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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03H
管理番号 1297600
審判番号 不服2013-17083  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-04 
確定日 2015-02-12 
事件の表示 特願2007-249801「差動単相変換回路」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月 8日出願公開、特開2008-109645〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成19年9月26日(国内優先権主張 平成18年9月26日 特願2006-261183号)の出願であって、平成24年8月16日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成24年10月25日に手続補正がなされ、平成25年5月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年9月4日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、平成26年9月4日付けで当審から拒絶理由が通知され、これに対して平成26年11月10日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。


第2.平成26年11月10日付けの手続補正書の特許請求の範囲
【請求項1】
逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を非反転増幅させた第1の増幅信号を出力する同相出力増幅器と、
前記一対の差動信号のうち第2の差動信号を反転増幅させた第2の増幅信号を出力するとともに、前記同相出力増幅器から出力された前記第1の増幅信号と前記第2の増幅信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器とを備え、
前記同相出力増幅器はゲート側を接地したゲート接地増幅器であり、前記反転出力増幅器はソース側を接地したソース接地増幅器であることを特徴とする差動単相変換回路。
【請求項2】
前記ソース接地増幅器のソース側に前記第1の差動信号の位相と前記第2の差動信号の位相の位相差を調整する位相調整器が接続されることを特徴とする請求項1記載の差動単相変換回路。
【請求項3】
前記ソース接地増幅器のソース側に前記第1の差動信号のゲインと前記第2の差動信号のゲインのゲイン差を調整するゲイン調整器が接続されることを特徴とする請求項1記載の差動単相変換回路。
【請求項4】
前記ソース接地増幅器の出力側に接続され、前記第1の差動信号の位相と前記第2の差動信号の位相の位相差を検出する検出回路と、
前記検出回路の検出結果に基づいて調整量を演算する演算回路とを備え、
前記位相調整器は前記調整量に基づいて位相調整が行われることを特徴とする請求項2記載の差動単相変換回路。
【請求項5】
逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を反転増幅させた第1の増幅信号を出力する反転出力増幅器と、
前記一対の差動信号のうち第2の差動信号を非反転増幅させた第2の増幅信号を出力するとともに、前記反転出力増幅器から出力された前記第1の増幅信号と前記第2の増幅信号とを加算して単相信号を出力する同相出力増幅器とを備え、
前記同相出力増幅器はゲート側を接地したゲート接地増幅器であり、前記反転出力増幅器はソース側を接地したソース接地増幅器であることを特徴とする差動単相変換回路。
【請求項6】
逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を非反転増幅させた第1の増幅信号を出力する同相出力増幅器と、
前記一対の差動信号のうち第2の差動信号を反転増幅させた第2の増幅信号を出力するとともに、前記同相出力増幅器から出力された前記第1の増幅信号と前記第2の増幅信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器と、
前記同相出力増幅器の入力側にキャリブレーション回路とを備え、
前記キャリブレーション回路から同相キャリブレーション信号を発生させ、前記反転出力増幅器の出力側において前記第1及び第2の差動信号の位相差又はゲイン差が検出される際にキャリブレーション期間における前記第1及び第2の差動信号の位相調整量又はゲイン調整量が測定され、その結果が記憶装置に記憶され、実動作の際に前記記憶装置に記憶された前記位相調整量又はゲイン調整量に基づいて、前記第1及び前記第2の差動信号の位相調整又はゲイン調整が行われ、
前記同相出力増幅器はゲート側を接地したゲート接地増幅器であり、前記反転出力増幅器はソース側を接地したソース接地増幅器であることを特徴とする差動単相変換回路。
【請求項7】
前記ソース接地増幅器の出力側に接続され、前記第1の差動信号のゲインと前記第2の差動信号のゲインのゲイン差を検出する検出回路と、
前記検出回路の検出結果に基づいて調整量を演算する演算回路とを備え、
前記ゲイン調整器は前記調整量に基づいてゲイン調整が行われることを特徴とする請求項3記載の差動単相変換回路。


第3.特許法第36条第4項第1号の当審拒絶理由
(A)この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



(1)図2の位相差検出回路30を実現するには、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等をどのように組み合わせて構成すれば良いのか不明である。
また、図2の位相差検出回路30は、同相出力増幅器10と反転出力増幅器20の出力側に接続されているから、位相差検出回路30をどのように構成すれば、第1の増幅信号の位相と第2の増幅信号の位相の差ではなく、第1の差動信号の位相と第2の差動信号の位相の差が検出できるのか不明である。

(2)図2のゲイン差検出回路40を実現するには、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等をどのように組み合わせて構成すれば良いのか不明である。
また、図2のゲイン差検出回路40は、同相出力増幅器10と反転出力増幅器20の出力側に接続されているから、位相差検出回路30をどのように構成すれば、第1の増幅信号のゲインと第2の増幅信号のゲインの差ではなく、第1の差動信号のゲインと第2の差動信号のゲインの差が検出できるのか不明である。

よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項4,6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。


第4.特許法第36条第4項第1号の当審拒絶理由についての当審の判断
1.平成26年11月10日付けの意見書における説明
(1)本願出願当初明細書の図2には、差動単相変換回路1において、「可変コンデンサ232」、「可変抵抗231」、「ゲイン差調整回路40」などを含む構成例が記載され、その説明として、段落[0036]には、「それ以外の構成は、図1と同様である。」と記載しております。
ここで、「それ以外の構成」と記載している中で「それ」とは、例えば、「可変コンデンサ232」や「可変抵抗231」など、図1に対して図2において追加又は変更した構成についてであって、「それ以外の構成」、すなわち、図2において追加又は変更した構成以外については、図1と同様であることが記載されています。
従いまして、図2の位相差検出回路30がどのように第1の差動信号の位相と第2の差動信号の位相の差を検出するのかについては、例えば、図1の位相差検出回路30が第1の差動信号の位相と第2の差動信号の位相の差を検出するのと同様であることが「それ以外の構成」として段落[0036]に記載されております。
よって、位相差検出回路30を実現する構成、及び位相差検出回路30がどのように差動信号の位相差を検出するのかにつきましては、本願出願当初明細書において当業者が実施できる程度に記載されていると確信する次第でございます。

(2)本願出願当初明細書の段落[0038]には、
「ゲイン差検出回路40は、単相信号OUTに基づいて、2つの差動信号IN、INXのゲイン差を検出し、その検出結果を可変抵抗231に出力する。」
と記載されております。ここでは、例えば、単相信号OUTをゲイン差検出回路40に入力して、その出力が可変抵抗231に出力されることが記載されており、入力は「位相差検出回路30」と同一である旨が記載されています。
従いまして、図2のゲイン差検出回路40につきましても、位相差検出回路30と同じ入力により処理が行われることが、例えば、段落[0038]に記載されております。
よって、ゲイン差検出回路40を実現する構成、及びゲイン差検出回路40がどのように差動信号のゲイン差を検出するのかにつきましては、本願出願当初明細書において当業者が実施できる程度に記載されていると確認する次第でございます。

2.当審の判断
(1)位相差検出回路30について
段落番号【0036】の「それ」とは、ゲイン差検出回路40、可変抵抗231、可変コンデンサ232を指すものと解される。段落番号【0036】の「それ以外」とは、例えば、位相差検出回路30を指すものと解される。 段落番号【0036】の「それ以外の構成は、図1と同様である。」とは、例えば、図2の位相差検出回路30は、図1の位相差検出回路30と同じものであるという意味であると解される。
それならば、図1の位相差検出回路30についてのどのような記載があるか確認すれば、段落番号【0022】に「・・・位相差検出回路30を備える。」と記載され、段落番号【0025】に「ソース接地増幅器20は、出力される単相信号OUTを増幅させるためのロード回路21と、第2のトランジスタ22と、位相差検出回路30の検出結果に基づいて差動信号の位相を調整する位相調整器23を備える。」と記載され、段落番号【0028】に「位相差検出回路30は、ソース接地増幅器20からの単相信号OUTが入力され、単相信号OUTから差動信号IN、INXの位相差を検出してその検出結果を位相調整器23に出力する。」と記載されている。
段落番号【0022】の記載は、位相差検出回路30が存在することを表現しているだけであり、段落番号【0025】の記載は、位相差検出回路30の検出結果を位相調整器23が利用することを表現しているだけである。そして、段落番号【0028】の記載は、ブラックボックスとしての位相差検出回路30の入力と出力の関係を規定しているだけである。
したがって、図1及び図2の位相差検出回路30自体をどのようにして実現するか、すなわち、位相差検出回路30を、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等をどのように組み合わせて構成すれば良いのかについて、当業者が容易に実現できる程度に発明の詳細な説明が記載されていない。

「前記ソース接地増幅器の出力側に接続され、前記第1の差動信号の位相と前記第2の差動信号の位相の位相差を検出する検出回路」を備える請求項4に係る発明は、同相出力増幅器がゲート接地増幅器で構成されるものであるから、図5に対応すると解される。
図5に関して、段落番号【0060】に「また、位相差検出回路30やゲイン差検出回路40等は図4の例と同様」と記載され、図4に関して、段落番号【0047】に「位相差検出回路30は、上述の例と同様に位相差を検出し、デジタル信号に変換して出力する。」と記載されているから、結局、図1及び図2の位相差検出回路30自体をどのようにして実現するか、当業者が容易に実現できる程度に発明の詳細な説明が記載されていなければ、請求項4に係る発明についても、当業者が容易に実施できる程度に発明の詳細な説明が記載されていないことになる。

