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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1295960
審判番号 不服2013-17352  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-09 
確定日 2015-01-08 
事件の表示 特願2011-261129「遊技球循環型遊技システムのための遊技機及び遊技球循環型遊技システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月10日出願公開、特開2013-111304〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年11月30日の出願であって、平成24年11月22日付けで拒絶の理由が通知され、平成25年1月25日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成25年6月7日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成25年9月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。

第2 平成25年9月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年9月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「遊技球を揚送する揚送装置を介し球発射装置から発射される遊技球を再び前記球発射装置に戻すように循環させる遊技球循環型遊技システムに適用されて、前記球発射装置に加え、球タンク、遊技盤、球払い出し装置及び球送り装置を有する遊技機本体を具備してなる遊技機において、
前記球タンクから流下する遊技球を払い出す払い出し手段と、
この払い出し手段から払い出される遊技球を、前記球発射装置に送るように前記球送り装置に向けて案内する通路部材とを備えており、
当該通路部材は、前記球揚送装置へ排出するための開口部を有して、当該開口部から、前記球送り装置への案内方向から外れる遊技球を排出するようになっており、
前記揚送装置は、その揚送方向に並ぶ複数列の揚送片により、その列ごとに、前記球発射装置から発射されて前記遊技盤を介し排出される遊技球を受け取って前記球タンクまで揚送することを特徴とする遊技球循環型遊技システムのための遊技機。」
から、
「遊技球を揚送する揚送装置を介し球発射装置から発射される遊技球を再び前記球発射装置に戻すように循環させる遊技球循環型遊技システムのための遊技機であって、
前記球発射装置、球タンク、遊技盤、球払い出し装置及び球送り装置を有する遊技機本体を具備してなり、
前記球払い出し装置は、前記球タンクから流下する遊技球を払い出す払い出し手段と、
この払い出し手段から払い出される遊技球を、前記球発射装置に送るように前記球送り装置に向けて案内する通路部材とを具備してなり、
当該通路部材は、前記揚送装置へ排出するための開口部を有して、前記球送り装置への案内方向から外れる遊技球を前記開口部から前記揚送装置へ排出するようになっており、
前記揚送装置は、その揚送方向に並ぶ複数列の揚送片を有し、当該複数列の揚送片により、その列ごとに、前記通路部材の前記開口部から排出される遊技球を受け取って前記球タンクまで揚送するようにした遊技球循環型遊技システムのための遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「球払い出し装置」に関して「前記球タンクから流下する遊技球を払い出す払い出し手段と、この払い出し手段から払い出される遊技球を、前記球発射装置に送るように前記球送り装置に向けて案内する通路部材とを具備」する点、及び「揚送装置」に関して「前記通路部材の前記開口部から排出される遊技球を受け取」る点を限定事項として含むものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2003-102930号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(1-a)「【0001】
【発明の属する技術の分野】本発明は、遊技場等の遊技を実施可能な適宜な場所に設置される遊技機、例えば、パチンコ遊技機、雀球遊技機、アレンジボール遊技機や遊技媒体としてコインや遊技球を使用するスロットマシンなどの遊技機、特には1台の遊技機に必要とされる遊技媒体量を大幅に少ないものにできる遊技機に関する。」

(1-b)「【0006】よって、本発明は上記した問題点に着目してなされたもので、補給装置や揚送装置等の各種装置を島の改造や新設において設ける必要を無くすことで、遊技機の設置における自由度を向上でき、且つ1台の遊技機に必要とされる遊技媒体数を大幅に低減することのできる遊技機を提供することを目的としている。」

(1-c)「【0024】前記打球待機皿220の上面には、図2に示すように、所定数のパチンコ球を待機球として一時貯留するとともに、その待機球の流下方向下部位置が細幅とされて、前記打球操作ハンドル240の操作によりパチンコ球を打ち出す揺動ハンマ293’へ待機球を供給する待機球供給樋へ待機球を整列移送する皿部221が設けられているとともに、該皿部221の上面は、蝶番226により開閉可能に取付けられた透明な開閉蓋225にて覆われていて、該皿部221内に待機しているパチンコ球の貯留状態を目視にて確認できるようになっているとともに、該開閉蓋225を開けることで外部に取り出したパチンコ球等を直接投入することができるようになっている。尚、本実施例では、前記開閉蓋225の開成角度は、前記開閉蓋225からのパチンコ球の取出を不容易化するために約45度程度に規制しているが、本発明はこれに限定されるものではない。」

