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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E06B |
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管理番号 | 1296929 |
審判番号 | 不服2012-4051 |
総通号数 | 183 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-03-01 |
確定日 | 2015-02-13 |
事件の表示 | 特願2005- 18663「防火ガラスの組付け構造体及び防火ガラス戸及び防火ガラス窓」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月 4日出願公開、特開2005-207226〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は,平成12年8月23日に出願された特願2000-252392号(以下,「原出願」という。)の一部を特許法第44条第1項の規定により,平成17年1月26日に新たに特許出願したとされるものであって,平成23年11月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成24年3月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされ,当審において平成25年5月1日付けで拒絶理由を通知したところ,平成25年7月1日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2 本願発明 本件出願の請求項1?7に係る発明は,平成25年7月1日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものと認められるところ,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりである。 「【請求項1】 ガラス板本体を金属製の保持枠に取り付けてある防火ガラスの組付け構造体であって, 前記ガラス板本体は,その板面に,耐熱性及び透視性を有するポリエステル樹脂膜を一体に被覆して,前記ポリエステル樹脂膜を前記ガラス板本体の板面に露出させてあり, 不燃性バックアップ材及び金属製の弾性保持材のいずれか一方と,防火用シーリング材とによって構成された保持材を前記ガラス板本体と前記保持枠との間に全周にわたって隙間なく充填して前記ガラス板本体を前記保持枠内に取り付けてある防火ガラスの組付け構造体。」 3 刊行物及びその記載事項 (1)当審における拒絶の理由に引用され,本願の原出願前に頒布された刊行物である特開平9-32432号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに次の記載がある。 (1a)「【0002】 【従来の技術】・・・ 【0003】(略) 【0004】(略) 【0005】また,低膨張強化ガラス板またはソーダライム強化ガラス板を用いた場合,甲種防火戸に対する加熱条件で割れることはないが,ガラス板が軟化し垂れ下がってしまうことが知られている。 【0006】このガラス板の垂れ下がりの防止は,不燃材をガラスのまわりに充分に詰めることにより実現できるが,このかち込み作業に時間がかかるという問題があり,また,ガラス板とサッシの溝幅の寸法公差の関係で,隙間が狭くてかち込み作業ができない場合と,隙間が広すぎてかち込み作業を行っても,甲種防火戸に対する条件で加熱したときにガラス板の垂れ下がりを防止できない場合があった。」 (1b)「【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,甲種防火戸の製造において,ガラス板とサッシの溝幅の多少の寸法公差に関係することなく,また,不燃材をガラスのまわりに詰めるかち込み作業によることなく,ガラス板を確実に枠体に保持してガラス板の脱落を防止し,かつ,ガラス板を枠体に取り付ける作業を効率よく実現することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明は,防火ガラスの周辺部を枠体と押縁とにより挟み込んで支持するとともに,防火ガラスと枠体および押縁との隙間に難燃シールを施してなる防火ガラス支持構造において,前記防火ガラスの上辺には取付孔が明けられており,該防火ガラスは,前記枠体をなす上枠と防火ガラスとの間に弾性難燃材を介在させ,かつ取付螺子を前記取付孔に貫通させて前記上枠に対し取り付けられていることを特徴とする防火ガラス支持構造を提供する。 