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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01P |
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管理番号 | 1297066 |
審判番号 | 不服2014-707 |
総通号数 | 183 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-01-15 |
確定日 | 2015-02-06 |
事件の表示 | 特願2011-164362「方向性結合器および無線通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日出願公開、特開2013- 30904〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯と本願発明 本願は、平成23年7月27日の出願であって、原審において平成25年6月27日付けで拒絶理由が通知され、同年8月28日付けで手続補正されたが、同年10月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年1月15日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。 本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成25年8月28日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、特許請求の範囲の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項4に記載された以下のとおりのものと認める。 「送信信号を伝送する主線路と、 当該主線路に前記送信信号を入力する入力ポートと、 当該主線路から前記送信信号を出力する出力ポートと、 前記主線路と電磁界結合して前記送信信号の一部を取り出す副線路と、 当該副線路の一端部に備えられた結合ポートと、 当該副線路の他端部に備えられたアイソレーションポートと を有する方向性結合器であって、 前記副線路と前記結合ポートとの間、ならびに、前記副線路と前記アイソレーションポートとの間に、ローパスフィルタとしての機能を有するローパスフィルタ部をそれぞれ備えるとともに、 一端が前記副線路と前記結合ポートの間に接続され、他端が前記副線路と前記アイソレーションポートとの間に接続されたキャパシタを更に備えた ことを特徴とする方向性結合器。」 第2 引用発明 A 原審の拒絶理由に引用された国際公開第2011/074370号(平成23年6月23日公開、以下「引用例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「技術分野 [0001] 本発明は、方向性結合器に関し、より特定的には、高周波信号により通信を行う無線通信機器等に用いられる方向性結合器に関する。 背景技術 [0002] 従来の方向性結合器としては、例えば、特許文献1に記載の方向性結合器が知られている。該方向性結合器は、コイル状導体及び地導体が形成された複数の誘電体層が積層されて構成されている。コイル状導体は、2本設けられている。一方のコイル状導体は、主線路を構成しており、他方のコイル状導体は副線路を構成している。主線路と副線路とは、互いに電磁気的に結合している。また、地導体は、積層方向からコイル状導体を挟んでいる。地導体には、接地電位が印加される。以上のような方向性結合器では、主線路に信号を入力すると、副線路からは、該信号の電力に比例する電力を有する信号が出力される。 [0003] しかしながら、特許文献1に記載の方向性結合器では、主線路と副線路との結合度が、主線路に入力してくる信号の周波数が高くなるにしたがって高くなってしまう(すなわち、結合度特性が平坦ではない)という問題を有している。そのため、同じ電力の信号が主線路に入力したとしても、信号の周波数が変動すると、副線路から出力されてくる信号の電力が変動してしまう。よって、副線路に接続されているICでは、信号の周波数に基づいて、信号の電力を補正する機能を有している必要がある。 先行技術文献 特許文献 [0004] 特許文献1:特開平8-237012号公報 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0005] そこで、本発明の目的は、方向性結合器における結合度特性を平坦に近づけることである。」