」とは何(形状、材質等)を意味するのか、「拘束する」とは具体的にどのような状態を示すのか、「適正コインを拘束する」対象を適正コインのみとするための可動ガイド板の構成、「拘束する位置」とは具体的にどのような位置を意味するのか、不明である。
iii.請求項1において、「出没可能に設けられ」とは、どのようにして出没可能とするのか発明の構成が不明である。
iv.請求項1において、「通常…付勢されている」とは、具体的にどのような状態であるのか不明である。
v.請求項1において、「第1突起部材」の作用目的が不明である。
vi.請求項2において、「適正コインの通過を可能とし」とは、「適正コイン」のみの通過を可能とするための可動ガイド板の構成等が不明である。
vii.請求項5において、「コイン通路の出口近傍」とはどこを示すのか具体的でなく不明瞭である。
viii.請求項5において、「第2検出器」について第1検出器との役割分担及び存在意義が不明である。
ix.請求項6において、「押し板」に係るコインの厚み方向の間隔とは、押し板との関係で具体的にどことどことの間隔なのか不明である。
x.請求項6において、「通常は…保持する」とは具体的にどのような状態であるのか不明である。
4.異議申立て理由〔特許法第29条第2項違反〕について
異議申立人の特許異議申立て理由である特許法第29条第2項違反について、本件発明1乃至6と甲第1号証乃至甲第10号証に記載された発明とを対比し判断する。
(1)甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明
i.甲第1号証に記載された発明
異議申立人が提出した甲第1号証〔実願昭62-16581号(実開昭63-126977号)のマイクロフィルム〕には、以下の事項が記載されている。
「本考案は硬貨選別装置に係り、更に詳しくは軽量疑似硬貨を確実に排除し、硬貨詰りを防止するようにしたものである。」(第1頁第15?17行)、
「本考案に係る硬貨選別装置は上述した問題点を解決すべくなされたもので、硬貨選別軌道内に通常突出して軽量疑似硬貨の通過を阻止して硬貨返却軌道へ返却し、正規硬貨の通過時に前記軌道から退出する選別レバーを設け」(第2頁第17行?第3頁第1行)、
「これらの図において、基板1は…表面側に配設された返却動作に連動して開閉する返却フラッパ2と共働して硬貨選別軌道3および蓄積軌道4を形成している。」(第3頁第16?20行)、
「前記基板1の表面には第3図に示すように硬貨選別軌道3の終端部から硬貨蓄積軌道4の終端にまで延在する蓄積レール12が回動自在に配設されている。この蓄積レール12は前記基板1の表面に設けられた凹陥部13内に出没自在に配設されるもので、通常はその上端部が前記凹陥部13から突出することにより、上面12aが硬貨の転動および蓄積軌道面(硬貨転動軌道面)を構成し」(第4頁第10?18行)、
「前記硬貨選別軌道3には硬貨投入口20より投入された硬貨11の外径,厚みおよび材質を選別し、その正偽を判別する判別部21と、互いに共働して硬貨の連続投入を防止する第1および第2ゲート23,24が配設されている。前記判別部21は、前記基板1の裏面に配設された一対の電磁コイル(図示せず)と、これら一対の電磁コイルに対応して前記返却フラッパ2に配設された一対の電磁コイル25a,25bとで構成され、これらコイル間を硬貨11が通過する際、該コイル内に発生する誘導起電力により硬貨11の正偽を判別し、正規硬貨と判別した際正貨信号を後述する動作マグネット30に送出し、前記第1および第2ゲート23,24を動作させるように構成されている。」(第5頁第13行?第6頁第7行)、
「一方、前記第2ゲート24は前記第1ゲート23の後方に所定距離離間して配設された選別レバー26と、この選別レバー26に対応して前記返却フラッパ2に形成された選別窓27とで特徴づけられるもので、選別レバー26は前記基板1の裏面側に上端を回動自在に枢支されて配設され、その先端部26aが前記基板1に形成されたレバー用孔28から前記硬貨選別軌道3内に通常突出して該軌道3を塞いでいる。そして、前記先端部26aは硬貨の前記選別窓27からの返却を容易にするため第2図から明らかなように硬貨蓄積軌道4側に傾斜している。」(第6頁第17行?第7頁第8行)
「すると、アーマチュア50が吸引されて第2図時計方向に回動されるため、前記第2のレバー42はコロ51に押圧されてばね48に抗し軸47を回動中心として反時計方向に回動し、前記第1ゲート23および選別レバー26を元の状態に復帰させ、硬貨選別軌道3内にそれぞれ突出させる。」(第10頁第18行?第11頁第4行)、
「一方、疑似硬貨が投入された場合には、判別部21から動作マグネット30に対して正貨信号が送られてこないため、第1ゲート23および選別レバー26は硬貨選別軌道3内に突出した状態を維持し、したがって第1ゲート23を通過した疑似硬貨は前記選別レバー26の先端部26aに当って前記返却フラツパ2の選別窓27より前記硬貨返却軌道8に落下し、返却口18へと返却される。」(第11頁第13?20行)、
「ここで、正規硬貨11であっても前記選別レバー26部を通過する際、前記選別窓27から返却軌道8へ落下する虞れがある。そこで、前記選別窓27には前記選別フラッパ60が配設されている。この選別フラッパ60は前記返却フラッパ2に対して開閉自在に配設され、かつ該フラッパ2を前記基板1側に付勢しているばね61(第1図参照)により返却フラッパ2からの離脱を防止されている。」(第13頁第19行?第14頁第7行)、
「このように、前記選別フラッパ60は通常前記選別窓27を開放状態に保持しているので、疑似硬貨が投入された場合には、前記選別レバー26に当接して前記選別窓27より返却軌道8へ確実に落下させることができる。一方、投入された硬貨が正規硬貨と判定された場合には、前述した通り前記動作マグネット30の励磁により前記第1および第2のレバー35,42が連動して作動し、前記第1ゲート23および選別レバー26を前記硬貨選別軌道3から退出させ、同時に前記ロックレバー65も前記第1のレバー35により第3図時計方向に回動され、水平アーム65aで選別フラッパ60のレバー部60aを押し上げる。この結果、前記選別フラッパ60は第3図反時計方向に回動されて鎖線で示す如く前記選別窓27、換言すれば返却軌道8を閉塞し、正規硬貨の前記選別窓27からの前記返却軌道8への落下を防止する。」(第15頁第3?19行)、
「なお、上記実施例は蓄積レール12を基板1の凹陥部13に対して出没自在に配設したが、本考案はこれに何ら特定されるものではなく、基板1もしくは返却フラツパ2に固定されるものであってもよいことは勿論である。」(第16頁第6?10行)。
