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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1297114
審判番号 不服2013-22186  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-12 
確定日 2015-02-05 
事件の表示 特願2012-132289「シート、キーボード、電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月 6日出願公開、特開2012-168991〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成20年1月10日に出願した特願2008-3726号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成24年6月11日に新たな特許出願としたものであって、平成25年2月26日付けで拒絶理由通知がなされ、同年5月2日付けで手続補正がなされたが、同年8月9日付けで前記平成25年5月2日付け手続補正の補正の却下の決定がなされると共に拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成25年11月12日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成25年11月12日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の目的
本件補正は特許請求の範囲についてする補正を含み、その特許請求の範囲についてする補正は補正前の請求項1を補正後の請求項1に、補正前の請求項7を削除して補正前の請求項8を補正後の請求項7に、補正前の請求項9?11を補正後の請求項8?10に補正するものである。
このうち、請求項1についてする補正は、
補正前の請求項1
「【請求項1】
任意の言語環境に基づいた基準キー表示が設けられた複数のキーから構成されるキーボードを覆い、かつ可塑性を有するシートにおいて、
前記各キーと対向する領域に、前記任意の言語環境とは異なる言語環境に基づいたオプションキー表示が前記キーボードを覆った際にオペレータが視認可能に設けられ、全面が平坦であることを特徴とするシート。」
を、
補正後の請求項1
「【請求項1】
任意の言語環境に基づいた基準キー表示が設けられた複数のキーから構成されるキーボードを覆い、かつ可塑性を有するシートにおいて、
前記各キーと対向する領域に、前記任意の言語環境とは異なる言語環境に基づいたオプションキー表示が前記キーボードを覆った際にオペレータが視認可能に設けられ、
前記シートは、全面が平坦あり、かつ透明あるいは半透明なシート材で形成されるとともに、隣り合う前記各オプションキー表示の間に隙間が形成されていることを特徴とするシート。」
とするものである(補正部分を下線で示す。)。

そして、「全面が平坦であることを特徴とするシート」を「前記シートは、全面が平坦あり、かつ透明あるいは半透明なシート材で形成されるとともに、隣り合う前記各オプションキー表示の間に隙間が形成されていることを特徴とするシート」に変更する補正事項は、補正前の請求項1に記載のあった発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、さらに、補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、当該補正事項に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件(特許法第17条の2第6項)について
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用例の記載、引用例記載の発明
(引用例1)
原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2003-316497号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に以下の記載がある。

a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンピュータのキーボード本体に取り付け可能なキーボード用装置とそのキーボード用装置を備えるキーボードとそのキーボードを備えるコンピュータに係る。特に異なる複数の言語の文字または数字をキーボード入力するのに好適なキーボード用装置とキーボードとコンピュータとに関する。」(【0001】の記載。下線は、当審で付与。以下、同様。)

b)「【0003】キーボードの構造を、我が国で現在用いられている一般的なパソコンのキーボードを例として、図を基に説明する。図9は、キーボードの平面図である。キーボード1は、キーボード基部2と複数のキー3,4,5,6,7,8とを備える。キーボード基部2は略四辺形の板構造であり、内部に電子基板が設けられ、オペレータのキー操作を電子信号にして、コンピュータへ送る。複数のキー3,4,5,6,7,8は、その使用頻度、性質、または機能等により一群にまとめられ、その一群のキーがキーボード上の所定の領域に配列されている。図では、いわゆるJISキーボードと呼ばれるキーボード配列が示されている。
【0004】英語、平仮名等の文字とアラビア数字と文字入力に頻繁に使用される一群のキー3が、キーボード基部2の左下部の主要領域を占めている。ここで、キーボード本体が英語キーボードであったとしたら英数字を印字される一群のキーが標準配列された略四辺形の領域を、「英数字キー領域」と呼ぶ(以下、同じ)。例えば、上記の主要領域が「英数字キー領域」に該当する。さらに、エスケープキー4とファンクションキー5とが英数字キー領域9の上方に並び、コントロールコード等の特殊キー6と矢印キー7が英数字キー領域9の右に並び、テンキー8が最右側に並ぶ。」(【0003】?【0004】の記載。)

