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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1295513
審判番号 不服2013-14680  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-31 
確定日 2014-12-11 
事件の表示 特願2008-227109「X線CT装置およびX線CT装置の制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月18日出願公開、特開2010- 57731〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成20年9月4日を出願日とする出願であって,平成24年11月5日付けで拒絶理由が通知され,平成25年1月15日付けで手続補正がなされ,同年1月31日付けで最後の拒絶理由が通知され,同年4月5日付けで手続補正がなされ,同年4月25日付けで同年4月5日付けの手続補正についての補正却下の決定がなされると共に,同日付けで拒絶査定がなされ,同年7月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明(下線は補正箇所を示す。)
本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項4は,補正後の請求項1とし,
「 【請求項1】
被検体にX線を照射するX線管と,
前記X線管から照射されたX線を検出するX線検出器と,
前記被検体の体軸に交わる領域に対応する参照画像上に操作者の入力によって指定された位置に応じて,前記被検体と前記X線管及び前記X線検出器との相対的な位置関係を前記被検体の体軸に直交する2方向に対して変更させることが可能な移動手段と,
前記位置関係の変更の後に,前記X線管及び前記X線検出器を用いて前記被検体にX線を曝射してイメージングスキャンを行うことによりX線CT画像データを収集するCT画像収集手段と,
を備えるX線CT装置。」
と補正された。

本件補正は,補正前の請求項4に係る発明を特定するために必要な事項である「被検体の体軸方向に交わる領域」を「被検体の体軸に交わる領域」に補正し,「体軸方向」を「体軸」と明瞭にし,また,「指定された任意の位置」を「指定された位置」と明瞭にし,「前記被検体と前記X線管及び前記X線検出器との相対的な位置関係を,前記被検体の体軸に交わる2方向に対して変更させることが可能なように構成される移動手段」を,「前記被検体と前記X線管及び前記X線検出器との相対的な位置関係を前記被検体の体軸に直交する2方向に対して変更させることが可能な移動手段」に補正し,「被検体の体軸に交わる2方向」を「被検体の体軸に直交する2方向」と限定し,文章を整えた補正を含むものであり,実質的に「被検体の体軸に交わる2方向」を「被検体の体軸に直交する2方向」と限定する補正である。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含む。
そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項
(1)本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開昭61-122848号公報(以下,「刊行物1」という。)には,「CT装置の患者監視システム」について,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
(1-ア)
「2.特許請求の範囲
スキャナ室に配置されたCTスキャナを操作室から遠隔操作して患者の監視を行うCT装置の患者監視システムにおいて,CTスキャナから得られる画像情報,架台情報及び寝台情報と操作室で設定される設定架台情報及び設定寝台情報とを画像表示モニタ上に併せて表示するとともに,設定架台情報,設定寝台情報に対応する架台制御情報,寝台制御情報をそれぞれ架台,寝台に送出してこれらの遠隔操作を行い,前記設定架台情報,設定寝台情報がCTスキャナの仕様で定まる許容範囲を越えた場合には警告情報を発生するようにしたことを特徴とするCT装置の患者監視システム。
3.発明の詳細な説明
[発明の技術分野]
本発明はCT(コンピユーテッド・トモグラフィ)装置における患者監視システムに関するものである。」(第1頁左下欄4行?右下欄1行)

(1-イ)
「[発明の目的]
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,極めて安全性が高い状態の下に架台及び寝台の遠隔操作を行うことができるCT装置の患者監視システムを提供することを目的とするものである。」(第2頁左上欄7行?11行)

(1-ウ)
「[発明の実施例]
以下に本発明の実施例を詳細に説明する。
第1図中,1はスキャナ室,2は操作室を示すものである。スキャナ室1内には,所定の開口を設けた架台3と,この架台3に回転可能に取り付けられたX線管4と,架台3の開口の回りに取り付けられX線管4から曝射されるX線を検出してこれを電気信号に変換するX線検出器5と,患者を載せて前記架台3の開口に出入可能で,かつ,上下動し得るように構成された寝台6とを有するCTスキャナ及び前記架台3上の患者を撮影する監視用のカメラ7が配置されている。
操作室2内には,本実施例のシステムを構成する架台制御,画像表示装置が配置されている。
・・・
そして,前記X線検出器5がデータ収集インターフェース14に接続され,X線検出器5の出力をデータ収集インターフェース14を介して入力し,画像再構成してこの結果を画像表示インターフェース16を介して画像表示モニタ17へ送出する。前記架台3.X線管4及び寝台6はいずれもシリアルインターフェース24に接続されている。」(第2頁右上欄5行?右下欄10行)

