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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01T
管理番号 1297810
審判番号 不服2013-20658  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-24 
確定日 2015-02-18 
事件の表示 特願2005-110860「低エネルギー検出能力を有する堅牢化シンチレーション検出器」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月27日出願公開、特開2005-300542〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成17年4月7日(パリ条約による優先権主張2004年4月8日、米国)の出願であって、平成25年6月18日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、同年10月24日に請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年10月24日付けの手続補正によって、請求項の削除を目的として補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
放射線検出器(10)であって、
ハウジング(12)と;
前記ハウジングの内部に支持された、ほぼ円筒形のシンチレーション結晶(16)及び光電子増倍管(20)と;
前記シンチレーション結晶及び前記光電子増倍管(20)に沿って延びており、半径方向において前記シンチレーション結晶及び前記光電子増倍管アセンブリと前記ハウジングとの間にある、複数の平坦で細長い非金属ばね(50)と
を具備し、
前記非金属ばねは、使用中、前記放射線検出器(10)へ入るガンマ線の減衰を小さく抑え、
前記ハウジング(12)も円筒形であり、前記シンチレーション結晶の一端部に、少なくとも1つの弾性部材(52)が配置され、前記弾性部材は、前記ハウジングの端壁(26)と前記シンチレーション結晶の前記一端部との間に軸方向に延出し、
前記少なくとも1つの弾性部材は、少なくとも1つの環状波形ばね(52)を具備し、
前記少なくとも1つのばね(52)の対向する軸方向側面に、圧縮板(54)が配置される
ことを特徴とする、放射線検出器(10)。」

3 引用刊行物
(1)引用刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である2003年10月9日に頒布された国際公開第03/083512号(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(引用例1は英文なので、ここでは、日本語訳として引用例1のファミリーである特表2005-521068号の記載事項を採用する。また、下線は当審で付した。)
a 発明の詳細な説明の記載
「[0001]
本発明は、その用途に限定されないが、特に固体鉱物採掘作業又は油井検層作業(業界ではワイヤライン作業と呼ばれる)で使用される放射線検出器に適用可能である低価格で、高性能の計装パッケージ、並びに衝撃レベル及び振動レベルが更に極度に高い穿孔中測定(MWD)作業又は穿孔中検層(LWD)作業のための高集積度電気光学放射線検出器に関する。」
「[0006]
シンチレーション要素の周囲で相対的に厚いステンレス鋼ハウジング、又はシールドを使用すると、ガンマ放射がパッケージ内に侵入するときのガンマ放射の減衰が増加する。
[0007]
同様に、堅牢化シンチレーションパッケージのコストを増大させる要因もいくつかある。これは、先に説明した性能上の弱点を最小にすることを指向しているデザインに特に当てはまる。厚いガラス窓の代わりに薄いサファイアの窓を使用する場合、サファイアはガラスより高価であるため、コスト高につながり、特にごく少量のサファイアを処理する場合には著しく高い費用が必要になる。チタンを使用すると、ステンレス鋼より減衰は減少するが、高い強度は維持され、同じ強度であれば、アルミニウムより薄くすることができる。しかし、シールドとしてチタンを使用した場合、ステンレス鋼より高価である。チタン金属はより高価であるばかりでなく、シールドを製造する際に当該技術分野で容易に利用できるチタンパイプのサイズや配管類のサイズでは、シールドを所要の許容差まで加工するために必要とされる作業の量も増えてしまう。全ての変数が与えられたとして、機械加工の費用を最小限に抑えるために押し出し成形チタンパイプの特殊研磨作業を実行することは、多くの場合、営利面で受け入れられない。従って、技術的問題と営利上の問題の双方に対処した設計上のアプローチが必要とされている。」
