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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24H
管理番号 1296437
審判番号 不服2013-24802  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-17 
確定日 2015-01-15 
事件の表示 特願2007-265807「コジェネレーションシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月30日出願公開、特開2009- 92349〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、平成19年10月11日の出願(特願2007-265807号)であって、平成24年4月24日付けで拒絶理由が通知され、同年6月21日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年12月17日付けで拒絶理由が通知され、平成25年3月7日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年9月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2. 本願発明について
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年3月7日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「電力及び熱を発生する給電装置と、
前記給電装置が発生した熱によって温められた温水を貯留する貯湯槽と、
前記給電装置が発生した熱を利用可能な熱利用手段と、
前記熱利用手段の運転が許可されている状態にあるか否かを判定する運転許可状態判定手段と、
前記運転許可状態判定手段により前記熱利用手段の運転が許可されている状態にあると判定された場合に、前記貯湯槽の蓄熱量に応じて、前記給電装置が発生した熱を自動的に前記熱利用手段へ供給させる熱供給制御手段と、を備え、
前記運転許可状態判定手段は、
前記熱利用手段が配置される場所の室温が予め定めた所定の閾値を下回っていた場合に、
または、前記室温が予め定めた所定の閾値を下回り、且つ、ユーザの設定操作で前記貯湯槽の蓄熱量が閾値以上となったときに前記熱利用手段の運転を許可する旨の設定がなされている場合に、
前記熱利用手段の運転が許可されている状態にあると判定し、
前記熱供給制御手段は、前記運転許可状態判定手段により前記熱利用手段の運転が許可されている状態にあると判定された場合に、前記貯湯槽の蓄熱量が第1閾値以上であれば前記給電装置が発生した熱を自動的に前記熱利用手段へ供給し、第2閾値以下であれば供給しないように設定されていることを特徴とするコジェネレーションシステム。」

3.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-240016号公報(公開日:平成19年9月20日、以下「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。

(1a)「【0001】
本発明は、外部から燃料供給を受けて電力と熱を併給可能な熱電併給システムに関し、特に、家庭用の熱電併給システムに関する。」

(1b)「【0010】
上記第1の特徴の熱電併給システムによれば、発電ユニットの強制運転時において、貯湯タンクの貯湯量が満タン付近の所定量以上であっても、つまり、温水による熱需要が低い状態であっても、所定の熱負荷端末に対して運転開始の制御を強制的に実行可能に構成されているため、当該熱負荷端末において強制的に熱需要を発生させて、発電ユニットで発生し排熱回収冷却液循環配管で回収された排熱を当該熱負荷端末で消費することができる。これにより、貯湯タンクへの蓄熱では回収できない過剰な排熱の放熱処理が可能となり、別途放熱器を備えずとも低熱需要状態での発電ユニットの強制運転が可能となる。つまり、電力需要に応じた発電ユニットの運転が可能となり。更に、強制的に発生させた熱需要ではあるものの、発生時間帯をシフトさせたと考えれば、放熱器による排熱の放熱処理に比べて、排熱を有効に利用できるため、高省エネルギ化が図れる。」(下線は当審が付与。以下同じ。)

(1c)「【0017】
また、第5の特徴の熱電併給システムによれば、出力端末に出力された報知信号による通報によって利用者は所定の熱負荷端末の運転開始を知ることができるため、当該運転による暖房や給湯を適時に有効利用することができる。また、所定の熱負荷端末の運転に不都合がある場合は、利用者は熱電併給システムの強制運転自体を停止することも可能となる。」

(1d)「【0025】
図1及び図2に示すように、本発明システム1は、外部から燃料供給を受けて発電する発電ユニット10と、発電ユニット10の運転時に発生する排熱を回収して給湯負荷50と暖房端末51に供給する排熱利用給湯暖房ユニット20を備えて構成される。
【0026】
図1に示すように、排熱利用給湯暖房ユニット20は、貯湯タンク21と、排熱回収冷却液循環配管22と、温水循環配管23と、排熱回収熱交換器24と、給湯出力配管25と、暖房出力循環配管26と、暖房熱交換器27と、給水配管28と、暖房端末循環配管29と、暖房端末分岐配管30と、補助熱源31と、排熱回収制御装置32を備えて構成される。また、各配管には、必要に応じて、循環ポンプ33?35、開閉弁36、三方弁37,38、逆止弁、圧力調整弁、温度センサ、圧力センサ、流量計等が介装されており、図1中においてその一部に符号を付して示している。
【0027】
貯湯タンク21は、発電ユニット10の排熱回収により加熱された温水を貯湯することで、回収した排熱を蓄熱可能に構成され、更に、内部に介装された温度センサ(図示せず)や水位センサ(図示せず)等の貯湯量検出手段によって貯湯量を検出可能に構成されている。また、貯湯タンク21の底部には、貯湯タンク21から給湯負荷50に温水が供給された場合に、上水道等の給水源(図示せず)から貯湯タンク21内に給水補充するための給水配管28が接続している。」

