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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16J
管理番号 1297894
審判番号 不服2013-25440  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-25 
確定日 2015-02-26 
事件の表示 特願2008-555881「シール」拒絶査定不服審判事件〔平成19年8月30日国際公開、WO2007/096664、平成21年7月30日国内公表、特表2009-527712〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、2007年2月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年2月20日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月20日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年8月26日)、これに対し、同年12月25に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成25年5月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
弾性環状ボディと、前記環状ボディ内に埋設された環状補強部材と、FKMエラストマーおよびFFKMエラストマーの1つからなるコーティングと、を有する真空ポンプ用環状Oリングシール。」

また、本願明細書には、請求項1の「FKMエラストマーおよびFFKMエラストマーの1つからなる」という事項に関して、「第1の側面では、本発明は、弾性環状ボディと、環状ボディに埋設された環状補強部材と、FFKMエラストマーのコーティングと、を有するシールを提供する。」(段落【0006】)との記載及び「FFKMエラストマーは、環状ボディが形成されるFKMエラストマーよりも優れた耐食性を有する他のFKMエラストマーによって置き換えられてもよい。」(段落【0012】)との記載がある。

第2 刊行物
1 刊行物1
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された実願昭60-71397号(実開昭61-188072号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、「Oリング」に関して、図面(特に、第1図、第2図、及び第4図参照。)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「〔産業上の利用分野〕
本考案は環状に形成され2面間に介装されガス、液体等の流体の漏洩を封止するOリングに関するものである。
〔従来の技術〕
一般にOリングはゴムや4弗化エチレン樹脂等で断面円形の環状に形成されており、これを軸外周と軸受内周の環状溝との間や、フランジ平面と他方のフランジの環状溝との間等に介装してガスや液体等の流体の漏洩を封止するものであつて、介装に際してはこれを断面が楕円形に弾性変形するように半径方向または厚み方向に圧縮することによりシール性を得ている。」(1ページ8行?20行)

(2)「〔考案が解決しようとする問題点〕
しかしながら、従来のOリングは前述したようにゴムや合成樹脂等の単体で形成したりこれをガラス繊維で補強したりしたものであつたために、これに強い圧力を加えると永久変形して弾性復帰力がなくなり、シール性が低下するので、大きな圧力が加えられず、満足したシール性を期待することができなかつた。そして、ガスケツトには強い緊縛力を得るためにコイルばね入りのものが用いられているが、Oリングにはこのようなものが見当らない。
〔問題点を解決するための手段〕
このような問題点を解決するために本考案ではOリングを弾性材により環状にモールドし、モールドに際し芯材としてコイルばねを埋設した。
〔作 用〕
このように構成することにより、このOリングを2面間で挟持させて半径方向または厚み方向へ圧力を加えると、芯材のコイルばねがモールド材とともに圧縮されて弾性変形することにより弾性復帰力が蓄積され大きいシールド性が得られるとともに、この状態で長期間使用しても弾性復帰力が減衰しない。
〔実施例〕
第1図ないし第3図は本考案に係るOリングの実施例を示し、第1図はその一部破断正面図、第2図は第1図のAA断面図、第3図はこのOリングを軸と軸受との間に介装したところを示す断面図である。図において、Oリング1はゴムまたは4弗化エチレン樹脂等の弾性材を断面円形の環状にモールドすることによって形成されており、モールドに際しては環状に形成されたステンレス鋼製等のコイルばね2が芯材として埋設されている。」(2ページ6行?3ページ18行)

(3)「第4図は本考案に係るOリングを配管のフランジ間に介装した実施例を示す断面図であって、両配管5,6は、フランジ5a,6aのボルト孔に挿通された複数個のボルト7を締めることによつて接合されており、片方のフランジ5aに設けた環状溝5b内には前記実施例と同じくコイルばね2が芯材として埋設されたOリングが断面楕円形状に厚み方向へ圧縮されている。こうすることに大きなシール機能が得られることは前記実施例と同じである。」(4ページ17行?5ページ6行)

(4)「〔考案の効果〕
以上の説明により明らかなように、本考案によればOリングを弾性材により環状にモールドし、モールドに際し芯材としてコイルばねを埋設したことにより、このOリングを半径方向または厚み方向へ圧縮した状態で2面間に介装さればコイルばねに蓄積された弾性復帰力によつてOリングの接触面には、コイルばねのない場合よりも遥かに大きい圧接力が作用するのでシール機能が大幅に向上するとともに、このような圧縮状態で長期間使用してもコイルばねの弾性復帰力がほとんど不変であり、Oリング全体が永久変形しないので、大きなシール機能が長期間接続し、Oリングの耐用性が向上する。」(5ページ10行?6ページ3行)

