• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1295473
審判番号 不服2010-18856  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-20 
確定日 2014-12-10 
事件の表示 特願2000-602377「ピリチオン粒子分散物の化学的製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月 8日国際公開、WO00/51718、平成15年 9月 9日国内公表、特表2003-526616〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年3月1日(パリ条約による優先権主張 1999年3月5日,米国、2000年2月25日,米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年2月27日受付けで手続補正書が提出され、拒絶理由通知に応答して平成21年5月27日受付けで手続補正書と意見書が提出されたが、平成22年4月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年8月20日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判請求と同時に手続補正がなされ、平成22年10月28日受付けで請求理由の補正書(方式)が提出されたものであり、
その後、前置報告書を用いた審尋に応答して平成24年5月8日受付けで回答書が提出され、当審からの拒絶理由通知に応答して平成25年4月4日受付けで手続補正書と意見書が提出され、再度の拒絶理由通知に応答して平成25年11月11日受付けで手続補正書と意見書が提出され、そして、最後の拒絶理由通知(平成26年1月6日付け)に応答して平成26年5月7日受付けで手続補正書と意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願請求項1?5に係る発明は、平成26年5月7日受付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されたとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明は、次のとおりである。
「【請求項1】 時間と共に沈殿しないピリチオン塩の、凝集解消した0.1?1μmの幅と2?50μmの長さを有する粒子の懸濁物、エマルジョン、又は分散物を製造する方法であって、凝集ピリチオン塩粒子を、界面活性剤、分散剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択する薬剤と電解質を組み合わせたものと音響エネルギーの存在下で接触させて、前記凝集解消したピリチオン塩の粒子の前記懸濁物、エマルジョン、又は分散物を生成させ、前記電解質が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、及びそれらの組合せからなる群から選択されるものであって、前記分散剤が、未重合アルキルナフタレンスルホン酸の塩又はアルキルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド重合体の塩であって、前記界面活性剤が、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、又は両イオン性の界面活性剤であって、前記凝集解消したピリチオン塩が、ピリチオン塩である前記凝集粒子の塩と化学的に同一であることを特徴とする、前記製造方法。」

ここで、「界面活性剤、分散剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択する薬剤」の選択肢のうち、「分散剤」を選択し、「懸濁物、エマルジョン、又は分散物」の選択肢のうち、「懸濁物又は分散物」を選択すると、前記請求項1に係る発明は、次の発明(以下、「本願発明」という。)を選択肢として含んでいると認定することができる。
<本願発明>
「時間と共に沈殿しないピリチオン塩の、凝集解消した0.1?1μmの幅と2?50μmの長さを有する粒子の懸濁物又は分散物を製造する方法であって、
凝集ピリチオン塩粒子を、分散剤と電解質を組み合わせたものと音響エネルギーの存在下で接触させて、前記凝集解消したピリチオン塩の粒子の前記懸濁物又は分散物を生成させ、
前記電解質が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、及びそれらの組合せからなる群から選択されるものであって、前記分散剤が、未重合アルキルナフタレンスルホン酸の塩又はアルキルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド重合体の塩であって、
前記凝集解消したピリチオン塩が、ピリチオン塩である前記凝集粒子の塩と化学的に同一であることを特徴とする、
前記製造方法。」

3.引用例
当審の平成26年1月6日付け拒絶理由通知に引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第98/48629号(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている(英文であるため翻訳文で示し、翻訳の参考としたパテントファミリーの特表2002-501500号公報(参照公報)の対応箇所を参考までに付記した。)。なお、下線は当審で付したものである。

