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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1297741
審判番号 不服2013-23871  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-04 
確定日 2015-02-19 
事件の表示 特願2012-228951「スロットインターフェースアクセス装置、その方法及びそのプログラム並びに主装置の冗長構成及び代替方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日出願公開、特開2013- 30190〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年5月19日(国内優先権主張 平成19年5月18日、平成19年5月21日)に出願した特願2008-130780号(以下、「原出願」という)の一部を平成24年10月16日に新たな特許出願としたものであって、平成25年6月18日付けの拒絶の理由の通知に対し、平成25年8月16日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成25年9月3日付けで拒絶査定がなされたものである。これを不服として平成25年12月4日に本件審判請求がなされると同時に同日付けで手続補正がなされた。

第2 平成25年12月4日付け手続補正(以下、「本件補正」という)について
本件補正は、平成25年8月16日付け手続補正により補正された、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1-22のうち、請求項17、18、20及び21を削除し、請求項16及び17を引用していた請求項22の引用請求項を、削除した請求項17を除いて請求項16のみとし、これらの補正に伴い請求項の番号を繰り上げて、本件補正後の請求項1-18としたものである。
本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に規定された請求項の削除を目的とするものに該当し、適法なものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1-18に係る発明は、平成25年12月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-18の記載により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「入出力制御モジュールとその下位のスロットインターフェースとの間に、スロット管理モジュール、スロット制御モジュール及び物理スロット/仮想スロット対照表を備え、
前記入出力制御モジュールは、仮想スロット識別情報を用いて前記スロットインターフェースにアクセスし、
前記スロット管理モジュールが、前記物理スロット/仮想スロット対照表を参照して、仮想スロット識別情報を物理スロット識別情報に変換し、変換により得られた物理スロット識別情報に対応するスロット制御モジュールにアクセスすることにより、前記入出力制御モジュールによる前記スロットインターフェースへの物理的なアクセスが実現されることを特徴とするスロットインターフェースアクセス装置。」

2.刊行物の記載事項
(1)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された原出願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第01/25934号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面(特に、図9、図10)とともに次の事項が記載されている。

「技術分野
本発明は、サーバ/クライアントシステムに関し、特に、クライアント側のハードウエア資源を軽減したサーバ/クライアントシステムに関する。」(第1頁第3行-第6行)

「発明を実施するための最良の態様
図2は、本発明の1実施形態にかかるサーバ/クライアントシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。」(第6頁第4行-第6行)

「サーバ1内の仮想I/Oポート18は、基本的に次の機能を有している。即ち、
(1)クライアント2側のI/Oポート25と同一に機能するインターフェースを、その上位のデバイスドライバ17に提供すること、
(2)上位のデバイスドライバ17からの入出力制御信号をクライアント2のデバイスハンドラ27に送信すること、およびデバイスハンドラ27からのイベントを受信して上位のデバイスドライバ27に通知すること、である。
また、クライアント2側のデバイスハンドラ27の必要最低限の機能は、
(1)サーバ1の仮想I/Oポート18から送信された入出力制御信号を受信し、I/Oポートに対して入力制御/出力制御を行い、かつI/Oポート25からのイベントをサーバ1の仮想I/Oポート18に送信することである。」(第8頁第3行-第17行)

「以下に、本システムの更に詳細な構成およびその動作を、サーバ1内のアプリケーション16とI/Oデバイス4間のデータフローを示す図4を用いて説明する。
まず、アプリケーション16からI/Oデバイス4へのデータ入出力は以下の通りである。
(1)アプリケーション16は、入出力したいデータを含む入出力処理要求[1]をデバイスドライバ17に対して行い、
(2)デバイスドライバ17は、入出力処理要求[1]に従い、仮想I/Oポート18の入出力制御[2]を行う。
(3)仮想I/Oポート18は入出力制御[2]を通信回線3上のデータに変換し、クライアント2側のデバイスハンドラ27に入出力制御パケット[3]として送信する。
(4)デバイスハンドラ27は入出力制御パケット[3]を受信すると、内容を解釈しI/Oポート25の入出力制御[4]を行う。
(5)I/Oポート25は、入出力制御[4]を接続回線5上のデータ[5]に変換し、I/Oデバイス4に送信し、これを制御する。
以上によって、アプリケーションからI/Oデバイス4へ、入出力制御が実行される。」(第8頁第23行-第9頁第13行)

