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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H04N
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04N
管理番号 1296349
審判番号 無効2012-800010  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-02-14 
確定日 2014-12-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4094831号「車両用監視装置」の特許無効審判事件についてされた平成24年 7月20日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の決定(平成24年(行ケ)第10301号、平成24年11月9日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第4094831号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第一 経緯

1 本件特許
本件特許に係る経緯は、概要、以下のとおりである。
出願日 平成13年8月10日
(特願2001-243849号)
設定登録日 平成20年3月14日
(請求項の数:5、
権利者:日本精機株式会社、有限会社ヒューマ
ンリンク)

2 本件請求
本件請求に係る経緯は、概要、以下のとおりである。
(1)クラリオン株式会社(以下「請求人」という。)は、平成24年2月14日に請求項1ないし5に係る発明について特許無効審判を請求した。
(2)特許権者である日本精機株式会社、有限会社ヒューマンリンク(以下「被請求人」という。)は、平成24年4月27日付けで答弁書を提出した。
(3)請求人は、平成24年6月11日に口頭審理陳述要領書を提出し、被請求人は、平成24年6月25日に口頭審理陳述要領書を提出し、平成24年7月2日に口頭審理が行われた。
(4)平成24年7月20日付けで請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする旨の審決がなされた。
(5)これに対し、被請求人は、平成24年8月22日に審決の取消しを求める訴え(平成24年(行ケ)第10301号)を知的財産高等裁判所に提起し、その後90日の期間内である同年10月26日に訂正審判を請求したところ、当該裁判所は、平成24年11月9日付けで、平成23年法律第63号による改正前特許法第181条第2項の規定により審決の取り消し決定をした。
(6)その後、特許法第134条の3第2項の規定により指定された期間内である平成25年2月1日に訂正請求書が提出され、これに対し、請求人は平成25年3月14日付けで弁駁書を提出した。
(7)平成25年3月19日付け審尋に対し、被請求人は、平成25年4月22日付けで回答書を提出した。

第二 訂正の可否に対する判断

1 訂正の内容
上記2(6)の訂正請求書に添付された訂正明細書によると、訂正請求された訂正(以下「本件訂正」という。)は、次のとおりである。

(1)請求項1に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段」とあるのを、「ドアミラーに配設されており、前記ドアミラーよりも前にある前輪近傍を撮像する撮像手段」に訂正する。

イ 訂正事項2
【0005】に「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段」とあるのを、「ドアミラーに配設されており、前記ドアミラーよりも前にある前輪近傍を撮像する撮像手段」に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前輪近傍の路面の画像」とあるのを、「前輪近傍の路面及び車両の画像」に訂正する。

エ 訂正事項4
【0005】に「前輪近傍の路面の画像」とあるのを、「前輪近傍の路面及び車両の画像」に訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「・・・画像を含む前記第一の画像」とあるのを、「・・・画像を含むが、車両先端が写っていない前記第一の画像」に訂正する。

カ 訂正事項6
【0005】に「前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像」とあるのを、「前輪近傍の路面の画像を含むが、車両先端が写っていない前記第一の画像」に訂正する。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項1に「長さ方向の距離」とあるのを、「車両先端からの長さ方向の距離」に訂正する。

ク 訂正事項8
【0005】に「長さ方向の距離」とあるのを、「車両先端からの長さ方向の距離」に訂正する。

ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項1に「長さ方向の距離を示す第二の指標」とあるのを、「長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標」に訂正する。

コ 訂正事項10
【0005】に「長さ方向の距離を示す第二の指標」とあるのを、「長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標」に訂正する。

(2)請求項3に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3の最初に、「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と、を備えた車両用監視装置であって、前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と、前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と、を設け、」を追加し、「特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置」との記載を「特徴とする車両用監視装置」に訂正する。

イ 訂正事項2
【0007】における「また、本発明は、」のあとに、「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と、を備えた車両用監視装置であって、前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と、前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と、を設け、」を追加する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1における「前記第二の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段」の前に、「前記直線は、前記幅方向に沿って延び、」を追加する。

エ 訂正事項4
【0007】における「前記第二の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段」の前に、「前記直線は、前記幅方向に沿って延び、」を追加する。

(3)請求項4に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項4の最初に、「前記第一の指標及び前記第二の指標は、前記路面上に位置するように前記表示手段に表示され、」を追加する。

イ 訂正事項2
【0008】における「また、本発明は、」のあとに、「前記第一の指標及び前記第二の指標は、前記路面上に位置するように前記表示手段に表示され、」を追加する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4の上記訂正事項1で追加した構成のあとに、「前記車両の画像は、前記ドアミラーよりも前にある前輪の画像を含み、」を追加する。

エ 訂正事項4
【0008】の上記訂正事項2で追加した構成のあとに、「前記車両の画像は、前記ドアミラーよりも前にある前輪の画像を含み、」を追加する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4の上記訂正事項3で追加した構成のあとに、「前記第二の指標は、車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置されており、」を追加する。

カ 訂正事項6
【0008】の上記訂正事項4で追加した構成のあとに、「前記第二の指標は、車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置されており、」を追加する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張、変更の存否
(1)請求項1に係る訂正
ア 訂正事項1について
特許請求の範囲の請求項1に「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段」とあるのを、「ドアミラーに配設されており、前記ドアミラーよりも前にある前輪近傍を撮像する撮像手段」に訂正する訂正事項1は、訂正前の請求項1の「前輪近傍」との発明を特定する事項について、「前記ドアミラーよりも前にある前輪近傍」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
また、明細書の段落【0011】、【0012】の記載及び図7からみて、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項3、訂正事項5
訂正事項3、訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項1に「前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像」とあるのを、「前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両先端が写っていない前記第一の画像」に訂正する訂正事項であり、訂正前の請求項1の「前輪近傍の路面の画像を含む」との発明を特定する事項について、「前輪近傍の路面及び車両の画像を含む」と限定するものであり、訂正前の請求項1の「前記第一の画像」を「車両先端が写っていない前記第一の画像」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
また、明細書の段落【0015】の記載及び図1からみて、訂正事項3、訂正事項5は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項1に「長さ方向の距離」とあるのを、「車両先端からの長さ方向の距離」に訂正する訂正事項7は、訂正前の請求項1の「長さ方向の距離」との発明を特定する事項について、「車両先端からの長さ方向の距離」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
また、明細書の段落【0015】の記載からみて、訂正事項7は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項1に「長さ方向の距離を示す第二の指標」とあるのを、「長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標」に訂正する訂正事項9は、訂正前の請求項1の「長さ方向の距離を示す第二の指標」との発明を特定する事項について、「長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
また、明細書の段落【0015】には、「図1は、表示器28の画面28aに表示された画像の一例を示すものである。31は撮像画像(第一の画像)であり、この撮像画像31はCCDカメラ15で撮像した車両の画像31aや前輪近傍の路面の画像からなる。32は車両からの距離を示す指標である距離指標画像(第二の画像)であり、この距離指標画像32は、車両側面からの距離を示す距離ライン32a(第一の指標)と、車両先端からの距離を示す距離ライン32b(第二の指標)と、距離ライン32aの傍らに表示される数字32cとからなるものである。」と記載され、図1の32bは直線で描かれている。そうすると、「第二の指標」は、「長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す」ものといえ、訂正事項9は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求人は、平成25年3月14日付け弁駁書において、本件明細書にはこの「指標」が直線であることは記載されておらず、単に、図1などにおいて、直線状(長方形状)の車両に関して指標の直線近似が記載されているのみであり、本件明細書の記載からは、車両形状に合わせて車両先端からの距離を示したものが訂正発明でいう「指標」であることが理解されるのみであって、当該「指標」が直線であることは理解できず、「障害物までの幅方向の距離及び長さ方向の距離を把握することができる」との効果の記載からすれば、当該「指標」は車両形状に合わせた形状にすると理解することが合理的といえる、(弁駁書5頁)と主張する。
しかしながら、「距離ライン32b」の「ライン」という文言の概念に「直線」が含まれることは明らかであり、図1の32bは直線で描かれており、「第二の指標」が「直線」であることは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、訂正事項9が願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるといえ、請求人の主張は採用できない。

オ 訂正事項2、訂正事項4、訂正事項6、訂正事項8、訂正事項10
訂正事項2、訂正事項4、訂正事項6、訂正事項8、訂正事項10は、訂正事項1、訂正事項3、訂正事項5、訂正事項7、訂正事項9での請求項1の訂正と明細書の段落【0005】の記載との整合をとるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項3に係る訂正
ア 訂正事項1、訂正事項3
訂正事項1、訂正事項3は、訂正前の引用形式の請求項3を独立形式にし、「長さ方向の距離を示す第二の指標」を「車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標」に訂正し、「前記直線は、前記幅方向に沿って延び、」を追加する訂正である。
「長さ方向の距離を示す第二の指標」との発明を特定する事項について、「車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標」と限定するものであり、さらに、「前記直線は、前記幅方向に沿って延び、」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
また、明細書の段落【0015】には、「図1は、表示器28の画面28aに表示された画像の一例を示すものである。31は撮像画像(第一の画像)であり、この撮像画像31はCCDカメラ15で撮像した車両の画像31aや前輪近傍の路面の画像からなる。32は車両からの距離を示す指標である距離指標画像(第二の画像)であり、この距離指標画像32は、車両側面からの距離を示す距離ライン32a(第一の指標)と、車両先端からの距離を示す距離ライン32b(第二の指標)と、距離ライン32aの傍らに表示される数字32cとからなるものである。」と記載され、図1の32bは直線で描かれている。そうすると、「第二の指標」は、「車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す」ものといえ、「前記直線は、前記幅方向に沿って延び、」ているといえ、訂正事項1、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2、訂正事項4
訂正事項2、訂正事項4は、訂正事項1、訂正事項3での請求項3の訂正と明細書の段落【0007】の記載との整合をとるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)請求項4に係る訂正
ア 訂正事項1、訂正事項3、訂正事項5
請求項4は、請求項1を引用するものであって、請求項1に係る訂正は、上記(1)のとおり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、訂正事項1、訂正事項3、訂正事項5は、発明を特定する事項である「第一の指標」及び「第二の指標」、「車両の画像」、「第二の指標」を「前記第一の指標及び前記第二の指標は、前記路面上に位置するように前記表示手段に表示され、」、「前記車両の画像は、前記ドアミラーよりも前にある前輪の画像を含み、」、「前記第二の指標は、車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置されており、」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
訂正事項1は、図1からみて、訂正事項3は、段落【0012】の記載及び図7からみて、訂正事項5は、段落【0015】の記載及び図1からみて、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2、訂正事項4、訂正事項6
訂正事項2、訂正事項4、訂正事項6は、訂正事項1、訂正事項3、訂正事項5での請求項4の訂正と明細書の段落【0008】の記載との整合をとるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

以上のことから、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び同法同条第5項で準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第三 本件特許発明

上記第二で示したとおり、本件訂正は認められるので、本件特許に係る請求項1から5までの発明(以下、各請求項に係る発明を請求項の番号を用いて「本件特許発明1」等という。)は、上記「第一2(6)」の訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1から請求項5に記載された下記のとおりのものである。


【請求項1】
ドアミラーに配設されており、前記ドアミラーよりも前にある前輪近傍を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と、を備えた車両用監視装置であって、
前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両先端が写っていない前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と、
前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と、を設けたことを特徴とする車両用監視装置。
【請求項2】
前記第一の指標及び前記第二の指標は、夫々複数のラインを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項3】
ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と、を備えた車両用監視装置であって、
前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と、
前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と、を設け、
前記直線は、前記幅方向に沿って延び、
前記第二の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段を有することを特徴とする車両用監視装置。
【請求項4】
前記第一の指標及び前記第二の指標は、前記路面上に位置するように前記表示手段に表示され、
前記車両の画像は、前記ドアミラーよりも前にある前輪の画像を含み、
前記第二の指標は、車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置されており、
前記表示位置調整手段は、前記第二の画像を上下左右に移動させる操作スイッチを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項5】
前記表示位置調整手段は、前記第二の画像の角度を調整することを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置

第四 当事者の主張

1 請求
(1)請求の趣旨
特許第4094831号の請求項1乃至5に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。
との審決を求める。

(2)請求の理由(概要)
本件特許の請求項1?5に係る発明は、いずれも、その出願前に日本国内において頒布された甲第2号証に記載された発明と甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
また、本件特許の請求項1?5に係る発明は、いずれも、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていないものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(3)請求の理由の要点
(審判請求書)
ア 無効理由1?進歩性欠如
本件特許の請求項1?5に係る発明は、いずれも、甲第2号証に記載された発明と甲第3号証に記載された発明及び周知技術(甲第4号証?甲第7号証)に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

イ 無効理由2?記載不備(特許法第36条第6項第1号違反)
本件発明(本件発明1?5)では、表示位置調整手段が「(車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する)第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」ものとされているが、このような発明は本件明細書には記載されていないから、本件発明は特許法第36条第6項第1号(いわゆる、「サポート要件」)に違反する。
本件明細書が開示している表示位置調整手段は、「距離指標画像32及び車両指標画像33」を上下左右に移動させ、「車両指標画像33」を「車両の画像31に一致させて前記画面における第2の画像の位置を調整する」ものであって、「距離指標画像32」を「上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」発明は記載されておらず、上記で引用した明細書の記載からすれば、「車両指標画像33」を「上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」発明が記載されているといえる。
したがって、本件発明はサポート要件に違反する。
本件発明がサポート要件に違反している点をより具体的に述べると、上記のとおり、本件明細書では、位置合わせの手段としては「距離指標画像32及び車両指標画像33を上下左右に移動させ、車両指標画像33を車両の画像31に一致させて前記両面における第2の画像の位置を調整する」手段しか開示されていないところ、出願経過における被請求人の主張によれば、本件発明は、例えば、「目印となる物体を前輪から50cmの位置の路面において、その物体の画像を画面28aで見ながら50cmを示す距離ライン32aを合わせることにより、距離指標画像32の表示位置を調整する」ような手段さえも含む発明となっている。しかるところ、本件明細書にこのような手段を含む発明が開示されていないことは明らかであるから、本件発明はサポート要件に違反する。

(陳述要領書)
ウ 甲第3号証の図16には「前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像」が開示されており、また、段落【0066】や図16に記載されている「距離線64?66」(とりわけ66)が「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する第二の画像」に該当するので、甲第3号証には「前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する第二の画像」が開示されている。
甲第3号証の段落【0066】では、符号64?66が「車両61と車両11との間の間隔の目安となる距離線」であることが明記されており、また、段落【0018】には「前記カメラCFL、CFR、CML、CMR、CRL、CRRによって得られた画像の画像データを画像処理する画像処理装置を配設し、該画像処理装置によって間接的に車両11と障害物との距離を検出することもできる。」とも記載されており、さらに、図16では、例えば、符号66とともに「15cm」として距離が示されている。
以上からすれば、図16に示された距離線64?66は、被請求人が主張するような単なる「車両11の輪郭を模した曲線」などではなく、車両11から車両の幅方向、長さ方向あるいは左斜め前方を含んだ、車両11から周囲までの一定の距離(例えば以下の図の66であれば15cmの距離)を示した曲線を画像上に表示した線(遠近法の関係で長さの見え方は異なる)であることが明らかである。そして、距離線66などは、被請求人が指摘する車両の左斜め前方方向の距離のみを示すものではなく、車両の幅方向の距離及び長さ方向の距離をも示しているのであるから、これが本件発明にいう「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する第二の画像」に該当することは明らかである。
なお、被請求人は当該「距離線」が車両61との距離(左斜め前方方向の距離)のみを問題としているかのように主張しているが、上記のとおり、距離線66などが車両の幅方向や長さ方向の距離をも示していることは図16自体から明らかであるうえ、前述のように、段落【0018】には「前記カメラCFL ・ ・ ・によって得られた画像の画像データを画像処理する画像処理装置を配設し、・・・車両11と障害物との距離を検出することもできる。」とも記載されており、また、段落【0064】には「図16は本発明の実施の形態における障害物回避表示処理によって形成される画像の第2の例を示す図である。」として、この技術の目的が隣接する車両との衝突回避だけではなく、広く「障害物回避」を目的にしていることが明記されている。