(1-i)「1. ピリチオン又はピリチオンの水溶性塩と水溶性多価金属塩とを、キャリヤー中で、かつ分散剤の存在下で、そして任意的には界面活性剤の存在下で、約20℃?約60℃の温度で反応させてピリチオン塩の非球状及び非板状粒子を生成することを特徴とする、ピリチオン塩の非球状及び/又は非板状粒子の製造方法。
・・・
5. 前記分散剤が、重合アルキルナフタレンスルホン酸類のナトリウム塩類およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1の方法。
6. 幅約0.1?約1μ及び長さ約2?約50μの粒子サイズを有するピリチオン塩の非球状及び/又は非板状粒子を含有することを特徴とする組成物。 」(第28頁?29頁のクレーム1.?6.; 参照公報第2頁の【特許請求の範囲】の1.?6.)
(1-ii)「本発明は一般的にはピリチオン塩の製法に関し、より詳しくは、非球状(non-spherical)又は非板状(non-platelet)の形態、特に針状又は棒状形態を有するピリチオン塩の粒子を製造する方法に関する。本発明はまた、ピリチオン塩の非球状又は非板状粒子を使用して製造された製品に関する。
ピリチオン(これは1-ヒドロキシ-2-ピリジンチオン;2-ピリジンチオール-1-オキシド;2-ピリジンチオン;2-メルカプトピリジン-N-オキシド;ピリジンチオン;及びピリジンチオン-N-オキシドとしても知られている)の多価金属塩は有効な殺生物剤として知られており、そして広く殺カビ剤及び殺菌剤としてペイントや身体ケア製品例えばフケ防止シャンプーの中に使用されている。」(第1頁4?18行; 参照公報第4頁3?12行)
(1-iii)「本発明者らは選択された分散剤又は分散剤と界面活性剤の組合せと、ピリチオン塩粒子の非板状形態の形成を促進する低い処理温度の範囲を利用して、この課題を解決した。一態様においては、棒状体や針状体のような延びた形態を有するピリチオン塩粒子が本発明の方法によって製造される。本発明の方法によって製造された延びたピリチオン塩粒子は、延びた粒子の大きな表面積のせいで優れた表面堆積特性を有する。この大きな表面積はシャンプー、ソープ及びペイントにおける改良された殺生物効力を生じる。加えて、本発明の方法に従って製造された延びたピリチオン塩粒子は従来の板状又は球状粒子よりも容易に通例の濾過によって分離可能である。」(第6頁12?29行 ;参照公報第7頁19?27行)
(1-iv)「反応のための有効な媒体又はキャリヤーには、水性媒体、例えば、水、又は一つ又はそれ以上の有機溶剤と組み合わされた水が包含される。有効な有機溶剤には、アルコール例えばメタノールやエタノール、アミン例えばジエタノールアミン、エーテル、エステルなどが包含される。粒子の長さ及び形状を制御するために追加の塩、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどが反応媒体に添加されてもよい。」(第9頁10?18行 ;参照公報第9頁12?17行)
(1-v)「 分散剤はピリチオン塩の延びた粒子の形成を促進するために反応混合物の中に含有される。好ましくは、分散剤は重合アルキルナフタレンスルホン酸の塩であり、たとえば、「ダーバン1(DARVAN 1)」(ナトリウムナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド(sodium naphthalene sulfonic acid formaldehyde)、・・・など。」(第10頁5?22行 ;参照公報第9頁下から3行?第10頁11行)
(1-vi)「好ましい態様においては、塩(例えば、塩化ナトリウム)及び選択された分散剤又は分散剤と界面活性剤の組合せの存在下で約35℃でピリチオンナトリウムを塩化亜鉛又は硫酸亜鉛と反応させて棒状及び/又は針状の形状を有するジンクピリチオンを副生物としての水性塩化ナトリウム又は水性硫酸ナトリウムと共に生成する。本発明の方法は「連続」方式で利用されてもよく、そこでは、ジンクピリチオン粒子は集められ、そして水性の塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムを含有している母液は再循環させられて反応器へと戻されて添加用塩の源を提供する。」(第18頁1?13行 ;参照公報第16頁1?8行)
