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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1297119
審判番号 不服2013-23767  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-03 
確定日 2015-02-05 
事件の表示 特願2010-241395「入力装置及び入力装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月10日出願公開、特開2011- 48846〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成21年8月27日の出願である特願2009-197444号の一部を、平成22年10月27日に新たな特許出願としたものであって、平成24年12月26日付けで拒絶理由が通知され、平成25年3月11日付けで手続補正がなされたが、同年8月26日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年12月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年3月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「タッチセンサと、
前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、
前記タッチ面を振動させる触感呈示部と、
前記荷重検出部により検出される押圧荷重が基準を満たした際に、前記タッチ面を押圧している押圧対象が押圧位置に依存しない一定振幅の振動による触感を得られるように、前記触感呈示部の駆動を前記押圧位置に応じて制御する制御部と、
を備えることを特徴とする入力装置。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開2005-258666号公報(以下「引用例」という。)には、次の記載がある。

「【要約】
【課題】 本発明は触覚機能付の入力装置および電子機器並びに電子機器の感触フィードバック入力方法において、複数個配設された振動発生手段に与える振動波形のタイミングや強さをコントロールすることにより、面内のどの位置でもほぼ同一な振動フィードバックを得る様にする。
【解決手段】 電子機器を構成するPDA1の筐体2のタッチパネル4とLCD6の間に複数のアクチュエータ5A?5Dを配設し、触覚を生成する複数個の振動発生手段15A?15D、16A?16Dと、それらを各々独立に制御する振動制御手段14内のプロセッサ18により、入力情報S1をもとに、各々の振動発生手段15A?15D、16A?16Dに最適な振動波形が振動制御手段14から出力されることにより、単一の振動発生手段及び振動制御手段14では実現出来ない効果をユーザに付与する。すなはち、大きな面積をもつ平面状の入出力装置において、操作面内のどの位置でもほぼ同一な振動フィードバックを得る様にする。」

「【請求項1】
コンピュータを介して、複数のアクチュエータに感触フィードバックが成される入力装置であって、
上記コンピュータに少なくとも位置情報を供給する入力操作手段と、
上記入力操作手段内の所定位置に配設した複数のアクチュエータと、
上記複数のアクチュエータに供給する複数の駆動信号を発生するための駆動信号発生手段と、
上記コンピュータの指令データに基づいて上記複数のアクチュエータに上記駆動信号を出力し、上記入力操作手段を振動させる振動制御手段と、
上記振動制御手段内に配設され、上記複数のアクチュエータを駆動する複数のアクチュエータ駆動手段と、
を具備し、
上記振動制御手段内の複数のアクチュエータ駆動手段を介して、上記入力操作手段の複数に分割した夫々の操作領域内で振動量を制御することでユーザの触感を同一にする様にしたことを特徴とする入力装置。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚機能付の入力装置および電子機器並びに電子機器の感触フィードバック入力方法に係わり、特に、入力装置の広い操作領域のどの部分をタッチしても同じ強さの感触フィードバックをユーザに与える様に成した、入力装置および電子機器並びに電子機器の感触フィードバック入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入力装置としてタッチパネルと画像表示部(LCD等)の間に圧電バイモルフ型のアクチュエータを配置し、アクチュエータを励磁することでユーザに触感フィードバックを与えるようにし、押圧操作を行った場所や操作力によって入力装置側からの反応を異なったものとし、それによって操作感を多彩なものとする様にした技術が特許文献1に開示されている。

・・・(中略)・・・

【0007】
このようにして領域判定信号SRと操作力判定信号FBとによってひとつの駆動モード波形が選択されると、その駆動モード波形を規定するパラメータ値が駆動モード記憶部73から読出され、1つの圧電素子駆動部75に与えられる。それに応じて圧電素子E1?E4に振動電圧が与えられて圧電素子E1?E4が振動または微少変形するとともに、その振動または微少変位が操作部74のタッチパネルに伝播する。これは、ユーザが操作領域R1?R7のいずれかを所定以上の力で押下したときに、操作部74のタッチパネルを振動させ、その操作が受け付けられたことをユーザに触覚的に知らせることになる。

・・・(中略)・・・

【0010】
上述の図10および図11並びに図12示した従来構成によると、複数の圧電素子を異なるモード波形で駆動することや操作面77上を指でスライドすることで、強弱の異なる感触を得ることが可能な電子機器が示されているが、複数の圧電素子を複数の圧電素子駆動部75を介して、複数の圧電素子に異なる振動指令信号を出力する構成の開示はない。上述の従来技術の様な複数の振動指令信号で複数の圧電素子を励振するとき下記の様な問題点を生ずる。