(1-d)「【0031】前記ガラス扉枠201の後方には、遊技盤202が着脱可能に取付けられている。また、遊技盤202の前面には遊技領域203が設けられている。この遊技領域203の上部中央付近には、「特別図柄」と呼ばれる複数種類の識別情報が可変表示される第1可変表示部204と、「普通図柄」と呼ばれる複数種類の識別情報が可変表示される第2可変表示部205と、が設けられている。」

(1-e)「【0033】前記打球操作ハンドル240が操作されると、遊技機の背面下部に設けられている後述する打球発射モータ293が駆動され、これに伴い揺動ハンマ293’が揺動して打球待機皿220に待機する待機球が順次、遊技領域203内へ発射される。この際、この発射速度は、前記打球操作ハンドル235の回動量にて遊技者が調節することができる。これら発射されたパチンコ球は、打球発射レール247を通って遊技領域203に入り、その後、遊技領域203を流下していく。この際、発射勢いが弱すぎて前記遊技領域203に達しなかったパチンコ球は、ファール口248に回収され、図3に示すようにパチンコ機2の背面に設けられた後述するクレジット球通路275に合流し、クレジット球スイッチ283に検出されてクレジット加算された後、パチンコ機2の背面側下部位置に設けられた回収球タンク284に回収される。
【0034】また、前記遊技領域203に打ち込まれ、いずれの入賞口にも入賞しなかったパチンコ球はアウト口217に回収され、図3に示すように、遊技領域203の各入賞口に入賞した入賞球とともにパチンコ機2の背面側の打込球合流樋257により収集されて打込球検出スイッチ279にて検出された後、前記回収球タンク284に回収される。」

(1-f)「【0044】このように、打込球回収路258を設けて遊技に使用された入賞球(セーフ球)並びにアウト球を回収球タンク284へ移送、回収するようにすることは、これらの遊技に使用された球も後述する移送部としての揚送装置288にて揚送されて循環使用されるようになるため、パチンコ機2内部のパチンコ球を有効に使用することが可能となるとともに、一度使用される毎に清浄化されるようになって遊技盤面や各通路が汚れ難くなることから好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】本実施例のパチンコ機2の裏面下部位置には、前述のように、遊技に使用されて回収されたパチンコ球を回収、貯留する回収球タンク284が設けられている。この回収球タンク284には、前記打球待機皿220の皿部221に遊技媒体排出部である球切払出装置265より排出されて供給されたパチンコ球が一杯である場合に、前記球流入口243より前記皿部221に流入できずに溢れたパチンコ球や該皿部221からこぼれ落ちたパチンコ球が流下するクレジット球流路275が接続されており、前記皿部221に流入できずに溢流(オーバーフロー)したパチンコ球は、該クレジット球流路275の流路上に設けられているクレジット球スイッチ283により検出されてクレジット球数に加算された後、前記回収球タンク284内に貯留される。」

(1-g)「【0050】これら回収球タンク284内に貯留されたパチンコ球は、図3並びに図7に示すように、前記揚送球通路286に連設して設けられた移送部としての揚送装置288に供給される。この揚送装置288には、パチンコ機2の上部位置に設けられている上部貯留タンク260に繋がるように架設された遊技媒体移送通路である揚送路289が接続されていて、前記揚送装置288内に設けられたスプロケット402が図中矢印方向に駆動モータ401により回転駆動されることで、前記揚送球通路286より供給されたパチンコ球が揚送路289に送り出されて、順次環流路259へ移送され、該環流路259の経路上に設けられた上部貯留タンク260に貯留される。」