(1e)「【0040】
系統停電時に発電ユニット10を強制的に運転させるための操作スイッチ(強制運転スイッチ)49が備えられ、利用者の手動操作によって発生する強制運転信号が操作スイッチ49から発電ユニット10の発電制御装置15に入力される。2つのスイッチ47、48の切り替えは、強制運転信号の入力に応じて発電制御装置15側からの制御によって行われる。
【0041】
系統正常時には、スイッチ47はオン状態(閉状態)となり商用交流電源60と発電ユニット10の電力端子10aが系統連系接続し、スイッチ48は一方の入力端が出力端と接続し、スイッチ47の1次側、つまり、商用交流電源60と発電ユニット10の電力端子10aが分岐ブレーカ46と接続する。これに対し、系統停電時には、スイッチ47はオフ状態(開状態)となり商用交流電源60と発電ユニット10の間の接続が遮断され、スイッチ48は他方の入力端が出力端と接続し、発電ユニット10の電力端子10bが分岐ブレーカ46と接続する。
【0042】
発電ユニット10の運転開始及び停止は、排熱利用給湯暖房ユニット20の排熱回収制御装置32からの制御信号と、操作スイッチ49からの強制運転信号によって制御される。系統正常時には、強制運転信号は出力されずに排熱回収制御装置32からの制御に従う。排熱回収制御装置32は、給湯負荷50と暖房端末51等での熱需要を予測した結果に基づいて熱需要の発生する所定時間前に発電ユニット10の運転開始を行い、熱需要を充足するに十分な排熱を回収できる期間中、発電ユニット10の運転を継続する、熱需要の時間変動パターンに応じた制御(熱主運転という)を行う。
【0043】
発電制御装置15は、排熱回収制御装置32からの制御信号より、操作スイッチ49からの強制運転信号を優先的に受け付けるため、排熱回収制御装置32からの通常の運転停止制御があっても、強制運転に入る。発電制御装置15は、強制運転に入ると、その旨の状態信号を排熱回収制御装置32に出力する。排熱回収制御装置32は、発電ユニット10が強制運転中であることを認識すると、系統正常時の熱主運転時とは異なる排熱回収制御を、排熱利用給湯暖房ユニット20及び暖房端末51に対して行う。
【0044】
以下、発電ユニット10が強制運転時における、排熱回収制御装置32の行う制御について説明する。排熱回収制御装置32は、発電制御装置15から発電ユニット10が強制運転状態である旨の状態信号を受け取ると、発電ユニット10が強制運転時における制御モードになり、以下の要領で、排熱利用給湯暖房ユニット20及び暖房端末51に対する制御を実行する。
【0045】
排熱回収制御装置32は、貯湯タンク21の貯湯量検出手段からの検出信号に基づいて、貯湯量が満タン付近の所定量以上であるか否かを判断する。貯湯量が所定量以上である場合には、発電ユニット10の排熱を回収して貯湯タンク21へ蓄熱することは不可能であると判断し、開閉弁36及び三方弁37,38を、以下の要領で切り替える。
【0046】
開閉弁36は、熱主運転時、または、貯湯量が所定量以上でない場合には開弁され、強制運転時で貯湯量が所定量以上の場合には、閉弁される。三方弁37,38は、熱主運転時、または、貯湯量が所定量以上でない場合には、排熱回収冷却液循環配管22が、発電ユニット10内の熱交換器14と排熱回収熱交換器24間を連絡する往路と復路を形成するように制御され、暖房端末分岐配管30への流路は遮断される。これに対して、三方弁37,38は、強制運転時で貯湯量が所定量以上の場合には、熱交換器14から排熱回収熱交換器24への排熱回収冷却液循環配管22が遮断され、暖房端末分岐配管30への流路が形成されるように制御され、熱交換器14から暖房端末51までの循環回路が形成される。以上の制御により、強制運転時において貯湯量が所定量以上の場合には、発電ユニット10内の熱交換器14において排熱回収して加熱された冷却水を熱媒体として暖房端末循環配管29に直接供給可能となる。
【0047】
更に、排熱回収制御装置32は、強制運転時で貯湯量が所定量以上の場合には、暖房端末51の暖房端末循環配管29上の循環ポンプ35を作動させるべく、暖房端末51の制御装置(図示せず)に対して運転指示を与える。また、暖房端末51が浴室暖房乾燥機等の送風ファンを備えている場合には、循環ポンプ35と送風ファンを作動させるべく、暖房端末51の制御装置(図示せず)に対して運転指示を与える。従って、暖房端末51の電動装置(循環ポンプ35、送風ファン等)は、系統停電時に使用可能となる第2電力負荷61として、第2分電盤41の分岐ブレーカ46に接続しておく。
【0048】
強制運転時において、給湯需要が発生して貯湯タンク21の貯湯量が所定量を下回ると、排熱回収制御装置32は、暖房端末51の制御装置(図示せず)に対して運転停止を指示するとともに、開閉弁36及び三方弁37,38を元の制御位置に切り替える。これにより、排熱回収冷却液循環配管22が、発電ユニット10内の熱交換器14と排熱回収熱交換器24間を連絡する往路と復路を形成するように制御され、発電ユニット10の排熱を回収して貯湯タンク21へ蓄熱することになる。」