(1-エ)
「オペレータはこのメッセージや画像表示モニタ17.監視モニタ27上の画像を見てキーボード22に必要な情報をキーインする。これによりこの装置からX線管4に対してX線爆射信号が,架台3に対して回転,停止及び架台チルト角等の架台制御情報が,寝台6に対して架台3に対する出入,上下動等を支持する寝台制御情報がそれぞれ送出されるようになっている。」(第3頁右上欄1行?8行)

(1-オ)
「 第2図(a),(b)は,架台チルトの遠隔操作の場合を示す説明図である。
CTスキャナの寝台6上に患者を載せた状態でX線管4を3時又は9時の位置(患者に対して水平横位置)に設定し,寝台6を一定高さに保持しつつ架台3出入させてスキャノスコープ撮影を行うことにより得られた画像情報,すなわち,スキャノスコープ画像SPを画像表示モニタ17上に表示すると同時にこのときの架台情報,すなわち,架台開口上部L_(1),架台回転中心L_(0)及び架台開口上部L_(2)をそれぞれ細い波線で画面上水平方向に,架台チルト角y_(1)(これは患者に対するスライス位置でもある。)を示す細線を画面上垂直方向にそれぞれ表示する。
次に,オペレータはこの画像表示モニタ17上の画像及び監視モニタ27上の患者の画像を見ながら,キーボード22に必要な情報を入力し,設定架台情報,すなわち,設定架台チルト角y_(2)を示す細線を画像表示モニタ17上に表示させるとともに,再びキーボード2に架台制御情報を発生させるための情報を入力する。
これにより制御プログラムが働き,シリアルインターフェース24から架台制御情報が架台3に送られ,この結果,架台3は設定架台チルト角y_(2)だけチルトして停止するとともに,架台3からの新たな架台情報がシリアルインターフェース24,第2のバスライン9,画像表示インターフェース16を経て画像表示モニタ17に入力され,その画面上には第2図(b)に示すように設定架台チルト角y_(2)だけ傾いた架台開口上部L_(1),架台回転中心L_(0)及び架台開口下部L_(2)を示す波線が表示される。
・・・
第3図(a),(b)は寝台上下動の遠隔操作の場合を示す説明図である。
CTスキャナの寝台6上に患者を載せた状態でスキャン操作を行うことにより得られた画像情報,すなわち,スキャン画像Sと,第2図(a)に示す場合と同様な架台開口上部L_(1),架台回転中心L_(0)及び架台開口下部L_(2)を示す波線と,寝台6の寝台情報,すなわち,現在の寝台高さH_(1)を示す細線とを画像表示モニタ17上に併せて表示する。
次に,オペレータはこの画像表示モニタ17上の画像及び監視モニタ27上の患者の画像を見ながら,キーボード22に対し必要な情報を入力し,設定寝台情報,すなわち,設定寝台高さH_(2)を示す破線を画像表示モニタ17上に表示させるとともに,再びキーボード22に前記設定寝台情報に対応する寝台制御情報を発生させるための情報を入力する。
これにより制御プログラムが働き,シリアルインターフェース24から寝台制御情報が寝台6に送られ,この結果,寝台6は設定寝台高さH_(2)の位置まで下降して停止するとともに,寝台6から新たな寝台情報が画像表示モニタ17に入力され,その画面上には第3図(b)に示すように設定寝台高H_(2)を示す細線が表示され,かつ,スキャン画像Sも第2図(a)の場合よりも寝台高さH_(1)設定寝台高さH_(2)の差の分だけ下方に表示される。」(第3頁左下欄11行?第4頁右上欄18行)

(1-カ)
第3図には患者のアキシャル画像であるスキャン画像Sが記載され,第2図には患者のサジタル画像に架台チルト角y_(1)と設定架台チルト角y_(2)を示す細線が記載されたスキャノスコープ画像SPが記載されている。

上記(1-ア)?(1-カ)の記載を参照すると,上記刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。
「架台3と,この架台3に回転可能に取り付けられたX線管4と,架台3の開口の回りに取り付けられX線管4から曝射されるX線を検出してこれを電気信号に変換するX線検出器5と,患者を載せて上下動し得るように構成された寝台6とを有するCTスキャナを備えたCT装置であって,
X線検出器5の出力をデータ収集インターフェース14を介して入力し,画像再構成してこの結果を画像表示インターフェース16を介して画像表示モニタ17へ送出するもので,
患者のアキシャル画像であるスキャン画像Sと,寝台6の現在の寝台高さH_(1)を示す細線とを画像表示モニタ17上に併せて表示し,
オペレータは,キーボード22に対し必要な情報を入力し,設定寝台情報,すなわち,設定寝台高さH_(2)を示す破線を画像表示モニタ17上に表示させ,
再びキーボード22に前記設定寝台情報に対応する寝台制御情報を発生させるための情報を入力し,
寝台制御情報が寝台6に送られ,この結果,寝台6は設定寝台高さH_(2)の位置まで下降して停止するCT装置。」(以下,「引用発明」という。)