エ 被請求人は、相違点1について、
・ 甲2発明と甲3発明とでは、得られる撮影画像(カメラ画像)が全く異なり、甲2発明における撮影画像には、甲3発明における「左前端部分を上から撮像した画像」が含まれない。
よって、甲2発明における撮影画像に距離線64?66(甲3発明)を表示する場合には、その形状などを甲2の撮影画像に合わせて変更する必要がある。
・ 甲第3号証は、車両の左斜め前方方向の距離を車両の左前端部分の輪郭線で示す技術思想しか示していないため、甲2発明において、距離線64?66を構成要件Cの「第二の画像」のように表示することは容易ではない。
などと主張している。
しかしながら、カメラを取り付ける位置や車両が異なれば、その取り付け位置や撮影方向の変化により、撮影画像が異なるものとなることは当たり前であって、撮影画像に応じて、距離線の表示態様を変えることは、例えば、甲3発明をその実施例中の車両11とは異なる車両に適用した際、あるいは、本件発明をその実施例に記載された車両とは異なる車両に適用した際にも必要なことである。
被請求人が主張するとおり甲3発明と甲2発明とで撮影画像がある程度変化するとしても、これは上記のように搭載車両を変更した場合などにおける撮影画像の変化の一態様に過ぎないのであるから、甲2発明の撮影画像に合わせて甲3発明の距離線のような「第二の画像」を表示させることは、当業者が適宜行う単なる設計的事項に過ぎないことが明らかであって、そこには何の困難性もない。

オ 請求人が「ある画像に別の画像を重ね合わせて合成表示することにより両者の距離(位置関係)を表示する場合において、画面上の両者の位置がずれた場合に備え、画像の位置を調整できるようにすることは必ず必要な技術的事項(備えていないことが有り得ないほど当然の技術)である」と主張したのは、このような技術は、特定の文献を示すまでもなく、技術分野を問わないごく当たり前の技術(周知技術以前の問題)であるという事実を説明したものであって、このような技術が「周知技術(被請求人が主張しているのは、特定の技術分野における周知技術との意味であると思われる。)であるから、必ず必要な技術的事項である」としているのではない。
そして、「ある画像に別の画像を重ね合わせて合成表示することにより両者の距離(位置関係)を表示する場合において、画面上の両者の位置がずれた場合に備え、画像の位置を調整できるようにすることが必ず必要な技術的事項(備えていないことが有り得ないほど当然の技術)」であれば、この点は実質的に甲第3号証に開示されていることになるし、仮に、甲第3号証に記載されているとまではいえないとしても、この点は甲第4号証?甲第6号証に示され、また、被請求人も認めるとおりの周知技術であるから、これを甲2発明、甲3発明に組み合わせることは極めて容易である。

カ 被請求人は、相違点2を解消するためには、甲2発明に対して、2段階の変更を施さなければならず、甲2発明に技術Aを適用するための課題と技術Aに技術Bを適用するための課題とは異なるため、甲2発明に適用した技術Aにさらに技術Bを適用することは、当業者が容易に発明できる範躊を超えている、などと主張しているが、被請求人の当該主張は極めて抽象的なものであって、本件において、甲2発明に甲3発明及び周知技術を組み合わせることの困難性を具体的に主張するものとはなっていない。
本件における相違点2は、上記オで述べたように、甲3発明に実質的に開示されているといってよい程度の内容であって、このように考えた場合には、甲2発明に甲3発明を組み合わせるだけのことに過ぎないから、「甲2発明に技術Aを適用し、さらに、技術Aに技術Bを適用する」ことにさえならない。
また、仮に、相違点2が甲3発明に開示されているとまではいえないとしても、この点は技術分野を問わずに周知・慣用されている技術であり、また、本件発明のような車両にカメラを取付け、そのカメラ画像に距離を表示するとの技術分野のみを取り上げたとしても、被請求人自身が周知技術であることを認めているのであるから、せいぜい、このような技術分野の発明である甲2発明に、同じ技術分野に属する「甲3発明に周知技術を適用した技術」を組み合わせるだけのことであって、このことに何の困難性もないことは明らかである。

キ 被請求人は、(a)甲第4号証などには画像の位置を調整するときに、画像を上下方向に移動させる思想しか開示されていないとし、側方前部監視カメラに適用する際には左右方向の調整も必要となることは自明であるとした請求人の主張には根拠がないとし、さらに、(b)甲第4号証に記載された技術を左右方向に適用した場合には、すでに別の技術になっている、などとしている。
しかしながら、いずれの主張にもまったく根拠がない。
まず、上記(a)の主張については、被請求人も認めるとおり、甲第4号証などからすれば、「ある画像に別の画像を重ね合わせて合成表示することにより両者の距離(位置関係)を表示する場合において、画面上の両者の位置がずれた場合に備え、画像の位置を調整できるようにすること」が周知技術であることが示されているといえる。ここで、後方確認カメラであれば、画像の位置のずれが前後方向(表示画面上では上下方向)にしか生じないため、「画像の位置を調整」するには前後方向(表示画面上では上下方向)のみを調整すれば足りるが、側方前部監視カメラでは、車両の長さ方向(前後方向)のみならず、幅方向(左右方向)のずれも問題となるから、「画像の位置を調整」するには前後方向のみならず左右方向の調整が必要になることは、まさに自明である。
また、上記(b)の主張については、甲第4号証などには「ある画像に別の画像を重ね合わせて合成表示することにより両者の距離(位置関係)を表示する場合において、画面上の両者の位置がずれた場合に備え、画像の位置を調整できるようにすること」が周知技術であることが示されており、かつ、上記のとおり、左右方向に調整することは、当該周知技術に含まれる内容なのであるから、このような周知技術を甲2発明及び甲3発明に組み合わせることは、なんら、ここで述べた「周知技術」(ある画像に別の画像を重ね合わせて合成表示することにより両者の距離(位置関係)を表示する場合において、画面上の両者の位置がずれた場合に備え、画像の位置を調整できるようにすること)の内容を変更するものではない。

ク 本件明細書に開示されているのは、あくまでも、「距離指標画像32」と「車両指標画像33」とを一体として移動させ、「車両指標画像33」を「車両の画像31a」に一致させることによって位置を調整する技術であって、『「距離指標画像32」が移動した結果、画面における第二の画像の位置が調整されることになる。』などという技術が開示されているわけではない。

ケ 被請求人の主張は、画像を上下方向に移動させて位置調整をすることを開示している甲第4号証などに示された周知技術からすれば、「第二の画像」を上下方向及び左右方向に移動させて位置調整する技術もこのような周知技術の範囲内の自明事項であることを意味しているものといわざるを得ない(そうでなければ、本件明細書の開示から本件発明の構成が自明である(すなわち、サポート要件違反ではない)ということにはならない。)。
そうであるとすれば、本件における進歩性の議論において、この点を否定するかのような被請求人の主張はサポート要件に関する自らの主張とも矛盾しているというべきである。

(弁駁書)
コ 訂正発明が記載要件(特許法第36条第6項第1号)を充足しないことについて
訂正発明では、訂正前の発明と同じく、すべての請求項において、表示位置調整手段が「第二の画像を上下左右に移動させ、前記両面における前記第二の画像の位置を調整する」ものとされているが、平成24年2月14日付審判請求書19頁以下に記載したとおり、このような発明は本件訂正明細書には記載されていない。
したがって、訂正発明は、特許法第36条第6項第1号(いわゆる、「サポート要件」)に違反する(上記イ)。

サ 訂正発明には進歩性(特許法第29条第2項)が認められないことについて
訂正発明1?5は、甲2に記載された発明、甲3に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものである。

シ 補足:第二の指標が「車両先端からの長さ方向の距離を示す直線」であることや、これが「幅方向に延びる直線」であることが周知慣用技術であること
本件明細書にはこの指標が直線であることの開示はなく、図面においてそのような例が記載されているに過ぎないし、また、「車両先端」からの距離を示すことの特段の技術的意義も記載されていないのであるから、これらの要件はまったく技術的意義を有しない構成であるばかりか、「障害物までの幅方向の距離及び長さ方向の距離を把握することができる」との本件訂正発明の効果との関係からすれば、むしろ、甲3のように車両の形状に沿った距離を示す方がより正確な距離が測れることからすれば、このような構成は甲3の発明よりも劣った構成であるといえる(本件訂正発明の構成は、単に「距離の目安を示す」という程度のことに過ぎない。)。したがって、このような点は単なる設計的事項であって、このような点に進歩性が認められる余地はない。
また、甲3の図16では、車両形状がやや丸みを帯びているために、そこからの距離を示す距離線もその形状に基づいてやや曲線になっているというだけのことであって、当該車両が甲3の図2のような直線の形状であれば、その距離線の形状も直線になるのであるから、甲3に、一例として、曲線の距離線が示されていることは、対象とする車両の形状が直線的な形状か曲線的な形状かという、本件訂正発明の内容とは無関係な事情によるものに過ぎない(すなわち、車両までの距離を示す技術が開示されている甲3からすれば、そこで問題となる車両が直線状のものであれば、距離線も直線状になるという意味において、このような構成も開示されているといえる。)。
また、そもそも、大まかな距離を示すために、車両のもっとも外側を基準に距離を直線で示す程度のことは、それ自体が、任意の設計的事項であることが明らかである。この点について、念のために付言しておけば、甲3自体に、車両の最外側を表示ライン54(いわば、距離「0」の距離線といえる。)として直線で示す技術が開示されているし(段落【0043】)、その他、甲5の図4(c)、甲6の図3、図5、図6、図7、甲13の図12、甲14の第1図、甲15の図3、甲16の第3図(手続補正図)(甲16)なども同様である。
このことからも明らかなとおり、本件の「第一の指標」や「第二の指標」は、後方確認用及び前方確認用のカメラで当然のこととして行われていた技術をドアミラーに配設された前方確認用のカメラに適用した程度のことに過ぎない。また、これらの公知例においては、車両後方又は前方の先端からの距離を示しているから、前方方向について車両の先端からの距離を示すことは、周知の技術である。さらに、これらの公知例においては、距離線を幅方向に延ばすことも記載されており、この点も周知の技術である。
このように、「距離線」を「直線」で示すこと、「距離線」を「車両先端」を基準にして引くこと、あるいは「距離線」を幅方向に延ばすことなどはそれ自体が周知慣用の技術に過ぎない。

(4)証拠方法
甲第1号証:特許第4094831号(本件特許)
甲第2号証:実願昭60-30262号(実開昭61-146450号)のマイクロフィルム
甲第3号証:特開2001-180401号公報
甲第4号証:特開平4-103444号公報
甲第5号証:特開平11-11210号公報
甲第6号証:特開平8-80791号公報
甲第7号証:特開平9-193710号公報
甲第8号証:平成17年6月17日を起案日とする拒絶理由通知書
甲第9号証:平成17年8月31日を起案日とする拒絶査定
甲第10号証:平成17年9月30日付審判請求書
甲第11号証:平成17年12月13日付前置報告書
甲第12号証:平成20年2月18日付審決
甲第13号証:特開平7-2021号公報
甲第14号証:実願昭62-45659号(実開昭63-153681号)のマイクロフィルム
甲第15号証:特開平7-117561号
甲第16号証:実願平1-69472号(実開平3-8941号)のマイクロフィルム

2 答弁
(1)答弁の趣旨
本件審判の請求は、成り立たない、審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求める。

(2)答弁の理由(概要)
審判請求書における審判請求人の主張は、いずれも失当である。本件特許発明に無効理由はない。

(3)答弁の理由の要点
(答弁書)
ア 無効理由1について
(ア)本件発明1について
(ア-1)相違点1について
甲第3号証における距離線64?66は、本件発明1の構成要件Cにおける「第二の画像」に該当し得ず、距離線64?66を甲2発明に適用したとしても、本件発明の構成要件Cが得られないので、審判請求人の主張は失当である。
甲2発明における撮影画像は、車のサイドミラーから前輪近傍の路面を含む部分を撮像した画像であり、また、甲3発明における撮影画像は、左前端部分と路面とを含む部分を撮像した画像である。甲第3号証は、車両の左斜め前方方向の距離を車両の左前端部分の輪郭線で示す技術的思想しか開示していないので、距離線64?66を甲2発明における撮影画像に表示しようとしたとしても、距離線64?66を本件発明1の構成要件Cにおける「第二の画像」のように、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有するものとすることは容易ではない(このようにする根拠が無い。)

(ア-2)相違点2について
審判請求人は、相違点2は実質的には甲3発明に開示されているに等しい事項であるといえることの根拠を示していない。
審判請求人は、甲第4号証から甲第6号証を挙げてこのことを立証しようとしているが、甲第4号証から甲第6号証を挙げたことによって立証できることは、「ある画像に別の画像を重ね合わせて合成表示することにより両者の距離(位置関係)を表示する場合において、画面上の両者の位置がずれた場合に備え、画像の位置を調整できるようにすること」が、周知技術であるということだけであり、甲第4号証から甲第6号証を挙げたことによって何故「ある画像に別の画像を重ね合わせて合成表示することにより両者の距離(位置関係)を表示する場合において、画面上の両者の位置がずれた場合に備え、画像の位置を調整できるようにすること」が、「必ず必要な技術的事項」に該当するのかは立証されていない。
甲第4号証などでは、画像の位置を調整するときに、画像を上下方向に移動させる思想しか開示されていない。つまり、画像の位置を調整するときに、本件発明1のように、画像を上下方向に移動させることは周知であるが、それに加えて左右方向に移動させること(つまり、本件発明1のように、第二の画像を上下左右に移動させること)については周知でない。

(イ)本件発明2?5について
本件発明1は、進歩性を有するので、請求項1に従属する請求項2?5に係る本件発明2?5も進歩性を有する。従って、審判請求人の本件発明2?5についての主張は全て失当である。したがって、本件発明2?5についても無効理由1はない。

イ 無効理由2について
(ア)「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」構成は、本件明細書に記載されており、本件発明1はサポート要件を満たすものであり、審判請求人の主張は失当である。

(イ)本件発明1における、「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」との記載は、第二の画像を上下左右に移動させて第二の画像の位置を、特定の位置に移動させるように、第一の画像を表示した表示手段の画面における第二の画像の位置を調整することを特定する記載ではなく、単に、第二の画像を上下左右に移動させることによって、前記画面における第二の画像の位置が結果として調整されることを特定する記載に留まるものである。つまり、「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」との記載のうち、「前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」との記載は、「前記第二の画像を上下左右に移動させ」たことの結果として当然に起こる事項を作用的に表現したものにすぎない。
これは、本件発明1における、「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」との記載が、第二の画像をどこか特定位置に移動させるように前記画面における前記第二の画像の位置を調整する旨を規定する記載を含まないことから明かである。
ここで、第二の画像は、本件明細書における「距離指標画像32」をーつの例として含むものであり、「距離指標画像32」は、「車両指標画像33」とともに移動することが可能であること(つまり、「距離指標画像32」を上下左右に移動させることが可能であること)は、本件明細書の記載から明らかである。そうすると、「距離指標画像32」が移動した結果、画面における第二の画像の位置は調整されることになる。このため、本件明細書には、「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」構成が記載されている(つまり、サポート要件を満たす)。このため、審判請求人の上記主張は失当である。

