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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1297583
審判番号 不服2013-1193  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-23 
確定日 2015-02-12 
事件の表示 特願2008-505656「変異型尿酸オキシダーゼおよびその利用」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月19日国際公開、WO2006/110761、平成20年 9月 4日国内公表、特表2008-535499〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2006年4月11日(パリ条約による優先権主張 2005年4月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年1月10日付けで特許請求の範囲の補正がされ、平成24年9月14日付けで拒絶査定がされたところ、平成25年1月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年1月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成25年1月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、拒絶査定不服審判の請求と同時にしたものであって、補正前の請求項1、4を、それぞれ補正後の請求項1、2とするとともに、補正前の請求項2?3、5?7を削除し、さらに、補正前の特許請求の範囲には記載されていなかった、医薬組成物(補正後の請求項10?13)、医薬組成物の製造のための使用(補正後の請求項14?17)の発明を追加して、補正前に請求項数14であったものを請求項数17へと増項補正するものである。そして、補正前の請求項4と補正後の請求項2の記載は次のとおりである。

補正前:
「【請求項4】 SEQ ID NO.12の位置8から位置287のアミノ酸配列を含む、単離されたウリカーゼ、ここでアミノ酸番号はSEQ ID NO.11のアミノ酸配列を有する全長ブタウリカーゼに対応する。」

補正後:
「【請求項2】 SEQ ID NO.12のアミノ酸配列を含む、単離されたウリカーゼ。」

2.補正の適否
(1)補正後の請求項10?17について
医薬組成物(補正後の請求項10?13)、医薬組成物の製造のための使用(補正後の請求項14?17)の発明を追加して、補正前に請求項数14であったものを請求項数17へと増項する補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第1号に規定された請求項の削除、同第2号に規定された特許請求の範囲の減縮、同第3号に規定された誤記の訂正、同第4号に規定された明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とする補正にも該当しない。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものである。

(2)補正後の請求項2について
補正後の請求項2は、補正前の請求項4における「SEQ ID NO.12の位置8から位置287のアミノ酸配列を含む、・・・ここでアミノ酸番号はSEQ ID NO.11のアミノ酸配列を有する全長ブタウリカーゼに対応する。」を「SEQ ID NO.12のアミノ酸配列」のすべてを「含む」と限定するものであって、補正前の請求項4に係る発明と補正後の請求項2に係る発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、補正後の請求項2に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものであるか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。

ア 本願補正発明
補正後の請求項2に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、前記1.に「補正後」として記載したとおりのものである。

イ 引用例の記載事項
原査定の拒絶理由で引用文献1として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2002-522399号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、強調のため当審で付与した。)

(ア)「1つの好ましい哺乳動物ウリカーゼは、組換えブタ-ヒヒキメラウリカーゼであり、これは、ブタ肝臓およびヒヒ肝臓ウリカーゼの部分配列からなり、この両配列はWu, et al.、1989で最初に決定された。このようなキメラウリカーゼの1つの例は、最初にブタウリカーゼ配列(配列番号1)由来の225アミノ酸および最後にヒヒウリカーゼ配列(配列番号2)由来の79アミノ酸を含む(ブタ-ヒヒウリカーゼ(すなわちPBCウリカーゼ)、図6を参照のこと)。このようなウリカーゼの別の例は、ブタ配列(配列番号1)の残基7?225およびヒヒ配列(配列番号2)の残基226?301を含む。これは、アミノ末端およびカルボキシル末端の両方が短縮されたPBCウリカーゼの等価物である(PBC-NT-CT、図6を参照のこと)。このようなキメラウリカーゼの別の例は、最初にブタ配列(配列番号1)由来の288アミノ酸および最後にヒヒ配列(配列番号2)由来の16アミノ酸を含む。後者の配列は、残基291のアルギニンのリシン(K)への置換および残基301のトレオニンのセリン(S)への置換を有する2つの位置のみでブタ配列と異なるので、この変異をブタ-K-SまたはPKSウリカーゼという。PKS、PBC、およびPBC-NT-CTウリカーゼはそれぞれ、リシン残基を一つ多く有するので、ブタまたはヒヒの配列より潜在的なPEG化部位を一つ多く含む。」([0026])

