• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1296910
審判番号 不服2013-19444  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-04 
確定日 2015-01-28 
事件の表示 特願2009-531590「金属シリケート膜のALD」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月10日国際公開,WO2008/042981,平成22年 2月25日国内公表,特表2010-506408〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2007年10月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年10月5日,アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,平成24年10月31日付けで拒絶の理由が通知され,平成25年1月31日に意見書と手続補正書が提出され,同年5月29日に拒絶査定がされたものである。
その後,同年10月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同時に手続補正書が提出され,平成26年1月20日付けで審尋を行い,同年5月16日に回答書が提出された。

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年10月4日に提出された手続補正書による補正を却下する。

[理 由]
1 補正の内容
平成25年10月4日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は,補正前の特許請求の範囲の請求項1-21を補正して,補正後の請求項1-16とするものであって,補正前後の請求項1は各々次のとおりである。

<補正前>
「【請求項1】
金属シリケート膜を形成する原子層堆積(ALD)法であって,複数の堆積サイクルを含み,各サイクルは,反応空間内の基板を,ハロゲン化ケイ素原料化学物質,金属原料化学物質,及び酸化剤の空間的且つ時間的に離れた気相パルスと接触させることを含み,前記金属原料化学物質は,前記ハロゲン化ケイ素原料化学物質の後に供給されるすぐ後の反応物であり,前記金属シリケート膜が約65原子%を超えるケイ素含量を有する,方法。」

<補正後>
「【請求項1】
金属シリケート膜を形成する原子層堆積(ALD)法であって,複数の堆積サイクルを含み,各サイクルは,反応空間内の基板を,ハロゲン化ケイ素原料化学物質,金属原料化学物質,及び酸化剤のそれぞれの気相パルスと接触させることを含み,前記気相パルスの各々がその次の気相パルスと空間的且つ時間的に離れており,前記金属原料化学物質は,前記ハロゲン化ケイ素原料化学物質の後に供給されるすぐ後の反応物であり,前記金属シリケート膜が約65原子%を超えるケイ素含量を有する,方法。」

2 補正事項の整理
本件補正の補正事項を整理すると次のとおりである。

(1)補正事項1
補正前の請求項1の「各サイクルは,反応空間内の基板を,ハロゲン化ケイ素原料化学物質,金属原料化学物質,及び酸化剤の空間的且つ時間的に離れた気相パルスと接触させることを含み」を補正して,補正後の請求項1の「各サイクルは,反応空間内の基板を,ハロゲン化ケイ素原料化学物質,金属原料化学物質,及び酸化剤のそれぞれの気相パルスと接触させることを含み,前記気相パルスの各々がその次の気相パルスと空間的且つ時間的に離れており」にすること。

(2)補正事項2
補正前の請求項12の「を含み,前記ハフニウムシリケート膜が約65原子%を超えるケイ素含量を有する」を補正して,補正後の請求項12の「を含み,ステップ(c)とステップ(e)の間で反応物が供給されないものであり,前記ハフニウムシリケート膜が約65原子%を超えるケイ素含量を有する」にすること。

(3)補正事項3
補正前の請求項16-20を削除するとともに,補正前の請求項21に係る発明の請求項の番号を,「請求項21」から,「請求項16」に補正すること。

3 新規事項追加の有無,及び,補正の目的の適否についての検討
(1)補正事項1及び2について
補正事項1及び2により補正された部分は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。また,本願の願書に最初に添付した明細書を「当初明細書」という。)に記載されているものと認められるから,補正事項1及び2は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって,補正事項1及び2は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また,補正事項1及び2が,特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすことは明らかである。
さらに,補正事項1及び2は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって,補正事項1及び2は,特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たす。

(2)補正事項3について
補正事項3により補正された部分は,当初明細書等に記載されているものと認められるから,補正事項3は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって,補正事項3は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また,補正事項3が,特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすことは明らかである。
さらに,補正事項3は,特許法第17条の2第5項第1号及び第4号に掲げる,請求項の削除,及び,前記請求項の削除に伴う,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
したがって,補正事項3は,特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たす。

(3)新規事項追加の有無,及び,補正の目的の適否についてのまとめ
以上検討したとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第3項,第4項及び第5項に規定する要件を満たす。

4 独立特許要件についての検討
本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定によって,本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることを要する。
そこで,本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,本件補正がいわゆる独立特許要件を満たすものであるか否かについて,請求項1及び請求項5に係る発明について,更に検討を行う。

(1)補正後の発明
本件補正による補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明1」という。)は,本件補正により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものである。
以下,再掲する。

「【請求項1】
金属シリケート膜を形成する原子層堆積(ALD)法であって,複数の堆積サイクルを含み,各サイクルは,反応空間内の基板を,ハロゲン化ケイ素原料化学物質,金属原料化学物質,及び酸化剤のそれぞれの気相パルスと接触させることを含み,前記気相パルスの各々がその次の気相パルスと空間的且つ時間的に離れており,前記金属原料化学物質は,前記ハロゲン化ケイ素原料化学物質の後に供給されるすぐ後の反応物であり,前記金属シリケート膜が約65原子%を超えるケイ素含量を有する,方法。」

(2)引用例とその記載事項,及び,引用発明
拒絶査定の理由で引用した,本願の優先権の主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記の引用例1には,図面とともに次の事項が記載されている。(なお,下線は,当合議体において付したものである。以下同じ。)

ア 引用例1:国際公開第2005/113855号
(1a)「[0003] While conventional chemical vapor deposition (CVD) has proved successful for device geometries and aspect ratios down to 0.15 μm, the more aggressive device geometries require an alternative deposition technique. One technique that is receiving considerable attention is atomic layer deposition (ALD). During an ALD process, reactant gases are sequentially introduced into a process chamber containing a substrate. Generally, a first reactant is pulsed into the process chamber and is adsorbed onto the substrate surface. A second reactant is pulsed into the process chamber and reacts with the first reactant to form a deposited material. A purge step is typically carried out between the delivery of each reactant gas. The purge step may be a continuous purge with the carrier gas or a pulse purge between the delivery of the reactant gases.」(対応する日本国公表特許公報である,特表2007-537605号公報の記載に基づく日本語訳(以下,同じ。):[0003]従来の化学気相堆積法(CVD)は0.15μmに至るデバイスの表面形状およびアスペクト比についての成功を証明しているのに対して,より積極的なデバイスの表面形状は代替的な堆積技術を必要としている。かなり注目されている一技術は原子層堆積法(ALD)である。ALDプロセス中,反応ガスが,基板を含有するプロセスチャンバに順次導入される。概して,第1の反応剤はプロセスチャンバにパルスされて,基板表面上に吸着される。第2の反応剤はプロセスチャンバにパルスされて,第1の反応剤と反応して堆積材料を形成する。パージステップは典型的に各反応ガスの送出間に実施される。パージステップはキャリアガスによる連続パージであっても,反応ガスの送出間のパルスパージであってもよい。)

(1b)「[0023] The invention provides methods for depositing hafnium-containing materials and other high-k dielectric materials on substrate surfaces by atomic layer deposition (ALD) processes. 」([0023]本発明は,原子層堆積(ALD)プロセスによって基板表面上にハフニウム含有材料および他の高誘電率誘電材料を堆積するための方法を提供する。)

(1c)「[0027] A substrate may be exposed to a pretreatment process or a pre-soak process in order to terminate the substrate surface with a variety of functional groups, as depicted during step 115.」([0027]ステップ115に描かれるように,多様な官能基によって基板表面を終端するために,基板は前処理プロセスや予浸プロセスに暴露されてもよい。)

