• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1296598
審判番号 不服2012-25425  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-21 
確定日 2015-01-22 
事件の表示 特願2008-534812「半導体材料の一つ以上の特性を分析する方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月19日国際公開、WO2007/041758、平成21年 3月19日国内公表、特表2009-512198〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
(1)本願は、2006年10月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年10月11日、豪州)を国際出願日とする出願であって、平成24年 8月16日付けで拒絶査定がなされ、これを不服として同年12月21日に拒絶査定不服審判を請求するとともに同日に手続補正が行なわれたが、平成25年10月 9日付けで当審による最初の拒絶理由が通知され、これに対して平成26年 4月14日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

(2)本願の請求項1?44に係る発明は、上記平成26年 4月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?44に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1及び請求項3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明3」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
間接バンドギャップ半導体材料から発生したフォトルミネセンスの空間変動を判断する方法であって、前記方法が、
所定の照明によって前記間接バンドギャップ半導体材料の少なくとも1平方センチメールの領域を照明し、前記照明に対応して前記間接バンドギャップ半導体材料からフォトルミネセンスを発生させ、前記照明がショートパス濾過され、前記フォトルミネセンスの波長領域内の要素を実質的に除去し、前記照明の光学的総出力は1.0ワットを超える照明ステップと、
撮像デバイスによって前記フォトルミネセンスの画像を捕捉する捕捉ステップと、
前記画像を処理し、前記画像内のルミネセンスの空間変動を判断する処理ステップとを含む方法。」

「【請求項3】
間接バンドギャップ半導体材料から発生したフォトルミネセンスの空間変動を判断する方法であって、前記方法が、
所定の照明によって前記間接バンドギャップ半導体材料の領域を照明し、前記照明に対応して前記間接バンドギャップ半導体材料からフォトルミネセンスを発生させると共に前記照明がショートパス濾過され、前記フォトルミネセンスの波長領域内の要素を実質的に除去し、前記照明の光学的総出力は1.0ワットを超える照明ステップと、
撮像デバイスによって前記フォトルミネセンスの画像を捕捉する捕捉ステップと、
前記画像を処理し、前記画像内のフォトルミネセンスの空間変動を判断する処理ステップとを含み、
前記照明ステップと前記捕捉ステップは約1秒以内に行われることを特徴とする方法。」

2 当審による平成25年10月 9日付けの拒絶理由通知(以下「拒絶理由通知」という。)で、引用された刊行物は以下のとおり。
刊行物1:特表2001-500613号公報
刊行物2:特開平5-90368号公報
刊行物3:特開平1-182738号公報
刊行物4:特開2003-4636号公報
刊行物5:特開2002-350732号公報
刊行物6:国際公開第02/40973号

3 引用刊行物及びその摘記事項
上記拒絶理由通知で引用された本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物1?5及び本願の優先権主張日前に外国において頒布された刊行物6のうち、刊行物1及び3には、次の事項が記載されている。

(1)刊行物1には、「半導体ミクロの欠陥検出装置とその方法」(発明の名称)に関して図9と共に次の事項が記載されている。
(刊1ア)「従って、室温で取り組むことができ、並びに工業的使用に適した速さで半導体あるいはシリコン構造中の欠陥に関する情報を提供し、および/あるいは半導体あるいはシリコン構造の上部領域の、そしてその表面に特に近い欠陥を見ることを可能にする光ルミネセンス技術を提供することが、本発明の一つの目的である。
前記半導体あるいはシリコン構造の中の欠陥を見え易くするために、そのPL像のコントラストを強化する目的で前記半導体あるいはシリコン構造中の欠陥における正孔対の非放射再結合をし易くすることが、本発明の次の目的である。
最も広い見方では、本発明は、欠陥がある場所のキャリアの寿命の変化によって観
察されるような選択された励起条件下での、半導体あるいはシリコン構造からのルミネセンスの収集に基づくものである。
従って本発明の方法においては高注入レベルレーザーを使用し、欠陥は欠陥部分でのキャリアの寿命の局部的変化によって検出される。これらの欠陥は、一般に欠陥の物理的位置で暗部として観察されるが、放射再結合が増大すると(enhanced)、背景に関しては(having regard to the background)、比較的明るい領域を生じる場合もある。
欠陥部分での再結合は、注入レベルを増加することにより増大され(enhanced)、キャリアが少なくても、それを有効に利用することができる。」(8頁7?25行)

