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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1295198
審判番号 不服2013-7329  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-22 
確定日 2014-12-18 
事件の表示 特願2007-311669「データ処理装置,データ処理システム,データ処理装置のためのコンピュータプログラムおよびデータ処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月18日出願公開,特開2009-134651〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は,平成19年11月30日を出願日とする出願であって,その後の手続の経緯の概略は次のとおりである。

出願審査請求(提出日) 平成22年10月13日
拒絶理由通知(起案日) 平成24年8月3日
意見,手続補正(提出日) 平成24年10月4日
拒絶査定(起案日) 平成25年1月15日
拒絶査定謄本送達 平成25年1月22日
審判請求(提出日) 平成25年4月22日
手続補正(提出日) 平成25年4月22日
前置報告(作成日) 平成25年5月16日
審尋(起案日) 平成25年11月5日
回答(提出日) 平成26年1月14日

第2 平成25年4月22日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成25年4月22日付の手続補正を却下する。

[理由]
1. 補正の内容
平成25年4月22日付の手続補正(以下,「本件補正」という。)により,本件補正前と本件補正後の特許請求の範囲は次のとおり補正された。

[本件補正前]
「【請求項1】
所定の解除コードの入力により解除可能にセキュリティ保護された出力対象データを保存するデータ保存手段と,
ネットワークを介して接続された携帯端末から前記出力対象データの出力要求を受け付ける出力要求受信手段と,
前記出力要求が受け付けられた携帯端末に前記セキュリティを解除するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求手段と,
前記パスワードの入力が要求された携帯端末からパスワードを受信するパスワード受信手段と,
前記受信したパスワードと前記解除コードとを照合し,これらが一致した場合に前記出力対象データのセキュリティを解除するセキュリティ解除手段と,
前記携帯端末で出力可能なファイル形式を記憶する形式情報保存手段と,
前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定手段と,
前記判定された結果に基づいて,前記セキュリティが解除された出力対象データを,前記形式情報保存手段に記憶されたファイル形式のいずれに変換するかを決定するファイル形式決定手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データ,又は前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理手段と,
を備えるデータ処理装置。
【請求項2】
前記携帯端末を識別するための固有の識別情報,および前記識別情報に関連づけられた対照データを保存する認証情報保存手段と,
前記携帯端末より受信した識別情報およびアクセスコードと前記対照データとに基づいて前記携帯端末を認証する端末認証処理手段と,をさらに備える請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記出力対象データが電子文書ファイル形式であって,かつ,
前記ファイル変換手段が,前記セキュリティが解除された出力対象データを画像ファイル形式に変換することを特徴とする請求項1または2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記出力処理手段が,前記画像ファイル形式に変換された出力対象データを前記携帯端末で閲覧される状態に保持する請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記出力処理手段が,前記保持される出力対象データをウェブサイトに登録するとともに,前記ウェブサイトのウェブアドレスが記録された電子メールを前記携帯端末に送信する請求項4に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
所定の解除コードの入力により解除可能にセキュリティ保護された出力対象データを保存するデータ保存手段と,
ネットワークを介して前記データ保存手段に接続された携帯端末と,
前記携帯端末から前記出力対象データの出力要求を受け付ける出力要求受信手段と,
前記出力要求が受け付けられた携帯端末に前記セキュリティを解除するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求手段と,
前記パスワードの入力が要求された携帯端末からパスワードを受信するパスワード受信手段と,
前記受信したパスワードと前記解除コードとを照合し,これらが一致した場合に前記出力対象データのセキュリティを解除するセキュリティ解除手段と,
前記携帯端末で出力可能なファイル形式を記憶する形式情報保存手段と,
前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定手段と,
前記判定された結果に基づいて,前記セキュリティが解除された出力対象データを,前記形式情報保存手段に記憶されたファイル形式のいずれに変換するかを決定するファイル形式決定手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データ,又は前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理手段と,
を備えるデータ処理システム。
【請求項7】
所定の解除コードの入力により解除可能にセキュリティ保護された出力対象データを携帯端末に出力させるデータ処理装置のためのコンピュータプログラムであって,
ネットワークを介して接続された携帯端末から前記出力対象データの出力要求を受け付ける出力要求受信処理と,
前記出力要求が受け付けられた携帯端末に前記セキュリティを解除するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求処理と,
前記パスワードの入力が要求された携帯端末からパスワードを受信するパスワード受信処理と,
前記受信したパスワードと前記解除コードとを照合し,これらが一致した場合に前記出力対象データのセキュリティを解除するセキュリティ解除処理と,
前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定処理と,
前記判定された結果に基づいて,前記セキュリティが解除された出力対象データを,前記携帯端末で出力可能なファイル形式のいずれに変換するかを決定するファイル形式決定処理と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換処理と,
前記セキュリティが解除された出力対象データ,又は前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理と,
を前記データ処理装置に実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項8】
所定の解除コードの入力により解除可能にセキュリティ保護された出力対象データを携帯端末に出力させる方法であって,
ネットワークを介して接続された携帯端末から前記出力対象データの出力要求を受け付ける出力要求受信ステップと,
前記出力要求が受け付けられた携帯端末に前記セキュリティを解除するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求ステップと,
前記パスワードの入力が要求された携帯端末からパスワードを受信するパスワード受信ステップと,
前記受信したパスワードと前記解除コードとを照合し,これらが一致した場合に前記出力対象データのセキュリティを解除するセキュリティ解除ステップと,
前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定ステップと,
前記判定された結果に基づいて,前記セキュリティが解除された出力対象データを,前記携帯端末で出力可能なファイル形式のいずれに変換するかを決定するファイル形式決定ステップと,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換ステップと,
前記セキュリティが解除された出力対象データ,又は前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力ステップと,
を含むデータ処理方法。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前請求項」という。)