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「弾性材を断面円形の環状にモールドされたモールド材と、前記モールド材内に埋設された芯材としてのコイルばね2と、を有するOリング1。」

2 刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された特開平11-201289号公報(以下「刊行物2」という。)には、「シールリング」に関して、図面(特に、図1、図3参照。)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述のような問題点に鑑み成されたものであって、その技術的課題は、流体の透過を防止するとともに、シール能力を向上させるシーリングを得ることにある。また、一方の真空室を有効にシールするシールリングを得ることにある。更に、シールリングに対し腐食性流体および膨潤性流体に対しシール能力を向上させたシールリングを得ることにある。」

(2)「【0023】
【作用】本発明に係るシールリングは、芯体が樹脂材製であるためガスや液体が透過することがほとんどない。更に、ガスや液体に接しても膨潤したり、劣化することも極めて少ない。そして、芯体の表面を被覆しているゴム材製の被覆層は、芯体に比較して極めて薄肉に形成されているから、被密封部材間に圧接されると被覆層は弾性変形してシール能力を発揮するとともに、芯体が両被密封部材に線接触するような状態となる。このため、芯体により密封能力の向上とともに、ガスおよび液体の透過を遮断することになる。」

(3)「【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳述する。
【0026】図1は、本発明に係る第1の実施の形態を示すシールリングの半断面図である。図1に於て、1はシールリングである。シールリング1は、樹脂材製であるリング状の芯体2の表面にゴム材の被覆層3が一体に形成されているものである。
【0027】芯体2は、樹脂材製である。特にフッ素系樹脂が好適である。例えば、PTFE、PFAがある。この芯体2は、樹脂材料を圧縮成形、射出成形、トランスファ成形等の成形機により成形される。
【0028】この芯体2は、断面が円柱形状で、平面がリング状に形成されている。この芯体2の表面に被覆層3を一体に焼付成形されているが、芯体2の表面に小さな凹凸部(例えば、ショットピーニングによる凹部)または周方向に沿って小さな溝を複数形成して、被覆層3と一体に成形しても良い。この芯体2の表面に設けた凹凸部により被覆層3との接着力を良好にすることになる。
【0029】更に、芯体2は成形された後に切削加工して表面を所定の寸法になるように仕上げても良い。更に、円筒状の樹脂の素材から切削加工により断面円形状のリングに形成しても良い。
【0030】芯体2の表面に一体化される被覆層3は、ゴム材製である。ゴム材としては、例えばフッ素ゴム、NBR、水素添加NBR、アクリルゴム、シリコンゴム等が適している。
【0031】特に、腐食性流体をシールする材質としてフッ素系エラストマが被覆層3として好適である。更に、真空を遮断シールする場合や、特殊液体、例えば酸性の液体をシールする場合などには、テトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(FMVE)共重合ゴムのようなパーフルオロエラストマーが好ましい。このパーフルオロエラストマーの被覆層3をフッ素系樹脂の芯体2に接着するときには、芯体2を錯体溶液を用いてアルカリ処理すると、接着性が向上することが認められる。」

(4)「【0039】
【実施例】次に、実施例により本発明を説明する。
【0040】実施例1
三井デュポンフロロケミカル社製のPTFE82OJの素材を用いて外径155mmの円柱材を成形焼成したる後に、NC旋盤により切削加工してリング外径149. 8mmで断面径4. 6mmのOリング形状の芯体2を製作した。この芯体2は、寸法精度が良く、クラック等は認められない。
【0041】次に、
TFE-FMVE共重合ゴム 100重量部
MTカーボンブラック 5 〃
トリアリルイソシアヌレート(日本化成製品タイクM6) 2 〃
有機過酸化物(日本油脂製品パーヘキサ3M) 2 〃
以上の各成分を10インチオープンロールで混練し、混練物を100mm径のロールを用いて60°C、1rpmの条件下で薄通しし、厚さ100μmのリボン(テープ状)を得た。このリボンを、前記芯体2に巻き付け、これを180℃、10分間の条件下で圧縮成形した後、更に大気中、200℃、23時間の条件下での二次加硫を行い、厚さ200μmの被覆層を有する二層構造のOリングを得た。
【0042】実施例2
芯体2は、実施例1と同様にして予備成形のみで切削加工することなく、実施例1と同一寸法のものを形成した。
【0043】次に、
TFE-FMVE共重合ゴム 100重量部
トリアリルイソシアヌレート(日本化成製品タイクM6) 2 〃
有機過酸化物(日本油脂製品パーヘキサ3M) 2 〃
以上の各成分を10インチオーブンロールで混練し、混練物を100mm径のロールを用いて60℃、1rpmの条件下で薄通しし、厚さ400μmのシート状被覆生地を得た。
【0044】この被覆生地2枚にPTFEの上記芯体2を挟み込み、180℃、10分間の条件下で圧縮成形をして一体化した後に、更に大気中で200℃23時間の条件下で二次加硫を行い、厚さ200μmの被覆層を形成した外径150mm断面径5. 0mmの二層構造のシールリングを得た。
【0045】実施例3
実施例1と同じ方法で得たPTFEの芯体2をナフタレン0. 1molの錯体溶液を用いて室温で10分間アルカリ処理を行った。この芯体2を用いて実施例2と同じ方法で芯体2に被覆層3を一体形成して二層構造のシールリングを得た。」