以上の記載及び第1図乃至第4図によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「投入された硬貨の外径,厚みおよび材質を選別し、その正偽を判別し、疑似硬貨を返却する硬貨選別装置において、基板1、該基板1の表面に配設された返却動作に連動して開閉する返却フラッパ2、及び前記基板1において前記返却フラッパ2を取り付けた面に配設された蓄積レール12により、正規硬貨がその自重によって通過できるように形成された硬貨選別軌道3及び蓄積軌道4と、硬貨選別軌道3に設けられた硬貨を選別し正偽を判別する判別部21と、前記返却フラッパ2に対して回動自在に設置され、正規硬貨と判定された場合に選別窓27を閉塞状態にして該正規硬貨の落下を防止し、疑似硬貨と判定された場合に選別窓27を開放状態にして該疑似硬貨が返却軌道8へ落下する位置をとる選別フラッパ60と、選別フラッパ60に対応して形成され、選別フラッパ60と連動して作動し、硬貨選別軌道3内に先端部26aが突出状態又は退出状態に切換可能に設けられ、先端部26aは、硬貨の返却を容易にするため硬貨蓄積軌道4側に傾斜しており、前記判別部21により正規硬貨と判定された場合には硬貨選別軌道3から退出状態にさせて該正規硬貨を通過させ、疑似硬貨と判定された場合には硬貨選別軌道3内に突出状態にさせて該疑似硬貨の通過を阻止して硬貨返却軌道へ落下させる選別レバー26と、を備えた硬貨選別装置。」
ii.甲第4号証に記載された発明
異議申立人が提出した甲第4号証〔実願昭63-72656号(実開平1-175380号)のマイクロフィルム〕には、以下の事項が記載されている。
「コイン検選構造は、投入口1と、この投入口1に連通するコイン通路2と、このコイン通路2の片側(一方側)に設けられ、コイン通路2へ突出するバネレバー3を備えたマイクロスイッチ4と、コイン通路2の他方側に設けられ、バネレバー3に対向する異種硬貨逃がし孔23とから成る。」(第5頁第11?16行)、
「上記コイン通路2は、投入コインAの厚みに対応する距離を開いた一対の対向板(フレーム)21、21aにより構成されている。一方の対向板(コイン通路2の片側)21には、後述するレバー出没用孔22を開口し、他方の対向板21aにはこのレバー出没用孔22に対応する位置に、異種硬貨逃がし孔23を開口している。この異種硬貨逃がし孔23は、正硬貨(100円硬貨)径よりも小さく設定、つまり正硬貨が逃がし孔23より外方へ脱落しないように、且つ異種硬貨(正硬貨径より小さい50円硬貨、5円硬貨、1円硬貨)Bを脱落させるように設定してある。前記マイクロスイッチ4は、上記コイン通路2を構成する一方の対向板21の外側に配備され、可動ボタン41に対応する位置にバネレバー3を備えている。このバネレバー3は、屈曲先端部31を有し、この屈曲先端部31を上記レバー出没用孔22に臨出させ、他方の対向板21a側に附勢されている。バネレバー(屈曲先端部31)3は、常態においてコイン通路2に突出している。正硬貨(100円硬貨)Cが、投入された場合、このレバー(屈曲先端部31)3が正硬貨Cにより押圧され、可動ボタン41側へ後退することで、マイクロスイッチ4がONするようになっている。」(第6頁第3行?第7頁第6行)、
「50円硬貨Bは、この逃がし孔23径より小さいため、上記バネレバー3により外方向へ押され、逃がし孔23より脱落する。」(第8頁第10行?第12行)、
「100円硬貨Cは逃がし孔23径より大きく設定してある。従って、逃がし孔23より脱落することがなく、対向板21aに当接した状態でそのまま降下する。この時、バネレバー3をバネ附勢力に抗して可動ボタン41側へ後退させる。これにより、マイクロスイッチ4の可動ボタン41が後退し、マイクロスイッチ4内で可動接点が固定接点(図示せず)に接触することで、正硬貨Cの検出が実行される。更に、正硬貨Cがレバー3を通過し、コイン収容ボックス5方向へ降下する時、レバー3はバネ力でコイン通路2に突出復帰する。以後、投入されるコインは同様に処理され、正硬貨Cの3回の検出が行われた時、マイクロスイッチ4の電気信号の例えばカウンタによるカウントアップ信号によりテレビの電源がONする。」(第8頁第19行?第9頁第13行)。
以上の記載及び第1図によれば、甲第4号証には、以下の発明が記載されていると認められる。
「投入コインAの厚みに対応する距離を開いた一対の対向板21、21aにより構成されるコイン通路2と、該コイン通路2を構成する一方の対向板21の開口に突出復帰可能に設けられ、バネ力でコイン通路2へ突出する屈曲先端部31を有するバネレバー3と、前記バネレバー3に対向する他方の対向板21aに開口し、正硬貨径よりも小さく設定される異種硬貨逃がし孔23とから成り、前記異種硬貨逃がし孔23の径より小さい異種硬貨を前記バネレバー3により外方向に押してコイン通路2から脱落させ、逃がし孔23の径より大きい正硬貨により前記バネレバー3を押圧して可動ボタン41側へ後退させることで前記対向板21aに当接した状態でコイン通路2を通過させるとともに、前記バネレバー3が押圧されることにより正硬貨の検出を行い電気信号を出力するマイクロスイッチ4を備えたコイン検選構造。」
(2)本件発明1について
i.本件発明1と引用発明との対比
本件発明1と引用発明(甲第1号証に記載された発明)とを対比すると、引用発明における「基板1」、「返却フラッパ2」、「蓄積レール12」、「硬貨選別軌道3及び蓄積軌道4」、「硬貨選別装置」は、本件発明1における「基板」、「押し板」、「案内部材」、「コイン通路」、「遊技機等のコイン選別装置」にそれぞれ相当する。
また、引用発明における「正規硬貨」及び「疑似硬貨」は、本件発明1における「適正な外径のコイン」及び「小径のコイン」と対比して、それぞれ「適正なコイン」及び「不適正なコイン」として共通する。
そして、引用発明における「選別フラッパ60」は、蓄積軌道4に対して硬貨の厚み方向の間隔を変更可能であり、正規硬貨と判定された場合に選別窓27を閉塞状態にして該正規硬貨の落下を防止する位置をとり、疑似硬貨と判定された場合に選別窓27を開放状態にして該疑似硬貨が返却軌道8へ落下する位置をとるものであるから、本件発明1における「可動ガイド板」と対比して、両者は、コイン通路に対して移動可能でかつ、該コイン通路を通るコインの厚み方向の間隔を変更可能に設置され、適正なコインが入ってきた場合には該適正なコインが拘束されるとともに、不適正なコインが入ってきた場合には該不適正なコインが拘束されないように設置された「可動板」として共通する。
