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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09C
管理番号 1295832
審判番号 不服2014-9148  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-16 
確定日 2015-01-05 
事件の表示 特願2009-230637「検索型カラー暗号化ファイルの構成方法および検索型カラー暗号化ファイルシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月21日出願公開、特開2011- 81030〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件請求に係る出願(以下「本願」と記す)は
平成21年10月2日付けの出願であって、
平成21年11月30日付けで手続補正書が提出され、
平成24年9月26日付けで審査請求がなされ、
平成25年11月18日付けで拒絶理由通知(平成25年11月26日発送)がなされ、
平成26年1月27日付けで意見書が提出されるとともに、
同日付けで手続補正書が提出され、
平成26年2月12日付けで拒絶査定(平成26年2月18日謄本発送、送達)がなされたものである。
そして、本件審判請求は、
「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」との趣旨で、
平成26年5月16日付けで請求されたものである。


2.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明は、上記平成26年1月27日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲、明細書および図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

<本願発明>
「コンピュータシステムで実行され、複数の文書ファイルまたは図面ファイルの各々を情報置換型のカラー変換処理に基づきカラー画像ファイルに変換し、前記カラー変換処理で作成された複数の前記カラー画像ファイルを保存メモリに保存するように構成されたカラー暗号化ファイルシステムに適用される検索型カラー暗号化ファイルの構成方法であり、
前記カラー暗号化ファイルシステムは、
外部から与えられた、前記文書ファイルまたは前記図面1ファイルに含まれる文書データを検索できるキーワードを、前記情報置換型のカラー変換処理で変換して検索用カラーキーを作成するステップと、
前記保存メモリに保存された暗号化状態の複数の前記カラー画像ファイルを前記検索用カラーキーで検索するステップと、
前記検索でヒットした前記カラー画像ファイルのリストを作成するステップと、
を実行することを特徴とする検索型カラー暗号化ファイルの構成方法。」


3.先行技術

(1)引用文献
本願の出願前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定の理由である上記平成25年11月18日付けの拒絶理由通知において引用された、下記引用文献には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<引用文献1>
特開2009-139722号公報(平成21年6月25日出願公開)

<引用文献記載事項1-1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのコンピュータもしくはその周辺装置で、または、通信回線で接続された複数のコンピュータから成るコンピュータシステムで用いられるカラーを利用した暗号化方法であり、
前記コンピュータで取り扱われる少なくとも1つのコンピュータオブジェクトを、前記コンピュータのワーキングメモリ上で、対応表またはカラー変換キーに基づくカラー変換処理により、RGBまたはCMYKに基づくカラーに係るデータに基づいて作られるカラー画像ファイルに変換するステップと、
変換された前記カラー画像ファイルを前記コンピュータの保存メモリに保存するステップと、
いずれかの前記コンピュータで、前記コンピュータオブジェクトに係る情報を取得する必要があるときに、ワーキングメモリで、前記対応表または前記カラー変換キーに基づくカラー逆変換処理により、前記保存メモリに保存された前記カラー画像ファイルを前記コンピュータオブジェクトに逆変換するステップと、
を有することを特徴とするカラーを利用した暗号化方法。」

<引用文献記載事項1-2>
「【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0033】
図1は、本発明に係るカラーを用いた暗号化方法が実施されるコンピュータの装置構成を示し、図2は同コンピュータの機能構成の要部を示すブロック図を示す。
【0034】
図1および図2は、コンピュータネットワークをベースとした閉じたコンピュータシステム(コンピュータ・クローズド・システム)の中の1つのコンピュータ10を示している。コンピュータ10は、バス11を介して相互に接続されたCPU(中央処理装置)12、メモリ13、入出力制御部14を備える。さらに入出力制御部14には、保存メモリとしてのハードディスク(HD)21、出力装置としての例えばディスプレイ22、入力装置としての例えばキーボード23、外部装置との間でインターネットを経由して信号送受(通信)を行うためのインターネット・インターフェース(インターネットI/F)24が接続されている。なおインターネット・インターフェース24は一般的に通信部であってもよい。これらの要素21?24は、入出力制御部14およびバス11を介してCPU12等との間でデータの送受を行う。外部装置は、少なくとも1台の他のコンピュータ25である。コンピュータ10と他のコンピュータ25の間では、インターネットやLAN等の通信回線26を介してプログラムやデータ等のデータ・情報の送受を行えるように通信可能になっている。
【0035】
上記の構成において、メモリ13はメインメモリであり、CPU12によって演算処理されたまたは演算処理が継続されるデータを一時的に保持するワーキングメモリを含んでいる。ハードディスク21は、CPU12により演算処理で作成されメモリ13で一時的に保持されたデータを保存するための保存メモリである。」