(1-vii)「本発明の方法に従って生成された粒子は身体ケア製品(ソープ、シャンプーなど)、ペイント、コーティング材、肥料、及び食品のような様々な品目において有効である。例えば、本発明に従って製造されたジンクピリチオン粒子はフケ防止シャンプーに対する有効なフケ防止添加剤である。
代わりに、粒子と副生物との混合物は更に精製することなく直接に市販製品に添加されてもよい。代表的には、副生物(例えば、水性塩化ナトリウム又は水性硫酸ナトリウム)はシャンプー又はソープ配合物における増粘剤として有効である。」(第19頁10?22行 ;参照公報第16頁下から5行?第17頁3行)
(1-viii)「実施例2:ジンクピリチオンの針状体の製造
2000mLのジャケット付き反応器の中に、355gの16.9重量%ピリチオンナトリウムと845mLの水と2.4gのダーバン1(DARVAN 1)(実施例1に記載の通り)との溶液を入れ、そして39℃に温めた。400rpmの攪拌速度において、198.5gの20重量%硫酸亜鉛一水和物と595.4mLの水との溶液を約68分間で添加した。この硫酸亜鉛溶液の添加後、この混合物を20分間攪拌した;そして生成物を濾過によって分離し、そして洗浄する。この分離された生成物は検査され、そして約33.6重量%のジンクピリチオンを含有していることがわかった。
このジンクピリチオン粒子を、水とダーバン1(DARVAN 1)(ナトリウムナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド)との水溶液の中に再懸濁させて、25重量%のジンクピリチオンと0.1重量%のダーバン1(DARVAN 1)を含有する溶液を生成した。顕微鏡写真はこの粒子が延びた形態を有しており、棒状体又は針状体として見えたことを示した(図1及び図2を参照)。棒状体及び針状体の幅は約0.1から約1μmまで多様であり、そして棒状体及び針状体の長さは約2から約10μmまで多様であった。加えて、0.1?1μの直径を有する小さな粒子も存在していた。」(第20頁21行?第21頁13行 ;参照公報第17頁22行?第18頁9行)、なお、Fig1,2の摘示は省略した(原文を参照)。
(1-ix)「実施例6:(提案例)別のフケ防止シャンプー
もう一つの、フケ防止シャンプーとコンディショナーとの組成物は、実施例1及び2に記載のように製造した針状及び棒状形態のジンクピリチオンを下記成分と組み合わせて使用して、つくられる:
成分A
脱イオン水 21.75%
グアルヒドロキシプロピルトリモニウムクロライド
(guarhydroxypropyl trimonium chloride) 0.30%
珪酸マグネシウムアルミニウム 0.70%
ジンクピリチオン(針状体/棒状体、25%水性分散物) 4.0%
成分B
ラウレス硫酸ナトリウム 30.0%
キシレンスルホン酸アンモニウム、40%水溶液 02.0%
成分C
トリセチルアンモニウムクロライド 0.50%
セチルアルコール NF 0.40%
ステアリルアルコール 0.40%
グリコールジステアレート 2.00%
成分D
コカミドMEA 1.70%
ラウリル硫酸アンモニウム 36.00%
成分E
防腐剤 0.05%
香料及び染料 q.s.
成分F
クエン酸、25%水溶液 q.s.
この、フケ防止シャンプーとコンディショナーとの組成物は、次のように製造される:
成分Aは次のように調製される:水を50℃に熱し、そして急速攪拌しながらグアルヒドロキシプロピルトリモニウムクロライドと珪酸マグネシウムアルミニウムを分散させる;この組合せに攪拌しながらジンクピリチオン分散物を添加する。成分AのpHを成分Fによって4.5?5.0に調節する。成分Aに、Bの両成分をゆっくり加え十分に混合する。この混合物のpHを成分Fにより5.7?6.3に調節する。別容器内で、成分Cを70?75℃に熱する。A/B混合物を60℃に熱し、そして成分Cとブレンドし、十分に混合する。この熱い混合物にDの両成分を加え、そして十分に攪拌する。この混合物のpHを成分Fによって5.7?6.3に調節する。この混合物を40?45℃に冷却しそして攪拌しながら成分Eを加える。望むならば、生成物の粘度は0.05?1%の塩化ナトリウムを添加することによって増加させることができる。」(第24頁29行?第26頁13行 ;参照公報第20頁21行?第22頁1行)

