ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B |
---|---|
管理番号 | 1295521 |
審判番号 | 不服2013-16582 |
総通号数 | 182 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-08-28 |
確定日 | 2014-12-11 |
事件の表示 | 特願2012- 4630「傾斜投写光学系及びそれを用いた投写型映像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月21日出願公開、特開2012-118547〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成21年1月8日に出願した特願2009-2124号(以下、「原出願」という。)の一部を平成24年1月13日に新たな特許出願としたものであって、平成25年5月8日付けで手続補正がなされたが、同年6月19日付けで拒絶査定がなされた。 本件は、これを不服として、同年8月28日に請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成26年5月27日付けで、平成25年8月28日付けの手続補正が却下されるとともに同日付けで拒絶の理由(最後)が通知され、同年7月25日付けで、意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。 2 平成26年7月25日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成26年7月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、そのうち特許請求の範囲請求項1の補正は、本件補正前の 「【請求項1】 投写型映像表示装置において、 投写面に対して、斜め方向から映像表示素子の映像を拡大投写する複数のレンズからなるレンズ群と、 前記投写面、及び、前記投写面に光学的に最も近い位置に配置される第1のレンズ、の間に配置された平面ミラーと、を備え、 前記平面ミラーは、前記レンズ群のうち少なくとも前記第1のレンズを含まない複数のレンズにより共有される光軸に対して角度可変可能な回転調整機構を備え、 前記第1のレンズを通過する映像光束の有効領域は、前記光軸を含まず、 前記回転調整機構は、前記平面ミラーを前記光軸に対して所定角度を持って配置する第1の状態、及び、前記平面ミラーを投写型映像表示装置に収納する第二の状態を具現し、 前記第1の状態においては、前記平面ミラーに反射した映像光束により得られる拡大映像は前記映像表示素子の表示面方向に得られるように構成され、前記第2の状態においては、当該拡大映像は前記光軸を延長した方向に得られるように構成され、 前記第1及び第2の状態は、当該投写型映像表示装置の姿勢を保ったまま具現される、 投写型映像表示装置。」を 「【請求項1】 投写型映像表示装置において、 映像表示素子と、 投写面に対して、斜め方向から前記映像表示素子の映像を拡大投写する複数のレンズからなるレンズ群とを備え、 前記映像表示素子は、該映像表示素子の表示面が前記レンズ群の光軸を含むように配置されており、更に、 前記投写面、及び、前記投写面に光学的に最も近い位置に配置される第1のレンズ、の間に配置された平面ミラーと、を備え、 前記平面ミラーは、前記レンズ群のうち少なくとも前記第1のレンズを含まない複数のレンズにより共有される光軸に対して角度可変可能な回転調整機構を備え、 前記第1のレンズを通過する映像光束の有効領域は、前記光軸を含まず、 前記回転調整機構は、前記平面ミラーを前記光軸に対して所定角度を持って配置する第1の状態、及び、前記平面ミラーを投写型映像表示装置に収納する第二の状態を具現し、 前記第1の状態においては、前記平面ミラーに反射した映像光束により得られる拡大映像は前記映像表示素子の表示面方向に得られるように構成され、前記第2の状態においては、当該拡大映像は前記光軸を延長した方向に得られるように構成され、 前記第1及び第2の状態は、当該投写型映像表示装置の姿勢を保ったまま具現される、 投写型映像表示装置。」と補正するものである。 (2)補正の適否 本件補正には、次の補正事項が含まれる。 a 補正事項 本件補正後の請求項1に係る発明には、本件補正前の構成要素である「映像表示素子」に関し、「映像表示素子の表示面が前記レンズ群の光軸を含むように配置されて」いる構成が加えられた。 ここで、上記構成が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて検討するに、上記構成は、本件出願の明細書等に記載されていないし、請求人が平成26年7月25日付けの意見書において、補正の根拠であると主張する図15にも、上記構成は記載されていない。 したがって、本件補正は、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3 本願発明 平成26年7月25日付けの手続補正は、上記のとおり却下されるべきものであり、平成25年8月28日付けの手続補正は、平成26年5月27日付けで却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年5月8日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。(上記「2」[理由]「(1)」参照。) 