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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1296023
審判番号 不服2013-13712  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-17 
確定日 2015-01-05 
事件の表示 特願2011-504501「電気通信サービスのユーザに配信されることが可能であるメッセージを選択するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月12日国際公開、WO2009/136046、平成23年 7月 7日国内公表、特表2011-519453〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2009年4月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年4月15日,フランス国)を国際出願日とする出願であって,平成24年7月2日付けの拒絶理由通知に対して同年10月9日付けで手続補正がなされたが,平成25年3月15日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成25年7月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,さらに平成25年11月20日付けの審尋に対して平成26年2月21日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成25年7月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年7月17日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(下線は,補正の個所を示すものとして審判請求人が付したものである。)

「 【請求項1】
電気通信サービスのユーザ(111)への配信に適したメッセージを選択するためのシステム(100)であって,
第1のデータベース(107)であって,
○それぞれが一連の起こりうる状態における特定のプレースを占めている,前記ユーザ(111)の複数の特徴的状態と,
○異なる状態間の遷移と
を含んでいる第1のデータベース(107)と,
前記ユーザ(111)へのブロードキャストに適した複数のメッセージを含んでいる第2のデータベース(108)と,
前記ユーザ(111)にすでにブロードキャストされたメッセージの履歴を組み込んでいる第3のデータベース(104)と,
遷移検出手段(112),および前記第3のデータベース(104)によって提供されるデータ内で示されるユーザが同じメッセージを受信した回数に基づいて前記ユーザ(111)の現在の状態を決定する手段を含んでいる計算機(101)と,
前記現在の状態を前記第2のデータベースに含まれているメッセージと関連付ける手段(113)と,
前記ユーザ(111)への前記メッセージをブロードキャストするための時を決定する手段(103)であって,状態の変化に続く所定の時間後に,前記メッセージのブロードキャストをトリガするために使用されるタイムカウンタを含む該手段と,
前記ユーザ(111)と前記計算機(101)との間の情報の通信を可能にし,遷移を検出して前記ユーザの現在の状態を決定するために前記手段(112)によって現在の状態を決定される際に考慮に入れられる情報を,前記ユーザ(111)が前記計算機(101)に送信するようにするユーザインタフェースモジュール(110)と
を含み,
前記第3のデータベース(104)が,
すでにブロードキャストされたメッセージのリストと,
こうしたメッセージのブロードキャストされた日付と,
すでにブロードキャストされたメッセージの受信者と,
前記受信者が同じメッセージを受信した回数と
を含むことを特徴とする,システム(100)。
【請求項2】
プロファイリングデータベースとして知られる,前記ユーザ(111)のプロファイリングデータを含んでいるデータベース(105)と,前記遷移検出手段(112)と,前記遷移を検出して,前記現在の状態を決定するために前記プロファイリングデータベース(105)に含まれているデータを使用して前記ユーザ(111)の現在の状態を決定する手段とを備えることを特徴とする,請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
対話型データベースとして知られる,前記ユーザ(111)と前記システム(100)によってすでに選択されてユーザ(111)にブロードキャストされたメッセージとの間の双方向性に関連するデータを含んでいるデータベース(106)と,前記遷移検出手段(112)と,前記遷移を検出して前記現在の状態を決定するために,前記対話型データベース(106)に含まれているデータを使用して前記ユーザ(111)の現在の状態を決定する手段とを含むことを特徴とする,請求項1または2のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記メッセージを前記ユーザ(111)にブロードキャストする時を決定する手(114)段を含み,前記手段(114)が,サービスが前記ユーザにブロードキャストされている過程にある時,前記メッセージがユーザにブロードキャストされるタイムスロットを決定することを特徴とする,請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記メッセージを前記ユーザにブロードキャストする時を決定する手段(103)を含み,前記手段(103)が対処されなければならない所定の条件に従って前記メッセージのブロードキャストをトリガすることを特徴とする,請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記メッセージを前記ユーザにブロードキャストする時を決定する前記手段(103,115,114)が,前記メッセージの適切なブロードキャストチャネルを選択する手段を組み込むことを特徴とする,請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項7】
所与のブランド,製品のカテゴリまたは製品に対するユーザの前記特徴的状態,ならびに異なる状態間の遷移を定義することによる前記第1のデータベース(107),
前記第1のデータベース(107)の前記状態と関連付けられた前記所与のブランドまたは製品のカテゴリまたは製品に関するメッセージを定義することによる前記第2のデータベース(108)
を設定するインタフェース(109)を含む,請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項8】
通信端末へサービスを配信する少なくとも1つのプラットフォームを用いて接続された,請求項1から7のいずれか一項に記載のシステムを含むネットワーク。