[本件補正後]
「【請求項1】
所定の解除コードの入力により解除可能にセキュリティ保護された出力対象データを保存するデータ保存手段と,
ネットワークを介して接続された携帯端末から前記出力対象データの出力要求を受け付ける出力要求受信手段と,
前記出力要求が受け付けられた携帯端末に前記セキュリティを解除するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求手段と,
前記パスワードの入力が要求された携帯端末からパスワードを受信するパスワード受信手段と,
前記受信したパスワードと前記解除コードとを照合し,これらが一致した場合に前記出力対象データのセキュリティを解除するセキュリティ解除手段と,
前記携帯端末で出力可能なファイル形式を記憶する形式情報保存手段と,
前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定手段と,
前記判定された結果に基づいて,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できるか否か判断し,前記携帯端末に出力できない場合にのみ,変換すべきファイル形式を決定するファイル形式決定手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できる場合には前記ファイル形式の変換を行わずに前記携帯端末に出力させ,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できない場合には前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理手段と,
を備えるデータ処理装置。
【請求項2】
前記携帯端末を識別するための固有の識別情報,および前記識別情報に関連づけられた対照データを保存する認証情報保存手段と,
前記携帯端末より受信した識別情報およびアクセスコードと前記対照データとに基づいて前記携帯端末を認証する端末認証処理手段と,をさらに備える請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記出力対象データが電子文書ファイル形式であって,かつ,
前記ファイル変換手段が,前記セキュリティが解除された出力対象データを画像ファイル形式に変換することを特徴とする請求項1または2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記出力処理手段が,前記画像ファイル形式に変換された出力対象データを前記携帯端末で閲覧される状態に保持する請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記出力処理手段が,前記保持される出力対象データをウェブサイトに登録するとともに,前記ウェブサイトのウェブアドレスが記録された電子メールを前記携帯端末に送信する請求項4に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
所定の解除コードの入力により解除可能にセキュリティ保護された出力対象データを保存するデータ保存手段と,
ネットワークを介して前記データ保存手段に接続された携帯端末と,
前記携帯端末から前記出力対象データの出力要求を受け付ける出力要求受信手段と,
前記出力要求が受け付けられた携帯端末に前記セキュリティを解除するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求手段と,
前記パスワードの入力が要求された携帯端末からパスワードを受信するパスワード受信手段と,
前記受信したパスワードと前記解除コードとを照合し,これらが一致した場合に前記出力対象データのセキュリティを解除するセキュリティ解除手段と,
前記携帯端末で出力可能なファイル形式を記憶する形式情報保存手段と,
前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定手段と,
前記判定された結果に基づいて,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できるか否か判断し,前記携帯端末に出力できない場合にのみ,変換すべきファイル形式を決定するファイル形式決定手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できる場合には前記ファイル形式の変換を行わずに前記携帯端末に出力させ,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できない場合には前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理手段と,
を備えるデータ処理システム。
【請求項7】
所定の解除コードの入力により解除可能にセキュリティ保護された出力対象データを携帯端末に出力させるデータ処理装置のためのコンピュータプログラムであって,
ネットワークを介して接続された携帯端末から前記出力対象データの出力要求を受け付ける出力要求受信処理と,
前記出力要求が受け付けられた携帯端末に前記セキュリティを解除するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求処理と,
前記パスワードの入力が要求された携帯端末からパスワードを受信するパスワード受信処理と,
前記受信したパスワードと前記解除コードとを照合し,これらが一致した場合に前記出力対象データのセキュリティを解除するセキュリティ解除処理と,
前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定処理と,
前記判定された結果に基づいて,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できるか否か判断し,前記携帯端末に出力できない場合にのみ,変換すべきファイル形式を決定するファイル形式決定処理と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換処理と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できる場合には前記ファイル形式の変換を行わずに前記携帯端末に出力させ,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できない場合には前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理と,
を前記データ処理装置に実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項8】
所定の解除コードの入力により解除可能にセキュリティ保護された出力対象データを携帯端末に出力させる方法であって,
ネットワークを介して接続された携帯端末から前記出力対象データの出力要求を受け付ける出力要求受信ステップと,
前記出力要求が受け付けられた携帯端末に前記セキュリティを解除するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求ステップと,
前記パスワードの入力が要求された携帯端末からパスワードを受信するパスワード受信ステップと,
前記受信したパスワードと前記解除コードとを照合し,これらが一致した場合に前記出力対象データのセキュリティを解除するセキュリティ解除ステップと,
前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定ステップと,
前記判定された結果に基づいて,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できるか否か判断し,前記携帯端末に出力できない場合にのみ,変換すべきファイル形式を決定するファイル形式決定ステップと,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換ステップと,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できる場合には前記ファイル形式の変換を行わずに前記携帯端末に出力させ,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できない場合には前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力ステップと,
を含むデータ処理方法。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後請求項」という。下線部は補正部分を表している。)

2. 本件補正における補正の目的について
補正前請求項1の,「前記形式情報保存手段に記憶されたファイル形式のいずれに変換するか」を,補正後請求項1の「前記携帯端末に出力できるか否か判断し,前記携帯端末に出力できない場合にのみ,変換すべきファイル形式」とする補正は,実質的に変換に係るファイル形式に「前記携帯端末に出力できるか否か判断し,前記携帯端末に出力できない場合にのみ,変換すべき」なる限定を加えるものであり,また,補正前請求項1の,「前記セキュリティが解除された出力対象データ,又は前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理手段」を,補正後請求項1の「前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できる場合には前記ファイル形式の変換を行わずに前記携帯端末に出力させ,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できない場合には前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理手段」とする補正は,「出力処理手段」を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)(以下「限定的減縮」と記す。)を目的としたものと認められる。
また,補正前請求項6ないし8を補正後請求項6ないし8とする補正は,カテゴリがそれぞれ「データ処理システム」,「コンピュータプログラム」,「データ処理方法」の発明に係るものの,前記補正後請求項1に係る補正と実質的に同じ補正がなされているが,この補正も補正後請求項1に係る補正と同様に限定的減縮を目的としたものと認められる。

したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に適合する。

3. 独立特許要件についての判断
本件補正は限定的減縮を目的としたものであるが,本件補正後の特許請求範囲に記載されている事項により特定される発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない(特許法第17条の2第6項で準用する第126条第7項)ので,この規定に適合するか否かを以下に検討する。

3.1 本件補正発明
本件補正後請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)は,前記平成25年4月22日付の手続補正(本件補正)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。(再掲する。)

「所定の解除コードの入力により解除可能にセキュリティ保護された出力対象データを保存するデータ保存手段と,
ネットワークを介して接続された携帯端末から前記出力対象データの出力要求を受け付ける出力要求受信手段と,
前記出力要求が受け付けられた携帯端末に前記セキュリティを解除するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求手段と,
前記パスワードの入力が要求された携帯端末からパスワードを受信するパスワード受信手段と,
前記受信したパスワードと前記解除コードとを照合し,これらが一致した場合に前記出力対象データのセキュリティを解除するセキュリティ解除手段と,
前記携帯端末で出力可能なファイル形式を記憶する形式情報保存手段と,
前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定手段と,
前記判定された結果に基づいて,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できるか否か判断し,前記携帯端末に出力できない場合にのみ,変換すべきファイル形式を決定するファイル形式決定手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できる場合には前記ファイル形式の変換を行わずに前記携帯端末に出力させ,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できない場合には前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理手段と,
を備えるデータ処理装置。」

3.2 引用文献
(1) 引用文献1
本願出願前に頒布され,原審で引用された刊行物である特開2004-185597号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審付与)

ア.「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら,上記従来技術では,ファイルをサーバを介して転送する場合にそのセキュリティを何等考慮していない。
・・・(中略)・・・
【0012】
本発明は,上記に鑑みてなされたものであり,受信者がファイルを受信できるほど記憶容量の大きな記憶装置を備えた情報機器を所有していなくても,ファイル提供者からネットワーク経由で安全にファイルを入手することが可能なファイル転送システム,ファイル管理サーバ,ファイル転送方法,およびその方法をコンピュータが実行するためのプログラムを提供することを目的とする。」

