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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1297974
審判番号 不服2013-25252  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-24 
確定日 2015-02-25 
事件の表示 特願2009-294576「プラズマ処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月 8日出願公開、特開2010- 80984〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、2003年4月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年4月19日、2002年12月20日、米国)に出願した特願2003-113544号の一部を平成21年12月25日に新たな特許出願としたものであって、平成24年8月29日付けで拒絶理由が起案され(発送日は同年9月4日)、平成25年3月4日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月19日付けで拒絶査定が起案され(発送日は同年8月22日)、これに対し、同年12月24日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、その請求項1乃至11に係る発明は、平成25年3月4日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
イオン及び遊離基を有する発光プラズマからの遊離基により加工物を処理するための装置であって、
処理空間及び前記処理空間に連通したプラズマ・キャビティを含む真空チャンバと、 前記真空チャンバの前記処理空間に位置づけされた加工物ホルダーと、
前記処理空間および前記プラズマ・キャビティを排気するようにされ、前記真空チャンバに設けられた真空口と、
プロセス・ガスを前記プラズマ・キャビティに供給するようにされ、前記真空チャンバに設けられたプロセス・ガス供給口と、
前記プラズマ・キャビティ内に配置された電力供給電極と、
前記処理空間および前記プラズマ・キャビティの間に配置され、複数の第1のスロットを有する中央のスロット付き板と、
前記中央のスロット付き板と前記電力供給電極との間に配置され、複数の第2のスロットを有する上のスロット付き板と、
前記中央のスロット付き板と前記処理空間との間に配置され、複数の第3のスロットを有する下のスロット付き板と、
を備え、前記下のスロット付き板、前記中央のスロット付き板、前記上のスロット付き板は前記真空チャンバに電気的に接地されており、前記電力供給電極は、前記プラズマ・キャビティ内の前記プロセス・ガスを励起し、前記上のスロット付き板と前記電力供給電極との間の前記プラズマ・キャビティ内にプラズマの前記イオン及び前記遊離基を発生することができ、前記第1のスロット、前記第2のスロット、前記第3のスロットは、前記プラズマ中の前記遊離基を前記プラズマ・キャビティから前記処理空間に移送し、かつ前記プラズマ・キャビティから前記処理空間への前記プラズマ中の前記イオンの移送を実質的に減少し、前記第1のスロットは前記第2のスロットからオフセットされ、前記プラズマ・キャビティから前記処理空間まで延在する方向において前記第1のスロットは前記第2のスロットと位置合わせされず、前記第1のスロットは前記第3のスロットからオフセットされ、前記プラズマ・キャビティから前記処理空間まで延在する方向において前記第1のスロットは前記第3のスロットと位置合わせされず、それにより前記プラズマから前記加工物までの光の移送を減少するため前記プラズマ・キャビティから前記処理空間までの見通し通路を実質的に無くす、装置。」

第2 引用文献
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された本願の原出願の優先日前に日本国内において頒布された特開平10-107062号公報(以下、「引用文献1」という。)には次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】チャンバーと、このチャンバー内に酸素ガスを含む反応ガスを供給する反応ガス供給部と、このチャンバー外へ排気を行う排気部と、このチャンバー内に設けられ、高周波電圧が印加される第1電極と、この第1電極に対向するように前記チャンバー内に設けられ、かつクリーニングの対象物を支持するとともに、電気的に接地される第2電極と、この第2電極によって支持される対象物を荷電粒子からガードするシールドとを備えることを特徴とするプラズマクリーニング装置。」
