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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B
管理番号 1296602
審判番号 不服2013-3833  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-28 
確定日 2015-01-22 
事件の表示 特願2007-516466「スタック型有機エレクトロルミネッセンスデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月19日国際公開、WO2006/006975、平成20年 1月31日国内公表、特表2008-503055〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2005年4月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年6月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年2月2日付けで手続補正がなされたものの、同年10月25日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、平成25年2月28日に請求された拒絶査定不服審判であって、当審において、平成26年1月15日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年7月18日付けで意見書が提出されるととともに、手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年7月18日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
有機EL素子(100,200)の複数のスタックを含む発光デバイス(10)であって、1つのスタックの1つの有機EL素子(100)が同じスタックの別の有機EL素子(200)の少なくとも一部分と重なっているとともに上記同じスタックの有機EL素子(100,200)が電気的に分離しており、各有機EL素子が、一対の電極(120,140)間に配置された有機EL材料(130)を含んでいて、1つのスタックの1つの有機EL素子(100)が、隣接するスタック内の別の有機EL素子(100)と電気的に直列に接続していることを特徴とする、発光デバイス(10)。」

3 引用刊行物
(1)引用刊行物1
これに対して、当審における平成26年1月15日付けの拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された「特開2004-134385号公報」(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(「アノード」(下記記載事項イ)及び「カソード」(下記記載事項ウ)の記載以外の下線は当審で付した。)
a 記載事項ア
「【0001】
本発明は、面照明のための有機発光ダイオード(OLED)に関する。」
b 記載事項イ
「【0030】
アノード
EL発光をアノードを介して観察する場合には、当該アノードは当該発光に対して透明又は実質的に透明であることが必要である。本発明に用いられる一般的な透明アノード材料はインジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)及び酸化錫であるが、例示としてアルミニウム又はインジウムをドープした酸化亜鉛、マグネシウムインジウム酸化物及びニッケルタングステン酸化物をはじめとする他の金属酸化物でも使用することができる。これらの酸化物の他、窒化ガリウムのような金属窒化物、セレン化亜鉛のような金属セレン化物、及び硫化亜鉛のような金属硫化物をアノードとして使用することもできる。EL発光をカソード電極のみを介して観察する用途の場合には、アノードの透過性は問題とならず、透明、不透明又は反射性を問わずいずれの導電性材料でも使用することができる。このような用途向けの導体の例として、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム及び白金が挙げられるが、これらに限定はされない。典型的なアノード材料は、透過性であってもそうでなくても、4.1eV以上の仕事関数を有する。望ましいアノード材料は、一般に、蒸発法、スパッタ法、化学的気相成長(CVD)法又は電気化学法のような適当な手段のいずれかによって付着される。アノードは、周知のフォトリソグラフ法によって、又は調製時にシャドーマスクを使用することによって、パターン化することもできる。」
c 記載事項ウ
「【0044】
カソード
