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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1295303
審判番号 不服2013-11656  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-19 
確定日 2014-12-17 
事件の表示 特願2008-549667「サイレント抑圧時のROHCパフォーマンスを向上させる方法と装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月 4日国際公開、WO2007/112140、平成21年 6月11日国内公表、特表2009-522954〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2007年 1月 5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年 1月 6日、(US)米国、2006年10月10日、(US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年 2月 8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年 6月19日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成25年 6月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成25年 6月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成23年 6月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された
「パケットデータ通信システムにおけるヘッダー圧縮方法であって、
複数の連続するパケットの少なくとも1個に対する実時間伝送プロトコル(RTP)タイムスタンプ(TS)を決定し、
所定数のパケットが一定のタイムスタンプインクリメント値を持つまで連続するパケットのRTPタイムスタンプインクリメント値を計算し、
この一定のタイムスタンプインクリメント値をヘッダー圧縮のためのタイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値として割り当て、
このタイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値を用いて各RTPタイムスタンプ(TS)の値をダウンスケーリングし、
前記割り当てられたタイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値に基づいてヘッダーを圧縮する、
ヘッダー圧縮方法。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を
「パケットデータ通信システムにおけるヘッダー圧縮方法であって、
複数の連続するパケットの少なくとも1個に対する実時間伝送プロトコル(RTP)タイムスタンプ(TS)を決定し、
所定数のパケットが一定のタイムスタンプインクリメント値を持つまで連続するパケットのRTPタイムスタンプインクリメント値を計算し、
前記一定のRTPタイムスタンプインクリメント値をヘッダー圧縮のためのタイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値として割り当て、
前記タイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値を用いて各RTPタイムスタンプ(TS)の値をダウンスケーリングし、
前記ヘッダーのタイムスタンプフィールドが前記ダウンスケーリングされた各RTPタイムスタンプの値を含むように前記ヘッダーを圧縮する、
ヘッダー圧縮方法。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。(当審注:アンダーラインは補正箇所を示す。)

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件、及び、シフト補正の有無