(5)「【0052】図3は、図1に示すシールリング1の取付状態を示す半断面図である。図3に於て、シールリング1は、一方部材20に設けられた取付溝22に取付けられて他方部材21に圧着させる。そして、一方部材20の左側が真空室23に形成されているものである。また、右側は作動流体室24には腐食性の作動流体が作用する構成のものである。
【0053】シールリング1の被覆層3は、パーフロオロエラストマー材製で、その層の肉厚は200μmの均一な厚さに形成されている。また、芯体2はフッ素樹脂材製で断面が略円形を成している。このため、二部材20、21間でシールリングが圧着されると、被覆層3は二部材20、21により圧着されてフッ素樹脂材製の芯体2により遮断されるように構成される。図3に於て、被覆層3の圧着部は、実際には図示よりも極薄肉になる。
【0054】フッ素樹脂材製の芯体2は作動流体の浸透がほとんど認められないから、真空室23に作動流体が浸透するのを防止することができる。更に、シールリング1は被覆層3がパーフルオロエラストマー材製であり、芯体2がフッ素樹脂材製であるから、腐食性作動流体に対しても耐食性を発揮することができる。更に、芯体2の表面は製造過程でアルカリ処理が施されているから被覆層3の接着力がすぐれており、剥離するようなことがなく、気体および液体に対しすぐれたシール能力を発揮することができる。」

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2に記載された発明」という。)が記載されている。

「パーフルオロエラストマーの被覆層3を芯体2の表面に一体化したOリング。」

3 刊行物3
また、同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された登録実用新案第3085539号公報(以下「刊行物3」という。)には、「真空ポンプの軸シール構造」に関して、図面(特に、図1ないし図3参照。)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、一対のスクリューロータをベアリングで回動自在に支持してプロセスガス等を吸引圧縮させるオイルフリー式の真空ポンプにおけるベアリングへのプロセスガスのミスト等の浸入を防止した真空ポンプの軸シール構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属製の左右逆ねじの一対のスクリューロータを用いたオイルフリー式の真空ポンプにおいては、各スクリューロータの軸部のシール構造としてオイルシール方式を採用していた。」

(2)「【0005】
図3はその真空ポンプ61のシール構造の一例を示すもの(以下略)
【0006】
(前略)図3で符号73は、ベアリング抜け止め用のEクリップ、74?76はシール用のOリングである。」

(3)「【0017】
【考案の実施の形態】
図1は、本考案に係る真空ポンプの軸シール構造の一実施形態を示す横断面図である。」

(4)「【0023】
ケーシング4の一端側のフランジ部21にサイドケース8がシールリング(Oリング)22を介してボルト等で固定されている。(以下略)」

(5)「【0033】
図2は、例えば腐食性の強いプロセスガスを取り扱う場合に好適な真空ポンプの軸シール構造の第二の実施形態を示す縦断面図である。図1と同一の構成部分には同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「弾性材を断面円形の環状にモールドされたモールド材」は前者の「弾性環状ボディ」に相当し、後者の「芯材としてのコイルばね2」は、コイルばねのない場合よりも遥かに大きい圧接力を作用させ、圧縮状態で長期間使用してもコイルばねの弾性復帰力がほとんど不変であり、Oリング全体を永久変形させないから、前者の「環状補強部材」に相当し、後者の「Oリング1」は、ガスや液体等の流体の漏洩を封止するから、前者の「環状Oリングシール」に相当する。

したがって、両者は、
「弾性環状ボディと、前記環状ボディ内に埋設された環状補強部材と、を有する環状Oリングシール。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明は、「FKMエラストマーおよびFFKMエラストマーの1つからなるコーティングと」を有する「真空ポンプ用」の環状Oリングシールであるのに対し、
引用発明は、コーティングを有しておらず、用途も不明である点。