4 引用刊行物 (1)引用刊行物1 これに対して、当審における拒絶の理由で通知した、原出願の出願前である2008年3月13日に頒布された「国際公開第2008/029657号 」(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。 引1ア:「技術分野 [0001] 本発明は、電気光学素子により表示された画像や静止画像をスクリーン上に拡大投影して表示する画像投影装置に関し、特に、投射レンズを構成する複数のレンズのうち、最前部のレンズをプラスチックにより構成した画像投射装置に関する。 背景技術 [0002] 近年、液晶表示素子やDMD(digital maicromirror device)表示素子等からなる電気光学素子を内蔵した画像投影装置が普及している。この種の画像投影装置は持ち運びが手軽であり、机の上等に設置して、机の高さよりも高い斜め上方向の投影スクリーンに向けて画像光を投射して使用される。そのために、画像を投射するための投射レンズの光軸と、投影スクリーンの中央部とが一致しない。 [0003] 図16は、この種の従来公知の画像投影装置200の外観図である。画像投影装置200は筐体201、操作パネル203、投射レンズ202、投射レンズ202内に設置されたレンズ群204などから構成されている。筐体201内には、光源部、液晶表示素子等からなる電気光学素子、電気光学素子を駆動する駆動回路、電源及び投射レンズ202等が収納されている。画像投影装置200は、通常机上に設置して斜め上方向に向けて画像光を投射する。 [0004] 図17は、投射レンズ210を構成するレンズ群の一例を示す模式的な断面図である。第1レンズ群211と第2レンズ群212とから構成されており、第1レンズ群211はフォーカシングレンズであり、第2レンズ群212はコンペンシエータレンズやリレーレンズ等である。第1レンズ群211は前部鏡筒214に保持部材220及び221により保持されている。特に第1レンズ群211のうち、最前段のレンズ216(以下前玉レンズという)は、その大きさが最も大きく、重さも重い。第2レンズ群212は後部鏡筒215内に収納され、保持部材222及び223により保持されている。そして、液晶表示素子225からの画像光を第2レンズ群212の光軸224より下方から入射し、第1レンズ群211の光軸224の上部から斜め上方向に出射する。従って、第1レンズ群211は光軸より上半分のみが使用される。 [0005] 特許文献1には、カメラ用鏡筒及び対物レンズを透明プラスチックにより一体的に成形することにより、光学部材と外装部材を組み立てる組み立て工数を削減し、安価なカメラを実現したことが、記載されている。 [0006] 特許文献2には、投影レンズを半分に切断し、底辺を有する半円筒状の鏡筒に収納することが記載されている。そして、投影表示装置を使用するときは、投影表示装置の筺体上部から鏡筒を突き出させて画像を投射し、使用しないときはこの鏡筒の底辺が上部にくるように回転させ、筺体の上面から突き出さないようすることが記載されている。 特許文献1:特開平7-209714号公報 特許文献2:特開2006-23361号公報 発明の開示 発明が解決しようとする課題 [0007] この種の画像投影装置は投射する画角が大きい。従って、第2レンズ群より第1レンズ群の直径を大きくする必要がある。特に画角の大きな投射画像を得るためには投射レンズの最前段に位置する前玉レンズの外形を大きくしなければならず、これをガラスにより形成する場合には、厚さの厚い円盤状の板状ガラスから研磨加工を行う必要があった。そのため、ガラスの加工が難しくコスト高になるとともに、材料がガラスであるために投射レンズの重量が重く、装置全体を重くしてしまうので、手軽に持ち運ぶには不利な要素となった。 課題を解決するための手段 [0008] 上記のような目的を達成するため、本発明の一つの観点によれば、投射レンズにより画像を投影する画像投影装置において、前記投射レンズは、プラスチック材料により形成されている前玉レンズを備えるようにした。かかる構成によれば、前玉レンズの重量を軽くすることができるので、持ち運びが容易な画像投影装置を提供することができる。」 引1イ:「[0028] また、投影画像を投射レンズの光軸よりも上方に向けて拡大投射する場合に、投射レンズの前玉レンズは、光軸に対して、例えば、上半分のみ使用する。そこで、前玉レンズの上下を異なるパワーとして使用状況に応じて上下を入れ替えて使用することができる、或いは、下半分をカットして軽量化を図ることができる、という利点を有する。」 引1ウ:「[0037] 以下、図面を用いて本実施形態を詳細に説明する。 [0038] 図1は、本発明の実施形態に係る画像投影装置に使用する投射レンズ1の模式的な断面図である。投射レンズ1は、画像光を出射側に配置する第1レンズ群2と入射側に配置する第2レンズ群3とを有する。第1レンズ群2はフォーカシングレンズであり、第2レンズ群はリレーレンズ又はコンペンセータレンズ群である。第1レンズ群2の最前段は前玉レンズ10であり、透明なプラスチック材料からなる。前玉レンズ10は、前部鏡筒6の内周に固定されている。また、前玉レンズ10は後方のガラスレンズ12を保持するための保持部材11と一体的に形成されている。その後方のガラスレンズ13及び複合ガラスレンズ14は、前玉レンズ10及び保持部材11のプラスチックとは別体の保持部材15、16により保持されている。第2レンズ群3は複数のガラスレンズから成り、保持部材17、18により後部鏡筒5に固定されて保持されている。