(ウ)なお、上記のように、「ある画像に別の画像を重ね合わせて合成表示することにより両者の距離(位置関係)を表示する場合において、画面上の両者の位置がずれた場合に備え、画像の位置を調整できるようにすること」(画像を上下方向に移動させること)は、公知文献が3つも存在するので、本件特許の出願時において周知技術である(以下では、調整対象の画像を調整対象画像という。本件発明1では第二の画像が該当する。)。そして、審判請求人が挙げている甲第4号証から甲第6号証では、調整対象画像の位置を調整する際に、実際に所定物を路面などに設置し、設置した所定物に合わせて調整対象画像の位置を調整しているので、「ある画像に別の画像を重ね合わせて合成表示することにより両者の距離(位置関係)を表示する場合において、画面上の両者の位置がずれた場合に備え、画像の位置を調整できるようにすること」とともに、調整対象画像の位置を路面上などの所定物に合わせて調整することも周知技術である。
そうすると、本件発明1が「第二の画像」を移動させるときに「車両指標画像33」を必須の構成要件としていないこと、及び、「距離指標画像32」を「車両指標画像33」とともに上下左右に移動させること、を本件明細書が開示していることを考慮すれば、「距離指標画像32」の調整について、例えば、上記周知技術に基づいて、実際に所定の物を路面などに設置し、設置した所定の物に合わせて調整対象画像の位置を上下左右に移動させて調整可能であることは理解できるので、「距離指標画像32」を移動させるときに、「車両指標画像33」が必ずしも必要ないことは理解できることである。つまり、本件明細書の開示内容、本件特許出願の出願時の技術常識などから、「第二の画像」はそれ単独で移動させることによって位置を調整できるものであることは自明 であり、本件明細書の記載から、本件発明1の「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」構成に拡張ないし一般化することができることは明かである。このような観点からも、サポート要件は満たされている(このため、審判請求人の上記主張は失当である。)。

(陳述要領書)
ウ 甲3号証【0036】【0065】などの記載から図15においては、車両11の画像が「車両の左前端部分」の画像であることは明かである。そして、図15と図16はともに同じカメラCFLでの撮影画像であるため、図15及び16における車両11の画像は同じものであり、図16の車両11の画像は図15と同様に「車両の左前端部分」の画像となることが分かる。このため、被請求人は、答弁書で主張したように、図16の車両11の画像が「車両の左前端部分」を撮影した画像(特に、略上方向から撮影した画像)であると考えている。
距離線66は、車両11からの距離が15cmであることを示す指標(ここでは、「線」としての態様で表示されたもの)であることは、距離線66などの説明をした【0066】などから明らかである。
距離線66は車両11の画像の輪郭線を図16における左上方向にずらしたものであることと、この左上方向が車両11における左斜め前方方向に該当することと、から、距離線66は、そのすべてが、車両11の左前端部分からの、車両11の左斜め前方方向に沿った距離を示す指標(車両11の左前端部分から左斜め前方方向に沿って離れた15cmの距離を示す指標)であると理解される。
なお、請求人が主張するように、仮に距離線66が「車両11から車両の幅方向、長さ方向あるいは左斜め前方を含んだ、車両11から周囲までの一定の距離(例えば以下の図の66であれば15 cmの距離)を示した曲線」であるならば(上記のように、請求人の主張は意味不明であるが、図16の車両11の画像が「車両の左前端部分」を撮影した画像であるとした場合。)、距離線66は図16のような形状にならない。
距離線66が「車両11から車両の幅方向、長さ方向あるいは左斜め前方を含んだ、車両11から周囲までの一定の距離(例えば以下の図の66であれば15cmの距離)を示した曲線」であるならば、距離線66の両端は、図16の右辺及び下辺に達する方が自然である。しかし、図16ではそうはなっていない。さらに、距離線64?66は、同じ距離線であり、区別すべき根拠はないところ、距離線64や65は、距離線66よりも短く記載され、距離線64?66が共通して問題としているところは、車両11の左前端部分からの斜め前方方向に沿った距離であることは明らかである。そうすると、距離線66は距離線64及び65とともに、車両11の左前端部分からの、車両11の左斜め前方方向に沿った距離のみを問題としていることが分かる。
本件発明1の「第二の画像」における、「第一の指標」は車両の幅方向に沿った長さについての指標であり、「第二の指標」は車両の長さ方向に沿った長さについての指標であることは明らかである。
車両11の左前端部分からの、車両11の左斜め前方方向(図16における左上方向)に沿った距離(車両11から左斜め前方方向に沿って離れた15cmの距離)を示す指標のみからなる距離線66は、本件発明における「第一の指標」及び「第二の指標」を有する線ではなく、距離線66は、「第二の画像」になり得ない。

エ 上記のように、「第二の画像」が甲3号証に開示されていないので、これを前提にした請求人の主張は失当である。
甲3号証の明細書には、距離線66が車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する旨の記載が無いことは明かである。また、明細書に記載された発明の課題、目的又は作用効果等から、距離線66が車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する構成を採用していると理解されるか否かが問題になるが、距離線66などの説明をした【0063】?【0067】によっても、距離線66が車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する構成を採用していると理解されることはない(適宜、答弁書も参照)。このようなことから、甲3号証が第二の画像を開示するということはない。

オ 距離線66を表示する甲3発明に距離線66を上下左右に移動させる構成を適用したものを甲3’発明という。
請求人は、
(a)「画像の位置を調整できるようにすることは必ず必要な技術的事項(備えていないことが有り得ないほど当然の技術)」であるとして、甲3’発明は、甲3号証に記載されているに等しく、当業者は、甲2発明に甲3’発明を適用することによって、本件特許発明の構成に容易に想到することができる。
(b)また、距離線66を上下左右に移動させる構成は周知慣用技術であるのだから、甲2発明に当該周知慣用技術を適用し、甲3’発明を得ることは極めて容易であり、得られた甲3’発明を甲2発明に適用することによって、本件特許発明の構成に容易に想到することができる。
と主張し、本件特許発明1の進歩性(特許法第29条第2項)を否定している。しかし、これら主張は妥当でない。
上記(a)の主張についてであるが、請求人は、相変わらず、「画像の位置を調整できるようにすることは必ず必要な技術的事項(備えていないことが有り得ないほど当然の技術)」を証明していないので、上記(a)の主張には根拠がない。
上記(b)の主張についてであるが、請求人は、甲3発明に距離線66を上下左右に移動させる構成を適用するのは極めて容易であるとするが、甲3発明に距離線66を上下左右に移動させる構成を適用することについての動機付けがない。甲3号証で搭載されているカメラCFLは、甲4号証?甲6号証に記載された車両に外付けされたカメラとは異なり、車両本体に内蔵されている(図27参照)。そうすると、カメラCFLは車両に外付けされたカメラよりも通常強固に固定されており、その撮影方向がずれるごとが想定されないので、そもそも距離線66の位置を調整する必要がない(つまり、上記動機付けがない。)。このため、甲3’発明を得ることは極めて容易であることはない。
さらに、発明の進歩性を否定するための引用発明は、特許法第29条第1項各号に規定されている発明でなければならないところ(特許法第29条第2項)、請求人の主張によれば、甲3’発明は、特許法第29条第1項3号に規定される発明(頒布された刊行物(甲3号証)に記載された発明)に周知慣用技術を適用したものとなり、もはや特許法第29条第1項各号に規定される発明のいずれにも該当しないことは明らかであるので、そもそも発明の進歩性を否定するための引用発明にはなり得ない。
また、甲1発明に甲2発明を適用し、さらに、距離線66を上下左右に移動させる構成を適用することで、本件発明1の構成すべてに容易に想到し得るとの考えもあるかもしれないが、この場合には、答弁書で述べたとおり、甲2発明の適用と距離線66を上下左右に移動させる構成の適用とで、課題が異なることになるので、このときにはまさしく「容易の容易は容易でない」に該当する。以上から請求人の主張は失当である。

カ 請求人は、
(a)側方前部監視カメラでは、車両の長さ方向(前後方向)のみならず、幅方向(左右方向)のずれも問題となるから、「画像の位置を調整」するには前後方向のみならず左右方向の調整が必要になることは、まさに自明である。
(b)画像を上下方向に移動させることが周知技術であれば、上下方向に移動させることから自明な範囲の上下左右方向も当然に周知技術に含まれる。
と主張している。
しかし、上記主張は的はずれと言うほか無い。上記(a)において、「側方前部監視カメラでは、車両の長さ方向(前後方向)のみならず、幅方向(左右方向)のずれも問題となるから、」との主張について、そもそも幅方向(左右方向)のずれも問題となることがなぜ分かるのか。カメラの取り付け方などによっては、幅方向(左右方向)のずれが問題にならない場合なども当然に考えられるので、幅方向(左右方向)のずれが当然に問題となるとは限らない。「側方前部監視カメラでは、‥‥幅方向(左右方向)のずれも問題となるから」と認識することは、本件発明1を意識した後知恵と言うほか無い。従って、「画像の位置を調整」するには前後方向のみならず左右方向の調整が必要になることは自明でない。よって、上記(a)及び(b)の主張は失当である。

キ 被請求人が意図する答弁書での主張を要約して以下に示す。
(a)「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」(以下、この構成を便宜上「構成A」と呼ぶことがある。)との記載は、単に、第二の画像を上下左右に移動させることによって、前記画面における第二の画像の位置が結果として調整されることを特定する記載に留まるものであり、明細書では、「距離指標画像32」が上下左右に移動して結果としてその位置が調整されているので、「構成A」は明細書に開示がある。
(b)仮に(a)の主張が妥当でない場合であっても、「ある画像に別の画像を重ね合わせて合成表示することにより両者の距離(位置関係)を表示するときに、画像の位置を上下方向に移動させて調整できるようにすること」(以下では、調整対象の画像を調整対象画像という。本件発明1では第二の画像が該当する。)とともに、「調整対象画像の位置を路面上などの所定物に合わせて調整すること」も甲4?甲6号証から周知技術であることが理解され、これら周知技術と、本件特許の明細書及び特許請求の範囲の記載(第二の画像の調整時に車両指標画像33を必要としていないこと。)と、からすれば(つまり、本件特許の明細書などや出願当時の技術常識などを総合的に勘案すれば)、「第二の画像」はそれ単独で移動させることによって位置を調整できるものであることは当然に理解されるので、サポート要件は満たされている。
上記(a)及び(b)の主張に対して、請求人は、第二の画像を上下左右に単独で移動させて位置を調整する技術は本件明細書などに開示がないなどとして、サポート要件を満たしていないと主張する。しかし、請求人は、相違点2にかかる進歩性の主張において、距離線66などを上下左右に移動きせて位置を調整する技術は、甲3号証に記載されているに等しいなどと主張し、サポート要件に関する前記主張と矛盾する主張を行っている。甲3号証が、距離線66などを上下左右に移動させることを実質的に開示しているとするならば、甲第1号証も距離指標画像32を単独で上下左右に移動させることを開示しているはずである。このような矛盾は、進歩性の判断において、当該技術が周知慣用技術であると主張したり、常識的な技術であると主張したりした場合にも同様に発生する。このように請求人は自ら矛盾する主張を展開しており、請求人の主張に採用すべき点はない。
上記(b)に関連してサポート要件についてさらに主張すると、第二の画像などの調整対象画像を移動させて位置を調整する技術などは周知技術であるところ、本件発明1の構成や明細書の記載の他、明細書の解決手段の段落【0005】においても第二の画像のみを移動させて位置を調整することが記載されていることや、明細書の解決手段の段落の記載や請求項に記載された発明において「車両指標画像33」を必須の構成要件としていないことが出願当初から一貫していること(このことから「車両指標画像33」が必ずしも必要ないことが出願当初から本件特許の明細書などには記載されていることになる。)から、「距離指標画像32」の位置を上下左右に移動させて調整可能であること(「車両指標画像33」が必須でないこと)は当然に理解できる。以上から、上記と同様に、本件明細書の開示内容、本件特許出願の出願時の技術常識などから、当該サポート要件が満たされていることは明かである。

(回答書)
ク 訂正発明がサポート要件を満たさないことについて
審判請求人は、訂正発明(特に表示位置調整手段)がサポート要件を満たさないと主張するが、訂正発明はサポート要件を満たす。これについての主張は、先に提出した答弁書、口頭審理陳述要領書などに記載したとおりである。

ケ 訂正発明が進歩性を有さないことについて
(ア)審判請求人は、引用発明1(甲2に記載された発明)、引用発明2(甲3に記載された発明)、及び、周知技術に基づいて、各訂正発明1乃至5が進歩性を有さないと主張するが、この主張は失当である。

(イ)訂正発明1について
a 訂正発明1の進歩性について
甲2、甲3、及び、他の引用文献は、訂正発明1のうち、画像に写らない車両先端からの長さ方向の距離を幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を表示する構成を開示も示唆もしていない。従って、甲2、甲3、及び、他の引用文献に記載された発明から、訂正発明1には容易に想到し得ないので、訂正発明1は進歩性を有する。

b 審判請求人の訂正発明1の意見に対する反論(引用発明2について)
(a)「距離線64?66」は「車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線」であるとする審判請求人の主張について
甲3には、「車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線である距離線64?66を車両の左前端部分の画像PFLに表示すること」が開示され」と主張する(第5 2 (2))。
しかし、距離線66が、車両の前方向の位置にある線及び車両の左側方向の位置にある線を含むからといって、必ずしも、車両11から前方向に15cm離れた位置及び車両11から左側方向に15cm離れた位置を示す線になるとは限らない。
距離線66が、車両の前方向の位置にある線及び車両の左側方向の位置にある線を含むからといって、必ずしも、車両11から前方向に15cm離れた位置及び車両11から左側方向に15cm離れた位置を示す線になるとは限らないので、つまり、距離線66は、車両11から前方向及び左側方向以外の方向に15cm離れた位置を示す線である可能性もあるので、審判請求人の上記主張には説得力がない。

(b)「距離線64?66」が「車両の左斜め前方向の距離を示す線」である理由1
車両61と車両11との間の間隔の目安となる距離線64?66は、車両11から車両61に向かった左斜め前方方向に沿った距離を示すことを意図したものである。
また、図15を参照して説明されている技術(表示ライン55、表示ライン63を表示する技術)は、ハンドルを右に切ったときに前進又は後退する車両11が左斜め前方方向にある車両61にぶつからないように、車両11と車両61の位置関係の把握を容易にする技術である(【0063】?【0065】)。
また、甲3の図2では、カメラが車両の左前端部に配置されている。このため、このカメラは、車両に設けられることがある従来から周知である所謂コーナーポールの代わりに配置されるものであると理解できる。つまり、距離線64?66は、コーナーポールの代わりの役割を果たすものである。
コーナーポールの代わりとなる距離線64?66も、コーナーポールと同様に、車両の左斜め前方向にある障害物との距離感を確認させることを意図したものである。
以上から、距離線64?66は、車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線でなく(積極的にこのように理解する根拠がないため。)、車両の左斜め前方向の距離(例えば、左斜め前方向に15cm離れた位置)を示す線である。

