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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1296422
審判番号 不服2013-18068  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-18 
確定日 2015-01-15 
事件の表示 特願2010- 23749「目封止ハニカム構造体の検査装置及び目封止ハニカム構造体の検査方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月 4日出願公開、特開2010-249798〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年2月5日(優先権主張 平成21年3月23日(以下、「優先日」という。))の出願であって、平成25年5月24日付けで明細書及び特許請求の範囲についての補正がなされ(以下、「補正1」という。)、平成25年6月14日付け(送達:同年同月18日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年9月18日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を次のとおり補正するものである。なお、下線は請求人が付したものであり、補正箇所を示す。

(本件補正前)
「 【請求項1】
一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有し、前記セルの端部に目封止部を有する筒状の目封止ハニカム構造体を検査対象として、前記検査対象である目封止ハニカム構造体の一方の端面を照らす光源と、
前記光源から前記一方の端面に照射されて前記目封止ハニカム構造体の目封止部を透過して他方の端面から放射される光を、集光するカメラ側レンズと、
前記カメラ側レンズで集光した光を、受光するカメラと、
前記カメラで受光した光を画像処理して、前記目封止ハニカム構造体の目封止部を透過した光の明暗を表示する画像処理機を備え、
前記ハニカム構造体と前記カメラ側レンズとの間に配置され、前記ハニカム構造体の目封止部を透過して他方の端面から放射される光を、カメラ側レンズに向かって集光するフィールドレンズを更に備え、
前記フィールドレンズで集光された光をカメラ側レンズで更に集光して、その光をカメラで受光する、目封止ハニカム構造体の検査装置。
【請求項2】
前記カメラ及び前記カメラ側レンズを装着し、前記カメラ及び前記カメラ側レンズを前記目封止ハニカム構造体の光を放射する側の端面に略平行な平面内を移動させることができる、X-Y移動ステージを更に備える請求項1に記載の目封止ハニカム構造体の検査装置。
【請求項3】
前記カメラ側レンズの有効径をD、フィールドレンズの焦点距離をfとした時に、「D/f>0.034」の関係が成り立つ請求項1又は2に記載の目封止ハニカム構造体の検査装置。
【請求項4】
前記光源から前記目封止ハニカム構造体の一方の端面に照射される光が、特定の放射角で広がる光であり、
前記放射角が、前記目封止ハニカム構造体の一方の端面に直交する線と前記セルとにより形成される角度以上の大きさである請求項1?3のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体の検査装置。
【請求項5】
前記放射角が、10°以下である請求項4に記載の目封止ハニカム構造体の検査装置。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体の検査装置を用いて、目封止ハニカム構造体の、目封止部の深さ及び目封止部の欠陥を検査する目封止ハニカム構造体の検査方法。」

(本件補正後)
「 【請求項1】
一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有し、前記セルの端部に目封止部を有する筒状の目封止ハニカム構造体を検査対象として、前記検査対象である目封止ハニカム構造体の一方の端面を照らす光源と、
前記光源から前記一方の端面に照射されて前記目封止ハニカム構造体の目封止部を透過して他方の端面から放射される光を、集光するカメラ側レンズと、
前記カメラ側レンズで集光した光を、受光するカメラと、
前記カメラで受光した光を画像処理して、前記目封止ハニカム構造体の目封止部を透過した光の明暗を表示する画像処理機を備え、
前記目封止ハニカム構造体と前記カメラ側レンズとの間に配置され、前記目封止ハニカム構造体の目封止部を透過して他方の端面から放射される光を、カメラ側レンズに向かって集光するフィールドレンズを更に備え、
前記フィールドレンズで集光された光をカメラ側レンズで更に集光して、その光をカメラで受光する、目封止ハニカム構造体の検査装置であり、
前記光源を鉛直方向の上向きを照らすように配置すると共に、前記光源の鉛直方向上側で前記目封止ハニカム構造体の一方の端面が鉛直方向に直交するように配置し、
前記カメラ側レンズの有効径をD、フィールドレンズの焦点距離をfとした時に、「D/f>0.034」の関係が成り立つ目封止ハニカム構造体の検査装置であり、
前記光源から前記目封止ハニカム構造体の一方の端面に照射される光が、特定の放射角で広がる光であり、
前記放射角が、前記目封止ハニカム構造体の一方の端面に直交する線と前記セルとにより形成される角度以上の大きさである目封止ハニカム構造体の検査装置。
【請求項2】
前記放射角が、2°以上である請求項1に記載の目封止ハニカム構造体の検査装置。
【請求項3】
前記放射角が、10°以下である請求項1又は2に記載の目封止ハニカム構造体の検査装置。
【請求項4】
前記カメラ及び前記カメラ側レンズを装着し、前記カメラ及び前記カメラ側レンズを前記目封止ハニカム構造体の光を放射する側の端面に略平行な平面内を移動させることができる、X-Y移動ステージを更に備える請求項1?3のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体の検査装置。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体の検査装置を用いて、目封止ハニカム構造体の、目封止部の深さ及び目封止部の欠陥を検査する目封止ハニカム構造体の検査方法。」