【請求項9】
電気通信サービスのユーザへの配信に適したメッセージを選択する方法であって,コンピュータによって実行される,
同じメッセージが前記ユーザにすでにブロードキャストされた回数に基づいて第1の状態と第2の状態との間の遷移を検出する段階であって,前記第1の状態と第2の状態が,前記ユーザの一連の状態特性の中の異なるプレースを占め,前記第2の状態が前記ユーザの現在の状態になる段階と,
現在の状態を決定する際に考慮に入れられる情報を入力する段階と,
前記現在の状態を,前記ユーザへのブロードキャストに適した複数のメッセージの中から選択されたメッセージと関連付ける段階と,
状態の変化に続く所定の時間後に,前記メッセージのブロードキャストをトリガするために使用されるタイムカウンタを介して,前記ユーザへ前記メッセージをブロードキャストする時を決定する段階と
を含む,方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
電気通信サービスのユーザ(111)への配信に適したメッセージを選択するためのシステム(100)であって,
第1のデータベース(107)であって,
○それぞれが一連の起こりうる状態における特定のプレースを占めている,前記ユーザ(111)の複数の特徴的状態と,
○異なる状態間の遷移と
を含んでいる第1のデータベース(107)と,
前記ユーザ(111)へのブロードキャストに適した複数のメッセージを含んでいる第2のデータベース(108)と,
前記ユーザ(111)にすでにブロードキャストされたメッセージの履歴を組み込んでいる第3のデータベース(104)と,
遷移検出手段(112),および前記第3のデータベース(104)によって提供されるデータに基づいて前記ユーザ(111)の現在の状態を決定する手段を含んでいる計算機(101)と,
前記現在の状態を前記第2のデータベースに含まれているメッセージと関連付ける手段(113)と,
前記ユーザ(111)への前記メッセージをブロードキャストするための時を決定する手段(103)であって,状態の変化に続く所定の時間後に,前記メッセージのブロードキャストをトリガするために使用されるタイムカウンタを含む該手段と,
前記ユーザ(111)と前記計算機(101)との間の情報の通信を可能にし,遷移を検出して前記ユーザの現在の状態を決定するために前記手段(112)によって現在の状態を決定される際に考慮に入れられる情報を,前記ユーザ(111)が前記計算機(101)に送信するようにするユーザインタフェースモジュール(110)と
を含むことを特徴とする,システム(100)。
【請求項2】
前記第3のデータベース(104)が,
すでにブロードキャストされたメッセージのリストと,
こうしたメッセージのブロードキャストされた日付と,
すでにブロードキャストされたメッセージの受信者と,
前記受信者が同じメッセージを受信した回数と
を含むことを特徴とする,請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
プロファイリングデータベースとして知られる,前記ユーザ(111)のプロファイリングデータを含んでいるデータベース(105)と,前記遷移検出手段(112)と,前記遷移を検出して,前記現在の状態を決定するために前記プロファイリングデータベース(105)に含まれているデータを使用して前記ユーザ(111)の現在の状態を決定する手段とを備えることを特徴とする,請求項1または2のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項4】
対話型データベースとして知られる,前記ユーザ(111)と前記システム(100)によってすでに選択されてユーザ(111)にブロードキャストされたメッセージとの間の双方向性に関連するデータを含んでいるデータベース(106)と,前記遷移検出手段(112)と,前記遷移を検出して前記現在の状態を決定するために,前記対話型データベース(106)に含まれているデータを使用して前記ユーザ(111)の現在の状態を決定する手段とを含むことを特徴とする,請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記メッセージを前記ユーザ(111)にブロードキャストする時を決定する手(114)段を含み,前記手段(114)が,サービスが前記ユーザにブロードキャストされている過程にある時,前記メッセージがユーザにブロードキャストされるタイムスロットを決定することを特徴とする,請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記メッセージを前記ユーザにブロードキャストする時を決定する手段(103)を含み,前記手段(103)が対処されなければならない所定の条件に従って前記メッセージのブロードキャストをトリガすることを特徴とする,請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記メッセージを前記ユーザにブロードキャストする時を決定する前記手段(103,115,114)が,前記メッセージの適切なブロードキャストチャネルを選択する手段を組み込むことを特徴とする,請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項8】
所与のブランド,製品のカテゴリまたは製品に対するユーザの前記特徴的状態,ならびに異なる状態間の遷移を定義することによる前記第1のデータベース(107),
前記第1のデータベース(107)の前記状態と関連付けられた前記所与のブランドまたは製品のカテゴリまたは製品に関するメッセージを定義することによる前記第2のデータベース(108)
を設定するインタフェース(109)を含む,請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項9】
通信端末へサービスを配信する少なくとも1つのプラットフォームを用いて接続された,請求項1から8のいずれか一項に記載のシステムを含むネットワーク。
【請求項10】
電気通信サービスのユーザへの配信に適したメッセージを選択する方法であって,コンピュータによって実行される,
前記ユーザにすでにブロードキャストされたメッセージの履歴に関するデータに基づいて第1の状態と第2の状態との間の遷移を検出する段階であって,前記第1の状態と第2の状態が,前記ユーザの一連の状態特性の中の異なるプレースを占め,前記第2の状態が前記ユーザの現在の状態になる段階と,
現在の状態を決定する際に考慮に入れられる情報を入力する段階と,
前記現在の状態を,前記ユーザへのブロードキャストに適した複数のメッセージの中から選択されたメッセージと関連付ける段階と,
状態の変化に続く所定の時間後に,前記メッセージのブロードキャストをトリガするために使用されるタイムカウンタを介して,前記ユーザへ前記メッセージをブロードキャストする時を決定する段階と
を含む,方法。」