(c)「距離線64?66」が「車両の左斜め前方向の距離を示す線」である理由2
車両11の輪郭線を距離線66に重ねると一致するといってよいので、距離線66は車両11の輪郭線を模したものであり、車両11の輪郭線を距離線66の位置まで移動させる方向は、車両11から左上斜め方向であることが分かる。以上から、図16において、距離線66は、車両11の輪郭線を模した線を、車両11から左上斜め方向に移動させた線であることが分かる。
距離線66は、車両11から左斜め前方向に15cm離れた距離を車両11の輪郭線を模した線によって示すものである。また、距離線64?66のうち、距離線66が車両11に最も近くかつ長く、距離線64?65は距離線66と略同じ形状といえるので、距離線64?65も同様であることは明らかである。つまり、距離線64?66は、車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線でなく、車両の左斜め前方向の距離を示す線である。

(d)「距離線64?66」が「車両の左斜め前方向の距離を示す線」である理由3
図16では、距離線64?66は、車両11から離れるほど車両11の左斜め前方方向にある線を共通部分として短くなっており、距離線64?66をまとめて見た場合、左斜め前方方向に向かって、先細りとなっている。このようなことから、距離線64?66は、先細りの方向、つまり、車両11の左斜め前方方向を問題としていることは明らかである。そして、距離線64?66が先細りとなっているということは、距離線64?66は、複数の異なる方向(ここでは、前方向と左側方向)が問題としていないことは明かである。
このため、距離線64?66は、車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線でなく、車両の左斜め前方向の距離(例えば、左斜め前方向に15cm離れた位置)を示す線である。

(e)その他
甲第3号証の記載、図15及び図16などからは、車両11の左斜め前方方向を問題としていることは把握できるが、車両11の前方向や左側方向を問題にしていることは把握できない。これは、複数の距離線64?66の全てが車両11の前方向や左側方向にまで延びていないことなどからも明らかである。
また、例えば距離線66は車両11から15cm離れた距離を示すものであるので、「車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線」といえるためには、距離線66は、車両11から前方向に15cm離れた距離を示す線及び車両11から左側方向に15cm離れた距離を示す線でなければならない。距離線66がこのような線といえるためには、距離線66が、例えば、車両11の輪郭の上部分を前方向(図16での上方向)にずらした線(これによって、車両11から前方向に15cm離れた距離を示す線となる)と、車両11の輪郭の左部分を左側方向(図16での左方向)にずらした線(これによって、車両11から左側方向に15cm離れた距離を示す線となる)と、を含むものでなっていなければならないが、上述のように、距離線66は、車両11の輪郭線であるので、このような線にはなり得ない。距離線64?65についても同様である。このため、距離線64?66は、車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線でない。
距離線66が車両11から全方向に15cm離れた距離を示す線とする場合、距離線66は、車両11の輪郭線上の多数の各点から当該各点を通る輪郭線の接線の法線方向に15cm離れた各点を結んだ線になるはずである。この場合、距離線66の形状は、車両11の輪郭線の形状を拡大したものになるはずであるがそうはなっていないので、距離線66は、車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線でない。

c 審判請求人の訂正発明1の意見に対する反論(進歩性について1)
上述したように、距離線64?66は、車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線でなく、車両の左斜め前方向の距離(例えば、左斜め前方向に15cm離れた位置)を示す線である。特に、距離線64?66は、その技術思想として、車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線でないことはあきらかである。このため、甲3は、引用発明2、特に、「車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線である距離線64?66」を表示する「発明」を開示していないので、訂正発明1に進歩性が無いとする審判請求人の主張は失当である。

d 審判請求人の訂正発明1の意見に対する反論(進歩性について2)
甲2での撮影画像と甲3での撮影画像とは撮影方向や撮影画像に写る車両の部分などが異なる。このため、引用発明1に距離線64?66を適用するときに、距離線64?66の形状を変更する必要があるが、距離線64?66は、技術思想として、車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線ではないので、距離線64?66の形状を変更する際に車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線を含むように維持したまま距離線64?66の形状を変更するとは限らない。このため、たとえ当業者であっても、引用発明1に距離線64?66を適用して、訂正発明1の「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び・・・長さ方向の距離を・・・示す第二の指標を有する第二の画像」との構成には容易想到し得ない。
さらにいえば、審判請求人は、相違点2について、「「車両の前方向の距離を示す線」を調整するために上下方向を調整できるようにし、「車両の左側方向の距離を示す線」を調整するために左右方向を調整できるようにする調整手段、すなわち、「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」を設けることは、当業者が容易に想到し得ることである。」(第5 3 (2))と主張するが、距離線64?66は、技術思想として、車両の前方向の距離を示す線及び車両の左側方向の距離を示す線ではないので、当業者は、「車両の前方向の距離を示す線」を調整する、及び、「車両の左側方向の距離を示す線」を調整するという課題をそもそも把握できないので、審判請求人の主張は失当である。

e 審判請求人の訂正発明1の意見に対する反論(進歩性について3)
(a)審判請求人の主張が失当であること1(引用発明1に引用発明2を適用する動機付けがない)
第一の画像は、甲2の図面に記載されるように、車両の左前端部分のうち前方向に向く部分は写らない。このような第一の画像に距離線64?66を表示しようとしても、第一の画像には車両の左前端部分のうち前方向に向く部分は写らないので、車両の左前端部分との対比で車両からの前方向の距離を測らせることが出来なくなる。つまり、距離線64?66を引用発明1に適用してしまうと、距離線64?66の意義が失われてしまう。このため、引用発明1に距離線64?66を適用する必要性がなく、引用発明1に引用発明2を適用することについて動機付けはないので、審判請求人の主張は失当である。

(b)審判請求人の主張が失当であること2(引用発明2を引用発明1に適用する際に距離線64?66を車両の幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標とするには阻害要因がある)
距離線64?66は、車両の左前端部分に合わせた形状とすることで正確な距離が測れるようにしようとするものである。ここで、ドアミラーを有する車両の前端かつ幅方向の両端(一般的にはバンパーの両端)は必ず曲線形状になっており、この部分が直線の角で構成されることはあり得ない。このため、車両の左前端部分は必ず曲線(甲3の図16)となる。このようなことからすつと、距離線64?66も正確な距離が測れるように車両の左前端部分の曲線に合わせて必ず曲線にする必要がある。距離線64?66を直線とすることは、このようなことに反し、距離線64?66本来の目的が失われるので、距離線64?66を直線とすることには阻害要因がある。

(c)審判請求人の主張が失当であること3(相違点2について)
引用発明1に引用発明2を適用する動機付けは、「車両からの距離を把握する」ということである。?方で、引用発明2の構成をさらに変更する動機付けは、「カメラからの画像と距離を示す画像との表示位置がずれを補正する」ということである。このように2つの動機付けは全く異なるものであるので、「引用発明1に引用発明2を適用する際に、車体の振動等によりカメラからの画像と距離を示す画像との表示位置がずれることに備え、距離を示す画像の表示位置を調整できるようにすることは容易であり」ということはない。

(d)審判請求人の主張が失当であること4(相違点2について)
本無効審判における引用文献から把握できることは、本件特許の出願時においては、カメラの可動範囲から、画像のずれる方向を把握して、距離を示す画像の移動可能な方向を設定することであり、距離を示す線の性質によって当該距離を示す線の移動方向を設定することではない。このようなことからすれば、距離を示す線の性質によって距離を示す線の移動方向を設定するようにすることの開示はどの引用文献にも開示及び示唆がないので、「車両の前方向の距離を示す線」を調整するために上下方向を調整できるようにし、「車両の左側方向の距離を示す線」を調整するために左右方向を調整できるようにすることが当業者にとって容易であるということはない。このため、審判請求人の主張は失当である。

(e)審判請求人の主張が失当であること5(補足について)
審判請求人が上記主張の根拠として挙げている引用文献が開示する発明は、車両の後部に関するものが殆どである。このような点からすれば、第二の指標を直線にし、さらに「前記幅方向に沿って延びる」ようにすることが周知慣用技術であるとは言えない。

(f)審判請求人の主張が失当であること6(効果について)
訂正発明1は、車両先端の位置が分かりにくい第一の画像で、車両先端から障害物までの長さ方向の距離を把握することができるとの効果を奏する。この効果は、引用発明1、引用発明2、周知技術からは得られない効果であるので、訂正発明1は、進歩性を有する。

(g)その他
審判請求人は、「引用発明2は、車両用監視装置であって、障害物回避表示処理(段落【0064】?【0066】)するものであるから、「車両の前方向の距離」は、障害物を回避するために表示されていることは明らかであり、「車両の前方向の距離」は、「車両先端からの長さ方向の距離」といい得、」と主張する。しかし、この主張の理由を被請求人は良く理解できない

(ウ)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1を引用するものであり、進歩性を有する。

(エ)訂正発明3について
上記(イ)b?eを参照(但し、訂正発明3用に読み替えなどする)。
訂正発明3は、進歩性を有する。

(オ)訂正発明4について
訂正発明4は、前記第一の指標及び前記第二の指標が前記路面上に位置するように前記表示手段に表示されることで、車両先端からの障害物までの長さ方向の距離をより把握しやすいとの効果を奏する。特に、第二の指標を車両の画像の横に配置することができ(例えば、図1参照)、この場合、車両先端からの障害物までの長さ方向の距離(特に近い距離)をより把握しやすいとの効果を奏する。ここで、路面上とは、路面に接する位置である。審判請求人は、この構成は、甲3の距離線64?66によって開示があるとするが、甲3の距離線64?66は、路面を上から見た図であり、前記第一の指標及び前記第二の指標が前記路面上に位置するか(路面に接するか)は把握できない。以上から、この構成は甲3に開示も示唆もされていない。
また、訂正発明4の「前記第二の指標は、車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置されており」とは、前記第二の指標が、車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置されていることで、車両先端からの長さ方向の距離を示すものであることを明確化するものである。このため、第二の指標は車両先端から長さ方向に沿った特定の長さとなる位置つまり特定の距離だけ離れた位置を示すことになるので、この第二の指標は、単に車両先端よりも前にあればよい線と明確に区別される。

(カ)訂正発明5について
訂正発明5は、訂正発明1を引用するものであり、進歩性を有する。

第四 当審の判断

1 本件特許発明1
(1)進歩性
ア 甲第2号証の記載
甲第2号証には、自動車の側方監視装置(考案の名称)に関し、図面と共に次に揚げる事項が記載されている。

〈実用新案登録請求の範囲〉
「自動車に装着された左右のドアミラーのうち、少なくとも運転席と反対側のドアミラーの背面にテレビカメラを設置し、車室内の運転席近傍には前記テレビカメラと接続されたテレビ受像機を配し、前記テレビカメラによってテレビ受像機に自動車のフロントフェンダ部側方近傍を映しだすようにした自動車の側方監視装置。」(1頁5?11行)

〈産業上の利用分野〉
「本考案は自動車の側方監視装置に係り、特に自動車の側方の死角部分を運転者が運転席に居ながらにして十分に確認できるようにした監視装置に関するものである。」(1頁14?17行)

〈従来の技術及び考案が解決しようとする問題点〉
「最近、自動車のフロントボンネット形状が従来の箱型からウェッジ型へと変化し、またリアビューミラーの取付位置もフロントフェンダ部分からドア部分へと変わってきた。その結果、運転席(運転席は車体中央より右側寄りにあるものとして説明する)からは車体の左端の位置を確認するための基準となるべきものが何も見えず、従って、車体の左端がどこまであるのかがよく解らない状態となっている。またこのようなデザインの自動車はもちろんのこと、従来の箱型等のものであっても、運転席から見ると車体左側面近傍は所謂死角となり、安全運転上問題となっていた。特に狭い道路における離合や車庫入れ等に際しては、車7左側面近傍の死角部分についての安全が確認できず、そのために車体左側面を電柱や塀等に接触させたり、溝の中へ左車輪を脱落させたり、また極端な場合には通行人に接触することなどがあった。」(1頁19行?2頁16行)

〈問題点を解決するための手段〉
「本考案は上記の点に鑑みてなされたもので、運転席と反対側の車体側方近傍を十分に確認できる自動車の側方監視装置を提供するもので、該目的を達成するため、ドアミラーのうち少なくとも運転席と反対側のドアミラーの背面にテレビカメラを設置し、車室内の運転席近傍にはテレビカメラと接続されたテレビ受像機を配し、テレビカメラによってテレビ受像機に自動車のフロントフェンダ部側方近傍を映しだすようにしたことを特徴としている。」(2頁18行?3頁7行)

〈実施例〉
「第1図は本考案実施例におけるテレビカメラ1の実装外観図である。テレビカメラ1は車体Aの左側のドアミラー2の背面2aに前方やや下方を向けて内蔵設置されている。」(3頁9?12行)

「第3図は車室内運転席近傍の外観図であり、運転席3の左側方に位置するコンソールボックス4にはテレビ受像機5が設置され、このテレビ受像機5は前記テレビカメラ1の出力コード1cとケーブル(図示せず)によって接続されている。」(3頁20行?4頁4行)

「第4図は前記テレビカメラ1によって映し出されたテレビ受像機5上の映像である。画面5aには、車体Aの左側フロントフェンダ部6、左前輪7、フェンダ部側方近傍の路肩8あるいは塀9等が映しだされ、運転席3からは通常視認できない死角部分が確認される。」(4頁10?15行)

〈考案の効果〉
「本考案は以上の如くであるから、テレビカメラによってフロントフェンダ部近傍を運転席から十分に監視できるようになり、脱輪や障害者との衝突を未然に防ぐなど、安全確認効果は極めて著しい。」(7頁11?15行)









イ 甲第2号証に記載された発明
上記の記載及び図面から、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。

(甲2発明)
「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段
を設けたことを特徴とする車両用監視装置。」

ウ 本件特許発明1と甲2発明との対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「撮像手段」は、第1図に示されているように配置され、第4図に示されている映像を撮像するから、「ドアミラーに配設されており、前記ドアミラーよりも前にある前輪近傍を撮像する撮像手段」といえる。
また、甲2発明の「第一の画像」は、第4図に示されている映像(画像)であって、「前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両の先端が写っていない」ものと認められる。
したがって、本件特許発明1と甲2発明とは、

「ドアミラーに配設されており、前記ドアミラーよりも前にある前輪近傍を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と、
を設け、
前記第一の画像は前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両の先端が写っていない画像である、
ことを特徴とする車両用監視装置。」

で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件特許発明1が「前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両先端が写っていない前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を有するのに対し、
甲2発明は「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二の画像」がなく、また、第一の画像と第二の画像を「合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を有していない点

(相違点2)
本件特許発明1が「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」を有しているのに対し、甲2発明ではこのような構成を有していない点

エ 判断等
(ア)周知技術
(ア-1)甲第4号証の記載
〈特許請求の範囲〉
(あ)「車両の後方を確認するカメラと、距離スケールの図形や文字を発生させる信号発生装置と、カメラからの映像信号と信号発生装置から出力された画像信号を多重させる多重装置と、多重された画像信号を上下方向に移動させる入力手段と、前記多重装置から出力された画像信号を表示するモニタと、これらの装置を制御するコントローラから構成され、前記モニタ上に映し出される後方の風景の中で、前記距離スケールを上下に任意に動かすことにより、距離スケールと実画面上の正確な位置合せを容易に実現させることを特徴とする後方確認表示装置。」(1頁左下欄4?15行)

〈発明の詳細な説明〉
〈産業上の利用分野〉
(い)「本発明は車両後方確認カメラを搭載した後方確認表示装置に関するものである。」(1頁左下欄18?19行)

〈従来の技術〉
(う)「カーエレクトロニクスは車の安全性、快適性、娯楽性の向上を追求するものであるが特に車両後方の安全性確保と死角除去のために、後方確認カメラを搭載する車が増えている。」(1頁右下欄5?9行)

