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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G06Q
管理番号 1296077
判定請求番号 判定2014-600035  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2015-02-27 
種別 判定 
判定請求日 2014-08-05 
確定日 2014-12-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第5084045号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「施工検査管理システム、携帯情報端末、サーバ、および記録媒体」は、特許第5084045号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号説明書に示す「施工記録・顧客コミュニケーションシステム ARCHITREND Do!Photo」(以下、「イ号物件」という。)が、特許第5084045号発明の技術的範囲に属する、との判定を求めたものである。

第2 本件特許発明
1.本件特許発明の構成
本件特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの以下のものである。なお、「A」?「D」は、分説のために請求人が付した記号であるが、便宜上そのままこれを使用する。

「【請求項1】
A ネットワーク回線に接続可能な通信手段と記憶手段とを備えたサーバと、
前記サーバに、ネットワーク回線を介してアクセスしてデータの送受信をし得る施工業者の携帯情報端末とからなる施工検査管理システムであって、
B 前記サーバは、
B1 顧客から受注した物件明細と前記施工業者へ依頼した工事物件明細情報および施工品質検査項目を管理する物件管理台帳管理手段と、
B2 前記携帯情報端末に送信すべき前記施工業者に依頼した工事物件明細情報および各施工内容毎に設定された施工品質検査項目と、前記携帯情報端末から送信された画像データおよび検査結果とを保存し得る記憶手段とを備え、
C 前記携帯情報端末は、
C1 前記サーバにアクセスして、当該施工業者に依頼した工事物件明細情報および各施工内容毎に設定された施工品質検査項目を全てダウンロードして格納する携帯情報端末の記憶手段と、
C2 プログラムにより施工品質検査項目を順次表示する表示手段と、
C3 プログラムによって起動および撮影条件の設定が制御可能な撮像手段と、
C4 施工品質検査項目に検査内容を写真撮影することが指定されている場合には、前記撮像手段を起動させて写真撮影モードに自動的に移行するとともに、前記撮像手段の撮影条件を規定の条件に自動的に設定するプログラムによる制御手段と、
C5 使用者が検査結果を入力する入力手段とを備え、
D 前記撮像手段で撮影された画像データおよび前記入力手段で入力された施工結果とを前記携帯情報端末から前記サーバに送信して前記サーバの記憶手段に記憶するように構成されていることを特徴とする施工検査管理システム。」

2.本件特許発明の目的及び効果
本件特許発明の目的及び効果は、明細書の特に第【0005】段落及び第【0007】段落の記載、及び明細書全体の開示内容に照らせば、工事完了検査報告書等の業務報告書を、確実に且つ迅速に行うために、検査項目の確実な実施を可能とすることを目的としてなされたものであり、また、本件発明の施工検査管理システムによれば、施工中の当該工事物件で必要な検査項目が携帯情報端末に順次表示されるので、必要な検査を確実に実施させることができ、施工品質が向上するという効果が得られるというものである。

第3 イ号物件
イ号説明書に示された「施工記録・顧客コミュニケーションシステム ARCHITREND Do!Photo」は、以下のとおりである。

「a ネットワーク回線に接続可能な通信手段と記憶手段とを備えたサーバと、前記サーバに、ネットワーク回線を介してアクセスしてデータの送受信をし得る工務店の携帯情報端末とからなる施工記録・顧客コミュニケーションシステムであって、
b 前記サーバは、
b1 顧客から受注した物件明細と前記工務店へ依頼した工事物件明細情報、工事物件毎の工程及び撮影部位を管理する手段と、
b2 前記携帯情報端末に送信すべき前記工務店に依頼した工事物件明細情報および各工事物件毎に設定された工程及び撮影部位と、前記携帯情報端末から送信された画像データおよびコメントとを保存し得る記憶手段とを備え、
c 前記携帯情報端末は、
c1 前記サーバにアクセスして、当該工務店に依頼した工事物件明細情報および各工事物件毎に設定された工程及び撮影部位をダウンロードして格納する携帯情報端末の記憶手段と、
