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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1296478
審判番号 不服2012-25321  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-20 
確定日 2015-01-14 
事件の表示 特願2007-549664「生菌から誘導される化合物の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月13日国際公開、WO2006/074094、平成20年 7月24日国内公表、特表2008-526767〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、2005年12月30日(パリ条約による優先権主張 2005年1月3日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成21年1月5日付けで手続補正がなされた。平成23年11月14日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成24年5月21日付けで意見書、手続補正書が提出されたが、同年8月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成24年12月20日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。



2.本願発明について

本願特許請求の範囲に係る発明のうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年5月21日付け手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「有益な化合物を自然に誘導するための方法であって、
乳酸菌種、ビフィズス菌種、腸球菌種、好熱性連鎖球菌、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の生きている生菌生物、及び
葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6、ビタミンB5、ビタミンB3、ビタミンB2、ビタミンB1、イノシトール、コリン、ビオチン、緑茶、酸化型CoQ-10及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の栄養補助食品剤
を含む微生物学的培養物を調製する工程;
該微生物学的培養物を培養して生菌活性を開始させる工程;及び
エタノールを添加して該生菌活性を停止させて、有益な化合物を保護する工程;
を含み、且つ
前記有益な化合物がビタミンBコエンザイム、ポリフェノール化合物及び還元型CoQ-10からなる群から選択される、前記方法。」



3.原査定の理由

原査定の拒絶の理由3、4は、概略、

葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6、ビタミンB5、ビタミンB3、ビタミンB2、ビタミンB1、イノシトール、コリン、ビオチン、緑茶、酸化型CoQ-10及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の栄養補助食品剤を含有する培地で乳酸菌の微生物を培養すると、ビタミンBコエンザイム、ポリフェノール化合物及び還元型CoQ-10からなる群から選択される有益な化合物を取得できる旨を示す理論上ないし実験上の根拠は示されていないし、培地の成分や微生物の種類によって、培養後に得られる物質が異なり得ることは出願時の技術常識であるから、発明の詳細な説明の記載、及び、出願時の技術常識を考慮すると、培地に添加される栄養剤及び生成物が特定されても、当該栄養剤を含有する培地で微生物を培養して当該生成物が得られる程度に、発明の詳細な説明が記載されているとはいえないから、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず、かつ、本願発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるから、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないし、また、本願発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるから、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、

というものである。



4.当審の判断

4-1 特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)について

特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、本願明細書のサポート要件の存在は、本願出願人、すなわち審判請求人が証明責任を負うと解するのが相当である。



本願明細書には、同明細書記載の発明の背景、及び解決すべき課題に関連して、以下の記載がある。


(ア)「本発明の一般的な目的は、薬剤又は栄養補助剤に使用するための有益な化合物を製造するための方法を提供することである。
本発明の特別な目的は、改善された生物学的利用能を有するかつて生きていた原料から誘導される化合物を製造するための方法を提供することである。
本発明のさらなる特定の目的は、上記問題の一つ以上を克服することである。
本発明の一般的な目的は、少なくとも部分的に、少なくとも1種の生きている生菌生物、及び少なくとも1種の栄養補助食品及び/又は少なくとも1種の栄養剤を含む微生物学的培地を蒸留水に分散してブロスを形成し;所定の温度で選択期間の間該ブロスを培養して生菌活性を誘発させ;有機エタノールを加えて該生菌活性を停止させ;及び該ブロスから所望の化合物を分離することを含む、生菌から誘導される有益な化合物を製造するための方法によって達成することができる。」(【0011】)
(イ)「一般的な技術は、概して、要求に応じて1種以上の上記性能基準を満たすのに有効な、例えばポリフェノール、メラトニン、ビタミンB誘導コエンザイム及び薬草オカトラノオなどの有益な化合物を製造するための方法を提供することができない。さらに、先行技術は、概して、生菌生物、栄養補助食品又は栄養剤を供給し、及び廃棄副生成物から有益な化合物を分離することによるなどの、かつて生きていた原料から有益な化合物を誘導するための方法を提供することができない。さらに、先行技術は、概してそのような有益な化合物を製造するのに用いることのできる微生物学的培地を特定することができない。
本発明はさらに、少なくとも1種の生きている生菌生物;及び少なくとも1種の栄養剤又は栄養補助食品を含む該有益な化合物を製造するための微生物学的培地を含む。
他の目的及び利点は、特許請求の範囲に関連する以下の詳細な記載から当業者に明らかである。」(【0012】)
(ウ)「(発明の詳細な説明)
本発明は、生菌生物、栄養補助食品又は栄養剤を供給し、廃棄副生成物を収集し、及び該廃棄副生成物から有益な化合物を分離することによるなどの、薬剤又は栄養補助食品に使用するための生菌から誘導される有益な化合物を製造するための方法を提供する。本発明はさらに、改善された生物学的利用能を有し、且つ薬剤又は栄養補助食品に使用するのに好適な、かつて生きていた原料から誘導される有益な化合物を提供する。」(【0013】)