さらに、引用発明における「選別レバー26」は、選別フラッパ60と連動して作動し、正規硬貨と判定された場合には選別フラッパ60が選別窓27を閉塞状態にするとともに硬貨選別軌道3から該選別レバー26を退出させて該正規硬貨を通過させ、疑似硬貨と判定された場合には選別フラッパ60が選別窓27を開放状態にするとともに該選別レバー26を硬貨選別軌道3内に突出させて該疑似硬貨の通過を阻止するものであるから、本件発明1における「第1突起部材」と対比して、両者は、可動板が適正なコインを拘束する位置で先端部が出没可能に設けられ、前記可動板が適正のコインの厚さより僅かに大きくとる位置にあるコイン受付可能状態において、前記適正なコインが前記コイン通路を通過する場合に、その先端部が引っ込み、前記可動板が前記コインの厚み方向の間隔を前記適正なコインの厚さよりも大きくとる位置にあるコイン受付不可能状態において、その先端部が突出するように定められている「選別突起部材」として共通する。
そうすると、本件発明1と引用発明は、下記の点で一致並びに相違するものと認められる。
一致点.「投入されたコインの中から適正なコインを選別し、不適正なコインを排出する遊技機等のコイン選別装置において、
基板、該基板の一方の面に取り付けられた押し板、及び前記基板において前記押し板を取り付けた面に設置された案内部材により、適正なコインがその自重によって通過できるように形成されたコイン通路と、
前記コイン通路に対して移動可能でかつ、該コイン通路を通るコインの厚み方向の間隔を変更可能に設置され、前記適正なコインが入ってきた場合には該適正なコインが拘束されるとともに、不適正なコインが入ってきた場合には該不適正なコインが拘束されないように設置された可動板と、
前記コイン通路における前記可動板が存在することにより前記適正なコインを拘束する位置で先端部が出没可能に設けられ、前記可動板が前記コインの厚み方向の間隔を前記適正のコインの厚さより僅かに大きくとる位置にあるコイン受付可能状態において、前記適正なコインが前記コイン通路を通過する場合に、その先端部が引っ込み、前記可動板が前記コインの厚み方向の間隔を前記適正なコインの厚さよりも大きくとる位置にあるコイン受付不可能状態において、その先端部が突出するように定められている選別突起部材とを備えたコイン選別装置。」
相違点A.可動板として、本件発明1は、「適正な外径のコインが入ってきた場合には該適正な外径のコインの端が拘束されるとともに、適正な外径のコインよりも小径のコインが入ってきた場合には該小径のコインの上端が引っ掛からないように設置された可動ガイド板」を備えているのに対し、引用発明は、選別窓27を閉塞状態にしたときに正規硬貨の落下を防止する位置をとり、選別窓27を開放状態にしたときに疑似硬貨が返却軌道8へ落下する位置をとるように設置された選別フラッパ60」を備える点。
相違点B.選別突起部材として、本件発明1は、「先端部が自ら出没可能に設けられ、コイン受付可能状態及びコイン受付不可能状態のいずれの場合でも、その先端部が突出するように付勢され、適正な外径のコインがコイン通路を通過する場合には該コインに押されて引っ込むような力に定められている第1突起部材」を備えているのに対し、引用発明は、「先端部が突出状態又は退出状態に切換可能に設けられ、正規硬貨と判定された場合にはコイン通路から退出状態にさせて該正規硬貨を通過させ、疑似硬貨と判定された場合にはコイン通路内に突出状態にさせて該疑似硬貨の通過を阻止する選別レバー26」を備える点。
ii.相違点の検討
前記相違点A、Bについて甲第4号証に記載された発明と対比検討する。
まず、前記相違点Aについて、甲第4号証に記載された発明は、投入コインAの厚みに対応する距離を開いた一対の対向板21、21aによりコイン通路2を構成し、その対向板21aに、正硬貨径よりも小さく設定される異種硬貨逃がし孔23が開口されるものであるから、前記「対向板21a」は、本件発明1における「可動ガイド板」と対比して、両者は、「ガイド端とコイン通路の通路面との間隔がコイン通路を通るコインの厚み方向の間隔として規定され、適正な外径のコインが入ってきた場合には該適正な外径のコインの端が拘束されるとともに、適正な外径のコインよりも小径のコインが入ってきた場合には該小径のコインの上端が引っ掛からないように設置されたガイド板」として共通し、本件発明1は、「コイン通路に対して移動可能でかつ、ガイド端と前記コイン通路の通路面との間隔を変更可能に設置された可動ガイド板」であるのに対し、甲第4号証に記載された発明は、「コイン通路に対して移動不可能でかつ、ガイド端と前記コイン通路の通路面との間隔を変更不可能に設置された固定の対向板21a」である点で相違する。
また、前記相違点Bについて、甲第4号証に記載された発明は、コイン通路2を構成する一方の対向板21の開口に突出復帰可能に設けられ、バネ力でコイン通路2へ突出する屈曲先端部31を有するバネレバー3を備え、径の小さい異種硬貨を前記バネレバー3により外方向に押してコイン通路2から脱落させ、径の大きい正硬貨をこれにより前記バネレバー3を押圧して後退させることで対向板21aに当接した状態でコイン通路2を通過させるものであるから、前記「バネレバー3」は、本件発明1における「第1突起部材」と対比して、両者は、「コイン通路におけるガイド板が存在することにより適正な外径のコインを拘束する位置で先端部が自ら出没可能に設けられ、その先端部が突出するように付勢され、前記適正な外径のコインがコイン通路を通過する場合には該コインに押されて引っ込むような力に定められている突起部材」として共通し、該「突起部材」と共働する「ガイド板」として、本件発明1は、「コインの厚み方向の間隔を適正な外径のコインの厚さより僅かに大きくとる位置にあるコイン受付可能状態、及びコインの厚み方向の間隔を適正な外径のコインの厚さよりも大きくとる位置にあるコイン受付不可能状態のいずれかをとる可動ガイド板」であるのに対し、甲第4号証に記載された発明は、「コインの厚み方向の間隔を適正な外径のコインの厚さより僅かに大きくとる位置にあるコイン受付可能状態のみをとる固定の対向板21a」である点で相違する。
しかして、引用発明に甲第4号証に記載された発明を適用しても、前記相違点A、Bに係る本件発明1の特徴である、「先端部が自ら出没可能に設けられ、その先端部が突出するように付勢され、適正な外径のコインがコイン通路を通過する場合には該コインに押されて引っ込むような力に定められている第1突起部材」と共働する、「コイン通路に対して移動可能でかつ、ガイド端と前記コイン通路の通路面との間隔を変更可能に設置され、コインの厚み方向の間隔を適正な外径のコインの厚さより僅かに大きくとる位置にあるコイン受付可能状態、及びコインの厚み方向の間隔を適正な外径のコインの厚さよりも大きくとる位置にあるコイン受付不可能状態のいずれかをとる可動ガイド板」の構成までは、引用発明を含め前記甲第1号証乃至甲第10号証のいずれの記載からも導くことができない。