本件補正は、請求項1及び3を削除するとともに、請求項1及び3を引用する請求項4を請求項1とし、さらに、発明を特定するために必要な事項である「光源」及び「目封止ハニカム構造体」それぞれの配置について、「鉛直方向の上向きを照らすように配置」、「前記光源の鉛直方向上側で前記目封止ハニカム構造体の一方の端面が鉛直方向に直交するように配置」すると限定するものであって、これは、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2 引用例記載の事項及び引用発明
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2007/0132988号明細書(発明の名称:「COLLIMATED LIGHT METHOD AND SYSTEM FOR DETECTING DEFECTS IN HONEYCOMBS」、発明者:Patrick Michael Gargano, Babak Robert Raj, William Paul Ryszytiwskyj, John Charles Speeckaert, David John Worthey、公開日:2007年6月14日、以下「引用例」という。)には、次の事項(a)ないし(g)が図面とともに記載されている(なお、和訳は当審による。また、下線は当審で付した。)。

(a)
「BACKGROUND OF THE INVENTION
[0001]The invention relates generally to inspection of wall-flow particulate filters, and particularly to a method and apparatus for detecting defects in a wall-flow particulate filter.」
(「発明の背景
[0001]本発明は、一般に、ウォールフロー型微粒子フィルタの検査、特にウォールフロー型微粒子フィルタ内の欠陥を検出するための方法および装置に関する。」)

(b)
「[0002]Solid particulates in fluids such as exhaust gas are typically removed using wall-flow particulate filters having a honeycomb structure. FIG. 1 illustrates a typical wall-flow, honeycomb, particulate filter 100 . The honeycomb filter 100 has an inlet end face 102 and an outlet end face 104 and an array of porous walls 106 extend longitudinally from the inlet end face 102 to the outlet end face 104 . The porous walls 106 intersect each other to define a grid of generally parallel inlet cells 108 and outlet cells 110 . The outlet cells 110 are preferably closed with plugs 112 where they adjoin the inlet end face 102 and open where they adjoin the outlet end face 104 . Similarly, the inlet cells 108 are preferably closed with plugs (not shown) where they adjoin the outlet end face 104 and open where they adjoin the inlet end face 102 .…(省略)…」
(「[0002]排気ガスのような流体中の固体粒子は、典型的には、ハニカム構造を有するウォールフロー型微粒子フィルタを使用して除去される。図1は、典型的なウォールフロー型ハニカム微粒子フィルタ100を示す。ハニカムフィルタ100は、入口端面102、出口端面104及び入口端面102から出口端面104に長手方向に延びる多孔質の壁のアレイ106を有する。多孔質壁106は、ほぼ平行な入口セル108および出口セル110の格子を規定するために互いに横断する。出口セル110は、好ましくは、入口端面102に隣接する場所ではプラグ112で閉鎖され、また、出口端面104に隣接する場所では開かれている。同様に、入口セル108は、好ましくは、出口端面104に隣接する場所ではプラグ(図示せず)で閉鎖され、また、入口端面102に隣接する場所では開かれている。…(省略)…」)

(c)
「DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
[0011]…(省略)…
[0012]FIG. 2A is a schematic of a system 200 for detecting defective cells in a honeycomb body 300 . …(省略)…」
(「発明の詳細な説明
[0011]…(省略)…
[0012]図2Aは、ハニカム体300内の不良セルを検出するためのシステム200の概略図である。…(省略)…」