(イ)

(図6)
(ウ)「組換えブタ-ヒヒキメラ(PBC)ウリカーゼcDNAを、pET3d発現ベクター(Novagen、Madison、WI)にサブクローン化し、得られたプラスミド構築物を、エシェリヒア コリ BL21(DE3)pLysS株(Novagen)に形質転換し、発現させた。これらの手順を、分子生物学分野で周知の方法を用いて行った。」([0054])

上記(ア)及び(イ)の記載から、引用例1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「ブタ配列の残基7?225及びヒヒ配列の残基226?301からなるウリカーゼPBC-NT-CT。」(以下、「引用発明」という。)

また、原査定の拒絶理由で引用文献3として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-75876号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(エ)「一般に、ある外来蛋白質をコードする遺伝子をE.coliにおいて発現させる場合、その遺伝子の翻訳開始信号であるATGによりコードされるメチオニン残基の後に、目的蛋白質が位置するように設計される。天然蛋白質の場合、遺伝子からの翻訳の結果得られる蛋白質のN末端メチオニン残基は、メチオニンアミノペプチダーゼにより効率よく切断されることがわかっているが、このように外来蛋白質の場合はこのN末端メチオニン残基が切断されるとは限らない。メチオニンアミノペプチダーゼの基質特異性はメチオニン残基の次に位置するアミノ酸残基の種類により異なることがわかっている。・・・」([0024])

さらに、原査定の拒絶理由で引用文献5として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物であるEur.J.Biochem.,Vol.154,1986,p.193-196(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。

(オ)「共通の配列決定因子を明らかにするために、N-末端メチオニンの除去が、原核生物及び真核生物の細胞質タンパク質の大規模なサンプルにおいて、統計的に分析された。我々は、開始Metに隣接する残基がN末端のプロセシングの重要な決定因子であることを見いだした。Lys,Arg,Leu及び(原核生物では)PheとIleは、配列において開始Metの隣にある場合に、開始Metをその除去から保護し、この位置におけるAla,Gly,Pro,Ser,Thr及び(真核生物では)Valは、その除去を引き起こす。・・・」(要約)

ウ 対比
本願補正発明における「SEQ ID NO.12」とは、配列表によると、1位がMet、2位がThrである合計296個のアミノ酸からなるPBC-ΔNCのアミノ酸配列であって、本願明細書[0013]によると、これは本願の図3にPBC-ΔNCとして記載されたアミノ酸配列と同じものである。なお、本願の図3においては、PBC-ΔNCは、2位から6位をブランクとして、Pigのアミノ酸配列のアミノ酸番号と対応させて記載されているから、SEQ ID NO.12の配列の2位?296位は、本願の図3のPBC-ΔNCの7位?301位に相当する(以下、アミノ酸残基の位置はPigのアミノ酸配列に対応する位置で表記する。)。そして、本願明細書の記載によれば、このPBC-ΔNCは、ブタウリカーゼの1-225とヒヒウリカーゼの226-304を結合したPBCウリカーゼからN末端の2?6位の残基及びC末端の3残基を除去したものであり([0060]、図3)、Pig-KS-ΔNと同様に、7位のAsp(D)がThr(T)に置換されることでバクテリアのアミノペプチダーゼによるメチオニンの除去が可能となっており([0074])、46位には、PCR増幅反応並びにクローニングの過程で発生した保存的変異によって、Ser(S)の代わりにThr(T)が存在する([0071])ものと認められる。
一方、引用発明における7位はAsp(D)であり、46位はSer(S)となっている(前記イ(イ))。

そうすると、本願補正発明と引用発明の一致点、相違点は以下のようになる。
一致点:「ブタ配列の残基8?45、47?225及びヒヒ配列の残基226?301からなるウリカーゼ」
相違点:前者においては、N末端にMet(M)が存在し、ブタ配列の7位に相当する位置がThr(T)、46位に相当する位置がThr(T)であるのに対し、後者においては、N末端にMetは存在せず、ブタ配列の7位に相当する位置がAsp(D)、46位に相当する位置がSer(S)である点。