第4 当審の判断
そこで、相違点について検討する。
刊行物2に記載された発明は、パーフルオロエラストマーの被覆層3を芯体2の表面に一体化したOリングである。

まず、本願発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、後者の「パーフルオロエラストマー」は前者の「FFKMエラストマー」に相当し、後者の「被覆層3」は前者の「コーティング」に相当する。

そうすると、刊行物2に記載された発明は、FFKMエラストマーのコーティングを芯体2の表面に一体化したOリングということができる。

次に、引用発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、刊行物1には、「本考案は環状に形成され2面間に介装されガス、液体等の流体の漏洩を封止するOリングに関するものである。」(前記「第2」の「1」の「(1)」)との記載があり、他方、刊行物2には、「本発明に係るシールリングは、芯体が樹脂材製であるためガスや液体が透過することがほとんどない。更に、ガスや液体に接しても膨潤したり、劣化することも極めて少ない。」(段落【0023】)との記載があるから、両者は、ガス、液体の漏洩を封止するOリングである点で共通する。

また、刊行物1には、引用発明の「モールド材」について、「ゴムまたは4弗化エチレン樹脂等の弾性材」(前記「第2」の「1」の「(2)」)との記載があり、他方、刊行物2には、刊行物2に記載された発明の「芯体2」について、「芯体2は、樹脂材製である。特にフッ素系樹脂が好適である。例えば、PTFE、PFAがある。」(段落【0028】)との記載があるから、引用発明の「モールド材」と刊行物2に記載された発明の「芯体2」とは、4フッ化エチレン樹脂を材料とする点で共通する。

そして、刊行物2には、「パーフルオロエラストマーの被覆層3をフッ素系樹脂の芯体2に接着するときには、芯体2を錯体溶液を用いてアルカリ処理すると、接着性が向上することが認められる。」(段落【0031】)との記載され、実施例1ないし3においてPTFE82OJの素材を用いた芯体2にTFE-FMVE共重合ゴムのようなパーフルオロエラストマーを主成分とする被覆層を形成すること(段落【0031】、段落【0039】ないし段落【0045】)が記載されており、これらの記載によれば、4フッ化エチレン樹脂の芯体2にパーフルオロエラストマーの被覆層を形成することが示唆されている。

そうすると、引用発明に刊行物2に記載された発明を適用する動機付けがあるといえるから、引用発明に刊行物2に記載された発明を適用して、引用発明において、「FFKMエラストマー」「からなるコーティングと」を有するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、刊行物2には、パーフルオロエラストマーについて「真空を遮断シールする場合や、特殊液体、例えば酸性の液体をシールする場合などには、テトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(FMVE)共重合ゴムのようなパーフルオロエラストマーが好ましい。」(段落【0031】)と記載され、「図3に於て、シールリング1は、一方部材20に設けられた取付溝22に取付けられて他方部材21に圧着させる。そして、一方部材20の左側が真空室23に形成されているものである。また、右側は作動流体室24には腐食性の作動流体が作用する構成のものである。」(段落【0052】)と記載され、「フッ素樹脂材製の芯体2は作動流体の浸透がほとんど認められないから、真空室23に作動流体が浸透するのを防止することができる。更に、シールリング1は被覆層3がパーフルオロエラストマー材製であり、芯体2がフッ素樹脂材製であるから、腐食性作動流体に対しても耐食性を発揮することができる。」(段落【0054】)と記載されており、これらの記載によれば、4フッ化エチレン樹脂の芯体2にパーフルオロエラストマー材製の被覆層3を形成したOリングを用いて、真空室と腐食性の作動流体とをシールすることが示唆されている。

一方、刊行物3には、真空ポンプのシール構造として、ケーシング4のフランジ部21とサイドケース8とをOリング22を介して固定すること(段落【0023】及び図1)及び真空ポンプにおいて腐食性の強いプロセスガスを取り扱う場合があること(段落【0033】)が記載されている。

そうすると、引用発明に刊行物2に記載された発明を適用するにあたって、刊行物3に記載された事項を参酌して、「真空ポンプ用」とすることは、当業者にとって格別困難性はない。

そうしてみると、引用発明において、刊行物2に記載された発明及び刊行物3に記載された事項を適用して、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、本願発明が奏する効果は、引用発明、刊行物2に記載された発明及び刊行物3に記載された事項から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。

したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された発明及び刊行物3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された発明及び刊行物3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-03 
結審通知日 2014-10-06 
審決日 2014-10-17 
出願番号 特願2008-555881(P2008-555881)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塚原 一久  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 冨岡 和人
小関 峰夫
発明の名称 シール  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 辻居 幸一  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 松下 満  
代理人 井野 砂里  
代理人 弟子丸 健  
代理人 吉野 亮平  

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