イ.「【0048】
受信者は,ファイル受信用端末30を使用して,ファイル管理サーバ10にファイル名を指定して当該ファイルの転送要求を送信する。ここで,ファイル管理サーバ10は,ファイルの転送要求があると,指定されたファイルの許可条件を満たす場合(例えば,ファイルに設定されたパスワードが一致した場合)に,ファイルのアクセス(転送)を許可してファイルを転送する。ファイル受信用端末30が画像形成装置としての印刷装置30a-1や複合機30a-2である場合には,受信したファイルを印刷し,また,ファイル受信用端末30がPC30bである場合には,受信したファイルをハードディスク等に記憶する。さらに,ファイル受信用端末30が画像形成装置30a-2である場合には,受信したファイルを内蔵するハードディスク等に一旦蓄積し,後で出力(画像形成)することも可能である。
[ファイル管理サーバの構成]
図2は,図1のファイル管理サーバ10の構成例を示すブロック図である。ファイル管理サーバは,通信インターフェース101,CPU102,RAM103,表示部104,操作部105,個人情報記憶部106,ファイルデータ記憶部107,ハードディスク108,ディスクドライブ109を備えており,各部は,バスを介して互いに接続されている。
【0049】
通信インターフェース101は,インターネット1を介して外部の装置とデータの送受信を行うためのインターフェースである。
・・・(中略)・・・
【0051】
個人情報記憶部106には,ユーザを管理するためのユーザIDとパスワードとが登録されたユーザ管理テーブルが格納されている。図3はユーザ管理テーブルの一例を示す図である。同図に示すように,ユーザ管理テーブルには,ユーザIDに対応させてパスワードが登録されている。
【0052】
ファイルデータ記憶部107には,送信者の端末から入力される,ファイル名と,ファイルへアクセスするためのパスワードと,ファイルの有効期限と,ファイルの有効転送回数Tと,ファイルデータとが対応づけて格納される。図4は,ファイルデータ記憶部107に記憶されるデータのフォーマットの一例を示す図である。」

ウ.「【0062】
つぎに,受信者がファイル管理サーバ10にアクセスして所望のファイルのデータをダウンロードする処理を説明する。図7において,受信者は,その所有する携帯端末40からファイルを出力(画像形成)したい画像形成装置30aに,ファイル管理サーバ10のWebページのURL,ユーザID,パスワード,印刷したいファイルのファイル名,および当該ファイルにアクセスするためのパスワードを設定する(ステップS41)。ファイルをダウンロードするファイル受信装置30は,画像形成装置30a以外のパソコン30bでもよい。
【0063】
画像形成装置30aは,ファイル管理サーバ10のWebページのURLを設定して,ファイル管理サーバ10へアクセスする(ステップS51)。ファイル管理サーバ10は,画像形成装置30aからアクセスがあると,画像形成装置30aに対してユーザIDとパスワードを入力するための図8のWebページW1(ファーストページ)を送信する(ステップS31)。
【0064】
画像形成装置30aは,このWebページW1を受信すると,このWebページW1を表示部に表示し,受信者がこのWebページW1でユーザIDとパスワードを入力して,決定ボタンを押下すると,ユーザIDとパスワードがファイル管理サーバ10に送信される(ステップS52)。
【0065】
ファイル管理サーバ10は,画像形成装置30aからユーザIDとパスワードを受信すると,個人情報記憶部106の個人情報テーブルに受信したユーザIDとパスワードが登録されているか否かを判断し(ステップS32),登録されていない場合には,ステップS31に戻り,再度,WebページW1を送信する一方,登録されている場合には,サービス項目を選択するための図8のWebページW2を画像形成装置30aに送信する(ステップS52)。
【0066】
画像形成装置30aは,このWebページW2を受信すると,このWebページW2を表示して,WebページW2で,”2.ファイルの転送”を選択して決定ボタンを押下すると,ファイルの転送要求がファイル管理サーバ10に送信される(ステップS53)。
【0067】
ファイル管理サーバ10では,画像形成装置30aからファイルの転送要求を受信すると,ファイルを指定するための図8に示すWebページW4を画像形成装置30aに送信する(ステップS34)。このWebページW4には,”ファイル名”,当該ファイルにアクセスするための”パスワード”の入力欄と,決定ボタンが表示される。
【0068】
画像形成装置30aは,このWebページW4を受信すると,このWebページW4をその表示部に表示し,受信者は,このWebページW4で,印刷したい”ファイル名”,当該ファイルにアクセスするための”パスワード”を入力し,決定ボタンを押下すると,印刷したい”ファイル名”,当該ファイルにアクセスするための”パスワード”がファイル管理サーバ10に送信される(ステップS54)。
【0069】
ファイル管理サーバ10は,画像形成装置30aから印刷したい”ファイル名”,当該ファイルにアクセスするための”パスワード”を受信すると,まず,受信したファイル名のファイルが存在するか否かをファイルデータ記憶部107を参照して判断する(ステップS35)。これは,上述したように,ファイルの有効期限が経過したり,有効転送回数Tが「0」となった場合には,ファイルが削除されるためファイルが存在しない場合があるからである。この判断の結果,当該ファイル名のファイルが存在しない場合には(ステップS35の「N」),ステップS38に移行して,ファイルの転送不可を知らせるWebページ(不図示)を画像形成装置30aに送信する(ステップS38)。
【0070】
画像形成装置30aは,このファイルの転送不可を知らせるWebページを受信すると,受信したWebページをその表示部に表示する(ステップS56)。他方,当該ファイル名のファイルが存在する場合には(ステップS35の「Y」),ファイルデータ記憶部107を参照して,受信した当該ファイルにアクセスするための”パスワード”が正しいか否かを判断する(ステップS36)。この判断の結果,パスワードが正しくない場合には(ステップS36の「N」),ステップS34に戻り,再度,WebページW4を画像形成装置30aに送信する。他方,パスワードが正しい場合には(ステップS36の「Y」),該当するファイルを画像形成装置30aに送信した後,ステップS39に移行して,ファイルデータ記憶部107の当該ファイルの有効転送回数Tを「1」減算する(ステップS39)。画像形成装置30aは,ファイルを受信すると印刷を行う(ステップS55)。ここで,画像形成装置30aは受信したファイルをすぐに出力せず,内蔵するハードディスク等に一旦蓄積し,ファイルを出力(画像形成)するユーザからの指示を待ってもよい。
【0071】
なお,上記では,ファイル受信用端末30として画像形成装置30aを使用した場合を説明したが,PC30bの場合もファイルを印刷する代わりにFD(フレキシブルディスク)等に記憶する以外は,画像形成装置30aと同様の処理が行われるので,その説明は省略する。」

エ.「【0072】
以上説明したように,実施の形態1によれば,ファイル送信用端末20の利用者は,ファイルと当該ファイルにアクセスするためのパスワードとをファイル管理サーバ10にアップロードし,ファイル管理サーバ10は,ファイルとパスワードを関連付けて管理し,ファイル管理サーバ10は,ファイル受信用端末30から指定ファイルの送信の要求があった場合に,パスワードを要求し,パスワードが一致した場合のみ,指定のファイルを転送することとしたので,受信者はファイルを受信できるほど大容量の記憶装置を備えた情報機器を所有していなくても,近隣の店舗等に設置されたファイル受信用端末(印刷装置,PC)でファイルを受信することができ,また,ファイル提供者がファイルに対しパスワードを付与することにより,パスワードを知らない第三者へファイルが送信されることを防止でき,よりセキュリティを向上させることが可能となる。」

引用文献1に記載された事項を検討する。

(ア)イ.の「ファイル管理サーバ10は,ファイルの転送要求があると,指定されたファイルの許可条件を満たす場合(例えば,ファイルに設定されたパスワードが一致した場合)に,ファイルのアクセス(転送)を許可してファイルを転送する」との記載,「ファイルデータ記憶部107には,送信者の端末から入力される,ファイル名と,ファイルへアクセスするためのパスワードと,ファイルの有効期限と,ファイルの有効転送回数Tと,ファイルデータとが対応づけて格納される」との記載から,「ファイル名とパスワードとの入力によりアクセスが許可されるファイルが,ファイル名と,ファイルへアクセスするためのパスワードとファイルデータと対応づけて格納されているファイルデータ記憶部」をよみとることができる。