以上の記載によれば、本出願前、生菌生物、栄養補助食品又は栄養剤を供給し、及び廃棄副生成物から有益な化合物を分離することによるなどの、かつて生きていた原料から有益な化合物を誘導するための方法を提供することができず、有益な化合物を製造するのに用いることのできる微生物学的培地を特定することができずにいたところ、本願発明がなされたことが理解できる。そうすると、本願発明の解決すべき課題とは、有益な化合物を製造するのに用いることのできる微生物学的培地を特定した上で、生菌生物、栄養補助食品又は栄養剤を供給し、及び廃棄副生成物から有益な化合物を分離することによるなどの、かつて生きていた原料から有益な化合物を誘導するための方法を提供することにあるものと認められる。


そこで、発明の詳細な説明に、本願発明の上記課題が解決できることを当業者が認識できるように記載もしくは示唆がされているか否かについて、以下検討する。


本願発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その発明特定事項として、「乳酸菌種、ビフィズス菌種、腸球菌種、好熱性連鎖球菌、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の生きている生菌生物」、「葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6、ビタミンB5、ビタミンB3、ビタミンB2、ビタミンB1、イノシトール、コリン、ビオチン、緑茶、酸化型CoQ-10及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の栄養補助食品剤」、「有益な化合物がビタミンBコエンザイム、ポリフェノール化合物及び還元型CoQ-10からなる群から選択される」、との規定を含むものである。

本願発明に使用し得る生菌生物につき、本願明細書には、
「種々の生きている生菌生物が、ある種の好ましい実施態様に従って本発明の微生物学的培地に含まれてもよく、少なくとも1種の生菌生物を、乳酸菌種、ビフィズス菌種、腸球菌種、一般的に安全として許容(GRAS)される好熱性連鎖球菌、及びそれらの組み合わせから選択することができる。本発明の別の好ましい実施態様では、微生物学的培地が、乳酸菌種から選択される少なくとも1種の生きている生菌生物、及びビフィズス菌種から選択される少なくとも1種の生きている生菌生物を含むことができる。」(【0018】)
「好適な乳酸菌種の例は、限定はしないが、L. acidophilus、L. paracasei、L. fermentum、L. rhamnosus、L. johnsonii、L. plantarum、L. reuteri、L. salivarius、L. brevis、L. bulgaricus、L. helveticus、L. grasseri、L. casei、L. lactis、及びそれらの組み合わせを含む。
好適なビフィズス菌種の例は、限定はしないが、B. bifidum、B. breve、B. infantis、B. longum、B. lactis、及びそれらの組み合わせを含む。
好適な腸球菌種の例は、限定はしないが、E. faceum、E. faecalis、及びそれらの組み合わせを含む。」(【0019】)
「本発明のある種の好ましい実施態様では、改善された生物学的利用能及び増加した効力を有するポリフェノール化合物が、乳酸菌種、ビフィズス菌種、腸球菌種、一般的に安全として許容(GRAS)される好熱性連鎖球菌、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の生きている生菌生物、緑茶の葉、及び少なくとも1種の栄養補助食品又は栄養剤を含有する微生物学的培養物から誘導され得る。有利には、生じたポリフェノール化合物が、例えば培養プロセス中に消費されるカフェインなどの極小量の関連化合物を含有する。」(【0026】)
「本発明のある種の好ましい実施態様では、高エネルギー形態のビタミンBs及び/又はそれらの関連する末端鎖状コエンザイムが、乳酸菌種、ビフィズス菌種、腸球菌種、一般的に安全として許容(GRAS)される好熱性連鎖球菌、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の生きている生菌生物、少なくとも1種のビタミンB原料を含む出発物質、及び少なくとも1種の栄養剤を含む微生物学的培養物から誘導され得る。」(【0028】)
「本発明のある種の好ましい実施態様では、還元型CoQ-10が、乳酸菌種、ビフィズス菌種、腸球菌種、一般的に安全として許容(GRAS)される好熱性連鎖球菌、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の生きている生菌生物、及び酸化型CoQ-10(UVI-キノン)栄養剤を含む微生物学的培養物から誘導され得る。」(【0031】)
と記載されている。