(3)補正の目的について
本件補正は,補正前の請求項1を削除し,補正前の請求項2?10を補正後の請求項1?9とするものであるから,特許法第17条の2第5項第1号に規定される「請求項の削除」を目的とするものに該当する。
また,補正前の請求項2が引用する請求項1の「前記第3のデータベース(104)によって提供されるデータに基づいて」を,補正後の請求項1の「前記第3のデータベース(104)によって提供されるデータ内で示されるユーザが同じメッセージを受信した回数に基づいて」とする補正は,「第3のデータベース(104)によって提供されるデータ」を当該データ「内で示されるユーザが同じメッセージを受信した回数」に限定したものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また,補正前の請求項10の「前記ユーザにすでにブロードキャストされたメッセージの履歴に関するデータに基づいて」を,補正後の請求項9の「同じメッセージが前記ユーザにすでにブロードキャストされた回数に基づいて」とする補正は,「ユーザにすでにブロードキャストされたメッセージの履歴に関するデータ」を「同じメッセージが前記ユーザにすでにブロードキャストされた回数」に限定したものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

2.補正の適否について
そこで,本件補正後の請求項9に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-1 本件補正発明
本件補正発明は,上記「第2 [理由]1.(1)」の請求項9に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2-2 引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-171151号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の(ア)?(エ)の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,広告やコンテンツの視聴者(以下,ユーザと記す。)がパーソナルコンピュータ,携帯電話機,テレビジョン受像機等の複数の種類の端末を使用する場合であっても,そのユーザが使用する各種端末に対する広告やコンテンツ等の配信状況に応じて,広告代理店や広告主等の希望に沿う広告を配信できるようにする広告配信方法,広告配信システム,広告配信装置,およびこの広告配信システムに適用される端末装置,視聴者情報管理装置,広告配信プログラム,広告出力プログラムおよび視聴者情報管理プログラムに関する。」

(イ)「【0054】
【発明の実施の形態】
まず始めに,本発明に適用されるメディアプランについて説明する。一般に,消費者がある商品の広告を見て,実際に商品を購入するまでには,次のような段階を踏むことが多い。消費者は,第一段階として,その商品に「注目(Attention )」し,「興味(Interest)」を持つ。第二段階では,その商品を「欲しい(Desire)」と思い,商品の詳細について「記憶(Memory)」する。消費者は,第三段階として,実際にその商品を購入するという「行動(Action)」を起こす。このような消費者の消費行動に関する心理過程は一般にアイドマの法則(AIDMA’s rule)として知られている。
【0055】
(途中省略)
【0056】
各広告媒体の特性や消費者の心理等を考慮して,複数の広告媒体において各広告媒体に適した広告を配信するようなメディアプランを作成し,そのメディアプランに従って広告を配信すれば,高い訴求効果を期待することができる。
【0057】
このようなメディアプランの一例を以下に示す。ここでは,広告主が,アルコール飲料の新商品の広告配信を広告代理店に委託したとする。また,広告主は,テレビジョン放送,パーソナルコンピュータへのWebページ配信および携帯電話機へのWebページ配信という三種類の広告媒体を用いた広告配信を委託したとする。広告代理店は,その新商品発売日の朝の時間帯にテレビジョン放送でイメージ認知型広告を配信するように計画を立てる。さらに,新商品発売日の昼の時間帯にインターネットを介してパーソナルコンピュータに新商品の広告を配信するように計画を立てる。この場合,既にテレビジョン放送でイメージ認知型広告を視聴したユーザに対しては,より詳細な新商品の情報を憶えてもらうように商品説明型広告を配信し,朝に配信したイメージ認知型広告を視聴していないユーザに対しては,新商品を認知してもらうようにイメージ認知型広告を配信するように立案する。さらに,広告代理店は,その日の夜の時間帯に携帯電話機にその新商品の広告を配信するように計画を立てる。この場合,パーソナルコンピュータで商品説明型広告を視聴したユーザに対しては,新商品(アルコール飲料)の販売店リストを含んだ広告を配信し,商品説明型広告を視聴していないユーザに対してはイメージ認知型広告を配信するように立案する。
【0058】
(途中省略)
【0059】
広告代理店は,メディアプラン立案に伴い,使用する広告を準備する。例えば,例示したアルコール飲料のメディアプランを作成した場合には,テレビジョン放送用にアルコール飲料のイメージ認知型広告を準備しておく。また,パーソナルコンピュータ用に,アルコール飲料のイメージ認知型のバナー広告と商品説明型のバナー広告とを準備しておく。さらに,携帯電話機用に,新商品販売店リストを含んだバナー広告とイメージ認知型のバナー広告とを準備しておく。
【0060】
また,広告は各コンテンツと関連付けられ,各コンテンツに設けられた広告枠に収められて配信される。「広告枠」とは,広告が出力される(すなわちユーザに提示される)時間的または空間的なスペースである。例えば,コンテンツがテレビジョン放送の番組である場合,番組中あるいは番組と番組との間に15秒の広告を数本放送するための時間が設けられる。この各15秒の時間帯が広告枠に該当する。また,コンテンツがWebページである場合,Webページの上部や下部にバナー広告を表示するための領域が設けられる場合がある。この領域が広告枠に該当する。
【0061】
広告はコンテンツに設けられた広告枠に収められて配信されるため,広告代理店は,広告を収めることができる広告枠の情報を得る必要がある。広告代理店は,広告配信業者から広告枠の情報を入手する。すなわち,どのような内容のコンテンツが配信され,各コンテンツにはどれだけ広告枠が設けられているかという情報を入手する。例示したメディアプランを立案した場合,広告代理店は,コンテンツおよび広告を配信するテレビジョン放送局(以下,テレビ局と記す。)から番組スケジュールと各番組の広告枠の情報を入手する。また,パーソナルコンピュータ向けの広告配信業者から,バナー広告配信対象となっている各Webページと,各Webページの広告枠の情報を入手する。同様に,携帯電話機向けの広告配信業者からも,バナー広告配信対象となっている各Webページと,各Webページの広告枠の情報を入手する。広告代理店は,例えば,書類やファクシミリで,広告配信業者から広告枠の情報を入手する。そして,広告代理店は広告枠を指定し,メディアプランで定めた条件(「テレビジョン放送でイメージ認知型広告を視聴している」等)に応じた広告を収めてユーザに提示されるように設定する。この設定を行い設定に従って広告を配信する広告配信システムについては後述する。」