(イ)「【0013】
【発明の実施の形態】上記構成において、対象物として混載方式の基板上に半田付け部品が半田付けされたものを、チャンバー内に収納する。そして、この対象物を第2電極上に支持し、対象物をシールドで保護する。そして、酸素ガスによる酸素プラズマを発生させる。この酸素プラズマ中には、酸素イオン、電子などの荷電粒子と、電気的に中性の酸素ラジカルが存在する。
【0014】そして、第1電極と第2電極との電位差によって荷電粒子は加速され、シールドに衝突する。しかしながら、シールドと第2電極との間には電位差がないので、荷電粒子はシールド内、即ち対象物の周囲には到来しない。
【0015】したがって、対象物の周囲には浮遊している酸素ラジカルのみが到来することになる。・・・」
(ウ)「【0017】図1および図2において、10は減圧雰囲気を形成するためのチャンバーであり、接地されている。このチャンバー10は、下方に開いた凹部10aを有している。・・・
【0019】22は、酸素ガスを含む反応ガスをチャンバー10内に供給する反応ガス供給部、23はチャンバー10内から排気を行う排気部である。24は凹部10aのほぼ中段に第1電極15および第2電極16と平行に設けられ、導電体からなる網状のシールドである。このシールド24も、チャンバー10を通して接地されている。後述するように、シールド24は第2電極16上の基板1に荷電粒子が衝突しないように、基板1をガードする。」

(2)原査定の拒絶の理由において引用文献6として引用された本願の原出願の優先日前に日本国内において頒布された特開昭62-216329公報(以下、「引用文献6」という。)には次の事項が記載されている。
(エ)「2.特許請求の範囲
マイクロ波発生装置(11)、アッシング用のガス(12)を導入するチャンバー(13)、該チャンバー内へマイクロ波(14)を導入するマイクロ波透過窓(15)からなるプラズマ発生手段を備え、
上記マイクロ波透過窓(15)とレジスト(16)が塗布されたウエハ(17)の間に複数の穴(20)をあけた複数の板(18)を設け、
該板(18)をそれぞれ駆動させることにより、マイクロ波透過窓(15)からウェハ(17)上に届くプラズマ(19)の流れを制御することを特徴とするプラズマアッシング装置。」(第1頁左下欄第4?15行)
(オ)「〔発明が解決しようとする問題点〕
そこで従来のプラズマアッシング装置には、ダウン・フロー型アッシング装置やバレル型アッシング装置などがある。
バレル型アッシング装置は、その-例として第3図に示すように、チャンバ33内のプラズマ発光室40とアッシング室43を一緒にして、ウェハ37をプラズマ39中にさらしてアッシングする。この装置は、上記したレジスト36表面にできる変質層42(第6図参照)を除去できるが、プラズマ39中にウェハ37をさらすためダメージが大きくデバイスの特性劣化を招くという問題がある。
またダウン・フロー型アッシング装置は、その一例として第4図に示すように、チャンバ33内をプラズマ発光室40とアッシング室43とに分け、プラズマ発光室40からの活性粒子41をアッシング室43に引き込んでウェハ37のレジスト36を除去する。この装置によるアッシングは、プラズマ中にウェハをさらさないためウェハのダメージは少ないが、高濃度の不純物のイオン打ち込みなどによりレジスト表面にできる変質層は除去できないという問題がある。
本発明はこのような点に鑑みて創作されたもので、ダウン・フロー型アッシング装置とバレル型アッシング装置の両方の長所を1つの装置で兼ね備えたアッシング装置を提供することを目的とする。」(第2頁左下欄第9行?同右下欄第15行)
(カ)「以下、本発明実施例を図面を参照して詳細に説明する。
第1図(a)(b)は本発明の詳細な説明図であり、第2図(a)(b)は本発明実施例の動作説明図である。
本実施例のプラズマアッシング装置は、第1図に示すように、マイクロ波発生袋211、アッシング用のガス12を導入するチャンバー13、該チャンバー内へマイクロ波14を導入するマイクロ波透過窓15からなるプラズマ発生手段を備え、上記マイクロ波透過窓15とレジスト16が塗布されたウェハ17の間に複数の穴20をあけた複数の板18を設け、これらの板18をそれぞれ駆動させることにより、マイクロ波透過窓15からウェハ17上に届くプラズマ19の流れを制御する構成をとる。