(え)「第4図は従来の後方確認表示装置を示すものである。第4図において、41は後方確認カメラ、42はモニタ、43はモニタ前面カバーに印刷された距離を示すスケール、44は車両、45は距離の目安になるフラッグである。
以上のように構成された後方確認表示装置について、以下その動作を説明する。
まず、後方確認カメラ41より入力された映像信号はモニタ42により映し出されるが、(b)図に示したようにモニタ42の本体、または前面カバーに距離を示すスケール43が印刷されており、障害物があった場合、そこまでの距離が容易に認識でき、後方の安全を確認することができる。
この後方確認カメラ41を車両44へ取付け、表示距離の位置を調整する場合、距離を示すフラッグ45を車両の後方に一定距離をおいて立てる。この距離は画面上のスケールがたとえば10mであれば、10mに合せる。次にモニタ42を見ながら後方確認カメラ41を矢印の方向に回転させ、距離スケール43とフラッグ45を合せる。その位置で後方確認カメラを固定すれば、距離合せは完了する。」(1頁右下欄12行?2頁左上欄12行)

〈発明が解決しようとする課題〉
(お)「しかしながら、上記のような構成では、距離合せをする際カメラを回転する人と、モニタを見ながら回転方向位置を指示する人が必要であり、また、固定しても車体の振動、風圧等によりカメラの位置がずれ、正確な距離が表示できない可能性があった。また回転する空間確保や、機構上からも取付は位置や方法も困離であった。
本発明の目的は、従来の欠点を解消し、後方確認カメラからの映像信号に図形文字信号を発生する信号発生器からの距離スケールを多重させ、この距離スケールを任意に上下できる手段を付加し、距離合せの正確化、容易化を図る後方確認表示装置を提供することである。」(2頁左上欄14行?右上欄6行)

〈課題を解決するための手段〉
(か)「本発明の後方確認表示装置は後方確認カメラ、信号発生装置、多重装置、入カキ-、モニタ、コントローラという構成を備えたものである。」(2頁右上欄8?10行)

〈作用〉
(き)「本発明は上記の構成によって、後方確認カメラからの映像信号に図形文字信号を発生する信号発生器からの距離スケールを多重させ、この距離スケールを任意に上下できる手段を付加し、距離合せの正確化、容易化を図る手段を提供することができる。」(2頁右上欄12?17行)

〈実施例〉
(く)「以下本発明の一実施例の後方確認表示装置について、図面を参照しながら説明する。
第1図は本発明の構成図を示す。カメラ1から出力された映像信号はインタフェース2によりR,G,B信号3に変換される。一方、CPU4はROM5に記憶されたプログラムデータにしたがい、システム全体をコントロールし、図形や文字パターンをROM5から読み出し、ビデオRAM6で画面の表示位置に対応した特定の座標へ書き込む。CRTコントローラ7は一定期間毎にビデオRAM6からR,G,Bの画像信号8を読み出し、インタフェース9を介して多重装置10へ入力する。多重装置10はインタフェース9とインタフェース2からのR,G,B信号をCRTコントローラ7からの切替コントロール信号11にしたがい高速に切替え、多重するものであり、その画像信号はCRT12へ入力され、表示される。キースイッチ13はROM5から読み出された画像パターンや文字パターンを上下方向に移動させるスイッチで、14はアップキー、15はダウンキーである。」(2頁右上欄19行?左下欄18行)

(け)「第1図においてキースイッチ13のアップキー14,ダウンキー15を押す毎にROM5よりパターンを読み出し、キーの種類と回数により上記演算をし、ビデオRAM6に書き込めば、任意に図形,文字パターンを上下方向に移動させることができる。
第3図は実際に位置合せする方法を図示したものであり、車両16の屋根に後方確認カメラ1が取り付けられている。車両の後方にたとえば、10mの位置にフラッグ17を立て、その映像を表示したものが画面21であり、ここで、アップキー14を押すとパターン22,25が上方に移動し、パターン23,26はそれぞれ24,27の中間まで移動する。逆にダウンキー15を押すと22?27は下方に移動し、任意にフラッグ17の位置に合せ込むことができる。」(3頁左上欄10行?右上欄4行)

〈発明の効果〉
(こ)「本発明によれば、車両の後方を確認するカメラと、距離スケールの図形や文字を発生させる信号発生装置と、多重された画像信号を上下方向に移動させる入力手段と、多重装置から出力された画像信号を表示するモニタとこれらの装置を制御するコントローラを設けることにより、距離スケールを上下に任意に動かし、距離スケールと実画面上の正確な位置合せを容易に行うことができ、その実用上の効果は大である。」(3頁左下欄3?11行)





(ア-2)甲第5号証の記載
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の後方に設置されたカメラからの映像を表示するとき、同時に車幅や距離等の目安をモニタ上に表示するカメラスケール表示装置に関するものである。」

〈従来の技術〉
「【0003】
図3において、車両後方に設置された後方確認用カメラ1からのカメラ映像信号SI、または他の映像入力端子からの映像信号S2は映像切替回路2を通じて映像信号処理回路3に入る。その後、映像信号はオンスクリーン表示処理回路4を通じ、表示デバイス5にて表示される。今、CPU6がバックギヤ信号等のカメラON信号を受け取ると、CPU6は電源回路8にてカメラ電源を立ち上げるよう信号を送ると共に、映像切替回路2をカメラ映像信号SIに切り替える。また、CPU6はROM11よりカメラスケールパターンデータを読み取り、オンスクリーン信号に変換してオンスクリーン表示処理回路4に送り、表示デバイス5にてカメラ映像とカメラスケールパターンを表示する。
【0004】
図4(a)、(b)は車両とカメラ位置並びに距離関係を示す側面図、平面図である。 図4(c)は図4(a)、(b)の内容のカメラ映像とカメラスケールの表示例であり、図中の符号41?48は表示ポイントのカメラスケールである。
【0005】
後方確認用カメラ1を車両13に取り付け、カメラスケールの位置を調整する場合、後方確認用カメラ1を基本カメラスケールを想定した条件、例えば、車幅の中央、かつ地上高2mに取り付け、距離を示すフラッグ12を車両後方の一定距離に立てる。この距離は表示デバイス5上のカメラスケールが、例えば、10mであれば10mに合わせる。次に、表示デバイス5にフラッグ12が表示されるように後方確認用カメラ1の取付け角度を合わせ、カメラスケール41と45がフラッグ12に合うように後方確認用カメラ1の取付け角度を微調するか、カメラスケール41?48のパターンを全体的に上下させて合わせる。これにより、車幅と一定距離間隔にてカメラスケールが表示されているため、運転車は後方の移動の際の目安となり、安全確認を行いやすくなっている。」

「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のカメラスケール表示装置では、カメラスケールを一定条件下でのパターンとしてROM11に記憶しているため、自由に後方確認用カメラ1の取付け位置を選択できない。また、車幅が想定していたものと異なっていたり、後方確認用カメラ取り付け位置の地上高が想定していた高さと異なったり、後方確認用カメラ取付け位置が車両中央から左右にずれていた場合、後方確認用カメラ1の取付け角度を変更したり、カメラスケール全体パターンの上下移動だけではカメラスケールと実際の車幅や距離と合わせることができず、カメラスケールの表示は実際の車幅や距離と合わせることができず。カメラスケールの表示は実際の車幅や距離と大きく異なってしまうという問題点があった。
【0007】
最近では車両後方をカメラ映像により安全確保したいという要望はトラックやバス等の大型車だけでなく一般の小型車にも多く、どのような車幅にも、かつカメラの取付位置の地上高や左右位置に関係なく、後方確認用カメラの取付け位置を自由に選択でき、実際の車幅や距離に合ったカメラスケールの表示が要望されている。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点を解決するもので、基本カメラスケールを想定した車幅やカメラ取付け位置の地上高や左右位置に関係なく、後方確認用カメラの取付け位置を自由に選択でき、実際の車幅、距離に合ったカメラスケールに表示位置を修正可能なカメラスケール表示装置を提供することを目的とするものである。」

〈発明の実施の形態〉
「【0013】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施の形態におけるカメラスケール表示装置を示すブロック図である。
【0014】
図3に示す前述の従来例のカメラスケール表示装置とほぼ同じ機能の構成要素、信号等には同じ符号を付し、その説明を省略する。本実施の形態において、前述の従来例と異なる点は、書換可能メモリ9と描画LSI110を備え、カメラスケールの座標データは書換可能メモリ9に記憶されており、変更可能であり、そして、描画LSI110は座標データに合わせたカメラスケール信号をオンスクリーン表示処理回路4に送り、表示デバイス5により表示させるようにしたことにある。
【0015】
図2はカメラスケールの表示例を示すものである。後方確認用カメラ1を車両13に対して図2(a)、(b)に示すような位置関係で取り付けた場合、基本カメラスケールのままで図2(c)に示すように、カメラスケール21、22、23、24、25、26、27、28は実際の距離や車幅を示す線と全く異なってしまう。こそで、カメラスケール21?28を図2(d)に示すカメラスケール31?38の位置に移動させればよい。
【0016】
まず、書換可能メモリ9内のカメラスケール21の座標データ(X21、Y21)をカメラスケール31の座標データ(X31、Y31)に変更し、書換可能メモリ9に記憶する。例えば、カメラスケール21が車両右側後方10mの位置を示す予定であれば、そのポイントに何か目印を置き、そのポイントにカメラスケール21が表示されるようにカメラスケール21を移動させ、その座標データ(X31、Y31)を新たなカメラスケール21の座標データとして書換可能メモリ9内の座標データを変更する。同様にして、カメラスケール22?28のそれぞれの座標データをカメラスケール32?38の各座標データに変更する。その新たな座標データにて描画LS110がカメラスケールを表示デバイス5に表示させることにより、図2(d)に示すように実際の車幅や距離に合ったカメラスケールとして表示が可能となる。」

「【0018】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、基本カメラスケールを想定した車幅並びに後方確認用カメラ取付け位置の地上高や左右位置に関係なく、後方確認用カメラ取付け位置を自由に選択でき、実際の車幅、距離に合ったカメラスケール表示に修正することが可能となり、運転車が車両後方の安全確認を行い易くなる。」









(ア-3)甲第6号証の記載
「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、目視による後方確認が困難な、たとえば、バス、トラック、1ボックスカー又はキャンピングカー等の車両に適用する車載用後方確認装置の改良に関する。
近年、車両後退時の安全確保のために、車両後方の状況を運転席に居ながらにして画像確認できるようにした、いわゆる車載用後方確認装置(バックアイシステムとも言う)が用いられるようになってきた。」

「【0002】
【従来の技術】
最も簡単なバックアイシステムは、車両後部の高所にカメラを取り付け、このカメラで撮影した車両の後方画像(単に「後方画像」と言う)を運転席のディスプレイ上に表示する、というものであるが、上記カメラは、少なくとも車両最後端部(一般にバンパー)を含む広範囲の画像を撮影する必要があり、その撮影レンズには広角レンズが用いられるから、ディスプレイ上の表示画像は、はなはだ距離感に欠けるものであった。
【0003】
そこで、特開平5-213113号公報には、後方画像に、距離目盛りパターン画像をオーバーラップ表示するものが記載されている。これによれば、ディスプレイ上の距離目盛りを確認することによって、距離感を正しくつかむことができ、障害物までの距離を直感的に把握することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる公報記載の従来装置にあっては、距離目盛りパターン画像が固定のものであったため、たとえば、カメラの取り付け方が適正でなかったり、又は、走行中の振動でカメラの取り付け傾斜角がずれたりした場合には、距離目盛りパターン画像と後方画像との対応関係が不適切となり、運転者は、誤った距離認識をしてしまい、かえって安全性を阻害するという問題点があった。」

「【0005】
【目的】
そこで、本発明は、カメラ(撮影手段)の取り付け状態に応じて距離目盛りパターン画像を補正することにより、距離目盛りパターン画像と後方画像との対応関係を常に適切化し、以て、運転者による正確な距離認識を安定的に確保することを目的とする。」

「【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1?図7は請求項1及び請求項2記載の発明に係る車載用後方確認装置の一実施例を示す図である。
まず、構成を説明する。図1において、1はCCD(Charge Coupled Device)又は撮像管等を用いたテレビカメラ(以下「カメラ」と略す)であり、このカメラ1は、車両2の所定位置(車両後方を広く見渡すことのできる、たとえば車両後部の高所)に取り付けられ、その撮影レンズ1aは、車両2の後方に向いている。すなわち、カメラ1は、車両2に取り付けられ、該車両2の後方画像Vを撮影する撮影手段として機能する。
【0012】
3はカメラ1を車両2に取り付けるための取り付け金具である。この取り付け金具3は、カメラ1の取り付け傾斜角(カメラアングルθ;以下、単に「アングルθ」と言う)を、所定の範囲内で自在に調節できるものであり、アングルθは角度センサ4によって検出される。また、5はカメラ1の取り付け高Hを設定するための設定スイッチであり、この設定スイッチ5には、たとえば、ディップスイッチやロータリースイッチ等が用いられ、地面からカメラ1までの高さを計測して、その値を手動で設定するものである。上記の角度センサ4及び設定スイッチ5は、一体として検出手段を構成する。
【0013】
さらに、6は変速機のシフト位置を検出するシフトセンサであり、このシフトセンサ6は、シフト位置がリバース位置(後退位置)にセットされたときに、リバース信号Rを出力するものである。
7は、画像発生手段及び補正手段並びに第二の画像発生手段としての機能を有するコントロールユニットである。コントロールユニット7は、第一受信部7a、第二受信部7b、RAM(random access memory)7c、ROM(read only memory)7d、CPU(central processing unit )7e、画像合成部7f及び画像出力部7gを含み、バックアイシステムの主要な機能をソフト的及びハード的に実現する。すなわち、CPU7eは、ROM7dに格納されている所定の処理プログラムを実行し、所定の時間ごとに、第一受信部7aを介してアングルθ及び取り付け高Hを取り込むとともに、テーブルルックアップ等の手法によって、これらの取り込みデータ(θ、H)に応じた距離目盛りパターン画像Sを発生するもので、距離目盛りパターン画像は、θとHの組み合わせの数だけROM7dに格納されている。たとえば、θをθ1 からθn までのn種類とし、HをH1からHm までのm種類とすると、n×m種類の距離目盛りパターン画像がROM7dに格納されており、θとHに応じてその中の一つが選択的に出力される。
【0014】
画像合成部7fは、CPU7eによって選択された距離目盛りパターン画像Sとカメラ1で撮影された後方画像Vとを重ね合わせ、オーバーラップ画像Oを生成するもので、オーバーラップ画像Oは、画像出力部7gを介し、運転席に設けられたディスプレイ(表示手段)8に出力される。なお、画像出力部7gは、第二受信部7bを介してリバース信号Rが受信されたときだけ、オーバーラップ信号Oの出力を許容する。これは、車両の後方確認を行なうときは、後退時だけであり、それ以外のときは、ディスプレイ8を他の用途(たとえばナビゲーションシステム)に振り向けた方が資産活用の点で好ましいからである。」





(ア-4)甲第7号証の記載
「 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両の後方等に設置されたカメラからの映像を運転席のモニターに表示するようにしたカメラシステム表示装置に関するものである。」

「 【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態は、車両に設置する後方確認用カメラとモニターで構成されたカメラシステム表示装置で、車両のバックギヤオン信号を検出したとき、モニターと車両の後方確認用として設置された後方確認カメラが動作し、前記モニターにカメラ映像とともにオンスクリーン表示処理によってオンスクリーンまたはスーパーインポーズで距離表示や車幅表示等を出画するようにしたものである。
【0013】
このカメラシステム表示装置によれば、後方確認カメラのモニターとして使用するときには後方確認用の距離表示,車幅表示等をモニター上に出画することができ、前記以外のモニターとして使用するときには視覚上障害となる後方確認用の表示を消すことができる作用を有する。」