エ 相違点についての検討
引用例1には、組換えブタ-ヒヒキメラ(PBC)ウリカーゼcDNAをE.Coliにおいて発現させてPBCウリカーゼを作成することが記載されている(前記イ(ウ))ところ、引用例2に記載されているように、蛋白質をコードする遺伝子をE.Coliにおいて発現させる場合、翻訳開始記号であるATGによりコードされるメチオニン(Met(M))残基の後に、目的蛋白質が位置するように設計することが一般的であり、目的蛋白質は、発現されたタンパク質のN末端のMet(M)をメチオニンアミノペプチダーゼにより切断して取得される。そうすると、引用発明のウリカーゼPBC-NT-CTをE.Coliを用いた遺伝子組換えにより取得しようとすれば、翻訳開始記号でコードされるN末端のMet(M)を除去するために、Met(M)に隣接するアミノ酸を、Met(M)を除去する機能を持つものとして引用例3に記載されているThr(T)とすることは、当業者が容易に想到することである。
また、蛋白質を構成するアミノ酸の一部を別のアミノ酸に置換して、蛋白質の構造活性相関を検討することは一般的に行われることであり、また、PCR反応におけるエラー等により、一部のアミノ酸残基が別のアミノ酸に置換されたタンパク質が得られることも、よくあることであるから、46位のSer(S)がThr(T)に置換されたものを取得することは当業者にとって困難を要することではない。
そして、本願明細書をみても、本願補正発明の引用発明との相違点に係る「N末端にMet(M)が存在し、ブタ配列の7位に相当する位置がThr(T)、46位に相当する位置がThr(T)である」という点について、「イニシエーターであるメチオニン残基に続いて、ブタウリカーゼ配列ではアスパラギン酸となっている位置に、代わりにトレオニンを挿入した。このトレオニン残基によって、バクテリアのアミノペプチダーゼによるメチオニンの除去が可能となっている。」([0074])、「46番目の位置には、PCR増幅反応ならびにクローニングの過程で発生した保存的変異によって、セリン残基の代わりにトレオニン残基が存在していた。」([0071])という記載があるにとどまり、「N末端にMet(M)が存在し、ブタ配列の7位に相当する位置がThr(T)、46位に相当する位置がThr(T)である」本願補正発明が、「N末端にMet(M)が存在せず、ブタ配列の7位に相当する位置がAsp(D)、46位に相当する位置がSer(S)である」引用発明と比べて、当業者の予想を超える顕著な効果を奏するとは認められない。なお、拒絶査定においても審尋においても、引用発明と比較して顕著な効果が認められないことが指摘されたが、審判請求人は、本願補正発明が、ネイティブのブタウリカーゼよりも優れた比活性度を有し安定性に優れていること(審判請求書)、PBC-ΔNCはPBCとほぼ同じ活性を示しPBCよりも優れた安定性を有していること(回答書)などを主張するのみで、本願補正発明が引用発明と比べていかなる効果を奏するかについて明らかにしていない。

オ 小括
以上検討したところによれば、本願補正発明は、引用例1?3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反してなされたものである。

(3)結論
前記(1)及び(2)のとおりであるから、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成25年1月23日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明1?14は、平成24年1月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1.に「補正前」として記載したとおりのものである。

2.本願発明の進歩性について
上記第2 2.(2)で述べたとおり、本願補正発明は本願発明を限定したものであるから、本願発明は本願補正発明を包含するものであることが明らかである。
そして、上記第2 2.(2)で述べたとおり、本願補正発明は引用例1?3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明を包含する本願発明も、同様に、引用例1?3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-03 
結審通知日 2014-09-16 
審決日 2014-09-29 
出願番号 特願2008-505656(P2008-505656)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C12N)
P 1 8・ 121- Z (C12N)
P 1 8・ 57- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 潤也  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 三原 健治
高堀 栄二
発明の名称 変異型尿酸オキシダーゼおよびその利用  
代理人 辻永 和徳  

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