発光をアノードのみを介して観察する場合には、本発明に用いられるカソードは、ほとんどすべての導電性材料を含んでなることができる。望ましい材料は、下部の有機層との良好な接触が確保されるよう良好なフィルム形成性を示し、低電圧での電子注入を促進し、かつ、良好な安定性を有する。有用なカソード材料は、低仕事関数金属(<4.0eV)又は合金を含むことが多い。好適なカソード材料の1種に、譲受人共通の米国特許第4885221号明細書に記載されているMg:Ag合金(銀含有率1?20%)を含むものがある。別の好適な種類のカソード材料として、有機層(例、ETL)に接している薄い電子注入層(EIL)に、これより厚い導電性金属層をキャップしてなる二層形が挙げられる。この場合、EILは低仕事関数の金属又は金属塩を含むことが好ましく、その場合には、当該厚いキャップ層は低仕事関数を有する必要はない。このようなカソードの一つに、譲受人共通の米国特許第5677572号明細書に記載されている、薄いLiF層にこれより厚いAl層を載せてなるものがある。その他の有用なカソード材料のセットとして、譲受人共通の米国特許第5059861号、同第5059862号及び同第6140763号明細書に記載されているものが挙げられるが、これらに限定はされない。」
d 記載事項エ
「【0049】
図6は、複数のOLEDデバイス32、34、36及び38を直列に接続してストリング11を形成させた本発明によるOLED装置300を示す略横断面図である。図示を簡略化するため、4個のOLEDデバイス32、34、36及び38しか示されていない。デバイス用途のほとんどにおいて、さらに多数のOLEDデバイスが含まれることは理解されよう。基板10の上に、各OLEDデバイスにつき1つの底部電極22、24、26及び28が間隔を置いて複数個並べられている。間隔を置いて並べられた底部電極22、24、26及び28は、マスクを介して真空蒸着するか、又は当該電極材料を含有するインクを使用して所望のパターンに印刷することにより、設けることができる。別法として、間隔を置いて並べられた底部電極22、24、26及び28を、連続層として調製した後、フォトリソグラフィ法、レーザースクライビング法又は機械的スクライビング法により、所望の間隔を置いて並べられたパターンに分割することもできる。間隔を置いて並べられた底部電極22、24、26及び28の上には、間隔を置いて並べられた複数の有機EL要素42、44、46及び48が付着されている。間隔を置いて並べられた有機EL要素42、44、46及び48の各々は、対応する間隔を置いて並べられた底部電極22、24、26及び28の縁部を越えて延在する有機層を少なくとも一層有する。図3では、間隔を置いて並べられた有機EL要素42、44、46及び48の各々は、対応する間隔を置いて並べられた底部電極22、24、26及び28の左縁部を被覆している。各有機EL要素42、44、46及び48の有機層は、隣接する間隔を置いて並べられた底部電極22、24、26及び28の間のスペースに末端が来てもよいし、その左側で、該スペースを越えて延在し、隣の間隔を置いて並べられた底部電極22、24、26及び28の右縁部を被覆してもよい。間隔を置いて並べられた有機EL要素42、44、46及び48の上には、間隔を置いて並べられた複数の上部電極62、64、66及び68が付着されている。間隔を置いて並べられた各上部電極62、64、66及び68は、対応する間隔を置いて並べられた有機EL要素42、44、46及び48の実質的部分の上に付着されている。対応する間隔を置いて並べられた底部電極と、間隔を置いて並べられた有機EL要素と、間隔を置いて並べられた上部電極とが一組となって、発光することができる1個のOLEDデバイスを形成する。間隔を置いて並べられた各上部電極は、対応する底部電極とその隣の間隔を置いて並べられた底部電極との間のスペースを越えて延在し、その後者の底部電極と電気的に接触する。このため、OLEDデバイス38の間隔を置いて並べられた上部電極はOLEDデバイス36の間隔を置いて並べられた底部電極と接触し、OLEDデバイス36の間隔を置いて並べられた上部電極はOLEDデバイス34の間隔を置いて並べられた底部電極と接触し、その後同様に続いていく。動作に際して、デバイス32の上部電極62とデバイス38の底部電極28との間に電圧を印加すると、動作電流が1つのデバイスから隣のデバイスへ流れるため、すべてのデバイスが同時に発光する。駆動電圧は、4個のOLEDデバイス32、34、36及び38の駆動電圧合計値となるが、駆動電流は、単一のOLEDデバイスの駆動電流であって、OLED装置300と等しい総面積を有する単一OLEDデバイスの駆動電流の1/4にすぎない電流となる。直列抵抗による電力損は、動作電流×直列抵抗の二乗と等しいため、4個のOLEDデバイスに代えて単一のOLEDデバイスを含むOLED装置と比較して劇的に減少する。間隔を置いて並べられた有機EL要素及び間隔を置いて並べられた上部電極は、間隔を置いて並べられた底部電極の調製に使用される方法と同様に常用のマスク法、印刷法又はスクライビング法により調製することができ、また使用する有機材料及び上部電極材料に基づいて選択することができる。」