【0009】 (略) 【0010】 (略) 【0011】枠体や押縁や螺子としては熱による変形を嫌うので,難燃性または不燃性で軟化点の高いものが好ましく,鉄材やステンレス材などが用いられる。 【0012】防火ガラスとしては低膨張強化ガラス板やソーダライム強化ガラス板などのガラス板が用いられる。 【0013】また,弾性難燃材としてはアルミナシリケート系繊維のシートなどが,難燃シールとしては難燃シリコンシーラントなどが用いられる。」 (1c)「【0016】 【実施例】図1は,本発明の防火ガラス支持構造の1実施例の要部縦断面図であり,防火ガラスとして用いられているガラス板3が枠体1と押縁7により,挟み込まれて支持されている。符号11は難燃シール,符号12はバックアップ材,符号13はセッティングブロックである。 【0017】バックアップ材12としてはセラミックスファイバ,セッティングブロック13としてはケイ酸カルシウムの板などが用いられる。 【0018】枠体1をなす上枠1a,下枠1bには,押縁7をなす上部押縁7a,下部押縁7bが押縁固定螺子8a,8bにより固定されている。符号9a,9bは皿孔である。」 【0019】 (略) 【0020】 (略) 【0021】 (略) 【0022】図2は,本発明の防火ガラス支持構造の1実施例の要部横断面図である。ガラス板(防火ガラス)3が,枠体1をなす縦枠1cと,押縁7をなす側部押縁7cにより挟み込まれて支持されている。符号8c,9c,11,12は押縁固定螺子,皿孔,難燃シール,バックアップ材である。」 (1d)「【0028】図4(d)は第4手順を説明するもので,図示のように,次に,バックアップ材12が嵌め込まれ,ガラス板3と上枠1aおよび上部押縁7aとの隙間に難燃シール11が施される。下枠や縦枠についても同様にして処理される。」 (1e)「【0029】 【発明の効果】本発明の構成によれば,サッシ枠に対してガラスパネルの上辺が機械的に固定されるので,甲種防火戸の条件で加熱されたときガラス板は軟化するが垂れ下がりはしない。このため,甲種防火戸にガラス板が使用でき,ガラス板の透明性を生かして,火災の発見および避難経路の発見などの安全性の向上の面でも効果がある。」 (1f)図1には,防火ガラス支持構造の1実施例の要部縦断面図が,図2には防火ガラス支持構造の1実施例の要部横断面図が記載され,上部押縁7a,下枠1b,下部押縁7b,縦枠1c,側部押縁7cと防火ガラス3との間にバックアップ材12を介在させることが看取できる。 上記(1a)?(1f)の記載からみて,刊行物1には次の発明が記載されているということができる。 「防火ガラスの周辺部を枠体と押縁とにより挟み込んで支持するとともに,防火ガラスと枠体および押縁との隙間に難燃シールを施し,前記枠体をなす上枠と防火ガラスとの間に弾性難燃材を介在させ,上部押縁7a,下枠1b,下部押縁7b,縦枠1c,側部押縁7cと防火ガラス3との間にセラミックスファイバのバックアップ材12を介在させ,枠体や押縁としては鉄材やステンレス材が用いられ,防火ガラスとしては低膨張強化ガラス板やソーダライム強化ガラス板などのガラス板が用いられる甲種防火戸の防火ガラス支持構造」(以下,「刊行物1発明」という。) (2)当審における拒絶の理由に引用され,本願の原出願前に頒布された刊行物である特開平3-34842号公報(以下,「刊行物2」という。)には,図面とともに次の記載がある。 (2a)「ガラス板にフィルムをラミネートすることはガラス破損時の飛散防止,ガラスへの結露防止等のために行われており,近年においては選択的な光透過性を有する特殊加工により,例えば熱線や紫外線を遮断して冷房効果や暖房効果を高めたり,ウィンド内容物等の変質を防止したりする効果も得られるのでフィルムをラミネートしたガラス板の種類も多様化し,工業的にも益々多く行われてきている。 そのフィルムをラミネートしたガラス板は例えば,冷凍ショウケースや冷蔵ショウケース等の低温を必要とする保存庫の窓ガラスとして使用され,また保温ショウケースの断熱性確保のための窓ガラスとして使用が増加している。また,建物窓や高温室の窓の断熱性確保のためやガラス飛散防止効果としての使用も増加している。」(第1ページ右下欄第17行?第2ページ左上欄第12行) (2b)「またフィルムとは有機高分子フィルムからなるものであるが,かかる有機高分子化合物としては,耐熱性や耐湿性等の耐久性や透明性に優れたものであれば特に眼定しない。