c)「【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明に係るコンピュータのキーボード本体に取り付け可能なキーボード用装置は、キーボード本体が英語キーボードであったとしたら英数字を印字される一群のキーが標準配列された略四辺形の英数字キー領域を覆う柔軟材料製の膜部材を有し、前記膜部材の前記英数字キー領域の1辺を残して他の3辺が自由端になっており、英語でない言語の文字または数字がキーのトップに当接する部位に該言語の標準配列で印字されている、ものとした。
【0013】上記本発明の構成により、柔軟材料製の膜部材がキーボード本体が英語キーボードであったとしたら英数字を印字される一群のキーが標準配列された略四辺形の英数字キー領域を覆い、前記膜部材の前記英数字キー領域の1辺を残して他の3辺が自由端になり、英語でない言語の文字または数字がキーのトップに当接する部位に該言語の標準配列で印字されているので、膜部材が英数字キー領域を覆っている際には英語でない言語の文字または数字を目視確認しつつ英数字キー領域に配列された一群のキーを押してキー入力でき、膜部材を一辺を固定端として回転させた際にはキーに印字された文字または数字を目視確認しつつ英数字キー領域に配列された一群のキーを押してキー入力でき、キーボード用装置に印字された文字の言語とキーに印字された文字の言語とが異なっていれば簡易に複数の言語の文字のキー入力ができる。」(【0012】?【0013】の記載。)

d)「【0021】本発明の第一の実施形態に係るキーボード用装置を説明する。図1は、本発明の第一の実施形態の平面図である。図2は、本発明の第一の実施形態の側面断面図である。
【0022】キーボード用装置10は、コンピュータのキーボード本体1に取付可能なものであり、柔軟材料製の膜部材を有する。この柔軟材料性(審判注:「性」は誤記であり、正しくは「製」と認める。)の膜部材11は、少なくとも英数字キー領域9を覆っている。図1では、キーボード本体のキーボード本体基部とその上面に配列された英数字キー領域にある一群のキー3とエスケープキー4とファンクションキー5と特殊キー6と矢印キー7とテンキー8の全て覆った膜部材を有するキーボード用装置が図示されている。
【0023】このキーボード用装置10においては、膜部材11の前記英数字キー領域9の1辺を残して他の3辺が自由端になっている。図1では、一連に連なった切り込みが、略四辺形の形状をした英数字キー領域の下辺13と左辺12と右辺14とに設けられ、英数字キー領域が上辺15でその他の領域を覆った膜部材と一連に繋がっているキーボード用装置10が示されている。膜部材11は、キーボード本体基部の上表面と配列された一群のキーの形状とに倣う様に、凸凹状になっているのが好ましい。すなわち、仮に一連の切り込みがなかったとしたら、キーボード用装置10は、キーボードに埃等が進入するのを防止するキーボードカバーに類似している。
【0024】また、このキーボード用装置10においては、英語の言語以外の他言語の文字または数字がキーのトップに当接する部位に該他言語の標準配列で印字されている。図1では、韓国語の文字であるハングル文字が膜部材11のキーのトップに当接する部位に印字されているのが示されている。図1では、膜部材は透明素材でできており、下のキーボード本体のキーに印字された文字等が透けて見えるが、図示していない。例えば、キーボード本体は日本語JISキーボードである。
【0025】以下に、第一の実施形態のキーボード用装置の作用を説明する。キーボード本体が日本語キーボードであって、キーボード用装置の膜部材11にはハングル文字hが印字されているとして説明する。
(状態A)キーボード用装置10の膜部材11が、キーボード本体1の上面の全体を覆って、英数字キー領域も覆っている。パソコンのОS内では、ハングル文字のキー入力ドライバがアクティブになっており、ハングル文字のキー入力を可能な状態になっている。パソコンの使用者は、キーボード用装置の上に印字されたハングル文字を目視確認しつつキー3を膜部材越しに押すことにより韓国語のハングル文字をキー入力することができる。」(【0021】?【0025】の記載。)