上記補正は、本願発明の特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記割り当てられたタイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値に基づいてヘッダーを圧縮する」という構成が、「前記ヘッダーのタイムスタンプフィールドが前記ダウンスケーリングされた各RTPタイムスタンプの値を含むように前記ヘッダーを圧縮する」ものであることを限定することを含むものであり、当該補正は、特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び同法第17条の2第5項(補正の目的)の規定に適合している。
また、特許法第17条の2第4項(シフト補正)に違反するものでもない。

(2)独立特許要件
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて、以下検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で、「補正後の発明」として認定したとおりのものである。

[引用発明]
原査定の拒絶理由に引用された特開2002-204260号公報(以下、「引用例」という。)には、「ヘッダ圧縮方法及び装置並びにプログラム」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヘッダ圧縮方法及び装置並びにプログラムに関し、より特定的には、パケット単位で行われるデータ伝送において、送信側でパケットのヘッダ部を伝送データに応じて圧縮するヘッダ圧縮方法、及び当該方法を用いたヘッダ圧縮装置、並びに当該方法を実行するためのヘッダ圧縮プログラムに関する。」(5頁8欄)

ロ.「【0048】以下に、上記構成による第1の実施形態のヘッダ圧縮装置で行われるヘッダ圧縮方法を説明する。本実施形態で扱われる入力データは、RTP、UDP、IPによってパケット化された動画像符号化データや音声符号化データ等である。入力されたパケットのヘッダは、送信側でRTP、UDP、IPのヘッダ部が圧縮され、受信側へと伝送される。受信側では、RTP、UDP、IPのヘッダ部が復元され、元のパケットが出力される。パケットのヘッダには、タイムスタンプとシーケンスナンバーが含まれる。」(12頁22欄)

ハ.「【0059】図4は、本発明の第2の実施形態に係るヘッダ圧縮方法を行うためのヘッダ圧縮装置の構成を示すブロック図である。図4において、第2の実施形態のヘッダ圧縮装置は、タイムスタンプ算出情報計算部11と、タイムスタンプ算出情報蓄積部22と、タイムスタンプ圧縮法判定部23と、タイムスタンプ算出情報管理部14と、タイムスタンプ非圧縮ヘッダ圧縮部15と、タイムスタンプ圧縮ヘッダ圧縮部16と、タイムスタンプ算出情報更新信号送信部17と、入力切換部18と、パケット蓄積部29とを備える。図4に示すように、第2の実施形態のヘッダ圧縮装置は、上記第1の実施形態のヘッダ圧縮装置のタイムスタンプ算出情報履歴記憶部12及びタイムスタンプ圧縮法判定部13を、タイムスタンプ算出情報蓄積部22及びタイムスタンプ圧縮法判定部23に代え、パケット蓄積部29をさらに加えた構成である。なお、第2の実施形態のヘッダ圧縮装置におけるその他の構成は、上記第1の実施形態のヘッダ圧縮装置と同様であり、構成については同一の参照番号を付してその説明を省略する。
【0060】パケット蓄積部29は、伝送すべき圧縮前のヘッダ部のパケットを順に入力し、ファーストインファーストアウト(FIFO)で予め決められた数のパケットを一時蓄積及び出力する。タイムスタンプ算出情報蓄積部22は、タイムスタンプ算出情報計算部11で計算されたタイムスタンプ算出情報を、パケット蓄積部29に蓄積された複数のパケットに対応する分だけ蓄積する。タイムスタンプ圧縮法判定部23は、タイムスタンプ算出情報蓄積部22に蓄積されている複数のタイムスタンプ算出情報と、タイムスタンプ算出情報管理部14が管理するタイムスタンプ算出情報とに基づいて、パケット蓄積部29に蓄積された先頭の(時間的に先行する)パケットのタイムスタンプ圧縮方法を判定する。入力切換部18は、タイムスタンプ圧縮法判定部23からの制御に従って、パケット蓄積部29に蓄積された複数のパケットをタイムスタンプ非圧縮ヘッダ圧縮部15又はタイムスタンプ圧縮ヘッダ圧縮部16のいずれかへ順次出力する。」(14頁26欄?15頁27欄)