「[0066]
次に図5及び図6を参照すると、一実施例に従った放射線(例えば、ガンマ線)検出器50はシンチレーション要素又は結晶52と、光電子増倍管(PMT)54とを含み、これらは管又はシールド56の内部に気密に密封されている。
[0067]
結晶52とPMT54は、光カップラ58によって、間に窓部を挟まずに直接に結合されている。光カップラ58を介して結晶52を直接に結合するためには、特に、苛酷な環境で使用されるべき検出器の場合に、様々な技術上の問題を解決しなければならない。必要な措置は、管又はシールド56の内部に結晶52及びPMT54を支持するための特別の手段を設けること、並びに他の重要な問題点を考慮することを含む。
[0068]
この実施例では、結晶52はシールド56の一端部に、他端部にPMT54及び光カップラ58が配置された状態で位置決めされる。結晶52が配置されるシールド56の端部はエンドプラグ60で密封されている。シールド56のPMT側端部は貫通接続部62により気密にされている。図5及び図6に示される、PMT54を機能させるために必要な電気分割器ストリング64は、シールド56の気密密封部分に含まれている。分割器ストリング64に向かう電力及びPMT54からの信号は、気密に密封された貫通接続部62を通過する。この特定の実施例においては、検出器50の、気密に密封されていない電子回路ハウジング部分68に、前置増幅器アセンブリ66が含まれる。前置増幅器アセンブリ66は、アセンブリとハウジング68との間の軸方向に延出する半径方向ばね70(図8を参照)により支持されていても良いし、あるいは可撓性支持スリーブにより支持されていても良い。ハウジング部分68に配置された他の電子部品はPCボードマウント72、電源、デジタル処理回路、又は従来の性質を持っていても良い他の電気部品を含み、検出器から引き出しワイヤ76が延出している。
[0069]
ガンマ線が結晶52の中でシンチレーションフラッシュを発生すると、シンチレーションポイントからあらゆる方向に光が発する。検出器50を効率良く動作させるためには、シンチレーション要素又は結晶52により発生され、PMT54に向かう以外の方向に進む光をPMTに向かって反射させることが必要である。この実施例では、反射体は、結晶52の円筒形部分の周囲に巻き付けられたTEFLON(登録商標)の反射テープと、PMT54の側ではない結晶52の端部にある反射ディスク74から構成されている。このディスク74は、アルミナを含む様々な材料から製造されていても良い。ディスク74に代わる手段は、結晶52の円筒形部分の周囲で使用される反射テープ材料の複数の層から製造されたパッドである。結晶52のいくつかの領域からの反射の量は、結晶の表面の形状を変えることにより増加する。例えば、PMTに向かう光の拡散反射を改善するために、PMT54から離れた側の領域の結晶表面を研磨するか又はスクラッチすることは一般に行われている。
[0070]
結晶52からPMT54への光の伝達の効率を上げるために、ここでは光結合流体を充満されたオイルリング付きカップラとして示されている光カップラ装置58はシリコン油であるのが好ましい。このカップラ58は、相当に大きな軸方向荷重を支えることが可能であるSylgard(登録商標)パッドであるのが好ましく、PMT54の面板82上に成形されており、実現可能であれば、PMTを包囲するPMTハウジング78上に成形されている。別の結合方法は、結晶52の端部80をPMT54の面板82に接合する。更に別の結合方法は、カップラ58の両面に油保持リングを有するオイルリング付きカップラであろう。
[0071]
振動レベルが40Grmsにも達するようなある種のMWD作業などの極端な振動条件の下で、雑音のない動作が要求される場合、追加の支持手段を設けることが必要とされる。この実施例では、前方部分84及び後方部分86を含むPMTハウジング78の内部にPMT54が収納されている。前方部分84はPMT54を越えて延出し、PMT54と結晶52との間の光学的結合接合面と重なり合っている。前方部分84の遠いほうの端部には複数の周囲方向に互いに離間して配置された溝穴88が形成されており、前方部分84の溝穴が形成された端部の前方には環状間隙90が位置している。言い換えれば、PMTハウジングの前方部分84は、PMTハウジングと結晶52にあるテーパ形状の段差部94との間に軸方向に間隙90が形成された状態で、結晶52の径小部分92を覆うように摺動自在に受け入れられている。本明細書中で更に説明するような理由により、結晶の径小部分92には、潤滑反射材料又は他の適切な反射性で、摩擦の少ない材料で被覆された金属バンド96が配置されている。