<引用文献記載事項1-3>
「【0036】
図1で示したハードウェア構成を有するコンピュータ10をその機能構成の観点で表すと、図2に示すごとくなる。
【0037】
図2でブロック10は上述したコンピュータを指している。さらに図2で、ブロック31は例えばメモリ13等に保持されるデータ等の総体を示している。ブロック31のデータ等は、コンピュータ10で取り扱われる文書、文字、記号、図形、数式、画像、音声等の個々のデータや情報(プログラムを含む)である。当該データ等は前述した「コンピュータオブジェクト」であり、ブロック31には「コンピュータオブジェクト」と記載している。なおコンピュータオブジェクト31は、コンピュータ10の周辺装置、関連する諸種の装置、または通信回線で接続された複数のコンピュータから成るコンピュータシステム等においても取り扱われることが可能な対象である。
【0038】
コンピュータオブジェクト31は、PC(Personal Computor)等のコンピュータで、通常的に、または常態的に、認識可能な状態で存在している。コンピュータオブジェクト31は通常のデータファイルを構成している。」

<引用文献記載事項1-4>
「【0053】
図3を参照して、コンピュータオブジェクト31とカラーデータ32の間の変換と逆変換に関する全体的なシステム構成を説明する。
図3において、符号51で示した部分は、コンピュータ10内での変換および逆変換に係る共通プラットフォームを示す。共通プラットフォーム51では、図3で、右側領域に情報置換ルート(情報置換型)に係るカラー暗号化フロー51Aが示され、左側領域に情報変換ルート(情報変換型)に係るカラー暗号化フロー51Bが示され、さらに情報置換ルートのフロー51Aの右側領域に、上記変換部33に設定されるカラー変換テーブル51Cと、上記逆変換部34に設定されるカラー逆変換テーブル51Dと、アプリケーション51Eの例が示されている。
【0054】
情報置換ルート51Aにおいて、変換側51A-1では、カラー変換テーブル51Cを用いて、コンピュータオブジェクト(図3中記号「O」で表現)→カラー数値(図3中記号「N」で表現)→カラーデータ(図3中記号「C」で表現)の置換えがなされる。カラー数値は、異なるカラーを区別する目的で適宜に割り当てられる数値である。この置換えでは、カラー変換テーブル51Cとして「ONC対応関係表」が使用される。なお、中間のカラー数値は省略することもできる。この場合には、カラー変換テーブル51Cとして「OC対応関係表」が使用される。
【0055】
上記のカラー変換テーブル51Cは、コンピュータオブジェクト(O)をカラーデータ(C)に対応させるためのオブジェクトマッチング(OM:最長一致探索)の働きを有している。
カラー変換テーブル51Cとしては、例えば、日本語辞書(標準)、任意に準備されるユーザ辞書、文字コード等が用いられる。
また観点を変えると、上記のカラー変換テーブル51C(「ONC対応関係表」または「OC対応関係表」)は、コンピュータオブジェクトを暗号化するカラーデータに置き換えるカラー暗号化テーブルとして機能する。
【0056】
変換で作られたカラーデータ(C)は、前述した通りカラーコード画像またはカラー画像を形成する。換言すれば、図3に示すごとくビットマップ(BMP)画像52として取り扱われる。
【0057】
さらに情報置換ルート51Aの逆変換側51A-2では、カラー逆変換テーブル51Dを用いて、カラーデータ(C)→カラー数値(N)→コンピュータオブジェクト(O)の変換がなされる。この変換では、カラー逆変換テーブル51Dとして「ONC対応関係表」または「OC対応関係表」が使用される。」