(d)
「[0014]In operation, the honeycomb body 300 is mounted on a collimated light box 202. The collimated light box 202 includes a housing 204 inside of which is mounted a light source 206 and a collimator such as a collimating lens 208 . Typically, the light source 206 is a diffuse light source. Any suitable diffuse light source, such as a white light source, may be used. For example, the light source may be a halogen light bulb having a power of between about 30 and 1200 watts. A 50 watt source works well when the apparatus is housed in a dark room. The collimating lens 208 converts the divergent beams from the diffuse source into a substantially collimated beam. Any suitable collimating lens may be used. In one example, the collimating lens 208 is a Fresnel lens plate. However, any lens having the functionality of a Fresnel lens, i.e., it collimates light may be employed. A Fresnel lens plate having a focal length of about 24``, 200 grooves/inch, and a 14 inch diameter works well for most filter sizes. It should be recognized that the collimated light source may be any source that provides a substantially collimated light to the first end. The degree of collimation required depends on the substrate's length and cell geometry. The light needs to be collimated such that it passes though the cell. An end of the housing 204 is provided with a window 212 , preferably made of a planar and non-dispersive, non-light scattering transparent material, such as a tempered glass pane. The plane of the window 212 is preferably substantially perpendicular to the path of the collimated light. This is best accomplished by aligning the window with an optical plane of the collimating lens 208 , i.e., the window 212 and the collimating lens 208 are preferably substantially parallel. The honeycomb body 300 is supported on the window 212 so that light from the collimated light box 202 is directly coupled into the cells in the honeycomb body 300 .…(省略)…」
(「[0014]動作において、ハニカム体300は、コリメートされた光ボックス202に取り付けられている。コリメートされた光ボックス202は、コリメートレンズ208のようなコリメータ、光源206を内部に取り付けられたハウジング204を含む。典型的には、光源206は拡散光源である。白色光源のような任意の適切な拡散光源を用いてもよい。例えば、光源は、約30と1200ワットの間の出力を有するハロゲン電球であってもよい。 50ワットの光源は装置が暗室に収容されると適切に機能する。コリメートレンズ208は、発散ビームを拡散光源から実質的に平行光に変換する。任意の適切なコリメートレンズを用いてもよい。一例では、コリメートレンズ208は、フレネルレンズ板である。しかし、フレネルレンズ、すなわち光をコリメートする機能を有する任意のレンズを用いてよい。しかし、約24''、200本/インチの焦点距離及び14インチの直径を有するフレネルレンズ板が最もフィルタサイズに適している。コリメートされた光源は、第1端に実質的にコリメートされた光を提供する任意の光源であってもよいことを認識すべきである。必要な平行度は、基板の長さと、セルの構造に依存する。光は、セルを通過するようにコリメートされる必要がある。ハウジング204の端部は、好ましくは、強化ガラスのような、平面であり、非分散、非光散乱透明材料からなる窓212が設けられている。窓212の平面は平行光の経路に実質的に垂直であることが好ましい。最善の例は、コリメートレンズ208の光学面と窓とを一直線にすること、すなわち、窓212およびコリメートレンズ208を、好ましくは実質的に平行にして達成される。ハニカム体300は窓212上に支持されて、コリメートされた光ボックス202からの光は直接ハニカム体300のセルに結合される。…(省略)…」)

(e)
「[0015]To detect straight-through defects in the honeycomb body 300, the collimated light box 202 directs substantially collimated light at the end face 302 of the honeycomb body 300. The light from the light box 202 , being substantially collimated, is efficiently coupled and launched into every cell 310 in the honeycomb body 300. Light may also be launched into the cells 308 if there are defects in the plugs 312 at the end face 302. The collimated light launched into the honeycomb body 300 emerges at the end face 304 through cells that are defective. A projection medium 216 is mounted on the end face 304 and preferably rests upon and is in contact with the end face. The projection medium 216 receives the light emerging from the end face 304, wherein such light may be observed by an observer 218 . …(省略)…The observer 218 can thus instantly visualize the location of all the straight-through defects in the honeycomb body 300 from virtually any position by observing the image formed on the projection medium 216 . The defects appear as light spots on the projection medium 216 .…(省略)… 」
(「[0015]ハニカム体300内のストレート欠陥を検出するために、コリメートされた光ボックス202は、ハニカム体300の端面302に略平行光を向ける。実質的にコリメートされる光ボックス202からの光は、効率的に結合され、ハニカム体300内の各セル310に入射される。端面302でプラグ312に欠陥がある場合には、光は、セル308にも入射されうる。ハニカム体300に入射した平行光は、欠陥のあるセルを介して端面304に現れる。投影媒体216は、端面304に取り付けられ、好ましくは、上に載って端面に接している。投影媒体216は、端面304から出射する光を受光し、そこで、光は観察者218により観察されてもよい。…(省略)…観察者218は、このように投影媒体216上に形成された画像を観察することで、実質的に任意の位置からハニカム体300内のすべてのストレートスルー欠陥の位置を瞬時に視覚化することができる。欠陥が投影媒体216上に光スポットとして表示される。…(省略)…」)