「サーバ1に電源が投入されていて、仮想I/Oポート18が起動していると、これに対するレスポンス[12]が仮想I/Oポート18よりデバイスハンドラ27に出力される。レスポンス[12]には、仮想I/Oポート18の設定機能によって予め設定されたクライアント2の通信回線上のアドレス、クライアント2が持つ物理I/Oポートの種別、番号のマッピング情報が含まれる。」(第10頁第8-13行)

「図9は、本発明の第2の実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態では、図示するように、1台のサーバ1に対して2台の本発明に従って軽量化されたクライアント2aおよび2bが接続されている。なお、1個のサーバに対して接続されるクライアントの数は図示の例に限定されるものではなく、任意の複数個のクライアントが接続可能であることは言うまでもない。
図示の実施形態において、クライアント2aはデバイスハンドラ27aとI/Oポート25aを有し、I/Oポート25aを介してI/Oデバイス4aに接続されている。
クライアント2bはデバイスハンドラ27bと2個のI/Oポート1、2を有し、それぞれI/Oデバイス4b、I/Oデバイス4cに接続されている。
サーバ1において、アプリケーション16a内には、クライアント2aが使用するアプリケーション(1)とクライアント2bが使用するアプリケーション(2)が含まれる。デバイスドライバ17a内は、クライアント2aに接続されたI/Oデバイス4aを駆動するためのデバイスドライバ(1)、クライアント2bに接続されたI/Oデバイス4bを駆動するためのデバイスドライバ(2)、I/Oデバイス4cを駆動するためのデバイスドライバ(3)が含まれる。
本実施形態において、仮想I/Oポート18aは、通信回線3を介してサーバ1に接続された各クライアント2a、2bおよび各I/Oポート25a、25b、25cを識別するために、仮想I/Oポート18aにおける仮想I/Oポート番号、各クライアント2a、2bの通信回線上のアドレス、各クライアントが持つ物理I/Oポートの種別、および物理I/Oポート番号を、それぞれ設定できる機能を有している。
図10に図9のシステムにおける設定情報を示す。またこの設定情報は第5図中のレスポンス[12]中に含まれる。
図10に示す設定情報に従って、クライアント(1)2aは、通信回線上のアドレス1で特定され、クライアント(2)2bはアドレス2で特定される。クライアント(1)2a中のI/Oポート25aは、物理I/Oポート種別がCOMで、物理I/Oポート番号が1として特定される。クライアント(2)2b中の2個のI/Oポート25b、25cは、物理I/Oポート番号1、2で特定される。マッピング情報は、クライアントが持つ物理I/Oポートの種別、番号と仮想I/Oポート番号として設定された番号とを、1対1で対応させる。例えば、図10の例では、クライアント(1)2aの物理I/Oポート種別、番号=COM1は、仮想I/Oポート番号1に対応する。更にクライアント(2)2b中のCOM1は仮想I/Oポート番号2に、COM2は仮想I/Oポート番号3に、それぞれ1対1で対応する。
図9のシステムにおいて、クライアント(1)2aに電源が投入されると、デバイスハンドラ27aが起動し、通信回線上のアドレス0(サーバ1)とアドレス1(クライアント2a)間で仮想I/Oポート18aとのコネクションが確立される。以降の仮想I/Oポート18aとデバイスハンドラ27a間のデータ転送はこのコネクション上で行われる。デバイスドライバ17aからI/Oデバイス4aに対する処理は、仮想I/Oポート18a上でI/Oポート25aに対する処理として受け付けられ、処理電文にI/Oポート25aを示すCOM1が付加され、デバイスハンドラ27aに転送される。デバイスハンドラ27aでは、処理電文に付された情報COM1から、I/Oポート25aが識別され、これに対して処理が行われる。
一方、I/Oポート25aで発生したイベントには、デバイスハンドラ27aにおいて処理電文に1が付加され、仮想I/Oポート18aへパケット送信される。従って仮想I/Oポート18aでは、仮想I/Oポート番号1が認識され、仮想I/Oポート番号1に対応するデバイスドライバ(1)にイベント発生が通知される。
クライアント2bに関しても、通信回線上のアドレス0とアドレス2間のコネクション上で、同様にして処理される。即ち、仮想I/Oポート18aとI/Oポート25b間は、仮想I/Oポート番号2とCOM1が1対1で対応し、仮想I/Oポート18aとI/Oポート25c間は、仮想I/Oポート番号3とCOM2とが1対1で対応する。従って、アドレス0とアドレス2間のコネクション上で往復される処理電文には、情報として仮想I/Oポート番号2、COM1あるいは仮想I/Oポート番号3、COM2が付加され、I/Oポート番号25bまたはI/Oポート番号25cが特定される。
本実施形態のサーバ/クライアントシステムでは、以上の様にして1個のサーバで、複数個のI/Oポートを有する複数個のクライアントを一元的に管理することができる。この場合、複数のクライアントに接続される複数種類のI/Oデバイスのの各デバイスドライバは、従来のシステムにおけるデバイスドライバを変更せずに全てサーバ側で動作させることができるので、全てのデバイスドライバの版数をサーバ側で確認し、管理することができる。」(第17頁第3行-第19頁第23行)