(刊1イ)「図9は、本発明による装置をダイアグラム的に図示するものである。
図面および最初に図9を参照し、本発明による装置をダイアグラム的に図示するものが示されている。
本装置は本質的にPL作像顕微鏡を有し、それは右手側にレーザーバンク3?8を有し、底側にX-YテーブルあるいはR-Θテーブルのような試料台を有し、左手側にマイクロプロセッサ40とディスプレイスクリーン39を有し、図の中央にシステムを通過する光を方向付けする各種光構成要素が示されている。
図9に示した実施の形態で、6個のレーザーは試料の異なる深さを厳密に調べることができるように配置されている。しかしながら、唯一つのレーザーを用いるかあるいは実際多数のレーザーを用いるかは本発明の範囲内にある。どのような場合でも、少なくとも一つのレーザーは高強度レーザーであり、理想的には0.1mmと0.5ミクロンの間のスポットの大きさで10^(4)から10^(9)watt/cm^(2)間の電力密度を持つ。前記レーザーバンクと共に作動するレーザー選択器16が、一つあるいはそれ以上のレーザーを使用するか選択するために、そして更にレーザーの周波数および波長を選択するために備えられている。
光ファイバー9のような従来の光学器械構成部品力洸を照準器10およびレーザービーム拡張器11に導くために用いられる。アポダイゼーション板12は、レーザービーム拡張器11とビーム分割器31間に置かれている。ビーム分割器31は光の一部を前述のレーザーから対物レンズ34を介して試料2に導く。
自動焦点制御器30が備えられ、ピエゾ駆動(piezo driven)焦点ステージ33と結合される。顕微鏡はそれぞれ34,35で表す少なくとも一個のミクロな検査用高開口数(high numerical aperture)対物レンズと一個のマクロ検査用低開口数(low numerical aperture)対物レンズを備えた従来の回転式タレット36が設けられてい
る。更にタレット36に結合して光学的移動測定システム38が備えられている。
ケーブルが自動焦点制御器30をマイクロプロセッサ40へおよび顕微鏡対物レンズ表示器32をマイクロプロセッサ40へ接続するために備えられている。
ビーム分割器31の下流にレーザーノッチフィルタ用のフィルタホイール13が備えられており、その下流には揺動折り畳み式鏡14が備えられ、その機能については後述する。前記鏡14に配列して波長選択用のフィルタホイール27が備えられ、その後方に適当なCCD 2-Dアレイ検出器29に取りつけられたズームレンズが備えられている。
無限システム補償レンズ(infinity system compensating lens)37が、別の波長選択用フィルタホイール23およびUVおよび可視光用の検出器25の最先端にある焦点レンズ24に向け光を反射するコールドミラー17の先の光経路に備えられている。検出器25は、ロックイン増幅器26に結合されている。これは表面の反射像を得るのに用いられる。
コールドミラー17の最後方に再び別の波長選択用フィルタホイール18が、その最後方には、焦点レンズ22およびルミネセンス検出用の検出器21の最先端に備えられたピンホール選択用の別の開口ホイール19が備えられている。
UVおよび可視光用の検出器25および赤外線検出器21の両方がロックイン増幅器26に結合されている。
下記に関連してシステムの動作を説明する。
試料の異なる面を厳密に調べるための波長範囲が数種のレーザー(3?8)により得られる。レーザーは、試料(2)から放射された信号が、ロックイン増幅器(26)によるレーザー変調周波数に同期する検出器によってバックグラウンド放射線から離
隔されるように周波数発生器(16)によって変調される。別の実施の形態では、波長範囲は、同調可能レーザー、および/あるいは光パラメトリック発信器を用いて作り出される。各レーザーは、レーザーの何れかあるいは総てが試料(2)を照射できるように多分岐光ファイバー(9)に接続され、割り当てられている。多分岐光ファイバーの共通端は放射光を照準する光システム(10)に接続している。この光システムは、試料(2)上にある顕微鏡対物レンズ(34,35)に合致した値にレーザービームの直径を合わせるビーム拡張器(11)に割り当てられている。拡張したビームはその後、光エネルギをビーム区域に均等に配分するアポダイゼーション板(12)を通過する。
