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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1296617
審判番号 不服2013-18918  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-30 
確定日 2015-01-22 
事件の表示 特願2011-516839「隣接チャネル干渉抑制のためのダイナミックフィルタリング」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月 7日国際公開、WO2010/002946、平成23年10月20日国内公表、特表2011-527160〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年6月30日(パリ条約による優先権主張 2008年7月1日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成25年5月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年11月2日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「対象の信号及び1以上の隣接チャネル干渉源を含む合成信号を受信することと、
前記対象の信号の強度及び前記1以上の隣接チャネル干渉源の強度を測定することと、
前記対象の信号のロケーション及び前記1以上の隣接チャネル干渉源のロケーションを測定することと、
前記対象の信号を取り出すために、前記1以上の隣接チャネル干渉源の前記強度及び前記ロケーションに関連のある前記対象の信号の前記強度及び前記ロケーションに対応させるために、少なくとも1つのダイナミックフィルタのロケーションを調節すること、
のステップを備えるACI抑制のための方法。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-347810号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【特許請求の範囲】
……
【請求項7】
希望波に対する隣接妨害波の影響を抑制する隣接妨害除去方法であって、
前記希望波を同調受信する第1チューナ手段と、
前記希望波に対して異なった周波数の電波について同調受信する第2
チューナ手段と、
前記第1チューナ手段から出力される中間周波数信号を通過させる中間周波数帯域可変フィルタ手段とを備え、
前記第1,第2チューナ手段から出力される各Sメータ信号の比を演算
し、前記比を隣接妨害の影響度を示す値とする演算工程と、
前記比に基づいて、前記中間周波数帯域可変フィルタ手段における前記中間周波数信号に対する通過周波数帯域を偏倚又は通過周波数帯域幅を調整する調整工程と、
を有することを特徴とする隣接妨害除去方法。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、受信品質の劣化原因となる隣接妨害を検出する隣接妨害検出装置及び隣接妨害検出方法と、隣接妨害の影響を除去する隣接妨害除去装置及び隣接妨害除去方法と、隣接妨害の影響を抑制して放送波等を受信する受信装置に関する。」

(3)「【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る隣接妨害検出装置と、隣接妨害除去装置と、受信装置について、図1及び図2を参照して説明する。なお、図1(a)は隣接妨害検出装置の構成を表したブロック図、図1(b)は隣接妨害除去装置の構成を表したブロック図、図2(a)(b)は、受信装置の構成を表したブロック図であり、2態様の構成を示している。
【0022】
まず、図1(a)に基づいて、本実施形態の隣接妨害検出装置100の構成を説明する。
【0023】
この隣接妨害検出装置100は、到来電波を受信するアンテナANTが接続された第1チューナ部1及び第2チューナ部2と、第1,第2チューナ部1,2から出力されるSメータ信号S1,S2を入力する演算部3を有して構成されている。
【0024】
第1チューナ部1は、利用者が操作部(図示略)を操作して所望の放送局を指定すると、その指定された放送局の放送波(希望波)を同調受信し、中間周波数信号(IF信号)IF1と、受信強度を示すSメータ信号S1を出
力する。
【0025】
第2チューナ部2は、上述の希望波に対して異なった周波数の電波について同調受信し、その受信時に生成する中間周波数信号(符号略)のレベルの変化から受信強度を示すSメータ信号S2を生成して出力する。
【0026】
より具体的に述べれば、第2チューナ部2は、希望波の中心周波数を基準として、例えば100kHz、200kHz、-100kHz、-200kHz離れた少なくとも何れかの周波数の隣接局を同調受信し、各々の受信時においてSメータ信号S2を出力する。
【0027】
演算部3は、第1,第2チューナ部1,2から各々出力されるSメータ信号S1,S2の振幅の比(S1/S2)を演算し、演算した比の値(以下
「U/D比」という)を隣接妨害の影響度を示す検出信号Sudとして出力する。
【0028】
すなわち、第2チューナ部2が隣接妨害波を同調受信した場合に、Sメータ信号S2のレベルが大きいほど隣接妨害の影響が大きいこととなるため、演算部3がSメータ信号S1,S2の振幅の比(S1/S2)を演算することにより、隣接妨害の影響が大きいときほどU/D比が小さくなるように変化する検出信号Sudを生成して出力する。
【0029】
かかる構成を有する隣接妨害検出装置100によれば、受信品質の劣化原因となる隣接妨害波が発生した場合、演算部3が第1,第2チューナ部1,2から各々出力されるSメータ信号S1,S2の振幅の比を演算すること
で、希望波の受信強度と隣接妨害波の受信強度との比を演算することとな
り、希望波に対する隣接妨害の影響がどの程度であるかを定量的な値として且つ高精度で検出することができる。
【0030】
次に、図1(b)に基づいて、本実施形態の隣接妨害除去装置200の構成を説明する。なお、図1(b)において図1(a)と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
【0031】
図1(b)において、この隣接妨害除去装置200は、到来電波を受信するアンテナANTが接続された第1チューナ部1及び第2チューナ部2と、第1,第2チューナ部1,2から出力されるSメータ信号S1,S2の振幅比の値(U/D比)を演算して、そのU/D比に応じてレベルが変化する検出信号Sudを出力する演算部3と、第1チューナ部1から出力される中間周波数信号IF1を入力する中間周波帯域可変フィルタ4aとを有して構成されている。」