(ウ)「【0067】
図2(a)は,広告枠ポリシーリストのデータ構造の例を示す説明図である。前述のように広告枠ポリシーリストは,複数の広告枠ポリシーデータを含む。個々の広告枠ポリシーデータは,条件データ,アクションデータおよび広告素材IDを含む。条件データは,ユーザの属性情報に関する条件式を記述したデータである。ユーザの属性情報は,例えばユーザ情報データ(各ユーザの個人情報)やユーザが端末を使用する際の時刻(現在時刻)等の情報である。アクションデータは,条件式の評価結果に応じた広告素材IDの選択処理を記述したデータである。例えば,アクションデータには,条件式の成立や不成立等に応じた広告素材IDの選択処理が記述される。広告素材IDは,ユーザ端末6,10に配信される各種広告のデータそのもの(以下,広告素材実データと記す。)を識別するための識別情報である。広告枠ポリシーデータは,アクションデータに記述された選択処理において選択候補となる広告素材IDを含む。選択候補となる広告素材IDが複数存在する場合には,広告枠ポリシーデータは複数の広告素材IDを含む。例えば,条件データに記述された条件が成立した場合と成立しなかった場合とで,それぞれ異なる広告素材IDを選択するときには,広告ポリシーデータはそれぞれの場合に選択される広告素材IDを全て含む。なお,後述するように,広告枠ポリシー管理装置1が記憶する各広告枠ポリシーデータは,コンテンツと対応付けられて,広告配信装置4,8に送信される。
【0068】
(途中省略)
【0069】
以下,広告枠ポリシーデータを用いることによりメディアプランに沿った広告配信がどのように実現されるのかについて,上述のアルコール飲料のメディアプランを例に説明する。例示したメディアプランでは,朝の時間帯にテレビジョン放送でイメージ認知型広告を配信する。この場合,広告代理店の担当者は,無条件にアルコール飲料のイメージ認知型広告(テレビジョン放送用)が選択されるように,条件データおよびアクションデータを記述する。そして,その条件データ,アクションデータおよびイメージ認知型広告の広告素材IDを含む広告枠ポリシーデータを広告枠ポリシー管理装置1に記憶させる。また,担当者は,予めテレビジョン放送の各番組および各番組に設けられた広告枠の情報について広告配信業者(テレビ局)から連絡を受けている。担当者は,その広告枠の情報を参照する。そして,アルコール飲料の発売日が月曜日であるならば,担当者は,月曜日の朝の番組(ここではニュース番組とする)と広告枠ポリシーデータとを対応付けて,テレビ局が管理する広告配信装置に広告枠ポリシーデータを送信する。
【0070】
また,広告代理店の担当者は,メディアプランに沿う広告をパーソナルコンピュータに配信するために,条件データとして「ユーザは月曜日の朝のニュース番組で配信されたイメージ認知型広告を視聴した」という条件式を記述する。さらに,「条件式が成立する場合には商品説明型のバナー広告を選択し,成立しない場合にはイメージ認知型のバナー広告を選択する」というアクションデータを記述する。そして,その条件データ,アクションデータおよび各バナー広告の広告素材IDを含む広告枠ポリシーデータを広告枠ポリシー管理装置1に記憶させる。担当者は,予めパーソナルコンピュータ向けバナー広告の配信業者から,各コンテンツおよび各コンテンツに設けられた広告枠についての連絡を受けている。担当者は,その広告枠の情報を参照し,アルコール飲料の需用者が閲覧しそうなコンテンツと広告枠ポリシーデータとを対応付けて,パーソナルコンピュータ向けバナー広告配信業者が管理する広告配信装置に広告枠ポリシーデータを送信する。
【0071】
同様に,広告代理店の担当者は,条件データとして「ユーザはパーソナルコンピュータ向けの商品説明型バナー広告を視聴した」という条件式を記述する。さらに,「条件式が成立する場合にはアルコール飲料の販売店リストを含んだバナー広告を選択し,成立しない場合にはイメージ認知型のバナー広告を選択する」というアクションデータを記述する。そして,その条件データ,アクションデータおよび各バナー広告の広告素材IDを含む広告枠ポリシーデータを広告枠ポリシー管理装置1に記憶させる。担当者は,予め携帯電話機向けバナー広告の配信業者から入手している各コンテンツおよび各コンテンツに設けられた広告枠の情報を参照する。そして,アルコール飲料の需用者が閲覧しそうなコンテンツと広告枠ポリシーデータとを対応付けて,携帯電話機向けバナー広告配信業者が管理する広告配信装置に広告枠ポリシーデータを送信する。
【0072】
また,テレビ局が管理する広告配信装置は,テレビ局のコンテンツ配信装置が月曜日の朝にニュース番組を配信した場合,ニュース番組に対応付けられた広告枠ポリシーデータに従って,無条件にイメージ認知型広告が選択されるように動作する。また,パーソナルコンピュータ向けバナー広告配信業者が管理する広告配信装置は,広告代理店が広告枠ポリシーデータと対応付けたコンテンツが配信されたときに,その広告枠ポリシーデータに従って,イメージ認知型バナー広告または商品説明型バナー広告を選択してバナー広告を配信する。この結果,月曜日の朝にニュース番組とともにイメージ認知型広告を視聴したユーザ(既に新商品について認知(Attention,Interest)しているユーザ)には,商品説明型バナー広告を配信し,新商品を欲しい(Desire)と思ってもらい,新商品を記憶(Memory)してもらうことができる。一方,まだイメージ認知型広告を視聴していないユーザに対してはイメージ認知型バナー広告を配信し,新商品の認知(Attention,Interest)を促すことができる。
【0073】
同様に,携帯電話機向けバナー広告配信業者が管理する広告配信装置も,広告代理店が広告枠ポリシーデータと対応付けたコンテンツが配信されたときに,その広告枠ポリシーデータに従って広告を選択して配信する。この結果,既に商品説明型バナー広告を見たユーザ(新商品を欲しい(Desire)と思い新商品を記憶(Memory)しているであろうユーザ)には,販売店リストを含むバナー広告を配信して,ユーザを近辺の販売店に誘導して商品購入という行動に結びつける(Action)ことができる。他のユーザに対してはイメージ認知型バナー広告を配信し,新商品の認知(Attention,Interest)を促すことができる
【0074】
なお,以上の説明では広告枠ポリシーデータについて理解しやすいように,テレビジョン放送も利用するメディアプランを例示して説明したが,第1の実施の形態では通信型個別配信によってコンテンツや広告を配信する広告配信システムについて説明する。テレビジョン放送等の放送型一斉同報配信を行う広告配信装置およびコンテンツ配信装置を含む広告配信システムについては第2の実施の形態で説明する。