(2)ゲイン差検出回路40について
段落番号【0038】に、図2のゲイン差検出回路40について、位相差検出回路30と同じ入力により処理が行われることが記載されていても、ゲイン差検出回路40は、位相差検出回路30とは出力信号が異なるのであるから、内部の構成も当然異なることが要求され、当業者がゲイン差検出回路40を容易に実現できる程度に記載されていることにはならない。
「前記反転出力増幅器の出力側において前記第1及び第2の差動信号の位相差又はゲイン差が検出される」請求項6に係る発明は、キャリブレーション回路を備えるから、図8に対応すると解される。
図8に関して、段落番号【0066】に「図8はその一例であり、図5の差動単相変換回路1に対してキャリブレーション回路70と記憶装置80とを追加した」と記載され、図5に関して、段落番号【0060】に「また、位相差検出回路30やゲイン差検出回路40等は図4の例と同様」と記載され、図4に関して、段落番号【0045】に「図4は、位相差検出回路30とゲイン差検出回路40との検出結果をデジタル信号として出力し、ゲイン調整器(可変抵抗231)と位相調整器(可変コンデンサ232)とをデジタル制御する例である。それ以外の構成は、図2と同様である。」と記載されているから、図4のゲイン差検出回路40は、出力がデジタル信号であること以外は、図2のゲイン差検出回路40と同じである。結局、図2の位相差検出回路30自体をどのようにして実現するか、当業者が容易に実現できる程度に発明の詳細な説明が記載されていなければ、請求項6に係る発明についても、当業者が容易に実施できる程度に発明の詳細な説明が記載されていないことになる。

(3)小括
したがって、当審拒絶理由通知で指摘したとおり、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項4,6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


第5.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年11月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を非反転増幅させた第1の増幅信号を出力する同相出力増幅器と、
前記一対の差動信号のうち第2の差動信号を反転増幅させた第2の増幅信号を出力するとともに、前記同相出力増幅器から出力された前記第1の増幅信号と前記第2の増幅信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器とを備え、
前記同相出力増幅器はゲート側を接地したゲート接地増幅器であり、前記反転出力増幅器はソース側を接地したソース接地増幅器であることを特徴とする差動単相変換回路。」


第6.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開2001-136051号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(a)段落番号【0019】-【0021】
「【0019】(実施の形態1)図1は片相変換回路の回路図を示す。図1において100は差動増幅器で、直流電圧源104、エミッタがそれぞれ共通であるトランジスタ107、108、トランジスタ107、108のコレクタ側にそれぞれ接続された負荷抵抗105、106、トランジスタ107、108のエミッタ側に接続された直流電流源109から構成される。101は片相変換回路で、例えば演算増幅器等で構成される利得A倍を持つ正相増幅器110、利得-A倍を持つ逆相増幅器111、正相増幅器110及び逆相増幅器111の直流をそれぞれ阻止する結合容量113、114から構成される。102は同相信号入力端子、103は同相信号入力端子102と180度位相の異なった信号が入力される逆相信号入力端子、112は片相出力端子である。
【0020】以上のように構成された片相変換回路について、以下その動作について説明する。まず、正相信号入力端子102、逆相信号入力端子103から入力された両相信号が差動増幅器100によって増幅される。動作説明を簡単にするため、差動増幅器100の利得は1倍とする。このとき、トランジスタ107のコレクタ端子には逆相出力が、トランジスタ108のコレクタ端子には正相出力が現れる。
【0021】この正相出力は負荷抵抗106を介して例えば演算増幅器により構成される正相増幅器110でA倍に正相増幅され、同じく逆相出力は負荷抵抗105を介して例えば演算増幅器を用いた逆相増幅器111で-A倍に逆相増幅される。この正相増幅器110及び逆相増幅器111の出力は同振幅かつ同位相となっているため、この出力を結合容量113、114を介して直流阻止するとともに接続し、加算することで、2×A倍の信号を得ることができる。逆に、外部から印加された同相雑音成分は同振幅で逆位相となるため、相殺され出力に現れない。」

刊行物1の段落番号【0019】-【0021】では、差動増幅器100と片相変換回路101とから成るもの全体も「片相変換回路」と呼んでおり、紛らわしい。そこで、差動増幅器100と片相変換回路101とから成るもの全体は、「片相」を付けずに、単に「変換回路」ということにする。