e)「【0053】上述の第一、第二の実施形態のキーボード用装置、そのキーボード用装置を備えたキーボード、そのキーボードを備えたコンピュータを用いれば、複数のキーボードを用意しなくても、2つ以上の異なる言語のキー入力を、キーボード用装置の操作と入力ドライバの切換により、簡単におこなうことができる。また、第一の実施形態に係るキーボード用装置を用いれば、使用しない時にはキーボード用装置を外して、丸めて置けば収納にスペースをとらないし、持ち運びも容易である。また、第二の実施形態に係るキーボード用装置を用いれば、堅牢な構造にすることができるので、ハードな使用に耐えることが出来る。また、使用しない時にはキーボード用装置を外しておくこともできる。また、第三の実施形態に係るキーボード用装置を用いれば、堅牢な構造にすることができるので、ハードな使用に耐えることが出来る。また、コンパクトに折り畳むことができるので、使用時にスペースをとらない。また、使用しない時にはキーボード用装置を外しておくこともできる。また、第四の実施形態に係るキーボードを用いれば、堅牢な構造にすることができるので、ハードな使用に耐えることが出来、コンピュータのキー入力ドライバの自動的な切換にも対応できる。また、第五の実施形態に係るコンピュータを用いれば、キーボード用装置をキーボード本体に被せたり、外したりする操作により、自動的にキー入力ドライバを切り換えることができ、複数言語の同時入力を頻繁に行うことのできるコンピュータを実現できる。
【0054】本発明は以上に述べた実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。第一の実施形態において、英数字キー領域の上辺を残して左辺と下辺と右辺とを自由端としたがこれに限定されず、例えば、左辺を残して下辺と上辺と右辺とを自由端としてもよいし、その他の辺を残しても良い。また、第二乃至第五の実施形態で、上辺に沿った軸を中心にキーボード用装置を回転できる用にしたがこれに限定されず、例えば左辺に沿った軸を中心にキーボード用装置を回転させても、その他の辺に沿った軸を中心に回転させてもよい。また、第三乃至第五の実施形態において。キーボード用装置を二つ折りにしたがこれに限定されず、例えば、三つ折りや四つ折り等でもよい。また、第四の実施形態に係るキーボードにおいて、装置検知センサとインターフェースとを備えると説明したがこれに限定されず、装置検知センサとインターフェースを省いたキーボードであってもよい。また、膜部材は透明素材であると説明したがこれに限定されず、例えば、不透明な素材でも、半透明な素材でもよい。また、インターフェースをキーボードケーブルであると説明したがこれに限定されず、例えば、別個のケーブルでも赤外線等の無線でもよい。」(【0053】?【0054」】の記載。)

(引用例1記載の発明)
引用例1の特に第一の実施形態のキーボード用装置の膜部材に着目すれば、引用例1には次の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「異なる複数の言語の文字または数字をキーボード入力するのに好適なキーボード用装置の膜部材に関し、
キーボード1は、キーボード基部2と複数のキー3,4,5,6,7,8とを備え、
キーボード本体に取り付け可能なキーボード用装置は、キーボード本体が英語キーボードであったとしたら英数字を印字される一群のキーが標準配列された略四辺形の英数字キー領域を覆う柔軟材料製の膜部材を有し、
英語でない言語の文字または数字がキーのトップに当接する部位に該言語の標準配列で印字されている、ものとされ、
キーボード用装置10は、コンピュータのキーボード本体1に取付可能なものであり、柔軟材料製の膜部材を有し、この柔軟材料製の膜部材11は、少なくとも英数字キー領域9を覆っており、
膜部材11は、キーボード本体基部の上表面と配列された一群のキーの形状とに倣う様になっているものであり、
このキーボード用装置10においては、英語の言語以外の他言語の文字または数字がキーのトップに当接する部位に該他言語の標準配列で印字され、
膜部材は透明素材でできており、
キーボード用装置10の膜部材11が、キーボード本体1の上面の全体を覆って、英数字キー領域も覆っている状態において、パソコンの使用者は、キーボード用装置の上に印字された文字を目視確認しつつキー3を膜部材越しに押すことにより、該文字をキー入力することができる、
キーボード用装置を備えたキーボードを用いれば、複数のキーボードを用意しなくても、2つ以上の異なる言語のキー入力を、キーボード用装置の操作と入力ドライバの切換により、簡単におこなうことができ、
また、膜部材は半透明な素材でもよい、
キーボード用装置の膜部材。」

