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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1296015
審判番号 不服2013-5922  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-03 
確定日 2015-01-05 
事件の表示 特願2009-501465「ケース入長形光電池」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月22日国際公開、WO2008/060315、平成21年 8月27日国内公表、特表2009-530852〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2007年(平成19年)3月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年3月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年11月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年4月3日に拒絶査定不服審判請求がなされた後、当審において、同年10月8日付けで拒絶理由が通知され、平成26年4月23日に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成26年4月23日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし46に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。

「第1の端部及び第2の端部を有する太陽電池ユニットであって:
(A)基板の少なくとも一部が、硬質であること、及び、線形面、弓形面又は曲面により境界される断面の両方により特徴づけられる、基板;
前記基板の周囲の少なくとも50パーセントに配置され、かつ、前記基板の長さの少なくとも半分に沿って配置された、背面電極;
前記背面電極の周囲の少なくとも50パーセントに配置され、かつ、前記背面電極の長さの少なくとも半分に沿って配置された、半導体接合;
前記半導体接合の周囲の少なくとも50パーセントに配置され、かつ、前記半導体接合の長さの少なくとも半分に沿って配置された、透明導電層;を含む太陽電池と、
(B)前記太陽電池の全周囲に配置され、該太陽電池ユニットの第1の端部及び第2の端部で開口し、かつ、透明ケースと該太陽電池ユニット内の太陽電池との間に空気が入らないように該太陽電池に円周方向にシールされた、透明ケースと
を含む、前記太陽電池ユニット。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載
当審における拒絶の理由に引用した、本願優先日前に頒布された刊行物である特開昭58-151071号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。)。

(1)「2.特許請求の範囲
(1)少なくとも表面が良導電性である棒状基体を一方の電極となし、光に活性なアモルファスの半導体層を該棒状基体の表面に形成し、さらに該半導体層の上に透明導電層を積層してなり、該透明導電層の上の一部に前記棒状基体の長手方向にそった長形の良導電層からなる他方の電極を設けてなることを特徴とする太陽電池。
(2)棒状基体の断面の外形が円形であり、その直径が10mm以下である特許請求の範囲第1項記載の太陽電池。」

(2)「本発明は、アモルファス太陽電池に係わり、特にその特異な形状により利用形態が多様に変化でき、変換効率の高い太陽電池に関する。
光電変換層にアモルファスシリコン半導体を用いる太陽電池は、低コスト太陽電池の第一候補として有望視され、各方面でその変換効率の向上の努力がなされている。しかしながら、従来の太陽電池は平板構造であり、その形状から、利用形態におのづから制約があり、さらに言えぱ、平板構造では5cm角程度の大型素子にすると変換効率が3?4%程度にしかならないという欠点があった。この原因は、大形化するにつれて、アモルファスシリコン膜が不均一になりやすい、ピンホール等の欠陥が増える、透明導電膜の抵抗が大きくなり電池の内部抵抗が増すからである。特に、現在の透明導電膜は、酸化インジウム?酸化スズ系のITO膜と呼ばれるものであるが、その面抵抗は20?200Ω/cm^(2)と大きく、この高抵抗は無視できない問題となっている。一部にその解決策として透明導電膜の上に枝状の金属層を設け、透明導電膜の低導電性を金属層で補なうようにした平板形の太陽電池も提案されているが、枝状の金属層が太陽光線の入射を遮ぎり、これが変換効率の低下をもたらすという別の問題を生じている。
本発明は、以上のような点を鑑み、鋭意工夫したものであり、具体的には、基体として少なくとも表面が良導電性の棒状物を用い、これを一方の電極とし、光に活性なアモルファスの半導体層を基体の表面に形成し、さらに透明導電層を該半導体層の上に積層してなり、他方の電極として、前記の透明導電層上の一部に、さらに言えぱ、太陽光を遮ぎらないような位置に棒状基体の長手方向にそって長形の良導電層を配してなる太陽電池である。」(1頁左下欄下から2行?2頁左上欄12行)