[0072]
PMTハウジング78の前方部分84は、図中符号98で示す第1の内径から図中符号100で示す第2の内径及び図中符号102で示す第3の内径に至るまで徐々に直径が大きくなるように形成されている。第1の内径98の大きさは、PMT54とハウジング78との間に、RTVとして知られるシリコン系ゴム材料104で充填された半径方向空間を形成するように規定されている。この材料は、PMT54の面に成形される間のSylgard(登録商標)の漏れを防止する。
[0073]
第2の内径100の大きさは、軸方向に延出する、周囲方向に互いに離間して配置された複数の半径方向の帯状ばね106(通常はステンレス鋼)をPMT54とPMTハウジング78との間に半径方向に挿入できるように規定されている。それらのばね106はPMTの長さの大半の部分に沿って延出し、PMT54の後端部にあるテーパ形状の段差部108で終わっている。直径1インチの検出器の場合、ばねは厚さ約0.005インチ、幅0.37インチということになるであろう。共振振動数及び他の特性を変化させるために、他の大きさを選択しても良い。PMTばね106の代わりに、本明細書中で更に説明するスリーブ120に類似する別の可撓性で、多角形のスリーブを使用しても差し支えない。
[0074]
第3の内径102の大きさは、PMTが滑って戻るのを防止するスプリットリング110及び複数の環状シム又はスペーサ112を挿入できるように規定されている。更に、この構成は異なる長さのPMTの使用を可能にする。すなわち、より長いPMT又は短いPMT(図1及び図2に想像線により示す)に対応するために、必要に応じてシムを除去又は追加することができる。
[0075]
PMTハウジングの後方部分86は、ハウジング78の前方部分84の中に入れ子式に受け入れられる径小端部114を有する。後方部分86の反対側の端部には、エンドキャップ116を受け入れるための穴が形成されている。エンドキャップ116と分割器ストリング64との間の空間をRTV材料118が部分的に充填している。
[0076]
破損しやすいヨウ化ナトリウムなどの材料から製造されている場合が多いもろい結晶52と、PMT54とを支持することが必要である重大な理由の1つは、特に光カップラ58の周囲の領域におけるアセンブリの湾曲を防止することである。湾曲が許されてしまうと、大きな振動を受けたとき、材料の動きによって光パルスが発生されることが多い。接合面が透明結合材料、例えば、カップラ58を使用するPMT54と結晶52との接合により構成されている場合、この接合部は実際に破損される可能性がある。残念ながら、PMT54に対する結晶52のわずかな相対運動の結果として発生する非常にわずかな量の湾曲であっても、これらの問題は存在している。PMT/結晶アセンブリの周囲に薄く、多角形の形状の可撓性支持スリーブ120を設けることにより、湾曲は防止される。このスリーブは金属製であるのが好ましいが、ばね特性を示す、他の強度の高い材料から製造されていることも可能であろう。再び図5を参照すると、可撓性支持スリーブ120は気密管又はシールド56の半径方向内側に配置され、結晶52を包囲している。この可撓性支持スリーブ120(更に図6及び図7を参照)は横断面が多角形であり、金属が薄くても(0.002インチから0.005インチの範囲)、相対的に剛性である。図示される実施例においては、可撓性支持スリーブ120は10の平坦な面を有し、各々の面が約0.28インチの幅を有する。各々の平坦な面134は、結晶を包囲する半径方向及び軸方向支持アセンブリ122の外面、並びにPMTハウジング78の外面と係合している。平坦な面134により規定される角部136は気密管又はシールド56の内面と係合している。その結果、可撓性支持スリーブ120はPMT54と結晶52との間の湾曲を最小にするのに有効である。PMT54及び結晶52の周囲のPMTハウジング78の直径(以下に更に説明する支持材料を含む)は、可撓性支持スリーブ120のほぼ全長に沿って接触が成立するようにほぼ同じに形成されている。
[0077]
結晶52には、TEFLON(登録商標)又は他の適切な反射テープ(テープの外面にポリアミド層があっても良い)が巻き付けられている。結晶は半径方向及び軸方向支持アセンブリ122により支持されている。支持アセンブリは、米国特許第5,962,855号に開示される種類の側壁軸方向拘束及びコンプライアンスアセンブリ、すなわち、SARCAから構成されていても良い。SARCAは、一般に、内側ポリアミドスリーブと、外側ステンレス鋼スリーブ又はラップとを含み、ラップの境界を接する外面はTeflon(登録商標)で被覆されていても良い。尚、SARCAは、PMTハウジング78の軸方向の動きを制限しないように、結晶52とPMT54との間に配置された光カップラ58に最も近い一端部で、結晶より軸方向に短いことに注意する。同様に、可撓性支持スリーブの長さは同じ理由によりPMT/結晶アセンブリの組み合わせ長さより短くなっている。