ニ.「【0061】以下に、上記構成による第2の実施形態のヘッダ圧縮装置で行われるヘッダ圧縮方法を、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、説明を分かり易くするために、パケット蓄積部29に、パケットi?j(jは、j>iを満たす整数)が蓄積されるものとする。まず、タイムスタンプ算出情報計算部11は、タイムスタンプ算出情報として、処理対象とする現在のパケットのタイムスタンプと1つ前のパケットのタイムスタンプとの差分、及びシーケンスナンバーの差分をそれぞれ計算し、シーケンスナンバー1つ当たりのタイムスタンプの増加量であるデルタタイムスタンプを求める。ここで、タイムスタンプ算出情報計算部11は、パケット蓄積部29に蓄積された複数のパケットi?jに対応させて、デルタタイムスタンプΔt(i)?Δt(j)を求める。なお、デルタタイムスタンプΔt(k)(k=i?j)は、パケット(k-1)とパケットkとのタイムスタンプ差分を意味する。この求められた複数のデルタタイムスタンプΔt(i)?Δt(j)は、タイムスタンプ算出情報蓄積部22に出力される。タイムスタンプ算出情報蓄積部22は、パケット蓄積部29に蓄積された複数のパケットi?jに対応するデルタタイムスタンプΔt(i)?Δt(j)をそれぞれ蓄積する。この蓄積されたデルタタイムスタンプΔt(i)?Δt(j)は、タイムスタンプ圧縮法判定部23によって適宜参照される。
【0062】次に、タイムスタンプ圧縮法判定部23は、先頭のパケットiのデルタタイムスタンプΔt(i)とタイムスタンプ算出情報管理部14で管理されているデルタタイムスタンプΔTSとを比較する。この比較の結果、双方のデルタタイムスタンプが同じ(Δt(i)=ΔTS)場合、タイムスタンプ圧縮法判定部23は、タイムスタンプを圧縮すべきと判定し、パケット蓄積部29に蓄積されているパケットiがタイムスタンプ圧縮ヘッダ圧縮部16へ供給されるように、入力切換部18の切り換えを制御する。一方、双方のデルタタイムスタンプが異なる(Δt(i)≠ΔTS)場合、タイムスタンプ圧縮法判定部23は、タイムスタンプ算出情報蓄積部22に蓄積されている後続するデルタタイムスタンプΔt(i+1)?Δt(j)を参照して、現在のデルタタイムスタンプΔTSを更新すべきか否かを判断する。このデルタタイムスタンプの更新は、パケット(i+1)以降の圧縮ヘッダ送信効率が向上するように、異なると判断されたデルタタイムスタンプΔt(i)と同じ値が、所定数x以上連続しているかで判断される。ここで、所定数xとは、上記第1の実施形態で説明したとおりであり、x=4とした場合には、デルタタイムスタンプΔt(i+1)?Δt(i+3)の値がデルタタイムスタンプΔt(i)と同じであるかが確認される。なお、このようにx=4とした場合、パケット蓄積部29には常に4つのパケットを蓄積するように、またタイムスタンプ算出情報蓄積部22にはその各パケットに対応する4つのデルタタイムスタンプを蓄積するようにすれば十分である。
【0063】そして、デルタタイムスタンプΔt(i)が所定数x以上連続するのであれば、タイムスタンプ圧縮法判定部23は、現在のデルタタイムスタンプΔTSをデルタタイムスタンプΔt(i)に更新させると共に、パケット蓄積部29に蓄積されているパケットiがタイムスタンプ非圧縮ヘッダ圧縮部15へ供給されるように、入力切換部18の切り換えを制御する。一方、所定数x以上連続しなければ、タイムスタンプ圧縮法判定部23は、デルタタイムスタンプΔTSはそのままで、パケットiがタイムスタンプ非圧縮ヘッダ圧縮部15へ供給されるように、入力切換部18の切り換えを制御する。このように、パケットiの処理が完了すると、パケット蓄積部29には、新たにパケット(j+1)が蓄積され、タイムスタンプ算出情報蓄積部22には、新たに計算されたデルタタイムスタンプΔt(j+1)が蓄積される。このとき、処理済みのデルタタイムスタンプΔt(i)を削除してもよい。」(15頁27?28欄)

ホ.「【0064】最後に、第2の実施形態のヘッダ圧縮装置で行われるヘッダ圧縮方法の処理手順を、図5に示すフローチャートを用いて説明する。まず、デルタタイムスタンプΔTSが登録(更新)される(ステップS51)。この値には、予め定められた値が用いられてもよいし、1番目のパケットと2番目のパケットとから計算した値が用いられてもよい。入力されるパケットは、予め決められた数だけ蓄積され、この蓄積されたパケットi?jに対応するデルタタイムスタンプΔt(i)?Δt(j)が複数計算される(ステップS52,S53)。次に、先頭のパケットiのデルタタイムスタンプΔt(i)とデルタタイムスタンプΔTSとが比較される(ステップS54)。ここで、双方のデルタタイムスタンプが同じなら、タイムスタンプを省略(圧縮)した最小圧縮パケットによるヘッダ圧縮が行われる(ステップS55)。双方のデルタタイムスタンプが異なるなら、デルタタイムスタンプΔt(i)の値が、連続するデルタタイムスタンプΔt(i+1)?