「 【0023】
なお、以上の説明では、後方確認カメラ1とモニター2で構成した例で説明したが、モニター2への映像入力を増設していき、前方カメラ,側方カメラの表示もカメラの視野角,方向に合わせてオンスクリーンのパターンを設定すれば、同様にオンスクリーン表示ができる。」

「 【0024】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、カメラで後方確認するときだけ距離表示,車幅表示等を出画するため、他の映像、例えばテレビジョン,ビデオ,ナビゲーション等の映像を出画したとき、視覚上障害にならない。
【0025】
また、表示はオンスクリーンで出すため、種々の車両やカメラの取付位置、特に高さに対応した何種類もの距離表示,車幅表示をすることができることや、カメラの視野角の異なる場合でも対応ができる。また、後方確認ばかりでなく、前方カメラ、側方カメラのオンスクリーン表示もできる。」

(ア-5)周知技術
甲第4号証には、
「カーエレクトロニクスは車の安全性、快適性、娯楽性の向上を追求するものであるが特に車両後方の安全性確保と死角除去のために、後方確認カメラを搭載する車が増えている。」(上記(あ))
「後方確認カメラ41より入力された映像信号はモニタ42により映し出されるが、・・・モニタ42の本体、または前面カバーに距離を示すスケール43が印刷されており、障害物があった場合、そこまでの距離が容易に認識でき、後方の安全を確認することができる。」(上記(え))
「しかしながら、上記のような構成では、・・・固定しても車体の振動、風圧等によりカメラの位置がずれ、正確な距離が表示できない可能性があった。・・
本発明の目的は、従来の欠点を解消し、後方確認カメラからの映像信号に図形文字信号を発生する信号発生器からの距離スケールを多重させ、この距離スケールを任意に上下できる手段を付加し、距離合せの正確化、容易化を図る後方確認表示装置を提供することである。」(上記(お))と記載され、
甲第5号証には、
「本発明は、車両の後方に設置されたカメラからの映像を表示するとき、同時に車幅や距離等の目安をモニタ上に表示するカメラスケール表示装置に関するものである。」(段落【0001】)
「後方確認用カメラ1を車両13に取り付け、カメラスケールの位置を調整する場合、後方確認用カメラ1を基本カメラスケールを想定した条件、例えば、車幅の中央、かつ地上高2mに取り付け、距離を示すフラッグ12を車両後方の一定距離に立てる。この距離は表示デバイス5上のカメラスケールが、例えば、10mであれば10mに合わせる。次に、・・・カメラスケール41?48のパターンを全体的に上下させて合わせる。これにより、車幅と一定距離間隔にてカメラスケールが表示されているため、運転車は後方の移動の際の目安となり、安全確認を行いやすくなっている。」(段落【0005】)
「車幅が想定していたものと異なっていたり、後方確認用カメラ取り付け位置の地上高が想定していた高さと異なったり、後方確認用カメラ取付け位置が車両中央から左右にずれていた場合、後方確認用カメラ1の取付け角度を変更したり、カメラスケール全体パターンの上下移動だけではカメラスケールと実際の車幅や距離と合わせることができず、カメラスケールの表示は実際の車幅や距離と合わせることができず。カメラスケールの表示は実際の車幅や距離と大きく異なってしまうという問題点があった。」(段落【0006】)
「本発明は、上記従来の問題点を解決するもので、基本カメラスケールを想定した車幅やカメラ取付け位置の地上高や左右位置に関係なく、後方確認用カメラの取付け位置を自由に選択でき、実際の車幅、距離に合ったカメラスケールに表示位置を修正可能なカメラスケール表示装置を提供することを目的とするものである。」(段落【0008】)と記載され、
甲第6号証には、
「近年、車両後退時の安全確保のために、車両後方の状況を運転席に居ながらにして画像確認できるようにした、いわゆる車載用後方確認装置・・・が用いられるようになってきた。」(段落【0001】)
「特開・・・号公報には、後方画像に、距離目盛りパターン画像をオーバーラップ表示するものが記載されている。これによれば、ディスプレイ上の距離目盛りを確認することによって、距離感を正しくつかむことができ、障害物までの距離を直感的に把握することができる。」(段落【0003】)
「しかしながら、かかる公報記載の従来装置にあっては、距離目盛りパターン画像が固定のものであったため、たとえば、カメラの取り付け方が適正でなかったり、又は、走行中の振動でカメラの取り付け傾斜角がずれたりした場合には、距離目盛りパターン画像と後方画像との対応関係が不適切となり、運転者は、誤った距離認識をしてしまい、かえって安全性を阻害するという問題点があった。」(段落【0004】)
「そこで、本発明は、カメラ(撮影手段)の取り付け状態に応じて距離目盛りパターン画像を補正することにより、距離目盛りパターン画像と後方画像との対応関係を常に適切化し、以て、運転者による正確な距離認識を安定的に確保することを目的とする。」(段落【0005】)と記載され、
甲第7号証には、
「本発明は車両の後方等に設置されたカメラからの映像を運転席のモニターに表示するようにしたカメラシステム表示装置に関するものである。」(段落【0001】)
「本発明の実施の形態は、車両に設置する後方確認用カメラとモニターで構成されたカメラシステム表示装置で、車両のバックギヤオン信号を検出したとき、モニターと車両の後方確認用として設置された後方確認カメラが動作し、前記モニターにカメラ映像とともにオンスクリーン表示処理によってオンスクリーンまたはスーパーインポーズで距離表示や車幅表示等を出画するようにしたものである。」(段落【0012】)
「なお、以上の説明では、後方確認カメラ1とモニター2で構成した例で説明したが、モニター2への映像入力を増設していき、前方カメラ,側方カメラの表示もカメラの視野角,方向に合わせてオンスクリーンのパターンを設定すれば、同様にオンスクリーン表示ができる。」(段落【0023】)と記載されている。

また、甲第4号証?甲第7号証は、車両の後方を確認するものであるが、距離を示す画像は、車からの距離を確認するためのものであり、距離の基準は、車が後退した場合に衝突する場所であって、車が後退する場合の先端、すなわち車の進行する方向の先端が距離を示す画像の基準となっていることは、明らかである。

これら甲第4号証?甲第7号証の記載から、車両にカメラを取付け、カメラからの画像に車の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示することは、周知技術と認められ、これら甲第4号証?甲第6号証の記載から、カメラからの画像と距離を示す画像の表示位置がずれた場合等に備え、距離を示す画像の表示位置を調整できるようにすることは、周知技術と認められる。

(イ)甲第3号証に記載された発明
(イ-1)甲第3号証の記載
甲第3号証には、運転支援装置及び運転支援方法(発明の名称)に関し、図面と共に次に揚げる事項が記載されている。

〈発明の属する技術分野〉
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、運転支援装置及び運転支援方法に関するものである。」

〈発明が解決しようとする課題〉
「【0006】本発明は、前記従来の運転支援装置の問題点を解決して、運転者にとって死角の部分の画像のうち、運転者の意図に合う最適な画像を形成することができ、しかも、画像を形成するための作業を簡素化することができる運転支援装置及び運転支援方法を提供することを目的とする。」

〈発明の実施の形態〉
「【0024】・・・車両11の4隅に配設されたカメラCFL、CFR、CRL、CRR」

「【0033】・・・制御装置12は、表示処理手段としての図示されない・・・障害物回避表示処理手段・・・を有する。」

「【0042】・・・画像形成処理手段91(図1)は車両11の左前端部分の画像PFLをディスプレイ22の表示画面に形成し・・・」

「【0043】なお、画像PFL、PFR、PRL、PRRには、車両11の一部、溝52、壁53等が表示されるとともに、車両11の最外側の縁を表す表示ライン54が表示される。該表示ライン54は、車両11の最外側のラインを地面に垂直に下ろし、前記ラインを車両11の前後方向に延長させることによって設定され、車両11の前方又は後方に向けて突出させられる。・・・」

「【0063】次に、障害物を回避する場合の画像PFLの例について説明する。
【0064】図15は本発明の実施の形態における障害物回避表示処理によって形成される画像の第1の例を示す図、図16は本発明の実施の形態における障害物回避表示処理によって形成される画像の第2の例を示す図である。
【0065】図において、11は車両、61は障害物としての他の車両である。この場合、画像PFL(図8)の第1の例においては、車両11を前進させる場合に、舵角の大きさに対応させて車両11の最外側の縁が通る予測軌跡線を表す表示ライン55、及び車両11を後退させる場合に、舵角の大きさに対応させて車両11の最外側の縁が通る予測軌跡線を表す表示ライン63が画像PFLに表示される。なお、車外が暗い場合、及び太陽又は照明灯の光によって道路の面51(図12)に車両11又は他の物体の影が写る場合においては、車両11の色が暗色系であると、表示画面上の車両11の輪郭を判別することが困難になる。そこで、車両11の周縁に重ねて輪郭線67を表示することができる。
【0066】また、画像PFLの第2の例においては、車両61と車両11との間の間隔の目安となる距離線64?66を車両11からの距離(例えば「15cm」、「50cm」、「2m」等)と共に画像PFLに表示することもできる。」

「【0078】なお、車両11を後退させ、位置ST2から位置ST3を経て、駐車スペースに移動させる間、画像PRL、PRRが一つの表示画面に形成される。この場合、図20に示されるように、表示画面の左側には画像PRLが、右側には画像PRRが形成され、それぞれ表示ライン54が表示され、画像PRL、PRRの間隔は運転者が実感することができるように設定される。
【0079】なお、図20に示されるように、画像PRL、PRRに目標駐車枠基準線75を表示することもできる。該目標駐車枠基準線75は、車両11を標準的な駐車スペースに正確に駐車させたときの駐車スペースの形状を表す。」

「【図16】



「【図20】



(イ-2)甲第3号証に記載された発明
段落【0066】には、
「また、画像PFLの第2の例においては、車両61と車両11との間の間隔の目安となる距離線64?66を車両11からの距離(例えば「15cm」、「50cm」、「2m」等)と共に画像PFLに表示することもできる。」
と記載され、画像PFLは、「車両11の左前端部分の画像」(段落【0042】)であるから、
甲第3号証には、「距離線64?66を車両11からの距離(例えば「15cm」、「50cm」、「2m」等)と共に車両11の左前端部分の画像PFLに表示すること」が記載されている。
したがって、甲第3号証には、
「車両からの距離を示す線である距離線64?66を車両の左前端部分の画像PFLに表示すること」
が開示され、この表示は表示手段に表示されることは明らかである。
段落【0065】には、「図16は本発明の実施の形態における障害物回避表示処理によって形成される画像の第2の例を示す図である。」と記載されているから、図16の画像は、「障害物回避表示処理によって形成され」、さらに、「制御装置12は、・・・障害物回避表示処理手段を有する」(段落【0033】)から、図16の画像は、「障害物回避表示処理手段」により形成される。この「障害物回避表示処理手段」の処理は、「車両からの距離を示す線である距離線64?66を車両の左前端部分の画像PFLに表示すること」であり、「車両からの距離を示す線である距離線64?66」と「車両の左前端部分の画像PFL」とを合成し、表示手段に「表示する」ことといえる。したがって、「障害物回避表示処理手段」は、「車両からの距離を示す線である距離線64?66と車両の左前端部分の画像PFLとを合成し、表示手段に表示する画像合成手段」といえる。
また、甲第3号証には、「運転支援装置」が記載され、段落【0065】、【0066】に記載されているように、「車両からの距離を示す線である距離線64?66を車両の左前端部分の画像PFLに表示すること」が開示されているから、「運転支援装置」は「車両用監視装置」といえる。

被請求人は、平成25年4月22日付け回答書において、距離線64?66は、車両の左斜め前方向の距離を示す線であると主張する(上記第四 2(3)ケb(b)?(e))。
しかしながら、甲3発明は、車両用監視装置であって、障害物回避表示処理(段落【0064】?【0066】)をするものであるから、距離線64?66は障害物を回避するために表示するものである。そうすると、距離線は、表示手段に表示される障害物までの距離を把握するためのものと認められ、距離線は、車両の左斜め前方向の距離のみを示す線だけではなく、車両からの距離を示す線といえる。

以上より、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。

「車両からの距離を示す線である距離線64?66と車両の左前端部分の画像PFLとを合成し、表示手段に表示する画像合成手段を有する車両用監視装置」

(ウ)相違点1について
甲2発明は「車両用監視装置」であり、車両にカメラを取付け、カメラからの画像に車の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示することは、周知技術(上記(ア-5))であることを勘案すれば、車両用監視装置に係る甲2発明に、車両用監視装置であり、車両の画像と距離を示す画像を合成して表示するものである甲3発明を適用することは、当業者が容易に着想できることである。
甲2発明に甲3発明を適用することは、甲2発明における「撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段」に、障害物を回避するために「距離線」を表示することとなり、甲2発明に、車両からの距離を示す線である距離線と第一の画像とを合成して表示手段に表示する画像合成手段を設けることとなる。「第一の画像」は、甲第2号証の第4図のようなフロントフェンダ部側方近傍の映像(画像)であり、車の進行方向も写っているものであって、運転者は、側方だけでなく、当然前方にも注意を払うものである。この画像において、障害物が存在しうる場所は、車両の左側及び車両の前方であって、障害物を回避するために「距離線」を表示する場所は、車両の左側及び車両の前方となる。そして、車両の左側の距離線は、車両の左側方向の距離を示す距離線といえ、車両の前方の距離線は、車両の前方向の距離を示す距離線といえる。
甲2発明に甲3発明を適用して、車両の左側における障害物を回避するための車両の左側方向の距離を示す線を第一の画像に表示することは、車が進行した場合に脱輪や左側を接触しないようにするためであって、甲第3号証には「車両11の最外側の縁を表す表示ライン54」が記載され、「表示ライン54は、車両11の最外側のラインを地面に垂直に下ろし、前記ラインを車両11の前後方向に延長させることによって設定され、車両11の前方又は後方に向けて突出させられる」(段落【0043】)ものであり、表示ライン54は車両11の最外側の縁を表すから、距離線の基準となるものであり、車両の左側方向の距離を示す線は、車両の最外側の縁からの距離を示す線となり、この線は「車両の幅方向の距離を示す第一の指標」といえるから、甲2発明に甲3発明を適用して、車両の左側方向を示す線を「車両の幅方向の距離を示す第一の指標」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
甲2発明に甲3発明を適用して、車両の前方における障害物を回避するための車両の前方向の距離を示す線を第一の画像に表示するにあたり、車両にカメラを取付け、カメラからの画像に車の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示することは周知技術(上記(ア-5))であるから、車両の前方向の距離を示す線の基準を車両の先端とし、そして、上方から見た車両の形状は、甲第3号証の図2に車両の概念図に示されているように通常四角であって、直線的であり、また、甲第3号証の「目標駐車枠基準線75」(段落【0079】)は距離線ではないが、車両に関係する線が直線で表されていることを勘案すれば、甲第2号証の第4図に示されているような車体の画像に、甲3発明を適用し、車両の前方向の距離を示す線を「車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標」にすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、甲2発明に甲3発明を適用して、甲2発明に「前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両先端が写っていない前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二の画像を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を設けるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(エ)相違点2について
カメラからの画像と距離を示す画像の表示位置がずれた場合等に備え、距離を示す画像の表示位置を調整できるようにすることは、周知技術であることは、上記(ア-5)のとおりである。
そして、甲第4号証には、「固定しても車体の振動、風圧等によりカメラの位置がずれ、正確な距離が表示できない可能性があった。」(上記(お))と記載され、甲第6号証には、「走行中の振動でカメラの取り付け傾斜角がずれたりした場合には、距離目盛りパターン画像と後方画像との対応関係が不適切となり」(段落【0004】)と記載されているように、カメラからの画像と距離を示す画像との表示位置がずれることは、普通に想定されるから、甲2発明に甲3発明を適用する際に、車体の振動等によりカメラからの画像と距離を示す画像との表示位置がずれることに備え、距離を示す画像の表示位置を調整できるようにすることは容易であり、2つの画像の表示位置の合わせ方として、平行移動や回転移動させることは普通のことであるから、「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記両面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」を設けることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(オ)効果
以上のように、相違点1、相違点2に係る構成は、当業者が容易に想到できたものである。そして、本件特許発明1の構成は、上記のとおり当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