(1頁3行?2頁2行) ロ.「[0043] (第6の実施形態) 以下に、第6の実施形態に係る方向性結合器について図面を参照しながら説明する。図11は、第6の実施形態に係る方向性結合器10fの等価回路図である。 [0044] 方向性結合器10fの回路構成について説明する。方向性結合器10fにおけるローパスフィルタLPF1の構成は、方向性結合器10aにおけるローパスフィルタLPF1の構成と異なっている。具体的には、方向性結合器10aにおけるローパスフィルタLPF1では、コンデンサC1は、図1に示すように、外部電極14cとコイルL1との間と、外部電極14e,14fとの間に接続されていた。これに対して、方向性結合器10fにおけるローパスフィルタLPF1では、コンデンサC1は、図11に示すように、副線路SとコイルL1との間と、外部電極14eとの間に接続されている。これにより、副線路Sから外部電極14c側へと出力される信号の内、不要な信号は、コイルL1を通過することなく、コンデンサC1及び外部電極14eを経由して、方向性結合器10f外へと出力されるようになる。そのため、不要な信号が、コイルL1にて反射して副線路S側へと戻ることが抑制されるようになる。 [0045] また、方向性結合器10fでは、方向性結合器10aに対して、ローパスフィルタLPF2が追加されている。具体的には、ローパスフィルタLPF2は、外部電極14dと副線路Sとの間に接続され、所定の周波数帯域において、周波数が高くなるにしたがって減衰量が増加する特性を有している。ローパスフィルタLPF2は、コンデンサC2及びコイルL2を含んでいる。コイルL2は、外部電極14dと副線路Sとの間に直列に接続されている。コンデンサC2は、副線路Sと外部電極14dとの間(より正確には、コイルL2と副線路Sの間)と、外部電極14fとの間に接続されている。 [0046] 以上のような方向性結合器10fは、外部電極14c,14dの双方をカップリングポートとして用いることができる。より詳細には、方向性結合器10fでは、第1の使用方法として、方向性結合器10aと同様に、外部電極14aが入力ポートとして用いられ、外部電極14bが出力ポートとして用いられる。外部電極14cは、カップリングポートとして用いられ、外部電極14dは、ターミネートポートとして用いられる。外部電極14e,14fは、ターミネートポートとして用いられる。この場合には、外部電極14aに対して信号が入力すると、該信号が外部電極14bから出力する。更に、主線路Mと副線路Sとが電磁気的に結合しているので、信号の電力に比例する電力を有する信号が外部電極14cから出力する。 [0047] 更に、方向性結合器10fでは、第2の使用方法として、外部電極14bが入力ポートとして用いられ、外部電極14aが出力ポートとして用いられる。外部電極14dは、カップリングポートとして用いられ、外部電極14cは、ターミネートポートとして用いられる。外部電極14e,14fは、ターミネートポートとして用いられる。この場合には、外部電極14bに対して信号が入力すると、該信号が外部電極14aから出力する。更に、主線路Mと副線路Sとが電磁気的に結合しているので、信号の電力に比例する電力を有する信号が外部電極14dから出力する。 [0048] 以上のような方向性結合器10fは、例えば、携帯電話等の無線通信端末の送受信回路に適用可能である。すなわち、送信信号の電力の検出時には14aを入力ポートとして用い、アンテナからの反射電力の検出時には外部電極14bを入力ポートとして用いればよい。そして、方向性結合器10fでは、外部電極14a,14bのいずれが入力ポートとして用いられたとしても、ローパスフィルタLPF1,LPF2が設けられているので、結合度特性を平坦に近づけることができる。 [0049] また、方向性結合器10fでは、外部電極14g,14hと接地電位との間に終端抵抗R1,R2が接続されている。これにより、外部電極14g,14hからローパスフィルタLPF1,LPF2を介して外部電極14c,14dへと信号が反射することが抑制される。」(11頁22行?13頁19行) 上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の[0046]における「方向性結合器10fでは、第1の使用方法として、方向性結合器10aと同様に、外部電極14aが入力ポートとして用いられ、外部電極14bが出力ポートとして用いられる。外部電極14cは、カップリングポートとして用いられ、外部電極14dは、ターミネートポートとして用いられる。