拡張および制御(apodized)されたビームは、ビーム分割器(31)によって反射され、顕微鏡対物レンズ(34および35)に送られる。ビームは顕微鏡対物レンズ(34あるいは35)によって試料に焦点を合わせる。マイクロモードではこの対物レンズは回折が限られているスポットの大きさにビームを集中するように選ばれる。表示器機構(32)で操作される回転ターレット(36)は、対物レンズを試料のより広い区域が照射されるマクロモードに変更させる。別の実施の形態ではアポダイゼーション板(12)は、より高い注入レベルを与えるためにマイクロモード用スポットがより小さくなるように移動される。
光学的移動センサ(38)は試料までの距離を測定し、焦点防止制御器(antifocus controller)(3O)を通した帰還ループを介してピエゾ駆動焦点ステージ(piezoactuated focusing stage)(33)により正しい間隔を維持する。
試料からの光ルミネセンス信号は、(マイクロモードで)顕微鏡対物レンズ(34)により集められ、ビーム分割器(31)およびレーザー波長の範囲に整合するノッチフィルタを持つフィルタホイール(13)のノッチフィルタを通して戻される。ノッチフィルタは、光ルミネセンス信号のみを通過させ、どんな反射レーザー光も除去する。
折り畳み鏡(14)はビーム外に揺動し、信号を、使用されるいかなる無限顕微鏡(infinity microscope)対物レンズをも補償するために組み込まれるチューブレンズ(37)に、そしてコールドミラー(17)に通過させる。この構成要素は、選択されたカットオフ点(約700nm)以下のこれらの波長を信号を、検出器(25)に焦点を合わせる焦点レンズ(24)へ反射する。検出器焦点レンズ(24)の前面にあるフィルタホイール(23)は選択された波長帯域を離隔するフィルタを持つ。
カットオフ点を超える波長範囲にある光ルミネセンス信号の部分は、コールドミラー(17)を涌渦し、レンズ(22)により同様に検出器(21)に焦点を合わせる。この信号もまた選択された波長帯域を離隔するフィルタを持つフィルタホイール(18)を通過する。
異なる直径の一連のピンホールが、検出器(21)の前面に置かれた開口ホイール(19)にある。この開口ホイールは、ピンホールが所定の像平面と焦点を共有して置かれるように、ピエゾ駆動器(20)により軸方向に動かされる。この方法により、試料(2)中の異なる深さの平面は正確な深さ情報を与えるように作像される。
検出器(21,25)からの電気信号は、ロックイン増幅器(26)に送られ、そこで周波数発生器(15)からの参照信号によりレーザー(3?8)の変調周波数と同期させられる。電気信号はそれから、分析用に中央プロセッサ(40)に送られる。PL像はステージを走査するラスタにより得られる。代わりに検流計の鏡を用いた光学的走査も採用される。
別のマイクロモード操作では、折り畳み鏡(14)は光ルミネセンス信号のビームの中へ揺動する。進路を変更された信号は、選択された波長帯域を離隔するフィルタを持つフィルタホイール(27)を通って、ズームレンズ(28)に送られる。ズームレンズは、異なる倍率でCCD二方向アレイ(29)上に試料(2)の照射スポッ
トを作像するのに用いられる。このことにより、試料(2)の照射区域が異なる分解能で作像される。CCDアレイからの電気信号は、分析のために中央プロセッサに送られる。
本発明の前述の装置を用いて、半導体の欠陥を可視化するための研究が行われ、これらの研究の結果が図1?図8に示されている。これらの像は独特であり室温では他のいかなる方法でも得ることができない。一般的に本装置により半導体中の欠陥の位置の特定と特性解明が可能になるということが分かる。このことにより、デバイスを製造用ウェファーをより効果的に選別にでき、従って欠陥のある半導体の製造を防止することができる。
本発明により、欠陥の密度と空間的な分布が決定されるように欠陥を作像できる半導体あるいはシリコン構造中の欠陥作像装置とその方法が提供されることが分かる。」(11頁下から2行?15頁最終行)

