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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1297901
審判番号 不服2013-4500  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-08 
確定日 2015-02-27 
事件の表示 特願2008-533562「抗生物質製剤、単位用量、キットおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月12日国際公開、WO2007/041156、平成21年 3月12日国内公表、特表2009-510077〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2006年9月28日(パリ条約による優先権主張 2005年9月29日 米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成24年5月30日付けで拒絶理由が通知され、同年9月24日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年11月7日付けで拒絶査定がなされ、平成25年3月8日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年4月3日付けで前置報告がなされ、平成26年2月5日付けで審尋がなされ、同年6月5日に回答書が提出されたものである。


第2.本願発明
本願の請求項1?11に係る発明は、平成25年3月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「エアロゾル化用水性組成物を含む単位用量容器であって、
該単位用量容器内に400mgから750mgの量、および40mg/mlから200mg/mlの濃度で存在する、抗グラム陰性菌抗生物質、またはその塩を含有し、該抗グラム陰性菌抗生物質、またはその塩が、アミカシンまたはその塩を含有する、単位用量容器。」


第3.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、要するに、「本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献3:特表2004-534763号公報」
というものを含むものである。
以下、引用文献3を「刊行物A」という。


第4.刊行物Aの記載事項
刊行物Aには、以下の事項が記載されている。
A1「【請求項1】
処置を必要とする患者の処置方法であって、該方法は、10分未満で約60?約200mg/mlのアミノグリコシド抗生物質を含有する、4.0ml未満の用量の噴霧エアロゾル処方物を該患者に投与する工程を含む、方法。・・・
【請求項9】
単位用量デバイスであって、該デバイスが生理学的に受容可能なキャリア中に約60?約200mg/mlのアミノグリコシド抗生物質を含有する、約4.0ml未満のアミノグリコシド抗生物質処方物を収容する容器を備える、デバイス。
・・・
【請求項14】
前記アミノグリコシド抗生物質がゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシンおよびトブラマイシンからなる群より選択される、請求項9に記載の単位用量デバイス。」

A2「【0020】・・・・
本発明のアミノグリコシド抗生物質は、滅菌水または生理学的に受容可能な溶液中に組み込まれ得る。他の成分は、所望であれば処方物中に含まれ得る。投与および気管支内空間との適合性を容易にするために、本発明のアミノグリコシド抗生物質は、好ましくは、患者により十分に寛容されるトブラマイシンエアロゾルの発生を可能にするが、気管支痙攣および咳のような所望でない二次的副作用の発生を防止するように調節された塩分を有する、希釈生理食塩水中(例えば、1/4強度の通常生理食塩水中)に処方される。代表的には、約90?約120mgのアミノグリコシド抗生物質は、1mlの希釈された、代表的には約0.225%のNaClを含有する1/4の通常生理食塩水中に溶解される。1/4通常生理食塩水(すなわち、0.225%の塩化ナトリウム)は、気管支内空間へのアミノグリコシドの送達のために、現在好ましいビヒクルである。」


第5.刊行物Aに記載された発明
刊行物Aには、アミノグリコシド抗生物質を生理食塩水に溶解させる旨の記載(摘示A2)があることをふまえ、摘示A1の記載からみて、刊行物Aには以下の発明(以下「刊行物A発明」という。)が記載されている。
「噴霧エアロゾル処方物を患者に投与する単位用量デバイスであって、
該デバイスが生理学的に受容可能なキャリア中に約60?約200mg/mlのアミノグリコシド抗生物質を含有する、4.0ml未満のアミノグリコシド抗生物質処方物を収容する容器を備え、
前記アミノグリコシド抗生物質がゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシンおよびトブラマイシンからなる群より選択され、
前記生理学的に受容可能なキャリアが生理食塩水である、
単位用量デバイス。」


第6.対比・判断
1.本願発明と刊行物A発明との対比
刊行物A発明における「噴霧エアロゾル処方物を患者に投与する」は、本願発明における「エアロゾル化用」に相当する。
刊行物A発明において、アミノグリコシド抗生物質が生理食塩水に特定濃度で溶解していることから、刊行物A発明は本願発明における「水性組成物」なる事項を備えている。
刊行物A発明において、デバイスは容器を備えていることから、刊行物A発明における「単位用量デバイス」は、本願発明における「単位容量容器」に相当する。
刊行物A発明における、「該デバイスが生理学的に受容可能なキャリア中に約60?約200mg/mlのアミノグリコシド抗生物質を含有する」は、本願発明における「単位用量容器内に、40mg/mlから200mg/mlの濃度で存在する、抗グラム陰性菌抗生物質、またはその塩」と重複一致する。
また、刊行物A発明は、アミノグリコシド抗生物質として、「アミカシン」を含むことから、刊行物A発明は、本願発明における「該抗グラム陰性菌抗生物質、またはその塩が、アミカシンまたはその塩を含有する」なる事項を備えている。

以上をまとめると、本願発明と刊行物A発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
エアロゾル化用水性組成物を含む単位用量容器であって、
該単位用量容器内に60mg/mlから200mg/mlの濃度で存在する、抗グラム陰性菌抗生物質、またはその塩を含有し、該抗グラム陰性菌抗生物質、またはその塩が、アミカシンまたはその塩を含有する、単位用量容器。

〔相違点〕
本願発明は、単位用量容器内に抗グラム陰性菌抗生物質が「400mgから750mgの量」で存在することを規定しているのに対し、刊行物A発明は、そのような規定を有していない点。

2.相違点について
刊行物A発明は、単位用量デバイスが約60?約200mg/mlの濃度のアミノグリコシド抗生物質を含有しているとともに、アミノグリコシド抗生物質を約4.0ml未満の量で収容していることからすると、アミノグリコシド抗生物質は単位用量デバイス中に、800mgまでの量で存在していることとなるから、その量を400?750mgを含む範囲とすることは、当業者において適宜なし得る事項である。また、そのように特定したことによる効果も格段優れたものとは認められない。


第7.請求人の主張について
請求人は、平成26年6月5日付け回答書において、抗グラム陰性菌抗生物質の含有濃度を特定(以下「特定事項1」という。)するとともに、水性組成物のpHを特定(以下「特定事項2」という。)する旨の補正案を提示し、該補正案は特許性を有する旨の主張をしている。
しかし、特定事項1は、刊行物A発明で規定する濃度と重複しており、新たな相違点になるものではない。また、特定事項2に関して、先の拒絶理由通知で引用した文献2(特表2002-532430号公報 請求項22)、本願明細書で提示している特許文献4(米国特許第5,508,269号明細書 請求項1)に記載されているように、ネブライザーを使用する際の処方物のpHとして「5.5?6.5」とすることは当業者において適宜設定しうる事項であるところ、刊行物Aにもネブライザーを使用することが記載(実施例等)されていることから、処方物のpHとして「5.5?6.5」程度の値を採用することは、当業者において容易になし得る事項である。よって、これらの点に関する請求人の主張を採用することはできない。


第8.まとめ
本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-25 
結審通知日 2014-09-26 
審決日 2014-10-20 
出願番号 特願2008-533562(P2008-533562)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 隆興田村 直寛  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 関 美祝
加賀 直人
発明の名称 抗生物質製剤、単位用量、キットおよび方法  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  

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