(1-h)「【0057】この上部貯留タンク260下部位置には、パチンコ機2の裏面右部に設けられている球切払出装置265へ貯留されているパチンコ球を導く環流路259が設けられているとともに、該環流路259の経路中には、上部貯留タンク260に貯留されているパチンコ球をパチンコ機2下部位置の前記回収球タンク284に球抜通路273を通じて流下させるための球抜弁262が設けられているとともに、前記球切払出装置265の上流直上位置には、球切払出装置265へ供給されるパチンコ球の有無を検出する球切れセンサ263が設けられており、該球切れセンサ263によるパチンコ球の検出がない場合においては、前記球切払出装置265によるパチンコ球の払出が留保されるように制御される。
【0058】この本実施例に用いた球切払出装置265並びに球切払出装置265周辺の流路を図5に示す。本実施例の球切払出装置265内には、その一面にパチンコ球を収容可能な切り欠き部が形成された球切り部(図示略)を有し、伝達ギア451を介して駆動モータ450にて回動されることにより1回転にて3つの球を下流側に排出可能なスプロケット452と、該スプロケット452から排出されたパチンコ球の進路を、ソレノイド269の動作にて第1経路266或いは第2経路267に切り替える上部経路切替弁268と、該上部経路切替弁268の直下に設けられ、前記第1経路266を流下するパチンコ球を検出するための減算スイッチ270と、前記第2経路267を流下するパチンコ球を検出するための払出球検出スイッチ281と、が設けられており、前記駆動モータ450により前記スプロケット452の回転を適宜制御するとともに、前記ソレノイド269の動作を適宜に制御することで、所定数のパチンコ球が前記第1経路266或いは第2経路267のいずれかに排出される。尚、図5中の453は、球切払出装置265の前面を覆うカバーである。
【0059】この球切払出装置265より排出された各経路のパチンコ球は、該球切払出装置265の下部に設けられた下部進路切替装置274に連結路454を通じて供給される。この下部進路切替装置274内には、図5並びに図6に示すように、前記球切払出装置265内部に設けられている上部経路切替弁268並びにソレノイド269と同様に、下部経路切替弁271並びにソレノイド272が設けられており、前記第2経路267に払い出されたパチンコ球の進路を前記第1経路266に適宜に変更することができるようになっており、前記第1経路266は図3に示すように、取出球通路276介して前記外部取出口249に繋がっている。
【0060】また、前記第2通路267は、前記打球待機皿220の球流入口243に繋がっていて、最終的に該第2通路267を進路とされたパチンコ球は前記球流入口243より前記皿部221内に流入するか、前記クレジット球流路275を流下してクレジット球スイッチ283により検出された後、前記回収球タンク284内に貯留される。尚、図3中の282は、パチンコ機2の前記ガラス扉枠201の開閉を検知するためのドア開閉検出スイッチである。」

(1-i)「【0178】また、これら遊技媒体環流経路の一部となる揚送装置288や、揚送球通路286や、研磨装置290等を、例えば図21に示すように、ガラス扉枠201側でなく遊技島台330側、例えば遊技島台330の載置板334上等に設けておき、パチンコ機2を遊技島台330に設置してガラス扉枠201により基枠331の前面を閉塞した状態において、これら遊技島台330側に設けられている揚送装置288や、揚送球通路286や、研磨装置290等が本発明における遊技媒体環流経路を形成するようにしても良い。つまり、本発明はパチンコ機2が設置された状態で遊技媒体環流経路が形成されるものも含まれる。
【0179】このように、これら揚送装置288や、揚送球通路286や、研磨装置290等をユニット構成としたり、遊技島台330側に設けるようにして、パチンコ機2の交換において、これらの機器を交換せずに流用できるようにしても良い。
【0180】前記実施例1では、遊技媒体待機部である皿部221に開閉蓋225を設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら開閉蓋225を設けない構成としても良いし、前記実施例2のように、これら開閉蓋225が開閉しない構成としても良い。」

(1-j)「【0219】
【発明の効果】本発明は次の効果を奏する。
(a)請求項1の発明によれば、少なくとも前記遊技媒体払出部より払い出されて前記溢れ遊技媒体検出手段にて検出された遊技媒体が前記記憶部に加算記憶されるとともに、該検出済みとなった遊技媒体が前記遊技媒体環流経路を通じて前記遊技媒体払出部に環流され、再度遊技媒体払出部より払い出されるようになり、これら遊技媒体が遊技機1台にて循環使用されるようになるため、1台の遊技機に必要とされる遊技媒体量を大幅に低減することができ、且つ前記遊技媒体環流経路を有することから遊技機の設置における自由度を向上できるとともに、その時点にて前記遊技媒体待機部に待機している遊技媒体量を把握することができる。」