(刊1ウ)図9は、PL作像顕微鏡装置をダイアグラム的に図示するものであり、右手側にレーザーバンク3?8、レーザービーム拡張器11、アポダイゼーション板12を介してビーム分割器31にてレーザーが反射され、レーザーが下方の対物レンズ34を介して試料2に向けられていること、試料からの光(励起光及びルミネッセンス光)が、対物レンズ34を介してビーム分割器31を通過し、レーザーノッチフィルタ用のフィルタホイール13のフィルタを介して折り畳み鏡14により反射された光が、選択された波長帯域を離隔するフィルタを持つフィルタホール27のフィルタを介してCCD二方向アレイ29に向けられていることが看取でき、また、回転ターレット36には、顕微鏡対物レンズ34および顕微鏡対物レンズ35が備えられていることが看取できる。

上記摘記事項(刊1ア)?(刊1ウ)を総合勘案すると、刊行物1には、次の事項が記載されている。(なお、刊行物1に記載されている番号について、括弧()付きと括弧無しのものを括弧なしに統一して表記している。)

「シリコン構造中の欠陥に関する情報を提供し、および、シリコン構造の上部領域の表面に特に近い欠陥を見ることを可能にする光ルミネセンス技術を提供するために、高注入レベルレーザーを使用し、欠陥部分でのキャリアの寿命の局部的変化によって、欠陥の物理的位置で暗部として観察する欠陥の密度と空間的な分布が決定されるように欠陥を作像できるシリコン構造中の欠陥作像装置の動作方法において、
前記欠陥の密度と空間的な分布が決定されるように欠陥を作像できるシリコン構造中の欠陥作像装置は、
少なくとも一つのレーザーは高強度レーザーであり、理想的には0.1mmと0.5ミクロンの間のスポットの大きさで10^(4)から10^(9)watt/cm^(2)間の電力密度を持つ唯一つのレーザーあるいは多数のレーザーと、
光の一部を前述のレーザーから対物レンズ34を介して試料2に導くビーム分割器31と、
少なくとも一個のミクロな検査用高開口数対物レンズ34と一個のマクロ検査用低開口数対物レンズ35を備えた回転式タレット36が設けられ、前記タレット36に結合して光学的移動測定システム38が備えられ、
ビーム分割器31の下流にレーザーノッチフィルタ用のフィルタホイール13が備えられ、その下流には揺動折り畳み式鏡14が備えられ、前記鏡14に配列して波長選択用のフィルタホイール27が備えられ、その後方に適当なCCD 2-Dアレイ検出器29に取りつけられたズームレンズが備えられているPL作像顕微鏡であって、
その動作は、
ビーム拡張器11によって、顕微鏡対物レンズ34,35に合致した値にレーザービームの直径を合わせ、
拡張および制御されたビームは、ビーム分割器31によって反射され、顕微鏡対物レンズ34、35に送られ、顕微鏡対物レンズ34、35によって試料に焦点を合わせられ、
その際、表示器機構32で操作される回転ターレット36は、マイクロモードではこの対物レンズは回折が限られているスポットの大きさにビームを集中するように選ばれ、マクロモードでは、対物レンズを試料のより広い区域が照射されるように変更させ、
試料からの光ルミネセンス信号は、(マイクロモードで)顕微鏡対物レンズ34により集められ、ビーム分割器31およびレーザー波長の範囲に整合するノッチフィルタを持つフィルタホイール13のノッチフィルタを通して戻され、ノッチフィルタは、光ルミネセンス信号のみを通過させ、どんな反射レーザー光も除去し、
別のマイクロモード操作では、折り畳み鏡14は光ルミネセンス信号のビームの中へ揺動することで、進路を変更された信号は、選択された波長帯域を離隔するフィルタを持つフィルタホイール27を通って、ズームレンズ28に送られ、ズームレンズは、異なる倍率でCCD二方向アレイ29上に試料2の照射スポットを作像するのに用いられ、このことにより、試料2の照射区域が異なる分解能で作像され、CCDアレイからの電気信号は、分析のために中央プロセッサに送られ、
欠陥の密度と空間的な分布が決定されるように欠陥を作像できるシリコン構造中の欠陥作像装置の動作方法。」(以下、「引用発明」という。))

(2)刊行物3には、「化合物半導体結晶の不純物測定方法」(発明の名称)に関して第1図?第4図と共に次の事項が記載されている。
(刊3ア)「微小領域でのフォトルミネッセンススペクトル測定による方法では、測定対象が微小領域であるため、結晶基板面上での測定箇所を特定するのが困難であるという問題があった。たとえば、測定対象となる微小領域の転位等の格子欠陥との相対的位置を知ることができなかった。
また、フォトルミネッセンストポグラフィによる方法では、不純物や格子欠陥のおおよその濃度分布を知ることは可能であるが、検出されるルミネッセンスは種々の不純物によるものがすべて含まれるので、それぞれの不純物についての濃度分布やその相対濃度を求めることができないという問題があった。」(2頁左上欄8?最終行)

(刊3イ)「第4図は、この発明を説明するためのフォトルミネッセンストポグラフィを示す図である。第4図に示される部分は、第1の励起光としての第1励起用レーザビームが照射された部分である。網目状の強発光部1は、転位網に対応した発光強度の強い部分を示している。また、強発光部2.3は、孤立転位に対応する発光強度の強い部分を示している。第2励起レーザスポツト4は、フォトルミネッセンススペクトルを得るための第2の励起レーザの照射部分を示しており、その径は1?2μm程度である。なお、第4図に示される第1励起用レーザビームが照射される部分の径は、約0.2?2mm程度である。」(2頁左下欄5?17行)

(刊3ウ)「アルゴンレーザ28からは、488nmまたは514.5nmの波長のレーザビームが放射される。このレーザビームは、クラッセンフィルタ21により、余分な蛍光が除去され、ビームスプリッタ20により2本のビームにスプリットされる。そのうちの1本のビームである第1励起用ビーム30は、ビームエキスパンダ17によって、ビーム径が1mm程度から10mm程度に拡大され、鏡胴に導入され、ハーフミラー18および対物レンズ16を通して試料14に照射される。この第1励起用ビーム30により発生したフォトルミネッセンスは、対物レンズ16により集光され、映像増強管29で検出される。ごの映像増強管29により、第1の励起光である第1励起用ビーム30で照射された200μm?2mm径の試料14面上でのフォトルミネッセンストポグラフィを得ることができる。」(3頁右上欄最終行?左下欄16行)

(刊3エ)第1図は装置を示す概略構成図であり、アルゴンレーザー28に続いてクラッセンフィルタ21が配置され、試料14からの光が映像増強管29に入射されていることが看取でき、第4図は、第1励起用レーザビームが照射された部分であって、フォトルミネセンストポグラフィを示す図であり、円形のフォトルミネセンストポグラフィ像の中に複数の斜線部分からなる領域を囲む網目状部分である白い線として強発光部1が、斜線部分からなる領域の中に白い点状の強発光部2、3が、及び、円形のフォトルミネセンストポグラフィ像のほぼ中央に黒点で第2励起レーザスポットが、それぞれ示されている。