(f)
「[0016]…(省略)…Further, the observation of the projection image may be by an observer 218 who may be a human, or an imaging device. The latter may be employed to enable an automated method of detecting and repairing defective cells in the honeycomb body 300 . 」
(「[0016]…(省略)…また、投影画像の観察は、人、またはイメージング装置であってもよい観察者218によって行うことができる。後者は、ハニカム体300の欠陥セルの検出及び修復の自動化を可能にするために用いることができる。」)

(g)
「[0017]FIG. 2B shows the observer 218 as an imaging device, such as a camera. The imaging device 218 is coupled to a processor 220 , which receives images from the imaging device 218 and processes the images to determine the x-y coordinates of defective cells across the end face 304 of the honeycomb body 300 . The defective cells in the honeycomb body 300 may then be repaired. In this example, the projection medium 216 is depicted as a lens that focuses the substantially collimated light coming from the end face 304 of the honeycomb body 300 into the imaging device 218 .…(省略)…」
(「[0017]図2Bは、カメラ等のイメージング装置としての観察者218を示している。イメージング装置218はプロセッサ220に結合され、プロセッサ220は、イメージング装置218から画像を受信し、ハニカム体300の端面304を横切る欠陥セルのx-y座標を決定するために画像を処理する。ハニカム体300における欠陥セルは、その後修復されうる。この例では、投影媒体216は、ハニカム体300の端面304からの略平行光をイメージング装置218内に集光するレンズとして描かれている。…(省略)…」)


図1




図2B

ア 上記(a)及び(b)の記載から、
「ハニカム構造を有するウォールフロー型微粒子フィルタの検査装置」との技術的事項が読み取れる。

イ 上記(b)の記載から、
「ハニカムフィルタ100は、入口端面102、出口端面104及び入口端面102から出口端面104に長手方向に延びる多孔質の壁のアレイ106を有し、多孔質壁106は、ほぼ平行な入口セル108および出口セル110の格子を規定するために互いに横断し、出口セル110は、好ましくは、入口端面102に隣接する場所ではプラグ112で閉鎖され、また、出口端面104に隣接する場所では開かれていて、同様に、入口セル108は、好ましくは、出口端面104に隣接する場所ではプラグで閉鎖され、また、入口端面102に隣接する場所では開かれ」ているとの技術的事項が読み取れる。

ウ 上記(e)の記載から、
「コリメートされた光ボックス202は、ハニカム体300の端面302に略平行光を向け、実質的にコリメートされる光ボックス202からの光は、効率的に結合され、ハニカム体300内の各セル310に入射され」るとの技術的事項が読みとれる。

エ 上記(e)の記載から、
「端面302でプラグ312に欠陥がある場合には、光は、セル308にも入射され、ハニカム体300に入射した平行光は、欠陥のあるセルを介して端面304に現れ」るとの技術的事項が読み取れる。

オ 上記(e)及び(f)の記載から、
「投影媒体216は、端面304から出射する光を受光し、欠陥が投影媒体216上に光スポットとして表示され、観察者218は投影媒体216上に形成された画像を観察し、投影画像の観察は、イメージング装置であってもよい観察者218によって行」うとの技術的事項が読み取れる。

カ 上記(g)の記載から、
「カメラ等のイメージング装置としての観察者218」との技術的事項が読み取れる。

キ 上記(g)の記載から、
「イメージング装置218はプロセッサ220に結合され、プロセッサ220は、イメージング装置218から画像を受信し、ハニカム体300の端面304を横切る欠陥セルのx-y座標を決定するために画像を処理」するとの技術的事項が読み取れる。