・・・この場合には、外部電極14aに対して信号が入力すると、該信号が外部電極14bから出力する。更に、主線路Mと副線路Sとが電磁気的に結合しているので、信号の電力に比例する電力を有する信号が外部電極14cから出力する。」との記載、及び図11によれば、上記引用例1の方向性結合器(10f)は、送信信号を伝送する主線路(M)と、主線路(M)に送信信号を入力する入力ポート(外部電極14a)と、主線路(M)から送信信号を出力する出力ポート(外部電極14b)と、主線路(M)と電磁気的に結合して送信信号の一部を取り出す副線路(S)と、副線路(S)の一端部に備えられたカップリングポート(外部電極14c)と、副線路(S)の他端部に備えられたターミネートポート(外部電極14d)とを有している。 また、上記ロ.の[0044]における「方向性結合器10fにおけるローパスフィルタLPF1では、コンデンサC1は、図11に示すように、副線路SとコイルL1との間と、外部電極14eとの間に接続されている。」との記載、同ロ.の[0045]における「方向性結合器10fでは、方向性結合器10aに対して、ローパスフィルタLPF2が追加されている。具体的には、ローパスフィルタLPF2は、外部電極14dと副線路Sとの間に接続され、所定の周波数帯域において、周波数が高くなるにしたがって減衰量が増加する特性を有している。ローパスフィルタLPF2は、コンデンサC2及びコイルL2を含んでいる。コイルL2は、外部電極14dと副線路Sとの間に直列に接続されている。コンデンサC2は、副線路Sと外部電極14dとの間(より正確には、コイルL2と副線路Sの間)と、外部電極14fとの間に接続されている。」との記載、及び図11によれば、方向性結合器(10f)は、ローパスフィルタ(LPF1)として、コンデンサ(C1)が、副線路(S)とコイル(L1)との間と、外部電極(14e)との間に、コイル(L1)が、外部電極(14c)(カップリングポート)と副線路(S)との間に接続され、ローパスフィルタ(LPF2)として、コンデンサ(C2)が、副線路(S)とコイル(L2)との間と、外部電極(14f)との間に、コイル(L2)が、外部電極(14d)(ターミネートポート)と副線路(S)との間に接続されている。すなわち、方向性結合器(10f)は、副線路(S)と外部電極(14c)(カップリングポート)との間、副線路(S)と外部電極(14d)(ターミネートポート)との間に、ローパスフィルタ(LPF1,LPF2)をそれぞれ備えているということができる。 また、上記ロ.の[0049]における「方向性結合器10fでは、外部電極14g,14hと接地電位との間に終端抵抗R1,R2が接続されている。これにより、外部電極14g,14hからローパスフィルタLPF1,LPF2を介して外部電極14c,14dへと信号が反射することが抑制される。」との記載、及び図11によれば、方向性結合器(10f)は、外部電極(14g,14h)と接地電位との間に終端抵抗(R1,R2)が接続されている。 したがって、上記引用例1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「送信信号を伝送する主線路(M)と、 当該主線路(M)に前記送信信号を入力する入力ポートと、 当該主線路(M)から前記送信信号を出力する出力ポートと、 前記主線路(M)と電磁気的に結合して前記送信信号の一部を取り出す副線路(S)と、 当該副線路(S)の一端部に備えられたカップリングポートと、 当該副線路(S)の他端部に備えられたターミネートポートと を有する方向性結合器(10f)であって、 前記副線路(S)と前記カップリングポートとの間、前記副線路(S)と前記ターミネートポートとの間に、ローパスフィルタ(LPF1,LPF2)をそれぞれ備えるとともに、 外部電極(14g,14h)と接地電位との間に接続された終端抵抗(R1,R2)を備えた 方向性結合器(10f)。」 B 原審の拒絶理由に引用された特開2004-289797号公報(平成16年10月14日公開、以下「引用例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 ハ.「【技術分野】 【0001】 本発明は、結合器の分野に関し、特に測定又は制御目的で、送信線路によって伝達される信号の一部を得るために使用される。本発明は、より詳細には、送信増幅器とアンテナとの間にある無線周波数結合器の分野に関し、特に携帯電話技術に適応する。 【背景技術】 【0002】 図1は、分散型結合器1の一般構造を極めて概略的に示しており、該結合器は、本発明が適用する型の送信線路を備え、局所的インダクタ及びキャパシタ素子を備えた結合器とは対照的である。 