<引用文献2>
特開2002-278970号公報(平成14年9月27日出願公開)

<引用文献記載事項2-1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子文書の登録,検索および閲覧機能を提供する文書管理サーバーとクライアントから成る文書管理システムであって、
クライアントで文書とそれに対応する索引情報を同一または別の方法で暗号化しサーバーに送信し、サーバーでは暗号化された文書と索引情報を登録し、
検索においてはクライアントで検索条件を対応する索引情報と同一の方法で暗号化してサーバーに送信し、サーバーでは暗号化された検索条件で暗号化された索引情報を検索し、
閲覧においては暗号化された文書をサーバーからクライアントに送信する、文書管理システム。」


(2)参考文献
本願の出願前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記参考文献には、それぞれ、下記参考文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<参考文献1>
特開2002-108910号公報(平成14年4月12日出願公開)

<参考文献記載事項1-1>
「【請求項1】 複数の項目のうち少なくとも検索する際のキーとなるキー項目を暗号化したレコードであって、キー項目の暗号化はキー項目のデータを単位文字毎に暗号化しそれを結合することによって行われているレコードを格納するファイルと、
検索条件として与えられた検索キーを単位文字毎に暗号化して結合した暗号化検索キーを用いて前記ファイルを検索する検索装置とを備えた暗号化ファイルシステム。」

<参考文献記載事項1-2>
「【0024】検索装置3は、図1に示されるように、検索端末5とデータの授受を行う入出力部31と、入出力部31を通じて入力された検索条件中の検索キーを単位文字に分解する分解部32と、分解部32で分解された単位文字毎に独立に暗号化を行い、その結果を連結することにより暗号化検索キーを生成する暗号化部33と、暗号化部33で生成された暗号化検索キーを使って検索条件を満たすレコードを暗号化ファイル2から検索する検索部34と、検索部34で検索されたレコードを利用者に提示するために復号化する復号化部35とから構成される。ここで、暗号化部33では登録装置1がキー項目を暗号化した場合と同じ暗号手法で暗号化を行う。また、その暗号化に必要な暗号鍵は検索装置3に事前に設定されているものとする。同様に復号化部35で必要な復号鍵も検索装置3に事前に設定されているものとする。」


<参考文献2>
特開2004-318766号公報(平成16年11月11日出願公開)

<参考文献記載事項2-1>
「【0073】
図9は、検索結果をドキュメント番号で表示する例を示す図であり、図中、検索結果は、検索キーを表としたとき、検索結果が58件であることを表示し、それらをドキュメント番号31で表示している。このドキュメント番号もリンク要素として構成されているので、ドキュメント番号をクリックすることにより、検索結果の表を含む元情報ファイルにリンクして表示することができる。
【0074】
ドキュメント番号を表示することにより、多数ヒットした場合、狭い範囲内に多数の情報を一覧で表示できるので、表を表示するのに比較して視認性が低下することはない。」


<参考文献3>
特開2003-150600号公報(平成15年5月23日出願公開)

<参考文献記載事項3-1>
「【0021】図6はステップ44の詳細フローチャートであり、クライアントではクエリーを入力するステップ61と、クエリーからサーバーのインデックスを検索するステップ62と、サーバーから検索結果リストを取得するステップ63と、ステップ63で取得した結果リストを復号化するステップ64と復号化した結果リストを表示するステップ65と表示した検索結果リストから必要とするデータを選択するステップ66と選択したデータをサーバーから取得するステップ67とサーバーから取得したデータを復号化するステップ68と復号化したデータを表示するステップ69とから成る。」