(引用例2)
原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願日前に頒布された刊行物である、登録実用新案第3103465号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に以下の記載がある。

f)「【0004】
本考案が解決しようとする課題の第1は、高齢者などパソコン入力に不慣れな人にも、キー入力を容易にし、負荷を少なく出来るアルファベットなどの新しいキー配列を有するキーボードシステムを実現することである。
【0005】
第2の課題は、広く市販されているパソコンを土台として、比較的簡易な方法で、高齢者などに適したキー配列のキーボードを実現し、簡単な操作で新しいキー配列と本来のキー配列を切り替えることを可能にすることである。」(【0004】?【0005】の記載。)

g)「【0007】
本考案にかかる日本語ローマ字入力キーボードでは、文字を母音、子音、数字、記号に分けて機能別のブロック毎にキーの色を変えて配置し、各ブロック内では規則性を持って文字を配置し、入力された文字を専用ソフトウェアによって正しく変換、表示する。
【0008】
前記ブロックは、左手操作部に母音ブロックを、右手操作部に子音および数字ブロックを配置する。
【0009】
前記ブロックに配置されるキーは、一つのキーには一つの文字あるいは機能のみを割り付ける。
【0010】
前記ブロック毎に配列が変更された文字を表示した透明ないし半透明のキーボードシートを市販パソコンのキーボード上に設ける。」(【0007】?【0010】の記載。)

h)「【0014】
第1の課題を解決するために考案した、市販のパソコン付属のキーボードでのキー配列と全く異なるキー配列について説明する。
【0015】
日本語をローマ字で入力する場合は、母音または母音と子音の組み合わせで入力するので図1に示すように、母音は母音ブロック1、子音は子音ブロック2としてまとめて文字を配し、かつ、母音ブロック1、子音ブロック2の内部においては、日本語の五十音に沿った規則的配列とする。数字は、ノート型パソコンでは横1列に、デスクトップ型パソコンではブロック状に配置されるのが通常であるが、本考案では、デスクトップ型と同様、数字ブロック3としてブロック状に配置する。
【0016】
文字を捜しやすくするために、前記のブロック毎にキーを色分けすることが有効である。たとえば、母音ブロック1を赤色、子音ブロック2を白色、数字ブロック3を緑色に、記号ブロックを黄色にする。各ブロックと色に関しては、ここに記載した以外の組み合わせであっても差し支えない。」(【0014】?【0016】の記載。)

i)「【0022】
第2の課題である比較的簡単な方法でキーの配列を変えることは、図2に示すようにパソコン付属のキーボード7上に新しい文字配列キー5を印刷等の方法で表示した透明または半透明のシート4を置くことにより実現する。キー5は印刷あるいは文字等を印刷したシールをシート4に貼ることで表示するが、使用による表示の摩滅を避けるために、シート4の下面側に表示することが望ましい。元のキー配列に戻すことは、シート4を取り去り、文字変換の専用ソフトウェアをオフにすることにより実現する。シート4に関しては配列を変更しないキーの表示が見える必要があることから、透明または半透明であることが必須である。
【0023】
前項記載の方法の一形態として、市販パソコンに普及している凹凸のついた防塵カバーを用いることも可能である。」(【0022】?【0023】の記載。)