(1d)「[0043] In another embodiment, Figure 3 illustrates an exemplary process sequence 200 for forming a hafnium-containing material, such as hafnium silicate. A substrate is loaded into a process chamber capable of performing cyclical deposition and the process conditions are adjusted (step 205). The substrate may be exposed to an optional pre-soak process and purge prior to starting an ALD cycle (step 207). The substrate is exposed to pulse of a hafnium precursor that is introduced into the process chamber for a time period in a range from about 0.1 seconds to about 5 seconds (step 210). A pulse of purge gas is introduced into the process chamber (step 215) to purge or otherwise remove any residual hafnium precursor or byproducts. Next, a pulse of oxidizing gas is introduced into the process chamber for a time period in a range from about 0.1 seconds to about 10 seconds (step 220). The oxidizing gas may include several oxidizing agents, such as water vapor and oxygen derived from a WVG system. A pulse of purge gas is again introduced into the process chamber (step 225) to purge or otherwise remove any residual oxidizing compound or by-products. The substrate is then exposed to pulse of a silicon precursor that is introduced into the process chamber for a time period in a range from about 0.1 seconds to about 10 seconds (step 230). A pulse of purge gas is again pulsed into the process chamber (step 235) to purge or otherwise remove any residual silicon precursor or by-products. Next, another pulse of oxidizing gas is introduced into the process chamber for a time period in a range from about 0.1 seconds to 10 seconds (step 240). A pulse of purge gas is again introduced into the processing chamber (step 245) to purge or otherwise remove any residual oxidizing compound or by-products. Suitable carrier gases or purge gases may include helium, argon, nitrogen, hydrogen, forming gas, oxygen or combinations thereof.
[0044] Referring to step 250, after each deposition cycle (steps 210 through 245), a hafnium-containing material, such as hafnium silicate, having a first thickness is deposited on the substrate surface. Usually, each deposition cycle forms a layer with a thickness in the range from about 0.5 Å to about 10 Å. Depending on specific device requirements, subsequent deposition cycles may be needed to deposit a hafnium-containing material with a predetermined thickness. A deposition cycle (steps 210 through 245) may be repeated until the desired or predetermined thickness for the hafnium-containing material is achieved at step 250 and process sequence 200 is stopped at step 260.
[0045] The hafnium silicate material formed by the deposition processes described herein has the empirical chemical formula HfSi _(y) O _(x) . Hafnium silicate may be a homogenous mixture of hafnium oxide (HfO _(x ) or HfO_( 2) ) and silicon oxide (SiO _(x) or SiO _(2) ) or a single phase HfSiO_(,)material. Hafnium silicate may have the molecular chemical formula HfSiO_(4), but by varying process conditions (e.g., timing, temperature, precursors), hafnium silicates may vary by elemental concentration, for example, HfSiO_( 3 . 8) or HfSi_( 0 .8)O _(3 . 8) .」([0043]別の実施形態では,図3は,ケイ酸ハフニウムなどのハフニウム含有材料を形成するための例示的なプロセスシーケンス200を図示している。基板が循環堆積を実行可能なプロセスチャンバにロードされ,プロセス条件が調整される(ステップ250)。基板は,ALDサイクルを開始する前に任意の予浸プロセスおよびパージに暴露されてもよい(ステップ207)。基板は,約0.1秒?約5秒の範囲の期間プロセスチャンバに導入されるハフニウム前駆体のパルスに暴露される(ステップ210)。パージガスのパルスはプロセスチャンバに導入されて(ステップ215),残渣ハフニウム前駆体や副生成物をパージ,または他の方法で除去する。次に,酸化ガスのパルスが,約0.1秒?約10秒の範囲の期間プロセスチャンバに導入される(ステップ220)。酸化ガスは,WVGシステムから生じた水蒸気および酸素などの数種の酸化剤を含んでもよい。パージガスのパルスは再度プロセスチャンバに導入され(ステップ225),残渣酸化化合物や副生成物をパージ,あるいは他の方法で除去する。そして基板は,約0.1秒?約10秒の範囲の期間プロセスチャンバに導入されるシリコン前駆体のパルスに暴露される(ステップ230)。パージガスのパルスが再度プロセスチャンバにパルスされて(ステップ235),残渣シリコン前駆体や副生成物をパージ,あるいは他の方法で除去する。次に,酸化ガスの別のパルスが,約0.1秒?約10秒の範囲の期間プロセスチャンバに導入される(ステップ240)。パージガスのパルスが再度処理チャンバに導入されて(ステップ245),残渣酸化化合物や副生成物をパージ,あるいは他の方法で除去する。適切なキャリアガスやパージガスは,ヘリウム,アルゴン,窒素,水素,フォーミングガス,酸素またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
[0044]ステップ250を参照すると,各堆積サイクル(ステップ210?245)の後,第1の厚さを有するケイ酸ハフニウムなどのハフニウム含有材料が基板表面上に堆積される。通常,各堆積サイクルは,約0.5Å?約10Åの範囲の厚さの層を形成する。具体的なデバイス要件に応じて,後続の堆積サイクルが,所定の厚さのハフニウム含有材料を堆積するのに必要とされる場合がある。堆積サイクル(ステップ210?245)は,ハフニウム含有材料の所望または所定の厚さがステップ250で達成され,かつプロセスシーケンス200がステップ260で停止されるまで反復されてもよい。
[0045]本明細書に説明された堆積プロセスによって形成されたケイ酸ハフニウム材料は実験化学式HfSi_(y)O_(x)を有する。ケイ酸ハフニウムは,酸化ハフニウム(HfO_(x)またはHfO_(2))と酸化シリコン(SiO_(x)またはSiO_(2))の均等な混合物か単相HfSiO_(4)材料であってもよい。ケイ酸ハフニウムは分子化学式HfSiO_(4)を有してもよいが,プロセス条件(例えば,タイミング,温度,前駆体)を変更することによって,ケイ酸ハフニウムは元素濃度によって,例えばHfSiO_(3.8)やHfSi_(0.8)O_(3.8)に変更してもよい。)

(1e)「[0054] In another embodiment, hafnium-containing materials, such as hafnium silicate, may be formed by omitting either of the steps that introduce the oxidizing gas and the subsequent purge step. In one example, steps 220 and 225 are omitted, therefore a hafnium silicate material may be formed by sequentially pulsing the hafnium precursor, purge gas, silicon precursor, purge gas, oxidizing gas and purge gas. In another example, steps 240 and 245 are omitted, therefore a hafnium silicate material may be formed by sequentially pulsing the hafnium precursor, purge gas, oxidizing gas, purge gas, silicon precursor and purge gas.」([0054]別の実施形態では,ケイ酸ハフニウムなどのハフニウム含有材料は,酸化ガスを導入するステップおよび後続のパージステップのいずれかを省略することによって形成されてもよい。一例では,ステップ220?225が省略されるため,ケイ酸ハフニウム材料は,ハフニウム前駆体,パージガス,シリコン前駆体,パージガス,酸化ガスおよびパージガスを順次パルスすることによって形成されてもよい。別の例では,ステップ240?245が省略されるため,ケイ酸ハフニウム材料は,ハフニウム前駆体,パージガス,酸化ガス,パージガス,シリコン前駆体およびパージガスを順次パルスすることによって形成されてもよい。)

(1f)「[0055] Figure ,illustrates an exemplary process sequence 300 for forming a hafnium-containing material, such as a hafnium silicate, according to another embodiment of the invention. A substrate is loaded into a process chamber capable of performing cyclical deposition and the process conditions are adjusted (step 310). The substrate may be exposed to an optional pre-soak process and purge prior to starting an ALD cycle (step 315). The substrate is exposed to a pulse of a hafnium precursor and a pulse of a silicon precursor that completely or at least partially overlap in time and are introduced into the process chamber for a time period in a range from about 0.1 seconds to about 5 seconds (step 320). A pulse of purge gas is pulsed into the processing chamber (step 330) to purge or otherwise remove any residual hafnium precursor, silicon precursor or by-products. Next, a pulse of oxidizing gas is introduced into the processing chamber (step 340). The oxidizing gas may include several oxidizing agents, such as water vapor and oxygen derived from a WVG system. A pulse of purge gas is again introduced into the processing chamber (step 350) to purge or otherwise remove any residual reducing compound. Suitable carrier gases or purge gases may include helium, argon, nitrogen, hydrogen, forming gas, oxygen or combinations thereof.
[0056] Referring to step 360, after each deposition cycle (steps 320 through 350), a hafnium-containing material, such as a hafnium silicate, having a first thickness will be deposited on the substrate surface. During the ALD process, each deposition cycle forms a layer with a thickness in the range from about 0.5 Å to about 10 Å. Depending on specific device requirements, subsequent deposition cycles may be needed to deposit a hafnium-containing material with a predetermined thickness. A deposition cycle (steps 320 through 350) may be repeated until the desired or predetermined thickness for the hafnium-containing material is achieved at step 360 and process sequence 300 is stopped at step 370.」([0055]図4は,本発明の別の実施形態に従った,ケイ酸ハフニウムなどのハフニウム含有材料を形成するための例示的なプロセスシーケンス300を図示している。基板は循環堆積を実行可能なプロセスチャンバにロードされ,プロセス条件が調整される(ステップ310)。基板はALDサイクルを開始する前に任意の予浸プロセスおよびパージに暴露されてもよい(ステップ315)。基板は,完全または少なくとも部分的に時間が重複し,かつ約0.1秒?約5秒の範囲の期間プロセスチャンバに導入されるハフニウム前駆体のパルスおよびシリコン前駆体のパルスに暴露される(ステップ320)。パージガスのパルスが処理チャンバにパルスされて(ステップ330),残渣ハフニウム前駆体,シリコン前駆体または副生成物をパージ,あるいは他の方法で除去する。次に,酸化ガスのパルスが処理チャンバに導入される(ステップ340)。酸化ガスは,WVGシステムから生じた水蒸気および酸素などの数種の酸化剤を含んでもよい。パージガスのパルスが再度処理チャンバに導入され(ステップ350),残渣還元化合物をパージ,あるいは他の方法で除去する。適切なキャリアガスやパージガスは,ヘリウム,アルゴン,窒素,水素,フォーミングガス,酸素またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
[0056]ステップ360を参照すると,各堆積サイクル(ステップ320?350)の後,第1の厚さを有するケイ酸ハフニウムなどのハフニウム含有材料が基板表面上に堆積される。ALDプロセス中,各堆積サイクルは,約0.5Å?約10Åの範囲の厚さの層を形成する。具体的なデバイス要件に応じて,後続の堆積サイクルが,所定の厚さのハフニウム含有材料を堆積させるのに必要な場合がある。堆積サイクル(ステップ320?350)は,ハフニウム含有材料の所望または所定の厚さがステップ360で達成され,かつプロセスシーケンス300がステップ370で停止されるまで反復されてもよい。)

(1g)「[0058] During step 320, the hafnium precursor and the silicon precursor are each introduced by flowing into the process chamber as a pulse of precursor, i.e., a pulsed precursor is the introduction of that precursor into the process chamber. In Figures 5A-5E, t_(1)corresponds to the time period that a hafnium precursor and a silicon precursor are pulsed during step 320, while t_(2) corresponds to the time period during steps 330, 340 and 350. The time periods t_(1) and t_(2) are not graphed to scale relative to each other. In one embodiment depicted in Figure 5A, the hafnium precursor and silicon precursor are independently pulsed during the same time period, such that both precursors flow during all of t_(1). For example, a hafnium precursor and a silicon precursor are simultaneously pulsed for about 2 seconds.」([0058]ステップ320の際,ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体は各々前駆体のパルスとしてプロセスチャンバに流れることによって導入される,つまりパルスされた前駆体は,その前駆体のプロセスチャンバへの導入である。図5A?5Eにおいて,t1は,ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体がステップ320でパルスされる期間に相当するのに対して,t2はステップ330,340および350の期間に相当する。期間t1およびt2は,相互にスケーリングするためにグラフ化されていない。図5Aに描かれた一実施形態では,両前駆体がt1の間ずっと流れるように,ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体は同じ期間中独立してパルスされる。例えば,ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体は約2秒間同時にパルスされる。)