c2 撮影アプリにより物件、工程大項目、工程小項目の順で選択し、撮影部位一覧を表示する表示手段と、
c3 撮影アプリによって起動および初期値(標準)の画像サイズの設定が制御可能な撮像手段と、
c4 一覧表示された撮影部位の中から撮影する部位を選択し、決定ボタンの押下により前記撮像手段を起動させて写真撮影モードに移行するとともに、前記撮像手段の撮影条件を初期値(標準)の画像サイズに自動的に設定するプログラムによる制御手段と、
c5 使用者がコメントを入力する入力手段とを備え、
d 前記撮像手段で撮影された画像データおよび前記入力手段で入力されたコメントとを前記携帯情報端末から前記サーバに送信して前記サーバの記憶手段に記憶するように構成されていることを特徴とする施工記録・顧客コミュニケーションシステム。」

第4 当事者の主張
1.請求人の主張
(1)構成Aについて
両者は、サーバと携帯情報端末とを備えるシステムである点で一致する。(判定請求書(5)本件特許発明とイ号物件との技術的対比、『2』一致点・相違点の説明(なお『』は丸付き数字を示す。)、i))
(2)構成B1について
両者は、サーバが、施主から受注した物件情報と、業者に依頼した工事物件情報及び施工品質検査項目を管理する点で一致する。なお、上述するとおり、イ号物件において、撮影部位が「施工品質検査項目」の意味合いを有する。(判定請求書(5)本件特許発明とイ号物件との技術的対比、『2』一致点・相違点の説明(なお『』は丸付き数字を示す。)、ii))
(3)構成B2について
両者は、サーバが、工事物件情報と、施工品質検査項目と、携帯情報端末により撮影された写真データと、検査結果とを保存する点で一致する。なお、上述するとおり、イ号物件において、撮影された写真データ及び写真データとともに送信されるコメントが「検査結果」としての意味合いを有する。(判定請求書(5)本件特許発明とイ号物件との技術的対比、『2』一致点・相違点の説明(なお『』は丸付き数字を示す。)、iii))
(4)構成C1について
本件特許発明は、携帯情報端末が、サーバからダウンロードした工事物件明細情報および施工内容毎に設定された施工品質検査項目を全て格納する(本件明細書段落[0012]参照)。これに対して、イ号物件においても、上述するとおり、施工内容毎に設定された施工品質検査項目を全てダウンロードして格納する記憶手段を備えている。仍って、両者に差異はない。なお、本件特許発明は、全ての施工品質検査項目の通信頻度がいかなるものであるのか、又は全ての施工品質検査項目を一括にしてダウンロードするか、などに限定されているものではなく、例えば、各施工品質検査項目を要求操作毎にダウンロードして、最終的に全ての施工品質検査項目を全てダウンロードするような形態をも権利範囲に含まれる。(判定請求書(5)本件特許発明とイ号物件との技術的対比、『2』一致点・相違点の説明(なお『』は丸付き数字を示す。)、iv))
(5)構成C2について
本件特許発明は、施工品質検査項目に検査内容を写真撮影することが指定されていない場合(本件明細書段落[0014]参照)、及び施工品質検査項目に検査内容を写真撮影することが指定されている場合(本件明細書段落[0015]参照)のいずれの場合であっても、これらの情報が順番に表示するようにされている。これに対して、イ号物件においても、上述するように、撮影アプリにより、施工品質検査項目が順次表示するようにされている。その結果、両者は、撮り忘れなく撮影を行うことができる。仍って、両者に差異はない。なお、付言すると、本件特許明細書は、施工品質検査項目に検査内容を写真撮影することが指定されていない場合(本件明細書段落[0014]参照)、及び施工品質検査項目に検査内容を写真撮影することが指定されている場合(本件明細書段落[0015]参照)のいずれの場合も含まれており、引例との違いが顕著な実施の形態の一つとして、平成23年2月22日(起案日)付けの拒絶理由通知書に対応する意見書において述べるように、施工品質検査項目に検査内容を写真撮影することが指定されている場合には(本件明細書段落[0015]参照)、次の施工品質検査項目に対する処理に進まない形態とすることで、写真撮影を忘れることを防止できる、という効果を奏する(本件明細書段落[0018]参照)。(判定請求書(5)本件特許発明とイ号物件との技術的対比、『2』一致点・相違点の説明(なお『』は丸付き数字を示す。)、v))
(6)構成C3について
両者は、携帯情報端末が、撮影アプリにより、カメラの起動と撮影条件の設定とを制御されている点で一致する。(判定請求書(5)本件特許発明とイ号物件との技術的対比、『2』一致点・相違点の説明(なお『』は丸付き数字を示す。)、vi))