4 当審の判断
(1)本願発明1と引用発明との対比・判断
ア 本願発明1と引用発明との対比
(ア)引用発明の「『シリコン』、『試料』」、「『光ルミネセンス』、『光ルミネセンス信号』」、「レーザー」、及び、「『CCD 2-Dアレイ検出器29』、『CCD二方向アレイ29』、『CCDアレイ』」は、それぞれ本願発明1の「間接バンドギャップ半導体材料」、「フォトルミネセンス」、「所定の照明」、及び、「撮像デバイス」に相当する。
(イ)引用発明は、「CCD二方向アレイ29上に試料2の照射スポットを作像」するために「試料からの光ルミネセンス信号」を用いており、これは、CCD二方向アレイ29に対応する二次元空間での「試料からの光ルミネセンス信号」の分布、即ち、「試料からの光ルミネセンス信号」の二次元空間での変動を像として得ていることは明らかであり、また、「CCDアレイからの電気信号は、分析のために中央プロセッサに送られ」ている。
したがって、引用発明の「CCD二方向アレイ29上に」「作像」された「照射スポット」の像としての「電気信号」が、「分析」のために「中央プロセッサに送られ」ているものである。
一方、本願発明1における「間接バンドギャップ半導体材料から発生したフォトルミネセンスの空間変動を判断する」ことであって、「撮像デバイスによって前記フォトルミネセンスの画像を捕捉する捕捉ステップと、前記画像を処理し、前記画像内のルミネセンスの空間変動を判断する処理ステップ」とによって行われている「ルミネセンスの空間変動を判断する」ことについては、その「判断」によって、単に、「ルミネセンスの空間変動」を認識すること以外に、「間接バンドギャップ半導体材料」の何をどの様にして得ようとするのかについて特段の限定がなされているものではない。
してみると、引用発明の「欠陥の密度と空間的な分布が決定されるように欠陥を作像できるシリコン構造中の欠陥作像装置の動作方法」は、本願発明1の「間接バンドギャップ半導体材料から発生したフォトルミネセンスの空間変動を判断する方法」に相当し、引用発明の「別のマイクロモード操作では、折り畳み鏡14は光ルミネセンス信号のビームの中へ揺動することで、進路を変更された信号は、選択された波長帯域を離隔するフィルタを持つフィルタホイール27を通って、ズームレンズ28に送られ、ズームレンズは、異なる倍率でCCD二方向アレイ29上に試料2の照射スポットを作像するのに用いられ、このことにより、試料2の照射区域が異なる分解能で作像され、CCDアレイからの電気信号は、分析のために中央プロセッサに送られ」ることと、本願発明1の「撮像デバイスによって前記フォトルミネセンスの画像を捕捉する捕捉ステップと、前記画像を処理し、前記画像内のルミネセンスの空間変動を判断する処理ステップ」とは、「撮像デバイスによって前記フォトルミネセンスの画像を捕捉する捕捉ステップと、前記画像を処理し、前記画像内のルミネセンスの空間変動を判断する処理ステップ」を有している点で一致している。
(ウ)引用発明の「0.1mmと0.5ミクロンの間のスポットの大きさで10^(4)から10^(9)watt/cm^(2)間の電力密度を持つ唯一つのレーザーあるいは多数のレーザーと、光の一部を前述のレーザーから対物レンズ34を介して試料2に導く」及び「マイクロモードではこの対物レンズは回折が限られているスポットの大きさにビームを集中するように選ばれ、マクロモードでは、対物レンズを試料のより広い区域が照射される」と、本願発明1の「所定の照明によって前記間接バンドギャップ半導体材料の少なくとも1平方センチメールの領域を照明し」とは、「所定の照明によって前記間接バンドギャップ半導体材料の所定の領域を照明」している点で一致する。
(エ)引用発明の「試料からの光ルミネセンス信号」は、「顕微鏡対物レンズ(34,35)に合致した値にレーザービームの直径を合わせ、拡張および制御されたビームは、」「顕微鏡対物レンズ(34および35)に送られ、顕微鏡対物レンズ(34あるいは35)によって試料に焦点を合わせられ、」た結果生じるものであるから、引用発明の「顕微鏡対物レンズ(34,35)に合致した値にレーザービームの直径を合わせ、拡張および制御されたビームは、」「顕微鏡対物レンズ(34および35)に送られ、顕微鏡対物レンズ(34あるいは35)によって試料に焦点を合わせられ、」は、本願発明1の「前記照明に対応して前記間接バンドギャップ半導体材料からフォトルミネセンスを発生させる照明ステップ」に相当する。
(オ)引用発明の「CCD二方向アレイ(29)上に試料(2)の照射スポットを作像」し、「CCDアレイからの電気信号は、分析のために中央プロセッサに送られ、半導体の欠陥を可視化し、」「欠陥の密度と空間的な分布が決定されるように欠陥を作像」することは、本願発明1の「撮像デバイスによって前記フォトルミネセンスの画像を捕捉する捕捉ステップと、前記画像を処理し、前記画像内のルミネセンスの空間変動を判断する処理ステップ」に相当する。
(カ)そうすると、両者は、
「間接バンドギャップ半導体材料から発生したフォトルミネセンスの空間変動を判断する方法であって、前記方法が、
所定の照明によって前記間接バンドギャップ半導体材料の所定の領域を照明し、前記照明に対応して前記間接バンドギャップ半導体材料からフォトルミネセンスを発生させる照明ステップと、
撮像デバイスによって前記フォトルミネセンスの画像を捕捉する捕捉ステップと、
前記画像を処理し、前記画像内のルミネセンスの空間変動を判断する処理ステップとを含む
方法。」
の点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点1:
照明領域が、本願発明1は、「少なくとも1平方センチメールの領域」であるのに対して、引用発明は、「マイクロモード」では、「0.1mmと0.5ミクロンの間のスポットの大きさ」であり、「マクロモード」では、「対物レンズを試料のより広い区域が照射されるように変更させ」ているもののどの程度に広い区域としているのか特定されていない点。