(1h)「[0059] In another embodiment depicted by Figures 5B-5C, the hafnium precursor and silicon precursor are independently pulsed, so that a first precursor flows during all of t_(1 )and the second precursor flows during the intermediate of t_(1). For example, in Figure 5B when t_(1) lasts about 2 seconds, a hafnium precursor is pulsed for about 2 seconds and a silicon precursor is pulsed for about 1.5 seconds during the intermediate of the pulsed hafnium precursor. Alternatively, in Figure 5C when t_(1) lasts about 2 seconds, a silicon precursor is pulsed for about 2 seconds and a hafnium precursor is pulsed for about 1.5 seconds during the intermediate of the pulsed silicon precursor.
[0060] In another embodiment depicted by Figures 5D-5E, the hafnium precursor and silicon precursor are independently pulsed with a partially overlap, such that a first precursor flows at the beginning of t_(1) but does not flow to the end of t_(1) and the second precursor does not flow at the beginning of t_(1), but does flow to the end of t_(1). For example, in Figure 5D when t_(1) lasts about 2 seconds, a hafnium precursor is pulsed for about 1.5 seconds at the beginning of t_(1) and a silicon precursor is pulsed for about 1.5 seconds at the end of t_(1). In another example, in Figure 5E when t_(1), lasts about 2 seconds, a silicon precursor is pulsed for about 1.75 seconds at the beginning of t_(1) and a hafnium precursor is pulsed for about 1.5 seconds at the end of t_(1).
[0061] Alternatively, a first precursor (e.g., hafnium precursor) may be pulsed during any portion of time period t_(1) while overlapping or not overlapping a second precursor (e.g., silicon precursor) may also be pulsed during any portion of time period t_(1). Therefore, a hafnium precursor, a silicon precursor or other precursor may be independently pulsed into the process chamber with any partial overlap of time or with no overlap of time. In one example when t_(1) lasts about 2 seconds, a hafnium precursor is pulsed for about 2 seconds and a silicon precursor is pulsed for 0.5 seconds during the pulse of hafnium precursor. In another example when t_(1 )lasts about 2 seconds, a hafnium precursor is pulsed for about 0.5 seconds and a silicon precursor is pulsed for 0.5 seconds with no overlap of or not during the pulse of hafnium precursor. In another example when t_(1) lasts about 2 seconds, a hafnium precursor is pulsed for about 0.5 seconds and a silicon precursor is pulsed for 0.5 seconds with an overlap of or during the pulse of hafnium precursor. Also, multiple pulses a first precursor and a second precursor may be pulsed during time period t_(1).」([0059]図5B?図5Cに描かれた別の実施形態では,ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体は独立してパルスされるため,第1の前駆体はt1の間ずっと流れ,かつ第2の前駆体はt1の中間の期間流れる。例えば,図5Bにおいて,t1が約2秒続く場合,ハフニウム前駆体は約2秒間パルスされ,シリコン前駆体はパルスされたハフニウム前駆体の中間の期間約1.5秒間パルスされる。代替的には,図5Cにおいて,t1が約2秒続く場合,シリコン前駆体は約2秒間パルスされ,またハフニウム前駆体はパルスされたシリコン前駆体の中間の期間約1.5秒間パルスされる。
[0060]図5D?図5Eに描かれた別の実施形態では,第1の前駆体がt1の開始で流れるがt1の終わりまでは流れず,かつ第2の前駆体はt1の開始では流れないがt1の終わりまで流れるように,ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体は部分的に重複して独立してパルスされる。例えば,図5Dにおいて,t1が約2秒続く場合,ハフニウム前駆体はt1の開始で約1.5秒間パルスされ,シリコン前駆体はt1の終わりで約1.5秒間パルスされる。別の例では,図5Eにおいて,t1が約2秒続く場合,シリコン前駆体はt1の開始で約1.75秒間パルスされ,ハフニウム前駆体はt1の終わりで約1.5秒間パルスされる。
[0061]代替的に,第1の前駆体(例えば,ハフニウム前駆体)は,重複してもしなくても,期間t1の任意の区間でパルスされてもよく,第2の前駆体(例えば,シリコン前駆体)はまた期間t1の任意の区間パルスされてもよい。従って,ハフニウム前駆体,シリコン前駆体または他の前駆体は,期間が部分的に重複して,あるいは期間の重複なしでプロセスチャンバに独立してパルスされてもよい。一例では,t1が約2秒続く場合,ハフニウム前駆体は約2秒間パルスされ,シリコン前駆体はハフニウム前駆体のパルス中約0.5秒間パルスされる。別の例では,t1が約2秒続く場合,ハフニウム前駆体は約0.5秒間パルスされ,シリコン前駆体はハフニウム前駆体のパルスと重複せずに,あるいはこの期間以外で約0.5秒間パルスされる。別の例では,t1が約2秒続く場合,ハフニウム前駆体は約0.5秒間パルスされ,シリコン前駆体はハフニウム前駆体のパルスと重複せずに,あるいはこの期間中約0.5秒間パルスされる。また第1の前駆体および第2の前駆体は,期間t1の期間中,複数回パルスされてもよい。)

(1i)「[0065] In an alternative embodiment during step 320, the hafnium precursor and the silicon precursor may be combined prior to pulsing into the process chamber. The hafnium/silicon precursor mixture is formed by combining a proportional amount of a hafnium precursor and a silicon precursor in order to achieve a desired Hf:Si ratio within the deposited hafnium-containing material. A process gas containing the hafnium/silicon precursor mixture may be formed by flowing a carrier gas through the precursor mixture within an ampoule. The hafnium/silicon precursor mixture is sequentially pulsed with the oxidizing gas by an ALD process to form a hafnium- containing material, such as a hafnium silicate material. Hafnium silicates deposited by the processes described herein have the empirical chemical formula HfSi _(y) O _(x) , wherein y may be adjusted by varying the molar ratio of the hafnium precursor and the silicon precursor within the hafnium/silicon precursor mixture. For example, if the ratio of hafnium precursor to silicon precursor is greater than 1 , than y is probably less than 1. However, if the ratio of hafnium precursor to silicon precursor is less than 1 , than y is probably greater than 1.」([0065]ステップ320の際の代替実施形態では,ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体は,プロセスチャンバにパルスする前に結合されてもよい。ハフニウム/シリコン前駆体混合物は,堆積されたハフニウム含有材料内に所望のHf:Si比を達成するために比例量のハフニウム前駆体およびシリコン前駆体を結合させることによって形成される。ハフニウム/シリコン前駆体混合物を含有するプロセスガスは,キャリアガスをアンプル内の前駆体混合物に流すことによって形成されてもよい。ハフニウム/シリコン前駆体混合物は,ALDプロセスによって酸化ガスを順次パルスされ,ケイ酸ハフニウム材料などのハフニウム含有材料を形成する。本明細書に説明されたプロセスによって堆積されたケイ酸ハフニウムは実験化学式HfSi_(y)O_(x)を有しており,ここでyはハフニウム/シリコン前駆体混合物内のハフニウム前駆体およびシリコン前駆体のモル比を変更することによって調整されてもよい。例えば,ハフニウム前駆体対シリコン前駆体の比が1より大きい場合,yは恐らく1未満である。しかしながら,ハフニウム前駆体対シリコン前駆体の比が1未満である場合,yは恐らく1より大きい。)

(1j)「[0072] Exemplary silicon precursors useful for depositing silicon-containing materials include silanes, alkylaminosilanes, silanols or alkoxy silanes, for example, silicon precursors may include (Me _(2) N) _(4)Si, (Me _(2) N) _(3) SiH, (Me _(2) N) _(2) SiH _(2) , (Me _(2) N)SiH_( 3) , (Et _(2) N) _(4)Si, (Et _(2) N) _(3) SiH, (MeEtN) _(4)Si, (MeEtN) _(3) SiH, Si(NCO)_(4) , MeSi(NCO) _(3) , SiH_( 4), Si _(2) H _(6) , SiCl_(4), Si_( 2) Cl _(6) , MeSiCl_( 3) , HSiCl _(3) , Me _(2) SiCl _(2 ), H _(2) SiCl _(2) , MeSi(OH) _(3) , Me _(2) Si(OH) _(2) , (MeO) Si, (EtO) Si or derivatives thereof.」([0072]シリコン含有材料を堆積するのに有用な例示的なシリコン前駆体はシラン,アルキルアミノシラン,シラノールまたはアルコキシシランを含んでおり,例えばシリコン前駆体は(Me_(2)N)_(4)Si,(Me_(2)N)_(3)SiH,(Me_(2)N)_(2)SiH_(2),(Me_(2)N)SiH_(3),(Et_(2)N)_(4)Si,(Et_(2)N)_(3)SiH,(MeEtN)_(4)Si,(MeEtN)_(3)SiH,Si(NCO)_(4),MeSi(NCO)_(3),SiH_(4),Si_(2)H_(6),SiCl_(4),Si_(2)Cl_(6),MeSiCl_(3),HSiCl_(3),Me_(2)SiCl_(2),H_(2)SiCl_(2),MeSi(OH)_(3),Me_(2)Si(OH)_(2),(MeO)_(4)Si,(EtO)_(4)Siまたはこれらの誘導体を含んでもよい。)