(イ)イ.の「受信者は,ファイル受信用端末30を使用して,ファイル管理サーバ10にファイル名を指定して当該ファイルの転送要求を送信する」との記載,ファイル管理サーバの構成である「通信インターフェース101は,インターネット1を介して外部の装置とデータの送受信を行う」との記載,通信インターフェースが送信手段,受信手段を有することは技術的常識で記載されているに等しいから,「ネットワークを介して接続されたファイル受信用端末から前記ファイルの転送要求を受け付ける受信手段」をよみとることができる。

(ウ)ウ.の「画像形成装置30aは,このWebページW2を受信すると,このWebページW2を表示して,WebページW2で,”2.ファイルの転送”を選択して決定ボタンを押下すると,ファイルの転送要求がファイル管理サーバ10に送信される」,「ファイル管理サーバ10では,画像形成装置30aからファイルの転送要求を受信すると,ファイルを指定するための図8に示すWebページW4を画像形成装置30aに送信する(ステップS34)。このWebページW4には,”ファイル名”,当該ファイルにアクセスするための”パスワード”の入力欄と,決定ボタンが表示される」との記載,および,「ファイル受信用端末30として画像形成装置30aを使用した場合を説明した」(画像形成装置はファイル受信用端末である)との記載と前記イ.の「ファイルのアクセス(転送)を許可」との記載から,「ファイルの転送要求が受け付けられたファイル受信用端末に前記ファイルのアクセスを許可するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求手段(WebページW4)」をよみとることができる。

(エ)ウ.の「受信者は,このWebページW4で,印刷したい”ファイル名”,当該ファイルにアクセスするための”パスワード”を入力し,決定ボタンを押下すると,」「”ファイル名”,当該ファイルにアクセスするための”パスワード”がファイル管理サーバ10に送信される(ステップS54)」との記載と前記(イ)で言及した「通信インターフェース」とから,「前記パスワードの入力が要求されたファイル受信用端末(画像形成装置)からパスワードを受信するパスワード受信手段」をよみとることができる。

(オ)イ.の「指定されたファイルの許可条件を満たす場合(例えば,ファイルに設定されたパスワードが一致した場合)に,ファイルのアクセス(転送)を許可」する旨の記載,ウ.の「当該ファイル名のファイルが存在する場合には(ステップS35の「Y」),ファイルデータ記憶部107を参照して,受信した当該ファイルにアクセスするための”パスワード”が正しいか否かを判断する(ステップS36)。この判断の結果,」「パスワードが正しい場合には(ステップS36の「Y」),該当するファイルを画像形成装置30aに送信」する旨の記載,前記「パスワードが一致」,「正しいか否かを判断」から「照合」をよみとることができる点を加味すれば,「前記受信したパスワードと前記ファイルに設定されたパスワードとを照合し,これらが一致した場合に前記ファイルのアクセスを許可するアクセス許可手段」とをよみとることができる。

(カ)イ.の「ファイル管理サーバ10は,」「ファイルのアクセス(転送)を許可してファイルを転送する」との記載,および,「ファイル受信用端末30が」「受信したファイルをハードディスク等に記憶する」との記載から,「前記アクセスを許可されたファイルを前記ファイル受信用端末に出力させる転送手段(送信手段)」をよみとることができる。

上記(ア)?(カ)によれば,引用文献1には,セキュリティに配慮し,受信者がファイルを受信できるほど記憶容量の大きな記憶装置を備えた情報機器を所有していなくても,ファイル提供者からネットワーク経由で安全にファイルを入手することを可能にすること(ア.とエ.参照)を目的とした次の発明(以下,「引用文献1発明」と呼ぶ。)が示されている。

「ファイル名とパスワードとの入力によりアクセスが許可されるファイルが,ファイル名と,ファイルへアクセスするためのパスワードとファイルデータと対応づけて格納されているファイルデータ記憶部と,
ネットワークを介して接続されたファイル受信用端末から前記ファイルの転送要求を受け付ける受信手段と,
前記ファイルの転送要求が受け付けられたファイル受信用端末に前記ファイルのアクセスを許可するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求手段(WebページW4)と,
前記パスワードの入力が要求されたファイル受信用端末(画像形成装置)からパスワードを受信するパスワード受信手段と,
前記受信したパスワードと前記ファイルに設定されたパスワードとを照合し,これらが一致した場合に前記ファイルのアクセスを許可するアクセス許可手段と,
前記アクセスを許可されたファイルを前記ファイル受信用端末に出力させる転送手段と,
を備える
ファイル管理サーバ。」

(2) 引用文献2
本願出願前に頒布され,原審で引用された刊行物である特開2001-125824号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

あ.「【0010】
【発明が解決しようとする課題】
・・・(中略)・・・
【0012】さらに,情報ネットワークに接続可能な端末も,フル装備が可能なパーソナルコンピュータから機能が制約される携帯電話まで,多岐に渡っている。
・・・(中略)・・・
【0021】そこで,本発明では,インターネット上での情報提供サービスにおいて,インターネット上に登録されたあらゆる形態の情報を,情報を要求してきた利用者の端末装置の環境がいかなる状態であっても,利用者の端末装置で参照可能な状態にして提供することを目的とする。具体的には,情報を要求してきた利用者の端末装置の環境を認識し,要求された情報の形態・形式が,利用者の端末装置で使用できないものを含む場合に,情報全体あるいは当該箇所のみを利用者の端末装置でも参照可能な形態・形式に変換して送出することを可能とすること目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明は,提供する側が情報を格納する場合においても,情報の提供を望む利用者が取得した情報を閲覧する場合においても,どちらも使用するアプリケーションが問題となる点に着目した。
・・・(中略)・・・
【0024】すなわち,本発明は,ネットワークを介して接続された端末装置から情報提供の要求を受付け,要求された情報を端末装置に送出する情報提供サービスに使用される情報提供方法であって,端末装置からの情報提供要求を受信した際に,端末装置が情報提供を送出する際に使用したアプリケーション機能を確認し,当該アプリケーション機能が要求された情報を処理可能かどうかを判断し,処理不可能と判断した場合に,提供する情報を前記アプリケーションが処理可能な形式に変換して,端末装置に送出することを特徴とする。」