(7)構成C4について
本件特許発明は、携帯情報端末が、施工品質検査項目に検査内容を写真撮影することが指定されていない場合(本件明細書段落[0014]参照)、及び施工品質検査項目に検査内容が写真撮影することが指定されている場合(本件明細書段落[0015]参照)のいずれも場合であっても、撮影アプリを介してカメラの制御モジュールが自動的に起動するようにされている。これに対して、イ号物件においても、上述するように、撮影部位及びこれに対応する撮影指示の表示を契機として、撮像アプリを介してカメラの制御モジュールが自動的に起動するようにされている。仍って、両者に差異はない。また、本件特許発明及びイ号物件は、いずれも、携帯情報端末が、撮像アプリによって写真撮影モードに移行する際に、OS(オペレーティングシステム)に従い、カメラの制御モジュールを起動させ、予め設定された撮影条件(解像度、明暗調整、オートライトなど)のパラメータを読み出し、読み出したパラメータを引数として設定するようにされている点で差異がない。(判定請求書(5)本件特許発明とイ号物件との技術的対比、『2』一致点・相違点の説明(なお『』は丸付き数字を示す。)、vii))
(8)構成C5について
両者は、検査結果を入力する手段を有する点に差異がない。(判定請求書(5)本件特許発明とイ号物件との技術的対比、『2』一致点・相違点の説明(なお『』は丸付き数字を示す。)、viii))
(9)構成Dについて
両者は、携帯情報端末から送信された検査結果を、サーバが受信して記憶し、一元管理する旨に差異がない。(判定請求書(5)本件特許発明とイ号物件との技術的対比、『2』一致点・相違点の説明(なお『』は丸付き数字を示す。)、ix))
(10)以上のとおり、イ号説明書に示す施工検査管理システムは、本件特許発明の全ての発明特定事項を備えることから、本件特許発明の技術的範囲に属する。(判定請求書(5)本件特許発明とイ号物件との技術的対比、『3』一致点・相違点の説明(なお『』は丸付き数字を示す。))
2.被請求人の主張
(1)構成C1について
イ号は、一覧表示されている各階層の項目を選択する毎に、その都度サーバとの通信を行い、選択された項目に対応する下位階層の項目をダウンロードして一覧表示するものであり、物件一覧表示画面において、いずれかの物件を選択することで、当該物件に含まれる工程大項目-工程小項目-撮影部位の全てが一括してダウンロードされるものではない。(判定請求答弁書第3頁第12行-第7頁第4行)
(2)構成C2について
判定請求人は、平成23年12月22日付けの拒絶理由通知に対する意見書において、「特に、本願請求項1に記載されている表示手段は、「施工検査項目を順次表示する」ものでありますが、「順次表示する」とは、現在表示されている施工検査項目に対する検査結果が入力されない場合や、現在要求されている写真撮影がなされない場合には、次の施工検査項目に対する処理には進まない形態を示しています。従いまして、前述したように、要求された写真撮影を忘れることを防止することができるのです。」と主張しており、構成C2「プログラムにより施工品質検査項目を順次表示する表示手段と、」は、(i)現在表示されている施工検査項目に対する検査結果が入力されない場合や、現在要求されている写真撮影がなされない場合には、次の施工検査項目に対する処理には進まない形態、であり、(ii)必要な施工品質検査項目を一項目ずつ順番に表示、するものを意味している。
イ号は、写真撮影をする場合に、一覧表示された各撮影部位の順番に関わりなく、任意の撮影部位を自由に選択して撮影することができる。
また、イ号は、撮影済みか否かの状況に関係なく、階層化された各項目の各階層を自由に選択し、更に、同一階層内での各項目を任意に選択し、撮影することが可能であり、即ち、(i)「写真撮影がなされない場合には、次の施工検査項目に対する処理には進まない形態」で項目を表示してはいない。
また、イ号は、「物件一覧」、「工程大項目一覧」、「工程小項目一覧」、「撮影部位一覧」と記載されている通り、各階層において選択されている項目を一覧表示するものであり、 即ち、イ号は、(ii)「必要な施工品質検査項目を一項目ずつ順番に表示」していない。(判定請求答弁書第7頁第5行-第12頁第11行)
(3)構成C4について
(ア)判定請求人は、平成23年12月22日付けの拒絶理由通知に対する意見書において、「・・・本願では、以上のように撮像手段の起動と設定を自動的に制御するので、前述したように、写真の取り忘れを防止でき、写真の品質も統一されたものとすることができるのです。」と主張しており、すなわち、撮像手段の起動が「自動」だから「写真の取り忘れを防止でき」るのであって、「検査担当者が写真撮影アイコンをクリックする場合」すなわち、撮像手段の起動を検査担当者の操作に委ねた場合には、写真撮影アイコンのクリックを忘れたり、他の操作を行ってしまう可能性が十分あり「写真の取り忘れを防止」することはできない。