e 記載事項オ
「【図6】




f 引用例1記載の発明
上記記載事項ア?オによると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「基板10の上に、各OLEDデバイスにつき1つの底部電極22、24、26及び28が間隔を置いて複数個並べられ、
間隔を置いて並べられた底部電極22、24、26及び28の上には、間隔を置いて並べられた複数の有機EL要素42、44、46及び48が付着され、
間隔を置いて並べられた有機EL要素42、44、46及び48の上には、間隔を置いて並べられた複数の上部電極62、64、66及び68が付着され、
対応する間隔を置いて並べられた底部電極22、24、26、28と、間隔を置いて並べられた有機EL要素42、44、46、48と、間隔を置いて並べられた上部電極62、64、66、68とが一組となって、発光することができる1個のOLEDデバイス32、34、36、38が形成され、
OLEDデバイス38の間隔を置いて並べられた上部電極68はOLEDデバイス36の間隔を置いて並べられた底部電極26と接触し、OLEDデバイス36の間隔を置いて並べられた上部電極66はOLEDデバイス34の間隔を置いて並べられた底部電極24と接触し、その後同様に続いていくことにより、複数のOLEDデバイス32、34、36及び38が直列に接続された
OLED装置300。」

(2)引用刊行物2
また、当審における平成26年1月15日付けの拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された「特開2004-31214号公報」(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
a 記載事項カ
「【0005】
本発明の目的は、有機電界発光素子に新たな素子構成を取り入れることによって、連続駆動時の輝度低下を抑制することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機電界発光素子は、基板の一方の面に第1の陽極と、少なくとも第1の発光層を含む有機層と、第1の陰極とを順次積層し、前記基板の他方の面に第2の陽極と、少なくとも第2の発光層を含む有機層と、第2の陰極とを順次積層して、複数の電界発光素子を積層したことを特徴とするものである。この構成により、第1の陽極および第1の陰極との間、および第2の陽極と第2の陰極との間にそれぞれ電圧を印加して駆動することにより、一つの有機電界発光素子の中の2箇所から発光させることができるので、発光連続駆動時の輝度低下を抑制することができる。」
b 記載事項キ
「【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における有機電界発光素子の概略構成を示す断面図である。基板1の一方の面に、第1の陽極12と、第1の正孔輸送層13と、第1の発光層14と、第1の電子輸送層15と、第1の陰極16とを順次積層して第1の電界発光素子10を構成し、基板1の他方の面に、第2の陽極22と、第2の正孔輸送層23と、第2の発光層24と、第2の電子輸送層25と、第2の陰極26とを順次積層して第2の電界発光素子20を構成したものである。
【0012】
基板1には、透明で表面が平滑なものであれば使用できる。一般的にはガラス、プラスティックが用いられる。素子作製時に支持できれば、任意の厚さの基板を使用できるが、片側の陰極からのみ光の取り出しを行う場合は薄い基板、具体的には0.5mm以下であることが望ましい。
【0013】
陽極12、22には、透明電極としてインジウム錫酸化物(ITO)や半透明電極としての金薄膜を用いることができる。
【0014】
正孔輸送層13、23と電子輸送層15、25とにより電荷輸送層が構成され、それぞれ電極からの電荷の注入を容易にし、注入された電荷を発光領域まで輸送するという働きをする。正孔輸送層13、23としては、正孔輸送性の強い材料が使用され、具体的にはN、N’-ジフェニル-N、N’-ビス(3-メチルフェニル)1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)、4、4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル(α-NPD)などのトリフェニルアミン誘導体やチオフェン誘導体、スチルベン誘導体などを用いることができる。一方、電子輸送層15、25としては、電子輸送性の強い材料が用いることができ、具体的にはフェナントロリン誘導体、オキサジアゾール誘導体やトリス(8-ヒドロキシキノリノール)アルミニウム(Alq)などに代表されるキノリノール金属錯体などが使用できる。