(エ)「【0105】
広告選択処理部43は,ユーザ端末からの広告取得要求に伴って送信されるコンテンツIDを広告配信処理部42が受信すると,そのコンテンツIDによって特定される広告枠データを広告情報記憶装置44から抽出する。その広告枠データと,ユーザ情報管理装置2から受信したユーザ情報データに基づいて,広告素材IDを選択する。広告配信処理部42および広告選択処理部43は,例えば,プログラムに従って動作するCPUによって実現される。また,広告配信処理部42および広告選択処理部43は,同一のCPUによって実現されてもよい。」

上記摘記事項(ア)?(エ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例1には,次のとおりの発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「消費者がある商品の広告を見て,実際に商品を購入するまでに,第一段階として,その商品に注目し,興味を持ち,第二段階では,その商品を欲しいと思い,商品の詳細について記憶し,第三段階として,実際にその商品を購入するという行動を起こす,というような消費者の消費行動に関する心理過程が一般にアイドマの法則として知られていることを利用して,広告やコンテンツの視聴者(ユーザ)がパーソナルコンピュータ,携帯電話機,テレビジョン受像機等の複数の種類の端末を使用する場合であっても,そのユーザが使用する各種端末に対する広告やコンテンツ等の配信状況に応じて,広告代理店や広告主等の希望に沿う広告を配信できるようにする広告配信方法であって,
広告代理店は,例えば,アルコール飲料のメディアプランを作成した場合に,テレビジョン放送用にアルコール飲料のイメージ認知型広告を準備しておき,パーソナルコンピュータ用に,アルコール飲料のイメージ認知型のバナー広告と商品説明型のバナー広告とを準備しておき,さらに,携帯電話機用に,新商品販売店リストを含んだバナー広告とイメージ認知型のバナー広告とを準備しておき,
広告代理店の担当者が,無条件にアルコール飲料のイメージ認知型広告(テレビジョン放送用)が選択されるように,条件データおよびアクションデータを記述することにより,テレビ局が管理する広告配信装置は,テレビ局のコンテンツ配信装置が月曜日の朝にニュース番組を配信した場合,ニュース番組に対応付けられた広告枠ポリシーデータに従って,無条件にイメージ認知型広告が選択されるように動作し,
また,広告代理店の担当者が,メディアプランに沿う広告をパーソナルコンピュータに配信するために,条件データとして『ユーザは月曜日の朝のニュース番組で配信されたイメージ認知型広告を視聴した』という条件式を記述し,さらに,『条件式が成立する場合には商品説明型のバナー広告を選択し,成立しない場合にはイメージ認知型のバナー広告を選択する』というアクションデータを記述すると,パーソナルコンピュータ向けバナー広告配信業者が管理する広告配信装置は,広告枠ポリシーデータと対応付けられたコンテンツが配信されたときに,その広告枠ポリシーデータに従って,イメージ認知型バナー広告または商品説明型バナー広告を選択してバナー広告を配信することにより,月曜日の朝にニュース番組とともにイメージ認知型広告を視聴したユーザ,すなわち,既に新商品について認知しているユーザには,商品説明型バナー広告を配信し,新商品を欲しいと思ってもらい,新商品を記憶してもらうことができ,一方,まだイメージ認知型広告を視聴していないユーザに対してはイメージ認知型バナー広告を配信し,新商品の認知を促すことができ,
また,広告代理店の担当者が,条件データとして『ユーザはパーソナルコンピュータ向けの商品説明型バナー広告を視聴した』という条件式を記述し,さらに,『条件式が成立する場合にはアルコール飲料の販売店リストを含んだバナー広告を選択し,成立しない場合にはイメージ認知型のバナー広告を選択する』というアクションデータを記述すると,携帯電話機向けバナー広告配信業者が管理する広告配信装置は,広告枠ポリシーデータと対応付けられたコンテンツが配信されたときに,その広告枠ポリシーデータに従って広告を選択して配信することにより,既に商品説明型バナー広告を見たユーザ,すなわち,新商品を欲しいと思い新商品を記憶しているであろうユーザには,販売店リストを含むバナー広告を配信して,ユーザを近辺の販売店に誘導して商品購入という行動に結びつけることができ,他のユーザに対してはイメージ認知型バナー広告を配信し,新商品の認知を促すことができる,
広告配信方法。」

2-3 対比
本件補正発明と引用例1発明とを対比する。

(a)
(a-1)引用例1発明の「広告やコンテンツの視聴者」は,パーソナルコンピュータ,携帯電話機,テレビジョン受像機等の複数の種類の端末を使用して,広告やコンテンツの配信という「サービス」を受ける者であるから,引用例1発明の「広告やコンテンツの視聴者」が本件補正発明の「電気通信サービスのユーザ」に相当する。
引用例1発明は,「月曜日の朝にニュース番組とともにイメージ認知型広告を視聴したユーザ,すなわち,既に新商品について認知しているユーザには,商品説明型バナー広告を配信し,新商品を欲しいと思ってもらい,一方,まだイメージ認知型広告を視聴していないユーザに対してはイメージ認知型バナー広告を配信し,新商品の認知を促すことができ」るものであるから,引用例1発明の広告管理装置は,「既に新商品について認知しているユーザ」や,「まだイメージ認知型広告を視聴していないユーザ」への「配信」に「適した」広告を「選択」しているといえる。
また,本件補正発明の「メッセージ」は,本願の発明の詳細な説明に記載されている「広告メッセージ」に対応したものであるから,引用例1発明の「広告」が本件補正発明の「メッセージ」に相当する。
してみれば,引用例1発明の「広告配信方法」と本件補正発明の「方法」とは,「電気通信サービスのユーザへの配信に適したメッセージを選択する方法」の点で一致している。
(a-2)上記摘記事項(エ)の「広告配信処理部42および広告選択処理部43は,例えば,プログラムに従って動作するCPUによって実現される。」との記載からみて,引用例1発明の「広告配信装置」が「コンピュータ」であることは明らかであるから,引用例1発明の「広告配信方法」が,「コンピュータによって実行される」方法であることは自明のことである。