そして、本件発明1は、前記構成により、ガイド端との間隔を適正な外径のコインの厚さより僅かに大きくとるコイン受付可能状態では適正な外径のコインのみを通過させるとともに小径のコインを排出させ、また、ガイド端との間隔を適正な外径のコインの厚さより大きくとるコイン受付不可能状態では適性あるいは不適正を問わずすべてのコインを排出させるという、異なる2つのコイン選別機能をもって切換可能であるという作用効果を奏するものであることが明らかである。
よって、本件発明1は、甲第1号証乃至甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、本件発明1の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(3)本件発明2乃至6について
本件発明2乃至6は、いずれも本件発明1の構成を具備し、これを更に限定した発明である。
したがって、前記(2)に記載したのと同様の理由で、本件発明2乃至6は、甲第1号証乃至甲第10号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、本件発明2乃至6の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
5.当審取消理由1〔特許法第29条第2項違反〕について
当審取消理由1は、異議申立人の特許異議申立て理由を踏襲したものであるため、その判断としても前記4.に記載したのと同様の理由で、本件発明1乃至6は、甲第1号証乃至甲第10号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
6.当審取消理由2〔特許法第29条第2項違反〕について
当審取消理由2は、異議申立人の提出した甲第1、4、9号証をそれぞれ第1、4、9引用例とするとともに、第11引用例を付加して、本件発明1乃至6について特許法第29条第2項違反を通知したものであるところ、第1引用例(甲第1号証)に基づいて認定した引用発明との相違点については、前記第11引用例にも記載あるいは示唆するところがないため、その判断としても前記4.に記載したのと同様の理由で、本件発明1乃至6は、甲第1号証乃至甲第10号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
7.当審取消理由3〔特許法第36条第5項第1、2号違反〕について
当審取消理由3は、本件発明1乃至6に係る出願について特許請求の範囲の記載不備をもって特許法第36条第5項第1、2号違反を通知したものであるところ、訂正により特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとして発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものとなったことで前記当審取消理由3は解消したから、その特許は、特許法第36条第5項第1、2号の規定に違反するものではない。
8.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件発明1乃至6についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1乃至6の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1乃至6についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】投入されたコインの中から適正なコインを選別し、不適正なコインを排出する遊技機等のコイン選別装置において、
基板、該基板の一方の面に取り付けられた押し板、及び前記基板において前記押し板を取り付けた面に設置された案内部材により、適正な外径のコインがその自重によって通過できるように形成されたコイン通路と、
前記コイン通路に対して移動可能でかつ、該コイン通路を通るコインの厚み方向の間隔として規定される、ガイド端と前記コイン通路の通路面との間隔を変更可能に設置され、前記適正な外径のコインが入ってきた場合には該適正な外径のコインの端が拘束されるとともに、前記適正な外径のコインよりも小径のコインが入ってきた場合には該小径のコインの上端が引っ掛からないように設置された可動ガイド板と、
前記コイン通路における前記可動ガイド板が存在することにより前記適正な外径のコインを拘束する位置で先端部が自ら出没可能に設けられ、前記可動ガイド板が前記コインの厚み方向の間隔を前記適正な外径のコインの厚さより僅かに大きくとる位置にあるコイン受付可能状態、及び前記可動ガイド板が前記コインの厚み方向の間隔を前記適正な外径のコインの厚さよりも大きくとる位置にあるコイン受付不可能状態のいずれの場合でも、その先端部が突出するように付勢され、前記適正な外径のコインが前記コイン通路を通過する場合には該コインに押されて引っ込むような力に定められている第1突起部材とを備えたことを特徴とするコイン選別装置。
【請求項2】請求項1記載のコイン選別装置において、前記可動ガイド板と連動して少なくとも先端部が、前記第1突起部材を前記通路面から没して前記適正な外径のコインがその自重によって前記第1突起部材を通過した後の前記コイン通路の通路面から出没可能に設けられ、その先端部が前記コイン通路の通路面から突出しないとき、前記第1突起部材を通過した前記適正な外径のコインの通過を可能にし、その先端部が前記コイン通路の通路面から突出したときは全てのコインを前記コイン通路の途中で排出させる第2突起部材を備えたコイン選別装置。
【請求項3】請求項2記載のコイン選別装置において、前記第1突起部材と前記第2突起部材の各々の先端部には、コインの移動方向に傾斜した円弧状の斜面が形成されているコイン選別装置。
【請求項4】請求項1記載のコイン選別装置において、前記第1突起部材の先端部が前記コイン通路の通路面から出没したとき、その動きを検出して検出信号を出力する第1検出器を備えたコイン選別装置。
【請求項5】請求項4記載のコイン選別装置において、第2検出器として、その先端部が前記コイン通路の通路面から突出したときは全てのコインを前記コイン通路の途中で排出させる第2突起部材を通過した後の前記コイン通路の出口近傍でコインの移動方向に互いに近接して配置された複数の検出器であり、前記コイン通路の通路面に配置され、前記コインの通過を検出して検出信号を出力する1個目の検出器と、該1個目の検出器を前記適正な外径のコインがその自重によって通過した後の前記コイン通路の通路面に配置され、前記コインの通過を検出して検出信号を出力する2個目の検出器と、を含んで構成される複数の検出器を配置したコイン選別装置。
