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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60C
管理番号 1297131
審判番号 不服2014-1000  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-21 
確定日 2015-02-05 
事件の表示 特願2007-100095「自動二輪車用ラジアルタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月23日出願公開、特開2008-254623〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成19年4月6日の出願であって、平成25年10月11日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年1月21日に審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

2.本願発明について

(1)本願発明

平成26年1月21日付けの手続補正による補正は、明細書についてのみ誤記の訂正を目的としたものであるので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年4月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「【請求項1】
その外面がトレッド面をなすトレッドと、このトレッドの半径方向内側に位置するベルトと、一対のビードと、両側のビードに架け渡されたカーカスとを備えており、
このベルトが、ベルトプライを備えており、
このベルトプライが全体として、このカーカスと積層されており、
このベルトプライが、センター部と、このセンター部の軸方向外側に位置する一対のサイド部とから構成されており、
このセンター部が、このトレッドのセンター領域の内側に位置しており、
このサイド部が、このトレッドのショルダー領域の内側に位置しており、
このセンター部が、実質的に周方向に沿って螺旋巻きされたセンターコードとトッピングゴムとからなり、
このサイド部が、実質的に周方向に沿って螺旋巻きされたサイドコードとトッピングゴムとからなり、
このセンターコードの曲げ剛性が、このサイドコードの曲げ剛性よりも小さく、
このセンター部の周長の、このベルトプライの周長に対する比が、0.3以上0.5以下である自動二輪車用ラジアルタイヤ。」

(2)引用例

(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-104906号公報(平成5年4月27日公開、以下、「引用例1」という。)には、「自動二輪車用タイヤ」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【請求項1】トレッド部からサイドウォール部を通りビード部のビードコアの周りを折返すカーカスと、トレッド部の内部かつカーカスの半径方向外側に配されるベルト層とを具える自動二輪車用タイヤであって、前記ベルト層は、1本以上かつ長尺の低弾性コードをトッピングした小巾の低弾性帯状プライと、前記低弾性コードに比べて高弾性のかつ1本以上の長尺の高弾性コードをトッピングした小巾の高弾性帯状プライとをタイヤ軸方向に並べて同時にかつタイヤ赤道に対して小角度傾けて螺旋巻することにより形成されたベルトプライからなることを特徴とする自動二輪車用タイヤ。」

・「【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような帯状プライは、従来、図8に示す如く、トッピングされた単一の種類のコードを一端から順次螺旋巻をすることによりベルト層を形成しており、ベルト層のエンズ数は前記コードの太さによって一定の値となる結果、ベルト層の剛性は、コードの材質及び繊度によって自ずと定まることとなる。即ち、エンズを意図的にコントロール出来ない状態にあった。
【0004】他方、自動二輪車用タイヤは、近年その用途によって多様化しつつある。例えば高速道路の走行を主体とした高速道路用、超高速域での走行を可能としたスポーツ車用、旋回性の安定を目指した、カーブの多い一般道路用など、それぞれの用途に応じてトレッド部の剛性を態応させる必要が生じたのである。
【0005】しかし前記構成による帯状プライではコードの選定によりトレッド部の剛性は一定化し、前記したそれぞれの要請に対して対応しえないという問題が生じたのである。
【0006】本発明は、低弾性コードからなる低弾性帯状プライと、高弾性コードを用いた高弾性帯状プライとを並べてかつ同時に螺旋巻することによってベルト層を形成することを基本として、同じサイズのタイヤであってもトレッド部の剛性を所望の値に自由に設定でき、前記要請を充足しうる空気入りタイヤの提供を目的としている。」

・「【0010】又前記螺旋巻きに際して、低弾性帯状プライと、高弾性帯状プライとをタイヤ軸方向に並べてかつ同時に巻付けている。従って両プライの組合わせによりトレッド部の剛性値を随意に設定することが出来るため、タイヤサイズ及びタイヤ断面寸法が同じであっても、一般路走行用、高速路走行用、スポーツ用など用途に応じた複数の、しかも走行特性をバランスさせたタイヤを提供することが可能となる。」