(2)刊行物1発明
刊行物1には、「サーバ/クライアントシステム」の発明が記載されており、図9に示される第2の実施形態として、「アプリケーション16a、デバイスドライバ17a、仮想I/Oポート18aを備えたサーバ1と、デバイスハンドラ27a、I/Oポート25aを備えたクライアント(1)2a、及び、デバイスハンドラ27b、I/Oポート(1)25b、I/Oポート(2)25cを備えたクライアント(2)2bと、が通信回線3を介して接続されたサーバ/クライアントシステム」が記載されている。

刊行物1の図4には、発明の1実施形態におけるデータフローが記載されており、その説明によると、刊行物1記載のサーバ/クライアントシステムは、「(1)アプリケーション16は、入出力したいデータを含む入出力処理要求[1]をデバイスドライバ17に対して行い、(2)デバイスドライバ17は、入出力処理要求[1]に従い、仮想I/Oポート18の入出力制御[2]を行う。(3)仮想I/Oポート18は入出力制御[2]を通信回線3上のデータに変換し、クライアント2側のデバイスハンドラ27に入出力制御パケット[3]として送信する。(4)デバイスハンドラ27は入出力制御パケット[3]を受信すると、内容を解釈しI/Oポート25の入出力制御[4]を行う」(第9頁第1行-第9行)という動作をするものである。
このデータフローは、上記第2の実施形態においても同様であると考えられるから、刊行物1には、第2の実施形態として、「前記アプリケーション16aからの入出力処理要求に従い前記デバイスドライバ17aは、前記仮想I/Oポート18aの入出力制御を行い、該仮想I/Oポート18aは、該入出力制御を通信回線3上のデータに変換し、クライアントのデバイスハンドラに、入出力制御パケットとして送信し、前記デバイスハンドラは、前記入出力制御パケットを受信すると、内容を解釈し、I/Oポートの入出力制御を行」うものが記載されているといえる。
ここで、仮想I/Oポートは、「クライアント2側のI/Oポート25と同一に機能するインターフェースを、その上位のデバイスドライバ17に提供する」(第8頁第3-6行)ものであり、デバイスドライバは、「従来のシステムにおけるデバイスドライバを変更せずに全てサーバ側で動作させ」(第19頁第21-22行)たものであり、従来のデバイスドライバが行うI/Oポートの入出力制御は、I/Oポート番号(ポートアドレス)を用いて行われるから、デバイスドライバ17aが行う仮想I/Oポート18aの入出力制御は、仮想I/Oポート番号を用いて行われるといえる。
また、「仮想I/Oポート18a」が、「入出力制御を通信回線3上のデータに変換し、クライアントのデバイスハンドラに、入出力制御パケットとして送信」するときには、「処理電文にI/Oポート25aを示すCOM1が付加され」(第18頁第25-26行)、あるいは、「COM2が付加され」(第19頁第15行)る。これらは、各クライアントが持つ「物理I/Oポート種別、番号」(第18頁第13-17行)である。さらに、この「クライアント」は、「図10に示す設定情報に従って、クライアント(1)2aは、通信回線上のアドレス1で特定され、クライアント(2)2bはアドレス2で特定される」(第18頁第5-7行)のであるから、「通信回線上のアドレス(1、2)により特定されるクライアント」といえる。
また、「デバイスハンドラ」が、「入出力制御パケットを受信すると、内容を解釈し、I/Oポートの入出力制御を行」うときについて、「デバイスハンドラ27aでは、処理電文に付された情報COM1から、I/Oポート25aが識別され、これに対して処理が行われる」(第18頁第27行-第19頁第2行)のであり、デバイスハンドラ27bについても同様であるから、「デバイスハンドラは、前記入出力制御パケットを受信すると、内容を解釈し、物理I/Oポートの種別、番号(COM1、COM2)により特定されるI/Oポートの入出力制御を行」うといえる。