【請求項6】請求項1記載のコイン選別装置において、前記押し板は、前記コイン通路を通るコインの厚み方向の間隔として規定される前記基板の一方の面上に形成された前記コイン通路の通路面と前記押し板との間隔が移動可能で、操作者が前記遊技機のコイン返却ボタンを押していない場合には、前記コイン通路を通るコインの厚み方向の間隔を一定に保持するように取り付けられているが、前記操作者が前記コイン返却ボタンを押す場合には、該コイン返却ボタンと連動して、前記コイン通路を通るコインの厚み方向の間隔が大きく開くように取り付けられているコイン選別装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スロットマシンや弾球遊技機などの遊技機あるいは自動販売機のようにコイン(硬貨に限らず、メダル、トークン等の遊技媒体を含む。)を使用する機器(遊技機等という)に用いられるコイン選別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】遊技機等に用いられるコイン選別装置としては、例えば特開昭63-254598号公報に示されているような機構を用いて、不正操作の防止を図ると共にコインの外径を選別する装置が知られている。
【0003】クレードルと呼ばれる機構を用いた従来のコイン選別装置では、コインをクレードルに向けて落下させ、これに大径及び小径の適正コイン又は不適正コインを通過させる。通過したコインは、選別通路において検知コイルによってコインの外径および材質の選別をされ、第1および第2ゲートの開閉によって、適正コインは出口を通過し、不適正コインは返却口に戻される。
【0004】このような機構によれば、コインの移動速度が遅くなり、コインの投入操作を連続して行う場合などにコインの受付不能を起こすことがある。また、制御装置が複雑化するとともに、ゲートを開閉制御するためのソレノイドを必要とするため、装置が高価かつ大型になるという問題があった。
【0005】そこで、この問題を解決するものとして上記公報に記載されたコイン選別装置は、投入口から入れられたコインの中から大径適正コインと小径適正コインの2種類の外径を有するコインだけをそれぞれ選別して別個に取り出す大径および小径コイン外径選別手段と、大径および小径適正コインの材質検出手段とを備えている。
【0006】大径および小径コイン外径選別手段は、大径コイン用キャリアームと小径コイン用キャリアームとをコイン落下通路に上下に離間して配設して構成される。また、大径および小径の適正コインの材質検出手段は、大径および小径コインの外径選別手段によって選別されたコインの材質を大径・小径の各適正コインについて別個に電子的に選別できるとともに、コイン糸吊り防止機構を有するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のコイン選別装置においては、2種類のキャリアームを含む機械的な選別手段と、コインの材質を電子的に選別すると共にコイン糸吊り防止機構を有する材質検出手段とを備えた構成になっているので、選別されたコインがコイン選別装置から出るまでに時間がかかってしまう。
【0008】このため、上記のコイン選別装置を、例えばスロットマシン等の遊技機に用いた場合、コインを機械に投入後、コインが全部カウントされるのに時間がかかり、全部カウントされる前に遊技者によって遊技開始操作がされてしまうことも起こり得る。例えば、コインを3枚投入したのに2枚しかカウントされず(このような状況を機械の「コイン飲込み」という)、遊技者が不利益を被ってしまうという問題点があった。また、装置自体も大きくなり、機械内部に取り付けスペースを多くとってしまうという問題点もあった。
【0009】かかる機械のコイン飲込みを防止するべく、コインの通過時間を短縮し、かつ不正操作の防止を図ったものとして、例えば特開平5-166028号公報に記載されたコイン選別装置のように、コインの外径を識別するのに磁気センサ等の電気的手段を用いたものも知られているが、この装置においては磁気センサ等の電気的手段を用いるため装置自体が高価になってしまうという問題点があった。従って、本発明の目的は、コインの選別(通過)時間を短くできるとともに不正操作を防止でき、かつ安価でコンパクトな、遊技機等のコイン選別装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、投入されたコインの中から適正なコインを選別し、不適正なコインを排出する遊技機等のコイン選別装置において、基板、該基板の一方の面に取り付けられた押し板、及び前記基板において前記押し板を取り付けた面に設置された案内部材により、適正コインがその自重によって通過できるように形成されたコイン通路と、前記コイン通路に対して移動可能で、該コイン通路を通るコインの厚み方向の間隔を変更可能に設置された可動ガイド板と、前記コイン通路の前記可動ガイド板が適正コインを拘束する位置で先端部がコイン通路から出没可能に設けられ、通常その先端部が突出するように付勢されている第1突起部材とを備えたことを特徴とする。
【0011】第2の発明では、前記可動ガイド板と連動して少なくとも先端部が前記コイン通路から出没可能に設けられ、その先端部がコイン通路から突出しないとき適正コインの通過を可能にし、その先端部がコイン通路から突出したときは全てのコインをコイン通路の途中で排出させる第2突起部材が備えられる。
【0012】第3の発明では、前記第1突起部材と前記第2突起部材の各々の先端部に、コインの移動方向に傾斜した円弧状の斜面が形成されている。
【0013】第4の発明では、前記第1突起部材の先端部がコイン通路から出没したとき、その動きを検出して検出信号を出力する第1検出器が設けられる。
【0014】第5の発明では、第2検出器としてコイン通路の出口近傍でコインの移動方向に複数の検出器が配置される。
【0015】第6の発明では、前記押し板は、前記コイン通路を通るコインの厚み方向に移動可能で、通常は前記コイン通路のコイン厚み方向の間隔を一定に保持するように取り付けられている。
【0016】
【0017】
【作用】本発明によれば、投入されたコインは、その自重によりコイン通路を通過しようとする。コイン通路は、基板の一方の面上で押し板及び案内部材により、外径の適正なコインを案内して通過させるように形成されると共に、コイン通路のコインの厚み方向の間隔は可動ガイド板によって変えられる。
【0018】このコイン通路のコインの厚み方向の間隔は、コイン通路に対する可動ガイド板の位置に応じて、次の2種類がある。すなわち、可動ガイド板が、コイン通路のコイン厚み方向の間隔を適正なコイン厚さより僅かに大きくとる位置にある「コイン受付可能状態」と、可動ガイド板が、コイン通路のコインの厚み方向の間隔を適正なコインの厚さよりも大きく(例えば、その厚さの2倍以上に)とる位置にある「コイン受付不能状態」である。