・「【0012】前記カーカス5は、カーカスコードをタイヤ赤道Cに対して、本実施例では70?90°の角度で傾斜させたラジアル又はセミラジアル配列の1枚以上、本実施例では1枚のカーカスプライからなり、カーカスコードはナイロン、レーヨン、ポリエステル、芳香族ポリアミド等の有機繊維コードが用いられる。」

・「【0022】図6は、ベルト層7をトレッド部の中央領域Mとショルダ領域Sとにおいて低弾性帯状プライ11と高弾性帯状プライ12の組合わせを異にした2種類のベルトプライ7B、7Cによって形成した他の実施例を示す。
【0023】本例ではタイヤ赤道Cを挟んでトレッド部巾WTの0.2倍?0.4倍の巾Lを有する中央領域のベルトプライ7Bと、その両側に配されるショルダ領域のベルトプライ7C、7Cとからなる。前記中央領域のベルトプライ7Bにあっては、図8に示す如く、1本の高弾性帯状プライ12を挟む両側にそれぞれ低弾性帯状プライ11、11を配した3本の帯状プライを螺旋巻することにより形成する一方、ショルダ領域のベルトプライ7Cは図2に示す2本の高弾性帯状プライ12、12と1本の低弾性帯状プライ11とからなる3本の帯状プライの螺旋巻によって形成する。
【0024】なおベルトプライ7B、7C間にはこれらのベルトプライ7B、7Cを跨がる小巾の補強層17を設けて補強している。
【0025】このように形成されたベルト層7は、トレッド部2の中央領域Mの弾性がショルダ領域Sの弾性よりも小となる結果、バンク角を有して走行する旋回時において旋回走行安定性を低下させることなく、しかも直進時における乗心地を高めることが出来る。」

この記載によると、引用例1には、

「トレッド部からサイドウォール部を通りビード部のビードコアの周りを折返す、カーカスコードをタイヤ赤道Cに対して、90°の角度で傾斜させたラジアル配列とされたカーカスと、トレッド部の内部かつカーカスの半径方向外側に配されるベルト層とを具える自動二輪車用タイヤであって、ベルト層7は、1本以上かつ長尺の低弾性コードをトッピングした小巾の低弾性帯状プライと、前記低弾性コードに比べて高弾性のかつ1本以上の長尺の高弾性コードをトッピングした小巾の高弾性帯状プライとをタイヤ軸方向に並べて同時にかつタイヤ赤道に対して小角度傾けて螺旋巻することにより形成されており、タイヤ赤道Cを挟んでトレッド部巾WTの0.2倍?0.4倍の巾Lを有し、1本の高弾性帯状プライ12を挟む両側にそれぞれ低弾性帯状プライ11、11を配した3本の帯状プライを螺旋巻することにより形成された中央領域のベルトプライ7Bと、その両側に配され、2本の高弾性帯状プライ12、12と1本の低弾性帯状プライ11とからなる3本の帯状プライの螺旋巻によって形成されたショルダ領域のベルトプライ7C、7Cとからなる、自動二輪車用タイヤ。」の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(2-2)また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-22374号公報(平成19年2月1日公開、以下、「引用例2」という。)には、「自動二輪車用空気入りラジアルタイヤ」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【請求項1】
一対のサイドウォール部、両サイドウォール部にトロイダルに連なるトレッド部および、各サイドウォール部の内周側に設けたビード部を具え、タイヤ赤道面に対して75°?90°の範囲の角度で延在する有機繊維コードからなる一枚以上のカーカスプライにより形成され、両側部部分を、ビード部に埋設したビードコアの周りに巻上げて係止されて、上記の各部を補強するラジアルカーカスを設けるとともに、このラジアルカーカスのクラウン域の外周側に、非伸長性コードを、そのクラウン域の周方向への延在姿勢で、幅方向へ螺旋状に巻回してなるスパイラルコード層の一層で形成した主ベルトを設けてなる、偏平率が80%以下の自動二輪車用空気入りラジアルタイヤであって、
主ベルトの内周側で、上記クラウン域の中央部分に、タイヤ赤道面に対して40°?90°の範囲の角度で延在する有機繊維コードからなる一層の中央部分補助ベルト層を配設するとともに、そのクラウン域の両側部部分に、タイヤ赤道面に対して40°?90°の範囲の角度で延在する高弾性コードからなる一層のそれぞれの側部部分補助ベルト層を配設し、
それらの側部部分補助ベルト層のそれぞれの高弾性コードを相互に交差する向きに延在させるとともに、両側部部分補助ベルト層の、トレッド部踏面に沿う配設間隔を、その踏面の沿面幅の20%?50%の範囲とし、各側部部分補助ベルト層の内側縁と、中央部分補助ベルト層の側縁とを、相互にオーバラップさせることなく配置してなる自動二輪車用空気入りラジアルタイヤ。」

