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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G21F
管理番号 1295744
審判番号 不服2014-3030  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-18 
確定日 2015-01-19 
事件の表示 特願2012-102332「放射線低減方法及び放射線低減装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月14日出願公開、特開2013-231604〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月27日の出願であって、平成25年9月5日付けで拒絶理由が通知され、同年11月7日に意見書の提出とともに手続補正がなされたが、同年11月21日付けで拒絶査定がなされた。
これに対して、平成26年2月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされた。

第2 請求項の記載
本願の特許請求の範囲の請求項1及び5の記載は、それぞれ以下のとおりのものである。

「【請求項1】
磁気水処理装置の内部に磁石による磁力線が通った路を水が流れることで生成される磁力還元水を、放射性物質と合わせることにより、当該放射性物質から放出される放射線量を低減することを特徴とする放射線低減方法。
【請求項5】
磁気水処理装置が付設されて内部に磁石による磁力線が通った路を少なくとも一部に有した循環路と、
前記循環路内の液を循環させるポンプと、を備え、
放射性物質を含有した水が前記循環路を循環することで、当該放射性物質から放出される放射線量が低減することを可能にされた放射線低減装置。」

第3 平成25年9月5日付けの拒絶理由の概要
平成25年9月5日付けの拒絶理由の概要は以下のとおりである。

理由1 この出願は、発明の詳細な説明の記載が当業者が請求項1-8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由2 この出願は、請求項1-8に係る発明は明確でないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 当審の判断
1.理由2について
本願の請求項1及び5は、ともに「放射性物質から放出される放射線量を低減する」という事項(以下「特定事項」という。)を有する。
上記特定事項に関して、本願の願書に最初に添付された明細書には、段落【0021】及び【0022】に、放射線量の測定単位として〔μSv/h〕と記載されており、段落【0048】に「放射線が放つ電子を磁力還元水の磁力線の電子が受け取り還元化する、よって放射線が放つ電子は磁力還元水で消去される。」との記載が認められるが、添付図面を含め、それ以外に上記特定事項の具体的内容を示す記載はない。
しかしながら、本願明細書に記載されている〔Sv〕という単位は、よく知られたように放射線による人体への影響度合いを表すものであるから、上記特定事項の放射性物質から放出される放射線量に対応するものではない。
また、上記【0048】の記載によれば、放射線は放射性物質から放出されたのち磁力還元水によって還元化され、消去されるのであるから、放射性物質から放出される放射線量そのものを低減するものではない。
しかも、明細書の上記【0048】の記載は、平成25年11月7日付けの手続補正で削除された。
そうすると、本願の明細書及び図面には、上記特定事項の具体的内容を示す記載はない。
そして、本願明細書の上記段落【0021】及び【0022】の記載によれば、上記特定事項の「放射性物質から放出される放射線量」とは、「放射性元素の付着した灰のような残留物から放出される総量としての放射線量」を指すものと解することもできるが、そうすると、上記特定事項は「放射性元素の付着した灰のような残留物」を洗浄液で洗浄することによる除染を含む可能性もある。
このように、上記特定事項が、放射性元素から放出される放射線量自体が低減されることを指すのか、放射性元素の付着した灰のような残留物から放出される総量としての放射線量の低減を指すのか等、具体的にどのような内容を指すものなのかが、本願明細書及び図面の記載を参酌しても明らかでない。
さらに、上記特定事項が本願の出願時点において、当業者にとってどのような内容を示すのかが自明であるとする根拠もない。
してみると、本願の明細書及び図面の記載を参酌しても、上記特定事項の指し示す具体的内容が明確であるとはいえない。
なお、請求人は上記意見書(「第1 手続の経緯」参照)において、上記特定事項に関して「本件発明による磁力還元水で処理すると、放射性物質が1秒間に崩壊する原子の個数が減少し、その結果、放射性物質から放出される放射線量が低減されたということができる。」と主張しているが、当該主張は本願明細書又は図面の記載に基づくものではなく、むしろ、当該主張は上記【0048】の記載と相容れないものであり、しかも、そのような事項が、本願の出願時点において当業者にとって自明であるとする根拠もない。
したがって、請求人の上記主張には理由がない。
以上のとおりであるから、上記特定事項を有する本願の請求項1及び5に記載された発明は明確でない。
また、請求項1又は5を引用する請求項2?4及び6?8についても同様である。

2.理由1について
本願の請求項1及び5に記載された発明はともに、上記特定事項を有する。
そして、当該特定事項の指し示す具体的内容は、上記のとおり明確ではないものの、仮にそれが請求人が意見書で主張する「放射性物質が1秒間に崩壊する原子の個数が減少」すること(以下「仮特定事項」という。)であるとすると、請求項1の「磁力還元水を、放射性物質と合わせること」及び請求項5の「放射性物質を含有した水が磁気水処理装置が付設されて内部に磁石による磁力線が通った路を少なくとも一部に有した循環路を循環すること」で仮特定事項が実現することを示す根拠はない。
請求人はこの点について、上記意見書に添付した実験結果を根拠として、仮特定事項が実現できた旨主張しているが、実験結果はベクレルで表記されており、ベクレルとシーベルトが異なる物理量であることは当業者の技術常識であるところ、上記意見書においては本願明細書で用いられているシーベルトと実験結果のベクレルとの関係については検証されていないことや、実験結果に様々な外因が関係している可能性を排除できないこと等から、意見書の内容を参酌しても、請求人が主張するような仮特定事項が実現できたとする根拠はない。
また、本願の出願時点において、仮特定事項が当業者にとって自明であるとする根拠もない。
そうすると、結局、当業者といえども、本願明細書及び図面の記載に基づいて、仮特定事項を有する請求項1及び5に記載された発明を容易に実施できるものとは認められない。
してみると、本願の発明の詳細な説明の記載は、仮特定事項を有する請求項1及び5に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-12 
結審通知日 2014-03-18 
審決日 2014-03-31 
出願番号 特願2012-102332(P2012-102332)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (G21F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村川 雄一  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 伊藤 昌哉
北川 清伸
発明の名称 放射線低減方法及び放射線低減装置  
代理人 荒船 博司  

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