(1k)「[0078]・・・In one example, a dielectric stack material is formed by depositing a first hafnium-containing material on a substrate and subsequently depositing a second hafnium-containing material thereon. The first and second hafnium-containing materials may vary in composition, so that one layer may contain hafnium oxide and the other layer may contain hafnium silicate. In one aspect, the lower layer contains silicon.」([0078]・・・一例では,誘電スタック材料は,第1のハフニウム含有材料を基板上に堆積し,次いで第2のハフニウム含有材料をその上に堆積することによって形成される。第1および第2のハフニウム含有材料は組成を変更してもよいため,一方の層が酸化ハフニウムを含有してもよく,かつ他方の層がケイ酸ハフニウムを含有してもよい。一態様では,下部層はシリコンを含有する。)

(1l)「[00124] "Atomic layer deposition" or "cyclical deposition" as used herein refers to the sequential introduction of two or more reactive compounds to deposit a layer of material on a substrate surface. The two, three or more reactive compounds may alternatively be introduced into a reaction zone of a process chamber. Usually, each reactive compound is separated by a time delay to allow each compound to adhere and/or react on the substrate surface. In one aspect, a first precursor or compound A is pulsed into the reaction zone followed by a first time delay. Next, a second precursor or compound B is pulsed into the reaction zone followed by a second delay. During each time delay a purge gas, such as nitrogen, is introduced into the process chamber to purge the reaction zone or otherwise remove any residual reactive compound or by-products from the reaction zone. Alternatively, the purge gas may flow continuously throughout the deposition process so that only the purge gas flows during the time delay between pulses of reactive compounds. The reactive compounds are alternatively pulsed until a desired film or film thickness is formed on the substrate surface. In either scenario, the ALD process of pulsing compound A, purge gas, pulsing compound B and purge gas is a cycle. A cycle can start with either compound A or compound B and continue the respective order of the cycle until achieving a film with the desired thickness. In another embodiment, a first precursor containing compound A, a second precursor containing compound B and a third precursor containing compound C are each separately pulsed into the process chamber. Alternatively, a pulse of a first precursor may overlap in time with a pulse of a second precursor while a pulse of a third precursor does not overlap in time with either pulse of the first and second precursors.」([00124]本明細書で使用される「原子層堆積法」や「循環堆積法」は,基板表面上に1層の材料を堆積するための2つ以上の反応化合物の順次導入のことをいう。2つ,3つ,またはこれ以上の反応化合物は代替的に,プロセスチャンバの反応ゾーンに導入されてもよい。通常,各反応混合物は,各化合物を基板表面に接着および/または反応させる時間遅延によって分離される。一態様では,第1の前駆体つまり化合物Aは,第1の時間遅延が続く反応ゾーンにパルスされる。次に,第2の前駆体つまり化合物Bは,第2の遅延が続く反応ゾーンにパルスされる。各時間遅延中,窒素などのパージガスがプロセスチャンバに導入されて,反応ゾーンをパージするか,別の方法で残渣反応化合物や副生成物を反応ゾーンから除去する。代替的に,パージガスは堆積プロセス中ずっと連続的に流れてもよいため,パージガスのみが反応化合物のパルス間の時間遅延中に流れる。反応化合物は,所望の膜や膜厚が基板表面上に形成されるまで代替的にパルスされる。いずれのシナリオでも,化合物A,パージガスをパルスし,化合物BおよびパージガスをパルスするALDプロセスは1サイクルである。サイクルは化合物Aまたは化合物Bのいずれかから開始し,所望の厚さの膜を達成するまでサイクルのそれぞれの順序を継続する。別の実施形態では,化合物Aを含有する第1の前駆体,化合物Bを含有する第2の前駆体,および化合物Cを含有する第3の前駆体は各々別個にプロセスチャンバにパルスされる。代替的に,第1の前駆体のパルスは第2の前駆体のパルスと時間的に重複することがあるのに対して,第3の前駆体のパルスは第1および第2の前駆体のいずれのパルスとも時間的に重複しない。)

(1m)「[00125] During Examples 1-10, the ALD processes are maintained at a temperature in a range from about 70℃ to about 1 ,000℃, preferably from about 100℃ to about 650℃, for example, about 350℃. The ALD processes may be conducted having the process chamber at a pressure in the range from about 0.1 Torr to about 100 Torr, preferably from about 1 Torr to about 10 Torr. A carrier gas (e.g., N _(2 )) may have a flow rate in the range from about 2 slm to about 22 slm, preferably about 10 slm. An oxidizing gas containing water vapor was produced by a water vapor generator (WVG) system containing a metal catalyst, available from Fujikin of America, Inc., located in Santa Clara, California. The WVG system formed the oxidizing gas from a hydrogen source gas and an oxygen source gas. The substrates were exposed to an oxidizing gas containing water vapor from the WVG system for about during a pre-treatment process. The pre-treatment process occurred for a period in a range from about 5 seconds to about 30 seconds. Deposited materials were formed with a thickness in the range from about 2 Å to about 1 ,000 Å, preferably, from about 5 Å to about 100 Å, and more preferably, from about 10 Å to about 50 Å.」([00125]実施例1?10の際,ALDプロセスは約70℃?約1,000℃,好ましくは約100℃?約650℃の範囲,例えば約350℃の温度に維持される。ALDプロセスは,約0.1トール?約100トール,好ましくは約1トール?約10トールの範囲の圧力のプロセスチャンバを有することによって行われてもよい。キャリアガス(例えば,N_(2))は,約2slm?約22slmの範囲,好ましくは約10slmの流量を有してもよい。水蒸気を含有する酸化ガスは,カリフォルニア州サンタクララにあるFujikin of America,Inc.,から入手可能な金属触媒を含有する水蒸気発生器(WVG)システムによって発生された。WVGシステムは水素源ガスおよび酸素源ガスから酸化ガスを形成した。基板は,ほぼ前処理プロセスの間WVGシステムからの水蒸気を含有する酸化ガスに暴露された。前処理プロセスは約5秒?約30秒の範囲の期間生じた。堆積された材料は約2Å?約1,000Å,好ましくは約5Å?約100Å,より好ましくは約10Å?約50Åの範囲の厚さに形成された。)

(1n)「[00129] Example - A hafnium silicate film is formed during with an ALD process by sequentially pulsing a hafnium precursor with oxidizing gas followed by pulsing a silicon precursor with the oxidizing gas. A substrate surface is exposed to a pretreatment process to form hydroxyl groups thereon. The hafnium precursor, HfCI , and silicon precursor, Tris-DMAS, are heated within separate precursor ampoules at room temperature (about 23℃). These precursors are vaporized individually in vaporizers at about 110℃ to about 130℃ and individually mixed with an inert carrier gas. The hafnium precursor saturates the carrier gas and is provided into the chamber for about 1 second. A purge gas of nitrogen is provided into the chamber for about 1 second. Hydrogen gas and oxygen gas with the flow rate of about 100 seem and about 120 seem respectively, are supplied to the WVG system. The oxidizing gas coming from the WVG system contains water with a flow rate of about 100 seem of water and oxygen with a flow rate of about 70 seem. The oxidizing gas is provided into the chamber for about 1.7 seconds. The purge gas of nitrogen is provided into the chamber for about 1 second to remove any unbound or non-reacted reagents, such as hafnium precursor, oxygen and/or water. A silicon precursor is provided into the chamber for about 1 second. A purge gas of nitrogen is provided into the chamber for about 1 second to remove any unbound precursor or contaminant. The oxidizing gas is precursor into the chamber for about 1.7 seconds. The purge gas of nitrogen is precursor into the chamber for about 5 seconds. Each ALD cycle forms about 1 A of a hafnium silicate film.」([00129] 実施例4-ケイ酸ハフニウム膜は,ハフニウム前駆体を酸化ガスによって順次パルスしてからシリコン前駆体を酸化ガスによってパルスすることによってALDプロセス中に形成される。基板表面は前処理プロセスに暴露されて,その上にヒドロキシル基を形成する。ハフニウム前駆体HfCl_(4)およびシリコン前駆体Tris-DMASは室温(約23℃)で個別の前駆体アンプル内で加熱される。これらの前駆体は約110℃?約130℃で気化器において個々に気化され,また不活性キャリアガスと個々に混合される。ハフニウム前駆体はキャリアガスを飽和させ,約1秒間チャンバに提供される。窒素のパージガスは約1秒間チャンバに提供される。それぞれ約100sccmおよび約120sccmの流量の水素ガスおよび酸素ガスがWVGシステムに供給される。WVGシステムからの酸化ガスは約100sccmの流量の水および約70sccmの流量の酸素を含有する。酸化ガスは約1.7秒間チャンバに提供される。窒素のパージガスは約1秒間チャンバに提供されて,ハフニウム前駆体,酸素および/または水などの未結合または未反応の試薬を除去する。シリコン前駆体は約1秒間チャンバに提供される。窒素のパージガスは約1秒間チャンバに提供され,未結合前駆体や汚染物質を除去する。酸化ガスは約1.7秒間チャンバに提供される。窒素のパージガスは約5秒間チャンバに提供される。各ALDサイクルは約1Åのケイ酸ハフニウム膜を形成する。)