(2)本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2006-167346号公報(以下,「刊行物2」という。)には,「X線CT装置」について,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(2-ア)
「【背景技術】
【0002】
X線CT装置において,被検体の周りからX線を照射し該被検体を透過したX線像を検出して断層像を撮影する(以下,スキャンと呼ぶ)場合,予め,被検体の内部位置,形状が確認可能な透視像を撮影し,この透視像を見ながらスキャンの撮影範囲を決めるのが一般的である。このような透視像を通称スキャノグラム像と呼ぶ。
また,このスキャノグラム像を見ながらスキャンの撮影範囲を決めることをスキャン計画と呼ぶ。
・・・
【0004】
1つのスキャノグラム像は被検体の一方向から見た画像であり,より正確な位置決めを行いたい場合はX線発生源の位置を変えて別の角度からの透視像を得る。
それら複数のスキャノグラム像をもとにスキャン計画を行う。
具体的には,特許文献1に記載のように,X線発生源を被検体の上下方向(X線発生源が12時の位置を0°とすると,0°または180°の位置)に固定して得たスキャノグラム像と,X線発生源を被検体の左右方向(X線発生源が90°または270°の位置)に固定して得たスキャノグラム像により,それぞれ被検体の左右方向および上下方向の位置決めを行う。」

3 対比・判断
補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「X線管4」,「X線検出器5」は,それぞれ補正発明の「被検体にX線を照射するX線管」,「前記X線管から照射されたX線を検出するX線検出器」に相当する。

イ 引用発明の「スキャン画像S」は,「アキシャル画像」であり,「寝台6の現在の寝台高さH_(1)を示す細線と」「画像表示モニタ17上に併せて表示」されるものであり,「オペレータは,キーボード22に対し必要な情報を入力し,設定寝台情報,すなわち,設定寝台高さH_(2)を示す破線を画像表示モニタ17上に表示させる」のであるから,引用発明の「スキャン画像S」は,補正発明の「前記被検体の体軸に交わる領域に対応する参照画像」に相当する。
また,引用発明の「患者のアキシャル画像であるスキャン画像Sと,寝台6の現在の寝台高さH_(1)を示す細線とを画像表示モニタ17上に併せて表示し,
オペレータは,キーボード22に対し必要な情報を入力し,設定寝台情報,すなわち,設定寝台高さH_(2)を示す破線を画像表示モニタ17上に表示させ,
再びキーボード22に前記設定寝台情報に対応する寝台制御情報を発生させるための情報を入力し,
寝台制御情報が寝台6に送られ,この結果,寝台6は設定寝台高さH_(2)の位置まで下降して停止する」ことは,オペレータの入力によって指定される「設定寝台高さH_(2)を示す破線」の位置に応じて寝台6が下降して停止することを意味することは明らかであり,補正発明の「前記被検体と前記X線管及び前記X線検出器との相対的な位置関係」を「変更させる」ことに相当することは明らかである。
そして,そのために引用発明の寝台6が高さ移動手段を備えていることは明らかであり,高さ移動方向が患者の体軸に直交する方向であることも明らかである。
そうすると,引用発明の「患者のアキシャル画像であるスキャン画像Sと,寝台6の現在の寝台高さH_(1)を示す細線とを画像表示モニタ17上に併せて表示し,
オペレータは,キーボード22に対し必要な情報を入力し,設定寝台情報,すなわち,設定寝台高さH_(2)を示す破線を画像表示モニタ17上に表示させ,
再びキーボード22に前記設定寝台情報に対応する寝台制御情報を発生させるための情報を入力し,
寝台制御情報が寝台6に送られ,この結果,寝台6は設定寝台高さH_(2)の位置まで下降して停止する」ことと,
補正発明の「前記被検体の体軸に交わる領域に対応する参照画像上に操作者の入力によって指定された位置に応じて,前記被検体と前記X線管及び前記X線検出器との相対的な位置関係を前記被検体の体軸に直交する2方向に対して変更させることが可能な移動手段」とは,
「前記被検体の体軸に交わる領域に対応する参照画像上に操作者の入力によって指定された位置に応じて,前記被検体と前記X線管及び前記X線検出器との相対的な位置関係を前記被検体の体軸に直交する方向に対して変更させることが可能な移動手段」の点で共通する。

ウ 引用発明の「X線検出器5の出力をデータ収集インターフェース14を介して入力し,画像再構成してこの結果を画像表示インターフェース16を介して画像表示モニタ17へ送出するもの」は,再構成した画像がCT画像であるから,CT画像収集手段を備えることは明らかである。
そうすると,引用発明の「X線検出器5の出力をデータ収集インターフェース14を介して入力し,画像再構成してこの結果を画像表示インターフェース16を介して画像表示モニタ17へ送出するもの」と,
補正発明の「前記位置関係の変更の後に,前記X線管及び前記X線検出器を用いて前記被検体にX線を曝射してイメージングスキャンを行うことによりX線CT画像データを収集するCT画像収集手段」とは,
「前記X線管及び前記X線検出器を用いて前記被検体にX線を曝射してイメージングスキャンを行うことによりX線CT画像データを収集するCT画像収集手段」の点で共通する。