Δt(i+x)の値と同じかどうかが判定される(ステップS56)。同じであれば、デルタタイムスタンプΔTSが更新され(ステップS57)、タイムスタンプを省略せずに送信できる参照情報更新パケットによるヘッダ圧縮が行われる(ステップS58)。その際、デルタタイムスタンプ更新のため、拡張部の必要なフィールドが付加される。異なれば、デルタタイムスタンプΔTSが更新されずに、参照情報更新パケットによるヘッダ圧縮が行われる(ステップS58)。その際、デルタタイムスタンプ更新のための拡張部は付加されない。そして、パケットを1つ処理すると新しいパケット入力を受け付け、デルタタイムスタンプの計算から繰り返し行われる(ステップS59,S60)。
【0065】以上のように、本発明の第2の実施形態に係るヘッダ圧縮方法及び装置によれば、所定数のパケットを予め蓄積しておいて、それに対応する実際のタイムスタンプ算出情報をそれぞれ予め求めておき、その求めた中に処理対象とするパケットのタイムスタンプ算出情報と同じ情報が所定数以上連続してあるかどうかで、タイムスタンプ算出情報の変化が一時的なものかどうかを判断する。そして、タイムスタンプ算出情報が所定数以上連続してあれば、タイムスタンプ算出情報を更新し、連続してなければ、更新しないように制御する。これにより、データ伝送処理に時間的遅延が生じるが、実際に伝送するデータを確認して処理することができるので、伝送データに応じた効率のよいヘッダ圧縮を確実に行うことが可能となる。」(15頁28欄?16頁29欄)

上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、
a)上記イ.の記載から、引用例には、「パケット」「データ伝送」における「ヘッダ圧縮方法」が記載されていると認められる。
b)上記同ニ.【0061】の「・・・パケット蓄積部29に、パケットi?j(jは、j>iを満たす整数)が蓄積されるものとする。まず、タイムスタンプ算出情報計算部11は、タイムスタンプ算出情報として、処理対象とする現在のパケットのタイムスタンプと1つ前のパケットのタイムスタンプとの差分、及びシーケンスナンバーの差分をそれぞれ計算し、・・・」という記載において、「現在のパケットのタイムスタンプと1つ前のパケットのタイムスタンプとの差分」を計算する以上、各「パケット」の「タイムスタンプ」が特定されることは自明であるから、引用例の方法では、各「パケット」の「タイムスタンプ」が決定されるものといえる。
さらに、上記ハ.【0060】の「パケット蓄積部29は、伝送すべき圧縮前のヘッダ部のパケットを順に入力し、ファーストインファーストアウト(FIFO)で予め決められた数のパケットを一時蓄積及び出力する。・・・」という記載も参酌すると、引用例の方法では、複数の連続する「パケット」に対して、「タイムスタンプ」が決定されるものと認められる。
そして、上記ロ.「・・・第1の実施形態のヘッダ圧縮装置で行われるヘッダ圧縮方法を説明する。本実施形態で扱われる入力データは、RTP、UDP、IPによってパケット化された動画像符号化データや音声符号化データ等である。入力されたパケットのヘッダは、送信側でRTP、UDP、IPのヘッダ部が圧縮され、受信側へと伝送される。・・・パケットのヘッダには、タイムスタンプとシーケンスナンバーが含まれる。」及び同ハ.【0059】の「・・・第2の実施形態のヘッダ圧縮装置は、上記第1の実施形態のヘッダ圧縮装置のタイムスタンプ算出情報履歴記憶部12及びタイムスタンプ圧縮法判定部13を、タイムスタンプ算出情報蓄積部22及びタイムスタンプ圧縮法判定部23に代え、パケット蓄積部29をさらに加えた構成である。なお、第2の実施形態のヘッダ圧縮装置におけるその他の構成は、上記第1の実施形態のヘッダ圧縮装置と同様であり、構成については同一の参照番号を付してその説明を省略する。」という記載から、引用例の方法における「タイムスタンプ」が、「RTP(実時間伝送プロトコル)」の「タイムスタンプ」であることは明らかである。
c)上記ニ.【0061】及び同ニ.【0062】の「・・・異なると判断されたデルタタイムスタンプΔt(i)と同じ値が、所定数x以上連続しているかで判断される。ここで、所定数xとは、上記第1の実施形態で説明したとおりであり、x=4とした場合には、デルタタイムスタンプΔt(i+1)?Δt(i+3)の値がデルタタイムスタンプΔt(i)と同じであるかが確認される。なお、このようにx=4とした場合、パケット蓄積部29には常に4つのパケットを蓄積するように、またタイムスタンプ算出情報蓄積部22にはその各パケットに対応する4つのデルタタイムスタンプを蓄積するようにすれば十分である。」という記載から、引用例の方法では、「所定数」の連続する「パケット」の「タイムスタンプの増加量である」「デルタタイムスタンプΔt(i)」を算出するとともに、「所定数」の「パケット」が同じ「デルタタイムスタンプ」値を有するか否かを判断するものと認められる。