ク 上記(g)の記載から、
「投影媒体216は、ハニカム体300の端面304からの略平行光をイメージング装置218内に集光するレンズ」との技術的事項が読み取れる。

ケ 上記(d)の記載から、
「窓212の平面は平行光の経路に実質的に垂直であることが好ましく、ハニカム体300は窓212上に支持されて、コリメートされた光ボックス202からの光は直接ハニカム体300のセルに結合され」るとの技術的事項が読み取れる。

(2)引用発明
引用例の「発明の詳細な説明」(上記2(1)(c))に記載された図2A及び図2Bに係る実施例のハニカム体内の不良セルを検出する装置は、「発明の背景」(上記2(1)(a))における「ハニカムフィルタ」を検査対象とし得るものであり、また、図2Bに係る実施例の装置は、図2Aに係る実施例の装置を前提に、「観察者218」、「投影媒体216」及び「プロセッサ220」の構造及び動作について特定したものである。したがって、図2Bに示される実施例に係る発明に着目し、以上の技術的事項アないしケを総合勘案すると、引用例には、次の発明が記載されている。
「ハニカム構造を有するウォールフロー型微粒子フィルタの検査装置であり、ハニカムフィルタ100は、入口端面102、出口端面104及び入口端面102から出口端面104に長手方向に延びる多孔質の壁のアレイ106を有し、多孔質壁106は、ほぼ平行な入口セル108および出口セル110の格子を規定するために互いに横断し、出口セル110は、好ましくは、入口端面102に隣接する場所ではプラグ112で閉鎖され、また、出口端面104に隣接する場所では開かれていて、同様に、入口セル108は、好ましくは、出口端面104に隣接する場所ではプラグで閉鎖され、また、入口端面102に隣接する場所では開かれ、コリメートされた光ボックス202は、ハニカム体300の端面302に略平行光を向け、実質的にコリメートされる光ボックス202からの光は、効率的に結合され、ハニカム体300内の各セル310に入射され、
端面302でプラグ312に欠陥がある場合には、光は、セル308にも入射され、ハニカム体300に入射した平行光は、欠陥のあるセルを介して端面304に現れ、投影媒体216は、端面304から出射する光を受光し、欠陥が投影媒体216上に光スポットとして表示され、観察者218は投影媒体216上に形成された画像を観察し、投影画像の観察は、イメージング装置であってもよい観察者218によって行い、カメラ等のイメージング装置としての観察者218であり、
イメージング装置218はプロセッサ220に結合され、プロセッサ220は、イメージング装置218から画像を受信し、ハニカム体300の端面304を横切る欠陥セルのx-y座標を決定するために画像を処理し、
投影媒体216は、ハニカム体300の端面304からの略平行光をイメージング装置218内に集光するレンズであり、
窓212の平面は平行光の経路に実質的に垂直であることが好ましく、ハニカム体300は窓212上に支持されて、コリメートされた光ボックス202からの光は直接ハニカム体300のセルに結合される、ハニカム構造を有するウォールフロー型微粒子フィルタの検査装置」(以下、「引用発明」という。)