(4)「【0039】
更に他の変形例として、検出信号Sudのレベルに応じて中間周波数信号IF1に対する通過周波数帯域を偏倚させる中間周波帯域可変フィルタ4a
と、検出信号Sudのレベルに応じて中間周波数信号IF1の中心周波数を基
準として通過周波数帯域幅を変化させる中間周波帯域可変フィルタ4aとの両方の機能を有する中間周波数帯域可変フィルタを設けるようにしてもよ
い。
【0040】
つまり、中間周波数可変フィルタ4における調整可能な通過周波数帯域の最大幅を、中間周波数信号IF1の最大周波数偏移の幅に合わせておく。
【0041】
そして、隣接妨害波が生じると、第1チューナ部1と第2チューナ部2が同調受信することによって希望波に対する隣接妨害波の周波数軸上での位置関係が分かるので、その隣接妨害波の発生する周波数側のカットオフ周波数を、検出信号Sudのレベルに応じて自動的に変化させることにより、隣接妨害の影響を抑制した中間周波数信号IF1の信号成分IF11を出力(抽出)
することができる。
【0042】
例えば、第1,第2チューナ部1,2が同調受信する際の希望波に対して隣接妨害波の周波数の方が高い場合、中間周波帯域可変フィルタ4aの高域カットオフ周波数を検出信号Sudのレベルに応じて自動調整し、逆に、希望波に対して隣接妨害波の周波数の方が低い場合には、中間周波帯域可変フィルタ4aの低域カットオフ周波数を検出信号Sudのレベルに応じて自動調整することで、隣接妨害の影響を除去するように、中間周波帯域可変フィルタ4aの通過周波数帯域を調整することができる。」

したがって、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

希望波に対する隣接妨害波の影響を抑制する隣接妨害除去方法であって、
前記希望波を同調受信する第1チューナ手段と、
前記希望波に対して異なった周波数の隣接局の電波について同調受信する第2チューナ手段と、
前記第1チューナ手段から出力される信号を通過させる可変フィルタ手段とを備え、
前記第1、第2チューナ手段から出力される各Sメータ信号の比(検出信号Sud)を演算することで、希望波の受信強度と隣接妨害波の受信強度との比を演算することとなり、前記比を隣接妨害の影響度を示す値とする演算工程を有し、
隣接妨害波が生じると、前記第1チューナ手段と前記第2チューナ手段が同調受信することによって希望波に対する隣接妨害波の周波数軸上での位置関係が分かるので、前記可変フィルタ手段において、その隣接妨害波の発生する周波数側のカットオフ周波数を、前記比(検出信号Sud)のレベルに応じて自動的に変化させることにより、隣接妨害の影響を抑制した信号成分を出力(抽出)することができる
隣接妨害除去方法。

3.対比
引用発明は「希望波に対する隣接妨害波の影響を抑制する隣接妨害除去方法」であり、「第1チューナ手段から出力される信号を通過させる可変フィルタ手段」において「隣接妨害の影響を抑制した信号成分を出力(抽出)することができる」とするものであるから、「希望波を同調受信する第1
チューナ手段」は希望波だけではなく、隣接妨害波も受信するものである。
引用発明の「希望波」と「隣接妨害波」はそれぞれ、本願発明の「対象の信号」と「隣接チャネル干渉源」に対応するから、引用発明は本願発明が
「対象の信号及び1以上の隣接チャネル干渉源を含む合成信号を受信すること」と同様のステップを備えるACI抑制のための方法といえる。
引用発明は「前記第1、第2チューナ手段から出力される各Sメータ信号の比(検出信号Sud)を演算することで、希望波の受信強度と隣接妨害波の受信強度との比を演算することとなり、前記比を隣接妨害の影響度を示す値とする演算工程」を有するもので、「希望波の受信強度」と「隣接妨害波の受信強度」は、それぞれ、本願発明の「対象の信号の強度」と「隣接チャネル干渉源の強度」に対応するから、引用発明は本願発明が「前記対象の信号の強度及び前記1以上の隣接チャネル干渉源の強度を測定すること」と同様のステップを備えるものといえる。
引用発明は「隣接妨害波が生じると、前記第1チューナ手段と前記第2
チューナ手段が同調受信することによって希望波に対する隣接妨害波の周波数軸上での位置関係が分かるので」とするもので、「第1チューナ手段」が同調受信することによって「希望波」の周波数軸上での位置が分かり、「第2チューナ手段」が同調受信することによって「隣接妨害波」の周波数軸上での位置が分かることが明らかであるから、引用発明は本願発明が「前記対象の信号のロケーション及び前記1以上の隣接チャネル干渉源のロケーションを測定すること」と同様のステップを備えるものといえる。
引用発明の「第1チューナ手段から出力される信号を通過させる可変フィルタ手段」は「隣接妨害波が生じると、前記第1チューナ手段と前記第2
チューナ手段が同調受信することによって希望波に対する隣接妨害波の周波数軸上での位置関係が分かるので、前記可変フィルタ手段において、その隣接妨害波の発生する周波数側のカットオフ周波数を、前記比(検出信号Su
d)のレベルに応じて自動的に変化させることにより、隣接妨害の影響を抑
制した信号成分を出力(抽出)することができる」とするもので、カットオフ周波数を変化させることは、「可変フィルタ手段」により抑制する周波数軸上での位置を変化させることであるから、引用発明は本願発明の「前記対象の信号を取り出すために、前記1以上の隣接チャネル干渉源の前記強度及び前記ロケーションに関連のある前記対象の信号の前記強度及び前記ロケーションに対応させるために、少なくとも1つのダイナミックフィルタのロ
ケーションを調節すること」と、対象の信号を取り出すために、少なくとも1つのダイナミックフィルタのロケーションを調節することで共通する。
したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、次の点で一致する。