【0015】
発光層14、24としては、従来から数多くの化合物群が検討されているが、基本的には電子・正孔の注入が可能でかつ蛍光・りん光を有する物質であれば使用できる。また、成膜性に優れた材料の中に色素を少量分散させた膜を発光層として用いることにより、素子の高効率化、長寿命化および発光色の調整をすることも検討されている。この手法は、単独では結晶化しやすい、あるいは濃度消光を起こしやすい蛍光色素に対して非常に有効である。
【0016】
陰極16、26は、有機膜に電子が注入できることが必要であり、アルカリ金属またはアルカリ土類金属またはその化合物を構成材料の一つとして用いることが多い。具体的にはリチウム、マグネシウムやカルシウム、あるいはこれらの金属や化合物を他の金属と組み合わせて用いることができる。また、これらの電極の厚さを薄くすることにより、透過率の高い陰極を得ることもできる。この場合、電極の厚さが減ることにより抵抗が大きくなることがあるため、補助電極を用いたり、ITOなどの透明電極を積層することにより、抵抗を下げることができる。
【0017】
第1の陰極16または第2の陰極26のいずれか一方を透明または半透明の透過率の高いものにすることで、光を効率よく素子の外部に取り出すことができる。例えば図1において、第2の電界発光素子20の陰極26を透過率の高いものにした場合、第1の電界発光素子10および第2の電界発光素子20のそれぞれで発生した光は、第1の電界発光素子10の陰極16で反射され、あるいは直接第2の電界発光素子20の陰極26を通して素子の外部に取り出すことができる。このような有機電界発光素子構成を取ることにより、一つの有機電界発光素子の中に2箇所の発光領域を設けることができるので、発光層にかかる負荷、具体的には発光時の発光領域内の励起子密度が小さくなり、連続点灯時の効率(輝度)低下を抑制できる。特に2000cd/m^(2)以上の高輝度領域において効果が顕著に現れる。
【0018】
また、第1の電界発光素子10と第2の電界発光素子20の陰極16、26に共に反射率の高い金属電極を用いることで、光を素子・基板内に閉じ込め、素子端面から取り出すことも可能である。基板端面の形状を工夫することにより、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0019】
なお、本実施の形態1において、第1の電界発光素子10と第2の電界発光素子20に用いる有機材料(正孔輸送層、電子輸送層、発光層)は同じでも異なっていても良い。例えば第1の電界発光素子10と第2の電界発光素子20で異なる発光層を用いた場合、それぞれの発光スペクトルを合成した光を発光として取り出すことができる。しかも第1の電界発光素子10と第2の電界発光素子20に印加する電圧を独立に制御できるため、合成する光の割合を変化させることにより、発光色の色調を任意に変化させることができる。
【0020】
また、使用する有機材料の特性に応じて、各層を多層化したり、あるいは複数の層の機能を一つの層で兼ねても良い。さらに、正孔阻止層などの他の機能を有する層を挿入しても良い。」
c 記載事項ケ
「【図1】



4 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「OLEDデバイス32、34、36、38」及び「OLED装置300」が、本願発明の「有機EL素子(100,200)」及び「発光デバイス(10)」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明の「OLEDデバイス38の間隔を置いて並べられた上部電極68はOLEDデバイス36の間隔を置いて並べられた底部電極26と接触し、OLEDデバイス36の間隔を置いて並べられた上部電極66はOLEDデバイス34の間隔を置いて並べられた底部電極24と接触し、その後同様に続いていくことにより、複数のOLEDデバイス32、34、36及び38が直列に接続されたOLED装置300」と、本願発明の「有機EL素子(100,200)の複数のスタックを含む発光デバイス(10)であって、」「1つのスタックの1つの有機EL素子(100)が、隣接するスタック内の別の有機EL素子(100)と電気的に直列に接続している」構成とは、「有機EL素子を複数含む発光デバイスであって、」「1つの有機EL素子が、隣接する別の有機EL素子と電気的に直列に接続している」構成で共通する。

(2)引用発明の「有機EL要素42、44、46、48」が、本願発明の「有機EL材料(130)」に相当する。