そうすると,両者は,
(一致点)
「被検体にX線を照射するX線管と,
前記X線管から照射されたX線を検出するX線検出器と,
前記被検体の体軸に交わる領域に対応する参照画像上に操作者の入力によって指定された位置に応じて,前記被検体と前記X線管及び前記X線検出器との相対的な位置関係を前記被検体の体軸に直交する方向に対して変更させることが可能な移動手段と,
前記X線管及び前記X線検出器を用いて前記被検体にX線を曝射してイメージングスキャンを行うことによりX線CT画像データを収集するCT画像収集手段と,
を備えるX線CT装置。」である点で一致し,以下の点で相違するといえる。

(相違点1)
移動手段が変更させることが可能な前記被検体の体軸に直交する方向について,補正発明では「2方向」であるのに対して,引用発明では上下方向の「1方向」である点。

(相違点2)
「CT画像収集手段」が「前記X線管及び前記X線検出器を用いて前記被検体にX線を曝射してイメージングスキャンを行うことによりX線CT画像データを収集する」タイミングについて,補正発明が「前記被検体と前記X線管及び前記X線検出器との相対的な位置関係」「の変更の後」と特定されているのに対して,引用発明では,明記されていない点。

(1)相違点1についての検討
上記引用刊行物1には,上記摘記事項(1-オ)に「架台3は設定架台チルト角y_(2)だけチルトして停止する」と患者の位置の補正として上下方向以外の移動も示唆されている。
そして,上記引用刊行物2の摘記事項(2-ア)によれば被検体の左右方向および上下方向の2方向の位置決めを行うことは周知技術である。
すなわち,患者の位置の補正としてアキシャル画像上の上下方向と左右方向があることは周知技術である。
してみると,引用発明の,移動手段が変更させることが可能な前記被検体の体軸に直交する上下方向である「1方向」を,周知の左右方向と上下方向の「2方向」に置き換えて構成することは,十分に動機付けがあり,また,阻害要因もない。
すなわち,引用発明に相違点1に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到するものといえる。

(2)相違点2についての検討
CT装置において,患者の正確なスライス画像を得るために,CTスキャンの前に患者のCTスキャナに対する位置決めをすることは技術常識である。
してみると,引用発明の「CT画像収集手段」が「CT画像データを収集する」タイミングとして,患者のCTスキャナに対する位置決めを行った後,すなわち,相違点2の補正発明の構成を採用することは,CT装置として当然の構成であるから,引用発明も相違点2の補正発明の構成を有しているものといえる。
したがって,相違点2は実質的な相違点ではない。

(3)そして,補正発明の作用効果は,刊行物1記載の事項,周知技術および技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

(4)したがって,補正発明は,引用発明および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?11に係る発明は,平成25年1月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されたものであって,その請求項4に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりであると認める。
「 【請求項3】
被検体にX線を照射するX線管と,
前記X線管から照射されたX線を検出するX線検出器と,
前記被検体の体軸方向に交わる領域に対応する参照画像上に操作者の入力によって指定された任意の位置に応じて,前記被検体と前記X線管及び前記X線検出器との相対的な位置関係を変更させる移動手段と,
前記位置関係の変更の後に,前記X線管及び前記X線検出器を用いて前記被検体にX線を曝射してイメージングを行うことによりX線CT画像データを収集するCT画像収集手段と,
を備えるX線CT装置。
【請求項4】
前記移動手段は,前記被検体と前記X線管及び前記X線検出器との相対的な位置関係を,前記被検体の体軸に交わる2方向に対して変更させることが可能なように構成される請求項3記載のX線CT装置。」

2 引用刊行物およびその記載事項
本願出願前に頒布された刊行物1,2およびその記載事項は,上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 当審の判断
補正発明は,上記第2の1で記載したように,実質的に本願発明の「被検体の体軸に交わる2方向」を「被検体の体軸に直交する2方向」と限定するものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含む補正発明が,上記「第2 3」において検討したとおり,引用発明,周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

第4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その他の請求項について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-30 
結審通知日 2014-10-07 
審決日 2014-10-24 
出願番号 特願2008-227109(P2008-227109)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 泉 卓也  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 三崎 仁
信田 昌男
発明の名称 X線CT装置およびX線CT装置の制御プログラム  
代理人 特許業務法人東京国際特許事務所  
代理人 特許業務法人東京国際特許事務所  

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