j)「【0029】
文字を表示したシート4の材質については、キーボード7面上に置いた場合にキーボード7の平坦部分と密着状態を実現し、相対的なずれを防止するために、シリコンゴムなどのゴムあるいは樹脂製エラストマーが望ましい。さらに、シート4の厚さは、入力時のシート4の追随性を確保する観点より、一般的には0.1から0.3mm程度が望ましい。」(【0029】の記載。)

k)「【図2】 文字を印刷したシートを通常のパソコンに被着した使用例でのキーボード断面を示す概略図である。」(【0039】の記載。)

l)「【0040】
1 母音ブロック
2 子音ブロック
3 数字ブロック
4 シート
5 シート上に印刷されたキー
6 キートップ
7 キーボード本体」(【0040】の記載。)

(引用例2記載の発明)
上記引用例2の摘記事項からは、以下のことがいえる。
(1)【0014】、【0022】の記載によれば、「キーボードシート」は、「キーボードでのキー配列と全く異なるキー配列」とするために「キーボード7上に新しい文字配列キー5を印刷等の方法で表示した透明または半透明のシート4を置」かれるものであるから、「キーボードのキー配列を変えるためにキーボード上に設ける、キーボードのキー配列と異なるキー配列としたキーボードシート」といい得るものである。
(2)図2からすれば、
・各キートップ6が間隔をあけて配置されていること
・キーボード本体7の表面は平坦であり、当該表面が平坦なキーボード本体7の上に平坦なシート4が配置されていること
・平坦なシート4は、「シート上に印刷されたキー」5が、キートップ6に対応する位置に間隔をあけて設けられていること
が見てとれるから、「キーボードシート」は、「表面が平坦で、キートップ6が間隔をあけて配置されたキーボード本体7の上に、前記キートップ6に対応する位置に間隔をあけて「シート上に印刷されたキー」5を設けた平坦なシート」といい得るものである。
(3)【0022】の記載によれば、シートは、「新しい文字配列キー5を印刷等の方法で表示した透明または半透明のシート4」であり、「キー5は印刷」「で表示するが、使用による表示の摩滅を避けるために、シート4の下面側に表示」するものであり、【0029】の記載によれば、シートは、「キーボード7面上に置いた場合にキーボード7の平坦部分と密着状態を実現」するから、「キーボードシート」は、「「シート上に印刷されたキー」5は、使用による表示の摩滅を避けるために、シート4の下面側に印刷で表示した、透明または半透明で、キーボード7の平坦部分と密着状態となるキーボードシート」といい得るものである。

してみると、引用例2には次の発明(以下、「引用例2記載の発明」という。)が記載されている。
「キーボードのキーの配列を変えるためにキーボード上に設ける、キーボードのキー配列と異なるキー配列としたキーボードシートであって、
表面が平坦で、キートップ6が間隔をあけて配置されたキーボード本体7の上に、前記キートップ6に対応する位置に間隔をあけて「シート上に印刷されたキー」5を設けた平坦なシートであり、
「シート上に印刷されたキー」5は、使用による表示の摩滅を避けるために、シート4の下面側に印刷で表示した、透明または半透明で、キーボード7の平坦部分と密着状態となるキーボードシート。」