[0078]
別の構成においては、支持アセンブリ122は反射Teflon(登録商標)テープの最上部を覆うような複数の環状支持リングを含んでいても良く、それらのリングの間には追加の層が設けられている。第1に挙げたSARCA支持アセンブリは特にMWD作業で有用であるが、第2に挙げた支持アセンブリは特にワイヤライン構造において有用である。SARCA構造は、図1に示す、可撓性支持スリーブ18の半径方向内側に配置されたパッケージで採用されても良いことが理解されるであろう。
[0079]
気密管56の結晶側端部はエンドキャップ又はエンドプラグ60により、エンドプラグと結晶の後端部の反射ディスク122との間に軸方向ばね124が挿入された状態で閉鎖されている。気密管56のPMT側端部は貫通接続部62により、貫通接続部とエンドキャップ116との間に軸方向ばね126が挿入された状態で密封されている。従って、ばね124及び126はPMT54と結晶52を互いに向かう方向に偏向し、カップラ58における圧縮係合を維持している。ばね124、126により発生される軸方向の力は、ばねの大きさ、熱膨張の差及び力学的な力により判定される。それらのばね124、126により要求される力は、可撓性スリーブ120の使用により大幅に減少される。可撓性スリーブは、非線形エラストマー支持部により発生されると考えられる割合よりはるかに小さい予測可能な割合で増加する、指定された軸方向拘束を実現する。
[0080]
ここでは可撓性ダイナミックハウジング128と呼ばれる別の半径方向支持アセンブリが気密管又はシールド56を包囲しており、このダイナミックハウジングは薄い、外側可撓性金属スリーブ132の内部に複数の軸方向に延出する金属ばね130を含む。スリーブ132は、厚さ0.0015インチのステンレス鋼の薄板を圧延して、2つの完全な層を形成し、それらを高温用接着剤によって接合することにより製造されても良い。別の構造においては、ばね130の代わりに、スリーブ120に類似する、横断面が多角形の外側可撓性金属支持スリーブを使用しても良い。可撓性ダイナミックハウジング(ばね130又は外側可撓性スリーブを含む)は検出器の全長にわたって延出し、検出器の結晶側端部にあるエンドプラグ60と、その反対側の端部のエンドプラグ142との間に延出している。」
b 図面の記載













c 引用例1の記載の考察
引用例1の[0076]、[0077]、[0078]及び[0081]に引用番号「122」の部材として「軸方向支持アセンブリ122」または「支持アセンブリ122」と記載されていること、及び、[0079]の「気密管56の結晶側端部はエンドキャップ又はエンドプラグ60により、エンドプラグと結晶の後端部の反射ディスク122との間に軸方向ばね124が挿入された状態で閉鎖されている」との記載と引用例1のFig.5の記載との関係からみて、[0079]の「反射ディスク122」は「反射ディスク74」の誤記であると認める。
また、引用例1の「可撓性ダイナミックハウジング128と呼ばれる別の半径方向支持アセンブリが気密管又はシールド56を包囲しており、このダイナミックハウジングは薄い、外側可撓性金属スリーブ132の内部に複数の軸方向に延出する金属ばね130を含む」([0080])との記載、及び、Fig.5?7,9の記載からみて、引用例1に記載された「外側可撓性金属スリーブ132」は円筒形状であって、「結晶52」及び「光電子増倍管54」は「可撓性ダイナミックハウジング128」の内部に支持されたものであるといえる。
さらに、引用例1のFig.5、7、9の記載からみて、引用例1に記載された「結晶52」及び「光電子増倍管54」は、ほぼ円筒形状であるといえる。
また、引用例1の[0080]の「ダイナミックハウジングは薄い、外側可撓性金属スリーブ132の内部に複数の軸方向に延出する金属ばね130を含む」との記載、及び、Fig.7、9の記載からみて、引用例1に記載された「金属ばね130」は、平坦で細長いものであって、「結晶52」及び「光電子増倍管54」に沿って延びるものであるといえる。

d 引用例1記載の発明