(1f)「【0093】
〈8〉上記各実施形態では、系統停電時において、発電ユニット10を商用交流電源60と切り離して強制運転する場合を想定して説明したが、発電ユニット10の強制運転は、必ずしも系統停電時に限定されるものではない。例えば、系統正常時において、発電ユニット10と商用交流電源60間の系統連系接続を切り離して、発電ユニット10を強制運転するようにしても構わない。
【0094】
〈9〉上記各実施形態では、発電ユニット10に排熱を大気放熱するための放熱器を備えていない熱電併給システムを想定して説明したが、当該放熱器を備えた場合についても、本発明システムは有効に機能する。即ち、当該放熱器を複数の排熱回収手段の1つとして捉え、例えば、当該放熱器の動作の優先順位を、他の排熱回収手段(貯湯タンク21の貯湯、風呂の浴槽70への自動給湯、暖房端末51の強制運転、等)に対して、設定することで、当該放熱器より優先順位の高い他の排熱回収手段による排熱回収が不可能となった場合に、当該放熱器を作動させる制御を行えばよい。」

(1g)【図1】

(2) 引用例1に記載された発明の認定
上記記載事項(1a)?(1f)及び図面(1g)を総合すると、引用例1には、
「外部から燃料供給を受けて発電する発電ユニット10と、発電ユニット10の運転時に発生する排熱を回収して暖房端末51に供給する排熱利用給湯暖房ユニット20を備えて構成される熱電併給システムであって、
排熱利用給湯暖房ユニット20は、貯湯タンク21と、排熱回収冷却液循環配管22と、温水循環配管23と、排熱回収熱交換器24と、給湯出力配管25と、暖房出力循環配管26と、暖房熱交換器27と、給水配管28と、暖房端末循環配管29と、暖房端末分岐配管30と、補助熱源31と、排熱回収制御装置32を備えて構成され、
貯湯タンク21は、発電ユニット10の排熱回収により加熱された温水を貯湯することで、回収した排熱を蓄熱可能に構成され、
利用者の手動操作によって発生する強制運転信号が操作スイッチから発電ユニット10の発電制御装置15に入力されると、発電ユニット10が強制運転状態に入り、
排熱回収制御装置32は、発電制御装置15から発電ユニットが強制運転状態である旨の状態信号を受け取ると、発電ユニット10が強制運転時における制御モードになり、排熱利用給湯暖房ユニット20及び暖房端末51に対する制御を実行し、
強制運転時において貯湯タンク21の貯湯量が所定量以上の場合には、発電ユニット10内の熱交換器において排熱回収して加熱された冷却水を熱媒体として暖房端末循環配管29に直接供給可能となり、更に、排熱回収制御装置32は、強制運転時で貯湯量が所定量以上の場合には、暖房端末51の暖房端末循環配管29上の循環ポンプ35を作動させるべく、暖房端末51の制御装置に対して運転指示を与え、
強制運転時において、給湯需要が発生して貯湯タンク21の貯湯量が所定量を下回ると、排熱回収制御装置32は、暖房端末51の制御装置に対して運転停止を指示する、
熱電併給システム。」の発明(以下「引用発明」という)が記載されているといえる。