オ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものである。

(2)記載不備(特許法第36条第6項第1号)
本件特許明細書には以下の記載がある。

「 【0017】
次に、距離指標画像32の表示位置調整について説明する。メインスイッチ23がオンになっている状態で、セットスイッチ24をオンすると、撮像画像31及び距離指標画像32と共に、車両指標画像33が表示される。そして、十字形スイッチ25を操作することにより、距離指標画像32及び車体指標画像33を上下左右に移動させることができる。車両指標画像33が、車両の画像31aに一致していない場合は、画面28aにおける距離指標画像32及び車両指標画像33の表示位置を十字形スイッチ25で調整する。
【0018】
例えば、図6のように、車両指標画像33が車両の画像31よりも左側に位置しているときは、十字形スイッチ25の右方向マーク部分25aを押して、距離指標画像32及び車両指標画像33を右側に移動させ、車両指標画像33を車両の画像31aに一致させる(図1参照)。そして、再びセットスイッチ24を押すと、表示位置調整が終了する。」

請求項1に記載の「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」ことが、発明の詳細な説明に記載されているか検討する。
「前記第二の画像」は、「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二の画像」であり、距離指標画像32に相当する。そして、段落【0017】には、「十字形スイッチ25を操作することにより、距離指標画像32及び車体指標画像33を上下左右に移動させることができる。車両指標画像33が、車両の画像31aに一致していない場合は、画面28aにおける距離指標画像32及び車両指標画像33の表示位置を十字形スイッチ25で調整する。」と記載されている。この記載から、「十字形スイッチ25を操作することにより、距離指標画像32」「を上下左右に移動させることができ」ること、「画面28aにおける距離指標画像32」「の表示位置を十字形スイッチ25で調整」できることは、明らかである。
そうすると、前記第二の画像である距離指標画像32を上下左右に移動させることができ、前記第二の画像である距離指標画像32の表示位置を十字形スイッチ25で調整することが記載されていると認められるから、「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」ことは、発明の詳細な説明に記載されていると認められる。
また、段落【0001】、【0010】?【0016】の記載、段落【0022】【符号の説明】、【図1】?【図4】から、
「ドアミラーに配設されており、前記ドアミラーよりも前にある前輪近傍を撮像する撮像手段」は、「CDDカメラ15」であり、「前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段」は、「表示器28」であり、「前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両先端が写っていない前記第一の画像」は、「撮像画像(第一の画像)31」であり、「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二の画像」は、「距離指標画像(第二の画像)32」であり、「前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両先端が写っていない前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」は、「表示コントローラ27」である。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものである。
また、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものである。

2 本件特許発明2
(1)進歩性
ア 対比
本件特許発明2と甲2発明とを対比すると、上記1(1)ウの相違点1、相違点2に加え、以下の点で相違する。

(相違点3)
本件特許発明2が「前記第一の指標及び前記第二の指標は、夫々複数のラインを有する」のに対し、甲2発明がこのような構成を有しない点

イ 判断
(ア)相違点1、相違点2について
本件特許発明2と甲2発明との相違点1、相違点2は、本件特許発明1と甲2発明との相違点1、相違点2と同じであるから、その判断は、上記1(1)エ(ウ)、(エ)を援用する。

(イ)相違点3について
甲3発明は、「車両からの距離を示す線である距離線64?66」を有し、「複数のラインを有する」といえるから、相違点3は甲2発明に甲3発明を組み合わせることで当業者が容易に想到し得ることである。

(ウ)効果
以上のように、相違点1?3に係る構成は、当業者が容易に想到できたものである。そして、本件特許発明2の構成は、上記のとおり当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明2は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものである。

(2)記載不備(特許法第36条第6項第1号)
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用しているところ、本件特許発明1が発明の詳細な説明に記載したものであることは、上記1(2)のとおりであり、本件特許特許2における本件特許発明1を引用している以外の部分は、段落【0015】及び【図1】に記載されているから、本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明2は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものである。
また、本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載したものである。

3 本件特許発明3
(1)進歩性
ア 対比
本件特許発明3と甲2発明とを対比すると、

「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と、
を設けたことを特徴とする車両用監視装置。」

で、一致し、以下の点で相違する。

(相違点1’)
本件特許発明3が「前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を有し、「前記直線は、前記幅方向に沿って延び(、)」るものであるのに対し、
甲2発明は、「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有する第二の画像」がなく、また、「前記直線は、前記幅方向に沿って延び(、)」るものではなく、さらに、第一の画像と第二の画像を「合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を有していない点

(相違点2)
本件特許発明3が「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」を有しているのに対し、甲2発明ではこのような構成を有していない点

(相違点4)
本件特許発明3が「前記第二の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段を有する」のに対し、甲2発明がこのような構成を有しない点

イ 判断
(ア)相違点1’について
甲2発明は「車両用監視装置」であり、車両にカメラを取付け、カメラからの画像に車の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示することは、周知技術(上記1(1)エ(ア-5))であることを勘案すれば、車両用監視装置に係る甲2発明に、車両用監視装置であり、車両の画像と距離を示す画像を合成して表示するものである甲3発明を適用することは、当業者が容易に着想できることである。
甲2発明に甲3発明を適用することは、甲2発明における「撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段」に、障害物を回避するために「距離線」を表示することとなり、甲2発明に、車両からの距離を示す線である距離線と第一の画像とを合成して表示手段に表示する画像合成手段を設けることとなる。「第一の画像」は、甲第2号証の第4図のようなフロントフェンダ部側方近傍の映像(画像)であり、車の進行方向も写っているものであって、運転者は、側方だけでなく、当然前方にも注意を払うものである。この画像において、障害物が存在しうる場所は、車両の左側及び車両の前方であって、障害物を回避するために「距離線」を表示する場所は、車両の左側及び車両の前方となる。そして、車両の左側の距離線は、車両の左側方向の距離を示す距離線といえ、車両の前方の距離線は、車両の前方向の距離を示す距離線といえる。
甲2発明に甲3発明を適用して、車両の左側における障害物を回避するための車両の左側方向の距離を示す線を第一の画像に表示することは、車が進行した場合に脱輪や左側を接触しないようにするためであって、甲第3号証には「車両11の最外側の縁を表す表示ライン54」が記載され、「表示ライン54は、車両11の最外側のラインを地面に垂直に下ろし、前記ラインを車両11の前後方向に延長させることによって設定され、車両11の前方又は後方に向けて突出させられる」(段落【0043】)ものであり、表示ライン54は車両11の最外側の縁を表すから、距離線の基準となるものであり、車両の左側方向の距離を示す線は、車両の最外側の縁からの距離を示す線となり、この線は「車両の幅方向の距離を示す第一の指標」といえるから、甲2発明に甲3発明を適用して、車両の左側方向を示す線を「車両の幅方向の距離を示す第一の指標」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
甲2発明に甲3発明を適用して、車両の前方における障害物を回避するための車両の前方向の距離を示す線を第一の画像に表示するにあたり、距離を示す画像において車の進行する方向の先端を基準とすることは周知技術(上記(ア-5))であるから、車両の前方向の距離を示す線の基準を車両の先端とし、そして、上方から見た車両の形状は、甲第3号証の図2に車両の概念図に示されているように通常四角であって、直線的であり、また、甲第3号証の「目標駐車枠基準線75」(段落【0079】)は距離線ではないが、車両に関係する線が直線で表されていることを勘案すれば、甲第2号証の第4図に示されているような車体の画像に、甲3発明を適用し、車両の前方向の距離を示す線を「車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標」とし、「前記直線は、前記幅方向に沿って延び(、)」るものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、甲2発明に甲3発明を適用して、甲2発明に「前輪近傍の路面を含む前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を設けるようにし、「前記直線は、前記幅方向に沿って延び(、)」るようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(イ)相違点2について
本件特許発明3と甲2発明との相違点2は、本件特許発明1と甲2発明との相違点2と同じであるから、その判断は、上記1(1)エ(エ)を援用する。

(ウ)相違点4について
甲3発明は、「車両からの距離を示す線である距離線64?66」と「車両の左前端部分の画像PFLとを合成し、表示手段に表示する」のであるから、「車両からの距離を示す線である距離線64?66」の画像データを記憶した記憶手段を有することは明らかである。
そして、上記(ア)のとおり、甲2発明に甲3発明を適用して、甲2発明に「前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を設けるようにすることは容易に想到し得ることであり、「前記第一の画像と、・・・第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる」ために、第二の画像の画像データを記憶した記憶手段を有するようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、相違点4は甲2発明に甲3発明を組み合わせることで当業者が容易に想到し得ることである。

(エ)効果
以上のように、相違点1’、相違点2、相違点4に係る構成は、当業者が容易に想到できたものである。そして、本件特許発明3の構成は、上記のとおり当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明3は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものである。

(2)記載不備(特許法第36条第6項第1号)
本件特許明細書には以下の記載がある。

「 【0017】
次に、距離指標画像32の表示位置調整について説明する。メインスイッチ23がオンになっている状態で、セットスイッチ24をオンすると、撮像画像31及び距離指標画像32と共に、車両指標画像33が表示される。そして、十字形スイッチ25を操作することにより、距離指標画像32及び車体指標画像33を上下左右に移動させることができる。車両指標画像33が、車両の画像31aに一致していない場合は、画面28aにおける距離指標画像32及び車両指標画像33の表示位置を十字形スイッチ25で調整する。
【0018】
例えば、図6のように、車両指標画像33が車両の画像31よりも左側に位置しているときは、十字形スイッチ25の右方向マーク部分25aを押して、距離指標画像32及び車両指標画像33を右側に移動させ、車両指標画像33を車両の画像31aに一致させる(図1参照)。そして、再びセットスイッチ24を押すと、表示位置調整が終了する。」

請求項3に記載の「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」ことが、発明の詳細な説明に記載されているか検討する。
「前記第二の画像」は、「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有する第二の画像」であり、距離指標画像32に相当する。そして、段落【0017】には、「十字形スイッチ25を操作することにより、距離指標画像32及び車体指標画像33を上下左右に移動させることができる。車両指標画像33が、車両の画像31aに一致していない場合は、画面28aにおける距離指標画像32及び車両指標画像33の表示位置を十字形スイッチ25で調整する。」と記載されている。この記載から、「十字形スイッチ25を操作することにより、距離指標画像32」「を上下左右に移動させることができ」ること、「画面28aにおける距離指標画像32」「の表示位置を十字形スイッチ25で調整」できることは、明らかである。
そうすると、前記第二の画像である距離指標画像32を上下左右に移動させることができ、前記第二の画像である距離指標画像32の表示位置を十字形スイッチ25で調整することが記載されていると認められるから、「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する」ことは、発明の詳細な説明に記載されていると認められる。
また、段落【0001】、【0010】?【0016】の記載、段落【0022】【符号の説明】、【図1】?【図4】から、
「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段」は、「CDDカメラ15」であり、「前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段」は、「表示器28」であり、「前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像」は、「撮像画像(第一の画像)31」であり、「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有する第二の画像」は、「距離指標画像(第二の画像)32」であり、「前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」は、「表示コントローラ27」であり、「前記直線は、前記幅方向に沿って延び」は、「距離ライン(第二の指標)32b」であり、「前記第二の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段」は、「フラッシュメモリ26」である。
したがって、本件特許発明3は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明3は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものである。
また、本件特許発明3は、発明の詳細な説明に記載したものである。

4 本件特許発明4
(1)進歩性
ア 対比
本件特許発明4と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「撮像手段」は、第1図に示されているように配置され、第4図に示されている映像を撮像するから、「ドアミラーに配設されており、前記ドアミラーよりも前にある前輪近傍を撮像する撮像手段」といえる。
また、甲2発明の「第一の画像」は、第4図に示されている画像であって、「前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両の先端が写っていない」ものと認められる。そして、「車両の画像」は、第4図に示されているように、「前記ドアミラーよりも前にある前輪の画像を含(み、)」んでいるといえる。
したがって、本件特許発明4と甲2発明とは、

「ドアミラーに配設されており、前記ドアミラーよりも前にある前輪近傍を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と、
を設け、
前記第一の画像は前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両の先端が写っていない画像であり、
前記車両の画像は、前記ドアミラーよりも前にある前輪の画像を含む、
ことを特徴とする車両用監視装置。」

で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1”)
本件特許発明4が「前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両先端が写っていない前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を有し、「前記第一の指標及び前記第二の指標は、前記路面上に位置するように前記表示手段に表示され」、「前記第二の指標は、車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置され」るのに対し、
甲2発明は「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二の画像」がなく、「前記第一の指標及び前記第二の指標は、前記路面上に位置するように前記表示手段に表示され」ず、「前記第二の指標は、車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置され」ておらず、また、第一の画像と第二の画像を「合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を有していない点

(相違点2)
本件特許発明4が「前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」を有しているのに対し、甲2発明ではこのような構成を有していない点

(相違点5)
本件特許発明4が「前記表示位置調整手段は、前記第二の画像を上下左右に移動させる操作スイッチを有する」のに対し、甲2発明がこのような構成を有しない点

イ 判断
(ア)相違点1”について
甲2発明は「車両用監視装置」であり、車両にカメラを取付け、カメラからの画像に車の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示することは、周知技術(上記1(1)エ(ア-5))であることを勘案すれば、車両用監視装置に係る甲2発明に、車両用監視装置であり、車両の画像と距離を示す画像を合成して表示するものである甲3発明を適用することは、当業者が容易に着想できることである。
甲2発明に甲3発明を適用することは、甲2発明における「撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段」に、障害物を回避するために「距離線」を表示することとなり、甲2発明に、車両からの距離を示す線である距離線と第一の画像とを合成して表示手段に表示する画像合成手段を設けることとなる。「第一の画像」は、甲第2号証の第4図のようなフロントフェンダ部側方近傍の映像(画像)であり、車の進行方向も写っているものであって、運転者は、側方だけでなく、当然前方にも注意を払うものである。この画像において、障害物が存在しうる場所は、車両の左側及び車両の前方であって、障害物を回避するために「距離線」を表示する場所は、車両の左側及び車両の前方となる。そして、車両の左側の距離線は、車両の左側方向の距離を示す距離線といえ、車両の前方の距離線は、車両の前方向の距離を示す距離線といえる。
甲2発明に甲3発明を適用して、車両の左側における障害物を回避するための車両の左側方向の距離を示す線を第一の画像に表示することは、車が進行した場合に脱輪や左側を接触しないようにするためであって、甲第3号証には「車両11の最外側の縁を表す表示ライン54」が記載され、「表示ライン54は、車両11の最外側のラインを地面に垂直に下ろし、前記ラインを車両11の前後方向に延長させることによって設定され、車両11の前方又は後方に向けて突出させられる」(段落【0043】)ものであり、表示ライン54は車両11の最外側の縁を表すから、距離線の基準となるものであり、車両の左側方向の距離を示す線は、車両の最外側の縁からの距離を示す線となり、この線は「車両の幅方向の距離を示す第一の指標」といえるから、甲2発明に甲3発明を適用して、車両の左側方向を示す線を「車両の幅方向の距離を示す第一の指標」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
甲2発明に甲3発明を適用して、車両の前方における障害物を回避するための車両の前方向の距離を示す線を第一の画像に表示するにあたり、距離を示す画像において車の進行する方向の先端を基準とすることは周知技術(上記(ア-5))であるから、車両の前方向の距離を示す線の基準を車両の先端とし、そして、上方から見た車両の形状は、甲第3号証の図2に車両の概念図に示されているように通常四角であって、直線的であり、また、甲第3号証の「車両11の最外側の縁を表す表示ライン54」(段落【0043】)や「目標駐車枠基準線75」(段落【0079】)は距離線ではないが、車両に関係する線が直線で表されていることを勘案すれば、甲第2号証の第4図に示されているような車体の画像に、甲3発明を適用し、車両の前方向の距離を示す線を「車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標」とし、「前記第二の指標は、車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置され」るようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、甲2発明に甲3発明を適用する際に、甲第4号証?甲第6号証に示されているように、距離を示す画像は、路面上に位置するように表示することは周知の技術であることを勘案し、「前記第一の指標及び前記第二の指標は、前記路面上に位置するように前記表示手段に表示され」るようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、甲2発明に甲3発明を適用して、甲2発明に「前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両先端が写っていない前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を設け、「前記第一の指標及び前記第二の指標は、前記路面上に位置するように前記表示手段に表示され」、「前記第二の指標は、車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置され」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(イ)相違点2について
本件特許発明4と甲2発明との相違点2は、本件特許発明1と甲2発明との相違点2と同じであるから、その判断は、上記1(1)エ(エ)を援用する。