「仮想I/Oポート18aは、通信回線3を介してサーバ1に接続された各クライアント2a、2bおよび各I/Oポート25a、25b、25cを識別するために、仮想I/Oポート18aにおける仮想I/Oポート番号、各クライアント2a、2bの通信回線上のアドレス、各クライアントが持つ物理I/Oポートの種別、および物理I/Oポート番号を、それぞれ設定できる機能を有している」(第17頁第23行-第18頁第2行)ものであり設定された情報は、図10に示される「設定情報」(第18頁第3行)であり、また、「レスポンス[12]が仮想I/Oポート18よりデバイスハンドラ27に出力される」ときの「レスポンス[12]」に含まれるのは、「仮想I/Oポート18の設定機能によって予め設定されたクライアント2の通信回線上のアドレス、クライアント2が持つ物理I/Oポートの種別、番号」(第10頁第9-13行)である。
これらの記載から、刊行物1記載のサーバ/クライアントシステムにおける「前記仮想I/Oポート番号、前記各クライアントが持つ物理I/Oポートの種別、番号、前記各クライアントの通信回線上のアドレスは、前記仮想I/Oポート18aの設定機能によって予め対応付けられて設定された設定情報(図10)である」ということができる。

以上をまとめると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると認められる。

[刊行物1発明]
アプリケーション16a、デバイスドライバ17a、仮想I/Oポート18aを備えたサーバ1と、デバイスハンドラ27a、I/Oポート25aを備えたクライアント(1)2a、及び、デバイスハンドラ27b、I/Oポート(1)25b、I/Oポート(2)25cを備えたクライアント(2)2bと、が通信回線3を介して接続されたサーバ/クライアントシステムであって、
前記アプリケーション16aからの入出力処理要求に従い前記デバイスドライバ17aは、仮想I/Oポート番号を用いて前記仮想I/Oポート18aの入出力制御を行い、該仮想I/Oポート18aは、該入出力制御を通信回線3上のデータに変換し、各クライアントが持つ物理I/Oポートの種別、番号(COM1、COM2)を付加して、通信回線上のアドレス(1、2)により特定されるクライアントのデバイスハンドラに、入出力制御パケットとして送信し、前記デバイスハンドラは、前記入出力制御パケットを受信すると、内容を解釈し、物理I/Oポートの種別、番号(COM1、COM2)により特定されるI/Oポートの入出力制御を行い、
前記仮想I/Oポート番号、前記各クライアントが持つ物理I/Oポートの種別、番号、前記各クライアントの通信回線上のアドレスは、前記仮想I/Oポート18aの設定機能によって予め対応付けられて設定された設定情報(図10)である、
サーバ/クライアントシステム。

3.対比
刊行物1発明の「デバイスドライバ17a」は、I/Oポート25a、25b、25cを制御するためのひとまとまりの要素であるから、本願発明の「入出力制御モジュール」に相当する。

刊行物1発明の「仮想I/Oポート」は、「入出力制御を通信回線3上のデータに変換し、各クライアントが持つ物理I/Oポートの種別、番号を付加して、通信回線上のアドレスにより特定されるクライアントのデバイスハンドラに、入出力制御パケットとして送信」するものであって、これらの付加される、各クライアントが持つ物理I/Oポートの種別、番号や通信回線上のアドレスは、「仮想I/Oポート18aの設定機能によって予め対応付けられて設定された」ものであるから、刊行物1発明の「仮想I/Oポート」は、「I/Oポート管理モジュール」といえるものである。
本願発明の「スロット管理モジュール」は、スロットが挿入されるスロットインターフェースを管理するものであり、刊行物1発明の「I/Oポート管理モジュール」も、インターフェースであるI/Oポートを管理するものであるから、両者は「インターフェース管理モジュール」といえる点で共通するものである。