通常耐熱性としては,かかるフィルムをラミネートしたガラス板が使用される雰囲気温度が80℃以下のため80℃以上,好ましくは100℃以上であって,・・・。かかる有機高分子フィルムとしては,耐熱性や耐寒性,耐光性等の耐久性及びガラスとの線膨張率差が少ないことから,2軸延伸されたポリエステル樹脂フィルムが好ましい。 有機高分子フィルムの厚さは,6?500μmが好ましく,更には12?125μmが好ましい。」(第3ページ右上欄第12行?左下欄第14行) (2c)「(実施例) 2軸延伸した厚み25μm,幅40cmのポリエステルフィルム(帝人(株)製Sタイプ)の片面に東亜合成(株)製アクリル系粘着剤(S-1601)を厚み5μm,20μmになるように湿式塗工をリバースコーターにより行った。粘着剤の厚み5μmのフィルムをタイプAとし,同20μmの厚みのフィルムをタイプBとする。」(第6ページ左下欄第3?10行) (3)当審における拒絶の理由に引用され,本願の原出願前に頒布された刊行物である特開平4-224938号公報(以下,「刊行物3」という。)には,図面とともに次の記載がある。 (3a)「【請求項1】1枚あるいは複数枚の耐熱性透明結晶化ガラス板の片面あるいは両面に,鎖状の分子構造のみからなるフッ素樹脂フィルムが接着されてなることを特徴とする防火安全ガラス。」 (3b)「【0012】 【実施例】以下,本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。 【0013】(実施例1)2000×900×5mmの寸法を有し,熱膨張係数が-5×10^(-7)/℃の耐熱性透明結晶化ガラス板(ファイアライト:日本電気硝子(株)製)10の片面に,厚さ50μmのPFAフィルム11を330℃に加熱しながら,12kg/cm^(2)の圧力をかけて圧着することによって,図1に示すような試験体を作製した。 【0014】 (略) 【0015】(実施例3)2000×900×8mmの寸法の耐熱性透明結晶化ガラス板(ファイアライト)10の両面に,厚さ50μmのPFAフィルム11,11をアクリル系接着剤を用いて接着することによって図3に示すような試験体を作製した。 【0016】(実施例4)実施例1と同様の耐熱性透明結晶化ガラス板10,10を準備し,それらの間に厚さ125μmのFEPフィルム12を介在させ,280℃に加熱しながら,12kg/cm^(2)の圧力をかけて圧着することによって図4に示すような試験体を作製した。」 (3c)図1には実施例1の試験体の断面略図が記載され,図1からは板状の耐熱性透明結晶化ガラスの片面に露出するようにPFAフィルムを設けていることが看取できる。 また,図3には実施例3の試験体の断面略図が記載され,図3からは板状の耐熱性透明結晶化ガラスの両面に露出するようにPFAフィルムを設けていることが看取できる。 さらに,図4には実施例4の試験体の断面略図が記載され,図4からは2枚の板状の耐熱性透明結晶化ガラスでFEPフィルムを挟み込むように設けていることが看取できる。 4 対比 本願発明と刊行物1発明とを対比すると, 刊行物1発明における「ガラス板」は,本願発明における「ガラス板本体」に相当し,以下同様に, 「枠体や押縁」は,「保持枠」に, 「鉄材やステンレス材」は,「金属」に, 「難燃シール」は,「防火用シーリング材」に, 「弾性難燃材」及び「セラミックスファイバのバックアップ材」は,「不燃性バックアップ材」に, 「介在させ」は,「充填して」に,それぞれ相当する。 そして,刊行物1発明の「前記枠体をなす上枠と防火ガラスとの間に弾性難燃材を介在させ,上部押縁7a,下枠1b,下部押縁7b,縦枠1c,側部押縁7cと防火ガラス3との間にセラミックスファイバのバックアップ材12が介在」させる構成は,本願発明の「不燃性バックアップ材及び金属製の弾性保持材のいずれか一方と,防火用シーリング材とによって構成された保持材を前記ガラス板本体と前記保持枠との間に」「充填」する構成に相当する。 また,防火ガラスを挟み込んで支持する刊行物1発明の「支持構造」は,本願発明の「組付け構造体」に相当する。 そうすると,本願発明と刊行物1発明とは, 「ガラス板本体を金属製の保持枠に取り付けてある防火ガラスの組付け構造体であって,前記ガラス板本体は,不燃性バックアップ材及び金属製の弾性保持材のいずれか一方と,防火用シーリング材とによって構成された保持材を前記ガラス板本体と前記保持枠との間に充填して前記ガラス板本体を前記保持枠内に取り付けてある防火ガラスの組付け構造体。」 で一致し,以下の点で相違する。 (相違点1) 本願発明では,ガラス板本体は,「その板面に,耐熱性及び透視性を有するポリエステル樹脂膜を一体に被覆して,前記ポリエステル樹脂膜を前記ガラス板本体の板面に露出させて」あるのに対し,刊行物1発明ではそのような構成を有しない点。 (相違点2) 本願発明では,保持材をガラス板本体と保持枠との間に「全周にわたって隙間なく」充填するのに対し,刊行物1発明はそのように特定されていない点。 5 判断 (相違点1について) 刊行物2には,飛散防止,結露防止,熱線や紫外線の遮断,断熱性確保等のためにフィルムをラミネートしたガラス板の使用が増加していることが記載され,ラミネートするフィルムに関して,耐熱性や透明性に優れたものであれば限定しないこと,耐熱性や耐寒性,耐光性等の耐久性及びガラスとの線膨張率差が少ない2軸延伸されたポリエステル樹脂フィルムが好ましいことが記載されているように,ガラス板に各種機能を付与する目的で,耐熱性や透明性を有するポリエステル樹脂フィルムを被覆することは,本願出願前周知の技術である(刊行物2のほかにも,例えば,登録実用新案第3032848号公報にはガラスの飛散防止,紫外線防止のためにポリエステルフィルムを接着することが記載され,特表平3-506056号公報第2ページ左下欄第19?25行からは破砕防止用としてガラス板に貼付するポリエステルの安全フィルムが市販されていたことが読み取れる)。 刊行物3には,耐熱性透明結晶化ガラス板に鎖状の分子構造のみからなるフッ素樹脂フィルムをガラス板面に露出させるか,ガラス板で挟み込むかして防火安全ガラスとするものが記載されており(刊行物3記載の技術的事項),防火ガラスに樹脂フィルムを用いる際に,合せガラスとするのではなく,樹脂フィルムがガラス板面に露出する形式とすることも公知のことである。 そして,刊行物1発明の防火ガラスにおいても,ガラスの飛散防止等の安全性向上や紫外線防止などの機能を付加することは当業者が当然に考えることであり,上記刊行物3記載の技術的事項からみて樹脂フィルムをガラス板に露出する形式とすることも知られていたのであるから,刊行物1発明に上記周知の技術を適用することは,当業者が容易になし得たことである。 また,本願発明が防火ガラス組付体である点,すなわち,所定の防火性能を満たすという作用効果について検討すると,刊行物1発明の防火ガラス支持構造は,それ自体が所定の防火性能を有するものであり,また,ポリエステルの性質として難燃性であることも知られていたことである(例えば,特開平6-48786号公報の【0011】には,ポリエステル樹脂の代表的な一種であるポリエチレンテレフタレートについて,「本発明において中間層の構成材料としてポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルム)を使用する理由は,このフィルムが難燃性で,・・・」と記載されている)。そうすると,それ自体が防火性能を有する刊行物1発明の防火ガラス支持構造にポリエステル樹脂膜を被覆したものが,所定の防火性能を満たし得ることは,当業者の予測の範囲内であって格別の作用効果であるということはできない。 よって,刊行物1発明において相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 (相違点2について) 刊行物1発明の保持材である難燃シールは,「防火ガラスと枠体および押縁との隙間に施」されるものであるが,刊行物1には,全周にわたって隙間なく充填されることについて明示はない。しかしながら,防火ガラスと枠体および押縁との隙間は,当然に全周にわたって生じることや,ガラス板の周囲に設けるシールを全周にわたって施工することはごく常識的なことであるから,刊行物1発明の難燃シールについても「全周にわたって隙間なく」充填することは当業者が当然に行うことである。 また,刊行物1発明の保持材である「弾性難燃材」と「セラミックスファイバのバックアップ材」について,刊行物1の上記記載事項(1e)から,刊行物1発明がガラス板の垂れ下がりを防止するものであることが読み取れ,同記載事項(1a)には従来の技術ではあるが「このガラス板の垂れ下がりの防止は,不燃材をガラスのまわりに充分に詰めることにより実現できる」と記載されていることから,刊行物1発明の弾性難燃剤とセラミックファイバのバックアップ材をガラス板の垂れ下がりを防止するために十分に詰めることとし,「全周にわたって隙間なく」充填することは,当業者が容易に考えることである。 