【0003】 結合器1は、送信されるべき信号Txを増幅する増幅器2(PA)と送信アンテナ3との間に配置される。結合器1の機能は、第2線路12の端子CPLDとISOとの間で、主送信線路11を通る信号に比例する信号を抽出することであり、該主送信線路は、端子INとDIRとの間にあり、該端子は、増幅器2の出力端子及びアンテナ3の入力端子にそれぞれ接続されている。 【0004】 結合器1によって抽出された信号Gは、例えば、増幅器2の電力を制御するために、又は、アンテナ3の取り外しの場合のように保護が必要な場合に電力を止めるために、回路4(DET)によって利用される。 【0005】 これは携帯電話技術への応用例であり、該技術において、高い電力消費は送信チェーンが原因であり、回路の電力消費は一般に最少化されることが望ましい。受信モードにおいて、携帯電話は低雑音増幅器(LNA)を利用し、一般には該増幅器の利得は固定されているため結合器は必要でない。 【0006】 図1の結合器は、双方向性結合器であり、送信線路11に存在する両方向の信号を検出する。INからDIRを通るフォワード信号(FWD)は、出力CPLDの方へ結合され、DIRからINを通るリバース信号(REV)は、出力ISOの方へ結合される。実際には、端子CPLD及びISOに存在する電圧は、利得修正信号Gを生成するために整流される。 【0007】 図1に示される型の分散型結合器は、その結合及びその方向性によって特徴づけられる。結合は、線路11を循環する主信号の振幅と、線路12からサンプリングされた信号の振幅との差に特徴を示す。方向性は、端子CPLDから来る信号として解釈される信号FWDの振幅と、端子ISOから来る信号として解釈されるDIRからINに循環する信号REVの振幅との差に特徴を示す。端子CPLDとISOとの振幅差が大きいほど、結合器の方向性は大きくなり、且つ、線路11によって送信される信号の反射として解釈されるアンテナ3の問題を検出するのがより容易になる。実際、アンテナ上の問題(例えばアンテナの取り外し)の場合、出ることができない電力は反射され、端子ISOの信号を増加させることとなる。閾値に関して端子ISOの電位を検出することによって、アンテナの問題が検出され、送信増幅器は、一般に反射された電力を受信するのに耐えられないため、損傷を来さないように遮断される。 【0008】 理想的な結合器及び通常の操作において、結合線路の最高振幅は、端子CPLDに存在し、ゼロ電圧が端子ISOに存在し得る。しかしながら、実際には、端子ISOの電圧はゼロではなく、一般に端子DIRの電圧に関しておおよそ-30dB減衰する。 【0009】 更に、検出のために出力の一部を過度にサンプリングしないように、一般には低結合が模索される。一般に、端子CPLDは、端子INから端子DIRを通る信号に関して、おおよそ-15から-20dB減衰する信号を再生する。 【0010】 従って、従来の結合器の方向性は、おおよそ-10dBから-15dB(-30-(-20)から-30-(-15))である。 【0011】 特にアンテナの問題の検出を容易にするためには、高い方向性が望ましい。」(2?3頁) ニ.「【0030】 図3は、本発明の第1実施形態に従う結合器20を示している。それは、図2の実施形態のように2つの平行導電線路11,12を示している。線路11は端子IN及びDIRの主線路を形成する。線路12は端子CPLD及びISOの結合線路に対応する。 【0031】 本発明によると、第1キャパシタCsは、端子IN及びDIRに接続し、一方、第2キャパシタCsは、端子CPLD及びISOに接続する。 【0032】 線路11及び12は同じ長さであり、両方のキャパシタCsは同じ値である。 【0033】 導電線路及びキャパシタの大きさは応用に依存し、より詳細には、結合器の所望の通過帯域の中心周波数に依存する。簡単な例において、セクション11及び12は、λ/4に対応する長さであり、λは帯域の中心周波数の波長を表している。この場合、キャパシタCsの付加が、帯域幅を減少させるが、既に方向性を改善している。更に、キャパシタが中心周波数にもたらすオフセットによってλの値を小さくできる。 【0034】 本発明の好ましい実施形態によると、所望の通過帯域の中心周波数に関してλ/4の大きさである導電セクション11及び12の長さを減らすために、キャパシタの存在が利用される。このような実施形態は、結合(λ/4において最大)を減らすことができ、主線路に関する結合線路上で測定された信号の振幅を減らすことができる。このようにして、送信に直接有用でない電力消費(信号部分)を最小化する。」