4.本願発明と引用発明との対比

(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア.引用発明の「発電ユニット10」、「暖房端末51」、「貯湯タンク21」及び「熱電併給システム」は、それぞれ本願発明の「給電装置」、「熱利用手段」、「貯湯槽」及び「コジェネレーションシステム」に相当する。

イ.引用発明の「外部から燃料供給を受けて発電する発電ユニット10」は「発電ユニット10の発電時に発生する廃熱を回収」されていることから熱を発生しており、本願発明の「電力及び熱を発生する給電装置」に相当する。
引用発明の「暖房端末51」は「回収」された「発電ユニット10の運転時に発生する排熱」が「供給」されており、本願発明の「前記給電装置が発生した熱を利用可能な熱利用手段」に相当する。
引用発明の「貯湯タンク21」は、「発電ユニット10の排熱回収により加熱された温水を貯湯することで、回収した排熱を蓄熱可能に構成」していることから、本願発明の「前記給電装置が発生した熱によって温められた温水を貯留する貯湯槽」に相当する。

ウ.引用発明において「強制運転時」との状態になるには「利用者の手動操作」が必要であることから、引用発明の「発生する強制運転信号が操作スイッチから発電ユニットの発電制御装置に入力されると、発電ユニットが強制運転状態に入り、
排熱回収制御装置32は、発電制御装置から発電ユニットが強制運転状態である旨の状態信号を受け取ると、発電ユニットが強制運転時における制御モードになり、排熱利用給湯暖房ユニット20及び暖房端末51に対する制御を実行」するようにする「利用者の手動操作」手段 と、
本願発明の「前記熱利用手段の運転が許可されている状態にあるか否かを判定する運転許可状態判定手段」とは、
「運転が許可されている状態にあるか否かを判定する」手段である限りにおいて一致する。
そして、引用発明の「強制運転時」に行われることは、「熱利用手段」(引用発明での「暖房端末」)への熱の供給を、
「貯湯タンクの貯湯量が所定量以上の場合には、発電ユニット内の熱交換器において排熱回収して加熱された冷却水を熱媒体として暖房端末循環配管に直接供給可能」とすることであり、
本願発明において「前記貯湯槽の蓄熱量に応じて、前記給電装置が発生した熱を自動的に前記熱利用手段へ供給」するのは「前記熱利用手段の運転が許可されている状態にあると判定された場合」の時であることから、
引用発明の「強制運転時」と、本願発明の「熱利用手段の運転が許可されている状態にあると判定された場合」とは、「運転が許可されている状態にあると判定された場合」の点で一致する。

なお、審判請求書(第5ページ第17?28行)において、引用例1に記載の「強制運転」について、停電時に「強制」的に発電する意味での「強制運転」に限定されたものとし、本願発明と引用発明の、技術思想が全く異なる旨の主張がなされているが、引用例1に「強制運転する場合を想定して説明したが、発電ユニット10の強制運転は、必ずしも系統停電時に限定されるものではない。」(上記記載事項(1f)参照)とあり、停電時に限定されるものではない。
さらに、停電時に限定されない技術的思想として、引用例1には「 更に、強制的に発生させた熱需要ではあるものの、発生時間帯をシフトさせたと考えれば、放熱器による排熱の放熱処理に比べて、排熱を有効に利用できるため、高省エネルギ化が図れる。」(上記記載事項(1b)参照)との記載もある。

エ.引用発明の「排熱回収制御装置32」は、「強制運転時において貯湯量が所定量以上の場合には、発電ユニット10内の熱交換器において排熱回収して加熱された冷却水を熱媒体として暖房端末循環配管29に直接供給可能」となるようにさせているので、本願発明の「前記貯湯槽の蓄熱量に応じて、前記給電装置が発生した熱を自動的に前記熱利用手段へ供給させる熱供給制御手段」に相当する。