上記のプラズマアッシング装置は、種々の装置が考えられるが、本実施例ではO_(2)プラズマを発生させる装置とした。ガス12をチャンバ13内に引き入れ、マイクロ波透過窓15を通して、マイクロ波14をガス12へ照射することによりO_(2)プラズマ19が発生する。
上記のレジスト16が塗布されたウェハ17とは、例えば半導体などの製造工程中、ウェハ上にレジストを形成して、エツチングや不純物のイオン打ち込みなどを行った後の不要なレジストを除去する必要のあるウェハなどを言う。
上記板18とは、プラズマの流れを遮蔽することができるもので、材質は特に限定されないがアルミなどを好ましく用いることができる。本実施例では、第1図(b)に示すように穴20の開いた板18を2枚以上用いて、それぞれの板1Bの穴20の位置をそろえることによりプラズマの流れを通過させ、板18を動かして穴20の位置をずらすことによリプラズマ19の流れを遮蔽する構造とした。もちろん上記以外の板を用いてプラズマの流れをコントロールできるさまざまな構造を採用することもできる。
そこで本実施例のプラズマアッシング装置を用いて、ウェハ上のレジストをアッシングする場合の一例を説明する。
O_(2)ガス12をアッシング装置内に引き入れて、マイクロ波14をマイクロ波透過窓15を通してガス12に照射すると、O_(2)プラズマ19が発生ずる。第2図(a)に示すように穴20の開いた複数の板18(本明細書ではパンチングボードとも言う。)の穴の位置を揃えることによりO_(2)プラズマ19が穴20を通過してウェハ17上に届き、レジスト16をアッシングする。これはバレル型プラズマアッシング装置と同じである。このアッシング力は強く、イオンの打ち込み後にレジストにでき易い変質層42をも除去することができる。
上記変質層がアッシング除去され、正常なレジストだけになると、板18を動かして穴20の位置をずらし、同図(b)のようにする。こうすると、O_(2)プラズマ19は通過できなくなり、活性粒子21だけがウェハ17上に到達してレジスト16をアッシングする。これはダウン・フロー型アッシング装置と同じである。この活性粒子によるアッシングは、O_(2)プラズマに比べてウェハに与えるダメージが少ないため、特性劣下を最小限にできる。」(第3頁右上欄第1行?同右下欄第19行)
(キ)「

」(第4頁)

第3 引用発明の認定
引用文献1の記載事項(ア)には、「チャンバーと、このチャンバー内に酸素ガスを含む反応ガスを供給する反応ガス供給部と、このチャンバー外へ排気を行う排気部と、このチャンバー内に設けられ、高周波電圧が印加される第1電極と、この第1電極に対向するように前記チャンバー内に設けられ、かつクリーニングの対象物を支持するとともに、電気的に接地される第2電極と、この第2電極によって支持される対象物を荷電粒子からガードするシールドとを備えることを特徴とするプラズマクリーニング装置。」が記載されている。同(イ)に「チャンバー内に・・・酸素ガスによる酸素プラズマを発生させる。この酸素プラズマ中には、酸素イオン、電子などの荷電粒子と、電気的に中性の酸素ラジカルが存在する。」こと、「荷電粒子は加速され、シールドに衝突する。」こと及び「対象物の周囲には浮遊している酸素ラジカルのみが到来すること」ことが記載されている。そして、同(ウ)には、「10は減圧雰囲気を形成するためのチャンバーであり、接地されている。このチャンバー10は、下方に開いた凹部10aを有している。」こと、「導電体からなる網状のシールドである」こと、及び「シールド24も、チャンバー10を通して接地されている」ことが記載されている。
これら記載事項を本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、
「減圧雰囲気を形成するための下方に開いた凹部を有しているチャンバーと、このチャンバー内に酸素ガスを含む反応ガスを供給する反応ガス供給部と、このチャンバー外へ排気を行う排気部と、このチャンバー内に設けられ、高周波電圧が印加される第1電極と、この第1電極に対向するように前記チャンバー内に設けられ、かつクリーニングの対象物を支持するとともに、電気的に接地される第2電極と、この第2電極によって支持される対象物を荷電粒子からガードするチャンバーを通して接地されている導電体からなる網状のシールドとを備え、チャンバー内に酸素ガスによる酸素プラズマを発生させ、酸素プラズマ中には、酸素イオン、電子などの荷電粒子と、電気的に中性の酸素ラジカルが存在し、荷電粒子は加速され、シールドに衝突し、対象物の周囲には浮遊している酸素ラジカルのみが到来するプラズマクリーニング装置。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

