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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1296049 |
審判番号 | 不服2013-22892 |
総通号数 | 182 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-11-22 |
確定日 | 2015-01-05 |
事件の表示 | 特願2010-524931「放熱材料、該放熱材料を含む電子デバイス、ならびにそれらの調製方法および使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月19日国際公開、WO2009/035907、平成22年12月16日国内公表、特表2010-539706〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年9月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2007年9月11日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。 手続補正 :平成22年 3月17日 拒絶理由通知 :平成24年12月10日(起案日) 意見書 :平成25年 4月25日 手続補正 :平成25年 4月25日 拒絶査定 :平成25年 7月16日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成25年11月22日 手続補正 :平成25年11月22日 第2 平成25年11月22日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年11月22日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 平成25年11月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、請求項17については、本件補正前に、 「 【請求項17】 (1)熱伝導性金属と粗いポリマー粒子とを合わせて、前記熱伝導性金属中に前記粗いポリマー粒子を有する複合材料を形成する工程を含む、方法。」 とあったところを、 本件補正後、 「 【請求項17】 (1)熱伝導性金属と、50μメートルから150μメートルの平均粒子サイズを有する粗いポリマー粒子とを合わせて、前記熱伝導性金属中に前記粗いポリマー粒子を有する複合材料を形成する工程を含む、方法。」 とするものである。 上記請求項17についての補正は、発明特定事項である「粗いポリマー粒子」について「50μメートルから150μメートルの平均粒子サイズを有する」と限定したものである。 請求項17についての補正は、発明特定事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項17に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-241721号公報(平成16年8月26日公開、以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、低融点金属からなる基材をシート状に成形した低融点金属シートに関する。」 (2)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】 ところが、ヒートシンクと電子部品との間に低融点合金を挟んで使用する場合、低融点合金が融解して滴下するいわゆる液ダレが発生する可能性があった。特に、近年のパソコンでは、マザーボードを縦横どちらにでも配置できるような設計がなされており、基板が鉛直方向に配置される場合は液ダレを一層確実に防止する必要が生じる。そこで、本発明は、熱伝導材として使用可能な低融点金属シートにおいて、液ダレを良好に防止することを目的としてなされた。 【0006】 【課題を解決するための手段及び発明の効果】 上記目的を達するためになされた請求項1記載の発明は、低融点金属をシート状に成形した基材中に、有機系ポリマーの粒子または繊維が分散したことを特徴とする低融点金属シートを要旨としている。」 (3)「【0013】 請求項7記載の発明は、Snを5?30重量%含むBi-Sn-In系合金を、60℃?100℃に加熱して融解させ、該融解した合金中に有機系ポリマーの粒子または繊維を分散させた後、シート状に成形することを特徴とする低融点金属シートの製造方法を要旨としている。」 (4)「【0018】 【実施例】 次に、低融点金属シート1を実際に製造し、異なる条件で製造された低融点金属シート(比較例)とその物性を比較した。 (実施例1) Bi30g、In50g、Sn20gをそれぞれ秤量し、500℃の電気炉内で混練することにより合金化を行った。続いて、合金化によって得られたインゴットを坩堝に入れて100℃の湯煎に挿入し、有機系ポリマーの粒子5と混練した。なお、本実施例では、有機系ポリマーとして球状の12ナイロン製粒子(アトフィナ製、商品名「オルガソール」)を用いた。更に、合金に対する粒子5の割合は、重量比で95:5(99:1?50:50の範囲で変更可能)、体積比で80:20(90:10?20:80の範囲で変更可能)とした。 【0019】 上記のようにして得られた混練物をカレンダロールによりシート化し、100mm×100mm×0.2mmの低融点金属シート1を得た。なお、カレンダロールによるシート化は、ロール温度を常温に保ったままで行った。 (実施例2) 実施例1と同様にして得られた混練物を、100℃×2?3分のプレス成形にかけることにより、シート化して100mm×100mm×0.2mmの低融点金属シート1を得た。 (実施例3) 実施例1における有機系ポリマーの粒子5の代わりに、熱伝導フィラーとしての窒化硼素が充填された有機系ポリマーの粒子を使用し、他は実施例1と同様の製造方法で低融点金属シートを得た。なお、上記粒子は、次のようにして構成した。 【0020】 先ず、2軸押出混練機にて12ナイロンの樹脂と窒化硼素粒子とを混練し、φ3?5mmに押し出してペレタイザにより数ミリにカットした。それを冷凍粉砕機にて数十μmに粉砕し、メッシュにて粒径調整して、上記熱伝導フィラー入りの有機系ポリマー粒子を得た。 (比較例1) 実施例1と同様にして得られた合金のインゴットを、粒子5を混練することなくそのままカレンダロールによりシート化し、100mm×100mm×0.2mmの低融点金属シートを得た。 (比較例2) 実施例1と同様にして得られた合金のインゴットを、粒子5を混練することなくそのまま100℃×2?3分のプレス成形にかけることにより、シート化して100mm×100mm×0.2mmの低融点金属シートを得た。」 