これらの記載からみて、引用例には、幅0.1?1μm及び長さ2?50μmの粒子サイズを有するピリチオン塩の棒状、針状などの非球状・非板状の粒子を製造することが記載されている(摘示(1-i),(1-viii)など参照)。そして、特に、実施例2において、ピリチオンナトリウムの水溶液に硫酸亜鉛一水和物を添加、撹拌し、(その化学反応の結果として)ジンクピリチオンが生成物として得られ、濾過によって分離したことが記載され(実施例2の前半部分参照)、その後、このジンクピリチオン粒子を、水とダーバン1(ナトリウムナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド)との水溶液中に再懸濁させて溶液を生成したこと、及び、顕微鏡写真により、得られた粒子が幅約0.1?1μm、長さ約2?10μmの棒状、針状の粒子として存在することが説明されている(実施例2の後半部分参照)(摘示(1-viii)参照)。また、実施例6などにおいて、実施例2で記載のように製造した針状及び棒状形態のジンクピリチオンを他の成分と組み合わせて、フケ防止シャンプーを製造したことが記載されている(摘示(1-ix)参照)。

そうすると、引用例には、特にその実施例2の後半の記載に鑑み、フケ防止シャンプーなどに用いるジンクピリチオン粒子の懸濁物(分散物)の製造方法である、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、懸濁物と分散物は区別がし難いため、「懸濁物(分散物)」のように表記することとした。
<引用発明>
「ジンクピリチオン(ピリチオン塩)の、幅0.1?1μm、長さ2?10μmの棒状、針状の粒子の懸濁物(分散物)を製造する方法であって、ピリチオンナトリウムの水溶液に硫酸亜鉛一水和物を添加、撹拌し、生成したジンクピリチオンを、濾過によって分離して得られたジンクピリチオン粒子を、水とダーバン1(ナトリウムナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド)との水溶液中に再懸濁する方法。」

4.対比、判断
そこで、本願発明と引用発明を対比する。

(a)引用発明の「ダーバン1(ナトリウムナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド)」は、本願発明の実施例でも、分散剤としてダーバン1(ナトリウムナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド)を使用していることに鑑み、本願発明でいうところの分散剤に相当し、また、表記の仕方が異なるだけであって、「アルキルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド重合体の塩」であることも明らかである(摘示(1-v)参照)。

(b)本願発明の「凝集ピリチオン塩粒子」については、本願明細書の段落【0016】に、『用語「凝集ピリチオン塩粒子」とは、イオン性相互作用のような非共有結合力によって一緒に結合されたピリチオン塩の粒子を指す。』と記載されるが、それ以上の具体的な記載がないので、実施例の記載をみると、実施例では、例1,2で、ナトリウムピリチオンの溶液に硫酸亜鉛溶液を添加、攪拌して得られた生成物を濾過により分離した亜鉛ピリチオン粒子を、例3,4において「例1及び2の手順に従って製造された亜鉛ピリチオン粒子」として、「凝集亜鉛ピリチオン粒子の凝集解消」の対象物とされていることから、この「例1及び2の手順に従って製造された亜鉛ピリチオン粒子」は、本願発明における「凝集ピリチオン塩粒子」に少なくとも該当するといえる。
これに対して、引用発明の「ジンクピリチオン粒子」は、本願明細書に記載された例1,2と同じ方法(引用例の実施例2と本願明細書に記載の例2を対比すると、反応成分、その量、反応条件、濾過による分離を含め、一致している。)により、ピリチオンナトリウムの水溶液に硫酸亜鉛一水和物を添加、撹拌し、生成したジンクピリチオンを、濾過によって分離して得られたものであるから、引用発明の「ジンクピリチオン粒子」もまた、本願でいう「凝集ピリチオン塩粒子」に該当するといえる。