相違点2:
本願発明1では、「撮像デバイスによって前記フォトルミネセンスの画像を捕捉」しているが、引用発明の「マイクロモード」では、「撮像デバイスによって前記フォトルミネセンスの画像を捕捉」しているものの、「マクロモード」では、どの様な信号をどの様な検出器で検出し、処理を行うのかについて特定されていない点。

相違点3:
照明に関して、本願発明1は、「前記照明がショートパス濾過され、前記フォトルミネセンスの波長領域内の要素を実質的に除去し、前記照明の光学的総出力は1.0ワットを超え」ているのに対して、引用発明は、「前記照明がショートパス濾過され、前記フォトルミネセンスの波長領域内の要素を実質的に除去」していることが特定されておらず、「マクロモード」において、どの程度の総出力としているのかが不明である点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点1及び相違点2について
a 一般に顕微鏡等微小な領域を観察する装置においては、複数の対物レンズをターレット、レボルバ等を用いて変えることで、観察したい領域の大小或いは微小領域の特定のために逐次倍率を変え、より詳細に観察したい領域を徐々に特定していく手法が慣用的に行われており、また、蛍光(フォトルミネセンス)を観察する顕微鏡において、対物レンズを変更して倍率を変えることは周知(例えば、特開平9-230245号公報の【0016】?【0018】の記載、特開2006-178440号公報の第3実施形態【0044】?【0049】の記載等)である。
b そして、引用発明においても「ミクロな検査用高開口数対物レンズ34と一個のマクロ検査用低開口数対物レンズ35を備えた回転式タレット36」を有しており、この「回転ターレット36」により「マイクロモードではこの対物レンズは回折が限られているスポットの大きさにビームを集中するように選ばれ、マクロモードでは、対物レンズを試料のより広い区域が照射されるように変更させ」るものであり、マイクロモードにおける試料面でのレーザー光スポットの大きさは「0.1mmと0.5ミクロンの間」であるから、マクロモードでの光の照射領域は、「0.1mmと0.5ミクロンの間」よりも大きいことは明らかである。
c してみると、引用発明のマクロモードにおいてレーザーが照射されるより広い区域として、どの程度の領域とするかは、観察したい全体の領域と必要とする微小領域の詳細分析の領域との関係で考慮されるものであり、その際、上記aで示した周知技術としての大小の領域を共に蛍光(フォトルミネセンス)を用いて観察することは、当業者が実施に際して適宜設定しうる事項にすぎない。
即ち、引用発明においては、マイクロモードにおいて 極めて小さな領域に極めて電力密度の高いレーザを照射することで、微小領域のシリコン構造の欠陥を検出しているものであるが、そのような極めて微小な領域を特定するために、マクロモードとして、検出し得るルミネセンス光が微小となり検出精度が落ちたとしてもより大きな領域を一度に分析しようとすることは、顕微鏡或いは蛍光顕微鏡分析における上記aの周知事項から、当業者ならば容易に想到し得た事項である。
d また、照明領域の大小の領域の設定については、例えば、フォトルミネッセンスを用いた分析において、刊行物3の上記摘記事項(刊3ア)、(刊3イ)には、詳細な分析を行うため、「1?2μm程度」の径の微小領域に励起レーザーを照射して「フォトルミネッセンススペクトルを得」、おおよその全体像を得るためにより広い領域、例えば、「200μm?2mm径」で励起レーザーを照射して、映像増強管29によりフォトルミネッセンストポグラフィを得ることが、記載されており、これは、概ね、微小径と拡大径とでは、1μmに対して200?2000倍、2μmに対して100?1000倍のスポットサイズの比となる。
そして、引用発明のマイクロモードでのスポットサイズ「0.1mmと0.5ミクロンの間」(以下「0.5μm?0.1mm」という。)に対するマクロモードのスポットサイズの設定として、上記径の倍率である200?2000倍乃至は100?1000倍を参照すれば、0.5μmに対しては200?2000倍である100μm?1000μm、0.1mmに対しては100?1000倍である10mm?100mm(1cm?10cm)となり、面積は7850μm^(2)(=3.14*(100/2)^(2))?78.5cm^(2) (=3.14*(10/2)^(2))程度となる。
e 加えて、本願発明1においては、「少なくとも1平方センチメールの領域」での「フォトルミネセンスの画像を捕捉」して、「前記画像を処理し、前記画像内のルミネセンスの空間変動を判断する処理」における、「空間変動」の内容及びどの様な処理を行うのかについては特段の限定がなされているものでもない。
f してみると、引用発明の「マクロモードでは、対物レンズを試料のより広い区域が照射されるように変更させ」た際の照射区域として、「少なくとも1平方センチメールの領域」として設定し、「マクロモード」においても、「マイクロモード」と同様のCCD二方向アレイ29により試料上の照射スポット作像し、本願発明1との相違点1及び相違点2に係る構成とすることは当業者ならば容易に想到し得た事項である。