(ウ)相違点5について
表示位置を調整するための手段として、画像を移動させる操作スイッチは、周知技術であり(例えば、甲第4号証には「キースイッチ13はROM5から読み出された画像パターンや文字パターンを上下方向に移動させるスイッチで、・・・」(2頁左下欄15?17行)と記載されている。)、また、上下左右を指示する操作スイッチは、周知慣用の技術であるから、表示位置調整手段として、このような操作スイッチを用い、「前記表示位置調整手段は、前記第二の画像を上下左右に移動させる操作スイッチを有する」ことは、甲2発明に甲3発明及び周知技術を組み合わせることで当業者が容易に想到し得ることである。

(エ)効果
以上のように、相違点1”、相違点2、相違点5に係る構成は、当業者が容易に想到できたものである。そして、本件特許発明4の構成は、上記のとおり当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明4は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものである。

(2)記載不備(特許法第36条第6項第1号)
本件特許発明4は、本件特許発明1を引用しているところ、本件特許発明1が発明の詳細な説明に記載したものであることは、上記1(2)のとおりである。
「前記第一の指標及び前記第二の指標は、前記路面上に位置するように前記表示手段に表示され、前記車両の画像は、前記ドアミラーよりも前にある前輪の画像を含み、前記第二の指標は、車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置されており、」は、【図1】に記載され、「前記表示位置調整手段は、前記第二の画像を上下左右に移動させる操作スイッチを有すること」は、段落【0017】及び【図5】に記載されている。
したがって、本件特許発明4は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明4は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものである。
また、本件特許発明4は、発明の詳細な説明に記載したものである。

5 本件特許発明5
(1)進歩性
ア 対比
本件特許発明5と甲2発明とを対比すると、上記1(1)ウの相違点1、相違点2に加え、以下の点で相違する。

(相違点6)
本件特許発明5が「前記表示位置調整手段は、前記第二の画像の角度を調整する」のに対し、甲2発明がこのような構成を有しない点

イ 判断
(ア)相違点1、相違点2について
本件特許発明5と甲2発明との相違点1、相違点2は、本件特許発明1と甲2発明との相違点1、相違点2と同じであるから、その判断は、上記1(1)エ(ウ)、(エ)を援用する。

(イ)相違点6について
上記1(1)エ(エ)のとおり、2つの画像の表示位置の合わせ方として、回転移動させることも普通のことであるから、甲2発明に甲3発明を適用する際に、「画像の角度を調整する」ようにし、「前記表示位置調整手段は、前記第二の画像の角度を調整する」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(ウ)効果
以上のように、相違点1、相違点2、相違点6に係る構成は、当業者が容易に想到できたものである。そして、本件特許発明5の構成は、上記のとおり当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明5は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものである。

(2)記載不備(特許法第36条第6項第1号)
本件特許発明5は、本件特許発明1を引用しているところ、本件特許発明1が発明の詳細な説明に記載したものであることは、上記1(2)のとおりであり、本件特許特許5における本件特許発明1を引用している以外の部分は、段落【0020】に記載されているから、本件特許発明5は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明5は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものである。
また、本件特許発明5は、発明の詳細な説明に記載したものである。

第五 むすび

以上のとおりであるから、本件特許の請求項1から請求項5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定においてさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
車両用監視装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアミラーに配設されており、前記ドアミラーよりも前にある前輪近傍を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と、を備えた車両用監視装置であって、
前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両先端が写っていない前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と、
前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と、を設けたことを特徴とする車両用監視装置。
【請求項2】
前記第一の指標及び前記第二の指標は、夫々複数のラインを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項3】
ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と、を備えた車両用監視装置であって、
前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と、
前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と、を設け、
前記直線は、前記幅方向に沿って延び、
前記第二の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段を有することを特徴とする車両用監視装置。
【請求項4】
前記第一の指標及び前記第二の指標は、前記路面上に位置するように前記表示手段に表示され、
前記車両の画像は、前記ドアミラーよりも前にある前輪の画像を含み、
前記第二の指標は、車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置されており、
前記表示位置調整手段は、前記第二の画像を上下左右に移動させる操作スイッチを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項5】
前記表示位置調整手段は、前記第二の画像の角度を調整することを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電荷結合素子(CCD)カメラ等の撮像手段により車両の周辺を監視する車両用監視装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両の周辺を監視する撮像カメラを備えた車両用監視装置が種々提案されており、例えば実開昭61-146450号公報に開示されている。斯かる車両用監視装置は、ドアミラー1のハウジング2内に撮像カメラ3を配設し、この撮像カメラ3により前輪4の近傍を撮像し、前輪4の近傍の映像を車室内のモニターに表示するものである(図7参照)。このような車両用監視装置を用いることにより、運転席から目視できないエリアに障害物等がないかどうかをモニターで監視することができる。しかし、運転者がモニターで障害物を発見しても、その障害物が車両からどの程度の距離に位置しているのか把握し難いという問題を有していた。
【0003】
この問題に対して、撮像カメラ3で撮った画像に、車両からの距離の指標となるマークを重畳させて表示することが考えられる。例えば、図8に示すように、撮像カメラ3で撮像した画像5と、距離指標画像6とをスーパーインポーズ回路等で合成してモニターに表示することで、運転者は距離指標画像6を目安にして、障害物が車両からどの程度の距離に位置しているか把握することができる。なお、距離指標画像6は、車両側面からの距離を示す距離ライン6aと、この距離ライン6aの傍らに表示される数字6bとからなるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の距離ライン6aは、車両側面からの距離、即ち、幅方向の距離の目安にはなるが、車両の長さ方向の目安にはならないため、例えば、車両前方の壁に車両を可及的に近付けるための目安にはならないという問題を有していた。本発明は、この問題に鑑みなされたものであり、車両の長さ方向の距離を示す指標を表示することにより、長さ方向の距離を把握できる車両用監視装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため、ドアミラーに配設されており、前記ドアミラーよりも前にある前輪近傍を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と、を備えた車両用監視装置であって、前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが、車両先端が写っていない前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と、前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と、を設けたものである。
【0006】
また、本発明は、前記第一の指標及び前記第二の指標は、夫々複数のラインを有するものである。
【0007】
また、本発明は、ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と、を備えた車両用監視装置であって、前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と、前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と、を設け、前記直線は、前記幅方向に沿って延び、前記第二の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段を有するものである。
【0008】
また、本発明は、前記第一の指標及び前記第二の指標は、前記路面上に位置するように前記表示手段に表示され、前記車両の画像は、前記ドアミラーよりも前にある前輪の画像を含み、前記第二の指標は、車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置されており、前記表示位置調整手段は、前記第二の画像を上下左右に移動させる操作スイッチを有するものである。
【0009】
また、本発明は、前記表示位置調整手段は、前記第二の画像の角度を調整するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面に基づいて、本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
10はドアミラーであり、このドアミラー10はハウジング11の内部にミラー12を設けたものである(図2及び図3参照)。ドアミラー10は、ハウジング11を支持する支持部13を有しており、この支持部13は車両のドアに固定されている。ミラー12はホルダー14に固定されており、このホルダー14はハウジング11に支持されている。ホルダー14は揺動自在になっており、使用者はミラー12の角度を調整することができる。
【0012】
15はCCDカメラ(撮像手段)であり、このCCDカメラ15はハウジング11に収容されている。ハウジング11にはCCDカメラ15のレンズに対向する開口16が形成されており、この開口16からCCDカメラ15により車両の前輪近傍を撮像する。開口16には、CCDカメラ15に雨滴が浸入しないように透明カバー17が接着されている。
【0013】
次に、図4に基づいて、表示位置調整手段20について説明する。表示位置調整手段20は、操作器21及びマイコン22からなるものである。操作器21はメインスイッチ23,セットスイッチ24及び十字形スイッチ25(操作スイッチ)を有しており、操作器21から出力される操作信号はマイコン22に出力される。26はフラッシュメモリ(記憶手段)であり、このフラッシュメモリ26には画像データが記憶されている。
【0014】
マイコン22は、CPU22a,ROM22b,RAM22cを有しており、操作器21からの操作信号に基づいて、フラッシュメモリ26から画像データを読み出して、表示コントローラ27に出力する。表示コントローラ27は、CCDカメラ15から出力された画像データと、フラッシュメモリ26から読み出された画像データとを合成して、表示器28に表示させる。表示器28としては、TFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示器,有機電界発光表示素子またはCRT(Cathode Ray Tube)等を用いることができる。
【0015】
図1は、表示器28の画面28aに表示された画像の一例を示すものである。31は撮像画像(第一の画像)であり、この撮像画像31はCCDカメラ15で撮像した車両の画像31aや前輪近傍の路面の画像からなる。32は車両からの距離を示す指標である距離指標画像(第二の画像)であり、この距離指標画像32は、車両側面からの距離を示す距離ライン32a(第一の指標)と、車両先端からの距離を示す距離ライン32b(第二の指標)と、距離ライン32aの傍らに表示される数字32cとからなるものである。33は車両指標画像(第三の画像)であり、この車両指標画像33は、車両のシルエット形状になっている。距離指標画像32及び車両指標画像33を表示させるための画像データは、フラッシュメモリ26に記憶されている。
【0016】
運転者がメインスイッチ23をオンにすると、撮像画像31及び距離指標画像32が画面28aに表示され、運転者は、画面28aに映し出された撮像画像31を参考にしながら、車両を移動させることができる。
例えば、側方の壁に車両を可及的に近づけたり、高速道路の入口において自動チケット発券機に車両を近づけることができる。このとき、距離ライン32aを目安にすることにより、側方の壁や自動チケット発券機が、車両からどの程度の距離があるか判断できる。また、例えば、車両前方の壁に車両を可及的に近付けることができ、このとき、距離ライン32bを目安にすることにより、前方の壁が車両の先端からどの程度の距離にあるか判断できる。
【0017】
次に、距離指標画像32の表示位置調整について説明する。メインスイッチ23がオンになっている状態で、セットスイッチ24をオンすると、撮像画像31及び距離指標画像32と共に、車両指標画像33が表示される。そして、十字形スイッチ25を操作することにより、距離指標画像32及び車体指標画像33を上下左右に移動させることができる。車両指標画像33が、車両の画像31aに一致していない場合は、画面28aにおける距離指標画像32及び車両指標画像33の表示位置を十字形スイッチ25で調整する。
【0018】
例えば、図6のように、車両指標画像33が車両の画像31よりも左側に位置しているときは、十字形スイッチ25の右方向マーク部分25aを押して、距離指標画像32及び車両指標画像33を右側に移動させ、車両指標画像33を車両の画像31aに一致させる(図1参照)。そして、再びセットスイッチ24を押すと、表示位置調整が終了する。
【0019】
本実施形態にように、車両の幅方向の距離を示す距離ライン32aと、長さ方向の距離を示す距離ライン32bとを、画面28aに表示することにより、側方の障害物までの距離だけでなく、前方の障害物までの距離を把握することができる。
【0020】
なお、表示器28は、車両用監視装置の専用であっても良いが、例えばナビゲーション装置のディスプレイと共用させても良い。また、本実施形態の車両用監視装置は、メインスイッチ23がオンになっているときは、撮像画像31及び距離指標画像32が表示されるものであるが、距離指標画像32を選択的に表示させるものであっても良い。また、距離指標画像32及び車両指標画像の位置を調整するだけでなく、距離指標画像32及び車両指標画像を回転させて角度も調整するようにしても良い。また、距離指標画像32,車両指標画像33は、実線であったが、本実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能であり、例えば点線であっても良いし、着色領域であっても良い。
【0021】
また、本実施形態の撮像手段はCCDカメラ15であったが、例えば撮像管カメラであっても良い。また、本実施形態の記憶手段はフラッシュメモリ26であったが、例えばEEPROMであっても良い。また、本実施形態は、左側のドアミラーにCCDカメラ15を取付けたものであるが、右側のドアミラーに取付けても良いし、左右両方のドアミラーに取付けても良い。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と、を備えた車両用監視装置であって、前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と、車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する第二の画像と、を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と、前記第二の画像を上下左右に移動させ、前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と、を設けたものであり、障害物までの幅方向の距離及び長さ方向の距離を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す画面の表示例説明図。
【図2】同上実施形態を示すドアミラーの断面図。
【図3】同上実施形態を示すドアミラーの斜視図。
【図4】同上実施形態を示すブロック図。
【図5】同上実施形態を示す操作器の正面図。
【図6】同上実施形態を示す画面の表示例説明図。
【図7】従来例を示す車両の斜視図。
【図8】同上従来例を示す画面の表示例説明図。
【符号の説明】
15 CCDカメラ(撮像手段)
20 表示位置調整手段
24 セットスイッチ(スイッチ)
25 十字形スイッチ(第二のスイッチ)
26 フラッシュメモリ(記憶手段)
27 画像合成手段
28 表示手段
28a 画面
31 撮像画像(第一の画像)
32 距離指標画像(第二の画像)
32a 距離ライン(第一の指標)
32b 距離ライン(第二の指標)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-06-28 
結審通知日 2013-07-03 
審決日 2013-07-18 
出願番号 特願2001-243849(P2001-243849)
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (H04N)
P 1 113・ 537- ZA (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 酒井 伸芳  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 千葉 輝久
小池 正彦
登録日 2008-03-14 
登録番号 特許第4094831号(P4094831)
発明の名称 車両用監視装置  
代理人 古城 春実  
代理人 木村 満  
代理人 中村 京子  
代理人 笠原 基広  
代理人 笠原 基広  
代理人 笠原 基広  
代理人 早川 牧子  
代理人 井上 理香子  
代理人 杉本 和之  
代理人 大神田 梢  
代理人 杉本 和之  
復代理人 早川 牧子  
代理人 中村 京子  
代理人 木村 満  
代理人 中村 京子  
代理人 大神田 梢  
代理人 杉本 和之  
復代理人 早川 牧子  
代理人 大神田 梢  
代理人 木村 満  
代理人 牧野 知彦  

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