刊行物1発明の「デバイスハンドラ」は、「I/Oポートの入出力制御を行」うものであるから、「インターフェース制御モジュール」といえるものである。
本願発明の「スロット制御モジュール」は、スロットインターフェースを制御するものであって、「インターフェース制御モジュール」といえるから、刊行物1発明の「デバイスハンドラ」とは、「インターフェース制御モジュール」といえる点で共通するものである。

刊行物1発明の「I/Oポート」は、インターフェースであるから、本願発明の「スロットインターフェース」と「インタフェース」である点で共通する。

刊行物1発明の「設定情報(図10)」は、「前記仮想I/Oポート18aの設定機能によって予め対応付けられて設定された」ものであって、「前記仮想I/Oポート番号、前記各クライアントが持つ物理I/Oポートの種別、番号、前記各クライアントの通信回線上のアドレス」である。この「設定情報(図10)」は、「仮想I/Oポート番号」(「仮想インターフェース識別情報」といえる)を、「各クライアントが持つ物理I/Oポートの種別、番号、前記各クライアントの通信回線上のアドレス」(「物理インターフェース識別情報」といえる)に対応付けるものとみることができ、「物理インターフェース識別情報/仮想インターフェース識別情報対照表」ということができる。本願発明の「物理スロット/仮想スロット対照表」も、物理スロット識別情報を仮想スロット識別情報に対応付けるものであるから、両者は、「物理インターフェース識別情報/仮想インターフェース識別情報対照表」といえる点で共通しているといえる。

刊行物1発明の「I/Oポート25a」及び「I/Oポート(1)25b、I/Oポート(2)25c」は、「デバイスドライバ17a」の下位に位置するものであり、それらの間に、「仮想I/Oポート18a」、「デバイスハンドラ27a」及び「デバイスハンドラ27b」を備えている。
また、「設定情報(図10)」は、「仮想I/Oポート18aの設定機能によって予め対応付けられて設定された」ものであり、この設定された情報の(COM1、COM2)を、仮想I/Oポート18aは、入出力制御を変換した通信回路3上のデータに付加して通信回線上のアドレス(1、2)により特定されるクライアントのデバイスハンドラに送信するのであるから、「設定情報(図10)」は、仮想I/Oポート18aがアクセスし得る位置に備えられていると考えられる。この位置は、本願の【図7】のスロット管理モジュール109と物理スロット/仮想スロット対照表111との位置関係と同じであるから、刊行物1発明の「設定情報(図10)」は、「デバイスドライバ17a」と「I/Oポート25a」及び「I/Oポート(1)25b、I/Oポート(2)25c」の間に備えられているといえる。

刊行物1発明では、「デバイスドライバ17aは、仮想I/Oポート番号を用いて前記仮想I/Oポート18aの入出力制御を行い」、その結果、デバイスハンドラを介して「I/Oポートの入出力制御を行」うのであるから、「デバイスドライバ17aは、仮想I/Oポート番号を用いてI/Oポートにアクセス」するといえる。

刊行物1発明では、仮想I/Oポート18aは、「仮想I/Oポート番号を用いて」デバイスドライバ17aから入出力制御が行われるものであり、「仮想I/Oポート18aは、該入出力制御を通信回線3上のデータに変換し、各クライアントが持つ物理I/Oポートの種別、番号(COM1、COM2)を付加して、通信回線上のアドレス(1、2)により特定されるクライアントのデバイスハンドラに、入出力制御パケットとして送信し、前記デバイスハンドラは、前記入出力制御パケットを受信すると、内容を解釈し、物理I/Oポートの種別、番号(COM1、COM2)により特定されるI/Oポートの入出力制御を行」うのであり、「前記仮想I/Oポート番号、前記各クライアントが持つ物理I/Oポートの種別、番号、前記各クライアントの通信回線上のアドレスは、前記仮想I/Oポート18aの設定機能によって予め対応付けられて設定された設定情報(図10)である」。
これらのことから、刊行物1発明の仮想I/Oポート18aは、仮想I/Oポート番号が指定され、設定情報を参照して、各クライアントが持つ物理I/Oポートの種別、番号(COM1、COM2)を付加するとともに通信回線上のアドレス(1、2)により特定されるクライアントのデバイスハンドラにアクセスしている、即ち、仮想I/Oポート番号を、物理I/Oポートの種別、番号(COM1、COM2)やクライアントの通信回線上のアドレス(1、2)に変換して対応するデバイスハンドラにアクセスしているということができる。
その結果、「デバイスハンドラは、前記入出力制御パケットを受信すると、内容を解釈し、物理I/Oポートの種別、番号(COM1、COM2)により特定されるI/Oポートの入出力制御を行」うのであるから、全体として、デバイスドライバ17aによるI/Oポート25a、25b、25c(インターフェース)への物理的なアクセスが実現されているといえ、刊行物1発明は、「インターフェースアクセス装置」ともいえるものである。