4.対比、一致点、相違点
そこで、本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比する。

あ)「任意の言語環境に基づいた基準キー表示が設けられた複数のキーから構成されるキーボードを覆い、かつ可塑性を有するシートにおいて」について

引用例1記載の発明では、「キーボード本体が英語キーボードであったとしたら英数字を印字される一群のキーが標準配列された略四辺形の英数字キー領域」を有するものであるから、引用例1記載の発明の「キーボード本体」は、本願補正発明の「任意の言語環境に基づいた基準キー表示が設けられた複数のキーから構成されるキーボード」といい得るものである。
また、引用例1記載の発明では、「キーボード本体に取り付け可能なキーボード用装置は、キーボード本体が英語キーボードであったとしたら英数字を印字される一群のキーが標準配列された略四辺形の英数字キー領域を覆う柔軟材料製の膜部材を有」するものであるから、引用例1記載の発明の「キーボード用装置の膜部材」は本願補正発明の「キーボードを覆い、かつ可塑性を有するシート」といい得るものである。
したがって、引用例1記載の発明の「キーボード用装置の膜部材」は、本願補正発明の「任意の言語環境に基づいた基準キー表示が設けられた複数のキーから構成されるキーボードを覆い、かつ可塑性を有するシート」といい得るものである。

い)(シートにおいて、)「前記各キーと対向する領域に、前記任意の言語環境とは異なる言語環境に基づいたオプションキー表示が前記キーボードを覆った際にオペレータが視認可能に設けられ」について

引用例1記載の発明の「キーボード用装置の膜部材」は、「キーボード本体が英語キーボードであった」場合に、「英語でない言語の文字または数字がキーのトップに当接する部位に該言語の標準配列で印字されている、ものとされ」ており、「パソコンの使用者は、キーボード用装置の上に印字された文字を目視確認しつつキー3を膜部材越しに押す」ものであるから、引用例1記載の発明の「キーボード用装置の膜部材」は、本願補正発明の(シートにおいて、)「前記各キーと対向する領域に、前記任意の言語環境とは異なる言語環境に基づいたオプションキー表示が前記キーボードを覆った際にオペレータが視認可能に設けられ」るといい得る構成を有するといえる。

う)「前記シートは、全面が平坦あり、かつ透明あるいは半透明なシート材で形成されるとともに、隣り合う前記各オプションキー表示の間に隙間が形成されている」について

引用例1記載の発明の「キーボード用装置の膜部材」は透明素材でできており、」「また、膜部材は半透明な素材でもよい」ものであることは、本願補正発明の「前記シートは、」「透明あるいは半透明なシート材で形成される」といい得るものである。
もっとも、引用例1記載の発明は、「膜部材11は、キーボード本体基部の上表面と配列された一群のキーの形状とに倣う様になっているものであ」るが、「全面が平坦」とはしていない点で、また、「隣り合う前記各オプションキー表示の間に隙間が形成されている」とはしていない点で本願補正発明と相違する。

え)一致点、相違点
以上の対比結果によれば、本願補正発明と引用例1記載の発明とは、

(一致点)
「任意の言語環境に基づいた基準キー表示が設けられた複数のキーから構成されるキーボードを覆い、かつ可塑性を有するシートにおいて、
前記各キーと対向する領域に、前記任意の言語環境とは異なる言語環境に基づいたオプションキー表示が前記キーボードを覆った際にオペレータが視認可能に設けられ、
前記シートは、透明あるいは半透明なシート材で形成されることを特徴とするシート。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明のシートは、「全面が平坦」であり、「隣り合う前記各オプションキー表示の間に隙間が形成されている」ものであるのに対して、引用例1記載の発明のシート(膜部材)は、そのような構成とされていない点。