(1o)「[00131] Example 6 - A hafnium silicate film is formed during with an ALD process by simultaneously pulsing a hafnium precursor and a silicon precursor sequentially with oxidizing gas. A substrate surface is exposed to a pretreatment process to form hydroxyl groups thereon. The hafnium precursor, HfCl _(4), and silicon precursor, Tris- DMAS, are heated within separate precursor ampoules at room temperature (about 23℃). These precursors are vaporized individually in vaporizers at about 110℃ to about 130℃ and individually mixed with an inert carrier gas. The hafnium precursor and the silicon precursor are each simultaneously provided into the chamber for about 1 second. A purge gas of nitrogen is provided into the chamber for about 1 second to remove any unbound hafnium or silicon precursors. Hydrogen gas and oxygen gas with the flow rate of about 100 seem and about 120 seem respectively, are supplied to the WVG system. The oxidizing gas comes from the WVG system contains water with a flow rate of about 100 seem and oxygen with a flow rate of about 70 seem. The oxidizing gas is provided into the chamber for about 1.7 seconds. The purge gas of nitrogen is provided into the chamber for about 5 seconds to remove any unbound or non-reacted reagents, such as byproducts, hafnium precursor, silicon precursor, oxygen and/or water. Each ALD cycle forms about 1 Å of a hafnium silicate film.」([00131] 実施例6-ケイ酸ハフニウム膜は,ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体を酸化ガスによって同時にパルスすることによってALDプロセス中に形成される。基板表面が前処理プロセスに暴露されて,その上にヒドロキシル基を形成する。ハフニウム前駆体HfCl_(4)およびシリコン前駆体Tris-DMASが室温(約23℃)で個別の前駆体アンプル内で加熱される。これらの前駆体は約110℃?約130℃で気化器において個々に気化され,不活性キャリアガスと個々に混合される。ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体は各々約1秒間チャンバに同時に提供される。窒素のパージガスは約1秒間チャンバに提供され,未結合のハフニウムまたはシリコン前駆体を除去する。それぞれ約100sccmおよび約120sccmの流量の水素ガスおよび酸素ガスがWVGシステムに供給される。WVGシステムからの酸化ガスは約100sccmの流量の水および約70sccmの流量の酸素を含有する。酸化ガスは約1.7秒間チャンバに提供される。窒素のパージガスは約5秒間チャンバに提供されて,副生成物,ハフニウム前駆体,シリコン前駆体,酸素および/または水などの未結合または未反応試薬を除去する。各ALDサイクルは約1Åのケイ酸ハフニウム膜を形成する。)

イ 引用発明
引用例1の上記摘記(1m)及び(1o)の記載から,引用例1には,引用例1の特許請求の範囲に記載された発明の「実施例6」として,以下に示す発明(以下「引用発明」という。)が開示されていることが認められる。
「ケイ酸ハフニウム膜を,ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体を酸化ガスによって同時にパルスすることによってALDプロセス中に形成する方法であって,
基板表面が前処理プロセスに暴露されて,その上にヒドロキシル基を形成する工程と,
ハフニウム前駆体HfCl_(4)およびシリコン前駆体Tris-DMASを室温(約23℃)で個別の前駆体アンプル内で加熱して,これらの前駆体を約110℃?約130℃で気化器において個々に気化し,不活性キャリアガスと個々に混合して,ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体を各々約1秒間チャンバに同時に提供する工程と,
窒素のパージガスを約1秒間チャンバに提供して,未結合のハフニウムまたはシリコン前駆体を除去する工程と,
それぞれ約100sccmおよび約120sccmの流量の水素ガスおよび酸素ガスをWVGシステムに供給して,WVGシステムから,約100sccmの流量の水および約70sccmの流量の酸素を含有する酸化ガスを,約1.7秒間チャンバに提供する工程と,
窒素のパージガスを約5秒間チャンバに提供して,副生成物,ハフニウム前駆体,シリコン前駆体,酸素および/または水などの未結合または未反応試薬を除去する工程と,
を含む,各ALDサイクルごとに,約1Åのケイ酸ハフニウム膜を形成する方法であって,
前記ALDプロセスは約70℃?約1,000℃,好ましくは約100℃?約650℃の範囲,例えば約350℃の温度に維持され,ALDプロセスは,約0.1トール?約100トール,好ましくは約1トール?約10トールの範囲の圧力のプロセスチャンバを有することによって行われ,キャリアガス(例えば,N_(2))は,約2slm?約22slmの範囲,好ましくは約10slmの流量を有し,水蒸気を含有する酸化ガスは,カリフォルニア州サンタクララにあるFujikin of America,Inc.,から入手可能な金属触媒を含有する水蒸気発生器(WVG)システムによって発生されるものであり,WVGシステムは水素源ガスおよび酸素源ガスから酸化ガスを形成し,基板は,ほぼ前処理プロセスの間WVGシステムからの水蒸気を含有する酸化ガスに暴露され,前処理プロセスは約5秒?約30秒の範囲の期間行われ,堆積された材料は約2Å?約1,000Å,好ましくは約5Å?約100Å,より好ましくは約10Å?約50Åの範囲の厚さに形成される,方法。」

(3)本願補正発明1の進歩性についての検討
ア 本願補正発明1と引用発明との対比
(ア)ハフニウムは金属の一種であるから,引用発明の「ケイ酸ハフニウム膜」は,「金属シリケート膜」の一種といえる。また,引用例1の上記摘記(1a),及び(1b)に記載された定義から,引用発明の「ALD」は,本願補正発明1の「原子層堆積(ALD)法」に相当する。

(イ)引用発明は「『各ALDサイクルごとに,約1Åのケイ酸ハフニウム膜を形成する方法であって』『堆積された材料は約2Å?約1,000Å,好ましくは約5Å?約100Å,より好ましくは約10Å?約50Åの範囲の厚さに形成される,方法。』」であるから,引用発明が,ALDサイクルを複数含むことは明らかである。したがって,本願補正発明1と,引用発明は,「複数の堆積サイクルを含」む点で一致する。

(ウ)引用発明の「チャンバ」は,本願補正発明1の「反応空間」に相当する。そして,引用発明の,「ハフニウム前駆体HfCl_(4)およびシリコン前駆体Tris-DMASを室温(約23℃)で個別の前駆体アンプル内で加熱して,これらの前駆体を約110℃?約130℃で気化器において個々に気化し,不活性キャリアガスと個々に混合して,ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体を各々約1秒間チャンバに同時に提供する工程」における,「ハフニウム前駆体HfCl_(4)を室温(約23℃)で前駆体アンプル内で加熱して,この前駆体を約110℃?約130℃で気化器において気化し,不活性キャリアガスと混合して,ハフニウム前駆体を約1秒間チャンバ内の基板表面に提供」すること,「シリコン前駆体Tris-DMASを室温(約23℃)で前駆体アンプル内で加熱して,この前駆体を約110℃?約130℃で気化器において気化し,不活性キャリアガスと混合して,シリコン前駆体を約1秒間チャンバ内の基板表面に提供」すること,及び,「約100sccmの流量の水および約70sccmの流量の酸素を含有する酸化ガスを,約1.7秒間チャンバ内の基板表面に提供」することは,それぞれ,「反応空間内の基板を,金属原料化学物質の気相パルスと接触させること」,「反応空間内の基板を,ケイ素原料化学物質の気相パルスと接触させること」,及び,「反応空間内の基板を,酸化剤の気相パルスと接触させること」に相当する。

(エ)したがって,上記(ア)-(ウ)の対応関係から,本願補正発明1と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

<一致点>
「金属シリケート膜を形成する原子層堆積(ALD)法であって,複数の堆積サイクルを含み,各サイクルは,反応空間内の基板を,ケイ素原料化学物質,金属原料化学物質,及び酸化剤のそれぞれの気相パルスと接触させることを含む,方法。」

<相違点>
・相違点1:ケイ素原料化学物質が,本願補正発明1では,「ハロゲン化ケイ素原料化学物質」であるのに対して,引用発明では,「シリコン前駆体Tris-DMAS」である点。

・相違点2:本願補正発明1が,「前記気相パルスの各々がその次の気相パルスと空間的且つ時間的に離れており,前記金属原料化学物質は,前記ケイ素原料化学物質の後に供給されるすぐ後の反応物であり」という特定事項を備えるのに対して,引用発明では,ケイ素原料化学物質と金属原料化学物質とが同時に供給されている点。

・相違点3:本願補正発明1が,「前記金属シリケート膜が約65原子%を超えるケイ素含量を有する」の特定事項を備えるのに対して,引用発明では,このような特定がされていない点。

イ 本願補正発明1と引用発明との相違点についての判断
・相違点1について
引用例1の上記摘記(1j)に,シリコン含有材料を堆積するのに有用な例示的なシリコン前駆体として,「SiCl_(4)」,「Si_(2)Cl_(6)」を含む材料が記載されている。
そして,引用例1における,前記例示的な記載が,引用発明の「シリコン前駆体Tris-DMAS」に対する代替可能な材料を列記したものであることは明らかである。
そうすると,引用発明の「シリコン前駆体Tris-DMAS」に替えて,引用例1にシリコン含有材料を堆積するのに有用な例示的なシリコン前駆体として例示されている材料の中から,前記「SiCl_(4)」,「Si_(2)Cl_(6)」等のハロゲン化ケイ素原料化学物質を使用することは当業者が適宜なし得たことである。
また,ケイ素原料化学物質として,ハロゲン化ケイ素原料化学物質を選択したことによる格別の効果を,本願の発明の詳細な説明及び図面の記載からは認めることはできない。
したがって,上記相違点1について,本願補正発明1の特定事項とすることは,当業者が容易になし得たことである。また,このような特定事項としたことによる効果は当業者が予測する範囲内のものと認められる。