第4 対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「減圧雰囲気を形成するための下方に開いた凹部を有しているチャンバー」は、「凹部」が「キャビティー」の訳語であるから、本願発明の「処理空間及び前記処理空間に連通したプラズマ・キャビティを含む真空チャンバ」に相当するということができる。
そして、引用発明の「このチャンバー内に酸素ガスを含む反応ガスを供給する反応ガス供給部」と「このチャンバー外へ排気を行う排気部」は、それぞれ、本願発明の「プロセス・ガスを前記プラズマ・キャビティに供給するようにされ、前記真空チャンバに設けられたプロセス・ガス供給口」と「前記処理空間および前記プラズマ・キャビティを排気するようにされ、前記真空チャンバに設けられた真空口」に相当することは明らかである。
また、引用発明の「このチャンバー内に設けられ、高周波電圧が印加される第1電極」と「この第1電極に対向するように前記チャンバー内に設けられ、かつクリーニングの対象物を支持するとともに、電気的に接地される第2電極」は、それぞれ、本願発明の「前記プラズマ・キャビティ内に配置された電力供給電極」と「前記真空チャンバの前記処理空間に位置づけされた加工物ホルダー」に相当することも明らかである。
次に、引用発明の「第2電極によって支持される対象物を荷電粒子からガードするチャンバーを通して接地されている導電体からなる網状のシールド」は、本願発明の「スロット付き板は前記真空チャンバに電気的に接地されており」と「前記真空チャンバに電気的に接地された複数の孔を有する孔付き板」で共通することも明らかである。
さらに、引用発明の「チャンバー内に酸素ガスによる酸素プラズマを発生させ、酸素プラズマ中には、酸素イオン、電子などの荷電粒子と、電気的に中性の酸素ラジカルが存在し、荷電粒子は加速され、シールドに衝突し、対象物の周囲には浮遊している酸素ラジカルのみが到来するプラズマクリーニング装置」は、「電気的に中性の酸素ラジカル」が「フリーラジカル」即ち「遊離基」に含まれるから、本願発明の「イオン及び遊離基を有するプラズマからの遊離基により加工物を処理するための装置」及び「スロット付き板と前記電力供給電極との間の前記プラズマ・キャビティ内にプラズマの前記イオン及び前記遊離基を発生することができ」ることに相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「イオン及び遊離基を有するプラズマからの遊離基により加工物を処理するための装置であって、
処理空間及び前記処理空間に連通したプラズマ・キャビティを含む真空チャンバと、
前記真空チャンバの前記処理空間に位置づけされた加工物ホルダーと、
前記処理空間および前記プラズマ・キャビティを排気するようにされ、前記真空チャンバに設けられた真空口と、
プロセス・ガスを前記プラズマ・キャビティに供給するようにされ、前記真空チャンバに設けられたプロセス・ガス供給口と、
前記プラズマ・キャビティ内に配置された電力供給電極と、
前記処理空間および前記プラズマ・キャビティの間に配置され、前記真空チャンバに電気的に接地された複数の孔を有する孔付き板、
を備える装置。」で一致すると認められる。
そして、以下の点で相違すると認められる。
・本願発明においては、「発光」プラズマであるのに対して、引用発明においては、「発光」することは特定されていない点(以下、「相違点a」という。)。
・本願発明においては、「スロット付き板」であるのに対して、引用発明においては、「導電体からなる網状のシールド」である点(以下、「相違点b」という。)。
・本願発明においては、「前記処理空間および前記プラズマ・キャビティの間に配置され、複数の第1のスロットを有する中央のスロット付き板と、
前記中央のスロット付き板と前記電力供給電極との間に配置され、複数の第2のスロットを有する上のスロット付き板と、
前記中央のスロット付き板と前記処理空間との間に配置され、複数の第3のスロットを有する下のスロット付き板と、