・「【0012】
ここで好ましくは、主ベルトの非伸長性コードを、スチールコードまたは、コード強力が130N以上の、アラミド繊維コード等の有機繊維コードとし、また好ましくは、中央部分補助ベルト層の有機繊維コードを、コード強力が80N以上の、たとえばナイロン、レーヨン等の繊維コードとする。
【0013】
そしてまた好ましくは、側部部分補助ベルト層の高弾性コードを、スチールコードまたは、コード強力が80N以上、より好適には100N以上の有機繊維コード、たとえばアラミド繊維コードとする。」

(3)対比
本願発明と引用例1記載の発明を対比すると、後者における「トレッド部」、「ベルト層」、「ビードコア」、「カーカス」は、前者における「トレッド」、「トレッドの半径方向内側に位置するベルト」、「ビード」、「カーカス」に相当する。
また、後者における「タイヤ赤道Cを挟んでトレッド部巾WTの0.2倍?0.4倍の巾Lを有」する「中央領域のベルトプライ7B」、「その両側に配さ」れた「ショルダ領域のベルトプライ7C、7C」は、それぞれ、前者における「ベルトブライ」の、「トレッドのセンター領域の内側に位置」する「センター部」、「トレッドのショルダー領域の内側に位置」する「サイド部」に相当する。
また、後者において、「ベルト層」は、「トレッド部の内部かつカーカスの半径方向外側に配される」ので、前者における「ベルトプライが全体として、このカーカスと積層されて」いるとの構成を有するといえる。
また、後者において「中央領域のベルトプライ7B」が、「低弾性コードをトッピングした小巾の低弾性帯状プライ」と、「高弾性コードをトッピングした小巾の高弾性帯状プライ」とを「タイヤ軸方向に並べて同時にかつタイヤ赤道に対して小角度傾けて螺旋巻することにより形成され」、「1本の高弾性帯状プライ12を挟む両側にそれぞれ低弾性帯状プライ11、11を配した3本の帯状プライを螺旋巻することにより形成され」ていることは、前者において、「センター部が、実質的に周方向に沿って螺旋巻きされたセンターコードとトッピングゴムとからな」ることに相当する。
また、後者において「ショルダ領域のベルトプライ7C、7C」が、「低弾性コードをトッピングした小巾の低弾性帯状プライ」と、「高弾性コードをトッピングした小巾の高弾性帯状プライ」とを「タイヤ軸方向に並べて同時にかつタイヤ赤道に対して小角度傾けて螺旋巻することにより形成され」、「2本の高弾性帯状プライ12、12と1本の低弾性帯状プライ11とからなる3本の帯状プライの螺旋巻によって形成され」ていることは、前者において、「サイド部が、実質的に周方向に沿って螺旋巻きされたサイドコードとトッピングゴムとからな」ることに相当する。
また、後者において、「中央領域のベルトプライ7B」が「タイヤ赤道Cを挟んでトレッド部巾WTの0.2倍?0.4倍の巾Lを有」することは、前者において、「センター部の周長の、このベルトプライの周長に対する比が、0.3以上0.5以下である」ことに相当する。
また、後者における「自動二輪車用タイヤ」は、「カーカス」が「カーカスコードをタイヤ赤道Cに対して、90°の角度で傾斜させたラジアル配列とされ」ているので、前者における「自動二輪車用ラジアルタイヤ」に相当する。