・・・(中略)・・・

【0012】
また、比較的大きなサイズを持つ入力エリアの場合、たとえば、入力エリアが略矩形状のタッチパネルで、四隅にアクチュエータを配設した場合は矩形状の入力エリアの中央部分が略矩形形状の機械的な共振のため大きく撓む。一方で入力エリアの上下部分は撓み量が小さいため、複数のアクチュエータに同一の振動指令波形を与えても入力エリア全体を均一に励振させることが困難となる

・・・(中略)・・・

【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は叙上の課題を解消するために成されたもので、複数のアクチュエータに同一の振動指令波形を与えても入力エリア全体を均一に励振させることが困難となるが本発明では、入力エリアのどの点においても略同一の強さの触感が得られるように、各アクチュエータに対する振動指令信号を最適化している。また、アクチュエータの消費電力を抑えるために駆動するアクチュエータの数を選択すると共に、ユーザが受ける特殊な感触を簡単な回路構成で得ようとするものである。」

「【発明を実施するための最良の形態】

・・・(中略)・・・

【0022】
図1は電子機器としてのPDAを示すもので、入力装置としてはタッチパネルからなる、LCD等の表示装置および可撓性のあるフィルムシートから構成されている。

・・・(中略)・・・

【0025】
図1及び図2において、PDA1の電源スイッチ7をオンすると、通常LCD6の画面上にアイコン9が現れ、ユーザはこのアイコン9を選択することでPDA1が有する機能を選択する。アイコン9の選択は、LCD6上に設けられたタッチパネル4の座標(ユーザが触れた部分)によって行なわれる。また、PDA1の機能が選択された後も、主にLCD6上に表示される操作案内によりタッチパネル4を操作することで必要な情報を入力することができる。また、筐体2上の入力キー群8の機能をLCD6上に表示し、それをユーザが選択することによって機能の選択を行なう様にしてもよい。いずれの場合もユーザの意思は、ユーザがタッチパネル4に触れたときのタッチパネル上の座標により特定される。
【0026】
ユーザがタッチパネル4に触れた際、アクチュエータ5に振動指令を与えタッチパネル4を励振させることでユーザに対して振動している感触を与える。たとえば、入力操作に対するアクナレッジのような感触フィードバックをユーザに提示できるようになっている。

・・・(中略)・・・

【0039】
上述の構成で、例えば、ユーザがタッチパネル4のエリアEを触れたとすると、その座標値から、振動制御手段14は図7(A)の5A?5Dにあるようなパターンの振動指令信号であるサイン波22を各アクチュエータ5A、5Cと5B、5Dに出力する。またユーザがエリアBに触れた場合は、同様に図7(B)にあるパターンの指令値である互いに位相の異なるサイン波22,23がアクチュエータ5A、5Cおよび5B、5Dに出力される。その結果として、ユーザはどの領域を触れたとしても、ほぼ同様な強さを持つ触感的なアクナレッジ感(クリック感)を得ることができる。」

そして、引用例の上記記載事項を、関連図面と技術常識に照らせば、以下のことがいえる。
(1)引用例の図1?6等に示される「入力装置」に設けられている「複数のアクチュエータ」は、当然にタッチパネルのタッチ面を振動させるものである。
(2)引用例の【要約】欄、【請求項1】、段落【0014】、【0039】、図4等の記載からみて、引用例に示される「『コンピュータ』及び『振動制御手段』」は、「タッチ面をタッチしている『ユーザのタッチ部位』がタッチ位置に依存しない一定振幅の振動による触感を得られるように、複数のアクチュエータの駆動をタッチ位置に応じて制御する」ことが可能なものである。

以上を踏まえると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「タッチパネルと、
前記タッチパネルのタッチ面を振動させる複数のアクチュエータと、
前記タッチ面をタッチしている『ユーザのタッチ部位』がタッチ位置に依存しない一定振幅の振動による触感を得られるように、複数のアクチュエータの駆動をタッチ位置に応じて制御するコンピュータ及び振動制御手段と、
を備える入力装置。」

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
(1)引用発明の「タッチパネル」は、本願発明の「タッチセンサ」に相当する。
(2)引用発明の「複数のアクチュエータ」は、本願発明の「触感呈示部」に相当する。
(3)本願明細書の段落【0022】等の記載から明らかなように、本願発明でいう「押圧対象」は、「ユーザの指」等であって、「タッチセンサのタッチ面をタッチしている『ユーザのタッチ部位』」でもあるから、引用発明の「タッチ面をタッチしている『ユーザのタッチ部位』」と本願発明の「タッチ面を押圧している押圧対象」は、「タッチセンサのタッチ面をタッチしている『ユーザのタッチ部位』」である点で共通する。また、本願発明でいう「押圧位置」は「タッチ位置」でもある。
(4)以上のことを踏まえると、引用発明における「タッチパネルのタッチ面をタッチしている『ユーザのタッチ部位』がタッチ位置に依存しない一定振幅の振動による触感を得られるように、複数のアクチュエータの駆動をタッチ位置に応じて制御する」ことと、本願発明における「前記タッチ面を押圧している押圧対象が押圧位置に依存しない一定振幅の振動による触感を得られるように、前記触感呈示部の駆動を前記押圧位置に応じて制御する」こととは、「前記タッチ面をタッチしている『ユーザのタッチ部位』がタッチ位置に依存しない一定振幅の振動による触感を得られるように、前記触感呈示部の駆動をタッチ位置に応じて制御する」ことである点で共通する。
(5)引用発明の「コンピュータ及び振動制御手段」は、本願発明の「制御部」と同様に、全体として「制御部」ともいい得る。