・相違点2について
(ア)引用例1の上記摘記(1h)には,次の記載がある。
「[0061]代替的に,第1の前駆体(例えば,ハフニウム前駆体)は,重複してもしなくても,期間t1の任意の区間でパルスされてもよく,第2の前駆体(例えば,シリコン前駆体)はまた期間t1の任意の区間パルスされてもよい。従って,ハフニウム前駆体,シリコン前駆体または他の前駆体は,期間が部分的に重複して,あるいは期間の重複なしでプロセスチャンバに独立してパルスされてもよい。一例では,t1が約2秒続く場合,ハフニウム前駆体は約2秒間パルスされ,シリコン前駆体はハフニウム前駆体のパルス中約0.5秒間パルスされる。別の例では,t1が約2秒続く場合,ハフニウム前駆体は約0.5秒間パルスされ,シリコン前駆体はハフニウム前駆体のパルスと重複せずに,あるいはこの期間以外で約0.5秒間パルスされる。別の例では,t1が約2秒続く場合,ハフニウム前駆体は約0.5秒間パルスされ,シリコン前駆体はハフニウム前駆体のパルスと重複せずに,あるいはこの期間中約0.5秒間パルスされる。また第1の前駆体および第2の前駆体は,期間t1の期間中,複数回パルスされてもよい。」
そうすると,上記記載から,
「代替的」に,「第1の前駆体(例えば,ハフニウム前駆体)」は,「期間t1の任意の区間でパルスされ」,「第2の前駆体(例えば,シリコン前駆体)」はまた「期間t1の任意の区間パルスされ」,「従って,ハフニウム前駆体,シリコン前駆体」は,「期間の重複なしでプロセスチャンバに独立してパルスされ」る,
という実施形態を読み取ることができる。
そして,「第1の前駆体(例えば,ハフニウム前駆体)」及び「第2の前駆体(例えば,シリコン前駆体)」は,いずれも「期間t1の任意の区間パルスされ」ると記載されていることから,当該実施形態の,「期間t1」内における「第1の前駆体(例えば,ハフニウム前駆体)」及び「第2の前駆体(例えば,シリコン前駆体)」の,パルスの順序は,「期間t1」内において,互いに任意なものとして記載されていると解することが自然といえる。
すなわち,引用例1の前記記載から,先にハフニウム前駆体をパルスし,その後,シリコン前駆体をパルスするという実施形態に併せて,先にシリコン前駆体をパルスし,その後,ハフニウム前駆体をパルスするという実施形態をも記載されているに等しい実施形態として,当業者であれば直ちに理解するものと認められる。

(イ)また,引用例1の前記[0061]の前記「代替的に・・・」と記載された実施態様は,前記記載に先立つ[0060]等の記載に照らして,次のように理解することが自然であるといえる。
すなわち,引用例1の上記摘記(1h)の[0061]に記載された実施形態の文頭に「代替的に」と記載されていることから,当該[0061]に記載された実施形態は,前記実施形態に先立つ[0060]に記載された,「別の実施形態」の代替であり,それゆえ,[0061]に記載された実施形態は,[0060]に先だって記載された「別の実施形態」を前提として理解することが自然といえる。
そして,引用例1の上記摘記(1h)には,[0060]に記載された「別の実施形態」について,次の記載がある。
「[0060]図5D?図5Eに描かれた別の実施形態では,第1の前駆体がt1の開始で流れるがt1の終わりまでは流れず,かつ第2の前駆体はt1の開始では流れないがt1の終わりまで流れるように,ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体は部分的に重複して独立してパルスされる。例えば,図5Dにおいて,t1が約2秒続く場合,ハフニウム前駆体はt1の開始で約1.5秒間パルスされ,シリコン前駆体はt1の終わりで約1.5秒間パルスされる。別の例では,図5Eにおいて,t1が約2秒続く場合,シリコン前駆体はt1の開始で約1.75秒間パルスされ,ハフニウム前駆体はt1の終わりで約1.5秒間パルスされる。」
すなわち,[0060]では,「t1が約2秒続く場合,ハフニウム前駆体はt1の開始で約1.5秒間パルスされ,シリコン前駆体はt1の終わりで約1.5秒間パルスされる」という,図5Dに描かれた実施形態と,
「t1が約2秒続く場合,シリコン前駆体はt1の開始で約1.75秒間パルスされ,ハフニウム前駆体はt1の終わりで約1.5秒間パルスされる」という,図5Eに描かれた実施形態との,
パルスの順序が異なる二つの実施形態を併せて,「図5D?図5Eに描かれた『別の実施形態』」として,説明がされている。
そうすると,「別の実施形態」は,ハフニウム前駆体を先にパルスし,シリコン前駆体を後でパルスする実施形態と,シリコン前駆体を先にパルスし,ハフニウム前駆体を後でパルスする実施形態との両方を含むものであるといえるから,前記「別の実施形態」の代替である,[0061]に記載された「期間の重複なしでプロセスチャンバに独立してパルス」する実施形態の理解としても,ハフニウム前駆体を先にパルスし,シリコン前駆体を後でパルスする実施形態と,シリコン前駆体を先にパルスし,ハフニウム前駆体を後でパルスする実施形態との両方の形態を含むものであるとして理解することが自然であるといえる。
すなわち,[0060]の記載に照らして[0061]の記載を理解することによっても,引用例1の[0061]の記載から,先にシリコン前駆体をパルスし,その後,ハフニウム前駆体をパルスするという実施形態を,当業者であれば直ちに理解するものと認められる。

(ウ)すなわち,上記(ア)及び(イ)の理由から,引用例1には,期間t1内において,先にシリコン前駆体をパルスし,その後,期間の重複なしでプロセスチャンバに独立してハフニウム前駆体をパルスする実施形態が開示されているに等しいものと認められる。

(エ)ところで,引用例1の上記摘記(1f),(1g),(1m)及び(1o)の記載から,引用例1の前記摘記(1m)及び(1o)に記載された「実施例6」に係る「引用発明」は,引用例1の上記摘記(1f)及び(1g)に記載された実施形態を具体化した実施例であると理解できる。
一方,引用例1の記載から,引用例1の上記摘記(1h)の[0060]に記載された「別の実施形態」,及び,[0061]に記載された「代替的に・・・」と記載された実施形態は,いずれも,前記摘記(1f),(1g)に記載された実施形態の変形例であると理解できる。
そうすると,引用発明が,上記摘記(1f),(1g)に記載された実施形態の実施例であり,他方で,上記摘記(1h)の[0060]及び[0061]に記載された各変形例が,上記摘記(1f),(1g)に記載された実施形態の変形例であることから,引用発明について,上記摘記(1h)の[0060]及び[0061]に記載された各変形例に対応する変形例を想起することは,当業者が容易になし得たことである。

(オ)すなわち,引用発明において,ケイ素原料化学物質と金属原料化学物質とを同時に供給することに替えて,期間t1内において,先にシリコン前駆体をパルスし,その後,期間の重複なしでプロセスチャンバに独立してハフニウム前駆体をパルスすることは,引用例1の記載から,当業者が容易になし得たことである。
そして,この「期間t1内において,先にシリコン前駆体をパルスし,その後,期間の重複なしでプロセスチャンバに独立してハフニウム前駆体をパルスする」という時間的な特定事項が,「シリコン前駆体,ハフニウム前駆体,及び,酸化ガスの各気相パルスが,その次の気相パルスと時間的に離れており」という本願補正発明1に係る特定事項と共通することは明らかであり,また,真空ポンプがプロセスチャンバを空にして,プロセスチャンバ内部の圧力を維持するために使用されていることが明らかな引用発明においては,プロセスチャンバ内に提供された各気相パルスは,前記プロセスチャンバ内に提供された後に,直ちに前記真空ポンプによって前記プロセスチャンバから排気されることで,前記気相パルスが提供された位置から移動するものといえるから,「時間的に離れて提供された各気相パルス」は,空間的にも離れた気相パルスであると認められる。
したがって,引用発明において,シリコン前駆体,ハフニウム前駆体,及び,酸化ガスの各気相パルスを,その次の気相パルスと空間的且つ時間的に離れており,前記ハフニウム前駆体を,前記シリコン前駆体の後に供給されるすぐ後の反応物となすことは,当業者が容易になし得たことと認められる。

(カ)しかも,引用例1の上記摘記(1d),(1e)の記載から,
(a)基板は,約0.1秒?約5秒の範囲の期間プロセスチャンバに導入されるハフニウム前駆体のパルスに暴露される(ステップ210)。
(b)パージガスのパルスはプロセスチャンバに導入されて(ステップ215),残渣ハフニウム前駆体や副生成物をパージ,または他の方法で除去する。
(c)酸化ガスのパルスが,約0.1秒?約10秒の範囲の期間プロセスチャンバに導入される(ステップ220)。
(d)パージガスのパルスは再度プロセスチャンバに導入され(ステップ225),残渣酸化化合物や副生成物をパージ,あるいは他の方法で除去する。
(e)基板は,約0.1秒?約10秒の範囲の期間プロセスチャンバに導入されるシリコン前駆体のパルスに暴露される(ステップ230)。
(f)パージガスのパルスが再度プロセスチャンバにパルスされて(ステップ235),残渣シリコン前駆体や副生成物をパージ,あるいは他の方法で除去する。
(g)酸化ガスの別のパルスが,約0.1秒?約10秒の範囲の期間プロセスチャンバに導入される(ステップ240)。
(h)パージガスのパルスが再度処理チャンバに導入されて(ステップ245),残渣酸化化合物や副生成物をパージ,あるいは他の方法で除去する。
を含む,堆積サイクル(ステップ210?245)を,ハフニウム含有材料の所望または所定の厚さが達成されるまで反復するケイ酸ハフニウムなどのハフニウム含有材料を形成するための方法において,
ステップ240?245を省略して,ハフニウム前駆体,パージガス,酸化ガス,パージガス,シリコン前駆体およびパージガスを順次パルスすることを反復することで,ケイ酸ハフニウム材料を形成する方法。
が記載されていることが理解できる。
そして,上記摘記(1d),(1e)に記載された「ハフニウム前駆体,パージガス,酸化ガス,パージガス,シリコン前駆体およびパージガスを順次パルス」することを反復することでケイ酸ハフニウム材料を形成する前記方法は,上記(ア)-(ウ)で検討した,先にシリコン前駆体をパルスし,その後,前記シリコン前駆体の後に供給されるすぐ後の反応物として,期間の重複なしで,プロセスチャンバに独立してハフニウム前駆体をパルスする形態に相当するプロセスシーケンスであるといえる。
そうすると,引用例1には,先にシリコン前駆体をパルスし,その後,前記シリコン前駆体の後に供給されるすぐ後の反応物として,期間の重複なしで,プロセスチャンバに独立してハフニウム前駆体をパルスするというプロセスシーケンスによってケイ酸ハフニウムを所望または所定の厚さに形成することが示されているのであるから,上記(ア)-(オ)で検討したように,引用発明において,ケイ素原料化学物質と金属原料化学物質とを同時に供給することに替えて,期間t1内において,先にシリコン前駆体をパルスし,その後,期間の重複なしでプロセスチャンバに独立してハフニウム前駆体をパルスすることを行った場合においても,ケイ酸ハフニウムを所望または所定の厚さに形成することができるものと認められる。すなわち,引用発明において,ケイ素原料化学物質と金属原料化学物質とを同時に供給することに替えて,期間t1内において,先にシリコン前駆体をパルスし,その後,期間の重複なしでプロセスチャンバに独立してハフニウム前駆体をパルスすることによってケイ酸ハフニウムを形成することに,成膜が不可能である等の阻害事由の存在を認めることもできない。