前部鏡筒6及び後部鏡筒5は外側鏡筒4により進退自在に保持されている。投射レンズ1は光軸19を中心に対称な構造を有している。 [0039] 前玉レンズ10は、透明なPCやPMMAからなる樹脂の他に、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等のプラスチック材料を使用することができる。これらレンズ機材となるプラスチック材料を金型による射出成形やプレス成形により形成することができる。この場合に、前玉レンズ10の領域に対応する金型の内表面は、高精度の鏡面研磨が施されている。 [0040] これにより、ガラスによりレンズを形成したときに比べて、前玉レンズの重さを1/2以下にすることができる。また、後方のガラスレンズ12の保持部材を一体的に構成しているので、部品点数が削減される。」 引1エ:「[0046] 図6は、他の実施形態に係る画像投影装置に用いられる前玉レンズの形状を表す外観図である。画像投影装置の拡大投射用の投射レンズにおいては、光軸19に対して第1レンズ群2の上側1/2の領域を画像光が通過する。光軸19を中心にして仰角を持たせて画像を投射すると、投射される画像が歪むので、この歪みを防止するためである。従って、前玉レンズにおいては、レンズの中心から下側半分は使用しない。 [0047] 図6(a1)は、半円形状のプラスチックからなる前玉レンズの正面図であり、図6(a2)は、X-X’部分の断面図である。投射レンズの光軸19から上半分にレンズを形成し、下半分をカットしている。これにより、レンズを軽量化し、レンズを構成するプラスチック材料の使用量も減少させることができる。図6(b1)は、四角形状のプラスチックレンズからなる前玉レンズの正面図であり、図6(b2)は、Y-Y’部分の断面図である。投射レンズの光軸19から上半分に四角形状のレンズを形成し、下半分をカットしている。画像投影装置は、液晶表示素子に表示される画像やDMDから反射される画像は通常四角形を有する。従って、投射レンズは円形である必要がない。そこで、前玉レンズを四角形に形成して、画像光が通過する領域にレンズを構成している。これにより、レンズを軽量化し、またプラスチック材料の使用量も減少させることができる。なお、半月形状や四角形状の他に六画形状や、更に多角形状とすることができる。これらの前玉レンズは、プラスチック材料を金型成形、プレス加工等により形成した。そのために、ガラスレンズとは異なり非対称の形状を有するレンズを比較的自由に設計することができる。」 引1オ:[図1] 引1カ:[図6] 引1a:[0046]?[0047]及び図6に記載された「他の実施形態に係る画像投影装置」の「拡大投射用の投射レンズ」において、「前玉レンズ」の形状以外の構成は、[0038]?[0040]及び図1に記載された「本発明の実施形態に係る画像投影装置」の「投射レンズ1」と同様であると認められる。 引1b:図6に記載された「他の実施形態に係る画像投影装置」において、「前玉レンズ」の形状以外の構成は、[0038]?[0040]及び図1に記載された「本発明の実施形態に係る画像投影装置」の構成と同様であると認められる(引1a)から、引1アの「本発明は、電気光学素子により表示された画像や静止画像をスクリーン上に拡大投影して表示する画像投影装置に関」するとの記載からして、図6に記載された「他の実施形態に係る画像投影装置」は、電気光学素子により表示された画像や静止画像をスクリーン上に拡大投影して表示するものといえる。 そして、引1イの「投影画像を投射レンズの光軸よりも上方に向けて拡大投射する場合に、投射レンズの前玉レンズは、光軸に対して、例えば、上半分のみ使用する。そこで、前玉レンズの・・・下半分をカットして軽量化を図ることができる、という利点を有する。」との記載、図6に記載された「他の実施形態に係る画像投影装置」が「投射レンズの光軸19から上半分にレンズを形成し、下半分をカットしている」(引1エ)ものであることからして、図6に記載された「他の実施形態に係る画像投影装置」における投射レンズ1は、電気光学素子により表示された画像や静止画像をスクリーン上に斜め方向から拡大投影して表示するものといえる。 引1c:図6に記載された「他の実施形態に係る画像投影装置」において、「前玉レンズ」の形状以外の構成は、[0038]?[0040]及び図1に記載された「本発明の実施形態に係る画像投影装置」の構成と同様であると認められる(引1a)から、図6に記載された「他の実施形態に係る画像投影装置」の投射レンズ1は、引1ウの「図1は、本発明の実施形態に係る画像投影装置に使用する投射レンズ1の模式的な断面図である。投射レンズ1は、画像光を出射側に配置する第1レンズ群2と入射側に配置する第2レンズ群3とを有する。第1レンズ群2はフォーカシングレンズであり、第2レンズ群はリレーレンズ又はコンペンセータレンズ群である。第1レンズ群2の最前段は前玉レンズ10であり、透明なプラスチック材料からなる。」との記載からして、画像光の出射側に配置する第1レンズ群2と入射側に配置する第2レンズ群3とを有し、第1レンズ群2の最前段は前玉レンズ10であるといえる。 引1d:引1エの「図6(a1)は、半円形状のプラスチックからなる前玉レンズの正面図であり、図6(a2)は、X-X’部分の断面図である。投射レンズの光軸19から上半分にレンズを形成し、下半分をカットしている。」との記載及び引1エの「画像投影装置の拡大投射用の投射レンズにおいては、光軸19に対して第1レンズ群2の上側1/2の領域を画像光が通過する。」