対象の信号及び1以上の隣接チャネル干渉源を含む合成信号を受信することと、
前記対象の信号の強度及び前記1以上の隣接チャネル干渉源の強度を測定することと、
前記対象の信号のロケーション及び前記1以上の隣接チャネル干渉源のロケーションを測定することと、
前記対象の信号を取り出すために、少なくとも1つのダイナミックフィルタのロケーションを調節すること、
のステップを備えるACI抑制のための方法。

また次の点で相違する。

相違点
本願発明は「前記対象の信号を取り出すために、少なくとも1つのダイナミックフィルタのロケーションを調節すること」について「前記1以上の隣接チャネル干渉源の前記強度及び前記ロケーションに関連のある前記対象の信号の前記強度及び前記ロケーションに対応させるために」としているのに対して、引用発明では「隣接妨害波が生じると、前記第1チューナ手段と前記第2チューナ手段が同調受信することによって希望波に対する隣接妨害波の周波数軸上での位置関係が分かるので、前記可変フィルタ手段において、その隣接妨害波の発生する周波数側のカットオフ周波数を、前記比(検出信号Sud)のレベルに応じて自動的に変化させることにより、隣接妨害の影響を抑制した信号成分を出力(抽出)することができる」とする点。

4.相違点に対する判断
前述のように引用発明は「隣接妨害波が生じると、前記第1チューナ手段と前記第2チューナ手段が同調受信することによって希望波に対する隣接妨害波の周波数軸上での位置関係が分かるので」とするので、引用発明は本願発明が「前記対象の信号のロケーション及び前記1以上の隣接チャネル干渉源のロケーションを測定すること」と同様のステップを備えるものといえ、それにより「前記可変フィルタ手段において、その隣接妨害波の発生する周波数側のカットオフ周波数を、……」とするので、対象の信号のロケーション及び1以上の隣接チャネル干渉源のロケーションに基づいて少なくとも1つのダイナミックフィルタのロケーションを調節するものといえる。
また、引用発明の「比(検出信号Sud)」は「希望波の受信強度と隣接妨害波の受信強度との比」であり、それにより「可変フィルタ手段」のカットオフ周波数を自動的に変化させるものであるから、対象の信号の強度及び1以上の隣接チャネル干渉源の強度に基づいて少なくとも1つのダイナミックフィルタのロケーションを調節するものといえる。
さらに、引用発明は「隣接妨害の影響を抑制した信号成分を出力(抽出)することができる」ことから、その「希望波」は「隣接妨害波」の影響を受け、そのため「希望波」の受信強度と周波数軸上での位置は、「隣接妨害
波」の受信強度と周波数軸上での位置に関連したものとなることは明らかである。
したがって、引用発明においても、本願発明が「前記対象の信号を取り出すために、前記1以上の隣接チャネル干渉源の前記強度及び前記ロケーションに関連のある前記対象の信号の前記強度及び前記ロケーションに対応させるために、少なくとも1つのダイナミックフィルタのロケーションを調節すること」と同様にすることに困難な点はないから、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-22 
結審通知日 2014-08-26 
審決日 2014-09-08 
出願番号 特願2011-516839(P2011-516839)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小池 堂夫  
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 加藤 恵一
近藤 聡
発明の名称 隣接チャネル干渉抑制のためのダイナミックフィルタリング  
代理人 砂川 克  
代理人 岡田 貴志  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 野河 信久  
代理人 佐藤 立志  
代理人 河野 直樹  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 井上 正  
代理人 福原 淑弘  
代理人 堀内 美保子  
代理人 中村 誠  
代理人 峰 隆司  
代理人 井関 守三  

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