d)上記ニ.【0062】の「・・・タイムスタンプ圧縮法判定部23は、先頭のパケットiのデルタタイムスタンプΔt(i)とタイムスタンプ算出情報管理部14で管理されているデルタタイムスタンプΔTSとを比較する。この比較の結果、双方のデルタタイムスタンプが同じ(Δt(i)=ΔTS)場合、タイムスタンプ圧縮法判定部23は、タイムスタンプを圧縮すべきと判定し、パケット蓄積部29に蓄積されているパケットiがタイムスタンプ圧縮ヘッダ圧縮部16へ供給されるように、入力切換部18の切り換えを制御する。・・・」及び同ホ.【0064】の「・・・先頭のパケットiのデルタタイムスタンプΔt(i)とデルタタイムスタンプΔTSとが比較される(ステップS54)。ここで、双方のデルタタイムスタンプが同じなら、タイムスタンプを省略(圧縮)した最小圧縮パケットによるヘッダ圧縮が行われる(ステップS55)。・・・」という記載から、引用例の方法は、「ヘッダ圧縮」を行うための「タイムスタンプ算出情報管理部14で管理されているデルタタイムスタンプΔTS」を備えるものと認められる。
e)上記ニ.【0062】の「・・・タイムスタンプ圧縮法判定部23は、タイムスタンプ算出情報蓄積部22に蓄積されている後続するデルタタイムスタンプΔt(i+1)?Δt(j)を参照して、現在のデルタタイムスタンプΔTSを更新すべきか否かを判断する。このデルタタイムスタンプの更新は、パケット(i+1)以降の圧縮ヘッダ送信効率が向上するように、異なると判断されたデルタタイムスタンプΔt(i)と同じ値が、所定数x以上連続しているかで判断される。ここで、所定数xとは、上記第1の実施形態で説明したとおりであり、x=4とした場合には、デルタタイムスタンプΔt(i+1)?Δt(i+3)の値がデルタタイムスタンプΔt(i)と同じであるかが確認される。・・・」及び同【0063】の「そして、デルタタイムスタンプΔt(i)が所定数x以上連続するのであれば、タイムスタンプ圧縮法判定部23は、現在のデルタタイムスタンプΔTSをデルタタイムスタンプΔt(i)に更新させると共に・・・」という記載から、引用例の方法は、「所定数」の「デルタタイムスタンプΔt(i)」が同じ値である場合に、「デルタタイムスタンプΔt(i)」を「デルタタイムスタンプΔTS」とするものと認められる。
f)上記ニ.【0063】の「・・・タイムスタンプ圧縮法判定部23は、現在のデルタタイムスタンプΔTSをデルタタイムスタンプΔt(i)に更新させると共に、パケット蓄積部29に蓄積されているパケットiがタイムスタンプ非圧縮ヘッダ圧縮部15へ供給されるように、入力切換部18の切り換えを制御する。・・・」及び同ホ.【0064】の「・・・デルタタイムスタンプΔTSが更新され(ステップS57)、タイムスタンプを省略せずに送信できる参照情報更新パケットによるヘッダ圧縮が行われる(ステップS58)。その際、デルタタイムスタンプ更新のため、拡張部の必要なフィールドが付加される。・・・」という記載から、引用例の方法では、「デルタタイムスタンプΔt(i)」を「デルタタイムスタンプΔTS」とした場合には、「タイムスタンプを省略せずに送信できる参照情報更新パケットによるヘッダ圧縮」を行うこと、さらに、上記ホ.【0064】の記載及び図5から、引用例の方法では、「デルタタイムスタンプΔt(i)」を「デルタタイムスタンプΔTS」とした後、新たな「パケット」の「デルタタイムスタンプΔt(i)とデルタタイムスタンプΔTSとが比較され」、同じ場合には、「タイムスタンプを省略(圧縮)した最小圧縮パケットによるヘッダ圧縮」を行うことが明らかであるから、引用例の方法は、「デルタタイムスタンプΔt(i)」を「デルタタイムスタンプΔTS」とした後、「タイムスタンプを省略(圧縮)した最小圧縮パケットによるヘッダ圧縮」をするものといえる。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「パケットデータ伝送におけるヘッダ圧縮方法であって、
複数の連続するパケットに対するRTP(実時間伝送プロトコル)のタイムスタンプを決定し、
所定数の連続するパケットのタイムスタンプの増加量であるデルタタイムスタンプΔt(i)を算出し、所定数のデルタタイムスタンプΔt(i)が同じ値を有するか否かを判断し、