(イ)相違点3について
a 「照明がショートパス濾過され、前記フォトルミネセンスの波長領域内の要素を実質的に除去」する点について
励起光を試料に照射して、試料からの蛍光を観察する方法において、励起光に余分な蛍光程度の波長の光が混在する場合には、試料への照射の前に余分な蛍光程度の波長の光を除去することは周知(例えば、刊行物3の上記摘記事項(刊3ウ)の「アルゴンレーザ28からは、488nmまたは514.5nmの波長のレーザビームが放射される。このレーザビームは、クラッセンフィルタ21により、余分な蛍光が除去され」との記載、特開2006-178440号公報の第3実施形態の【0045】の記載等)であり、また、刊行物1の摘記事項(刊1イ)の「試料からの光ルミネセンス信号は、(マイクロモードで)顕微鏡対物レンズ(34)により集められ、ビーム分割器(31)およびレーザー波長の範囲に整合するノッチフィルタを持つフィルタホイール(13)のノッチフィルタを通して戻される。ノッチフィルタは、光ルミネセンス信号のみを通過させ、どんな反射レーザー光も除去する。」との記載によれば、試料からの光は、どんな反射レーザー光も除去され、光ルミネセンス信号のみがノッチフィルタを通過するのであるから、照射レーザー光に光ルミネセンス信号と同波長の光が含まれていれば、当該反射光は、ノッチフィルタを通過してしまうことになるため、照射レーザー光には光ルミネセンス信号と同波長の光を含まないようにしていることは明らかである。したがって、引用発明において、光源の種類等を変えた場合には、必要に応じて適宜、試料から発光する光ルミネセンス信号程度の波長領域の光を除去することは当業者の設計的事項にすぎない。
b 「照明の光学的総出力は1.0ワットを超える」点について
(a)引用発明のマイクロモードでは、「10^(4)から10^(9)watt/cm^(2)間の電力密度」のレーザーを照射している。また、刊行物1の上記摘記事項(刊1ア)には「・・(略)・・欠陥部分での再結合は、注入レベルを増加することにより増大され(enhanced)、キャリアが少なくても、それを有効に利用することができる。」と記載されており、レーザーの注入レベル(電力密度等)を上げれば、少ないキャリアでもこれを利用することができる旨説明されている。
(b)一方、本願発明1においては、照射面積の上限を規定せずに、「照明の光学的総出力は1.0ワットを超える」としており、照射面積の下限が、「少なくとも1平方センチメールの領域を照明」しているのであるから、その、光学的出力密度は、1watt/cm^(2)以下の出力を含む状態となっており、そのような低出力密度によって、「少なくとも1平方センチメールの領域」での「フォトルミネセンスの画像を捕捉」して、「前記画像を処理し、前記画像内のルミネセンスの空間変動を判断する処理」における、「空間変動」の内容及びどの様な処理を行うのかについては特段の限定がなされているものでもない。
また、本願の出願当初明細書の記載には、
【0014】、【0029】、【0045】、【0061】に「 光の総光学的出力は1ワットを超えることができる。」、
【0079】に「光源110は大面積のシリコンサンプル140にフォトルミネセンスを同時に誘起するのに適した光を発生させる。発生した光の光学的総出力は1.0ワットを超えることができる。より高い出力の光源はシリコンサンプル140にフォトルミネセンスをより急速かつ強力に誘起することが可能である。・・(略)・・」、
【0085】、【0089】、【0091】に「 再び、光源410(210)は大面積のシリコンサンプル440にフォトルミネセンスを同時に誘起させるのに適した光を発生させる。発生した光の出力は1.0ワットを超える。・・(略)・・」、
との記載があるものの、「照明の光学的総出力は1.0ワットを超える」事による有意な効果の説明はなく、単に「より高い出力の光源はシリコンサンプル140にフォトルミネセンスをより急速かつ強力に誘起することが可能である。」との説明がある。
(c)してみると、例えば、引用発明におけるマイクロモードでの「10^(4)から10^(9)watt/cm^(2)間の電力密度」程度の高出力とはせずとも、引用発明のマクロモードにおいて上記相違点1で検討したようなおおよその状況が把握しうる程度の電力として、「照明の光学的総出力は1.0ワットを超える」程度とすることは、当業者が適宜設定しうる程度の出力であり、当業者ならば容易に想到し得た事項にすぎない。