(1-k)「【図8】本発明の実施例1のパチンコ機並びにカードユニットが設置された遊技場のシステム図である。」

(1-l)上記摘記事項(1-e)、(1-f)、(1-g)、(1-j)から、打球発射モータ293の駆動により揺動ハンマ293’から発射されたパチンコ玉を回収球タンク284に回収し、これらパチンコ球を揚送装置288にて揚送し、上部貯留タンク260に貯留して遊技機1台にて循環使用される遊技機であることが分かる。

(1-m)上記摘記事項(1-d)、(1-e)、(1-f)、及び図1、3から、パチンコ機2は、打球発射モータ293と揺動ハンマ293’、上部貯留タンク260、遊技盤202、球切払出装置265を有するといえる。

(1-n)上記摘記事項(1-c)、(1-h)、及び図6から、球切払出装置265は、上部貯留タンク260から流下したパチンコ球を排出するスプロケット452と、スプロケット452から排出されるパチンコ球を揺動ハンマ293’にパチンコ球を供給する皿部221内に流入させる第2通路267とを具備しているといえる。

(1-o)上記摘記事項(1-f)、(1-h)から、当該第2通路267は、パチンコ球を皿部221内に流入させる球流入口243に繋がっており、当該流入口243より皿部221に流入できずに溢れたパチンコ球を回収球タンク284に貯留して揚送装置288に供給するようになっているといえる。

(1-p)上記摘記事項(1-g)、(1-h)から、揚送装置288は、第2通路267から供給されるパチンコ玉を上部貯留タンク260まで揚送するといえる。

上記の事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。

「打球発射モータ293の駆動により揺動ハンマ293’から発射されたパチンコ玉を回収球タンク284に回収し、これらパチンコ球を揚送装置288にて揚送し、上部貯留タンク260に貯留して遊技機1台にて循環使用される遊技機であって、
打球発射モータ293と揺動ハンマ293’、上部貯留タンク260、遊技盤202、球切払出装置265を有するパチンコ機2を具備してなり、
前記球切払出装置265は、上部貯留タンク260から流下したパチンコ球を排出するスプロケット452と、スプロケット452から排出されるパチンコ球を揺動ハンマ293’にパチンコ球を供給する皿部221内に流入させる第2通路267とを具備してなり、
当該第2通路267は、パチンコ球を皿部221内に流入させる球流入口243に繋がっており、当該流入口243より皿部221に流入できずに溢れたパチンコ球を回収球タンク284に貯留して揚送装置288に供給するようになっており、
前記揚送装置288は、第2通路267から供給されるパチンコ玉を上部貯留タンク260まで揚送する遊技機。」

(2)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

ア 刊行物1発明における「打球発射モータ293と揺動ハンマ293’」、「パチンコ玉」、「上部貯留タンク260」、「遊技盤202」、「球切払出装置265」、「スプロケット452」、「第2通路267」及び「揚送装置288」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本願補正発明における「球発射装置」、「遊技球」、「球タンク」、「遊技盤」、「球払い出し装置」、「払い出し部材」、「通路部材」及び「揚送装置」に相当する。

イ 刊行物1発明においては、上部貯留タンク260に貯留されたパチンコ玉を、揺動ハンマ293’にパチンコ球を供給する皿部221内に流入させるから、揺動ハンマ293’から発射されたパチンコ玉を再び揺動ハンマ293’から発射されるように戻して循環させているといえる。また、刊行物1発明は、遊技機1台にて循環使用される遊技機であり、刊行物1には上記摘記事項(1-k)にシステム図も示されているから、遊技球循環型遊技システムのための遊技機であるといえる。
よって、刊行物1発明の「打球発射モータ293の駆動により揺動ハンマ293’から発射されたパチンコ玉を回収球タンク284に回収し、これらパチンコ球が揚送装置288にて揚送し、上部貯留タンク260に貯留して遊技機1台にて循環使用される遊技機」は、本願補正発明の「遊技球を揚送する揚送装置を介し球発射装置から発射される遊技球を再び前記球発射装置に戻すように循環させる遊技球循環型遊技システムのための遊技機」に相当する。