したがって、両者は、「その外面がトレッド面をなすトレッドと、このトレッドの半径方向内側に位置するベルトと、一対のビードと、両側のビードに架け渡されたカーカスとを備えており、このベルトが、ベルトプライを備えており、このベルトプライが全体として、このカーカスと積層されており、このベルトプライが、センター部と、このセンター部の軸方向外側に位置する一対のサイド部とから構成されており、このセンター部が、このトレッドのセンター領域の内側に位置しており、このサイド部が、このトレッドのショルダー領域の内側に位置しており、このセンター部が、実質的に周方向に沿って螺旋巻きされたセンターコードとトッピングゴムとからなり、このサイド部が、実質的に周方向に沿って螺旋巻きされたサイドコードとトッピングゴムとからなり、このセンター部の周長の、このベルトプライの周長に対する比が、0.3以上0.5以下である自動二輪車用ラジアルタイヤ。」である点で一致し、次の点において相違する。

[相違点]
本願発明においては、「センターコード」、「サイドコード」がそれぞれ単一の種類のコードであり、「センターコードの曲げ剛性が、このサイドコードの曲げ剛性よりも小さく」されているのに対して、引用例1記載の発明においては、「中央領域のベルトプライ7B」は、1本の高弾性コードと2本の低弾性コードを組として含んでおり、「ショルダ領域のベルトプライ7C、7C」は、2本の高弾性コードと1本の低弾性コードを組として含んでおり、実質的に、「中央領域のベルトプライ7B」のコードの弾性が、「ショルダ領域のベルトプライ7C、7C」のコードの弾性よりも小さくされている点。

(4)判断
相違点について検討すると、引用例2には、ベルト層のコードを弾性の異なるコードとすることで、ベルト層の剛性を変えることが記載されており、また、引用例1にも、単一の種類のコードでは、トレッド部の剛性は一定化してしまうが(段落【0003】?【0005】)、低弾性コードからなる低弾性帯状プライと、高弾性コードを用いた高弾性帯状プライとの組合わせによりトレッド部の剛性値を随意に設定することが出来ることが記載され(段落【0010】)、該組み合わせとして、低弾性コードからなる低弾性帯状プライのみを用いた場合、高弾性コードを用いた高弾性帯状プライのみを用いた場合も、それぞれに応じて、異なる剛性のベルト層が得られることは、当業者が容易に想到し得ることであるので、引用例1記載の発明において、実質的に、「中央領域のベルトプライ7B」のコードの弾性が、「ショルダ領域のベルトプライ7C、7C」のコードの弾性よりも小さくなるようにするに際し、「中央領域のベルトプライ7B」は低弾性コードからなる低弾性帯状プライでのみ構成し、「ショルダ領域のベルトプライ7C、7C」は高弾性コードを用いた高弾性帯状プライでのみ構成して、本願発明のようにすることは、上記引用例1、2の記載より、当業者が容易に想到し得ることにすぎない。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明、および、引用例2の記載事項から当業者が予測し得る程度のものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明、および引用例2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-25 
結審通知日 2014-12-02 
審決日 2014-12-15 
出願番号 特願2007-100095(P2007-100095)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳楽 隆昌  
特許庁審判長 大熊 雄治
特許庁審判官 平田 信勝
丸山 英行
発明の名称 自動二輪車用ラジアルタイヤ  
代理人 岡 憲吾  
代理人 染矢 啓  
代理人 住友 教郎  
代理人 室橋 克義  
代理人 笠川 寛  

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