(ウ)相違点1?3に係る本願発明1の発明特定事項により奏される効果について
相違点1?3に係る本願発明1の各発明特定事項により奏される相乗的な効果について、格別顕著な点は見いだせない。

ウ 本願発明1と引用発明との対比・判断のまとめ
上記ア、イのとおり本願発明1は、引用発明、刊行物3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

(2)本願発明3と引用発明との対比・判断
ア 本願発明3と引用発明との対比
(ア)本願発明3は、本願発明1の照明する領域の大きさ「少なくとも1平方センチメールの領域」との限定を削除し、「前記照明ステップと前記捕捉ステップは約1秒以内に行われる」との限定を付加したものである。
(イ)そして、文言及び発明特定事項についての対応関係については、上記(1)ア(ア)?(オ)のとおりである。
(ウ)そうすると、本願発明3と引用発明とは、
「間接バンドギャップ半導体材料から発生したフォトルミネセンスの空間変動を判断する方法であって、前記方法が、
所定の照明によって前記間接バンドギャップ半導体材料の領域を照明し、前記照明に対応して前記間接バンドギャップ半導体材料からフォトルミネセンスを発生させる照明ステップと、
撮像デバイスによって前記フォトルミネセンスの画像を捕捉する捕捉ステップと、
前記画像を処理し、前記画像内のフォトルミネセンスの空間変動を判断する処理ステップとを含む
方法。」
の点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点1:
本願発明1では、「撮像デバイスによって前記フォトルミネセンスの画像を捕捉」しているが、引用発明の「マイクロモード」では、「撮像デバイスによって前記フォトルミネセンスの画像を捕捉」しているものの、「マクロモード」で、どの様な信号をどの様な検出器で検出するのか特定されていない点。

相違点2:
照明に関して、本願発明3は、「前記照明がショートパス濾過され、前記フォトルミネセンスの波長領域内の要素を実質的に除去し、前記照明の光学的総出力は1.0ワットを超え」ているのに対して、引用発明は、「前記照明がショートパス濾過され、前記フォトルミネセンスの波長領域内の要素を実質的に除去」していることが特定されておらず、「マクロモード」において、どの程度の総出力としているのかが不明である点。

相違点3:
本願発明3は、「前記照明ステップと前記捕捉ステップは約1秒以内に行われる」のに対して、引用発明は、そのような特定がなされていない点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点1、2について
本願発明3と引用発明との相違点1、2は、上記本願発明1と引用発明との相違点2、3と同じであるから、上記(1)イ(ア)、(イ)における判断と同様に、引用発明において、相違点1、2に係る本願発明3の構成とすることは、当業者が適宜設定しうる程度のものであり、当業者ならば容易に想到し得た事項にすぎない。

(イ)相違点3について
a 引用発明は、「CCD二方向アレイ29上に試料2の照射スポットを作像」しているのであり、また、「CCD二方向アレイ29」の前段には、「光ルミネセンス信号のみを通過させ」る「ノッチフィルタを持つフィルタホイール13」に続けて「選択された波長帯域を離隔するフィルタを持つフィルタホイール27」を介して入射されるのであるから、照射スポットのサイズの試料2からのルミネッセンス光を2次元方向において同時に受光していることは明らかである。
また、励起からルミネッセンス発光までの時間は種々あり、瞬時の発光量、発光の時間経過に応じた増減量の変化等、試料の材料の種類、欠陥の種類、ドーパント等の分析したい内容に応じて種々の測定方法が知られていることから、照明からルミネッセンス光の像データの取得までの時間は、分析・測定したい内容に応じて適宜設定しうるものであり、「前記照明ステップと前記捕捉ステップは約1秒以内に行」なうことは、目的とする分析内容に応じて適宜設定しうる設計的事項であり、当業者ならば容易に想到し得た事項にすぎない。

(ウ)相違点1?3に係る本願発明3の発明特定事項により奏される効果について
相違点1?3に係る本願発明3の各発明特定事項により奏される相乗的な効果について、格別顕著な点は見いだせない。

ウ 本願発明3と引用発明との対比・判断のまとめ
上記ア、イのとおり本願発明3は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1及び3に係る発明は、刊行物1及び刊行物3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の請求項2及び請求項4?44に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-20 
結審通知日 2014-08-26 
審決日 2014-09-08 
出願番号 特願2008-534812(P2008-534812)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高瀬 勤  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 近藤 幸浩
池渕 立
発明の名称 半導体材料の一つ以上の特性を分析する方法およびシステム  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  
代理人 西元 勝一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