(3)「図面の第1図および第2図に示される本発明の太陽電池の一実施例に基いて、さらに詳細に説明すると、基体(1)はその断面の幅に比して長さの大きい棒状物であり、材質として金属の単体を用いるか、あるいはガラスやセラミックなどの絶縁物の表面に金属のめっき層や蒸着層を設けたものなど、少なくとも表面を良導電性である棒状基体を用いる。図の実施例では断面円形の基体(1)であり、その側面のほぼ全周に光に活性なアモルファスシリコンの半導体層(3)が設けられている。ここで「光に対して活性」という意味は、下もしくは上から、n^(+)型/i型/p^(+)型の三層構成のアモルファスシリコン半導体層となし、入射する光のエネルギーを電気エネルギーに変換できる半導体層であることを意味する。図の実施例では、半導体層(3)は基体(1)の左端部(2)において設けられていないが、これはこの左端部(2)を、基体(1)を一方の電極とした際の端子部分とするためである。半導体層(3)の上には透明導電層(4)を積層する。透明導電層(4)の材質としては酸化インジウム、酸化スズ、または酸化インジウム?酸化スズの二成分膜(ITO膜)などを用いるか、金の蒸着薄膜を用いることがあげられる。この透明導電層(4)の上の一部に、すなわち図の実施例では下側半分に、良導電層(5)を設ける。この良導電層(5)は基体(1)の長手方向にそって長細く設けるのが良く、かかる構造のとき、他方の電極として低抵抗なものとなりうる。すなわち、先言したように透明導電膜(4)は20?200Ω/cm^(2)程度の比較的高抵抗のものであり、良導電層(5)は、透明導電膜(4)の導電性を補なう集電体となりうるものである。良導電層(5)としては、真空蒸着などの薄膜形成手段にて金属層を施すほか、銀ペーストや導電性インキを塗布もしくは印刷して形成する手段があげられる。
基体(1)の断面形状は、図の実施例では円形であり、これが一般的な形状であると言えるが、その他の形状、例えば断面四角形の板状体や断面楕円形のものなども本発明に含まれる。また、その幅について言うと、幅があまりにも大きくして、それにつれて透明導電層(4)の幅も大きくすると、電池の抵抗が増すので、基体(1)の幅はあまり大きくしないのが良い。10mm以下の幅、好ましくは5?2mm程度の径ないし幅の基体(1)を用いることが良い。第1図に示すような構造にした後、基体(1)と良導電層(5)とを電極とすることで太陽電池として完成する。」(2頁左上欄13行?同頁左下欄下から3行)

(4)第1図及び第2図は次のものである。




(5)上記(3)の記載を踏まえて、上記(4)の第1図及び第2図をみると、棒状基体(1)表面の円周方向及び長さ方向の大部分に、半導体層(3)及び透明導電層(4)が設けられていることがみてとれる。

4 引用発明
上記3(特に(1)及び(3))によれば、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「少なくとも表面が良導電性である棒状基体を一方の電極となし、光に活性なアモルファスの半導体層を該棒状基体の表面に形成し、さらに該半導体層の上に透明導電層を積層してなり、該透明導電層の上の一部に前記棒状基体の長手方向にそった長形の良導電層からなる他方の電極を設けてなる太陽電池であって、
棒状基体の断面の外形が円形であり、
棒状基体は、ガラスの表面に金属のめっき層や蒸着層を設けたものである、太陽電池。」

5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「棒状基体」は、「断面の外形が円形であり」、「ガラスの表面に金属のめっき層や蒸着層を設け」、「一方の電極」となるものであるから、
ア 引用発明の「(棒状基体の)ガラス」は、本願発明の「基板の少なくとも一部が、硬質であること、及び、線形面、弓形面又は曲面により境界される断面の両方により特徴づけられる、基板」と、「基板の少なくとも一部が、硬質であること、及び、曲面により境界される断面の両方により特徴づけられる、基板」である点で共通し、
イ 引用発明の「金属のめっき層や蒸着層」は、本願発明の「前記基板の周囲の少なくとも50パーセントに配置され、かつ、前記基板の長さの少なくとも半分に沿って配置された、背面電極」と、「前記基板の周囲に配置され、かつ、前記基板の長さに沿って配置された、背面電極」である点で共通する。

(2)引用発明の「アモルファスの半導体層」は、「光に活性」で、「該棒状基体の表面に形成」されるものであるから、本願発明の「前記背面電極の周囲の少なくとも50パーセントに配置され、かつ、前記背面電極の長さの少なくとも半分に沿って配置された、半導体接合」と、「前記背面電極の周囲に配置され、かつ、前記背面電極の長さに沿って配置された、半導体接合」である点で共通する。