(5頁) ホ.「【0042】 本発明による結合器の大きさは、応用に従って選択される。キャパシタCsが浮遊容量より大きい値にならなければならないという事を考慮すると、本発明の結合器は、特に、数十MHzから数十GHzの周波数に適する。そのときキャパシタCsは0.1から10ピコファラッドの値をとる。 【0043】 比較として、820MHzの周波数に適合するセクションの長さを備え、キャパシタを有さないランゲ結合器と、3.3pFキャパシタンスのキャパシタCsを有する本発明に従うランゲ結合器とが、基板上に形成される。それぞれに、7及び28dBの方向性が得られている。 【0044】 本発明の利点は、キャパシタCsの付加が、結合をわずかに増加させ、一方、方向性をはるかに(10dB以上)増加させることである。更に、アイソレーションが改善され、損入損失はほんのわずかに(0.5dB以下)増加するだけである。」(6頁) 上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ニ.の【0030】における「図3は、本発明の第1実施形態に従う結合器20を示している。それは、図2の実施形態のように2つの平行導電線路11,12を示している。線路11は端子IN及びDIRの主線路を形成する。線路12は端子CPLD及びISOの結合線路に対応する。」との記載、及び図3によれば、上記引用例2の方向性結合器(20)は、送信信号を伝送する主線路(11)と、主線路(11)に送信号を入力する端子(IN)と、主線路(11)から送信信号を出力する端子(DIR)と、主線路(11)と電磁結合して送信信号の一部を取り出す結合線路(12)と、結合線路(12)の一端部に備えられた端子(CPLD)と、結合線路(12)の他端部に備えられた端子(ISO)とを有している。 また、上記ニ.の【0031】における「本発明によると、第1キャパシタCsは、端子IN及びDIRに接続し、一方、第2キャパシタCsは、端子CPLD及びISOに接続する。」との記載、及び図3によれば、方向性結合器(20)は、一端が主線路(11)と端子(IN)の間に接続され、他端が主線路(11)と端子(DIR)との間に接続された第1キャパシタ(Cs)と、一端が結合線路(12)と端子(CPLD)の間に接続され、他端が結合線路(12)と端子(ISO)との間に接続された第2キャパシタ(Cs)を備えている。 ここで、上記ホ.の【0044】における「本発明の利点は、キャパシタCsの付加が、結合をわずかに増加させ、一方、方向性をはるかに(10dB以上)増加させることである。更に、アイソレーションが改善され、損入損失はほんのわずかに(0.5dB以下)増加するだけである。」との記載によれば、方向性結合器(20)の第1及び第2キャパシタ(Cs)は、方向性を増加させ、アイソレーションを改善するためのものである。 したがって、上記引用例2には以下の発明(以下「技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「方向性結合器(20)において、方向性を増加させ、アイソレーションを改善するために、一端が主線路(11)と端子(IN)の間に接続され、他端が主線路(11)と端子(DIR)との間に接続された第1キャパシタ(Cs)と、一端が結合線路(12)と端子(CPLD)の間に接続され、他端が結合線路(12)と端子(ISO)との間に接続された第2キャパシタ(Cs)を備えること。」 第3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「主線路(M)」、「電磁気的に結合」、「副線路(S)」、「カップリングポート」、「ターミネートポート」、「ローパスフィルタ(LPF1,LPF2)」及び「方向性結合器(10f)」は、本願発明の「主線路」、「電磁界結合」、「副線路」、「結合ポート」、「アイソレーションポート」、「ローパスフィルタとしての機能を有するローパスフィルタ部」及び「方向性結合器」にそれぞれ相当するといえる。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「送信信号を伝送する主線路と、 当該主線路に前記送信信号を入力する入力ポートと、 当該主線路から前記送信信号を出力する出力ポートと、 前記主線路と電磁界結合して前記送信信号の一部を取り出す副線路と、 当該副線路の一端部に備えられた結合ポートと、 当該副線路の他端部に備えられたアイソレーションポートと を有する方向性結合器であって、 前記副線路と前記結合ポートとの間、ならびに、前記副線路と前記アイソレーションポートとの間に、ローパスフィルタとしての機能を有するローパスフィルタ部をそれぞれ備える、 方向性結合器。」 <相違点> 本願発明は、「一端が前記副線路と前記結合ポートの間に接続され、他端が前記副線路と前記アイソレーションポートとの間に接続されたキャパシタ」を備えるのに対し、引用発明は、当該「一端が前記副線路と前記結合ポートの間に接続され、他端が前記副線路と前記アイソレーションポートとの間に接続されたキャパシタ」を備えない点。 第4 判断 そこで、上記相違点について検討する。 前記第2のBのとおり、引用例2には、「方向性結合器(20)において、方向性を増加させ、アイソレーションを改善するために、一端が主線路(11)と端子(IN)の間に接続され、他端が主線路(11)と端子(DIR)との間に接続された第1キャパシタ(Cs)と、一端が結合線路(12)と端子(CPLD)の間に接続され、他端が結合線路(12)と端子(ISO)との間に接続された第2キャパシタ(Cs)を備えること。」との技術事項が記載されていると認められる。 そして、引用発明と上記技術事項は、ともに、方向性結合器という同一の技術分野に属している。 ここで、引用発明は、上記引用例1の上記ロ.の[0046]における「方向性結合器10fは、外部電極14c,14dの双方をカップリングポートとして用いることができる。より詳細には、方向性結合器10fでは、第1の使用方法として、方向性結合器10aと同様に、外部電極14aが入力ポートとして用いられ、外部電極14bが出力ポートとして用いられる。外部電極14cは、カップリングポートとして用いられ、外部電極14dは、ターミネートポートとして用いられる。」との記載、同ロ.の[0047]における「方向性結合器10fでは、第2の使用方法として、外部電極14bが入力ポートとして用いられ、外部電極14aが出力ポートとして用いられる。外部電極14dは、カップリングポートとして用いられ、外部電極14cは、ターミネートポートとして用いられる。」との記載によれば、双方向性結合器ということができる。 一方、上記技術事項は、上記引用例2の上記ハ.の【0006】における「図1の結合器は、双方向性結合器であり、送信線路11に存在する両方向の信号を検出する。」との記載によれば、双方向性結合器である。 したがって、ともに、双方向性結合器という点で、機能も共通しており、引用発明に上記技術事項を採用することに特段の阻害要因は見あたらない。 また、上記引用例2にも記載されているように、方向性結合器において、方向性を増加させ、アイソレーションを改善しようとすることは、普通の課題である。 そうすると、引用発明において、一端が主線路(M)と入力ポートの間に接続され、他端が上記主線路(M)と出力ポートとの間に接続されたキャパシタと、一端が副線路(S)とカップリングポートの間に接続され、他端が上記副線路(S)とターミネートポートとの間に接続されたキャパシタとを備える構成とし、方向性を増加させ、アイソレーションを改善することは、上記技術事項に接した当業者であれば、容易に想到し得るものといえる。 そして、本願の特許請求の範囲の請求項4の記載から、本願発明において、一端が主線路と入力ポートの間に接続され、他端が上記主線路と出力ポートとの間に接続されたキャパシタを備えるか否かは任意であると認められ、本願発明は、上記のキャパシタを備える構成と備えない構成の両方を含み得ると解される。 以上から、引用発明において、一端が副線路(S)とカップリングポートの間に接続され、他端が上記副線路(S)とターミネートポートとの間に接続されたキャパシタとを備える構成(相違点に係る構成)とすることは、上記の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び上記技術事項から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-11-28 |
結審通知日 | 2014-12-04 |
審決日 | 2014-12-17 |
出願番号 | 特願2011-164362(P2011-164362) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01P)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 赤穂 美香 |
特許庁審判長 |
河口 雅英 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 萩原 義則 |
発明の名称 | 方向性結合器および無線通信装置 |
代理人 | 増子 尚道 |