所定数のデルタタイムスタンプΔt(i)が同じ値である場合に、デルタタイムスタンプΔt(i)をヘッダ圧縮を行うためのデルタタイムスタンプΔTSとし、
タイムスタンプを省略(圧縮)した最小圧縮パケットによるヘッダ圧縮をする、
ヘッダ圧縮方法。」

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明とを対比すると、
イ.引用発明の「パケットデータ伝送」、「ヘッダ圧縮方法」は、補正後の発明の「パケット通信システム」、「ヘッダー圧縮方法」と実質的な差異はない。
ロ.引用発明の「複数の連続するパケット」と補正後の発明の「複数の連続するパケットの少なくとも1個」との間に実質的な差異はなく、引用発明の「RTP(実時間伝送プロトコル)のタイムスタンプ」は、補正後の発明の「実時間伝送プロトコル(RTP)タイムスタンプ(TS)」に相当する。
ハ.引用発明の「タイムスタンプの増加量であるデルタタイムスタンプΔt(i)」は、補正後の発明の「タイムスタンプインクリメント値」、「RTPタイムスタンプインクリメント値」に相当する。
そして、引用発明の「所定数の連続するパケットのタイムスタンプの増加量であるデルタタイムスタンプΔt(i)を算出し、所定数のデルタタイムスタンプΔt(i)が同じ値を有するか否かを判断し、」は、「所定数のデルタタイムスタンプΔt(i)が同じ値を有する」と判断したときは、「所定数」の「パケット」が「同じ値」の「デルタタイムスタンプΔt(i)」となるまで「デルタタイムスタンプΔt(i)」を計算したことになるので、補正後の発明の「所定数のパケットが一定のタイムスタンプインクリメント値を持つまで連続するパケットのRTPタイムスタンプインクリメント値を計算し、」と実質的な差異はない。
ニ.引用発明の「ヘッダ圧縮を行うためのデルタタイムスタンプΔTS」は、補正後の発明の「ヘッダー圧縮のためのタイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値」に相当し、補正後の発明の「前記一定のRTPタイムスタンプインクリメント値をヘッダー圧縮のためのタイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値として割り当て」るのは、「所定数のパケットが一定のタイムスタンプインクリメント値を持つ」ことが前提であるから、引用発明の「所定数のデルタタイムスタンプΔt(i)が同じ値である場合に、デルタタイムスタンプΔt(i)をヘッダ圧縮を行うためのデルタタイムスタンプΔTSとし、」と、補正後の発明の「前記一定のRTPタイムスタンプインクリメント値をヘッダー圧縮のためのタイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値として割り当て、」とは、実質的な差異はない。
ホ.引用発明の「タイムスタンプを省略(圧縮)した最小圧縮パケットによるヘッダ圧縮をする、」と、補正後の発明の「前記タイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値を用いて各RTPタイムスタンプ(TS)の値をダウンスケーリングし、
前記ヘッダーのタイムスタンプフィールドが前記ダウンスケーリングされた各RTPタイムスタンプの値を含むように前記ヘッダーを圧縮する、」とは、「タイムスタンプ」の値に対する処理は除いて、いずれも「ヘッダ圧縮する、」という点で一致する。
したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「パケットデータ通信システムにおけるヘッダー圧縮方法であって、
複数の連続するパケットの少なくとも1個に対する実時間伝送プロトコル(RTP)タイムスタンプ(TS)を決定し、
所定数のパケットが一定のタイムスタンプインクリメント値を持つまで連続するパケットのRTPタイムスタンプインクリメント値を計算し、
この一定のタイムスタンプインクリメント値をヘッダー圧縮のためのタイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値として割り当て、
ヘッダーを圧縮する、
ヘッダー圧縮方法。」

<相違点>
上記「ヘッダーを圧縮する」に関し、補正後の発明は、a)「前記タイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値を用いて各RTPタイムスタンプ(TS)の値をダウンスケーリングし」、b)「前記ヘッダーのタイムスタンプフィールドが前記ダウンスケーリングされた各RTPタイムスタンプの値を含むように前記ヘッダーを圧縮する」のに対し、引用発明は、「タイムスタンプを省略(圧縮)した最小圧縮パケットによるヘッダ圧縮をする」点。

