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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1296895
審判番号 不服2013-3007  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-15 
確定日 2015-01-28 
事件の表示 特願2008-530467号「光学要素ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月22日国際公開、WO2007/031412、平成21年 2月26日国内公表、特表2009-508344号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2006年8月31日(パリ条約による優先権主張、2005年9月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年10月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年2月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、請求と同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成26年1月21日付けで拒絶理由が通知され、同年7月25日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年7月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「光学要素ユニットであって、
光学要素と、
光学要素ホルダーを具備し、
前記光学要素ホルダーは、保持要素と複数の第1結合要素を具備し、
前記保持要素は、前記光学要素を保持し、セラミック材料で作られており、
前記第1結合要素の少なくとも1つは、前記保持要素とモノリシックに形成され、前記光学要素に接触し、
前記第1結合要素は、前記保持要素と前記光学要素とを弾性結合することによって変形分離する光学要素ユニット。」

第2 引用例
当審において平成26年1月21日付けで通知した拒絶理由に引用した本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-343576号公報(以下「引用例」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

記載事項ア
「【0090】(実施例4)実施例4を図8を用いて説明する。図8は本発明の実施例4にかかる投影光学系の構成を表す概略図である。図8において、実施例3と同一の符号は同一の部材を表す。重力方向は光軸と一致し、図中の-Z方向である。
【0091】図8において、61はレンズ5を支持する支持部材であり、レンズ周辺部を重力方向に支える3個所の突起を120度ピッチで有しており、石英とほぼ等しい熱膨張係数を有するニッケル合金であるインバーを用いている。また、レンズ周辺部と支持部材61の径方向の隙間には、前記3個所の突起部近傍に接着剤が充填され、レンズは支持部材に固定されている。この接着剤の塗布面積は、所定の加速度が本光学システムに加わった時にレンズ5が位置変動をおこさないよう、レンズの重量によって決められる。」

記載事項イ
「【0103】これらのレンズを支持する支持構造は図1に示す構造となっており、図1において1を石英のレンズ、2を蛍石のレンズとすると、11はインバーなどの鉄とニッケルを主成分とする合金部材であり、21は黄銅などの銅と亜鉛とを主成分とする合金部材とするのが適切である。両者共、レンズの熱膨張係数とほぼ同じ熱膨張係数を有する材質を用いることが望ましい。石英レンズ1を支持する支持部材11としては、酸化マグネシウムと酸化シリコンなどからなるコージライト系のセラミックス材料、あるいはアルミナ、窒化シリコンなどのセラミックス材料、あるいは、商品名ゼロジュールと呼ばれる低熱膨張ガラスなどが適切な材料として選択できる。」

記載事項ウ
「【図6】



記載事項エ
「【図8】



上記記載事項アの記載内容からして、引用例1には、
「レンズと、レンズ周辺部を重力方向に支える3個所の突起を有している支持部材を具備し、支持部材は石英とほぼ等しい熱膨張係数を有するニッケル合金であるインバーを用いており、レンズ周辺部と支持部材の径方向の隙間には、前記3個所の突起部近傍に接着剤が充填され、レンズは支持部材に固定されているレンズ、支持部材及び接着剤。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「レンズ」は、本願発明の「光学要素」に相当する。
(2)引用発明の「レンズ」は、「レンズ周辺部を重力方向に支える3個所の突起」と「前記3個所の突起部近傍に」「充填され」る「接着剤」により「支持部材に固定され」るから、引用発明の「3個所の突起」及び「接着剤」は、本願発明の「複数の第1結合要素」に相当し、引用発明の「支持部材」のうち「3個所の突起」以外の部分は、本願発明の「保持要素」に相当する。また、引用発明の、「支持部材」及び「接着剤」は、本願発明の「光学要素ホルダー」に相当し、引用発明の「レンズ、支持部材及び接着剤」は、本願発明の「光学要素ユニット」に相当する。
(3)引用発明の「支持部材」のうち「3個所の突起」以外の部分は、「3個所の突起」、「接着剤」を介して「レンズ」を保持しているといえるから、引用発明は、本願発明の「前記保持要素は、前記光学要素を保持し」ている構成を備えているといえる。
(4)引用発明の「3個所の突起」が「レンズ周辺部を重力方向に支える」ことと、本願発明の「前記第1結合要素の少なくとも1つは、前記保持要素とモノリシックに形成され、前記光学要素に接触」することは、「前記第1結合要素の少なくとも1つは、前記光学要素に接触し」ている点で共通している。
(5)引用発明の「接着剤」は、3個所の突起部近傍に充填され、レンズを支持部材に固定しているから、 「レンズ」と 「支持部材」のうち「3個所の突起」以外の部分は「接着剤」によって結合されているといえる。また、「接着剤」が弾性を有することは自明なことである。そうすると、引用発明の「レンズ周辺部と支持部材の径方向の隙間には、前記3個所の突起部近傍に接着剤が充填され、レンズは支持部材に固定され」ることは、本願発明の「前記第1結合要素は、前記保持要素と前記光学要素とを弾性結合することによって変形分離する」ことに相当する。

上記(1)ないし(5)で述べたことからして、本願発明と引用発明は、
「光学要素ユニットであって、
光学要素と、
光学要素ホルダーを具備し、
前記光学要素ホルダーは、保持要素と複数の第1結合要素を具備し、
前記保持要素は、前記光学要素を保持しており、
前記第1結合要素の少なくとも1つは、前記光学要素に接触し、
前記第1結合要素は、前記保持要素と前記光学要素とを弾性結合することによって変形分離する光学要素ユニット。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1
本願発明では、保持要素は、セラミック材料で作られているのに対し、引用発明では、支持部材は石英とほぼ等しい熱膨張係数を有するニッケル合金であるインバーを用いている点。
相違点2
本願発明では、前記第1結合要素の少なくとも1つは、前記保持要素とモノリシックに形成されているのに対し、引用発明では、3個所の突起が支持部材にモノリシックに形成されているか否かが不明である点。

第4 当審の判断
上記各相違点について検討する。
相違点1について
引用例の段落【0103】(上記記載事項イ参照)には、石英レンズを支持する支持部材として、酸化マグネシウムと酸化シリコンなどからなるコージライト系のセラミックス材料、あるいはアルミナ、窒化シリコンなどのセラミックス材料が適切な材料として選択できることが記載されているから、引用発明の支持部材の材料であるインバーに代えて、これらのセラミックス材料を採用して、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者であれば容易になし得ることである。

相違点2について
引用発明の支持部材に形成する3個所の突起をわざわざ別体に形成して取り付けるとは通常考えにくいし、引用例の【図6】(上記記載事項ウ参照)の記載を参酌すると、3個所の突起は支持部材にモノリシックに形成されている蓋然性が高い。また、仮に3個所の突起が支持部材にモノリシックに形成されていないとしても、3個所の突起を支持部材にモノリシックに形成する程度のことは当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。したがって、上記相違点2は実質的な相違点でないか、仮に実質的な相違点であったとしても上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者であれば容易になし得ることである。

また、本願発明の効果も、引用発明及び引用例に記載された事項から予測し得る範囲内のものであり、格別のものとは認め難い。

したがって、本願発明は引用発明及び引用例に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-28 
結審通知日 2014-09-02 
審決日 2014-09-17 
出願番号 特願2008-530467(P2008-530467)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡戸 正義  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 北川 清伸
土屋 知久
発明の名称 光学要素ユニット  
代理人 下地 健一  
代理人 杉村 憲司  

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