3 対比
本願補正発明と引用発明とを、主たる構成要件毎に順次対比する。
(1)引用発明における「入口端面102」、「出口端面104」及び「多孔質の壁のアレイ106」は、本願補正発明における「一方の端面」、「他方の端面」及び「多孔質の隔壁」にそれぞれ相当する。
また、引用発明では、流体が流入するセルを「入口セル108」、流体が流出するセルを「出口セル110」、これらを総称して「セル」としているが、本願補正発明ではこれらを区別せずに「セル」としており、従って、引用発明の「入口セル108」、「出口セル110」及び「セル」のいずれも、本願補正発明の「セル」に相当する。
そして、「多孔質の壁のアレイ106」は「ほぼ平行な入口セル108および出口セル110の格子を規定するために互いに横断し」ており、これは、「一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成」していることに相当する。
さらに、引用発明では、入口端面、出口端面でセルはプラグで閉鎖されており、これは、セルの端部に目封止部を有しているといえ、また、ハニカムフィルタ100は、入口端面102、出口端面104及び入口端面102から出口端面104に長手方向に延びる多孔質の壁のアレイ106を有することから、多孔質アレイ106に囲まれた空間は筒状と捉えることができる。したがって、引用発明の「ハニカム構造を有するウォールフロー型微粒子フィルタの検査装置であり、ハニカムフィルタ100は、入口端面102、出口端面104及び入口端面102から出口端面104に長手方向に延びる多孔質の壁のアレイ106を有し、多孔質壁106は、ほぼ平行な入口セル108および出口セル110の格子を規定するために互いに横断し、出口セル110は、好ましくは、入口端面102に隣接する場所ではプラグ112で閉鎖され、また、出口端面104に隣接する場所では開かれていて、同様に、入口セル108は、好ましくは、出口端面104に隣接する場所ではプラグで閉鎖され、また、入口端面102に隣接する場所では開かれ」ることは、本願補正発明の「一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有し、前記セルの端部に目封止部を有する筒状の目封止ハニカム構造体を検査対象と」することに相当する。

(2)引用発明の「コリメートされた光ボックス202は、ハニカム体300の端面302に略平行光を向け、実質的にコリメートされる光ボックス202からの光は、効率的に結合され、ハニカム体300内の各セル310に入射され」る点は、本願補正発明の「前記検査対象である目封止ハニカム構造体の一方の端面を照らす光源」を有することに相当する。

(3)引用発明では、「端面302でプラグ312に欠陥がある場合には、光は、セル308にも入射され、ハニカム体300に入射した平行光は、欠陥のあるセルを介して端面304に現れ」ることから、端面304に現れる光は、プラグを透過して端面304に現れるものということができる。
また、引用発明では、「端面304から出射する光を受光し、そこで、光は観察者218により観察され」ること、及び「観察者218」が「カメラ等のイメージング装置」であることから、「端面304から出射する光」を「カメラ」により観察、即ち受光するものと認められる。
そして、カメラは一般にレンズを内蔵し、レンズにより光を集光して像を形成するものであるから、引用発明における「カメラ」もレンズを備え、レンズにより端面304から出射する光を集光しているといえ、引用発明の「端面302でプラグ312に欠陥がある場合には、光は、セル308にも入射され、ハニカム体300に入射した平行光は、欠陥のあるセルを介して端面304に現れ、投影媒体216は、端面304から出射する光を受光し、欠陥が投影媒体216上に光スポットとして表示され、観察者218は投影媒体216上に形成された画像を観察し、投影画像の観察は、イメージング装置であってもよい観察者218によって行い、カメラ等のイメージング装置としての観察者218」である点は、本願補正発明の「前記光源から前記一方の端面に照射されて前記目封止ハニカム構造体の目封止部を透過して他方の端面から放射される光を、集光するカメラ側レンズと、前記カメラ側レンズで集光した光を、受光するカメラ」を有することに相当する。

(4)引用発明では、「カメラ等のイメージング装置218」に結合された「プロセッサ220」を備え、「プロセッサ220」は、カメラ等のイメージング装置218から画像を受信し、「ハニカム体300の端面304を横切る欠陥セルのx-y座標を決定するために画像を処理」しているから、引用発明の「イメージング装置218はプロセッサ220に結合され、プロセッサ220は、イメージング装置218から画像を受信し、ハニカム体300の端面304を横切る欠陥セルのx-y座標を決定するために画像を処理」する点と、本願補正発明の「前記カメラで受光した光を画像処理して、前記目封止ハニカム構造体の目封止部を透過した光の明暗を表示する画像処理機を備え」る点とは、「前記カメラで受光した光を画像処理する画像処理機を備え」る点で共通する。