い.「【0036】アプリ機能管理テーブル31は,端末装置3で稼働可能なアプリケーション毎に各アプリケーションで使用可能な機能が登録されている。
【0037】アプリケーションがブラウザAの場合,HTML表示及びHTMLリンクの機能は有しているが,XML表示,XLink,XPointerの機能は有していないことを示している。また,アプリケーションがブラウザCの場合,HTML表示及びHTMLリンクの機能は有していないが,XML表示,XLink,XPointerの機能は有していることが示されている。
【0038】処理機能管理テーブル41は,端末装置3から情報提供の要求が発生した場合に,端末装置3のアプリケーションに応じてどのような変換が必要かが管理されている。
【0039】アプリケーションがブラウザAの場合,XMLをサポートしていないため,情報の形式がHTMLでない場合はHTMLへの変換が必要であること(HTML変換41-1),双方向リンクが使用されている場合にHTMLのリンクに変換が必要であること(リンク変換41ー3),ポインタ変換(41-4)及び埋め込み(41-5)は行わず表示不能とすることが示されている。
【0040】また,図4の(c)に示すような利用者管理テーブル90を設けることにより,利用者毎に提供する情報の変換をより細やかに行うことが可能となる。
【0041】例えば,利用者管理テーブル90は,利用者識別子90-1,ブラウザ名90-2,登録アプリ名90-3から構成される。・・・(中略)・・・ブラウザ名90-2は,当該利用者が通常使用しているブラウザの名称が利用者に対応付けられて登録されている。登録アプリ名90-3は,当該利用者の端末装置3で利用可能なブラウザ以外のアプリケーションが登録されている。これにより,利用者が情報提供サービスに接続してきた場合に,利用者を識別する情報に基づいて,利用者管理テーブル90を検索し,登録されている利用者の端末装置3の環境(利用者が使用しているブラウザ名や,使用可能な他のアプリケーションなど)が容易に取得可能となる。なお,利用者管理テーブル90を使用しても,アプリ機能管理テーブル31や処理機能テーブル41と組み合わせて,変換の要否を判断してもよい。例えば,利用者管理テーブル90からブラウザの名称を特定しただけでは,ポインタ変換が必要かどうか不明な場合は,当該ブラウザ名をキーにして処理機能テーブル41を検索して確認し,ポインタ変換が不要であれば,要求されて情報を変換せずに提供し,ポインタ変換が必要であれば,情報中に含まれるポインタ機能を変換して提供する。
【0042】また,利用者管理テーブル90の別の例として,図4の(d)に示すように,利用者90-1と端末装置種別90-4を対応づけておくものであってもよい。この場合,例えば1人の利用者が複数の端末装置3を有している場合に有効である。利用者が,会社ではフル装備可能なデスクトップ型のパソコンを使用し,自宅や出張先ではノート型のパソコンを使用していたとする。この場合,同じブラウザソフトであっても,利用者が,表示装置の大きいデスクトップ型のパソコンを使用しているか,表示装置が小さいノート型パソコンを使用しているかによって,情報の変換の方式を異なるようにすることが可能となる。また,会社用のデスクトップ型のパソコンには,インストールされているが,自宅用のパソコンには,インストールされていないソフトウェアがある場合に,利用者が会社用のパソコンを使用しているか,自宅用のパソコンを使用しているかによって,情報の変換方式を変更することが可能となる。
【0043】変換機能10は,ネットワークインターフェース部10を介して端末装置3から入力された利用者からの情報の取得要求を受け取ると,取得要求に含まれる内容から端末装置3においてどのようなアプリケーションを使用して情報の取得要求がなされたかを識別する。・・・(中略)・・・
【0044】端末装置3側で使用したアプリケーションが特定できたら,アプリ機能管理部30は特定したアプリケーション名でアプリ機能管理テーブル31を検索して,当該アプリケーションでサポートしている機能を確認する。処理要求管理部40は,要求された情報の形式を確認して,端末装置3で使用しているアプリケーションがサポートしている機能で情報の参照が可能かどうかを判定し,参照可能でなければ,必要な変換処理を洗い出し,必要な変換を行う変換モジュールを変換モジュール管理部50を介して実行する。必要な変換が完了したら,ネットワークインターフェース部10を介して,変換された情報を要求のあった端末装置3に送出する。」

う.「【0046】情報提供装置1は,端末装置3からの情報提供の要求を受信すると,端末装置3が情報を要求する際に使用していたアプリケーションを特定する情報を,要求内容から取得して,使用しているアプリケーションを特定する(図5のステップS1)。具体的には,利用者が端末装置3で使用可能なブラウザを使用して情報提供要求を情報提供装置1に対して送出する場合に,端末装置3で使用しているブラウザの名称(可能であればバージョン情報も)が情報提供要求のデータ中に含まれている。・・・(中略)・・・さらに,端末装置3で使用しているアプリケーションを認識できる情報としてブラウザのアプリケーション名称やバージョン情報のみならず,ブラウザと連携して起動可能に設定されているアプリケーション(ヘルパーアプリケーションやプラグインなど)の名称も送出する機能をブラウザに持たせるようにすれば,提供する情報がワープロソフトで作成されたデータである場合に,その情報が閲覧可能であるかどうかをヘルパーアプリケーションやプラグインソフトの登録の有無で判定でき,端末装置3で参照可能な情報の形態・形式を判断がより容易になる。
【0047】アプリ機能管理部30および処理要求管理部40は,端末装置3で使用されているアプリケーション名が,アプリ機能管理テーブル31および処理機能管理テーブル41に登録されているかどうかを確認する(図5のステップS2)。どちらかのテーブルに登録されていた場合は,後述のステップS6に移る。どちらのテーブルにも登録されていない場合は,ステップS3に移る。
・・・(中略)・・・
【0049】ステップS5では,アプリ機能テーブル31あるいは処理機能管理テーブル41から判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の形態・形式とを照らしあわせて,情報の変換が必要かどうかを判断する。変換が必要と判断された場合は,ステップS7に移る。変換が不要と判断された場合は,要求された情報をそのまま端末装置3に送出する(図5のステップS7)。
【0050】ステップS6では,アプリ機能管理テーブル31および処理機能管理テーブル41から判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の格納形式とを照らし合わせて,どのような変換が必要かを判断し,必要な変換を行う変換プログラムを実行するよう変換モジュール管理部50に指示する。
【0051】変換モジュール管理部50は必要な変換機能51,52・・・を選択して実行し,提供する情報に対して必要な変換を施した提供のための情報を生成し,変換された情報をネットワークインターフェース部10を介して,端末装置3に送出する(図5のステップS7)。」

え.「【0060】図7は,本発明の第2の実施形態における構成を示す図である。本実施例では,情報の変換機能の具体的な例を示す。本実施例では,変換機能として,ポインタ情報変換部51,リンク情報変換部52およびファイル形式変換部53を有しており,変換モジュール管理部50に管理されている。変換モジュール管理部50は,リンク内容識別部60,リンク情報構築部70,部分情報切出部80の指示に応じて前記変換機能51,52,53から必要な変換モジュールを呼び出して情報の変換を行う。
・・・(中略)・・・
【0064】ファイル形式変換部53による変換例を図14に示す。図14では,情報を要求してきた端末装置において表示不可能な形式で情報が登録されている場合に,端末装置3の機能に応じて参照可能な形態に情報そのものを変換している例である。変換例1(図14の14-2)では,XML形式で記述された情報がHTML形式に変換されている例である。変換例2では,XMLで記述された情報に含まれるタグと称される情報の構造を示す制御情報を削除して,表示されるべき情報のみをテキストデータとして抽出している例である。これにより,端末装置3は,通常どのようなツールでも参照可能なテキストデータで情報を取得することが可能となる。」