【0019】上記のコイン受付可能状態では、外径が適正なコイン(以下「適正コイン」という)は可動ガイド板に拘束されながらコイン通路を移動するので、適正コインはコイン通路から突出している第1突起部材の先端部をコイン通路から引っ込めながら通過する。
【0020】一方、外径が適正コインより小さいコインは、可動ガイド板に拘束されないので、コイン通路から突出している第1突起部材の先端部に当たったとき、その付勢力によってコイン通路から排出される。かくして、適正コインとそうでない不適正コインとが選別されて排出される。
【0021】しかし、コイン受付不能状態では、外径が小さいコインだけでなく適正コインであっても、可動ガイド板はコインを拘束せず、コイン通路の途中で排出してしまう。これは、遊技機等が準備状態等の非稼動状態のとき、コインが投入されてもそれを遊技機の内部へ送らず、遊技者にコインを返却するためである。
【0022】本発明の上記構成に加えて、第2突起部材を設けた場合には、その第2突起部材が前記可動ガイド板と連動し、可動ガイド板が受付不能状態となっているときは、付勢力を持たせた第2突起部材がコイン通路から突出しており(コイン受付可能状態では第2突起部材はコイン通路から突出していない)、第1突起部材の先端部によって排出できなかったコインを確実に排出することができる。
【0023】この場合、第1突起部材と第2突起部材の各先端部に、コインの移動する方向に傾斜した円弧状の斜面を形成すると、前述のコイン受付不能状態では、第1突起部材及び第2突起部材の付勢力とあいまってコインの排出が確実になる。また、前述の受付可能状態では、第1突起部材の先端部は適正なコインによって押され、コイン通路に没した状態となる。
【0024】本発明の好ましい態様では、前述のように第1突起部材の先端部がコイン通路から出没したとき、その動きを検出して検出信号を出力する第1検出器が設けられる。この場合、第1突起部材の先端部が出没することにより、第1検出器が検出信号を出力し、その検出信号を、例えば遊技機の制御装置が受けることによって適正コインの通過を検知することができる。
【0025】更に、第2検出器として、コイン通路の出口近傍にコインの移動方向に複数の検出器を近接して配置した場合には、コイン通路の出口におけるコインの通過を検出することができる。これにより、コインの停滞等の異常も検出できる。
【0026】また、本発明において、押し板をコイン通路のコイン厚み方向に移動可能に取り付け、通常はコイン厚み方向の間隔を一定に保つようにした場合には、コイン通路にコインが停滞したとき等に、押し板のコイン厚み方向の間隔を大きくすることで、コインを排出することができる。
【0027】適正コインとして非磁性体を使用する場合、第1突起部材の近傍に磁石を配置すると、磁性体の不適正コインはその磁石の磁力によって捕捉され、第1検出器の出力信号の時間が変わるため、不適正コインを検出することができる。
【0028】
【実施例】図1及び図2は、それぞれ本発明の実施例の正面図及び背面図である。このコイン選別装置10は、例えば図12に示すスロットマシン1の内部に設置される。この場合、スロットマシン1のコイン投入口2に投入されたコインは、図3に示される入口31からコイン通路14内に入り、その出口32に向かって移動する。
【0029】図1において、コイン選別装置10は、略矩形の基板11の一方の面に、押し板12及び案内部材13によって形成されたコイン通路14を備える。このコイン通路14は、図3に示すように、入口31から出口32に至る垂直路14a及び傾斜路14bから成る。コイン投入口2(図12)から投入されたコインCはコイン通路14を移動する間に外径に応じて選別され、適正とされたコインは、前記傾斜路14bを通過して出口32から出る。このような適正コインは、後述する2個のフォトセンサ26、27により検出され、この検出信号がスロットマシンの制御装置(図示省略)へ入力されることにより、スロットマシン内部のカウンタ(図示省略)で計数される。また、非磁性体コインが適正コインとして用いられる場合には、後述するように、磁性体コインの不正使用を検出できる。
【0030】押し板12は、図3に示すように基板11の軸受28,29に着脱可能な軸22を中心として回動自在に装着され、通常はバネ24によって基板11に押し板12の一部が当接するように付勢されている。更に、図4に示すように、押し板12を基板11に装着したときコイン通路14の傾斜路14bに対応する開口部12aが形成されている。
【0031】図1に示すコイン通路14の通路面20には、後述のように適正コインより小径の不適正コインを手前側に排出する第1突起部材15の先端部として形成された上下一対の突出端16,17が突出している。第1突起部材15は、基板11の一方の面上に形成された通路面20と反対側の面30(図2)に設けられており、その一方の端部が二又に形成され、その先端部が一対の突出端16,17となっている。この実施例の各突出端16,17は、不適正コインを排出しやすくするため、コイン移動方向に傾斜した円弧状の斜面16a,17aを備えている。
【0032】第1突起部材15は、図6に示すように基板11に設けられた軸受67,68に支持された縦軸61を中心として回動自在で、通常はバネ62により第1突起部材15の二又になった先端部の上下一対の突出端16,17が通路面20から突出するように付勢されている。図7からわかるように、上側の突出端16は、下側の突出端17よりも通路面20から突出しており、これによってコインを排出しやすくしている。
【0033】バネ62の付勢力は、後述するように、第1突起部材15の突出端16,17の形状とあいまって適正コインCより小径なコインを排出でき、かつ適正コインCがコイン通路14を通過する場合には突出端16,17がコインに押されて引っ込むような力に定められている。
【0034】ここで、実施例において正規に遊技を行っていたにも拘らず、コイン通路14内にコインや異物が詰まった場合のコインの排出を行う機構を説明する。
【0035】この機構は、図12のスロットマシン1のコイン返却ボタン3と連動して動作する。そのため、図2及び図5に示すように、コイン返却ボタン3の下端は、略三角形の回動もしくは旋回部材81に近接して配置され、コイン返却ボタン3それ自体はバネ等(図示省略)によって上方に常時付勢されている。
【0036】操作者がコイン返却ボタン3を押すと、図5に示すように旋回部材81は、基板11と一体に形成された軸受86に取り付けられた横軸82を中心に回動し、旋回部材81の一端が押し板12を押し上げるように動く。従って、押し板12は軸22を中心に回動し、基板11の通路面20との間隔が大きく開くので、詰まったコインや異物は排出方向(図5右側)に排出される。
