ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B |
---|---|
管理番号 | 1297602 |
審判番号 | 不服2013-17543 |
総通号数 | 184 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-09-11 |
確定日 | 2015-02-12 |
事件の表示 | 特願2008-212583号「水平構面用耐震開口フレーム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月 4日出願公開、特開2010- 47951号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成20年8月21日の出願であって、平成24年10月12日付けの拒絶理由の通知に対し、平成24年12月12日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成25年5月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年9月11日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。 第2.平成25年9月11日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年9月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「木造建築物の水平構面の開口部に含まれる1または複数の隅部に接合するための、ボックス型又は三角型の形状である水平構面用耐震開口フレーム(50、60)であって、該隅部の形状に沿って接合可能な形状をもつコーナー部を備え、該コーナー部においては、2つのフレーム材(1a、1b)の端部が直角に剛接合されており、かつ、水平耐力を強化するために前記フレーム材(1a、1b)の四角形断面は上下方向よりも水平方向に長い形状であることを特徴とする水平構面用耐震開口フレーム。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、平成24年12月12日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「木造建築物の水平構面の開口部に含まれる1または複数の隅部に接合するための水平構面用耐震開口フレーム(1、50、60、70、80)であって、該隅部の形状に沿って接合可能な形状をもつコーナー部を備え、該コーナー部においては、2つのフレーム材(1a、1b)の端部が直角に剛接合されており、かつ、前記フレーム材(1a、1b)の四角形断面は上下方向よりも水平方向に長い形状であることを特徴とする水平構面用耐震開口フレーム。」 (3)補正の目的及び新規事項の追加の有無 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「水平構面用耐震開口フレーム」、及びフレーム材の四角形断面の形状について、上記のとおり限定を付加するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、上記補正は新規事項を追加するものではない。 2.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開2006-46055号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (a)「【0001】 本発明は、枠組壁工法及び軸組工法による木造建築物の開口部に耐震性を付与する木質フレーム構造に関する。本発明の木質フレーム構造は、基本的に、門型または箱型の形状をもつフレームであって接合部等に繊維シートを貼着して補強を施したものである。これにより、既存及び新築の木造建築物における耐力壁のアンバランスを解消し、建物全体の耐震性向上を図る。加えて、必要最低限の壁倍率・床倍率で安全な建物を実現可能とする。」 (b)「【0005】 そこで、木質門型フレームを開口部に組み込むことにより壁や筋交いと同等の耐力を実現する技術が知られている。この技術は、既存及び新築の木造建築物のいずれにも適用可能で、特に新築の場合に適用しやすい。」 (c)「【0047】 また、門型または箱型のフレームにおける角部を剛接合とすることにより、水平に配置される梁枠に対する水平荷重によるモーメントMが中点においてゼロとなる。」 (d)「【0054】 図1の木造建築物50は、例えば、壁51に設けた壁開口部51a、屋根52に設けた屋根開口部52a等を有する。壁開口部51aが窓の場合、例えば、左右にそれぞれ設置される従スタッド材(数枚合わせたもの)と、上下にそれぞれ設置される床根太やマグサまたは頭つなぎとにより四方を囲まれている。壁開口部51aが玄関または車庫等の場合、左右にそれぞれ設置される従スタッド材(数枚合わせたもの)と、上側に設置される床根太やマグサ、頭つなぎにより三方を囲まれている。屋根開口部52aは、壁開口部51aの窓と同様である。 【0055】 本発明による木質の耐震用フレームには、形状から区別される2種類があり、1つは門型フレーム10であり、もう1つは箱型フレーム30である。これらは、適用箇所によって使い分けられる。一般的に、壁開口部51aが玄関や車庫等の大開口部である場合は、門型フレーム10が組み込まれ、壁開口部51aが窓の場合は、箱型フレーム30が組み込まれる。また、屋根開口部52aには、箱型フレーム30が組み込まれる。 【0056】 図1に示す門型フレーム10及び箱型フレーム30は、木造建築物50の構造躯体の開口部に取り付けるタイプである。