しかし、本願明細書には、生菌生物について、羅列列挙されるのみで、具体的にいかなる生菌生物を用いることにより、所望の栄養補助食品剤から、所望の有益な化合物が得られるのかについて、実際に誘導した実施例が何ら記載されていない。
また、乳酸菌種、ビフィズス菌種、腸球菌種、好熱性連鎖球菌には、多数の種々様々な菌種が含まれており、かつ、菌種によって、その代謝は大きく異なるため、乳酸菌種、ビフィズス菌種、腸球菌種、好熱性連鎖球菌の中でも、具体的にいかなる菌を用いることにより、所望の栄養補助食品剤から、所望の有益な化合物が得られるのか(つまり、葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6、ビタミンB5、ビタミンB3、ビタミンB2、ビタミンB1、イノシトール、コリン、ビオチンからビタミンBコエンザイムを得るためには、いかなる菌を用いるのか、緑茶からポリフェノール化合物を得るには、いかなる菌を用いるのか、酸化型CoQ-10から還元型CoQ-10を得るには、いかなる菌を用いるのか)につき、本願明細書の記載からは明らかであるとは認められない。
さらに、実施例にかわる理論的説明により、いかなる菌を用いることにより、所望の栄養補助食品剤から、所望の有益な化合物が得られるのかについて明らかにされているとも認められない。
しかも、当該技術分野において、いかなる菌を用いれば、所望の栄養補助食品剤から、所望の有益な化合物を得ることができるのか、についての関係が明らかであったという技術常識が、本願出願時に存在していたとも認めることはできない。


よって、本願明細書の発明の詳細な説明に、当業者において、本願発明の上記課題が解決されるものと認識することができる程度の記載ないし示唆があると認めることはできないし、また、出願時の技術常識に照らしても、上記判断は変わらない。


よって、本願発明が、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとは認められない。



4-2 特許法第36条第4項第1号に規定する要件(いわゆる実施可能要件)について

上記、(2)-1にも記載のとおり、本願明細書には、生菌生物について、羅列列挙されるのみで、具体的にいかなる菌を用いることにより、所望の栄養補助食品剤から、所望の有益な化合物が得られるのかについて、実際に誘導した実施例が何ら記載されていない。
また、乳酸菌種、ビフィズス菌種、腸球菌種、好熱性連鎖球菌には、多数の種々様々な菌種が含まれており、かつ、菌種によって、その代謝は大きく異なるため、乳酸菌種、ビフィズス菌種、腸球菌種、好熱性連鎖球菌の中でも、具体的にいかなる菌を用いることにより、所望の栄養補助食品剤から、所望の有益な化合物が得られるのかにつき、本願明細書には十分に開示されているとは認められない。
さらに、実施例に変わる理論的説明により、いかなる菌を用いることにより、所望の栄養補助食品剤から、所望の有益な化合物が得られるのかについて明らかにされているとも認められない。
しかも、当該技術分野において、いかなる菌を用いれば、所望の栄養補助食品剤から、所望の有益な化合物を得ることができるのか、についての関係が明らかであったという技術常識が、本願出願時に存在していたとも認めることはできない。

このため、当業者が本願発明を実施するためには、多数の種々様々な候補となる生菌生物を用いて、実際に誘導を行い、好適な生菌生物を見出す必要があるが、その探索には、当業者に期待し得る程度を超える過度の試行錯誤を要するものであるから、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。