上記<相違点>について検討する。
所定のタイムスタンプインクリメント値、あるいは、タイムスタンプストライド(TS_STRIDE)を用いてRTPタイムスタンプ値をダウンスケールし、ダウンスケールされたタイムスタンプ値をヘッダーのタイムスタンプフィールド含むようにヘッダーを圧縮することは周知技術(例えば、平成23年 3月15日付け拒絶理由通知書に引用文献1.として記載した特表2003-502947号公報(【0001】、【0015】、【0017】?【0019】及び図2、3)、及び、特表2003-529247号公報(【0026】?【0033】及び図4)参照。)である。
すると、引用発明の「タイムスタンプを省略(圧縮)した最小圧縮パケットによるヘッダ圧縮をする」ことに代えて、タイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値を用いて各RTPタイムスタンプ(TS)の値をダウンスケーリングし、ヘッダーのタイムスタンプフィールドが前記ダウンスケーリングされた各RTPタイムスタンプの値を含むように前記ヘッダーを圧縮するようにすることは、当業者であれば、上記周知技術を適用することにより容易になし得ることである。
したがって、上記<相違点>に係る構成は、引用発明に周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から想到し得る構成から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、上記補正後の発明は上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、上記補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成25年 6月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、「第2.1.本願発明と補正後の発明」の項で、「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明は、補正後の発明から、上記補正に係る限定を省き、「ヘッダーを圧縮する」ことに関し、「このタイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値を用いて各RTPタイムスタンプ(TS)の値をダウンスケーリングし、
前記割り当てられたタイムスタンプストライド(TS_STRIDE)値に基づいてヘッダーを圧縮する」ものである。
そうすると、本願発明の構成に上記補正に係る限定をした補正後の発明が、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明することができたものである。

なお、上記「第2.2.(1)新規事項の有無、補正の目的要件、及び、シフト補正の有無」の項で検討した上記補正が、特許請求の範囲の減縮ではなく、本件補正が認められるべきものであるとしても、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、本願発明(この場合、「補正後の発明」と同じ。)は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-16 
結審通知日 2014-07-22 
審決日 2014-08-04 
出願番号 特願2008-549667(P2008-549667)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 伊佐雄  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 田中 庸介
山澤 宏
発明の名称 サイレント抑圧時のROHCパフォーマンスを向上させる方法と装置  
代理人 野河 信久  
代理人 白根 俊郎  
代理人 中村 誠  
代理人 井上 正  
代理人 砂川 克  
代理人 堀内 美保子  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 竹内 将訓  
代理人 福原 淑弘  
代理人 岡田 貴志  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 峰 隆司  
代理人 井関 守三  
代理人 佐藤 立志  
代理人 幸長 保次郎  
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