本発明による耐震用フレームの適用方法では、予め門型または箱型に組み立てておき、組み立てた状態のものを開口部に対して取り付ける。」 (e)「【0122】 (4)枠組壁工法に適用される箱型フレームの実施例 図10は、枠組壁工法による木造建築物の壁開口部51aの内側に取り付けられる箱型フレーム30の一実施例を示す斜視図である。図10に示す壁開口部51aは、主として窓や出入口である。 【0123】 図10に示す箱型フレーム30は、図示のように予め組立てられた形態で壁開口部51aに嵌め込まれ、開口部枠材51bに対して固定される。箱型フレーム30は、箱型を形成するべく接合された4個のL字状枠31、32、33、34と、互いに隣接する前記L字状枠同士を接合する金具36a、36bとを有する。L字状枠31等の各々は、横枠片と縦枠片の端部同士を直角に接合して形成される。 【0124】 図11A?図11Cは、箱型フレーム30の右上に位置するL字状枠33の接合部すなわち角部の実施例を示した図である。尚、他のL字状枠31、32及び34についても同様である。 【0125】 L字状枠33は、角材である横枠片33aと縦枠片33bとを金具により引き寄せ接合して形成される。さらに、金具により接合された接合部に対し、高引張強度をもつ繊維シートを接着剤で貼着することにより、剛接合とすることができる。接合部すなわち角部に対する繊維シートの適用方法は、前述の図4A?図4Dに示した門型フレームの角部におけるそれと同様である。また前述の図5A及び図5Bに示した繊維シートを用いることが好適である。」 (f)「【0135】 図15A及び図15Bは、箱型フレーム30を枠組壁工法による木造建築物の床53における開口部53aに取り付けた実施例を示す図である。図15Aを参照する。基礎工事の完了後、土台や頭つなぎの上に根太53cを設置する。床開口部53aの周囲には開口部枠材53bを設置する。その後、組み立てた状態の箱型フレーム30を床開口部53aに嵌め込み開口部枠材53bに固定する。箱型フレーム30の取付後、図15Bに示すように、床合板53dを根太上に張るフレーミング工事を行う。」 (g)図1-13B、図16A-図19Bから、門型フレーム10及び箱型フレーム30を形成する横枠片と縦枠片の四角形断面が、壁開口部51aと垂直な方向よりも壁開口部51aに平行な方向に長い形状であることが図示されているといえる。 (h)上記(b)によると、開口部にフレームを組み込むことにより壁や筋交いと同等の耐力を実現するのであるから、フレームが開口部に平行な方向の耐力も強化していることは明らかである。 したがって、上記記載事項を総合すれば、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 「木造建築物の壁開口部51aに耐震性を付与するために、壁開口部51aに嵌め込まれ、開口部枠材51bに対して固定される箱型フレーム30であって、横枠片と縦枠片の端部同士を角部において直角に剛接合して形成される4個のL字状枠を予め組立てられた形態で開口部枠材51bに対して固定され、かつ、横枠片と縦枠片の四角形断面が、壁開口部51aと垂直な方向よりも壁開口部51aと平行な方向に長い形状である、壁開口部51aと平行な方向の耐力を強化するための箱型フレーム30。」 (3)引用発明1との対比 本件補正発明と引用発明1とを対比する。 (a)引用発明1の「木造建築物の」「壁」は、本件補正発明の「木造建築物の」「構面」に相当し、以下同様に、 「開口部枠材51b」は、「開口部」に、 「箱型フレーム」は、「ボックス型」「の形状である」「フレーム」に相当する。 (b)引用発明1において、箱型フレーム30は、壁開口部51aに嵌め込まれ開口部枠材51bに対して固定されるのであるから、箱型フレーム30の角部が開口部枠材51bの隅部に沿って接合されることは明らかであるので、 ・引用発明1の「木造建築物の壁開口部51aに耐震性を付与するために、壁開口部51aの内側に取り付けられ、開口部枠材51bに対して固定される箱型フレーム30」と、本件補正発明の「木造建築物の水平構面の開口部に含まれる1または複数の隅部に接合するための、ボックス型又は三角型の形状である水平構面用耐震開口フレーム」とは、「木造建築物の開口部に含まれる1または複数の隅部に接合するための、ボックス型の形状である耐震開口フレーム」で共通し、 ・引用発明1における「箱型フレーム30」の「角部」は、本件補正発明における「水平構面用耐震開口フレーム」の「隅部の形状に沿って接合可能な形状をもつコーナー部」に相当し、 ・引用発明1の「横枠片と縦枠片の端部同士を角部において直角に剛接合して形成される4個のL字状枠を予め組立て」た「箱型フレーム30」と、本件補正発明の「該コーナー部においては、2つのフレーム材(1a、1b)の端部が直角に剛接合され」た「水平構面用耐震開口フレーム」とは、「コーナー部において、2つのフレーム材の端部が直角に剛接合された開口フレーム」である点で共通する。 (c)引用発明1の「横枠片と縦枠片の四角形断面が、壁開口部51aと垂直な方向よりも壁開口部51aと平行な方向に長い形状である、壁開口部51aと平行な方向の耐力を強化するための箱型フレーム30」と、本件補正発明の「水平耐力を強化するために前記フレーム材(1a、1b)の四角形断面は上下方向よりも水平方向に長い形状である」「水平構面用耐震開口フレーム」とは、「開口部に平行な方向の耐力を強化するためにフレーム材の四角形断面は開口部と垂直な方向よりも開口部に平行な方向に長い形状である、構面用耐震開口フレーム」である点で共通する。 そうすると、両者は、 「木造建築物の構面の開口部に含まれる1または複数の隅部に接合するための、ボックス型の形状である耐震開口フレームであって、該隅部の形状に沿って接合可能な形状をもつコーナー部を備え、該コーナー部においては、2つのフレーム材の端部が直角に剛接合されており、かつ、開口部に平行な方向の耐力を強化するために前記フレーム材の四角形断面は開口部と垂直な方向よりも開口部に平行な方向に長い形状である構面用耐震開口フレーム。」 