4-3 請求人の主張について

請求人は、平成25年2月12日付け手続補正書に記載された【請求の理由】中において、
「(V)理由3及び4について
(1) 審査官殿は、培地の成分や微生物の種類によって、培養後に得られる物質が異なり得ることは出願時の技術常識であるから、培地に添加される栄養剤及び生成物が特定されても、当該栄養剤を含有する培地で微生物を培養して当該生成物が得られる程度に、発明の詳細な説明が記載されているとはいえない、と述べております。
(2) しかしながら、本願発明の方法において添加される栄養補助食品剤は、「葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6、ビタミンB5、ビタミンB3、ビタミンB2、ビタミンB1、イノシトール、コリン、ビオチン、緑茶、酸化型CoQ-10」であり、得られる生成物は、「ビタミンBコエンザイム、ポリフェノール化合物、還元型CoQ-10」ですので、当業者であれば、上記栄養補助食品剤と生成物との関連性から、本願発明において誘導される生成物は、培地中に含まれる成分全てに依存するのではなく、培地中に添加される栄養補助食品剤の種類に依存すると理解するものと思料いたします。
(3) また、特定の微生物及び栄養補助食品剤を用いて特定の生成物を得る具体的な方法については、本願明細書に詳しく記載されております。」
と主張し、さらに、緑茶(栄養補助食品剤)からポリフェノール化合物(生成物)を得る方法については、本願明細書の段落【0026】?【0027】の記載から、葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6、ビタミンB5、ビタミンB3、ビタミンB2、ビタミンB1、イノシトール、コリン、ビオチン(栄養補助食品剤)からビタミンBコエンザイム(生成物)を得る方法については、本願明細書の段落【0028】?【0030】の記載から、酸化型CoQ-10(栄養補助食品剤)から還元型CoQ-10(生成物)を得る方法についても、本願明細書の段落【0031】?【0032】の記載から、それぞれ十分に理解することができる旨を主張し、「発明の詳細な説明は、請求項1?10に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されており、請求項1?10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものではありません。」と主張している。


しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明には、請求項1記載の「有益な化合物」を誘導するために、該誘導の際に用いる生菌生物につき、十分な特定がされているとは認められないことは、上記4-1、4-2にも記載のとおりであるから、生成物(「有益な化合物」)は、培地中に添加される栄養補助食品剤の種類に依存する旨の主張、及び、「有益な化合物」を得る具体的な方法が本願明細書に詳述されている旨の主張は、いずれも当を得たものではなく、上記の判断を左右しない。


さらに、請求人は、平成25年2月12日付け手続補正書に記載された【請求の理由】中において、
「(7) 補足
以上の通り、本出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号及び第36条第6項第1号に規定する要件を満たしております。さらに補足すると、本願明細書の段落[0027]、[0030]及び[0032]に記載された方法に基づいて種々の製品が既に製造、販売されております(添付の資料1?6を参照下さい)。出願人が製造販売する資料1?6記載の種々の製品と、関連する請求項、製造する際に用いた方法に関する明細書の記載箇所などは、以下の表にまとめて示します。例えば、ポリフェノール化合物の場合には、資料6の第4頁に出発材料として緑茶、生菌生物、水が記載されており、同第5頁には、これらの混合物を30?40℃で5?6日間発酵させることが記載されています。なお、還元型CoQ-10については、現時点において市場に流通しておりませんが、明細書の記載に基づき製品を製造できていることを併せて申し添えます。」
とも主張する。


しかし、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、加えて、本出願前に、いかなる生菌生物を用いれば、所望の栄養補助食品剤から、所望の有益な化合物を得ることができるのか、についての関係が明らかであったという技術常識が存在したとも認められないため、本願発明により製造した製品が既に製造、販売されている事実は、上記判断に影響を与えるものではない。

また、本願発明が実施可能要件に適合するか否かは、発明の詳細な説明の記載と出願時の技術常識により判断すべきものであり、やはり、本願発明により製造した製品が既に製造、販売されている事実は、上記判断に影響を与えるものではない。


よって、請求人による主張は、いずれも採用し得ない。


よって、本願発明に係る出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、発明の詳細な説明の記載が同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



5.むすび

以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。



よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-19 
結審通知日 2014-08-20 
審決日 2014-09-02 
出願番号 特願2007-549664(P2007-549664)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (A61K)
P 1 8・ 537- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平林 由利子  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 辰己 雅夫
穴吹 智子
発明の名称 生菌から誘導される化合物の製造方法  
代理人 市川 さつき  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 佐々木 康匡  
代理人 浅井 賢治  
代理人 箱田 篤  
代理人 辻居 幸一  
代理人 山崎 一夫  

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