(c)引用例には「凝集解消した」との文言はないが、引用例の実施例2の後半において製造されたジンクピリチオン粒子の再懸濁物は、「顕微鏡写真はこの粒子が延びた形態を有しており、棒状体又は針状体として見えたことを示した(図1及び図2を参照)。棒状体及び針状体の幅は約0.1から約1μmまで多様であり、そして棒状体及び針状体の長さは約2から約10μmまで多様であった。加えて、0.1?1μの直径を有する小さな粒子も存在していた。」(摘示(1-viii)参照)というものであって、凝集が解消しているものといえる。(本願明細書においても、段落【0056】において、「ホリバ(Horiba)910粒径分析器で粒子を分析した。顕微鏡写真は粒子が長い形をもち、棒状又は針状に見えることを示していた。それらの棒及び針の幅は約0.1?約1μmの範囲にあり、それら棒及び針の長さは約2?10μmの範囲にあった。」ことから、「凝集物は解消され」と結論づけている。)

してみると、両発明は、
「ジンクピリチオン(ピリチオン塩)の、凝集解消した0.1?1μmの幅と2?50μmの長さを有する粒子の懸濁物(分散物)を製造する方法であって、
凝集ピリチオン塩粒子を、ダーバン1(分散剤)の存在下で接触させて、前記凝集解消したピリチオン塩の粒子の前記懸濁物(分散物)を生成させ、
前記分散剤が、ダーバン1(アルキルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド重合体の塩)である、
前記製造方法。」
で一致し、次の相違点A?Dで一応相違している。
<相違点>
A.本願発明では、製造されたジンクピリチオン(ピリチオン塩)の懸濁物(分散物)が、「時間と共に沈殿しない」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような表現では特定されていない点
B.本願発明では、凝集ピリチオン塩粒子を「音響エネルギーの存在下で」接触させて、と特定されているのに対し、引用発明では、そのように特定されていない点
C.本願発明では、凝集ピリチオン塩粒子を「分散剤(ダーバン1)と電解質を組み合わせたもの」と接触させと特定され、該電解質について、「前記電解質が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、及びそれらの組合せからなる群から選択されるもの」であると特定されているのに対し、引用発明では、そのように特定されていない点
D.本願発明では、「前記凝集解消したピリチオン塩が、ピリチオン塩である前記凝集粒子の塩と化学的に同一である」と特定されているのに対し、引用発明では、そのような表現では特定されていない点

そこで、これらの相違点A?Dについて検討する。
(1)相違点Aについて
引用例の実施例2と本願明細書の例2を対比すると、再懸濁液を製造する段階までは、両者は実質同一の例であると認められる。
なるほど、引用例の実施例2では、数日間の測定中に「この生成物の粒径分布を繰り返し、粒径分布が変化しないことを示していた。従って、凝集物は解消され、再凝集は起きなかった。」との本願明細書の例2の如き言及はされていないけれども、同一の実験において、異なる結果が得られることは自然法則に反することに鑑みると、引用例の実施例2においても、数日間の間は再凝集は起きず、時間と共に沈殿しないものが得られていると理解すべきである。そうであるから、「時間と共に沈殿しない」との言及はなくとも、その点で相違するものと解すべき理由はない。
よって、相違点Aについては、実質的な相違点ではない。
(2)相違点Bについて
引用発明では、再懸濁させる手段、すなわち(凝集)粒子を媒体に分散させる手段について言及されていない。
しかし、(凝集)粒子を媒体に分散させる手段として、音波(すなわち、音響エネルギー)を用いて行なうことは本願優先権主張日当時、当業者に周知の事項である。例えば、当審の拒絶理由で指摘した、特開平9-90548号公報の段落【0026】「水や有機溶媒に溶けにくいものは高速インペラー分散、サンドミル分散、超音波分散、ボールミル分散などにより平均粒子径が0.01から6μまでの任意の粒径にして分散することができる。分散にはアニオンやノニオンなどの表面活性剤、増粘剤、ラテックスなどを添加して分散することができる。」、特開平11-7093号公報の段落【0046】「・・固体分散法として知られている方法によって、ヒドラジン誘導体の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いる・・」、国際公開97/48696号の第149頁1?5行「・・相当する懸濁液を、超微粉末の分散物が生じるまで、適切な攪拌手段(例えば高速ミキサーまたは超音波ミキサー)により分散する。・・」、特開平8-59404号公報の段落【0045】「この抗菌性無機酸化物粒子・・gを・・水溶液30mlに分散させ、波長19.5K で15分間の超音波処理した後の分散粒子は、・・・」、特開平2-36103号公報の第4頁右下欄14行?第5頁左上欄2行「参考例2 [1-トリアコンタノール超微粒子分散液の調製]・・1-トリアコンタノールと混合し、その混合液を90℃で20分間超音波処理した。・・・」、特開平8-48606号公報の段落【0012】「・・粉末を超音波で分散させた後測定した平均2次粒子径は・・」、などを参照。また、当審拒絶理由にも提示されている国際公開98/41505号には、微粉砕力を発生する反応器内でピリチオンの水溶生塩と水溶性多価金属塩を反応させ、ピリチオン塩のサブミクロンサイズの粒子を製造する方法において、重合アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどの分散剤を存在させることや、微粉砕力としてソニケーション力が示されている(請求項1,5,11など参照)。
したがって、再懸濁させるに際し、音響エネルギーを併用することは,当業者が容易に想到し得たものといえる。