オ.引用発明の「貯湯量」が、「所定量以上」であるのか、または、「所定量を下回る」のか比較される「所定量」と、 本願発明の「蓄熱量」の「第1閾値」及び「第2閾値」とは、「閾値」である限りで共通する。
そして、上記「ウ.」で言及した、引用発明の「利用者の手動操作」手段と、「強制運転時」の状態がそれぞれ、本願発明の「運転が許可されている状態にあるか否かを判定する」手段と、「運転が許可されている状態にあると判定された場合」に一致する点を鑑みるに、
引用発明の
「廃熱回収制御装置32」は、「強制運転時において貯湯量が所定量以上の場合には、発電ユニット内の熱交換器において排熱回収して加熱された冷却水を熱媒体として暖房端末循環配管29に直接供給可能となり、更に、排熱回収制御装置32は、強制運転時で貯湯量が所定量以上の場合には、暖房端末51の暖房端末循環配管29上の循環ポンプ35を作動させるべく、暖房端末51の制御装置に対して運転指示を与え、
強制運転時において、給湯需要が発生して貯湯タンク21の貯湯量が所定量を下回ると、排熱回収制御装置32は、暖房端末51の制御装置に対して運転停止を指示する」ことと、本願発明の
「前記熱供給制御手段は、前記運転許可状態判定手段により前記熱利用手段の運転が許可されている状態にあると判定された場合に、前記貯湯槽の蓄熱量が第1閾値以上であれば前記給電装置が発生した熱を自動的に前記熱利用手段へ供給し、第2閾値以下であれば供給しないように設定されている」こととは(比較容易のために当審が下線を付した)、
「前記熱供給制御手段は、前記運転許可状態判定手段により運転が許可されている状態にあると判定された場合に、前記貯湯槽の蓄熱量が閾値以上であれば前記給電装置が発生した熱を自動的に前記熱利用手段へ供給し、閾値以下であれば供給しないように設定されている」ことの限りにおいて共通する。

(2) 一致点
よって、本願発明と引用発明は、
「電力及び熱を発生する給電装置と、
前記給電装置が発生した熱によって温められた温水を貯留する貯湯槽と、
前記給電装置が発生した熱を利用可能な熱利用手段と、
運転が許可されている状態にあるか否かを判定する運転許可状態判定手段と、
前記運転許可状態判定手段により運転が許可されている状態にあると判定された場合に、前記貯湯槽の蓄熱量に応じて、前記給電装置が発生した熱を自動的に前記熱利用手段へ供給させる熱供給制御手段と、を備え、
前記熱供給制御手段は、前記運転許可状態判定手段により運転が許可されている状態にあると判定された場合に、前記貯湯槽の蓄熱量が閾値以上であれば前記給電装置が発生した熱を自動的に前記熱利用手段へ供給し、閾値以下であれば供給しないように設定されていることを特徴とするコジェネレーションシステム。」の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

(3) 相違点
ア.相違点1
運転が許可されている状態にある対象が、本願発明では熱利用手段であるに対し、引用発明では給電装置である点。

イ.相違点2
本願発明において「前記熱利用手段が配置される場所の室温が予め定めた所定の閾値を下回っていた場合に、
または、前記室温が予め定めた所定の閾値を下回り、且つ、ユーザの設定操作で前記貯湯槽の蓄熱量が閾値以上となったときに前記熱利用手段の運転を許可する旨の設定がなされている場合に、
前記熱利用手段の運転が許可されている状態にあると判定し」とあるのに対し、引用発明においては、そのような特定はない点。

ウ.相違点3
給電装置が発生した熱を熱利用手段へ供給するかしないかについての、貯湯槽の「蓄熱量」の「閾値」について、本願発明では「熱利用手段」へ熱を供給する場合の「第1閾値」、熱を供給しない場合の閾値を「第2閾値」を設定するのに対し、引用発明では、「所定量」と設定している点。