4.引用発明の認定

(1)上記引用文献記載事項1-1等から、引用文献1には
「1つのコンピュータもしくはその周辺装置で、または、通信回線で接続された複数のコンピュータから成るコンピュータシステムで用いられるカラーを利用した暗号化方法であり、
前記コンピュータで取り扱われる少なくとも1つのコンピュータオブジェクトを、前記コンピュータのワーキングメモリ上で、対応表に基づくカラー変換処理により、RGBまたはCMYKに基づくカラーに係るデータに基づいて作られるカラー画像ファイルに変換するステップと、
変換された前記カラー画像ファイルを前記コンピュータの保存メモリに保存するステップと、
いずれかの前記コンピュータで、前記コンピュータオブジェクトに係る情報を取得する必要があるときに、ワーキングメモリで、前記対応表または前記カラー変換キーに基づくカラー逆変換処理により、前記保存メモリに保存された前記カラー画像ファイルを前記コンピュータオブジェクトに逆変換するステップと、
を有するカラーを利用した暗号化方法」
が記載されていると言える。

(2)上記引用文献記載事項1-2等から、
「前記保存メモリはハードディスク」
であると言える。

(3)上記引用文献記載事項1-3等から、
上記「前記コンピュータオブジェクトはコンピュータで取り扱われる文書、文字、記号、図形、数式、画像、音声等の個々のデータや情報」
であると言える。

(4)上記引用文献記載事項1-4等から、
「前記変換処理は情報置換型」
であると言える。

(5)よって、引用文献1には、下記引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「1つのコンピュータもしくはその周辺装置で、または、通信回線で接続された複数のコンピュータから成るコンピュータシステムで用いられるカラーを利用した暗号化方法であり、
前記コンピュータで取り扱われる少なくとも1つのコンピュータオブジェクトを、前記コンピュータのワーキングメモリ上で、対応表に基づくカラー変換処理により、RGBまたはCMYKに基づくカラーに係るデータに基づいて作られるカラー画像ファイルに変換するステップと、
変換された前記カラー画像ファイルを前記コンピュータの保存メモリに保存するステップと、
いずれかの前記コンピュータで、前記コンピュータオブジェクトに係る情報を取得する必要があるときに、ワーキングメモリで、前記対応表または前記カラー変換キーに基づくカラー逆変換処理により、前記保存メモリに保存された前記カラー画像ファイルを前記コンピュータオブジェクトに逆変換するステップと、
を有するカラーを利用した暗号化方法であって、
前記保存メモリはハードディスクであり、
前記コンピュータオブジェクトはコンピュータで取り扱われる文書、文字、記号、図形、数式、画像、音声等の個々のデータや情報であり、
前記変換処理は情報置換型である方法。」


5.対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明は「カラーを利用した暗号化方法」であるのに対し、本願発明は「検索型カラー暗号化ファイルの構成方法」であるところ、引用発明は「コンピュータオブジェクトを」「カラー画像ファイルに変換するステップ」と、「変換された前記カラー画像ファイルを前記コンピュータの保存メモリに保存するステップ」「を有するカラーを利用した暗号化方法」であるから、「カラー暗号化ファイルの構成方法」である点で本願発明と共通すると言える。

(2)引用発明は「1つのコンピュータもしくはその周辺装置で、または、通信回線で接続された複数のコンピュータから成るコンピュータシステムで用いられる」のであるから、本願発明と同様に「コンピュータシステムで実行され」るものである。

(3)
ア.引用発明における「1つのコンピュータもしくはその周辺装置」または「通信回線で接続された複数のコンピュータから成るコンピュータシステム」は本願発明における「カラー暗号化ファイルシステム」に対応付けられるものであるところ、前者では引用発明の「カラーを利用した暗号化方法」が用いられるのであるから、前者も「カラー暗号化ファイルシステム」と言えるものである。

イ.引用発明における「コンピュータオブジェクト」は「コンピュータで取り扱われる文書、文字、記号、図形、数式、画像、音声等の個々のデータや情報」であり、引用発明においては「少なくとも1つのコンピュータオブジェクトを」「カラー変換処理」するのであるから該変換の対象は「複数の文書ファイルまたは図面ファイルの各々」であり、また、該「カラー変換処理」は「情報置換型」である。
したがって、引用発明における「1つのコンピュータもしくはその周辺装置」または「通信回線で接続された複数のコンピュータから成るコンピュータシステム」も、本願発明と同様に「複数の文書ファイルまたは図面ファイルの各々を情報置換型のカラー変換処理に基づきカラー画像ファイルに変換し」ていると言える。