以上によれば、本願発明と引用発明の間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「タッチセンサと、
前記タッチセンサのタッチ面を振動させる触感呈示部と、
前記タッチ面をタッチしている『ユーザのタッチ部位』が、タッチ位置に依存しない一定振幅の振動による触感を得られるように、前記触感呈示部の駆動を前記タッチ位置に応じて制御する制御部と、
を備える入力装置。」

(相違点)
本願発明は、「タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部」を有するものであり、本願発明の「制御部」は、「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が基準を満たした際に、前記タッチ面を押圧している押圧対象が押圧位置に依存しない一定振幅の振動による触感を得られるように、前記触感呈示部の駆動を前記押圧位置に応じて制御する」ものであるのに対し,引用発明は、「タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部」を有するものではなく、引用発明の「制御部」は、「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が基準を満たした際に、前記タッチ面を押圧している押圧対象が押圧位置に依存しない一定振幅の振動による触感を得られるように、前記触感呈示部の駆動を前記押圧位置に応じて制御する」ものではない点。

4.判断
(1)(相違点)について
以下の事情を総合すると、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことというべきである。
ア.引用例の段落【0007】の「これは、ユーザが操作領域R1?R7のいずれかを所定以上の力で押下したときに、操作部74のタッチパネルを振動させ、その操作が受け付けられたことをユーザに触覚的に知らせることになる。」という記載や、原査定において周知技術を示す例として挙げられた特開平11-212725号公報の要約欄の「所定の閾値より大きい操作力が検知されたとき、圧電素子E1?E4に高周波が与えられ、それによって操作面11が振動する。操作者はその振動により、確実な操作感を得ることができる。」という記載からも分かるように、引用発明や本願発明と同様に「タッチセンサと前記タッチセンサのタッチ面を振動させる触感呈示部」とを備える入力装置といえる装置において、「タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重が基準を満たした際に、押圧対象が振動による触感を得られるようにする」ことは、本願出願前に周知であった(以下、「タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重が基準を満たした際に、押圧対象が振動による触感を得られるようにする」技術を、「周知技術A」という。)。
イ.ここで、上記周知技術Aは、押圧荷重が基準に満たないタッチでは操作を受け付けないようにしたものであり、ユーザの意図しないタッチによる誤操作を防止するための技術であるといえるが、そのような周知技術Aが引用発明においても有用かつ採用可能であることは当業者に明らかであるから、引用発明において上記周知技術Aを採用することは、当業者が容易に推考し得たことである。
ウ.そして、引用発明において上記周知技術Aを採用するということは、引用発明を、「タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部」を有するものとし、引用発明の「制御部」を、「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が基準を満たした際に、前記タッチ面を押圧している押圧対象が押圧位置に依存しない一定振幅の振動による触感を得られるように、前記触感呈示部の駆動を前記押圧位置に応じて制御する」ものとすることにほかならず、そのことは、引用発明において上記相違点に係る本願発明の構成を採用することにほかならない。
なお、審判請求人は、「引用発明は、ユーザがどの領域を「触れた」としても同様な強さを持つ触感的なアクナレッジ感を得ることができないという課題を意識したものであって、ユーザがどの領域を「押圧した」としても同様な強さを持つ触感的なアクナレッジ感を得ることができないという本願発明と共通する課題を意識したものではない」旨主張し、それを根拠に本願発明が進歩性を有する旨主張するが、その主張は採用できない。
なぜならば、引用発明自体が「ユーザがどの領域を「押圧した」としても同様な強さを持つ触感的なアクナレッジ感を得ることができない」という課題を意識して発明されたものでなくても、上記周知技術Aを当然に知っているであろう当業者にとっては、引用発明において上記周知技術Aを採用することは上述したように容易であって、引用発明おいて上記周知技術Aを採用すれば、上記相違点に係る本願発明の構成は導出されるからである。

(2)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が容易に想到し得た構成のものが奏するであろうと当業者が予測し得る範囲を超えるものではなく、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-27 
結審通知日 2014-12-02 
審決日 2014-12-15 
出願番号 特願2010-241395(P2010-241395)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 大志  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 千葉 輝久
小曳 満昭
発明の名称 入力装置及び入力装置の制御方法  
代理人 杉村 憲司  
代理人 大倉 昭人  

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