お.「引用文献1の図4(a)アプリ機能管理テーブル?(d)利用者管理テーブル(その2)」

引用文献2に記載された事項を検討する。

(あ)あ.の「フル装備が可能なパーソナルコンピュータから機能が制約される携帯電話」との記載から,端末装置として「携帯端末装置」が含まれる。
あ.の「インターネット上での情報提供サービスにおいて,インターネット上に登録されたあらゆる形態の情報を,情報を要求してきた利用者の端末装置の環境を認識し,要求された情報の形態・形式が,利用者の端末装置で使用できないものを含む場合に,情報全体あるいは当該箇所のみを利用者の端末装置でも参照可能な形態・形式に変換して送出することを可能とする」との記載,い.の「アプリ機能管理テーブル31は,端末装置3で稼働可能なアプリケーション毎に各アプリケーションで使用可能な機能が登録されている」,「処理機能管理テーブル41は,端末装置3から情報提供の要求が発生した場合に,端末装置3のアプリケーションに応じてどのような変換が必要かが管理されている」との記載,う.の「アプリ機能テーブル31あるいは処理機能管理テーブル41から判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の形態・形式とを照らしあわせて,情報の変換が必要かどうかを判断する」との記載から,「端末装置で参照可能な形態・形式に変換して送出することを可能とし,端末のアプリケーションの機能を判明するのに用いるアプリ機能テーブルあるいは処理機能管理テーブル」をよみとることができるとともに,当該「形態・形式に変換」に関連して,第2の実施形態ではあるが,本発明における情報提供装置の基本構成(図2参照)と同様の構成を有する前記第2の実施形態(図7参照)における記載である,え.の「変換機能として」,「ファイル形式変換部53を有しており,変換モジュール管理部50に管理されている」,「ファイル形式変換部53による変換例」,「情報を要求してきた端末装置において表示不可能な形式で情報が登録されている場合に,端末装置3の機能に応じて参照可能な形態に情報そのものを変換している例である」との記載から,前記「形態・形式に変換」に「ファイル形式変換」を含めることができることは自明である。これらから,「携帯端末装置で参照可能なファイル形式を含む形態・形式に変換して送出することを可能とし,端末のアプリケーションの機能の判明に用いるアプリ機能テーブルあるいは処理機能管理テーブル」をよみとることができる。

(い)う.の「情報提供装置1は,端末装置3からの情報提供の要求を受信すると,端末装置3が情報を要求する際に使用していたアプリケーションを特定する情報を,要求内容から取得して,使用しているアプリケーションを特定する(図5のステップS1)」,「アプリ機能管理部30および処理要求管理部40は,端末装置3で使用されているアプリケーション名がアプリ機能管理テーブル31および処理機能管理テーブル41に登録されているかどうかを確認する(図5のステップS2)」,「ステップS5では,アプリ機能テーブル31あるいは処理機能管理テーブル41から判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の形態・形式とを照らしあわせて,情報の変換が必要かどうかを判断する」との記載から,「情報提供装置は,端末装置からの情報提供の要求を受信すると,端末装置が情報を要求する際に使用していたアプリケーションを特定する情報を,要求内容から取得して,使用しているアプリケーションを特定し,アプリ機能管理部および処理要求管理部は,端末装置で使用されているアプリケーション名が,アプリ機能管理テーブルおよび処理機能管理テーブルに登録されているかどうかを確認し,アプリ機能テーブルあるいは処理機能管理テーブルからアプリケーションの機能を判明する判明手段」をよみとることができる。

(う)上記(い)での言及における「判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の形態・形式とを照らしあわせて,情報の変換が必要かどうかを判断する」との記載から「前記判明手段により判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の形態・形式とを照らしあわせて,情報の変換が必要かどうかを判断する」ことをよみとることができる。続けて,う.の「変換が必要と判断された場合は,ステップS7(S7は「S6」の誤記と認められる。)に移る。」,「ステップS6では,アプリ機能管理テーブル31および処理機能管理テーブル41から判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の格納形式とを照らし合わせて,どのような変換が必要かを判断し,必要な変換を行う変換プログラムを実行するよう変換モジュール管理部50に指示する」との記載,「変換モジュール管理部50は必要な変換機能51,52・・・を選択して実行し,提供する情報に対して必要な変換を施した提供のための情報を生成し」との記載から,「変換が必要と判断された場合は,アプリ機能管理テーブルおよび処理機能管理テーブルから判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の格納形式とを照らし合わせて,どのような変換が必要かを判断する手段」をよみとることができる。
これらをあわせて,「前記判明手段により判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の形態・形式とを照らし合わせて,情報の変換が必要かどうかを判断し,変換が必要と判断された場合は,アプリ機能管理テーブルおよび処理機能管理テーブルから判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の格納形式とを照らし合わせて,どのような変換が必要かを判断する手段」をよみとることができる。

(え)う.の「必要な変換を行う変換プログラムを実行するよう変換モジュール管理部50に指示する」,「変換モジュール管理部50は必要な変換機能51,52・・・を選択して実行し,提供する情報に対して必要な変換を施した提供のための情報を生成し」との記載から「必要な変換を行う変換プログラムを実行するよう変換モジュール管理部に指示し,変換モジュール管理部は必要な変換機能を選択して実行し,提供する情報に対して必要な変換を施した提供のための情報を生成する手段」をよみとることができる。
また,う.の「変換が必要と判断された場合は,ステップS6に移る。変換が不要と判断された場合は,要求された情報をそのまま端末装置3に送出する(図5のステップS7)」(ステップS6については前記(う)の言及を参照。)との記載から,「変換が必要と判断された場合は,前記必要な変換機能を選択して実行し生成した,提供する情報に対して必要な変換を施した提供のための情報を送出し,変換が不要と判断された場合は,要求された情報をそのまま送出する送出手段」をよみとることができる。

上記(あ)?(え)によれば,引用文献2には,インターネット上での情報提供サービスにおいて,インターネット上に登録されたあらゆる形態の情報を,情報を要求してきた利用者の端末装置の環境がいかなる状態であっても,利用者の端末装置で参照可能な状態にして提供することを目的とした(あ.参照)次の発明(以下,「引用文献2発明」という。)が示されている。

「携帯端末装置で参照可能なファイル形式を含む形態・形式に変換して送出することを可能とし,端末のアプリケーションの機能の判明に用いるアプリ機能テーブルあるいは処理機能管理テーブルと,
情報提供装置は,端末装置からの情報提供の要求を受信すると,端末装置が情報を要求する際に使用していたアプリケーションを特定する情報を,要求内容から取得して,使用しているアプリケーションを特定し,アプリ機能管理部および処理要求管理部は,端末装置で使用されているアプリケーション名がアプリ機能管理テーブルおよび処理機能管理テーブルに登録されているかどうかを確認し,アプリ機能テーブルあるいは処理機能管理テーブルからアプリケーションの機能を判明する判明手段と,
前記判明手段により判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の形態・形式とを照らし合わせて,情報の変換が必要かどうかを判断し,変換が必要と判断された場合は,アプリ機能管理テーブルおよび処理機能管理テーブルから判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の格納形式とを照らし合わせて,どのような変換が必要かを判断する手段と,
必要な変換を行う変換プログラムを実行するよう変換モジュール管理部に指示し,変換モジュール管理部は必要な変換機能を選択して実行し,提供する情報に対して必要な変換を施した提供のための情報を生成する手段と,
前記必要な変換機能を選択して実行し生成した,提供する情報に対して必要な変換を施した提供のための情報を送出し,
変換が不要と判断された場合は,要求された情報をそのまま送出する送出手段と,
を備える情報提供サービスシステム。」

3.3 対比
3.3.1 本件補正発明と引用文献1発明とを対比する。

(1)引用文献1発明の「ファイル名と当該ファイルにアクセスするためのパスワードとの入力によりアクセスが許可されるファイルが,ファイル名と,ファイルへアクセスするためのパスワードとファイルデータと対応づけて格納されるファイルデータ記憶部」において,「パスワード」に関し本願明細書の段落【0025】に「パスワードPW,すなわち解除コードULCを入力」と記載されていることから,「パスワード」は「解除コード」に対応し,前記「アクセスが許可されるファイル」は,ア.に「セキュリティ」,「安全」を得ることが課題である旨の記載があることから「セキュリティ保護された」ファイルとみることができ,「許可」は「解除」とみることができる点をふまえれば,引用文献1発明の前記事項と本件補正発明の「所定の解除コードの入力により解除可能にセキュリティ保護された出力対象データを保存するデータ保存手段」とに実質的な差異はない。