構成C4における、「撮像手段を起動させて写真撮影モードに自動的に移行する」は、「ユーザによるアイコンをクリックする等の操作手続きを経」て写真撮影モードに移行する場合を含まない。すなわち、「ユーザによるアイコンクリック等の操作手続きを経ることなく、プログラムが撮像手段を起動させて写真撮影モードに自動的に移行する」ことを内容としている。
イ号説明書の甲第4号証の第3頁には、操作の解説として『2』「ケータイの真ん中のボタン(決定ボタン)を押します。」、『3』「カメラが起動したら、写真を撮影します。」(『』は丸付き数字を示す。)と記載されているように、画面上の決定ボタンを押すというユーザ操作に基づいて、カメラが起動するものである。即ち、イ号は、ユーザ操作をする(決定ボタンを押す)ことなく、自動的にカメラが起動することはない。(判定請求答弁書第12頁第12行-第16頁第4行)
(イ)構成C4における「規定の条件」には、使用者が任意に設定、変更可能な撮影条件を含まない。
イ号は、乙第6号証の画面遷移に示すように、(i)において撮影部位「根切り掘削詳細」に対して「640×480」であったカメラの撮影サイズを、(ii)いったん別の撮像部位「防湿フイルムの措置状態」で「128×96」に変更し、(iii)再度元の撮影部位「根切り掘削詳細」に戻って撮像サイズを確認すると、(i)で確認した元の撮像サイズ「640×480」ではなく、直前に変更した撮像サイズ「128×96」となっている。このようにイ号は、撮影部位「根切り掘削詳細」等の各項目に対応して撮像サイズが固定(「640×480」)されているものではなく、直前に変更された撮影サイズ(「128×96」)となっており、また、ユーザは撮影サイズを任意に変更できるものである。
よって、構成C4の「撮像手段の撮影条件を規定の条件に自動的に設定」は、イ号と一致しない。 (判定請求答弁書第16頁第5行-第20頁第15行)
(4)構成C5について
本件特許発明の構成B2において「前記携帯情報端末に送信すべき前記施工業者に依頼した工事物件明細情報および各施工内容毎に設定された施工品質検査項目と、前記携帯情報端末から送信された画像データおよび検査結果とを保存し得る記憶手段とを備え」と特定しているように、携帯情報端末から送信されるのは「画像データ」と「検査結果」であり、「検査結果」は「画像データ」を含まない。
また、甲第1号証(本件特許公報)の【0016】では、「・・・S7においては、前記撮影されたデジタル画像データもしくはJPEG再圧縮された画像データが、各検査項目の検査結果と共に前記記憶手段22の一時保存エリアに保存される。・・・」と記載されており、実施形態の説明においても「画像データ」と「検査結果」は別項目として記載されている。従って、構成C5における「使用者が入力する検査結果」は、「画像データ」を含むものではなく、判定請求人の主張「撮影された写真データ及びコメントが「検査結果」であり」は誤りである。
また、構成C5における「入力手段」の入力対象は、「使用者が(基準に照らして)適不適や異常・不正の有無などをしらべた結果」であり、「コメント」は含まれない。
イ号は、撮影した画像データに対するコメントやメモの入力が可能であるが、例えば、「図面では記載がありませんでしたが、指示があったので、この場補に入れています。」などの自由な記載、入力を行うものであり、基準に照らして調べた検査結果の入力欄ではない。(判定請求答弁書第20頁第16行-第22頁第20行)
(5)以上のとおり、イ号は、本件特許発明のC1、C2、C4、C5の各構成を充足しないので、本件特許発明の技術的範囲に属しない。(判定請求答弁書第22頁第21行-第22頁第24行)

第5 対比・判断
1.構成A、構成B及び構成Cについて
イ号物件の構成aは、サーバと携帯情報端末がネットワークを介してデータの送受信を行うシステムである点で本件特許発明と共通するものである。
また、イ号物件における工務店は、一般に工事を請け負う施工業者であり、また、イ号物件の送受信する対象のデータは、構成b1及びb2で示されるように該工務店が受注した物件明細と前記工務店へ依頼した工事物件明細情報、工事物件毎の工程及び撮影部位であるが、イ号説明書の甲第4号証の第5頁に示されるように、例えば撮影部位として「コンクリート品質検査」及び工程として「完了検査」も含まれており、これらの検査結果も記録管理されるものであるから、イ号物件のシステムも「施工検査管理システム」であるといえる。
したがって、イ号物件は構成A、構成B及び構成Cを充足する。
2.構成B1について