である点で一致しており、次の点で相違する。 (相違点) 本件補正発明において、開口部が水平構面にあり、水平耐力を強化するためにフレーム材の四角形断面が上下方向よりも水平方向に長い形状であるのに対し、引用発明1においては、開口部枠材51bが水平構面にはなく、横枠片と縦枠片の四角形断面が、壁開口部51aと垂直な方向よりも壁開口部51aと平行な方向に長い形状である点。 (4)判断 上記(相違点)について検討する。 (a)引用例1の記載事項(f)には、「図15A及び図15Bは、箱型フレーム30を枠組壁工法による木造建築物の床53における開口部53aに取り付けた実施例を示す図である。・・・床開口部53aの周囲には開口部枠材53bを設置する。その後、組み立てた状態の箱型フレーム30を床開口部53aに嵌め込み開口部枠材53bに固定する。」と記載されており、引用例1の記載事項(a)の「本発明は、枠組壁工法及び軸組工法による木造建築物の開口部に耐震性を付与する木質フレーム構造に関する。・・・加えて、必要最低限の壁倍率・床倍率で安全な建物を実現可能とする。」という記載とから、箱形フレーム30は、壁開口部にも床開口部にも設置してもよいことが記載されていることは明らかである。 また、床は通常、水平構面を構成することは明らかである。 (b)そうすると、引用発明1の「横枠片と縦枠片の端部同士を角部において直角に剛接合して形成される4個のL字状枠を予め組立てられた形態で開口部枠材51bに対して固定され、かつ、横枠片と縦枠片の四角形断面が、壁開口部51aと垂直な方向よりも壁開口部51aと平行な方向に長い形状である、壁開口部51aと平行な方向の耐力を強化するための箱型フレーム30」を、床(水平構面)の開口部に転用することは、当業者が容易に着想し得ることである。 (c)また、床のような水平構面においては、構面に平行な方向(本件補正発明の「水平方向」に相当する)に耐力を必要とするものであって、その強化を図ることも当然であるから、引用例1記載の床においてもそのような課題が内在しているといえるので、引用発明1の「横枠片と縦枠片の端部同士を角部において直角に剛接合して形成される4個のL字状枠を予め組立てられた形態で開口部枠材51bに対して固定され、かつ、横枠片と縦枠片の四角形断面が、壁開口部51aと垂直な方向よりも壁開口部51aと平行な方向に長い形状である、壁開口部51aと平行な方向の耐力を強化するための箱型フレーム30」を採用することは、このことからも当業者が容易に想到し得ることである。 (d)さらに、開口部の剛性を高めるにあたり、面内方向の幅を広くした方が有利であることは、水平構面においても垂直構面においても変わりはないから、このことからも本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。 (e)また、本件補正発明の作用効果は、引用発明1の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別なものではない。 (f)したがって、本件補正発明は、引用発明1及び引用例1に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成25年9月11日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成24年12月12日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1.(2)同様、次のとおりのものである。 「木造建築物の水平構面の開口部に含まれる1または複数の隅部に接合するための水平構面用耐震開口フレーム(1、50、60、70、80)であって、該隅部の形状に沿って接合可能な形状をもつコーナー部を備え、該コーナー部においては、2つのフレーム材(1a、1b)の端部が直角に剛接合されており、かつ、前記フレーム材(1a、1b)の四角形断面は上下方向よりも水平方向に長い形状であることを特徴とする水平構面用耐震開口フレーム。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2で検討した本件補正発明の「水平構面用耐震開口フレーム」の限定事項である「ボックス型又は三角型の形状である」との構成を省き、「フレーム材(1a、1b)の四角形断面」の形状についての限定事項である「水平耐力を強化するために」との記載を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2.(4)に記載したとおり、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び引用例1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4. むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-11-18 |
結審通知日 | 2014-11-25 |
審決日 | 2014-12-10 |
出願番号 | 特願2008-212583(P2008-212583) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E04B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土屋 真理子 |
特許庁審判長 |
本郷 徹 |
特許庁審判官 |
小野 忠悦 門 良成 |
発明の名称 | 水平構面用耐震開口フレーム |
代理人 | 小島 高城郎 |