【0037】次に、図7?図9は、適正コインの通過を検出する手段を示したものである。コイン通過時には、第1突起部材15の突出端16,17がコインCに押されて縦軸61を中心に回動し、このとき第1突起部材15の後端部66が、第1検出器である透過型フォトセンサ63(図2)の発光部64と受光部65との間の光路を横切る(図9)ので、透過型フォトセンサ63は検出信号を出力する。この検出信号は、例えば図12のスロットマシン1の制御装置(図示省略)へ送られ、コイン通路14をコインが通過したことが検出される。
【0038】コイン通路14においてコイン詰まりなどが生じた場合や不正操作が行われると、第1突起部材15の突出端16,17が押される時間が長くなり、検出信号の立ち上がりから立ち下がりまでの時間が所定時間より長くなるので、前記制御装置により異常が検出される。
【0039】また、適正コインが非磁性体の場合には、不適正コインとなる磁性体コインが投入されると、図1に示すように通路面20の突出端16,17の近傍に配された磁石19により磁性体コインが捕捉され、突出端16,17が通路面20から引っ込められる。これにより、上記と同様に検出信号の長さが変化するので、そのような不適正コインが検出される。
【0040】更に、基板11の面30側(図2)には、次のようなコイン受付機構40が設けられている。
【0041】図2において、コイン受付機構40は、基板11の通路面20と反対側の面30上に設けられた円柱形のソレノイド41と、このソレノイド41の励磁により吸引され、基板11と一体に形成された支持部材42を支点として回動される回動部材43と、この回動部材43が吸引されたとき、その一端44に一端52を押されて、基板11と一体に形成された軸受58、59に取り付けられた軸55を中心に回動し、突起部53(図1R>1)が通路面20から引っ込むように回動される可動ガイド板51と、回動部材43がソレノイド41に吸引されたとき、回動部材43の他端45との当接により通路面20に突出するように押されていた突起部72(図1R>1)が、他端73の重みにより、基板11と一体に形成された軸受78、79に支持された軸74を中心に回動し、通路面20から没することができる第2突起部材71とから成る。
【0042】可動ガイド板51は、前記制御装置によりコイン受付可能状態(図10)とコイン受付不能状態(図11)との間で、ガイド溝80の間隔を変えることができる。
【0043】コイン受付不能状態を設けた理由は、スロットマシン等の遊技準備が未完了の場合等や遊技機側が稼動状態にない場合には、投入されたコインを遊技機内部へ送らずに返却するためである。
【0044】図10は、コイン受付機構40のコイン受付可能状態を示したものである。このとき、ソレノイド41は励磁されている。回動部材43はソレノイド41に吸着されており、回動部材43の他端45は第2突起部材71を押圧していない。従って、第2突起部材71はその他端73の重みにより、基板11に形成された軸受78,79に取り付けられた軸74を中心として回動し、突出端72は通路面20から没している。
【0045】また、通路面20と可動ガイド板51のガイド端54との間隔は、適正コインが通過できる最小の間隔まで狭められ(このとき、ガイド溝80が形成される。)、可動ガイド板51の突起部53も通路面20から没した状態にある。
【0046】この状態で、図1に示すように適正コインが投入されると、適正コインは、第1突起部材15の突出端16,17を押しながら傾斜路14bを通過して、出口32から遊技機等の内部機構へ移動する。
【0047】この実施例では、通路面20の出口32の近傍に、第2検出器として2個のフォトセンサ26,27がコイン移動方向に互いに近接して配置されている。この場合、1個目のフォトセンサ26は、2個目のフォトセンサ27よりもコインが先に通過する位置にある。
【0048】このような第2検出器を設けた理由は、コイン選別装置10を通過する適正コイン数としてカウントするためと、なんらかの理由(コイン詰まりや不正操作も含む)でコインが異常動作をしたとき、その異常動作を検出するためである。例えば下記の所定条件が成立したとき、異常信号を遊技機などの制御装置へ出力する。
【0049】1.センサ26がオンする前にセンサ27がオンしたとき。
【0050】2.センサ26がオンした後、センサ27が所定時間(例えば200msec)経過後もオンにならないとき。
【0051】3.センサ26がオンした後、センサ27が所定時間(例えば200msec)経過後もオフにならないとき。
【0052】4.センサ26がオフした後、センサ27が所定時間(例えば200msec)経過後もオフにならないとき。
【0053】また、上記のコイン受付可能状態で適正コインより小径のコインが投入された場合は、その小径コインは上端がガイド溝80(図10、図11)に引っ掛からないので、斜めに円弧状にカットされた形状の第1突起部材15の突出端16,17に当接し、排出方向(図1の手前側。以下同様。)に付勢されて排出される。
【0054】一方、図11に示すように、コイン受付け機構40がコイン受付不能状態のときには、コイン通路14に突出する可動ガイド板51の突起部53および第2突起部材71の突出端72により、投入されたコインは全て図11の左側に排出され、例えば図12のスロットマシン1のコイン返却口4に戻る。可動ガイド板51の突起部53は、コインを出口32側に絶対に通過させないため、通路面20から垂直に突出するように設けられる。第2突起部材71の突出端72は、コインを排出方向に付勢するため、突出端16,17と同様に斜めに円弧状にカットされた斜面72aを有する。
【0055】上記実施例の動作は次のとおりである。まず、図1に示すように、投入されたコインCは入口31から入り、傾斜路33を通って出口32に到達する。
【0056】前述のコイン受付可能状態では、図10に示すように、可動ガイド板51はガイド端54と通路面20との間にガイド溝80を形成し、第2突起部材71の突出端72と可動ガイド板51の突起部53は通路面20から没した状態にある。入口31から入ったコインのうち、適正なコインより外径が小さいコインは、バネ62により付勢されて通路面20から突出している第1突起部材15の突出端16,17により、コイン通路14から排出される。
【0057】適正な外径のコインが入ってきた場合には、ガイド溝80にコインの端が拘束されるので、第1突起部材15の突出端16,17は、図9に示すようにコインCによって通路面20から没し、第1突起部材15の後端部66が第1検出器であるフォトセンサ63の光軸を切る。従って、検出信号が図12のスロットマシンの制御装置(図示省略)に出力されてコインが通過したことが検知される。