上記a及びbの記載事項及びcの考察によると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ほぼ円筒形状である結晶52と光電子増倍管54とを含み、ガンマ線が結晶52の中でシンチレーションフラッシュを発生する放射線検出器50であって、
結晶52及び光電子増倍管54は可撓性ダイナミックハウジング128の内部に支持されたものであり、
可撓性ダイナミックハウジング128は、円筒形状である外側可撓性金属スリーブ132及びその内部に複数の軸方向に延出する平坦で細長い金属ばね130を含み、
金属ばね130は結晶52及び光電子増倍管54に沿って延びるものであり、
エンドプラグ60と結晶52の後端部の反射ディスク74との間に軸方向ばね124が挿入され、軸方向ばね124は光電子増倍管54と結晶52を互いに向かう方向に偏向する
放射線検出器50。」

(2)引用刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成13年3月13日に頒布された特表2001-503507号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
a 発明の詳細な説明の記載
「この本発明のもう一つの目的は、放射線検出器に使われる様々なハウジングにチタンを利用することにより、そのようなハウジングをより薄くし、それによってより大きなシンチレーション素子のための空間を増加させることである。
本発明の他の目的は、チタンのハウジングを使うことによってガンマ線のより低い減衰を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、油井検知器、ガンマ線検知器、シンチレーション検知器等の装置内に使用される、頑丈で気密性の高い密閉された窓を提供することである。」(第18頁第6?13行)
「好ましい実施例の詳細なる説明
添付の図において、同じ参照符号は同じ要素を示すものとする。第1図と第2図においては、本発明の主題に一致して構成されたユニット型の放射線検出アセンブリ10が示される。アセンブリ10は、シンチレーション・パッケージ12を含み、そのパッケージはシンチレーション素子14並びに光電子倍増管16を含む。パッケージ12は検出器ハウジング18内に位置している。本発明は、大地を掘削してなされる環境測定、他の惑星の表面のような厳しい環境における科学的なプローブ、核施設のような厳しい商工業における適用だけでなく、MWDにも使える。
シンチレーション素子14には、沃化ナトリウム(NaI)結晶がよい。素子14は鉱泉穴(図示なし)から放射線を受領し、その放射線を光インパルスに変換し、その光インパルスを光電子倍増管16に伝搬する。光電子倍増管16は、光インパルスを受領して定量化し、光インパルスに関連する情報を電子アセンブリ20に伝搬する(詳細は、以下に述べる)。
検出アセンブリ10のすべての素子は、円筒形もしくは環状であり、長軸22に関して軸方向に対称である。
シンチレーション・パッケージ12の性質は、その分野におけるパッケージ12、シンチレーション素子14,光電子倍増管16の完全な更新および/または代用品を考慮に入れている。
溶接によってハウジング18に締められるシンチレーション素子保持器24は、検出アセンブリ10の端部を囲む。ハウジング18は、好ましくは、ベリリウム・アルミニウム・ハイブリッド材料で作られるが、他の適当な材料で作っても良い。
埋込み材料28は、シンチレーション素子14を囲む。材料28は、衝撃吸収する性質を有し、適当なエラストマで作っても良い。本実施例では、材料28は粉末形態であり、シンチレーション・シールド30内に収容される。シールド20は両端部で開口している。
シールド30は、ステンレス鋼、チタンもしくはアルミニウムのような、適当な材料からつくられる。チタンは、多くのメタルよりも低い減衰を有しており、ステンレス鋼を含めて、MWDとLWDの用途では業界標準となっている。従って、チタンを使用することで低い減衰と高い強度を提供し、結晶に利用できる空間を増やす。チタンは、サファイヤと互換性を持つので好まれる。特に、チタンとサファイヤは、同じような熱膨張係数を有し、チタンはサファイヤに効率的にろう付けできる。アルミニウムがチタンほど好まれないのは、チタンより低い減衰を有するが、アルミニウムはチタンほど強くないので厚いアルミニウムを必要とし、そのため、減衰を増加させ、結晶のスペース領域を減らすことになるからである。
シンチレーション素子端板32は、端部の保持器24に最も近いシンチレーショ・シールド30の開いた端部に付けられる。第1のシンチレーション素子膨張パッド34は、シンチレーション素子14と端板32で挟まれている。端板32と端部保持器24の間には、第2のシンチレーション素子膨張パッド35が設けられている。複数のシンチレーション素子圧縮スプリング36は、第2の膨張パッド35の外に放射状に位置する。透明なエラストマ層38は、素子14のもう一方の端部に位置する。