(キ)したがって,上記相違点2について,本願補正発明1の特定事項とすることは,当業者が容易になし得たことである。また,このような特定事項としたことによる,格別の効果を認めることもできない。

・相違点3について
(ア)引用例1の上記摘記(1d)には,次の記載がある。
「[0045]本明細書に説明された堆積プロセスによって形成されたケイ酸ハフニウム材料は実験化学式HfSi_(y)O_(x)を有する。ケイ酸ハフニウムは,酸化ハフニウム(HfO_(x)またはHfO_(2))と酸化シリコン(SiO_(x)またはSiO_(2))の均等な混合物か単相HfSiO_(4)材料であってもよい。ケイ酸ハフニウムは分子化学式HfSiO_(4)を有してもよいが,プロセス条件(例えば,タイミング,温度,前駆体)を変更することによって,ケイ酸ハフニウムは元素濃度によって,例えばHfSiO_(3.8)やHfSi_(0.8)O_(3.8)に変更してもよい。」

(イ)また,上記摘記(1i)には,次の記載がある。
「[0065]ステップ320の際の代替実施形態では,ハフニウム前駆体およびシリコン前駆体は,プロセスチャンバにパルスする前に結合されてもよい。ハフニウム/シリコン前駆体混合物は,堆積されたハフニウム含有材料内に所望のHf:Si比を達成するために比例量のハフニウム前駆体およびシリコン前駆体を結合させることによって形成される。ハフニウム/シリコン前駆体混合物を含有するプロセスガスは,キャリアガスをアンプル内の前駆体混合物に流すことによって形成されてもよい。ハフニウム/シリコン前駆体混合物は,ALDプロセスによって酸化ガスを順次パルスされ,ケイ酸ハフニウム材料などのハフニウム含有材料を形成する。本明細書に説明されたプロセスによって堆積されたケイ酸ハフニウムは実験化学式HfSi_(y)O_(x)を有しており,ここでyはハフニウム/シリコン前駆体混合物内のハフニウム前駆体およびシリコン前駆体のモル比を変更することによって調整されてもよい。例えば,ハフニウム前駆体対シリコン前駆体の比が1より大きい場合,yは恐らく1未満である。しかしながら,ハフニウム前駆体対シリコン前駆体の比が1未満である場合,yは恐らく1より大きい。」

(ウ)すなわち,上記摘記(1d)の「ケイ酸ハフニウムは元素濃度によって,例えばHfSiO_(3.8)やHfSi_(0.8)O_(3.8)に変更してもよい。」,並びに,上記摘記(1i)の「ハフニウム/シリコン前駆体混合物は,堆積されたハフニウム含有材料内に所望のHf:Si比を達成するために比例量のハフニウム前駆体およびシリコン前駆体を結合させることによって形成される。」,「本明細書に説明されたプロセスによって堆積されたケイ酸ハフニウムは実験化学式HfSi_(y)O_(x)を有しており,ここでyはハフニウム/シリコン前駆体混合物内のハフニウム前駆体およびシリコン前駆体のモル比を変更することによって調整されてもよい。」及び「ハフニウム前駆体対シリコン前駆体の比が1未満である場合,yは恐らく1より大きい。」との記載から,引用例1には,堆積されたハフニウム含有材料内に所望のHf:Si比を達成するために,ハフニウム前駆体対シリコン前駆体の比を変更して,ケイ酸ハフニウムのケイ素含量を調整すること,すなわち,ハフニウム前駆体対シリコン前駆体の比を1未満とすることで,HfSi_(y)O_(x)のyを1よりも大きくすることが記載されているといえる。
また,引用例1の上記摘記(1h)の「例えば,図5Dにおいて,t1が約2秒続く場合,ハフニウム前駆体はt1の開始で約1.5秒間パルスされ,シリコン前駆体はt1の終わりで約1.5秒間パルスされる。別の例では,図5Eにおいて,t1が約2秒続く場合,シリコン前駆体はt1の開始で約1.75秒間パルスされ,ハフニウム前駆体はt1の終わりで約1.5秒間パルスされる。」との記載から,シリコン前駆体のパルスの時間を「約1.5秒間」及び「約1.75秒間」と異ならせることで,ハフニウム前駆体対シリコン前駆体の比を変更する方法も認めることができる。

(エ)さらに,上記摘記(1i)に「[0065]ステップ320の際の代替実施形態では・・・」と記載されているところ,上記ステップ320は,引用例1の上記摘記(1f)に記載された実施形態の一ステップであり,かつ,引用発明が,上記摘記(1f)に記載された前記実施形態に係る実施例であることに照らして,引用発明について,上記摘記(1i)に記載された技術的思想を適用することは当業者が容易に想到し得たことといえる。

(オ)したがって,引用発明において,ハフニウム前駆体対シリコン前駆体の比を変更して,HfSi_(y)O_(x)のyを1よりも大きくすることは,当業者が容易になし得たことと認められる。
そして,引用発明において,ハフニウム前駆体対シリコン前駆体の比を変更して,HfSi_(y)O_(x)のyを1よりも大きくする際に,「前記金属シリケート膜が約65原子%を超えるケイ素含量を有する」ようにすることは,下記の理由から,当該「約65%」という値に臨界的な意義を見いだすことができないから,当業者が適宜なし得たことといえる。

(カ)すなわち,引用例1の上記摘記(1i)の「本明細書に説明されたプロセスによって堆積されたケイ酸ハフニウムは実験化学式HfSi_(y)O_(x)を有しており,ここでyはハフニウム/シリコン前駆体混合物内のハフニウム前駆体およびシリコン前駆体のモル比を変更することによって調整されてもよい。例えば,ハフニウム前駆体対シリコン前駆体の比が1より大きい場合,yは恐らく1未満である。しかしながら,ハフニウム前駆体対シリコン前駆体の比が1未満である場合,yは恐らく1より大きい。」との記載から,引用発明のプロセスによって形成するケイ酸ハフニウム内に所望のHf:Si比を達成するためには,引用発明のプロセス中のハフニウム前駆体およびシリコン前駆体のモル比を変更すればよいことを直ちに理解するところ,前記プロセス中に供給するハフニウム前駆体の量を,限りなくゼロに近づけることで,堆積されるケイ酸ハフニウムのケイ素含量(Si/(Si+Hf))を,限りなく100原子%に近づけることができることは自明であり,また,本願補正発明1で規定する「約65%」というケイ素含量を境として,その上下において何らかの利点あるいは欠点が顕著に生じるとは,本願の明細書の記載からは認めることはできない。

(キ)しかも,下記の周知例1-2の記載からも明らかなように,約65原子%を超えるケイ素含量を有する金属シリケート膜自体も,本願の優先権主張の日前において周知なものであったといえる。

・周知例1:特開2006-54382号公報
(周1a)「【請求項1】
金属シリケート膜の膜厚方向において膜の内部側より膜の界面側で,金属シリケート膜を構成するシリコンの組成比が金属の組成比と比較して高く,
前記金属シリケート膜の膜厚方向において膜の界面側より膜の内部側で,金属シリケート膜を構成する金属の組成比がシリコンの組成比と比較して高い
ことを特徴とする金属シリケート膜。
【請求項2】
前記金属シリケート膜はハフニウムシリケート膜からなる
ことを特徴とする請求項1記載の金属シリケート膜。
【請求項3】
前記金属シリケート膜はハフニウムシリケート膜からなり,
前記ハフニウムシリケート膜の界面側では,
前記ハフニウムシリケート膜中のシリコンに対するハフニウムの組成比は0%より大きく30%以下であり,
前記ハフニウムシリケート膜中のハフニウムに対するシリコンの組成比は70%以上100%未満である
ことを特徴とする請求項1記載の金属シリケート膜。
【請求項4】
前記金属シリケート膜はハフニウムシリケート膜からなり,
前記ハフニウムシリケート膜の内部側では,
前記ハフニウムシリケート膜中のシリコンに対するハフニウムの組成比は30%以上100%未満であり,
前記ハフニウムシリケート膜中のハフニウムに対するシリコンの組成比は0%より大きく70%以下である
ことを特徴とする請求項1記載の金属シリケート膜。」