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「直流電圧源104を有し、トランジスタ107、108のエミッタがそれぞれ共通であり、トランジスタ107、108のコレクタ側にそれぞれ負荷抵抗105、106が接続され、トランジスタ107、108のエミッタ側に直流電流源109が接続された差動増幅器100と、
演算増幅器等で構成される利得A倍を持つ正相増幅器110と、利得-A倍を持つ逆相増幅器111と、正相増幅器110及び逆相増幅器111の直流をそれぞれ阻止する結合容量113、114から構成される片相変換回路101と、
から成り、
同相信号入力端子102、同相信号入力端子102と180度位相の異なった信号が入力される逆相信号入力端子103、及び片相出力端子112を備えた変換回路であって、
正相信号入力端子102、逆相信号入力端子103から入力された両相信号が差動増幅器100によって増幅され、差動増幅器100の利得は1倍であり、このとき、トランジスタ107のコレクタ端子には逆相出力が、トランジスタ108のコレクタ端子には正相出力が現れ、
この正相出力は負荷抵抗106を介して、演算増幅器により構成される正相増幅器110でA倍に正相増幅され、同じく逆相出力は負荷抵抗105を介して、演算増幅器を用いた逆相増幅器111で-A倍に逆相増幅され、この正相増幅器110及び逆相増幅器111の出力は同振幅かつ同位相となっているため、この出力を結合容量113、114を介して直流阻止するとともに接続し、加算することで、2×A倍の信号を得ることができ、逆に、外部から印加された同相雑音成分は同振幅で逆位相となるため、相殺され出力に現れない、
変換回路。」


第7.本願発明と引用発明の片相変換回路101の一致点・相違点
引用発明では、差動増幅器100のトランジスタ107のコレクタ端子には逆相出力が、トランジスタ108のコレクタ端子には正相出力が現れる。そして、この正相出力は、片相変換回路101の正相増幅器110でA倍に正相増幅され、逆相出力は、片相変換回路101の逆相増幅器111で-A倍に逆相増幅される。
したがって、差動増幅器100の正相出力と逆相出力とは、片相変換回路101の入力となっている。よって、片相変換回路101の入力もまた両相信号である。

ここで、引用発明の片相変換回路101に着目し、本願発明と引用発明の片相変換回路101の一致点及び相違点を検討することにする。

片相変換回路101の入力である両相信号が、本願発明の「逆相関係にある一対の差動信号」に相当する。
片相出力端子112に出力される片相信号が、本願発明の「単相信号」に相当する。

正相増幅器110は、差動増幅器100の正相出力を、A倍に正相増幅する。結合容量113は、単に直流を阻止するために使用されているから、増幅器の一部と見ることができる。したがって、片相変換回路101の正相増幅器110および結合容量113が、本願発明の「逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を非反転増幅させた第1の増幅信号を出力する同相出力増幅器」に相当する。
逆相増幅器111は、差動増幅器100の逆相出力を、-A倍に逆相増幅する。結合容量114は、単に直流を阻止するために使用されているから、増幅器の一部と見ることができる。また、正相増幅器110及び逆相増幅器111の出力は同振幅かつ同位相となっているので、この出力を結合容量113、114を介して直流阻止するとともに接続し、加算することで、2×A倍の信号を得ることができている。したがって、片相変換回路101の逆相増幅器111、結合容量114及び2つの結合容量113、114の接続点が、本願発明の「前記一対の差動信号のうち第2の差動信号を反転増幅させた第2の増幅信号を出力するとともに、前記同相出力増幅器から出力された前記第1の増幅信号と前記第2の増幅信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器」に相当する。

片相変換回路101は、両相信号すなわち差動信号を、片相信号すなわち単相信号に変換する回路であるから、本願発明の「差動単相変換回路」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明の片相変換回路101の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を非反転増幅させた第1の増幅信号を出力する同相出力増幅器と、
前記一対の差動信号のうち第2の差動信号を反転増幅させた第2の増幅信号を出力するとともに、前記同相出力増幅器から出力された前記第1の増幅信号と前記第2の増幅信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器とを備え
たことを特徴とする差動単相変換回路。」である点。

[相違点]
本願発明では、同相出力増幅器はゲート側を接地したゲート接地増幅器であり、反転出力増幅器はソース側を接地したソース接地増幅器であるのに対して、引用発明では、正相増幅器110、逆相増幅器111が、それぞれどのような接地方式の増幅器であるのか特定されていない点。


第8.相違点についての検討
ゲート接地増幅器及びドレイン接地増幅器は、正相増幅器であることが、周知である。また、ソース接地増幅器は、逆相増幅器であることが、周知である。
したがって、引用発明の片相変換回路101において、正相増幅器110として、ゲート接地増幅器を採用し、逆相増幅器111として、ソース接地増幅器を採用することにより相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

第9.まとめ
本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項4,6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-08 
結審通知日 2014-12-09 
審決日 2014-12-24 
出願番号 特願2007-249801(P2007-249801)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H03H)
P 1 8・ 121- WZ (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白井 孝治  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 近藤 聡
江口 能弘
発明の名称 差動単相変換回路  
代理人 土井 健二  
代理人 林 恒徳  
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