(3)引用発明の「透明導電層」は、「該半導体層の上に」「積層」されるものであるから、本願発明の「前記半導体接合の周囲の少なくとも50パーセントに配置され、かつ、前記半導体接合の長さの少なくとも半分に沿って配置された、透明導電層」と、「前記半導体接合の周囲に配置され、かつ、前記半導体接合の長さに沿って配置された、透明導電層」である点で共通する。

(4)引用発明の「太陽電池」は、本願発明の「太陽電池」に相当する。

(5)以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
基板の少なくとも一部が、硬質であること、及び、曲面により境界される断面の両方により特徴づけられる、基板;
前記基板の周囲に配置され、かつ、前記基板の長さに沿って配置された、背面電極;
前記背面電極の周囲に配置され、かつ、前記背面電極の長さに沿って配置された、半導体接合;
前記半導体接合の周囲に配置され、かつ、前記半導体接合の長さに沿って配置された、透明導電層;を含む太陽電池。

(6)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明の「太陽電池」は、背面電極が、基板の周囲の少なくとも50パーセントに配置され、かつ、基板の長さの少なくとも半分に沿って配置され、半導体接合が、背面電極の周囲の少なくとも50パーセントに配置され、かつ、背面電極の長さの少なくとも半分に沿って配置され、透明導電層が、半導体接合の周囲の少なくとも50パーセントに配置され、かつ、半導体接合の長さの少なくとも半分に沿って配置されるのに対し、引用発明の「太陽電池」は、金属のめっき層や蒸着層、半導体層及び透明導電層が、それぞれ棒状基体のガラス部分、金属のめっき層や蒸着層及び半導体層の周囲及び長さのどの程度の範囲にわたって配置されているか特定されていない点(以下「相違点1」という。)。

<相違点2>
本願発明は、太陽電池の全周囲に、太陽電池との間に空気が入らないように該太陽電池に円周方向にシールされた透明ケースが配置され、第1の端部及び第2の端部で開口した「太陽電池ユニット」であるのに対し、引用発明は、「太陽電池」の発明であって、その円周方向に上記のようなシールされた透明ケースが配置されていない点(以下「相違点2」という。)。

6 判断
上記各相違点につき検討する。
(1)相違点1について
引用発明の「太陽電池」において、金属のめっき層や蒸着層、半導体層及び透明導電層を、それぞれ棒状基体のガラス部分、金属のめっき層や蒸着層及び半導体層の周囲及び長さのどの程度の範囲にわたって配置するかは、当業者が適宜決定し得る設計的事項というべきところ、上記3(5)のように、引用文献には、一実施例として、棒状基体(1)表面の円周方向及び長さ方向の大部分に半導体層(3)及び透明導電層(4)を設けることが記載されていることをも踏まえると、金属のめっき層や蒸着層、半導体層及び透明導電層を配置する範囲を、相違点1に係る本願発明の構成の如くすることは当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
太陽電池を保護するためにその周りに透明な保護手段を設けることは技術常識であって、引用発明の「太陽電池」を保護するために、当該「太陽電池」との間に空気が入らないようその円周方向にシールされた透明ケースを設け、その結果、上記相違点2に係る本願発明の構成を採用して「太陽電池ユニット」となすことは当業者が容易になし得ることである。

(3)意見書の主張について
なお、請求人は、平成26年4月23日付け意見書(3頁16行?同頁下から4行)において、引用文献に係る半導体層(3)が、基体(1)の左側端部(2)上に配置されておらず、また、引用文献には、透明ケースについて全く開示も示唆もされていないから、当業者が、引用文献に基づいて、本願発明の構成に想到することはできない旨主張するが、これらの点については上記(1)及び(2)で述べたとおりであって、採用できない。

(4)本願発明の効果について
そして、本願発明によってもたらされる効果を全体としてみても、引用発明及び技術常識から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

7 むすび
以上の検討によれば、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び技術常識に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-30 
結審通知日 2014-08-05 
審決日 2014-08-20 
出願番号 特願2009-501465(P2009-501465)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 昌伸  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 松川 直樹
吉野 公夫
発明の名称 ケース入長形光電池  
代理人 石川 徹  

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