(2)引用文献1発明の「ファイル受信用端末」と本件補正発明の「携帯端末」とは上位概念において「端末」で共通する。よって,引用文献1発明の「ネットワークを介して接続されたファイル受信用端末から前記ファイルの転送要求を受け付ける受信手段」と本件補正発明の「ネットワークを介して接続された携帯端末から前記出力対象データの出力要求を受け付ける出力要求受信手段」とは「ネットワークを介して接続された端末から前記出力対象データの出力要求を受け付ける出力要求受信手段」で共通する。

(3)以下,上記(1),(2)での言及をふまえたものとする。引用文献1発明の「前記ファイルの転送要求が受け付けられたファイル受信用端末に前記ファイルのアクセスを許可するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求手段(WebページW4)」と本件補正発明の「前記出力要求が受け付けられた携帯端末に前記セキュリティを解除するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求手段」とは「前記出力要求が受け付けられた端末に前記セキュリティを解除するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求手段」で共通する。

(4)引用文献1発明の「前記パスワードの入力が要求されたファイル受信用端末(画像形成装置)からパスワードを受信するパスワード受信手段」と本件補正発明の「前記パスワードの入力が要求された携帯端末からパスワードを受信するパスワード受信手段」とは「前記パスワードの入力が要求された端末からパスワードを受信するパスワード受信手段」で共通する。

(5)引用文献1発明の「前記受信したパスワードと前記ファイルに設定されたパスワードとを照合し,これらが一致した場合に前記ファイルのアクセスを許可するアクセス許可手段」と本件補正発明の「前記受信したパスワードと前記解除コードとを照合し,これらが一致した場合に前記出力対象データのセキュリティを解除するセキュリティ解除手段」とに実質的な差異はない。

(6)引用文献1発明の「前記ファイルを前記ファイル受信用端末に出力させる転送手段」と本件補正発明の「前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できる場合には前記ファイル形式の変換を行わずに前記携帯端末に出力させ,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できない場合には前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理手段」とは「前記セキュリティが解除された出力対象データを前記端末に出力させる出力処理手段」で共通する。

(7)引用文献1発明の「ファイル管理サーバ」は「データ処理装置」とみることができる。引用文献1発明の「ファイル管理サーバ」と本件補正発明の「データ処理装置」とに実質的な差異はない。

(8)上記(1)?(7)の検討によれば,引用文献1発明と本件補正発明とは次の点で一致し,そして相違している。

〈一致点〉
「所定の解除コードの入力により解除可能にセキュリティ保護された出力対象データを保存するデータ保存手段と,
ネットワークを介して接続された端末から前記出力対象データの出力要求を受け付ける出力要求受信手段と,
前記出力要求が受け付けられた端末に前記セキュリティを解除するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求手段と,
前記パスワードの入力が要求された端末からパスワードを受信するパスワード受信手段と,
前記受信したパスワードと前記解除コードとを照合し,これらが一致した場合に前記出力対象データのセキュリティを解除するセキュリティ解除手段と,
前記アクセスを許可された出力対象データを前記端末に出力させる出力処理手段と,
を備えるデータ処理装置」

〈相違点1〉
出力要求受信手段,パスワード要求手段,パスワード受信手段,および,出力処理手段に係る端末が本件補正発明は「携帯」端末であるのに対し,引用文献1発明は「ファイル受信用端末」である点。
〈相違点2〉
セキュリティが解除された出力対象データ(アクセスを許可された出力対象データ)に関し(下線部は相違点を示す。「携帯」の部分は前記〈相違点1〉において抽出済みとした。),本件補正発明は,前記携帯端末で出力可能なファイル形式を記憶する形式情報保存手段と, 前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定手段と, 前記判定された結果に基づいて,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できるか否か判断し,前記携帯端末に出力できない場合にのみ,変換すべきファイル形式を決定するファイル形式決定手段と, 前記セキュリティが解除された出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換手段と, 前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できる場合には前記ファイル形式の変換を行わずに前記携帯端末に出力させ,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できない場合には前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理手段を備えるのに対し,引用文献1発明は,セキュリティが解除された出力対象データ(アクセスを許可された出力対象データ)を出力させる出力処理手段を備える点。

3.3.2 本件補正発明と引用文献2発明とを対応づける。(本件補正発明の「形式情報保存手段」ないし「出力処理手段」について対応づける。)
(1)引用文献2発明の「携帯端末装置で参照可能」は,携帯端末装置において参照可能(参照して処理し出力可能)であることを意味すると解される。また,引用文献2発明の「機能」は,「アプリ機能テーブルあるいは処理機能管理テーブルから判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の形態・形式とを照らし合わせ」ることから,「機能」は照らし合わせを可能とする「情報の形態・形式」を実質的に含むことは自明である(図4の例えば「HTML表示」機能からよみとれるHTML形式参照)。よって,引用文献2発明の「携帯端末装置で参照可能なファイル形式を含む形態・形式に変換して送出することを可能とし,端末のアプリケーションの機能の判明に用いるアプリ機能テーブルあるいは処理機能管理テーブル」は本件補正発明の「携帯端末で出力可能なファイル形式を記憶する形式情報保存手段」と実質的な差異はない。

(2)引用文献2発明の「 携帯端末装置で参照可能なファイル形式を含む形態・形式に変換して送出する」ことになる「提供する情報」は本件補正発明の「出力対象データ」に相当する。また,引用文献2発明の「アプリケーションの機能」における当該「機能」は,前記(1)で言及のように,照らし合わせを可能とする「情報の形態・形式」を実質的に含む点をふまえれば,引用文献2発明の「端末装置が情報を要求する際に使用していたアプリケーションを特定する情報を,要求内容から取得して,使用しているアプリケーションを特定し,アプリ機能管理部および処理要求管理部は,端末装置で使用されているアプリケーション名が,アプリ機能管理テーブルおよび処理機能管理テーブルに登録されているかどうかを確認し,アプリ機能テーブルあるいは処理機能管理テーブルからアプリケーションの機能を判明する判明手段」は本件補正発明の「前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定手段」と実質的な差異はない。

(3)引用文献2発明の「前記判明手段により判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の形態・形式とを照らし合わせて,情報の変換が必要かどうかを判断し,変換が必要と判断された場合は,アプリ機能管理テーブルおよび処理機能管理テーブルから判明したアプリケーションの機能と,提供する情報の格納形式とを照らし合わせて,どのような変換が必要かを判断する手段」と本件補正発明の「前記判定された結果に基づいて,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できるか否か判断し,前記携帯端末に出力できない場合にのみ,変換すべきファイル形式を決定するファイル形式決定手段」とは,上位概念において「前記判定された結果に基づいて,前記出力対象データを前記端末に出力できるか否か判断し,前記端末に出力できない場合にのみ,変換すべきファイル形式を決定するファイル形式決定手段」で共通する。

(4)引用文献2発明の「変換モジュール管理部は必要な変換機能を選択して実行し,提供する情報に対して必要な変換を施した提供のための情報を生成する手段」と本件補正発明の「前記セキュリティが解除された出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換手段」とは上位概念において「前記出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換手段」で共通する。