工ラストマ層38、膨張パッド34、35、圧縮スプリング36は、素子14に関して軸の支持とクッションを提供する。加えて、膨張パッド34とエラストマ層38はシンチレーション素子14の膨張域を提供する。この膨張域は、ユニット型放射線検出アセンブリ10が影響を受ける熱環境の高いレンジのために必要とされる。放射線検出アセンブリは、鉱泉穴への挿入に先立ち、鉱泉穴における一度の熱い環境だけでなく、冷い環境にさらされる。さらに、素子14の膨張の熱係数は、本質的に検出アセンブリ10の他の材料の膨張熱係数とは異なる。特に、結晶は熱膨張の高い係数を有する。」(第20頁第3行?第21頁第25行)
b 図面の記載
「【図2】



4 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「外側可撓性金属スリーブ132」、「光電子増倍管54」及び「放射線検出器50」は、本願発明の「ハウジング」、「光電子増倍管」及び「放射線検出器」にそれぞれ相当する。
また、引用発明は、「ガンマ線が結晶52の中でシンチレーションフラッシュを発生する」ものであるから、引用発明の「結晶52」は、本願発明の「シンチレーション結晶」に相当する。
そうすると、引用発明の「ほぼ円筒形状である結晶52と光電子増倍管54とを含み、ガンマ線が結晶52の中でシンチレーションフラッシュを発生する放射線検出器50であって、結晶52及び光電子増倍管54は可撓性ダイナミックハウジング128の内部に支持されたものであり、可撓性ダイナミックハウジング128は、円筒形状である外側可撓性金属スリーブ132」「を含」む構成は、本願発明の「放射線検出器(10)であって、ハウジング(12)と;前記ハウジングの内部に支持された、ほぼ円筒形のシンチレーション結晶(16)及び光電子増倍管(20)と」「を具備し、」「ハウジング(12)も円筒形であ」る構成に相当する。

(2)引用発明は、「結晶52及び光電子増倍管54は可撓性ダイナミックハウジング128の内部に支持されたものであり、可撓性ダイナミックハウジング128は、円筒形状である外側可撓性金属スリーブ132及びその内部に複数の軸方向に延出する平坦で細長い金属ばね130を含」むものであるから、引用発明の「金属ばね130」は、本願発明の「半径方向において前記シンチレーション結晶及び前記光電子増倍管アセンブリと前記ハウジングとの間にある」構成に相当する構成を有するものである。
そうすると、引用発明の「円筒形状である外側可撓性金属スリーブ132」「の内部に複数の軸方向に延出する平坦で細長い金属ばね130を含み、金属ばね130は結晶52及び光電子増倍管54に沿って延びるものであ」る構成と、本願発明の「シンチレーション結晶及び前記光電子増倍管(20)に沿って延びており、半径方向において前記シンチレーション結晶及び前記光電子増倍管アセンブリと前記ハウジングとの間にある、複数の平坦で細長い非金属ばね(50)とを具備」する構成とは、「シンチレーション結晶及び前記光電子増倍管に沿って延びており、半径方向において前記シンチレーション結晶及び前記光電子増倍管アセンブリと前記ハウジングとの間にある、複数の平坦で細長いばねとを具備」する構成で共通する。

(3)引用発明の「軸方向ばね124」、「反射ディスク74」は、本願発明の「弾性部材(52)」、「圧縮板(54)」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明の「エンドプラグ60と結晶52の後端部の反射ディスク74との間に軸方向ばね124が挿入され、軸方向ばね124は光電子増倍管54と結晶52を互いに向かう方向に偏向する」構成と、本願発明の「シンチレーション結晶の一端部に、少なくとも1つの弾性部材(52)が配置され、前記弾性部材は、前記ハウジングの端壁(26)と前記シンチレーション結晶の前記一端部との間に軸方向に延出し、前記少なくとも1つの弾性部材は、少なくとも1つの環状波形ばね(52)を具備し、前記少なくとも1つのばね(52)の対向する軸方向側面に、圧縮板(54)が配置される」構成とは、「シンチレーション結晶の一端部に、少なくとも1つの弾性部材(52)が配置され、前記弾性部材は、前記ハウジングの端壁(26)と前記シンチレーション結晶の前記一端部との間に軸方向に延出し、前記少なくとも1つの弾性部材の対向する軸方向側面に、圧縮板(54)が配置される」構成で共通する。

上記(1)乃至(3)から、本願発明と引用発明は、
「放射線検出器(10)であって、