一方、本願明細書には、音響エネルギーを用いた実施例すら記載されておらず、音響エネルギーを用いたことによる利点も記載されていない。
よって、「音響エネルギーの存在下」で接触させるとの構成を採用したことにより、本願発明が格別顕著な効果を奏したものとは認められない。

(3)相違点Cについて
引用例には、ジンクピリチオン粒子を製造する際に生じる塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなどの副生物を、更に精製することなく(分離することなく)、粒子と副生物との混合物の状態で、シャンプーやソープなどに配合すると、それら(塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなど)が増粘剤として有効であることが記載され(上記(1-vii)参照)、具体的には、フケ防止シャンプーやコンディショナー組成物を、実施例1及び2に記載のように製造した針状及び棒状形態のジンクピリチオン(「ジンクピリチオン(針状体/棒状体、25%水性分散物)」)を他の成分と混合することにより製造することが記載されており(上記(1-ix)参照)、さらに、引用例の実施例6で製造されるフケ防止シャンプーにおいても、望むなら塩化ナトリウムを添加することによって粘度を増加させることができると説明されている(上記(1-ix)参照)。
そうすると、引用例には、最終製品であるシャンプーやソープなどに、塩化ナトリウムが増粘剤として含まれる態様が想定されているといえるとともに、増粘剤として作用する塩化ナトリウムは、最終製品であるシャンプーやソープなどを調製する際に用いられるジンクピリチオン粒子の水性分散物に含まれていてもよいことが示されているといえる。そして、この、最終製品であるシャンプーやソープなどを調製する際に用いられるジンクピリチオン粒子の水性分散物とは、すなわち、引用発明の方法により製造された懸濁物である。

また、そもそも、ピリチオン塩粒子を懸濁させた処方物に増粘剤を配合する目的は、ピリチオン塩粒子等の水不溶性粒子の沈降を防止して、懸濁液を安定化させることにあることは当業者にとって周知である(例えば、特開平6-157239号公報(【0002】)、特開平6-9351号公報(【0050】)、国際公開第98/47372号参照)。また、その際の増粘剤として、塩化ナトリウムは周知である(上記文献に加えて、特表平6-501699号公報、国際公開第97/29733号参照。)。

そうすると、引用発明の方法により製造される懸濁物に含まれていてよいことが示され、かつ、懸濁物の安定化に寄与することが期待される塩化ナトリウムを、引用発明のジンクピリチオンを再懸濁させる方法において用いることは、当業者が容易になし得るものと認められる。