との記載からして、前玉レンズ10は、投射レンズ1の光軸19から上半分にレンズが形成され、下半分をカットされており、投射レンズ1の光軸19に対して第1レンズ群2の上側1/2の領域を画像光が通過するといえる。 以上によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「画像投影装置において、 電気光学素子により表示された画像や静止画像をスクリーン上に斜め方向から拡大投影して表示する投射レンズ1を備え、 投射レンズ1は、画像光の出射側に配置する第1レンズ群2と入射側に配置する第2レンズ群3とを有し、第1レンズ群2の最前段は前玉レンズ10であり、 前玉レンズ10は、投射レンズ1の光軸19から上半分にレンズが形成され、下半分をカットされており、 投射レンズ1の光軸19に対して第1レンズ群2の上側1/2の領域を画像光が通過する、画像投影装置。」 (2)引用刊行物2 また、当審における拒絶の理由で通知した、原出願の出願前である平成18年9月28日に頒布された「特開2006-259252号公報 」(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている 引2ア:「【技術分野】 【0001】 本発明は、映像をフロント投写とリア投写とに切替えて投写するプロジェクタに関する。」 引2イ:「【0008】 本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、リア投写用のミラーをプロジェクタ本体と一体に構成し、リア投写時も大画面で投写でき、小型で投写映像の品質を向上させたプロジェクタを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上述した目的を達成するために、本発明は、プロジェクタであって、プロジェクタ本体と移動可能に連接されると共に、プロジェクタ本体の投写レンズから投写される投写光を反射するミラーを回動可能に有するミラー機構部を有し、ミラー機構部とプロジェクタ本体とは、ミラー機構部にプロジェクタ本体を収容すると共に投写光を直接投写させることが可能な第1の移動位置と、ミラーを所定の位置に回動させ投写光をミラーに反射させて投写させることが可能な第2の移動位置とに移動可能に構成されていることを特徴とする。 【0010】 このようなプロジェクタによれば、ミラー機構部がプロジェクタ本体と連接されることにより一体に構成される。また、投写光を直接投写させるフロント投写の場合には、ミラー機構部にプロジェクタ本体を収容する第1の移動位置に移動させることにより、プロジェクタを小型化することができる。そして、投写光をミラーに反射させて投写させるリア投写の場合には、ミラーを所定の位置に回動させ、ミラー機構部とプロジェクタ本体とを第2の移動位置に移動させて投写を行うことにより、リア投写時も大画面で投写でき、併せて、プロジェクタ本体に塵埃が入ることはないため、投写映像の品質を従来に対して向上することができる。」 引2ウ:「【0038】 各構成部の動作を簡単に説明する。 集光レンズ53は、LED光源52で発光した光を前方に出射させる。コリメータレンズ57は、光源51から出射された光を平行光に変換して出射する。伸張レンズ58は、コリメータレンズ57から出射された平行光を液晶ライトバルブ56の所定の入射光領域(図示省略)のサイズに合せて伸張して出射する。 【0039】 液晶ライトバルブ56は、本実施形態では、透過型カラー液晶パネルを用いており、LCD(Liquid Crystal Display)駆動部34の信号に基づいて駆動し、伸張レンズ58から出射された光を変調して映像に変換する。なお、液晶ライトバルブ56は、透過型液晶パネルに限定されることなく、反射型液晶パネルやデジタルマイクロミラーデバイス等を用いることもできる。 【0040】 投写レンズ59は、数種類のレンズから構成されており、液晶ライトバルブ56により変調された映像を拡大して、プロジェクタ1の外部に出射する。 【0041】 上述した光学構成部50の構成及び動作により、プロジェクタ1は、プロジェクタ1の外部に設置したスクリーン500(図6に図示)などの投影面に映像を拡大投写する。」 引2エ:「【0044】 図2を用いて、フロント投写時における固定部200と移動部300との構成および動作を説明する。 【0045】 図2(a)に示すように、ミラー機構部100の左側面ケース170のプロジェクタ本体2側の面には、プロジェクタ本体2をミラー機構部100に対して固定するための固定部200として、フロント投写時に使用するフロント用固定部210と、リア投写時に使用するリア用固定部220が形成される。また、左側面ケース170に相対するプロジェクタ筐体10の外面には、フロント用およびリア用に共通で使用する固定部200として固定用ユニット230が形成され、それぞれを協動させて動作させる。 【0046】 また、ミラー機構部100の左側面ケース170のプロジェクタ本体2側の面には、プロジェクタ本体2をミラー機構部100に対して移動するための移動部300として、スライド部310と、リア投写時に、プロジェクタ本体2をミラー機構部100に対して所定の位置まで回動させるためのリア用回動部330とが形成される。また、左側面ケース170に相対するプロジェクタ筐体10の外面には、移動部300としてのスライド用突起315が形成され、それぞれを協動させて動作させる。 