上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。 (a)引用例には「低融点金属シート」及び「低融点金属シートの製造方法」が記載されている(摘示事項(1)?(3))。 (b)「低融点金属シート」は、熱伝導材として使用可能であり、低融点金属をシート状に成形した基材中に、有機系ポリマーの粒子または繊維が分散したものである(摘示事項(2))。 (c)「低融点金属シートの製造方法」は、Snを5?30重量%含むBi-Sn-In系合金を、60℃?100℃に加熱して融解させ、該融解した合金中に有機系ポリマーの粒子または繊維を分散させた後、シート状に成形するものである(摘示事項(3))。 (d)実施例として、Bi30g、In50g、Sn20gをそれぞれ秤量し、500℃の電気炉内で混練することにより合金化を行い、続いて、合金化によって得られたインゴットを坩堝に入れて100℃の湯煎に挿入し、熱伝導フィラーとしての窒化硼素が充填された有機系ポリマーの粒子と混練し、得られた混練物をシート化して得た低融点金属シートが記載されている。熱伝導フィラー入りの有機系ポリマー粒子は、12ナイロンの樹脂と窒化硼素粒子とを混練し、ペレット化したものを冷凍粉砕機にて数十μmに粉砕し、メッシュにて粒径調整して得たものである(摘示事項(4)、実施例3)。 以上を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「Bi-Sn-In系合金を、加熱して融解させ、該融解した合金中に熱伝導フィラー入りの有機系ポリマーの粒子を分散させた後、シート状に成形する、熱伝導材として使用可能な低融点金属シートの製造方法であって、 熱伝導フィラー入りの有機系ポリマー粒子は、12ナイロンの樹脂と窒化硼素粒子とを混練し、ペレット化したものを冷凍粉砕機にて数十μmに粉砕し、メッシュにて粒径調整して得たものである低融点金属シートの製造方法。」 3.対比 そこで、本件補正発明と引用発明とを対比する。 (1)熱伝導性金属 引用発明の「Bi-Sn-In系合金」は、熱伝導材として使用可能な低融点金属シートの基材であるから、「熱伝導性金属」といえる。 (2)粗いポリマー粒子 本件補正発明の「粗いポリマー粒子」と引用発明の「熱伝導フィラー入りの有機系ポリマー粒子」とは、「ポリマー粒子」である点で一致する。 もっとも、本件補正発明の「粗いポリマー粒子」は、「50μメートルから150μメートルの平均粒子サイズを有する」のに対し、引用発明の「熱伝導フィラー入りの有機系ポリマー粒子」は、「12ナイロンの樹脂と窒化硼素粒子とを混練し、ペレット化したものを冷凍粉砕機にて数十μmに粉砕し、メッシュにて粒径調整して得たものである」点で相違する。 (3)複合材料を形成する工程を含む、方法 引用発明の「低融点金属シートの製造方法」は、Bi-Sn-In系合金を、加熱して融解させ、該融解した合金中に熱伝導フィラー入りの有機系ポリマーの粒子を分散させた後、シート状に成形するものであるから、「熱伝導性金属と、ポリマー粒子とを合わせて、前記熱伝導性金属中に前記ポリマー粒子を有する複合材料を形成する工程を含む、方法」といえる。 そうすると、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「熱伝導性金属と、ポリマー粒子とを合わせて、前記熱伝導性金属中に前記ポリマー粒子を有する複合材料を形成する工程を含む、方法。」の点。 そして、次の点で相違する。 <相違点> 「ポリマー粒子」について、本件補正発明の「粗いポリマー粒子」は、「50μメートルから150μメートルの平均粒子サイズを有する」のに対し、引用発明の「熱伝導フィラー入りの有機系ポリマー粒子」は、「12ナイロンの樹脂と窒化硼素粒子とを混練し、ペレット化したものを冷凍粉砕機にて数十μmに粉砕し、メッシュにて粒径調整して得たものである」点。 4.判断 そこで、上記相違点について検討する。 引用発明のメッシュによる粒径調整は、収量の観点から、粉砕後の粒径である数十μmに揃えるのが当然である。すると、調整後の平均粒子サイズが、数μmや数百μmではなく、数十μmになることは明らかである。 そして、引用発明において、所望により、調整後の平均粒子サイズとして、数十μmの内、50μm以上の部分を選択することは、当業者が任意に為し得る。 効果についてみても、平均粒子サイズの50μメートルにおける臨界的意義を認めることができない。 したがって、本件補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成25年11月22日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし27に係る発明は、平成25年4月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし27に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項17に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1.」に本件補正前の請求項17として記載したとおりのものである。 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記「第2[理由]3.及び4.」で検討した本件補正発明から、発明特定事項である「粗いポリマー粒子」について「50μメートルから150μメートルの平均粒子サイズを有する」との構成を削除したものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]3.及び4.」に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項17に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-07-29 |
結審通知日 | 2014-08-05 |
審決日 | 2014-08-19 |
出願番号 | 特願2010-524931(P2010-524931) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 粟野 正明、日比野 隆治 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 萩原 義則 |
発明の名称 | 放熱材料、該放熱材料を含む電子デバイス、ならびにそれらの調製方法および使用方法 |
代理人 | 林 一好 |
代理人 | 正林 真之 |