イ号物件の構成b1は「顧客から受注した物件明細と前記工務店へ依頼した工事物件明細情報、工事物件毎の工程及び撮影部位を管理する手段」であり、この工程や撮影部位には検査結果も含まれるものであるから、当該手段も「物件管理台帳管理手段」であるといえる。
したがって、イ号物件は構成B1を充足する。
3.構成B2、構成C5及び構成Dについて
本件特許発明は、構成B2、構成C5及び構成Dによると、「施工品質検査項目」に対して「携帯情報端末」では、「検査結果」が入力されるとともに「検査内容を写真撮影」し、当該「検査結果」及び「画像データ」をサーバに送信し、サーバでは送信された「画像データ」及び「検査結果」を記憶手段に記憶するものであるが、構成C4の「施工品質検査項目に検査内容を写真撮影することが指定されている場合には、前記撮像手段を起動させて写真撮影モードに自動的に移行する」と記載しているように、写真撮影が不要な施工品質検査項目が存在することから、「検査結果」は必須の入力データであり、また、「検査結果」と「画像データ」は別々のデータであることは明らかである。
これに対して、イ号物件では、指定した撮影部位に対する写真が撮影され、「画像データ」がサーバに送信されて記憶手段に記憶されるものであるから、イ号物件の「画像データ」は、本件特許発明の「画像データ」に相当するものとはいえるものの、当該「画像データ」が「検査結果」まで含んでいるとは認められない。
また、イ号物件は、「施工記録・顧客コミュニケーションシステム」として、各工程に対応した写真を撮影して進捗管理や施主に対する報告を行うものであり、写真が必須の入力データであるシステムであると認められる。また、イ号物件では撮影した写真に対するコメントの入力が可能であり、このコメントとして「検査結果」に関する内容を入力することも可能ではあるが、そもそもコメント入力自体が任意のものであり、本件特許発明の必須の入力データである「検査結果」とは機能・性質が異なるものである。
したがって、イ号物件は構成B2、構成C5及び構成Dを充足しない。
4.構成C1について
イ号物件では、一覧表示されている各階層の項目を選択する毎に、その都度サーバとの通信を行い、選択された項目に対応する下位階層の項目をダウンロードして一覧表示するものであるとしても、最終的には指定された全てのデータがダウンロードされることになるものである。
したがって、イ号物件は構成C1を充足する。
5.構成C2について
構成C2でいう「施工品質検査項目を順次表示する」とは、明細書の第【0013】段落の「使用者がメニューの中から、「未報告物件」の一覧表示を指定すると当該携帯情報端末2の画面には、S3において、未報告物件一覧が表示される。一覧の中からこれから検査および検査報告を行う物件(例えば「○○邸ユニットバス設置工事」)を選択すると、図5に示したように、その詳細情報が表示され、S4において、検査内容を入力する。ここでは、当該物件に必要な施工品質検査項目が一項目ずつ順番に表示され、それぞれの項目に対して検査確認の入力が促され、検査結果の合否の確認の入力が要求される。これらの要求に応じて、担当者は、携帯情報端末2の上下左右キー・ソフトキー及びエンターキーを操作することで入力することが可能となっており、簡単な操作性が確保されている。」との記載からも、入力対象項目である施工品質検査項目を一項目ずつ順次表示することであり、これにより必要な施工品質検査項目の全てを使用者の目に触れさせ、必要な検査を確実に実施させるという本件特許発明の目的及び効果を達成するものである。
これに対し、イ号物件の構成c2は「撮影アプリにより物件、工程大項目、工程小項目の順で選択し、撮影部位一覧を表示する表示手段」であり、撮影対象である「撮影部位」が一覧で表示されており、本件特許発明でいう一項目ずつ「順次表示する」ものでないことは明らかである。
また、仮に上記構成C2の「施工品質検査項目を順次表示する」ことが、明細書の第【0014】段落の「例えば戸建て住宅における検査実施入力作業の場合の当該携帯情報端末2の画面の例を、図6に示して説明する。この画面のように、当該物件に必要な施工品質検査項目が一項目ずつ順番に表示され、それぞれの項目に対して検査確認の質問が表示され、その質問番号が「No表示」の欄に表示される。また、検査を実施した数が検査数の欄に表示される。画面の「部位」の欄には、検査部位として例えば「事前点検」と表示される。「検査項目」の欄には、質問内容が例えば「断熱内壁枠・ボードが取り付けられているか。」と表示され、その下の入力欄には例えば「実施」などの判定項目を入力することができる。前記質問内容は当該携帯情報端末2側では編集は不可能であるが、表示枠を拡大もしくは縮小することは可能である。この「検査項目」の入力欄には、その他「未実施」、「範囲外」などの判定項目を入力することができる。この場合の入力は、一覧表示された「判定項目」の中らか選択するだけであるので現場での作業性が良い。