【0047】 なお、ミラー機構部100の右側面ケース160のプロジェクタ本体2側の面と、右側面ケース160に相対するプロジェクタ筐体10の外面にも、左側面ケース170および左側面ケース170に相対するプロジェクタ筐体10の外面に形成したと同様に、固定部200および移動部300が形成される。また、固定部200および移動部300の構成および動作は、左側面ケース170と右側面ケース160とは同様であるため、本明細書では、左側面ケース170での固定部200および移動部300の構成および動作を説明することとし、右側面ケース160における説明は省略する。」 引2オ:「【0061】 図3は、リア投写時のプロジェクタの概略側面図、および、移動部の斜視図であり、図3(a)は、プロジェクタの概略側面図であり、図3(b)は、移動部を構成するリア回動部をプロジェクタ本体側から見た斜視図である。図4は、図3(a)に示すE-E断面図である。図3、図4を用いて、プロジェクタ1のリア投写時の形態及び動作を説明する。 【0062】 最初に、プロジェクタ本体2がミラー機構部100に対して、フロント投写時の第1の移動位置からリア投写時の第2の移動位置に移動するまでの動作を説明する。なお、本実施形態では、ミラー機構部100に対してプロジェクタ本体2を移動させることとして説明する。本発明では、プロジェクタ本体2に対してミラー機構部100を移動させることも当然可能である。 【0063】 ユーザは、フロント投写の状態で、ミラー保持ケース110を把持して、ミラー保持ケース110の回転が阻止されるまで前面ケース140に対して回転させる。この場合、ミラー保持ケース110は、ミラー回動部130により前面ケース140に対して回動する。そして、ミラー保持ケース110が前面ケース140の肩142に当接することで、ミラー保持ケース110の回転が阻止される。この結果、ミラー保持ケース110は前面ケース140に対して略平行となる。ミラー回動部130に関しては後述する。 【0064】 次に、ユーザは、プロジェクタ本体2を把持して、ミラー保持筐体105に対して第2の移動位置の方向に引く。これにより、フロント用固定部210において、固定用ユニット230の固定用凸部235がフロント固定用凹部211の段差Dを乗越えることにより固定が解除される。そして、プロジェクタ本体2は、スライド部310のスライド用溝312をスライド用突起315が摺動できる状態となりスライド可能となる。 【0065】 次に、ユーザは、プロジェクタ本体2を把持したまま、スライドが阻止される位置までプロジェクタ本体2をスライドさせる。これにより、スライド用突起315は、リア用回動部330の位置までスライドした状態となる。リア用回動部330に関しては後述する。 【0066】 次に、ユーザは、その位置で、プロジェクタ本体2をミラー機構部100に対して回転させる。これにより、プロジェクタ本体2のスライド用突起315はリア用回動部330を中心に回転する。ユーザは、プロジェクタ本体2を回転させ、プロジェクタ本体2の回転が阻止される角度まで回転させる。この場合、プロジェクタ本体2の回転角度が所定の角度になると、リア用固定部220により、プロジェクタ本体2の回転が阻止されて、プロジェクタ本体2は、ミラー機構部100に対して固定される。 【0067】 なお、リア用固定部220によりプロジェクタ本体2の回転が阻止された位置が、リア投写時の位置(第2の移動位置)である。この状態で、プロジェクタ本体2およびミラー機構部100を机上面600に載置することにより、リア投写が可能な状態となる。その状態が、図3(a)で示す図である。 【0068】 図3(a)に示すように、リア投写時のプロジェクタ1は、ミラー機構部100の前面ケース140とプロジェクタ本体2の双方のコーナー部を支持部として机上面600に載置される形態となる。このとき、ミラー機構部100とプロジェクタ本体2との連接部となるリア用固定部220およびリア用回動部330を含む双方の領域は、机上面600から浮いた状態となる。 【0069】 リア投写時には、上述したように、プロジェクタ本体2の前面部1bがミラー機構部100により、持ち上がる状態となる。また、ミラー機構部100もプロジェクタ本体2に対して角度を持つ。それにより、プロジェクタ本体2とミラー機構部100との協動により、投写レンズユニット60から投写される投写光の投写角度とミラー120に反射する反射角度が所定の角度に設定される。その結果、プロジェクタ本体2の投写レンズユニット60から投写された投写光が、過不足なくミラー120に反射することが可能となる。それにより、プロジェクタ1は、プロジェクタ本体2の背面部1eの方向に設置された投影面に映像を拡大投写させることができる。図3(a)に図示する二点鎖線は、投写レンズユニット60から投写された投写光の方向のイメージを示している。」 引2カ:「【0083】 図5は、ミラー回動部を示す斜視図である。図5を用いてミラー回動部130の構成および動作を説明する。 【0084】 図5に示すように、ミラー回動部130は、ミラー機構部100の前面ケース140に対してミラー保持ケース110を回動させるための機構であり、左右に2箇所構成される。なお、図5に示すミラー回動部130は、図1(b)のA部の拡大図でもあり、左側に構成されるミラー回動部130を示している。右側に構成されるミラー回動部は左側のミラー回動部130と対象に構成され動作は同様のため、左側のミラー回動部130の構成および動作を説明する。 【0085】 ミラー回動部130は、ミラー回動ユニット132で構成されている。