(b)
(b-1)引用例1発明は,「広告代理店の担当者が,メディアプランに沿う広告をパーソナルコンピュータに配信するために,条件データとして『ユーザは月曜日の朝のニュース番組で配信されたイメージ認知型広告を視聴した』という条件式を記述し,さらに,『条件式が成立する場合には商品説明型のバナー広告を選択し,成立しない場合にはイメージ認知型のバナー広告を選択する』というアクションデータを記述すると,パーソナルコンピュータ向けバナー広告配信業者が管理する広告配信装置は,広告枠ポリシーデータと対応付けられたコンテンツが配信されたときに,その広告枠ポリシーデータに従って,イメージ認知型バナー広告または商品説明型バナー広告を選択してバナー広告を配信することにより,月曜日の朝にニュース番組とともにイメージ認知型広告を視聴したユーザ,すなわち,既に新商品について認知しているユーザには,商品説明型バナー広告を配信し,新商品を欲しいと思ってもらい,新商品を記憶してもらうことができ,一方,まだイメージ認知型広告を視聴していないユーザに対してはイメージ認知型バナー広告を配信し,新商品の認知を促すことができ」るものである。
ここで,引用例1発明において,ユーザが,月曜日の朝のニュース番組で配信されたイメージ認知型広告を視聴した場合,当該「イメージ認知型広告」は,テレビジョン放送用に準備され,ニュース番組とともに放送され,ユーザに視聴された広告であるから,「ユーザにすでにブロードキャストされた」「メッセージ」であるということができる。
また,引用例1発明において,ユーザは,「月曜日の朝にニュース番組とともにイメージ認知型広告を視聴」することによって,「新商品について認知していない状態」(第1の状態)から,「既に新商品について認知している状態」(第2の状態)へと「遷移」しており,いずれの「状態」であるかによって,商品説明型バナー広告を配信するか,イメージ認知型バナー広告を配信するかを決定していることから,「新商品について認知していない状態(第1の状態)」と「既に新商品について認知している状態(第2の状態)」との「間」の「遷移」を「検出」する「段階」を「含」んでいるといえる。
そして,引用例1発明では,「ユーザは月曜日の朝のニュース番組で配信されたイメージ認知型広告を視聴した」か否かという「条件」,すなわち,「メッセージがユーザにすでにブロードキャストされた」という「実績」に「基づいて」,「第1の状態と第2の状態との間の遷移を検出」していることから,引用例1発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「メッセージがユーザにすでにブロードキャストされたという実績に基づいて第1の状態と第2の状態との間の遷移を検出する段階」を含む点で共通している。
(b-2)引用例1発明は,「消費者がある商品の広告を見て,実際に商品を購入するまでに,第一段階として,その商品に注目し,第二段階では,その商品を欲しいと思い,第三段階として,実際にその商品を購入するという消費者の消費行動に関する心理過程を利用した広告配信方法」であり,引用例1発明の「第一段階?第三段階の心理過程」が本件補正発明の「ユーザの一連の状態特性」に相当する。
また,引用例1発明の「新商品について認知していない状態(第1の状態)」と「既に新商品について認知している状態(第2の状態)」は,それぞれ,「第一段階?第三段階の心理過程」の「中」の「異なる過程」,すなわち,「異なるプレース」を「占め」るものである。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,「第1の状態と第2の状態が,ユーザの一連の状態特性の中の異なるプレースを占め」ている点で共通している。
(b-3)引用例1発明では,「パーソナルコンピュータ向けバナー広告配信業者が管理する広告配信装置は,広告枠ポリシーデータと対応付けられたコンテンツが配信されたときに,その広告枠ポリシーデータに従って,イメージ認知型バナー広告または商品説明型バナー広告を選択してバナー広告を配信することにより,月曜日の朝にニュース番組とともにイメージ認知型広告を視聴したユーザ,すなわち,既に新商品について認知しているユーザには,商品説明型バナー広告を配信し」ているから,引用例1発明の「月曜日の朝にニュース番組とともにイメージ認知型広告を視聴したユーザ,すなわち,既に新商品について認知しているユーザに,商品説明型バナー広告を配信」するときが,本件補正発明の「現在」に相当し,そのときの,ユーザの「既に新商品について認知している状態」が本件補正発明の「現在の状態」に相当する。
そうすると,引用例1発明の「『新商品について認知していない状態(第1の状態)』と『既に新商品について認知している状態(第2の状態)』との間の遷移を検出する段階」は,「第2の状態がユーザの現在の状態になる段階」であるということができる。
(b-4)上記(b-1)?(b-3)のことから,引用例1発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「メッセージがユーザにすでにブロードキャストされた実績に基づいて第1の状態と第2の状態との間の遷移を検出する段階であって,前記第1の状態と第2の状態が,前記ユーザの一連の状態特性の中の異なるプレースを占め,前記第2の状態が前記ユーザの現在の状態になる段階」を含む点で共通している。