そして、効果について、本願明細書の段落【0034】には、「本発明の方法で用いられる凝集解消剤は、ピリチオン塩の凝集した粒子を分裂させるどのような薬剤でもよい。そのような凝集解消剤の例には、電解質、表面活性剤、音波エネルギー、及びそれらの組合せが含まれる。本発明者は、凝集粒子を凝集解消剤で処理すると、粒子の凝集をもたらす非共有結合力を中和し、1μより小さな粒径を有するピリチオン塩粒子の集団を生じる結果になることを思いがけなく見出した。」との記載はあるが、実施例の記載から、「表面活性剤」を用いた場合の効果を読み取ることはできるものの、「表面活性剤」にさらに「電解質」を組み合わせた場合の効果を読み取ることはできない。つまり、本願明細書を検討しても、電解質である「アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物」(すなわち、例えば塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなど)を共存させたことによって格別に予想外の作用効果を奏することは示されておらず、むしろ、電解質を共存させていない実施例2の後半と、電解質を共存させた実施例3,4を比べても、再び凝集しない点で相違はない。

よって、相違点Cに係る構成を有することにより、本願発明が、引用発明に比べて格別顕著な効果を奏したものとは認められない。

(4)相違点Dについて
引用発明においても、濾過により分離したピリチオン塩粒子(即ち、凝集ピリチオン塩粒子)を、単に分散させて懸濁物を製造するだけであり、化学的反応を伴わないのであるから、化学的に同一のものであることは論ずるまでもないことである。
よって、相違点Dについては、実質的な相違点ではない。

(5)請求人の主張について
請求人は、平成26年5月7日受付けの意見書において、次のような主張をしているが、いずれも失当であり、採用できないものである。

(5-1)音響エネルギーの併用(相違点B)について
(5-1-1)請求人は、引用例においては、ピリチオンの水溶性塩と水溶性の多価金属を、キャリア中であって、分散剤の存在下で、反応させることによって製造される発明である旨、および、その際に、150rpmよりも大きな高回転数の攪拌による形成過程を必要とし、実施例2では400rpmの攪拌速度を利用し、強力な攪拌から造り出される衝撃力の使用を教示するものである旨、それゆえ、音響エネルギーの存在下で凝集ピリチオン塩粒子の凝集を解消させることを教示も示唆もしていないと、主張する。
しかし、指摘されている点は、例えば引用例の実施例2の前半に記載された、ピリチオン塩粒子を化学反応で製造する部分に関するものであるのに対し、上記認定した引用発明は、引用例の実施例2の後半に記載されている、その後の濾過によって分離されたジンクピリチオン粒子の懸濁液の製造について判断したものである。本願発明も、その実施例と認められる本願明細書記載の例2の後半や例3,4においては、引用例に記載のピリチオン塩粒子を化学反応で製造して得た濾過により分離した亜鉛ピリチオン粒子を「凝集ピリチオン塩粒子」として採用している点で同じであるから、前記判断に誤りは無い。
結局のところ、請求人の前記主張は、容易想到性の判断に関係しない、「凝集ピリチオン塩粒子」を化学反応を伴い製造する箇所の説明を採用して、製造後の物理的処理の扱いを論じるものであるから、その前提において誤っており、失当である。

(5-1-2)また、請求人は、当業者であれば、このような強力な攪拌から造り出される衝撃力を音響エネルギーに取り替えようとはしないはずであり、すでに解消された課題(非球状・非板状のピリチオン粒子を得ること)を解決するために、他の刊行物を見ようとはしないはずであり、当業者であれば、引用例に開示された高攪拌速度を利用しようとするだけである旨を主張する。
しかし、引用発明の認定の主体となった実施例2の後半では、請求人が主張する課題が解決された後のことが記載されているのであり、請求人の前記主張は、実施例2の前半を前提とするものであって誤っている。濾過により分離した亜鉛ピリチオン粒子(すなわち、凝集ピリチオン塩粒子)を再び懸濁するに際しどのような手段を採用したのか明示されていないのであるから、(凝集)粒子を分散させるために知られた手段を検討するのは当然のことであって、音響エネルギーの使用も上記「(2)」で指摘のごとく、よく知られている手段に過ぎないことに鑑みれば、その手段を採用することに格別の創意工夫が必要であったとは認められない。仮に、攪拌が他の箇所で使用されていたことに着目したとしても、異なる工程でも採用しなければならない理由はなく、まして前記判断を阻害するものとは言えない。
しかも、既に指摘したように、本願明細書では、音響エネルギーを使用した実施例すら示されておらず、音響エネルギーを採用したことによる予想されない優位性(予想されない格別の作用効果)があることは、具体的な説明もないし、データもないのであるから、予想外の作用効果があると解すべき理由もない。
したがって、請求人の前記主張は、到底採用できるものではない。