ミラー回動ユニット132は、ミラー保持ケース固定用シャフト133と、ミラー保持ケース固定用シャフト133および駆動部を収納する前面ケース固定用ブラケット134とを有して構成される。前面ケース固定用ブラケット134は、ミラー保持ケース固定用シャフト133の駆動部を収納する円柱形状のブラケット胴部134aと、ブラケット胴部134aに接続するフラット面を有するブラケットフラット部134bとを有して構成される。 【0086】 ブラケットフラット部134bの平面には2箇所のネジ孔を形成している。また、ミラー保持ケース固定用シャフト133は、ブラケット胴部134aから突出する概直方体形状の平面に2箇所のネジ孔を形成している。ミラー保持ケース固定用シャフト133は、前面ケース固定用ブラケット134に対して、回動軸135を中心に回動し、任意の角度で所定の固定力を保持して固定される。 【0087】 また、ミラー回動ユニット132は、ミラー保持ケース110に形成する溝111にブラケット胴部134aが収容され、同じくミラー保持ケース110に形成する溝112にミラー保持ケース固定用シャフト133が収容され、ネジ137によりミラー保持ケース110に固定される。また、ブラケットフラット部134bは、前面ケース140に形成する溝143に収容されて、ネジ138により前面ケース140に固定される。 【0088】 上述した構成により、ミラー回動ユニット132は、前面ケース140に対してミラー保持ケース110を接続し、回動自在にミラー保持ケース110を固定することができる。そして、ミラー保持ケース110は、フロント投写時におけるプロジェクタ本体2の上面部1aを覆う状態(前面ケース140に対して概90度の角度を成す状態)から、回動して、前面ケース140の肩142に当接して回動が阻止され、前面ケース140と概平行となる状態(前面ケース140に対して概180度の角度を成す状態)まで回動する。前面ケース140に対してミラー保持ケース110が概平行となる状態を図5は示している。」 引2キ:【図1】 引2ク:【図3】 引2ケ:【図6】 引2a:引2ウの「液晶ライトバルブ56は、本実施形態では、透過型カラー液晶パネルを用いており、LCD(Liquid Crystal Display)駆動部34の信号に基づいて駆動し、伸張レンズ58から出射された光を変調して映像に変換する。・・・投写レンズ59は、数種類のレンズから構成されており、液晶ライトバルブ56により変調された映像を拡大して、プロジェクタ1の外部に出射する。上述した光学構成部50の構成及び動作により、プロジェクタ1は、プロジェクタ1の外部に設置したスクリーン500(図6に図示)などの投影面に映像を拡大投写する。」との記載及び図1,3,6の図示内容からして、プロジェクタは、スクリーン500に対して、液晶ライトバルブ56の映像を拡大投写する投写レンズ59と、スクリーン500及び、投写レンズ59、の間に配置された平面ミラー120と、を備えているといえる。 引2b:引2オの「ユーザは、フロント投写の状態で、ミラー保持ケース110を把持して、ミラー保持ケース110の回転が阻止されるまで前面ケース140に対して回転させる。この場合、ミラー保持ケース110は、ミラー回動部130により前面ケース140に対して回動する。そして、ミラー保持ケース110が前面ケース140の肩142に当接することで、ミラー保持ケース110の回転が阻止される。この結果、ミラー保持ケース110は前面ケース140に対して略平行となる。」との記載、引2カの「ミラー保持ケース110は、フロント投写時におけるプロジェクタ本体2の上面部1aを覆う状態(前面ケース140に対して概90度の角度を成す状態)から、回動して、前面ケース140の肩142に当接して回動が阻止され、前面ケース140と概平行となる状態(前面ケース140に対して概180度の角度を成す状態)まで回動する。」との記載及び図1,3の図示内容からして、平面ミラー120は、投写レンズ59の光軸に対して角度可変可能なミラー回動部130を備えているといえる。 さらに、上記記載における「前面ケース140の肩142に当接して回動が阻止され、前面ケース140と概平行となる状態(前面ケース140に対して概180度の角度を成す状態)」はミラー回動部130におけるリア投写時の回動位置であるとともに、この回動位置において平面ミラー120は投写レンズ59の光軸に対して所定角度を持って配置されていることが明らかであるから、上記記載及び図1,3の図示内容からして、ミラー回動部130は、平面ミラー120を投写レンズ59の光軸に対して所定角度を持って配置するリア投写時の回動位置、及び、平面ミラー120を該平面ミラー120がプロジェクタ本体2の上面部1aを覆うフロント投写時の回動位置に回動可能なものといえる。 引2c:図1,3,6の図示内容からして、引用文献2に記載されたプロジェクタは、平面ミラー120を投写レンズ59の光軸に対して所定角度を持って配置するリア投写時の回動位置においては、平面ミラー120に反射した映像光束により得られる拡大映像は液晶ライトバルブ56の表示面方向に得られるように構成され、平面ミラー120がプロジェクタ本体2の上面部1aを覆うフロント投写時の回動位置においては、当該拡大映像は投写レンズ59の光軸を延長した方向に得られるように構成されているといえる。 