「判定項目」の欄の横には「写真」という写真撮影アイコンが表示されているので、このアイコンをクリックまたは選択指定することで、デジタルカメラ21が自動的に起動する。このとき、デジタルカメラ21の撮影条件は後述するように自動的に設定される。写真データが既に保存されている場合には表示される。さらに下の欄には「判定基準(検査方法)」が、例えば「仕様通りの事」と表示される。すでに検査した実績があれば「前回検査」の欄に表示される。なお、検査実施日は、以上のような検査項目に対する入力を行った日データを、当該携帯情報端末2のシステムから取得して、自動的に入力される。表示内容が1画面に収まらない場合にはページスクロールさせることができる。そして、当該検査項目についての入力が終了した場合には「保存」アイコンをクリックもしくは選択してデータを保存し、次の検査内容へ進むことができる。」との記載から、現在の「施工品質検査項目」について、「検査結果」が入力されるか、または、検査内容を写真撮影することが指定されている場合にはさらに写真が撮影され、入力されたデータの保存が指示されて保存完了すると、次の「施工品質検査項目」が自動的に表示される形態とすること、つまり必要な入力が完了すると次の「施工品質検査項目」が自動的に表示されることにより一項目ずつ順次表示することであり、これにより必要な検査を確実に実施させるという本件特許発明の目的及び効果を達成するものであるとしても、イ号物件では撮影対象である「撮影部位」が一覧で表示され、一覧の中から任意に「撮影部位」を選択して撮影するものであり、また、撮影が完了しても次の「撮影部位」が自動的に選択されて表示されるものではなく、再度任意に「撮影部位」を選択して撮影するものであるから、この場合であっても本件特許発明でいう必要な入力が完了することにより「順次表示する」ものでないことは明らかである。
したがって、イ号物件は構成C2を充足しない。
6.構成C3について
イ号物件のc3は「撮影アプリによって起動および初期値(標準)の画像サイズの設定が制御可能な撮像手段」であって、この「画像サイズ」も「撮影条件」の1つと認められる。
したがって、イ号物件は構成C3を充足する。
7.構成C4について
本件特許発明の構成C4では、撮影手段を起動する条件として「施工品質検査項目に検査内容を写真撮影することが指定されている場合には」と規定しているが、イ号物件では前記「3.構成B2、構成C5及び構成Dについて」で述べたように写真撮影は必須であり、このような条件が存在しないことは明らかである。
また、本件特許発明の構成C4の「施工品質検査項目に検査内容を写真撮影することが指定されている場合には、前記撮像手段を起動させて写真撮影モードに自動的に移行する」ことは、必要となる写真撮影を確実に実施させるために、使用者が撮影手段を起動させる操作をすることなしに、自動的に起動させるものであるが、イ号物件では構成c4で示すように使用者の「決定ボタンの押下」によ撮影手段を起動させるものであるから、上記「写真撮影モードに自動的に移行する」ものではない。
なお、本件特許発明の構成C4の「前記撮像手段の撮影条件を規定の条件に自動的に設定する」について、イ号物件においても使用者が意識的に変更しない限り、初期値(標準)として画像サイズが自動的に設定されるものであることから、この点については相違しない。
したがって、イ号物件は構成C4を充足しない。
8.まとめ
上記1?7で述べたように、イ号物件は本件特許発明の構成B2、C2、C4、C5、Dにおいて構成が相違するものであるから、イ号物件は本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、イ号説明書に示されるイ号物件である「施工記録・顧客コミュニケーションシステム ARCHITREND Do!Photo」は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2014-12-15 
出願番号 特願2008-204221(P2008-204221)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 貝塚 涼  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 金子 幸一
小田 浩
登録日 2012-09-14 
登録番号 特許第5084045号(P5084045)
発明の名称 施工検査管理システム、携帯情報端末、サーバ、および記録媒体  
復代理人 岡田 充浩  
代理人 川井 隆  
代理人 杉本 勝徳  
代理人 仲野 均  

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