ウ 刊行物1発明の「第2通路267」は、パチンコ玉を揺動ハンマ293’に送るように案内しているといえるから、刊行物1発明の「球切払出装置265は、上部貯留タンク260から流下したパチンコ球を排出するスプロケット452と、スプロケット452から排出されるパチンコ球を揺動ハンマ293’にパチンコ球を供給する皿部221内に流入させる第2通路267とを具備」する点と、本願補正発明の「この払い出し手段から払い出される遊技球を、球発射装置に送るように球送り装置に向けて案内する通路部材とを具備」する点は、「この払い出し手段から払い出される遊技球を、球発射装置に送るように案内する通路部材とを具備」という概念で共通する。

エ 刊行物1発明の「当該第2通路267は、パチンコ球を皿部221内に流入させる球流入口243に繋がっており、当該流入口243より皿部221に流入できずに溢れたパチンコ球を回収球タンク284に貯留して揚送装置288に供給する」において、パチンコ球が流入口243より皿部221に流入できずに溢れるということは、第2通路267に溢れたパチンコ球を回収球タンク284へ通じる通路に向けて排出する何らかの開口部を有しているといえる。
よって、刊行物1発明の「当該第2通路267は、パチンコ球を皿部221内に流入させる球流入口243に繋がっており、当該流入口243より皿部221に流入できずに溢れたパチンコ球を回収球タンク284に貯留して揚送装置288に供給する」点は、本願補正発明の「当該通路部材は、前記揚送装置へ排出するための開口部を有して、前記球送り装置への案内方向から外れる遊技球を前記開口部から前記揚送装置へ排出する」点に相当する。

オ 上記エを踏まえれば、刊行物1発明の「揚送装置288は、第2通路267から供給されるパチンコ玉を上部貯留タンク260まで揚送する」点と本願補正発明の「揚送装置は、その揚送方向に並ぶ複数列の揚送片を有し、当該複数列の揚送片により、その列ごとに、通路部材の開口部から排出される遊技球を受け取って球タンクまで揚送する」点とは「揚送装置は、通路部材の開口部から排出される遊技球を受け取って球タンクまで揚送する」という概念で共通する。

カ したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「遊技球を揚送する揚送装置を介し球発射装置から発射される遊技球を再び前記球発射装置に戻すように循環させる遊技球循環型遊技システムのための遊技機であって、
前記球発射装置、球タンク、遊技盤、球払い出し装置を有する遊技機本体を具備してなり、
前記球払い出し装置は、前記球タンクから流下する遊技球を払い出す払い出し手段と、
この払い出し手段から払い出される遊技球を、前記球発射装置に送るように案内する通路部材とを具備してなり、
当該通路部材は、前記揚送装置へ排出するための開口部を有して、前記球送り装置への案内方向から外れる遊技球を前記開口部から前記揚送装置へ排出するようになっており、
前記揚送装置は、前記通路部材の前記開口部から排出される遊技球を受け取って前記球タンクまで揚送するようにした遊技球循環型遊技システムのための遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、遊技機本体が球送り装置を有するのに対し、刊行物1発明は、これを有していない点。

[相違点2]
通路部材に関して、本願補正発明は、払い出し手段から払い出される遊技球を、球発射装置に送るように球送り装置に向けて案内するのに対し、刊行物1発明は、スプロケット452から排出されるパチンコ球を、揺動ハンマ293’にパチンコ球を供給する皿部221内に流入させる点。

[相違点3]
揚送装置に関して、本願補正発明は、その揚送方向に並ぶ複数列の揚送片を有し、当該複数列の揚送片により、その列ごとに、通路部材の開口部から排出される遊技球を受け取って球タンクまで揚送するのに対し、刊行物1発明は、第2通路267から供給されるパチンコ玉を上部貯留タンク260まで揚送するものの、上記複数列の揚送片を有していない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]、[相違点2]について
遊技機の技術分野において、遊技機本体に、遊技球を発射装置に供給する球送り装置を設けることは、本願出願前において周知技術である(例えば、特開2009-82221号公報の段落【0026】?【0030】、図5、及び特開2010-29539号公報の段落【0016】?【0018】、図3参照。)。
よって、刊行物1発明に上記周知技術を適用して、通路部材を遊技球を球発射装置に送るように球送り装置に向けて案内するように構成し、もって、上記相違点1、2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