(c)引用例1発明では,「広告代理店の担当者が,メディアプランに沿う広告をパーソナルコンピュータに配信するために,条件データとして『ユーザは月曜日の朝のニュース番組で配信されたイメージ認知型広告を視聴した』という条件式を記述し,さらに,『条件式が成立する場合には商品説明型のバナー広告を選択し,成立しない場合にはイメージ認知型のバナー広告を選択する』というアクションデータを記述することにより,パーソナルコンピュータ向けバナー広告配信業者が管理する広告配信装置は,広告枠ポリシーデータと対応付けられたコンテンツが配信されたときに,その広告枠ポリシーデータに従って,イメージ認知型バナー広告または商品説明型バナー広告を選択してバナー広告を配信することにより,月曜日の朝にニュース番組とともにイメージ認知型広告を視聴したユーザ,すなわち,既に新商品について認知しているユーザには,商品説明型バナー広告を配信」している。
ここで,引用例1発明の「イメージ認知型バナー広告または商品説明型バナー広告」は,パーソナルコンピュータに個別に配信されており,「放送」すなわち「ブロードキャスト」されるものではない。そうすると,引用例1発明の「イメージ認知型バナー広告または商品説明型バナー広告」と本件補正発明の「ユーザへのブロードキャストに適した複数のメッセージ」とは,「ユーザへの配信に適した複数のメッセージ」である点で共通している。
また,引用例1発明の「商品説明型バナー広告」は,「イメージ認知型バナー広告または商品説明型バナー広告」の「中」から「選択」された「広告(メッセージ)」であるから,引用例1発明の「商品説明型バナー広告」と本件補正発明の「ユーザへのブロードキャストに適した複数のメッセージの中から選択されたメッセージ」とは,「ユーザへの配信に適した複数のメッセージの中から選択されたメッセージ」の点で共通している。
そして,引用例1発明は,「既に新商品について認知している状態(現在の状態)」のユーザに「商品説明型バナー広告(ユーザへの配信に適した複数のメッセージの中から選択されたメッセージ)」を配信していることから,そのようにするために,当該ユーザの「現在の状態」を,「前記ユーザへの配信に適した複数のメッセージの中から選択されたメッセージ」と「関連付け」ていることは自明のことである。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「(ユーザの)現在の状態を,前記ユーザへの配信に適した複数のメッセージの中から選択されたメッセージと関連付ける段階」を含む点で共通している。

そうすると,本件補正発明と引用例1発明とは,

「電気通信サービスのユーザへの配信に適したメッセージを選択する方法であって,コンピュータによって実行される,
メッセージが前記ユーザにすでにブロードキャストされたという実績に基づいて第1の状態と第2の状態との間の遷移を検出する段階であって,前記第1の状態と第2の状態が,前記ユーザの一連の状態特性の中の異なるプレースを占め,前記第2の状態が前記ユーザの現在の状態になる段階と,
前記現在の状態を,前記ユーザへの配信に適した複数のメッセージの中から選択されたメッセージと関連付ける段階と,
を含む,方法。」

の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
第1の状態と第2の状態との間の遷移を検出する際に,本件補正発明は,「同じ」メッセージがブロードキャストされた「回数」に基づいているのに対して,引用例1発明は,「メッセージがブロードキャストされたか否か」に基づいている点。

[相違点2]
本件補正発明は,「現在の状態を決定する際に考慮に入れられる情報を入力する段階」を含むのに対して,引用例1発明は,そのような段階を含んでいない点。

[相違点3]
現在の状態を関連付けるメッセージが,本件補正発明では,「ユーザへのブロードキャストに適した複数のメッセージの中から選択され」るのに対して,引用例1発明では,「ユーザへの配信に適した複数のメッセージの中から選択され」る点。

[相違点4]
本件補正発明は,「状態の変化に続く所定の時間後に,メッセージの配信をトリガするために使用されるタイムカウンタを介して,ユーザへ前記メッセージを配信する時を決定する段階」を含むのに対して,引用例1発明は,そのような段階を含んでいない点。

2-4 当審の判断
上記各相違点について検討する。

[相違点1]について
例えば特開平9-83991号公報の【0049】段落に,「一般に,広告は,同じものが短期間に複数回放映されると,視聴者は広告に対する興味が低下する・・・。また広告は,同じものをある一定回数以上同じ視聴者に見せても効果が飽和状態になるといわれている。」と記載されているように,広告の効果が,視聴回数とともに飽和していくことは一般常識であり,また,同公報の【0048】段落に「広告別属性記録表14aには・・・スポンサーが視聴者に広告内容の周知がほぼ十分であると考えられる繰り返し回数などが記録されている。」と記載されているように,一定の「広告回数」により,広告内容の周知が十分であるとみなすことは,当業者が適宜なし得る設計的事項である。
してみれば,引用例1発明において,例えば,スポンサーが,ユーザが新商品を認知すると考える「回数」を基準として用いることにより,ユーザが,「同じ」広告を一定の「回数」以上見ることによって,ユーザが新商品を認知していると判断すること,すなわち,「同じ」メッセージがブロードキャストされた「回数」に基づいて,ユーザが,新商品を認知していると判断するように構成することは,当業者が適宜なし得る設計的事項である。