(5)引用文献2発明の「前記必要な変換機能を選択して実行し生成した,提供する情報に対して必要な変換を施した提供のための情報を送出し,
変換が不要と判断された場合は,要求された情報をそのまま送出する送出手段」と本件補正発明の「前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できる場合には前記ファイル形式の変換を行わずに前記携帯端末に出力させ,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できない場合には前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理手段」とは,上位概念において「前記出力対象データを前記端末に出力できる場合には前記ファイル形式の変換を行わずに前記端末に出力させ,前記出力対象データを前記端末に出力できない場合には前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記端末に出力させる出力処理手段」で共通する。

上記(1)?(5)の検討によれば,引用文献2発明は本件補正発明における下記〈構成要件〉を備えているといえる。

〈構成要件〉
「端末で出力可能なファイル形式を記憶する形式情報保存手段と,
前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定手段と,
前記判定された結果に基づいて,前記出力対象データを前記端末に出力できるか否か判断し,前記端末に出力できない場合にのみ,変換すべきファイル形式を決定するファイル形式決定手段と,
前記出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換手段と,
前記出力対象データを前記端末に出力できる場合には前記ファイル形式の変換を行わずに前記端末に出力させ,前記出力対象データを前記端末に出力できない場合には前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記端末に出力させる出力処理手段と,
を備えるデータ処理装置」

3.4 本件補正発明と引用文献1発明との相違点(3.3.1の対比における〈相違点1〉,〈相違点2〉)についての当審判断
〈相違点1〉について
引用文献1発明は,ア.の記載から,ファイル受信用端末がファイルサーバを利用する技術に関し,受信者が大容量の記憶装置を備えた情報機器を所有していない場合でも,セキュリティや安全に配慮したファイル入手を可能とするものであり,一方,引用文献2発明は,情報提供サービス(情報提供サーバとみれる)を利用する技術に関し,両者は情報提供サーバによる情報提供技術とみることができて分野が共通し,構成要件などは相互に参酌できる関係にあり,あ.には,機能が制約される「携帯電話」まで情報提供サービスを受けられる旨記載されていることから,端末に携帯端末が含まれることは自明である。
してみれば,引用文献1発明の「ファイル受信用端末」に関し,出力要求受信手段,パスワード要求手段,パスワード受信手段,および,出力処理手段に係る当該ファイル受信用端末を「携帯」端末と成すことは,技術分野が共通する引用文献2の前記技術を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。

〈相違点2〉について
引用文献1発明と技術分野が共通する引用文献2において,あ.には,「インターネット上での情報提供サービスにおいて,インターネット上に登録されたあらゆる形態の情報を,情報を要求してきた利用者の端末装置の環境がいかなる状態であっても,利用者の端末装置で参照可能な状態にして提供することを目的とする。具体的には,情報を要求してきた利用者の端末装置の環境を認識し,要求された情報の形態・形式が,利用者の端末装置で使用できないものを含む場合に,情報全体あるいは当該箇所のみを利用者の端末装置でも参照可能な形態・形式に変換して送出することを可能とすること目的とする」ことが記載されていて,端末装置での機能や処理を端末装置自身で行わずサーバの情報提供サービスによることが示されており,前記「あらゆる形態の情報を,情報を要求してきた利用者の端末装置の環境がいかなる状態であっても,利用者の端末装置で参照可能な状態にして提供する」ことから,引用文献2のファイル形式変換に係る処理のサービスの技術を引用文献1発明に記載のようなセキュリティを解除したあとの出力対象データについて適用することに阻害要因はないことは明らかである。そして,引用文献2には,引用文献1発明の「セキュリティが解除された出力対象データ(アクセスを許可された出力対象データ)」に関連し,当該ファイル形式変換に係る処理のサービスとして3.3.2の〈構成要件〉に示した発明が示されている。
してみれば,引用文献1発明において,引用文献2(引用文献2発明の端末として携帯端末(携帯電話,引用文献2,図1参照。)が含まれることは自明である)のファイル形式変換に係る前記〈構成要件〉に示した発明を,セキュリティが解除された出力対象データ(アクセスを許可された出力対象データ)に対して適用することにより,
前記携帯端末で出力可能なファイル形式を記憶する形式情報保存手段と,
前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定手段と,
前記判定された結果に基づいて,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できるか否か判断し,前記携帯端末に出力できない場合にのみ,変換すべきファイル形式を決定するファイル形式決定手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できる場合には前記ファイル形式の変換を行わずに前記携帯端末に出力させ,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できない場合には前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理手段を備える,と成すことは当業者が容易になし得ることである。

そして,本件補正発明の構成により奏する効果も引用文献1発明および引用文献2発明を組合わせたことから当然予測される効果の範囲内のもので格別顕著なものとは認められない。
したがって,本件補正発明は当業者が引用文献1発明および引用文献2発明から容易に発明することができたものである。

3.5 以上のとおり,本件補正発明は,特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,独立して特許を受けることができないものである。

4. むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
(1)平成25年4月22日付の手続補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成24年10月4日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。(再掲する。以下「本願発明」という。)

「所定の解除コードの入力により解除可能にセキュリティ保護された出力対象データを保存するデータ保存手段と,
ネットワークを介して接続された携帯端末から前記出力対象データの出力要求を受け付ける出力要求受信手段と,
前記出力要求が受け付けられた携帯端末に前記セキュリティを解除するためのパスワードの入力を要求するパスワード要求手段と,
前記パスワードの入力が要求された携帯端末からパスワードを受信するパスワード受信手段と,
前記受信したパスワードと前記解除コードとを照合し,これらが一致した場合に前記出力対象データのセキュリティを解除するセキュリティ解除手段と,
前記携帯端末で出力可能なファイル形式を記憶する形式情報保存手段と,
前記出力対象データのファイル形式を判定するファイル形式判定手段と,
前記判定された結果に基づいて,前記セキュリティが解除された出力対象データを,前記形式情報保存手段に記憶されたファイル形式のいずれに変換するかを決定するファイル形式決定手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データを前記決定されたファイル形式に変換するファイル変換手段と,
前記セキュリティが解除された出力対象データ,又は前記ファイル形式が変換された出力対象データを前記携帯端末に出力させる出力処理手段と,
を備えるデータ処理装置。」

(2)引用文献
原審の拒絶の理由に引用された,本願出願前に頒布された刊行物である前記引用文献1,2には,前記第2の3.2(1)及び(2)で摘記した事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明は,前記「第2の2. 本件補正における補正の目的について」の判断で検討した本件補正発明における発明特定事項である,「前記携帯端末に出力できるか否か判断し,前記携帯端末に出力できない場合にのみ,変換すべきファイル形式」,「を前記携帯端末に出力できる場合には前記ファイル形式の変換を行わずに前記携帯端末に出力させ,前記セキュリティが解除された出力対象データを前記携帯端末に出力できない場合には」なる限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の3.に記載したとおり,引用文献1発明,引用文献2発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用文献1発明,引用文献2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり,本願発明は,特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,他の請求項について検討するまでもなく,本願は,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-16 
結審通知日 2014-10-21 
審決日 2014-11-05 
出願番号 特願2007-311669(P2007-311669)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸島 弘詩  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 辻本 泰隆
石井 茂和
発明の名称 データ処理装置、データ処理システム、データ処理装置のためのコンピュータプログラムおよびデータ処理方法  
代理人 速水 進治  

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