(5)引用発明は、「レンズ」である「投影媒体216」を備え、「レンズ」である「投影媒体216」はハニカム体300の端面304からの略平行光をイメージング装置218内、即ちカメラ内に集光するものであるということができ、また、図2Bには、「レンズ」である「投影媒体216」がハニカム体300とカメラとの間に配置されることが示されている。
そして、引用発明において、端面302でプラグ312に欠陥がある場合には、光は、セル308にも入射され、ハニカム体300に入射した平行光は、欠陥のあるセルを介して端面304に現れること、及びカメラは一般にレンズを内蔵するものであるから、引用発明の「投影媒体216は、ハニカム体300の端面304からの略平行光をイメージング装置218内に集光するレンズ」は、本願補正発明の「前記目封止ハニカム構造体と前記カメラ側レンズとの間に配置され、前記目封止ハニカム構造体の目封止部を透過して他方の端面から放射される光を、カメラ側レンズに向かって集光するフィールドレンズ」に相当する。
また、カメラに内蔵されたレンズは、外からの光を集光して、その光をカメラで受光することは明らかであるから、引用発明の「カメラ」は、本願補正発明の「前記フィールドレンズで集光された光をカメラ側レンズで更に集光して、その光をカメラで受光する」機能を有するものであるということができる。

(6)上記(1)の「ハニカム構造を有するウォールフロー型微粒子フィルタ」の構造を踏まえると、引用発明の「ハニカム構造を有するウォールフロー型微粒子フィルタの検査装置」は、本願補正発明の「目封止ハニカム構造体の検査装置」に相当する。

(7)引用発明は、窓212の平面は平行光の経路に実質的に垂直であることが好ましく、ハニカム体300は窓212上に支持されて、コリメートされた光ボックス202からの光は直接ハニカム体300のセルに結合されるから、平行光と垂直に窓212が設けられ、かつ、ハニカム体300が窓212上に支持されるから、ハニカム体300の端面は平行光と垂直であるといえる。したがって、引用発明の「窓212の平面は平行光の経路に実質的に垂直であることが好ましく、ハニカム体300は窓212上に支持されて、コリメートされた光ボックス202からの光は直接ハニカム体300のセルに結合される」点と、本願補正発明の「前記光源を鉛直方向の上向きを照らすように配置すると共に、前記光源の鉛直方向上側で前記目封止ハニカム構造体の一方の端面が鉛直方向に直交するように配置」する点とは、「前記光源を配置すると共に、前記目封止ハニカム構造体の一方の端面が、光源が照らす方向と直交するように配置」する点で共通する。

(8)以上の関係を整理すると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「 一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有し、前記セルの端部に目封止部を有する筒状の目封止ハニカム構造体を検査対象として、前記検査対象である目封止ハニカム構造体の一方の端面を照らす光源と、
前記光源から前記一方の端面に照射されて前記目封止ハニカム構造体の目封止部を透過して他方の端面から放射される光を、集光するカメラ側レンズと、
前記カメラ側レンズで集光した光を、受光するカメラと、
前記カメラで受光した光を画像処理する画像処理機を備え
前記目封止ハニカム構造体と前記カメラ側レンズとの間に配置され、前記目封止ハニカム構造体の目封止部を透過して他方の端面から放射される光を、カメラ側レンズに向かって集光するフィールドレンズを更に備え、
前記フィールドレンズで集光された光をカメラ側レンズで更に集光して、その光をカメラで受光する、目封止ハニカム構造体の検査装置であり、
前記光源を配置すると共に、前記目封止ハニカム構造体の一方の端面が、光源が照らす方向と直交するように配置する、目封止ハニカム構造体の検査装置。」

<相違点1>
本願補正発明では、「画像処理機」に「目封止ハニカム構造体の目封止部を透過した光の明暗を表示」しているのに対し、引用発明では、「画像処理機」に何を表示するのか明確には特定されていない点。
<相違点2>
光源の配置について、本願補正発明では、「光源を鉛直方向の上向きを照らすように配置」されているのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。
<相違点3>
本願補正発明では、「カメラ側レンズの有効径をD、フィールドレンズの焦点距離をfとした時に、「D/f>0.034」の関係が成り立つように構成されているのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。
<相違点4>
本願補正発明では、「光源から目封止ハニカム構造体の一方の端面に照射される光が、特定の放射角で広がる光であり、放射角が、目封止ハニカム構造体の一方の端面に直交する線とセルとにより形成される角度以上の大きさである」のに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