[相違点3]について
遊技機の技術分野において、揚送方向に並ぶ複数列の揚送片を有し、当該複数列の揚送片により、その列ごとに、遊技球を受け取って上部に揚送する揚送装置を設けることは、本願出願前において周知の技術事項である(例えば、特開平8-84846号(以下「刊行物2」という。)の段落【0015】?【0020】、図1?5、特開平5-23433号公報の段落【0008】?【0012】、図4?9、及び実願昭51-161698号(実開昭53-78183号のマイクロフィルムの第1?3頁、第1?4図参照。)。
そして、刊行物1発明のパチンコ玉を上部貯留タンク260まで揚送する揚送装置と上記周知の技術的事項の揚送装置とは、遊技球を上部に揚送するという共通の機能を有するものである。
よって、刊行物1発明に上記周知の技術事項の揚送装置を適用し、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

請求人は、請求の理由において、周知の技術事項として示した刊行物2には、本願補正発明にいうような球発射装置から発射される遊技球を当該球発射装置に再び戻るように揚送装置を介し循環させようとする技術的思想は、本来的に存在しないから、刊行物2の発明を刊行物1発明に寄せ集めるということを想到し得ることは、基本的にあり得ない旨主張する(審判請求書第12頁第9行?第13頁第20行参照。)。
確かに、刊行物2には、揚送装置を本願補正発明のような遊技球循環型遊技システムのための遊技機、いわゆる循環式の遊技機に用いることは記載されていない。
しかしながら、刊行物1発明における、いわゆる循環式の遊技機における揚送装置と刊行物2に記載された揚送装置とは、いずれもパチンコホールに設置されるものであり、先に述べたとおり遊技球を上部に揚送するという共通の機能を有するものであるから、一方の揚送装置を他方の揚送装置で代替しようとすることは、当業者であれば容易に着想することである。
また、刊行物1発明の遊技機は、「遊技媒体が遊技機1台にて循環使用されるようになるため、1台の遊技機に必要とされる遊技媒体量を大幅に低減することができ、且つ前記遊技媒体環流経路を有することから遊技機の設置における自由度を向上できる」(段落【0219】参照)という効果を奏するものであり、このような効果を発揮させるためには、揚送装置は、遊技媒体を循環させればよいものであり、何ら特定の揚送装置に限定されるものではない。
よって、刊行物1発明の遊技機に、刊行物2に記載された「揚送方向に並ぶ複数列の揚送片を有し、当該複数列の揚送片により、その列ごとに、遊技球を受け取って上部に揚送する揚送装置」を適用することを妨げる特段の事情は見当たらない。
したがって、刊行物1発明に刊行物2等の周知の技術事項を組み合わせることは当業者であれば容易になし得ることであり、請求人の主張は採用できない。

そして、本願補正発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明、周知技術、及び周知の技術事項から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(4)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が刊行物1発明、周知技術及び周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成25年1月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、特に、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「遊技球を揚送する揚送装置を介し球発射装置から発射される遊技球を再び前記球発射装置に戻すように循環させる遊技球循環型遊技システムに適用されて、前記球発射装置に加え、球タンク、遊技盤、球払い出し装置及び球送り装置を有する遊技機本体を具備してなる遊技機において、
前記球タンクから流下する遊技球を払い出す払い出し手段と、
この払い出し手段から払い出される遊技球を、前記球発射装置に送るように前記球送り装置に向けて案内する通路部材とを備えており、
当該通路部材は、前記球揚送装置へ排出するための開口部を有して、当該開口部から、前記球送り装置への案内方向から外れる遊技球を排出するようになっており、
前記揚送装置は、その揚送方向に並ぶ複数列の揚送片により、その列ごとに、前記球発射装置から発射されて前記遊技盤を介し排出される遊技球を受け取って前記球タンクまで揚送することを特徴とする遊技球循環型遊技システムのための遊技機。」

2 刊行物
刊行物1及びその記載事項並びに刊行物1発明は、上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から前記限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2」に記載したとおり、刊行物1発明、周知技術及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が刊行物1発明、周知技術及び周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-05 
結審通知日 2014-11-11 
審決日 2014-11-25 
出願番号 特願2011-261129(P2011-261129)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣瀬 貴理  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 平城 俊雅
瀬津 太朗
発明の名称 遊技球循環型遊技システムのための遊技機及び遊技球循環型遊技システム  
代理人 山田 稔  
代理人 間瀬 ▲けい▼一郎  
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