【0058】可動ガイド板51は、コイン受付可能状態(図10)とコイン受付不能状態(図11)との間で可変駆動され、コイン受付可能状態では、前述のようにガイド溝80が形成され、第2突起部材の突出端72と可動ガイド板51の他端53とは、それぞれ通路面20から没した状態にある。この状態では、適正コインはコイン通路14の出口32まで移動できる。
【0059】可動ガイド板51がコイン受付不能状態(図11)にあるときは、可動ガイド板51は、通路面20と図10の場合よりも大きな間隔をあけてコインを案内せず、コインの排出を促している。更に、第2突起部材71の突出端72と可動ガイド板51の突起部53とは通路面20から突出している状態にあるので、確実にコインを排出することができる。
【0060】コイン受付可能状態で投入された適正コインは、前述のようにコイン通路14を通過し、出口32からスロットマシン内部へ移動する。このとき、第2検出器として通路面20の出口32の近傍に設けられた2個のフォトセンサ26,27により、コインの通過が検出される。この検出信号がスロットマシンの制御装置(図示省略)へ入力されたとき、前述した動作異常ではない場合には、コイン選別装置10を通過する適正コイン数が確実に検出される。
【0061】第1突起部材15と第2突起部材71の各突出端16,17,72は、不適正コインを排出しやすくするため、コイン移動方向に傾斜した円弧状の斜面16a,17a,72aをつけた形状に形成され、第1突起部材15と第2突起部材71の付勢力とあいまってコインの排出を促すようにしている。
【0062】押し板12は、通常はバネ24により基板11に押し付けられている。コイン詰まりのような場合には、指でコイン返却ボタン3(図12)を押すと、旋回部材81が横軸82を中心に回動し、旋回部材81の一端が押し板12を押し上げるように動く。従って、押し板12は軸22を中心に回動し、基板11の通路面20との間隔(コイン厚み方向の間隔)が大きく開くので、詰まったコインは排出方向(図5右側)に排出される。
【0063】適正コインとして非磁性体のものを用いる場合、第1突起部材15の近傍の通路面20に磁石19を設置することで、磁性体の不適正コインは前記磁石19の磁力に捕捉される。これにより、第1突起部材15によるフォトセンサ63からの検出信号の時間が変化するため、不適正コインを検知できる。
【0064】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、コイン通路は、コインの自重によって通過できるように形成され、従来のようにコインの通過速度を落とすことが無く、動作時間が短縮できるのでコインの飲込みが防止できる。加えて、基板と押し板と案内部材とでコイン通路を形成し、可動ガイド板や第1突起部材という機械的な手段でコインの選別を行うようにしたので、従来の磁気センサ等の電気的手段を用いたものに比べて安価に製造できる。
【0065】また、第2突起部材を付加的に設けた場合には、適正コインを確実にカウントできると共に第1突起部材の不具合などで排出されなかったコインも確実に排出できる。
【0066】更に、第1突起部材の先端部がコイン通路から出没したとき、その動きを検出する第1検出器を設けると、この検出器が出力する検出信号の変化から異常状態を検出することができる。これにより、例えばセルと呼ばれる板状の道具をコイン通路に挿入して不正に遊技する行為が防止できる。
【0067】更に、第2検出器として複数の検出器をコイン通路の出口近傍に順次配設した場合には、各検出器のオン・オフの順序や時間変化により異常動作を検出できるので、糸吊りコイン等を使用した不正行為も防止できる。
【0068】適正コインとして非磁性体を用いる場合には、コイン通路において第1検出器の近傍に磁石を配置することにより、不適正コインとなる磁性体のコインが磁石に引き付けられて停止するか、或いはそのコインの移動速度が変わるので、第1検出器からの出力信号の変化により、不適正コインを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の正面図。
【図2】本発明の実施例の背面図。
【図3】実施例における基板から押し板を分離した状態を示す斜視図。
【図4】実施例の押し板の斜視図。
【図5】押し板の開閉機構を表す図1のV-V線断面図。
【図6】第1突起部材による検出手段の上面図。
【図7】図2におけるA-A線断面図で、コイン未通過時の第1突起部材の状態を示す図。
【図8】図2におけるA-A線断面図で、コインが第1突起部材に当接した図7と図9との中間状態の動作を示す図。
【図9】図2におけるA-A線断面図で、コイン通過時の第1突起部材の動作を示す図。
【図10】図2におけるB-B線断面図で、コイン受付機構のコイン受付可能状態を示す図。
【図11】図2におけるB-B線断面図で、コイン受付機構のコイン受付不能状態を示す図。
【図12】実施例のコイン選別装置を用いる遊技機の例としてスロットマシンを示す斜視図。
【符号の説明】
1…スロットマシン、2…コイン投入口、3…コイン返却ボタン、4…コイン返却口、10…コイン選別装置、11…基板、12…押し板、13…案内部材、14…コイン通路、14a…垂直路、14b…傾斜路、15…第1突起部材、16…突出端、16a…円弧状の斜面、17…突出端、17a…円弧状の斜面、19…磁石、20…通路面、24…バネ、26…フォトセンサ、27…フォトセンサ、28…軸受、29…軸受、31…入口、32…出口、40…コイン受付機構、41…ソレノイド、43…回動部材、44…一端、45…一端、51…可動ガイド板、53…突起部、54…ガイド端、55…軸、58…軸受、59…軸受、61…縦軸、62…バネ、63…透過型フォトセンサ、64…発光部、65…受光部、66…後端部、67、68…軸受、71…第2突起部材、72…突出端、72a…円弧状の斜面、73…一端、74…軸、78…軸受、79…軸受、80…ガイド溝、81…回動もしくは旋回部材、82…横軸、85…軸受、86…軸受。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-11-29 
出願番号 特願平6-187880
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A63F)
P 1 651・ 534- YA (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山崎 仁之▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 渡戸 正義
川島 陵司
登録日 2003-06-20 
登録番号 特許第3441803号(P3441803)
権利者 アルゼ株式会社
発明の名称 遊技機  
代理人 藤田 和子  
代理人 藤田 和子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