4 判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明は、「端面302でプラグ312に欠陥がある場合には、光は、セル308にも入射され、ハニカム体300に入射した平行光は、欠陥のあるセルを介して端面304に現れ、投影媒体216は、端面304から出射する光を受光し、欠陥が投影媒体216上に光スポットとして表示され、観察者218は投影媒体216上に形成された画像を観察」して「ハニカム構造を有するウォールフロー型微粒子フィルタの検査」を行うものであるから、観察者としてカメラを用い、カメラで受光した光を画像を処理するプロセッサ220により画像処理するのであれば、カメラで受光した光をそのまま視角化し、投影媒体216上に形成される画像と同様の、欠陥が光スポットとして表示される明暗画像を、画像を処理するプロセッサ220で処理された画像で表示して検査を行うようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

(2)相違点2について
引用例の図2Bには、光源を、上向きを照らすように配置することが記載されている。
また、検査装置を水平な台上に置くことは、検査一般の分野において周知慣用技術であり、引用例の図2Bに記載される配置で検査装置を水平な台上に置き、光源を、鉛直方向上向きを照らすように配置するようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

(3)相違点3について
フィールドレンズの焦点距離fが小さいほど画角が広くなり、広い範囲の像を得ることができ、また、カメラ側レンズの有効径が大きいほど広い範囲の像を得て、多くの光を集めることができることは、光学に係る技術常識であるから、これらの値は、被検査体の大きさに基づきカメラによる撮像範囲を決定する際に当業者が適宜決め得る設計的事項である。
本願明細書の段落【0062】には、D/fが0.034の際に良好な結果が得られる旨記載されているが、これは、光源から450mmの位置にフィールドレンズを配置し、フィールドレンズから410mmの位置にカメラ側レンズを配置し、底面の直径140mm、中心軸方向長さ150mmの円筒形の目封止ハニカム構造体の検査を行った際の最適値であり(段落【0042】?【0061】)、一般的な値としてD/fを「0.034」以上とすることに格別の臨界的意義はない。

(4)相違点4について
引用例には、「コリメートレンズ208は、発散ビームを拡散光源から実質的に平行光に変換する。」と記載されており(上記2(1)d段落[0014])、また、光源として「ハロゲン電球であってもよい。」との記載(同段落[0014])及び図2Bに示される「光源206」は完全な点光源ではなく、所定の面積を有する光源であることから、コリメートレンズによりコリメートされる「平行光」も事実上、所定の広がり角を持つものと認められる。
そして、本願明細書の段落【0033】には、「このような目封止ハニカム構造体は、セルが目封止ハニカム構造体の中心軸(以下、単に「中心軸」と称することがある。)方向に延び、両端面が中心軸に垂直に形成されることが好ましいが、セルが中心軸に対して若干傾いて形成されたり、両端面が中心軸に垂直でない角度で交わるように形成されたりすることもある。図3Aに示す目封止ハニカム構造体31は、セル34が中心軸に対して若干(1°程度)傾き、両端面は中心軸に垂直に形成された例である。」と記載されており、「目封止ハニカム構造体の一方の端面に直交する線とセルとにより形成される角度」は1°程度を含むものと認められる。してみれば、引用発明の「光源206」や「コリメートレンズ208」の構造や配置などの機械的な誤差や光源の面積などに起因する平行光の平行度の精度などに鑑みると、引用発明の「平行光」の所定の広がり角を、目封止ハニカム構造体の一方の端面に直交する線とセルとにより形成される角度以上の大きさとすることに格別の困難性を有しない。

そうしてみると、引用発明に対して周知慣用技術を適用し、本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び前記周知慣用技術から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。

5 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 [理由] 1」の(本件補正前)の「請求項1」として記載したとおりのものである。

1 引用例記載の事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

2 対比及び判断
本願発明は、前記「第2 1」で検討した本願補正発明から、本件補正前の請求項3及び4に記載される発明特定事項並びに請求項1に記載された発明特定事項の「光源」及び「目封止ハニカム構造体」それぞれの配置について、「鉛直方向の上向きを照らすように配置」、「前記光源の鉛直方向上側で前記目封止ハニカム構造体の一方の端面が鉛直方向に直交するように配置」するとの発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、前記「第2 3」、「第2 4」に記載したとおり、引用発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-14 
結審通知日 2014-11-18 
審決日 2014-12-02 
出願番号 特願2010-23749(P2010-23749)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01B)
P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 目黒 大地長井 真一  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 武田 知晋
清水 稔
発明の名称 目封止ハニカム構造体の検査装置及び目封止ハニカム構造体の検査方法  
代理人 渡邉 一平  

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