そうすると、引用発明の「基板10の上に、各OLEDデバイスにつき1つの底部電極22、24、26及び28が間隔を置いて複数個並べられ、間隔を置いて並べられた底部電極22、24、26及び28の上には、間隔を置いて並べられた複数の有機EL要素42、44、46及び48が付着され、間隔を置いて並べられた有機EL要素42、44、46及び48の上には、間隔を置いて並べられた複数の上部電極62、64、66及び68が付着され、対応する間隔を置いて並べられた底部電極22、24、26、28と、間隔を置いて並べられた有機EL要素42、44、46、48と、間隔を置いて並べられた上部電極62、64、66、68とが一組となって、発光することができる1個のOLEDデバイス32、34、36、38が形成され」た構成は、本願発明の「各有機EL素子が、一対の電極(120,140)間に配置された有機EL材料(130)を含んでい」る構成に相当する。

上記(1)及び(2)から、本願発明と引用発明は、
「有機EL素子を複数含む発光デバイスであって、各有機EL素子が、一対の電極間に配置された有機EL材料を含んでいて、1つの有機EL素子が、隣接する別の有機EL素子と電気的に直列に接続している、発光デバイス。」
で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
発光デバイスが、本願発明は、有機EL素子の複数のスタックを含むものであって、1つのスタックの1つの有機EL素子が同じスタックの別の有機EL素子の少なくとも一部分と重なっているとともに上記同じスタックの有機EL素子が電気的に分離しており、1つのスタックの1つの有機EL素子が、隣接するスタック内の別の有機EL素子と電気的に直列に接続しているのに対し、引用発明は、そのような構成を有さない点。

5 当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
引用例2の図1の記載からみて、引用例2には、第1の電界発光素子10と第2の電界発光素子20の少なくとも一部分が重なるように配置することが記載されているといえる。
そうすると、引用例2には、発光連続駆動時の輝度低下を抑制するために、基板1の一方の面に第1の電界発光素子10を構成し、基板の他方の面に第2の電界発光素子20を構成して、第1の電界発光素子10と第2の電界発光素子20の少なくとも一部分が重なるように配置し、第1の電界発光素子10と第2の電界発光素子20に印加する電圧を独立に制御する構成が、記載されている。(引用例2の【0006】、【0011】、【0019】、図1参照。)
ここで、引用例2に記載された「基板1の一方の面に第1の電界発光素子10を構成し、基板の他方の面に第2の電界発光素子20を構成して、」「第1の電界発光素子10と第2の電界発光素子20に印加する電圧を独立に制御する」構成は、本願発明の「同じスタックの有機EL素子(100,200)が電気的に分離」する構成に相当するといえる。
また、引用発明は、引用例2記載の事項と同様に、OLEDデバイス32,34,36及び38(引用例2では、「第1の電界発光素子10」または「第2の電界発光素子20」がこれに相当。)を含むものであるから、発光連続駆動時の輝度低下を抑制する課題を有することは明らかである。
したがって、引用発明において、基板10のOLEDデバイス32,34,36及び38が形成されていない側の面に、OLEDデバイス32,34,36及び38と少なくとも一部分が重なるように、複数のOLEDデバイスを形成して複数のスタックを含むものとし、1つのスタックの1つのOLEDデバイスが同じスタックの別のOLEDデバイスと少なくとも一部分が重なっているとともに上記同じスタックのOLEDデバイスが電気的に分離するとともに、1つのスタックの1つのOLEDデバイスが、隣接するスタック内の別のOLEDデバイスと電気的に直列に接続するように構成して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
相違点については上記のとおりであり、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例2記載の事項から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-19 
結審通知日 2014-08-26 
審決日 2014-09-09 
出願番号 特願2007-516466(P2007-516466)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本田 博幸  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 伊藤 昌哉
土屋 知久
発明の名称 スタック型有機エレクトロルミネッセンスデバイス  
代理人 小倉 博  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  

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