5.当審の判断
(1) 上記の各相違点について検討する。

ア.相違点1について
本願発明の「熱利用手段の運転が許可されている状態」において、貯湯槽の蓄熱量が閾値以下であれば、熱が供給されず「熱利用手段」は運転されないことから、「熱利用手段の運転が許可されている状態」は、「熱利用手段」が実際に運転されている状態を意味するものではない。
本願発明では「前記運転許可状態判定手段により前記熱利用手段の運転が許可されている状態にあると判定された場合に、前記貯湯槽の蓄熱量に応じて、前記給電装置が発生した熱を自動的に前記熱利用手段へ供給させる」、とあるように、
熱利用手段の運転が許可されている状態は、熱利用手段を貯湯タンクの蓄熱量に応じて運転する制御状態に入るための条件である。
そして、引用発明の、給電装置(引用発明の「発電ユニット10」)の運転が許可されている状態(引用発明の「強制運転時」)も、「貯湯タンクの貯湯量が所定量以上の場合には、発電ユニット内の熱交換器において排熱回収して加熱された冷却水を熱媒体として暖房端末循環配管に直接供給可能」とあるように、熱利用手段(引用発明での「暖房端末」)を貯湯タンクの蓄熱量に応じて運転する制御状態に入る条件である。
すると、「熱利用手段」の運転が許可されている状態と、「給電手段」の運転が許可されている状態とは、同じ条件を現す際の表現上の差異に留まるものであり、実質上の相違点ではない。

イ.相違点2について
本願発明の「前記熱利用手段が配置される場所の室温が予め定めた所定の閾値を下回っていた場合に、
または、前記室温が予め定めた所定の閾値を下回り、且つ、ユーザの設定操作で前記貯湯槽の蓄熱量が閾値以上となったときに前記熱利用手段の運転を許可する旨の設定がなされている場合に、
前記熱利用手段の運転が許可されている状態にあると判定し」との記載中の「または」により、
「前記運転許可状態判定手段は、前記熱利用手段が配置される場所の室温が予め定めた所定の閾値を下回っていた場合に、前記熱利用手段の運転が許可されている状態にあると判定」することを発明特定事項として選択した場合について、以下検討する。

引用発明において、運転が許可されている状態の判定において、熱利用手段が配置される場所の「室温」を用いる点は開示されていないが、暖房の技術分野において、室温が設定温度などの予め定めた所定の温度に達した際に暖房運転を行わせないことは、原査定で示された刊行物である特開2006-275430号公報(特に【0018】)に記載されているように周知技術である。
また、引用例1には、「また、所定の熱負荷端末の運転に不都合がある場合は、利用者は熱電併給システムの強制運転自体を停止することも可能となる。」(上記記載事項(1c)参照)と記載されており、引用発明における「強制」が、熱利用手段側の都合に全く関係なく強制することのみを意味するものとは認められないから、上記周知技術の適用を阻害するものでもない。
そうすると、引用発明において、強制運転状態の際に室温が設定温度を超えた場合には暖房運転が行われないよう、すなわち室温が所定の閾値を下回っている場合に暖房運転が行われるように設定することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

なお、審判請求書(第9ページ10?14行)において、「引用文献1に刊行物1の技術を適用してしまうと、放熱を続けなくてはならないはずの暖房装置が、設定温度で停止してしまい、本来の主目的である発電ユニットの強制運転ができなくなってしまうか、本来解決すべき課題であったはずの大掛かりな放熱装置を別途設ける必要性が生じてしまいます。」と、引用発明に周知技術の適用することに動機がなく「無理のある組み合わせ」であるとの主張があるが、引用例1に「発電ユニット10に排熱を大気放熱するための放熱器を備えていない熱電併給システムを想定して説明したが、当該放熱器を備えた場合についても、本発明システムは有効に機能する。」(上記記載事項(1f)参照)とあるように、放熱装置を別途設ける必要性が生じることも、引用発明に上記周知技術を適用することを阻害しない。

よって、引用発明に上記周知技術を適用し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ.相違点3について
給湯の制御において、動作の切り換えが頻繁にならないように閾値を異ならせてヒステリシス特性を持たせることは、特開2005-172324号公報(特に【0040】,【0050】)に記載されるように周知技術であり、引用発明において、熱利用手段への供給の開始、停止が頻繁にならないように、閾値を異ならせようとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮である。

よって、引用発明に上記周知技術を適用し、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

(2) 本願発明の奏する作用効果
そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-11 
結審通知日 2014-11-18 
審決日 2014-12-02 
出願番号 特願2007-265807(P2007-265807)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島田 信一吉澤 伸幸  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 森本 康正
山崎 勝司
発明の名称 コジェネレーションシステム  
代理人 黒木 義樹  
代理人 池田 正人  
代理人 城戸 博兒  
代理人 平野 裕之  
代理人 柳 康樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  

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