ウ.そして、引用発明は「変換された前記カラー画像ファイルを前記コンピュータの保存メモリに保存するステップ」を有するのであるから、引用発明における「1つのコンピュータもしくはその周辺装置」または「通信回線で接続された複数のコンピュータから成るコンピュータシステム」は「前記カラー変換処理で作成された複数の前記カラー画像ファイルを保存メモリに保存する」ものであると言える。

エ.したがって、引用発明も本願発明と同様に「複数の文書ファイルまたは図面ファイルの各々を情報置換型のカラー変換処理に基づきカラー画像ファイルに変換し、前記カラー変換処理で作成された複数の前記カラー画像ファイルを保存メモリに保存するように構成されたカラー暗号化ファイルシステムに適用される」ものである。

(4)よって、本願発明は、下記の一致点で引用発明と一致し、下記の相違点で引用発明と相違する。

<一致点>
「コンピュータシステムで実行され、複数の文書ファイルまたは図面ファイルの各々を情報置換型のカラー変換処理に基づきカラー画像ファイルに変換し、前記カラー変換処理で作成された複数の前記カラー画像ファイルを保存メモリに保存するように構成されたカラー暗号化ファイルシステムに適用されるカラー暗号化ファイルの構成方法。」

<相違点>
本願発明においては
「前記カラー暗号化ファイルシステムは、
外部から与えられた、前記文書ファイルまたは前記図面ファイルに含まれる文書データを検索できるキーワードを、前記情報置換型のカラー変換処理で変換して検索用カラーキーを作成するステップと、
前記保存メモリに保存された暗号化状態の複数の前記カラー画像ファイルを前記検索用カラーキーで検索するステップと、
前記検索でヒットした前記カラー画像ファイルのリストを作成するステップと、
を実行する」ものであり、
本願発明は、
「検索型」カラー暗号化ファイルの構成方法である。
(これに対し、引用文献1には「カラー画像ファイル」の検索に関する記載はない。)


6.判断
(1)上記相違点について検討するに、多数の文書や画像をハードディスクなどの大容量の記憶装置に蓄積するシステムにおいては、蓄積された情報をキーワードなどで検索できるように構成するのが普通であり、引用発明における「1つのコンピュータもしくはその周辺装置」または「通信回線で接続された複数のコンピュータから成るコンピュータシステム」においてこのような検索機能を備えようとすることは、当業者が通常想到する一般的な技術的要求にほかならない。

(2)そして、検索対象の情報が暗号化されている場合の検索機能を実現する手法として、検索対象の情報と同じ暗号化を検索キーにも施した上で検索することは、当業者にとっては周知慣用の手法の一つに他ならない(必要があれば引用文献記載事項2-1、参考文献記載事項1-1、1-2などを参照。)。

(3)また、検索結果をリストで表示することも周知慣用の設計事項にすぎない(必要があれば参考文献記載事項2-1、3-1などを参照。)。

(4)してみると、引用発明における「1つのコンピュータもしくはその周辺装置」または「通信回線で接続された複数のコンピュータから成るコンピュータシステム」を「外部から与えられた、前記文書ファイルまたは前記図面ファイルに含まれる文書データを検索できるキーワードを、前記情報置換型のカラー変換処理で変換して検索用カラーキーを作成するステップと」、「前記保存メモリに保存された暗号化状態の複数の前記カラー画像ファイルを前記検索用カラーキーで検索するステップと」、「前記検索でヒットした前記カラー画像ファイルのリストを作成するステップと」、「を実行する」ものとすることで、引用発明を「検索型」カラー暗号化ファイルの構成方法とすること、すなわち、上記相違点に係る構成を備えたものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことに他ならない。

(5)したがって、本願発明の構成は引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
また、本願発明の効果は、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


7.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願を拒絶すべきものとした原審の拒絶査定は妥当なものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-16 
結審通知日 2014-10-21 
審決日 2014-11-19 
出願番号 特願2009-230637(P2009-230637)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 石井 茂和
特許庁審判官 小林 大介
山崎 達也
発明の名称 検索型カラー暗号化ファイルの構成方法および検索型カラー暗号化ファイルシステム  
代理人 田宮 寛祉  

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