(5-2)電解質を併用すること(相違点C)について
(5-2-1)請求人は、刊行物2(当審注:前記「(2)」で例示した国際公開98/41505号のこと)では、反応に際し、塩化ナトリウムが副生成物として得られるだけであって、その後に電解質として添加されるものではない旨を指摘する。
しかし、刊行物2は、副生成物の塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム(すなわち、電解質)が存在しても、凝集を促進するものではなく、凝集に関して悪影響を及ぼすものでないことが理解できることを指摘したにすぎないから、請求人の前記指摘があったところで、上記判断を左右できるものではない。
なお、請求人は、「その後に前記凝集ピリチオン塩粒子に添加される電解質」と補正する用意がある旨を主張(希望)しているが、特許法では審判請求に際して補正できる期間を定めているところ、既にその期間内に手続補正書を提出しているのであって、それ以上の補正の機会を与えることは法律の想定するところではないし、仮にそのような補正があっても,上記判断を左右できないものであるから、補正の機会を与えることはできない。

(5-2-2)また、請求人は、『分散剤及び/又は界面活性剤との組み合わせで、添加される電解質の使用は、例えば、個々の凝集解消剤ではなく二つの凝集解消剤を組み合わせで利用することによって、ピリチオン塩粒子の凝集解消の効果を高めることができます。更に、塩化ナトリウムのような電解質の使用は、粒子の長さや形状にも影響を与え得ます。加えて、電解質の組成は、更に、凝集した粒子の形成に最初になる非共有力を中和させるのを助けることができます。このように、分散剤及び/又は界面活性剤との組み合わせで、その後に添加される電解質の使用は、更に凝集した粒子の凝集解消を高めることができます。』と主張する。
しかし、請求人の主張が、表面活性剤と電解質を併用した場合に、表面活性剤のみの場合に比べて、予想外に優れた凝集解消効果を奏することをいうものであるならば、本願明細書には文言上そのような記載はなく、実施例の記載をみても、例3や例4では、塩化カルシウムや塩化ナトリウムの電解質が併用されているが、それらの例の凝集解消の効果を検討しても、例2の後半の電解質を併用していない場合の凝集解消の効果と差異があるとは認められないから、明細書の記載に基づかない効果の主張である。
また、表面活性剤単独の場合に比べて、電解質を組み合わせた場合に、凝集解消効果が高まったという主張であるならば、上記(3)で述べたとおり、塩化ナトリウムは、ジンクピリチオン粒子の懸濁物における粒子の沈降防止に寄与するものと考えられていたことに鑑みれば、当業者にとって予想外の効果とはいえないものである。
したがって、いずれの場合においても、前記請求人の主張は採用できない。

(6)まとめ
以上のとおりであり、そして、相違点A?Dに係る本願発明の発明特定事項を併せ採用することに格別の困難性があるとも認めらないし、それらを併せ採用したことによって格別予想外の作用効果を奏しているとも認められない。
したがって、本願発明(その発明を包含する本願請求項1に係る発明も)は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-14 
結審通知日 2014-07-15 
審決日 2014-07-31 
出願番号 特願2000-602377(P2000-602377)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 知宏  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 渕野 留香
増山 淳子
発明の名称 ピリチオン粒子分散物の化学的製造方法  
代理人 浅村 皓  
代理人 安藤 克則  
代理人 浅野 裕一郎  
代理人 浅村 肇  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