以上をまとめると、本願発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
入出力制御モジュールとその下位のインターフェースとの間に、インターフェース管理モジュール、インターフェース制御モジュール及び物理インターフェース/仮想インターフェース対照表を備え、
前記入出力制御モジュールは、仮想インターフェース識別情報を用いて前記インターフェースにアクセスし、
前記インターフェース管理モジュールが、前記物理インターフェース/仮想インターフェース対照表を参照して、仮想インターフェース識別情報を物理インターフェース識別情報に変換し、変換により得られた物理インターフェース識別情報に対応するインターフェース制御モジュールにアクセスすることにより、前記入出力制御モジュールによる前記インターフェースへの物理的なアクセスが実現されることを特徴とするインターフェースアクセス装置。

[相違点]
本願発明は、「スロットインターフェースアクセス装置」であって、「インターフェース管理モジュール」、「インターフェース制御モジュール」、「物理インターフェース/仮想インターフェース対照表」、「仮想インターフェース識別情報」、「物理インターフェース識別情報」は、スロットインターフェースを対象とした、「スロット管理モジュール」、「スロット制御モジュール」、「物理スロット/仮想スロット対照表」、「仮想スロット識別情報」、「物理スロット識別情報」であるのに対し、刊行物1発明は、I/Oポートをアクセスの対象とした「インターフェースアクセス装置」であり、スロットインターフェースを対象とした「スロットインターフェースアクセス装置」ではない点。

4.当審の判断
刊行物1発明のサーバ/クライアントシステムにおけるクライアントのI/Oポートは、システムに外部接続するI/Oデバイスとの情報の入出力に使用する、コネクタなどの端子を含むインタフェースであり、そのコネクタなどの端子の形状や端子の周りのハードウェア構成は、外部接続するI/Oデバイスの構成と合わせて設計するものである。
刊行物1発明は、外部接続するI/Oデバイスやインターフェースのハードウェア構成は特定のものに限られるわけではなく、公知の任意のものを採用し得るものであることは当業者には明らかである。
一方、このようなシステムに外部接続するI/Oデバイスとのインターフェースとしては、標準規格となっているものも含めて様々なものが知られており、その1つとして、複数のスロットに対して複数のパッケージを挿入する構成の(コネクタなどの端子を含む)インターフェースは、原査定の拒絶の理由で引用された特開平8-213994号公報(以下、「刊行物2」という。特に、【図1】、【0052】を参照)に記載されているように知られたものである。
したがって、刊行物1発明において、クライアントのインターフェースのハードウェア構成として、上記刊行物2に記載された、複数のスロットに対して複数のパッケージを挿入する構成のインターフェース(本願発明の「スロットインターフェース」に相当する)を採用してスロットインターフェースアクセス装置とすることは当業者が容易に想到し得ることであり、その場合には、「インターフェース管理モジュール」、「インターフェース制御モジュール」、「物理インターフェース/仮想インターフェース対照表」、「仮想インターフェース識別情報」、「物理インターフェース識別情報」は、スロットを対象とした、「スロット管理モジュール」、「スロット制御モジュール」、「物理スロット/仮想スロット対照表」、「仮想スロット識別情報」、「物理スロット識別情報」と言い得るものとなる。
また、そのように容易に想到し得る構成が奏する効果は当業者が予測し得るものである。

よって、請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-24 
結審通知日 2014-12-25 
審決日 2015-01-06 
出願番号 特願2012-228951(P2012-228951)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古河 雅輝  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山田 正文
千葉 輝久
発明の名称 スロットインターフェースアクセス装置、その方法及びそのプログラム並びに主装置の冗長構成及び代替方法  
代理人 仲野 孝雅  
代理人 永井 道雄  
代理人 関口 正夫  

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