以上によれば、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 「プロジェクタにおいて、 スクリーン500に対して、液晶ライトバルブ56の映像を拡大投写する投写レンズ59と、 スクリーン500及び、投写レンズ59、の間に配置された平面ミラー120とを備え、 平面ミラー120は、投写レンズ59の光軸に対して角度可変可能なミラー回動部130を備え、 ミラー回動部130は、平面ミラー120を投写レンズ59の光軸に対して所定角度を持って配置するリア投写時の回動位置、及び、平面ミラー120を該平面ミラー120がプロジェクタ本体2の上面部1aを覆うフロント投写時の回動位置に回動可能であり、 平面ミラー120を投写レンズ59の光軸に対して所定角度を持って配置するリア投写時の回動位置においては、平面ミラー120に反射した映像光束により得られる拡大映像は液晶ライトバルブ56の表示面方向に得られるように構成され、平面ミラー120がプロジェクタ本体2の上面部1aを覆うフロント投写時の回動位置においては、当該拡大映像は投写レンズ59の光軸を延長した方向に得られるように構成されている、プロジェクタ。」 5 対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 (a)引用発明1の「画像投影装置」は本願発明の「投写型映像表示装置」に相当し、以下同様に、「スクリーン」は「投写面」に、「電気光学素子」は「映像表示素子」に、「画像光の出射側に配置する第1レンズ群2と入射側に配置する第2レンズ群3」は「複数のレンズからなるレンズ群」に、それぞれ相当する。 (b)引用発明1の「電気光学素子により表示された画像や静止画像をスクリーン上に斜め方向から拡大投影して表示する投射レンズ1を備え、投射レンズ1は、画像光の出射側に配置する第1レンズ群2と入射側に配置する第2レンズ群3とを有」する構成は、本願発明の「投写面に対して、斜め方向から映像表示素子の映像を拡大投写する複数のレンズからなるレンズ群」「を備え」る構成に相当する。 (c)引用発明1の「第1レンズ群2の最前段は前玉レンズ10であ」る構成は、本願発明の「投写面に光学的に最も近い位置に配置される第1のレンズ」「を備え」る構成に相当する。 (d)引用発明1の「画像光」は本願発明の「映像光束」に相当し、以下同様に、「投射レンズ1の光軸19」は「前記レンズ群のうち少なくとも前記第1のレンズを含まない複数のレンズにより共有される光軸」に、「前玉レンズ10」における「画像光が通過する」「領域」は「前記第1のレンズを通過する映像光束の有効領域」に、それぞれ相当するから、引用発明1の「前玉レンズ10は、投射レンズの光軸19から上半分にレンズが形成され、下半分をカットされており、投射レンズ1の光軸19に対して第1レンズ群2の上側1/2の領域を画像光が通過する」構成と、本願発明の「前記第1のレンズを通過する映像光束の有効領域は、」「前記レンズ群のうち少なくとも前記第1のレンズを含まない複数のレンズにより共有される光軸」「を含まない」構成とは、「前記第1のレンズを通過する映像光束の有効領域と、前記レンズ群のうち少なくとも前記第1のレンズを含まない複数のレンズにより共有される光軸と」を有する点で一致する。 以上によれば、本願発明と引用発明1とは次の点で一致する。 (一致点) 「投写型映像表示装置において、 投写面に対して、斜め方向から映像表示素子の映像を拡大投写する複数のレンズからなるレンズ群を備え、 前記投写面に光学的に最も近い位置に配置される第1のレンズを通過する映像光束の有効領域と、 前記レンズ群のうち少なくとも前記第1のレンズを含まない複数のレンズにより共有される光軸と、を有する、 投写型映像表示装置。」 そして、両者は次の点で相違する。 (相違点1) 本願発明では、「前記投写面、及び、前記投写面に光学的に最も近い位置に配置される第1のレンズ、の間に配置された平面ミラー」を備え、 「前記平面ミラーは、前記レンズ群のうち少なくとも前記第1のレンズを含まない複数のレンズにより共有される光軸に対して角度可変可能な回転調整機構を備え」、 「前記回転調整機構は、前記平面ミラーを前記光軸に対して所定角度を持って配置する第1の状態、及び、前記平面ミラーを投写型映像表示装置に収納する第二の状態を具現し、 前記第1の状態においては、前記平面ミラーに反射した映像光束により得られる拡大映像は前記映像表示素子の表示面方向に得られるように構成され、前記第2の状態においては、当該拡大映像は前記光軸を延長した方向に得られるように構成され、 前記第1及び第2の状態は、当該投写型映像表示装置の姿勢を保ったまま具現される」のに対して、 引用発明1では、本願発明の「平面ミラー」に関する構成を備えていない点。 (相違点2) 本願発明では、「前記第1のレンズを通過する映像光束の有効領域は、」「前記レンズ群のうち少なくとも前記第1のレンズを含まない複数のレンズにより共有される光軸」「を含ま」ない構成であるのに対して、 引用発明1では、「前玉レンズ10」における「画像光」の通過領域が「投射レンズ1の光軸19」を含むかどうかが不明である点。 6 判断 (相違点1) (1)本願発明と引用発明2とを対比する。 (e)引用発明2の「プロジェクタ」は本願発明の「投写型映像表示装置」に相当し、以下同様に、「スクリーン500」は「投写面」に、「液晶ライトバルブ56」は「映像表示素子」に、それぞれ相当する。 (f)引用発明2の「スクリーン500に対して、液晶ライトバルブ56の映像を拡大投写する投写レンズ59」と本願発明の「投写面に対して、斜め方向から映像表示素子の映像を拡大投写する複数のレンズからなるレンズ群」とは「投写面に対して、映像表示素子の映像を拡大投写する投写レンズ」である点で一致する。 (g)引用発明2の「スクリーン500及び、投写レンズ59、の間に配置された平面ミラー120」が、本願発明の「前記投写面、及び、前記投写面に光学的に最も近い位置に配置される第1のレンズ、の間に配置された平面ミラー」に相当することは、当業者には明らかである。 (h)引用発明2の「ミラー回動部130」は本願発明の「回転調整機構」に相当し、以下同様に、「平面ミラー120を投写レンズ59の光軸に対して所定角度を持って配置するリア投写時の回動位置」は「前記平面ミラーを前記光軸に対して所定角度を持って配置する第1の状態」に、「平面ミラー120がプロジェクタ本体2の上面部1aを覆うフロント投写時の回動位置」は「前記平面ミラーを投写型映像表示装置に収納する第二の状態」に、「回動可能」な構成は「具現」する構成に、それぞれ相当する。 (i)引用発明2の「平面ミラー120を投写レンズ59の光軸に対して所定角度を持って配置するリア投写時の回動位置においては、平面ミラー120に反射した映像光束により得られる拡大映像は液晶ライトバルブ56の表示面方向に得られるように構成され、平面ミラー120がプロジェクタ本体2の上面部1aを覆うフロント投写時の回動位置においては、当該拡大映像は投写レンズ59の光軸を延長した方向に得られるように構成されている」構成は、本願発明の「前記回転調整機構は、前記平面ミラーを前記光軸に対して所定角度を持って配置する」「第1の状態においては、前記平面ミラーに反射した映像光束により得られる拡大映像は前記映像表示素子の表示面方向に得られるように構成され、」「平面ミラーを投写型映像表示装置に収納する」「第2の状態においては、当該拡大映像は前記光軸を延長した方向に得られるように構成され」る構成に相当する。 以上によれば、引用発明2と本願発明とは、 「投写型映像表示装置において、 投写面に対して、映像表示素子の映像を拡大投写するレンズと、 前記投写面、及び、前記投写面に光学的に最も近い位置に配置される第1のレンズ、の間に配置された平面ミラーと、を備え、 前記平面ミラーは、投射レンズの光軸に対して角度可変可能な回転調整機構を備え、 前記回転調整機構は、前記平面ミラーを前記光軸に対して所定角度を持って配置する第1の状態、及び、前記平面ミラーを当該投写型映像表示装置に収納する第2の状態を具現し、 前記第1の状態においては、前記平面ミラーに反射した映像光束により得られる拡大映像は前記映像表示素子の表示面方向に得られるように構成され、前記第2の状態においては、当該拡大映像は前記光軸を延長した方向に得られるように構成される、投写型映像表示装置」である点で一致する。 (2)引用発明1と引用発明2とは投写型映像表示装置という共通の技術分野に属するとともに、投写型映像表示装置において、映像をフロント投射とリア投射とに切替えて投写することは、例示するまでもなく原出願の出願前に周知の事項であったことからすれば、引用発明1の画像投影装置(投写型映像表示装置)に引用発明2を適用し、映像をフロント投射とリア投射とに切替えて投写する構成とすることに格別の困難性は見出せない。 この場合、引用発明1の画像投影装置は、そもそも「電気光学素子により表示された画像や静止画像をスクリーン上に斜め方向から拡大投影して表示する投射レンズ1を備え」るものであることからすれば、引用発明1の画像投影装置に引用発明2を適用し、映像をフロント投射とリア投射とに切替えて投写する構成とするにあたり、画像投影装置の姿勢を変更するか否かは適宜選択できるものといえるから、画像投影装置(投写型映像表示装置)の「姿勢を保ったまま」とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項にすぎない。 以上によれば、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明1、引用発明2及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (相違点2) 引用文献1の図6を参照すると、前玉レンズ10のレンズ部の入射側の垂直方向下端は隅部となっており、このような隅部は製造誤差によりレンズ面形状に誤差が生じやすいことは技術常識であるから、当業者であれば、該隅部に画像光を通過させるような設計は避けるのが通常である。 そうすると、引用発明1において、前玉レンズ10(第1のレンズ)における画像光の通過領域(映像光束の有効領域)が投射レンズ1の光軸19(前記レンズ群のうち少なくとも前記第1のレンズを含まない複数のレンズにより共有される光軸)を含まないように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして、本願発明の効果は、引用発明1、引用発明2及び周知事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。 よって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-10-08 |
結審通知日 | 2014-10-14 |
審決日 | 2014-10-29 |
出願番号 | 特願2012-4630(P2012-4630) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井口 猶二 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
土屋 知久 北川 清伸 |
発明の名称 | 傾斜投写光学系及びそれを用いた投写型映像表示装置 |
代理人 | 青稜特許業務法人 |