[相違点2]について
原査定の拒絶理由で引用した特開2005-228017号公報(以下,「引用例5」という。)の【0021】?【0023】段落には,金融機関等の営業点システムにおいて,顧客の取引に対する興味,理解の度合いを,顧客がある商品に対して興味を持っていない事を示す「気づき」,顧客がある商品に対して興味を持っている事を示す「理解」,顧客がある商品に対してある程度理解を深めた事を示す「納得」の3種類の値を持つステータスで表し,「気づき」のステータスを持つ顧客に対しては,商品に対する興味を喚起するために,前記商品の概要情報を提示し,「理解」のステータスを持つ顧客に対しては,前記商品に対する前記顧客の理解を深めるため,前記商品の詳細情報を提示し,「納得」のステータスを持つ顧客に対しては,前記商品が前記顧客について有益であるかどうかを,前記顧客自身が判断する事を支援するために,前記商品についての相談に応じたり,前記顧客のデータを元にした,前記商品についてのシミュレーション結果を提示するようにすることが記載されている。
ここで,引用例5の「顧客の取引に対する興味,理解の度合いを示す,『気づき』,『理解』,『納得』の3種類の値を持つステータス」は,顧客の成熟状態を表すものであるから,本件補正発明の「ユーザの一連の状態特性」に相当する。
そして,引用例5の【0029】?【0034】段落に,金融取引中のATM画面に表示された広告に対する顧客の反応(タッチパネルディスプレイを触るという反応)に応じて,顧客のステータスを「理解」に変更することが記載され,また,引用例5の【0041】段落に,顧客による詳細情報取り込みや,詳細情報表示の要求があった場合には,ステータスを「理解」に変更することが記載され,さらに引用例5の【0045】段落に,商品に対する理解を深めた顧客が,行員との相談を望み,相談予約機能にて予約を行うと,相談予約の対象となった商品について,ステータスを「納得」に変更することが記載されているように,商品の広告を視聴することに限らず,商品に対する顧客の種々の反応(入力)を考慮して,顧客の成熟状態を表すステータス(状態)を変更することは,普通に行われることである。
してみれば,引用例1発明に,引用例5に記載された技術的事項を適用して,「現在の状態を決定する際に考慮に入れられる情報を入力する段階」を含むように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3]及び[相違点4]について
引用例1発明では,月曜日の朝にテレビジョン放送用のイメージ認知型広告が配信され,また,当該イメージ認知型広告を視聴したユーザに対して,「パーソナルコンピュータ向け」の商品説明型バナー広告が配信されている。
ところで,引用例1の【0143】?【0173】段落に記載されている「実施の形態2」には,「放送型一斉同報配信によって広告を配信する広告配信装置」が,「無条件に一つの広告を放送型一斉同報配信によって送信する場合」と,「ローカルでの広告枠ポリシー処理によって,広告枠データとユーザ情報データに基づいて,ユーザ端末に表示すべき広告素材実データの広告素材IDを決定する場合」とが記載されている。
つまり,引用例1には,イメージ認知型広告と,商品説明型広告を,いずれも「放送型一斉同報配信」によって配信することが記載されている。
してみれば,引用例1発明において,月曜日の朝にニュース番組とともに配信するイメージ認知型広告と,当該広告を視聴したユーザ(現在の状態のユーザ)に対して配信する商品説明型広告を,放送型一斉同報配信によって配信するように構成すること,すなわち,現在の状態のユーザに対して配信するメッセージ(現在の状態を関連付けるメッセージ)を,「ユーザへのブロードキャストに適した複数のメッセージの中から選択され」るように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。
また,上記摘記事項(イ)の【0060】?【0061】段落には,「広告は各コンテンツと関連付けられ,各コンテンツに設けられた広告枠に収められて配信される。『広告枠』とは,広告が出力される(すなわちユーザに提示される)時間的または空間的なスペースである。例えば,コンテンツがテレビジョン放送の番組である場合,番組中あるいは番組と番組との間に15秒の広告を数本放送するための時間が設けられる。この各15秒の時間帯が広告枠に該当する。・・・例示したメディアプランを立案した場合,広告代理店は,コンテンツおよび広告を配信するテレビジョン放送局(以下,テレビ局と記す。)から番組スケジュールと各番組の広告枠の情報を入手する。・・・そして,広告代理店は広告枠を指定し,メディアプランで定めた条件(『テレビジョン放送でイメージ認知型広告を視聴している』等)に応じた広告を収めてユーザに提示されるように設定する。」と記載されているように,コンテンツがテレビジョン放送の番組である場合には,当該番組の途中あるいは番組と番組との間の所定のタイミングに「広告枠」が設定されているものと認められることから,広告を配信する際に,予め設定された広告枠のタイミングに合わせて配信する必要があることは自明のことである。
してみれば,引用例1発明において,現在の状態のユーザに対して配信するメッセージを「ユーザへのブロードキャストに適した複数のメッセージの中から選択され」るように構成した際,予め設定された広告枠のタイミングに合わせて広告を配信するために,「状態の変化に続く所定の時間後に,メッセージの配信をトリガするために使用されるタイムカウンタを介して,ユーザへ前記メッセージを配信する時を決定する段階」を含むように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本件補正発明の作用効果も,引用例1発明,引用例1記載事項,引用例5記載事項,及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。

よって,本件補正発明は,引用例1発明,引用例1記載事項,引用例5記載事項,及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-5 むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成25年7月17日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項10に係る発明は,平成24年10月9日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下,「本願発明」という。)

「 【請求項10】
電気通信サービスのユーザへの配信に適したメッセージを選択する方法であって,コンピュータによって実行される,
前記ユーザにすでにブロードキャストされたメッセージの履歴に関するデータに基づいて第1の状態と第2の状態との間の遷移を検出する段階であって,前記第1の状態と第2の状態が,前記ユーザの一連の状態特性の中の異なるプレースを占め,前記第2の状態が前記ユーザの現在の状態になる段階と,
現在の状態を決定する際に考慮に入れられる情報を入力する段階と,
前記現在の状態を,前記ユーザへのブロードキャストに適した複数のメッセージの中から選択されたメッセージと関連付ける段階と,
状態の変化に続く所定の時間後に,前記メッセージのブロードキャストをトリガするために使用されるタイムカウンタを介して,前記ユーザへ前記メッセージをブロードキャストする時を決定する段階と
を含む,方法。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には,上記「第2 [理由]2-2」に記載したとおりの事項が記載されている。

3.対比・判断
本願発明は,上記「第2 [理由]」で検討した本件補正発明から,「ユーザにすでにブロードキャストされたメッセージの履歴に関するデータ」を「同じメッセージが前記ユーザにすでにブロードキャストされた回数」と限定する限定事項を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が前記「第2 [理由]2-4」に記載したとおり,引用例1発明,引用例1記載事項,引用例5記載事項,及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1発明,引用例1記載事項,引用例5記載事項,及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,引用例1記載事項,引用例5記載事項,及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-01 
結審通知日 2014-08-05 
審決日 2014-08-21 
出願番号 特願2011-504501(P2011-504501)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松野 広一  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 須田 勝巳
西山 昇
発明の名称 電気通信サービスのユーザに配信されることが可能であるメッセージを選択するためのシステムおよび方法  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  

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