5.判断
「全面が平坦であるキーボード」は、原出願の出願日前周知のものである。(先に示した引用例2の図2にも「全面が平坦であるキーボード」が示されている。)
そして、引用例1記載の発明が、全面が平坦である上記周知のキーボードに対しても有用かつ採用可能であることは、当業者に明らかである。
そうすると、引用例1記載の発明の「キーボード用装置の膜部材」を「全面が平坦であるキーボード」用のものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、そのようにする場合、引用例1記載の発明の「キーボード用装置の膜部材」も、「全面が平坦であるキーボード」の平坦な形状に倣う様に(引用例1記載の発明でも、「膜部材11は、キーボード本体基部の上表面と配列された一群のキーの形状とに倣う様になっている」。)「全面が平坦」なものとすることは自然なことであり、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、引用例1記載の発明の「キーボード用装置の膜部材」を(全面が平坦であるキーボード用に)全面が平坦なものとする際、「膜部材」に印字された「隣り合うキー表示の間に隙間を形成すること」も、以下の点からすれば、当業者が容易になし得たことというべきである。
(1)引用例2には、「キーボードのキーの配列を変えるためにキーボード上に設ける、キーボードのキー配列と異なるキー配列としたキーボードシートであって、
表面が平坦で、キートップ6が間隔をあけて配置されたキーボード本体7の上に、前記キートップ6に対応する位置に間隔をあけて「シート上に印刷されたキー」5を設けた平坦なシートであり、
「シート上に印刷されたキー」5は、使用による表示の摩滅を避けるために、シート4の下面側に印刷で表示した、透明または半透明で、キーボード7の平坦部分と密着状態となるキーボードシート。」の発明が示されている。
すなわち、表面が平坦で、キートップ6が間隔をあけて配置されたキーボードと、そのようなキーボード上に、前記キートップ6に対応する位置に間隔をあけて「シート上に印刷されたキー」5を設けた平坦なキーボードシートをキーボードの平坦部分と密着状態で設ける技術思想は、原出願の出願日前公知のことである。
(2)引用例2記載の発明は、「キーの配列を変える」ものであるから、引用例2記載の発明において、「キートップ6」の文字と「シート4」の前記キートップと対応する位置に「印字されたキー5」の文字とが異なっているものであり、また、引用例1記載の発明は、「簡易に複数の言語の文字のキー入力ができる」ようにするために、「キーボード用装置の膜部材」に印字された文字の言語と「キーボード本体のキー」に印字された文字の言語とが異なっているものであるから、引用例1記載の発明と引用例2記載の発明は共に、キーボードのキーの文字と異なる文字を印刷した膜部材(シート)をキーボード上に配置することにより、利用者にキーボードのキーの文字とは異なる文字を視認させる点で共通するものであり、このことからすれば、引用例1記載の発明の「キーボード用装置の膜部材」を(全面が平坦であるキーボード用に)全面が平坦なものとする際に、上記引用例2に記載された技術思想を適用する動機付けはあるということができる。
(3)そして、引用例1記載の発明に上記引用例2に記載された技術思想を適用したものは、「全面が平坦」であり、「隣り合う前記各オプションキー表示の間に隙間が形成されている」シートとなるから、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用して、本願補正発明の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、上記相違点に係る本願補正発明の構成に基づく本願補正発明の効果に付いてみても、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用した場合に予想される効果を超えるものとは認められない。

以上のとおり、本願補正発明は、引用例1記載の発明および引用例2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成25年11月12日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年6月11日付の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
任意の言語環境に基づいた基準キー表示が設けられた複数のキーから構成されるキーボードを覆い、かつ可塑性を有するシートにおいて、
前記各キーと対向する領域に、前記任意の言語環境とは異なる言語環境に基づいたオプションキー表示が前記キーボードを覆った際にオペレータが視認可能に設けられ、全面が平坦であることを特徴とするシート。」

2.引用例の記載、引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、引用例1、引用例2は、上記「第2.」の「3.引用例の記載、引用例記載の発明」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2.」で検討した本願補正発明が、「前記シートは、全面が平坦あり、かつ透明あるいは半透明なシート材で形成されるとともに、隣り合う前記各オプションキー表示の間に隙間が形成されている」としたものを「全面が平坦である」とするものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.」「5.判断」に記載したとおり、引用例1記載の発明および引用例2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1記載の発明および引用例2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明および引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-28 
結審通知日 2014-12-02 
審決日 2014-12-15 
出願番号 特願2012-132289(P2012-132289)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 笠田 和宏山崎 慎一  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 山田 正文
千葉 輝久
発明の名称 シート、キーボード、電子機器  
代理人 伊藤 剣太  
代理人 香島 拓也  

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