を備え、前記下のスロット付き板、前記中央のスロット付き板、前記上のスロット付き板は前記真空チャンバに電気的に接地されており、前記電力供給電極は、前記プラズマ・キャビティ内の前記プロセス・ガスを励起し、前記上のスロット付き板と前記電力供給電極との間の前記プラズマ・キャビティ内にプラズマの前記イオン及び前記遊離基を発生することができ、前記第1のスロット、前記第2のスロット、前記第3のスロットは、前記プラズマ中の前記遊離基を前記プラズマ・キャビティから前記処理空間に移送し、かつ前記プラズマ・キャビティから前記処理空間への前記プラズマ中の前記イオンの移送を実質的に減少し、前記第1のスロットは前記第2のスロットからオフセットされ、前記プラズマ・キャビティから前記処理空間まで延在する方向において前記第1のスロットは前記第2のスロットと位置合わせされず、前記第1のスロットは前記第3のスロットからオフセットされ、前記プラズマ・キャビティから前記処理空間まで延在する方向において前記第1のスロットは前記第3のスロットと位置合わせされず、それにより前記プラズマから前記加工物までの光の移送を減少するため前記プラズマ・キャビティから前記処理空間までの見通し通路を実質的に無くす」のに対して、引用発明のシールドでは、このような特定のない点(以下、「相違点c」という。)。

第5 判断
(1)相違点aについて
本願発明における「発光」プラズマについては、発光による光子を直接加工に利用するものでもなく、本願発明と同一分野のダウン・フロー型アッシング装置においてはプラズマ室で発光を伴うことが、例えば、引用文献6の記載事項(オ)に「ダウン・フロー型アッシング装置は、その一例として第4図に示すように、チャンバ33内をプラズマ発光室40とアッシング室43とに分け、プラズマ発光室40からの活性粒子41をアッシング室43に引き込んでウェハ37のレジスト36を除去する。」とあるように技術常識であり、ダウン・フロー型と認められる引用発明においても酸素プラズマを発生するチャンバーは発光することが予想される以上、引用発明の「プラズマ」が「発光プラズマ」と限定されないことをもって実質的な相違とすることはできない。
(2)相違点bについて
本願発明における「スロット付き板」については、本願当初明細書の段落【0101】に「図15?18を続いて参照すると、接地板512は、上のスロット付き板516、中央のスロット付き板518および下のスロット付き板520を含むアセンブリである。板516、518および520は実質的に等しい厚さであるが、本発明はそのように限定されない。上のスロット付き板516には多数の開口すなわちスロット522が開いており、このスロットは、加工物56がローディング・ステーション20から基板支持物64にさらに基板支持物64から出口ステーション22に移動される機械方向、図16のページの面に出入りする方向、に対して横向きに延びる長軸を有する。同様に、中心および下のスロット付き板518、520各々には、多数の開口すなわちスロット524、526それぞれが開いており、そのスロット各々は、加工物移動の機械方向に対して横向きに延びる長軸を有する。垂直方向に見たときの各スロット522、524、526の断面プロファイルは、機械方向に対して横向き並んだ長軸を有するどのような形でもよく、特に長方形か楕円形かであることができる。」とあるだけで格別の技術的意義を有するものではない。
一方、引用発明においてもに「シールド24は第2電極16上の基板1に荷電粒子が衝突しないように、基板1をガードする」(記載事項(ウ))ものである。
さらに、相違点aにおいても検討した引用文献6においては、「プラズマの流れを遮蔽すること」を目的として「パンチングボード」を用いることが明記され、「パンチングボード」には、孔として円形形状の他に「長円」や「長方形」即ち「スロット」普通に用いられている以上、引用発明の「シールド」を「スロット付き板」とすることも当業者であれば格別の困難なくなし得る設計変更にすぎないものというべきである。
(3)相違点cについて
相違点aにおいても検討した引用文献6においては、「マイクロ波透過窓15とレジスト16が塗布されたウェハ17の間に複数の穴20をあけた複数の板18を設け、これらの板18をそれぞれ駆動させることにより、マイクロ波透過窓15からウェハ17上に届くプラズマ19の流れを制御する構成をとる。」とし、「板18を動かして穴20の位置をずらし、同図(b)のようにする。こうすると、O_(2)プラズマ19は通過できなくなり、活性粒子21だけがウェハ17上に到達してレジスト16をアッシングする。」(記載事項(カ))とされ、同図(b)には、複数の穴20をあけた三枚の同一形状のパンチングボードが示され、同図(a)には、中央の板18がずらされることが視認される。