よって,刊行物1発明において相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 (まとめ) また,本願発明の作用効果は,刊行物1発明,周知の技術及び刊行物3に記載の技術的事項から当業者が予測できる程度のことである。 したがって,本願発明は,刊行物1発明,周知の技術及び刊行物3に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (意見書について) ここで,請求人は平成25年7月1日付け意見書において,以下のように主張している。 「本願発明と刊行物2とは,『ガラス板本体の板面にポリエステル樹脂が被覆され,ポリエステル樹脂をガラス板本体の板面に露出させてある』点で一致します。 しかし,本願発明のガラス板が防火ガラスであるのに対し,刊行物2のガラス板は防火ガラスではなく冷凍ショウケース等に用いられるものである点で相違します。刊行物2には,フィルムが備えるべき耐熱性として例えば100℃という数値が挙げられています。これは当該ガラスの使用雰囲気温度が80℃程度であることから,それよりもある程度高温の環境でも堪え得ることを想定したものに過ぎません。これに対し,防火ガラスの試験に係る建築用防火戸の防火試験方法 JIS 1311-1994(提出物件の資料1)では,その3.2項に『加熱炉の熱源は,都市ガス,プロパン,重油その他適当な燃料とし,その炎は,直接試験体に十分に達しうるものとする』と規定があるように,ガラス表面に直接火炎を接触させますので,ガラス表面の温度は100℃を遥かに超える温度となります。このように,刊行物2における耐熱性は防火ガラスの使用環境を考慮したものではありません。」 しかしながら,請求人が「『ガラス板本体の板面にポリエステル樹脂が被覆され,ポリエステル樹脂をガラス板本体の板面に露出させてある』点で一致します。」と認めているように,本願発明のガラス板と刊行物2記載のガラス板とは構成上の差異はない。そして,仮に刊行物2における耐熱性は防火ガラスの使用環境を考慮したものではないとしても,刊行物2における耐熱性は,その耐熱性をどの程度とするかは当業者が必要とされる目標に応じて適宜設定すれば良く,例えば,フィルムが備えるべき耐熱性として100℃という数値が挙げられていたとしても耐熱性をさらに向上させれば請求人の主張するところの耐火性を備えたものとなるので,この主張は認められない。 また,請求人は前記意見書において,以下のようにも主張している。 「このように,ガラス本体の板面に樹脂フィルムを露出させた状態で被覆した板ガラスで防火ガラスとして認定を受けたものはありません。 この耐熱板ガラス品質規格は,平成7年9月1日に制定され,これまで改定が重ねられてきました。この認定を取得しているか否かはガラス業界においてはその製品が一つの信用を得ることにもなります。当該認定を取得することはその後の製品の販売数量に大きく影響します。そのような環境の中で,認定を受けようとする防火ガラスに対して敢えて可燃性のフィルムを付すことは通常の当業者であれば到底相当できるものではありません。 本願発明者が防火ガラスとして用いるガラス板本体の板面にポリエステル樹脂のフィルムを被覆するに至ったのは,可燃性フィルムを付したガラスの性能低下程度を確認するために行った試験の結果によるものであり,出願当時の公知文献などを参考に行ったものではありません。」 上記主張のとおり,ガラス本体の板面に樹脂フィルムを露出させた状態で被覆した板ガラスで防火ガラスとして認定を受けたものはないとしても,耐熱板ガラスの品質規格に基づく主張であって,本願発明の容易想到性の判断に影響を与えるものではなく,この請求人の主張も認められない。 6 むすび 以上のとおり,本願発明は特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-03-14 |
結審通知日 | 2014-03-20 |
審決日 | 2014-04-02 |
出願番号 | 特願2005-18663(P2005-18663) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(E06B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森次 顕、引地 麻由子 |
特許庁審判長 |
高橋 三成 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 杉浦 淳 |
発明の名称 | 防火ガラスの組付け構造体及び防火ガラス戸及び防火ガラス窓 |
代理人 | 北村 修一郎 |
復代理人 | 山▲崎▼ 徹也 |