ハウジング(12)と;
前記ハウジングの内部に支持された、ほぼ円筒形のシンチレーション結晶(16)及び光電子増倍管(20)と;
前記シンチレーション結晶及び前記光電子増倍管(20)に沿って延びており、半径方向において前記シンチレーション結晶及び前記光電子増倍管アセンブリと前記ハウジングとの間にある、複数の平坦で細長いばね(50)と
を具備し、
前記ハウジング(12)も円筒形であり、前記シンチレーション結晶の一端部に、少なくとも1つの弾性部材(52)が配置され、前記弾性部材は、前記ハウジングの端壁(26)と前記シンチレーション結晶の前記一端部との間に軸方向に延出し、
前記少なくとも1つの弾性部材の対向する軸方向側面に、圧縮板(54)が配置される、
放射線検出器(10)。」
で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
A シンチレーション結晶及び光電子増倍管アセンブリとハウジングとの間にある、複数の平坦で細長いばねが、本願発明は、「非金属ばね」であって、「使用中、前記放射線検出器へ入るガンマ線の減衰を小さく抑え」るのに対し、引用発明は、「金属ばね」である点。
B 少なくとも1つの弾性部材が、本願発明は、「少なくとも1つの環状波形ばねを具備」するのに対し、引用発明は、どのようなものか不明である点。

5 当審の判断
以下、上記A及びBの相違点について検討する。
(Aの相違点について)
引用例2には、ガンマ線検知器において、シンチレーション素子14(本願発明の「シンチレーション結晶」に相当。)を囲むシンチレーション・シールド30の材料として低い減衰を有するチタンを採用すること(第20頁第26行?第21頁第10行)、及び、放射線検出器に使われる様々なハウジングにチタンを利用することにより、シンチレーション素子のための空間を増加させ、ガンマ線のより低い減衰を提供すること(第18頁第6?13行)が、記載されている。
また、シンチレーション要素の周囲に相対的に厚いステンレス鋼シールドを使用すると、ガンマ線放射がパッケージ内に侵入するときのガンマ放射の減衰が増加することが、引用例1([0006])に記載されている。
ここで、引用発明においても上記引用例2記載の事項の如く、ガンマ線のより低い減衰が望ましいことは自明の事項であるから、これらの引用例1,2の記載からすると、引用発明において、結晶52の周囲にはガンマ線の減衰が少ない物質を配置することが好ましいことは明らかである。
そして、一般に、金属よりも非金属の方がガンマ線の減衰が少ないことは周知の事項であるから、引用発明の結晶52の周囲に配置される「金属ばね」に代えて非金属ばねを採用して、上記相違点Aに係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(Bの相違点について)
環状波形ばねは引用例を挙げるまでもなく周知であって、引用発明の「軸方向ばね124は光電子増倍管54と結晶52を互いに向かう方向に偏向する」機能、及び、引用例1のFig.5のシンチレーションパッケージの部分断面側面図における「軸方向ばね124」の記載からすると、引用発明の軸方向ばね124として、環状波形ばねを採用することに格別の困難性も阻害要因もない。
したがって、上記相違点Bに係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

上記A及びBの相違点については上記のとおりであり、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の事項から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本願発明は、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-17 
結審通知日 2014-09-24 
審決日 2014-10-07 
出願番号 特願2005-110860(P2005-110860)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 靖  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 土屋 知久
伊藤 昌哉
発明の名称 低エネルギー検出能力を有する堅牢化シンチレーション検出器  
代理人 田中 拓人  
代理人 小倉 博  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  

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