そうすると、引用文献6から、複数の穴20をあけた三枚の同一形状のパンチングボードの中央の板を動かして穴の位置をずらし、O_(2)プラズマ19は通過できなくなり、活性粒子21だけがウェハ17上に到達してレジスト16をアッシングする技術が公知であると認められる。
そして、一般にシールド即ち遮蔽技術において、より確実に遮蔽されることが好ましいことはいうまでもなく、シールドを複数枚設け、粒子の直進を妨げるべく、引用発明においてシールドを「複数の穴20をあけた三枚の同一形状のパンチングボードの中央の板を動かして穴の位置をずらし、O_(2)プラズマ19は通過できなくなり、活性粒子21だけがウェハ17上に到達」するようにして、本願発明における「前記処理空間および前記プラズマ・キャビティの間に配置され、複数の第1のスロットを有する中央のスロット付き板と、
前記中央のスロット付き板と前記電力供給電極との間に配置され、複数の第2のスロットを有する上のスロット付き板と、
前記中央のスロット付き板と前記処理空間との間に配置され、複数の第3のスロットを有する下のスロット付き板と、
を備え、前記下のスロット付き板、前記中央のスロット付き板、前記上のスロット付き板は前記真空チャンバに電気的に接地されており、前記電力供給電極は、前記プラズマ・キャビティ内の前記プロセス・ガスを励起し、前記上のスロット付き板と前記電力供給電極との間の前記プラズマ・キャビティ内にプラズマの前記イオン及び前記遊離基を発生することができ、前記第1のスロット、前記第2のスロット、前記第3のスロットは、前記プラズマ中の前記遊離基を前記プラズマ・キャビティから前記処理空間に移送し、かつ前記プラズマ・キャビティから前記処理空間への前記プラズマ中の前記イオンの移送を実質的に減少し、前記第1のスロットは前記第2のスロットからオフセットされ、前記プラズマ・キャビティから前記処理空間まで延在する方向において前記第1のスロットは前記第2のスロットと位置合わせされず、前記第1のスロットは前記第3のスロットからオフセットされ、前記プラズマ・キャビティから前記処理空間まで延在する方向において前記第1のスロットは前記第3のスロットと位置合わせされず、それにより前記プラズマから前記加工物までの光の移送を減少するため前記プラズマ・キャビティから前記処理空間までの見通し通路を実質的に無くす」を想到することについては、当業者であれば格別の困難なくなし得る設計変更にすぎないものというべきである。
さらに、相違点a乃至cに係る特定事項を採用することにより得られる効果についても、格別顕著であるとは認められない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献6に記載された公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 審判請求書の補正案について
審判請求人は、審判請求書の請求の理由の補正書において請求項1に「前記上のスロット付き板、前記中央のスロット付き板、前記前記下のスロット付き板は、ほぼ等しい板厚を有し、前記上のスロット付き板と前記中央のスロット付き板との距離は前記板厚に等しく、前記中央のスロット付き板と前記下のスロット付き板との距離は、前記板厚の1.5倍に等しい、」を発明特定事項として追加する補正案を提示する。
しかしながら、当該補正案における3枚の板厚をほぼ等しくする点は、引用文献6においても同様であり、スロット付き板の距離も、上と中央を板厚に等しく、中央と下を板厚の1.5倍にすることで予期し得ない効果を奏するものでなく、特許性の判断に影響を及ぼすものでないことは明らかであるから、当該補正案を採用することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献6に記載された公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-01 
結審通知日 2014-10-02 
審決日 2014-10-16 
出願番号 特願2009-294576(P2009-294576)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関根 崇  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 加藤 浩一
松本 貢
発明の名称 プラズマ処理システム  
代理人 高橋 誠一郎  
代理人 岡部 讓  
代理人 越智 隆夫  

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