(周1b)「【0004】
しかしながら,半導体装置の微細化・高集積化が進むにつれて,単位メモリセルにおけるキャパシタ占有面積は減少している。これは,キャパシタの蓄積容量も減少することを意味する。したがって,微細化・高集積化された半導体装置では,そこに組み込まれるキャパシタの蓄積容量を増加させるために,深いトレンチ(Deep Trench:DT)形状を用いて,キャパシタ絶縁膜にSiOやSiONよりも比誘電率の高い金属酸化膜(HfO_(2)やAl_(2)O_(3),ZrO_(2)など)や金属シリケート膜(HfSiO_(2)など)の高誘電率(High-k)材料の採用が提案されている。
【0005】
金属酸化膜は一般に比誘電率は高いものの成膜後の熱処理により膜の結晶化が発生し,キャパシタ絶縁膜として用いた場合に結晶粒界を通過してリーク電流が増加する問題やそれに応じて耐熱性が悪化する問題が生じていた(HfO_(2)は耐熱性がおよそ700℃である)。これに対して,金属シリケート膜は金属酸化膜よりも比誘電率は小さいが,シリコン酸化物が含まれることから金属酸化物単体の膜よりも熱的に安定で結晶化温度が高くなることが開示されている(例えば,特許文献1参照。)。

(周1c)「【発明の効果】
【0012】
本発明の金属シリケート膜は,金属シリケート膜の膜厚方向において膜の内部側より膜の界面側で,金属シリケート膜を構成するシリコンの組成比が金属の組成比と比較して高いため,酸化シリコン(SiO_(2))膜に近い金属シリケート膜となるので,Si界面と金属との反応が抑制され,リークパスとなる結晶化が防止できる。このため,この金属シリケート膜をキャパシタの容量絶縁膜に用いた場合には,キャパシタリークを減少させることができる。また,SiO_(2)に近い金属シリケート膜となるので耐熱性も向上する。一方,金属シリケート膜の膜厚方向において膜の界面側より膜の内部側で,金属シリケート膜を構成する金属の組成比がシリコンの組成比と比較して高いため,金属酸化膜に近い金属シリケート膜となるため,より比誘電率を増加させることが可能になる。このため,この金属シリケート膜をキャパシタの容量絶縁膜に用いた場合には,容量Csを増加させることができるという利点がある。」

(周1d)「【0053】
ここで,成膜の1サイクルにおいて,「Si-Oサイクル」S2と「金属-Oサイクル」S3との実施回数を変えた場合のシリコンの組成比〔Si/(Hf+Si)〕およびハフニウムに組成比〔Hf/(Hf+Si)〕について表1に示す。」(「HF」は「Hf」の誤記と認める。)

(周1e)表1から,サイクル比(S2:S3)が,3:1,及び,2:1の場合に,Si組成比(%)〔Si/(Hf+Si)〕が,76%,及び,70%であることを読み取ることができる。

・周知例2:KAUPO KUKLI ET AL,JOURNAL OF THE ELECTROCHEMICAL SOCIETY,2004年,Vol.151 No.5,F98-F104
(周2a)F100頁のTableIIIの最下段には,パルスシーケンスTEOS/H_(2)O/Hf_(4)/H_(2)Oについて,Hf:9±2atom%,Si:27±3atom%,すなわちケイ素含量が,27/(9+27)=75原子%のHf-Si-O膜が開示されている。

(ク)しかも,本願の明細書には次の記載がある。
(本a)「【0015】
本明細書で説明される方法は,各サイクルにおいて成長膜中に組み込まれるHfの量を制限し,それゆえ,より多くのケイ素を組み込むことを可能にすることによって,シリコンリッチ金属シリコン膜の形成を可能にする。これは,各ALDサイクルにおいて,ケイ素前駆体パルスに続く次の反応物として金属前駆体パルスを供給することによって達成され得る。実施形態によっては,この方法により,65%を超える,75%以上,又は80%以上のケイ素含量を有する金属シリケート膜の形成を可能にする。ハフニウムを含有するシリケート膜の堆積に関して主に説明したが,当業者は,本明細書で説明した方法が他の金属を含むシリケート膜の形成にも適用可能であることを理解しているであろう。」

(本b)「【0040】
実施形態によっては,第1のパルスシーケンスは,酸化剤/ケイ素反応物/金属反応物である。このパルスシーケンスを繰り返して,約60at%のケイ素含量を有する金属シリケート膜を作製することができる。」

(本c)「【0041】
ケイ素濃度をさらに増大させるために,ケイ素反応物/金属反応物/酸化剤の第1のサイクルを繰り返すことに先立って,ケイ素反応物/酸化剤の第2の反応物パルスサイクルを1回又は複数回繰り返してもよい。第1のサイクルを繰り返すことに先立って,第2のパルスサイクルを何回か繰り返すことができる。実施形態によっては,第1のサイクルを再度開始する前に,1回又は複数回,例えば5回以上,又は何回かの他の好適な回数,第2のサイクルを繰り返す。このようにして,60at%を超えるケイ素濃度を有するシリコンリッチ金属シリケート膜を作製することができる。実施形態によっては,第1のサイクル毎に5回,第2のサイクルを繰り返して,約80at%を超えるケイ素濃度を有するシリコンリッチ金属シリケート膜を作製する。他の実施形態では,第2のサイクル毎に複数回,第1のサイクルを繰り返してもよい。」

(本d)「【0060】
さらに,本明細書で説明した方法に従って形成される金属シリケート膜は,「ウェハ内(within wafer)」(WIW)均一性(1シグマ)が表面上で約1%未満であり得る。実施形態によっては,漏れ電流密度は,約1.5nmの有効酸化膜厚(EOT)において約1×10^(-3)A/cm^(2)以下であり,約1.5nmのEOTにおいて約1×10^(-4)A/cm^(2)以下であり,又は約1.5nmのEOTにおいて約1×10^(-5)A/cm^(2)以下である。本明細書で説明した方法に従って形成される金属シリケート膜は,金属及びケイ素の濃度が,約10%金属/90%Si?約90%金属/10%Siを有し得る。」

(本e)「【0062】
[実施例1]
ASM America, Inc.製のPulsar(商標)反応器を使用して,300mmシリコンウェハ上にハフニウムシリケート膜を堆積させた。堆積は約300℃?350℃の範囲の基板温度で行った。シーケンス処理ステップは以下を含む。
(1)H_(2)Oパルス,
(2)N_(2)パージ,
(3)SiCl_(4)パルス,
(4)N_(2)パージ,
(5)HfCl_(4)パルス,及び
(6)N_(2)パージ。
【0063】
シリコンウェハ上に厚さが約40Åのハフニウムシリケート膜が形成されるまで,ステップ(1)?ステップ(6)を繰り返した。」

すなわち,本願の明細書には,
(a)酸化剤/ケイ素反応物/金属反応物である第1のパルスシーケンスを繰り返して,約60at%のケイ素含量を有する金属シリケート膜を作製すること,
(b)ケイ素反応物/金属反応物/酸化剤の第1のサイクルを繰り返すことに先立って,ケイ素反応物/酸化剤の第2の反応物パルスサイクルを1回又は複数回繰り返して,60at%を超えるケイ素濃度を有するシリコンリッチ金属シリケート膜を作製すること,
(c)第1のサイクル毎に5回,第2のサイクルを繰り返して,約80at%を超えるケイ素濃度を有するシリコンリッチ金属シリケート膜を作製すること,
の実施形態が開示されるとともに,
唯一の実施例である[実施例1]には,堆積したハフニウムシリケート膜のケイ素含量が明記されていないといえる。

そうすると,本願明細書には,本願補正発明1に対応する,酸化剤/ケイ素反応物/金属反応物である第1のパルスシーケンスの繰り返しによっては,約60at%のケイ素含量を有する金属シリケート膜を作製することができることが開示されているだけであって,唯一の実施例においてもケイ素含量が明記されていないものであり,また,本願の明細書で説明した方法に従って形成される金属シリケート膜は,金属及びケイ素の濃度が,約10%金属/90%Si?約90%金属/10%Siを有し得るのであるから,本願の明細書の記載からは,前記「約65原子%」という値に臨界的な意義を認めることはできない。

(ケ)したがって,「約65%」という値に臨界的な意義を見いだすことはできないから,引用発明において,ハフニウム前駆体対シリコン前駆体の比を変更して,ケイ酸ハフニウム膜が約65原子%を超えるケイ素含量を有するようにすること,すなわち,上記相違点3について,本願補正発明1の特定事項とすることは,当業者が容易になし得たことといえる。また,このような特定事項としたことによる効果は当業者が予測する範囲内のものと認められる。

(コ)小活
相違点1-3については,以上のとおりであるから,本願補正発明1は,上記引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
相違点1-3については,以上のとおりであるから,本願補正発明1は,上記引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって,本願補正発明1は,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 補正の却下の決定のむすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成25年10月4日に提出された手続補正書による補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1-21に係る発明は,平成25年1月31日に提出された手続補正書によって補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1-21に記載されている事項により特定されるとおりのものであるところ,そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,次のとおりである。

「【請求項1】
金属シリケート膜を形成する原子層堆積(ALD)法であって,複数の堆積サイクルを含み,各サイクルは,反応空間内の基板を,ハロゲン化ケイ素原料化学物質,金属原料化学物質,及び酸化剤の空間的且つ時間的に離れた気相パルスと接触させることを含み,前記金属原料化学物質は,前記ハロゲン化ケイ素原料化学物質の後に供給されるすぐ後の反応物であり,前記金属シリケート膜が約65原子%を超えるケイ素含量を有する,方法。」

2 進歩性について
(1)引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である引用例1に記載されている事項は,上記「第2 4 (2)引用例とその記載事項,及び,引用発明」の項で指摘したとおりである。

(2)当審の判断
本願発明1を限定したものである本願補正発明1が,前記「第2 4 (3)本願補正発明1の進歩性についての検討」で判断したとおり,引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと判断されるから,本願発明1も同様に,引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

第4 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-26 
結審通知日 2014-09-02 
審決日 2014-09-17 
出願番号 特願2009-531590(P2009-531590)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 周治  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 恩田 春香
加藤 浩一
発明の名称 金属シリケート膜のALD  
代理人 小野寺 隆  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