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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1298041
審判番号 不服2013-23614  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-02 
確定日 2015-03-02 
事件の表示 特願2009-214745「LED用リードフレームまたは基板、半導体装置、およびLED用リードフレームまたは基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月31日出願公開、特開2011- 66144〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成21年9月16日の出願であって、平成25年1月24日に手続補正がなされ、同年8月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月2日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成26年9月30日付けで拒絶理由が通知され、同年12月2日に手続補正がなされたものである。
そして、本願の請求項に係る発明は、平成26年12月2日付け手続補正後の特許請求の範囲からみて、その請求項1ないし8に記載される事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「LED素子を載置するLED用リードフレームにおいて、
LED素子を載置する載置面を有する本体部と、
本体部の載置面に設けられ、LED素子からの光を反射するための反射層として機能する白金族めっき層とを備え、
本体部は、LED素子側の第1の部分と、第1の部分から離間した第2の部分とを有し、
第1の部分の底面に第1のアウターリード部が形成され、第2の部分の底面に第2のアウターリード部が形成され、
リードフレームの上面のうち外側樹脂部と接する部分には凹部が設けられ、前記凹部は白金族めっき層によって覆われることなく、前記凹部から本体部が露出していることを特徴とするLED用リードフレーム。」

2.引用例
これに対して、当審の平成26年9月30日付け拒絶理由通知書に引用した特開2008-53564号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに次の記載がある。

ア 「【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
<構成>
図1は、本実施の形態1における光半導体装置100の断面図である。同図に示す様に、光半導体装置100は、外囲樹脂10、リード11、発光素子12、電気接続用ワイヤー13、封止樹脂14から構成される。
(外囲樹脂10)
外囲樹脂10は、光反射性にすぐれた酸化チタンを含有するポリマー樹脂で構成される。
(リード11)
リード11は、銅、銅合金、鉄、鉄合金などの金属薄板材と、後述する金属薄板材を被覆する金属被膜とで構成されており、リード11の一部の表面には、図1に示すように、光反射性にすぐれた外囲樹脂10が射出成型されている。
【0015】
図2は、リード11の構造を示す図である。
リード11は、図2(a)に示すように表面が第一金属被膜21と第二金属被膜22の2層の被膜で覆われている。
第一金属被膜21は、光反射率の高い金属、例えば、銀メッキ、アルミメッキの被膜で構成することができる。第一金属被膜21の膜厚としては、2?5μmの範囲が望ましい。
【0016】
第二金属被膜22は、標準電極電位の大きい金属、例えば、白金族に属する金属元素(例えば、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、オスミウム)、金の被膜で構成することができる。
第二金属被膜22の膜厚としては、0.005?0.02μmの範囲が望ましい。
例えば、ロジウムやパラジウムで第二金属被膜22を構成する場合には、膜厚0.005μmで、後述する銀のイオン化及び銀のイオン化に伴う変色原因物質の生成を抑止することができる。
【0017】
又、第二金属被膜22の膜厚が厚すぎると、第一金属被膜21の光反射率の低下を招くので、第二金属被膜22の膜厚は、0.02μm以下とするのが望ましい。
又、第二金属被膜22を白金族に属する金属元素の被膜で構成する場合には、図2(b)に示すように、さらに、金メッキの被膜からなる第三金属被膜23で第二金属被膜22を被覆することとしてもよい。」

イ 「【0023】
なお、第一金属被膜21、第二金属被膜22及び第三金属被膜23は、リード11全体ではなく、封止樹脂14と接する部分(図1の15で示す部分)のみに形成することとしてもよい。例えば、リード11の表面全体をパラジウム(Pd)メッキし、封止樹脂14と接する部分のみに、さらに、第一金属被膜21、第二金属被膜22及び第三金属被膜23を形成することとしてもよい。
(発光素子12)
リード11上に、ダイボンディングされて固定され、電気接続用ワイヤー13でリード11の接続部とワイヤボンディングされて、接続部と電気的に接続されている。
【0024】
発光素子12としては、例えば、高出力(1W以上)の白色LEDが用いられる。複数個のLEDを用いることとしてもよい。
(電気接続用ワイヤー13)
発光素子12とリード11とを電気的に接続する。
電気接続用ワイヤー13としては、接続部とのオーミック性、機械的接続性、電気伝導性及び熱伝導性がよいものが望ましい。例えば、金、銅、白金、アルミニウム等及びそれらの合金を用いた導電性ワイヤーを用いることができる。このような導電性ワイヤーは、ワイヤボンディング機器によって容易に接続部と接続させることができる。
(封止樹脂14)
発光素子12及びリード11を封止する樹脂であり、シリコーン樹脂又はシリコーン樹脂と他の封止樹脂(例えば、エポキシ樹脂)との混合樹脂から構成される。
【0025】
シリコーン樹脂は、樹脂硬化触媒として、白金塩化合物(例えば、塩化白金(PtCl_(2))、その他のハロゲン化白金、ヘキサクロロ白金酸カリウム(K_(2)PtCl_(6))など)を使用したものが用いられる。
<製法>
図4は、光半導体装置100の製造工程を示す図である。以下、図4を参照しつつ、光半導体装置100の製造工程について説明する。
(リード11の形成工程)
銅、銅合金、鉄、鉄合金等の金属薄板材をプレス加工又はエッチング加工してリード前駆体を形成し、リード前駆体の表面に銀メッキ処理をして、表面に膜厚2?5μmの銀メッキ被膜を作成し、図4(a)に示すように、第一金属被膜21を形成する。
【0026】
次に形成した第一金属被膜21の表面を白金族に属する金属元素又は金で薄膜メッキし、図4(b)に示すように、第二金属被膜22を形成する。
具体的には、第一金属被膜21を形成したリードの表面を酸処理し、薄膜メッキに用いる上記何れかの金属の含有量が0.5?2g/lのメッキ金属の溶液に浸漬して、電気メッキし、第一金属被膜21の表面を第二金属被膜22の薄膜で被覆する。」

ウ 「【0029】
…。
(実施の形態2)
<構成>
図5は、本実施の形態2における光半導体装置200の断面図である。図5に示す様に
、光半導体装置200は、外囲樹脂10、リード31、発光素子12、電気接続用ワイヤー13、封止樹脂14、ヒートシンク16から構成される。
【0030】
上記構成において、実施の形態1の光半導体装置100の構成要素と同一の構成要素については、同一の番号を付し、以下、光半導体装置100の構成要素と相違する構成要素について説明し、同一の構成要素については説明を省略する。
(リード31)
リード31は、銅、銅合金、鉄、鉄合金などの金属薄板材で構成され、表面が銀以外の、半田との濡れ性が良好な金属(例えば、パラジウム、金)でメッキされている。」

上記アによれば、引用例には、金属薄板材と、金属薄板材を被覆する白金族に属する金属元素の金属被膜を備えたリードが記載されているものと認められる。
ここで、白金族に属する金属元素の金属被膜は、【0026】に記載されるように薄膜メッキにより形成されている。
また、引用例の図1を参照すると、リード11は、発光素子12が載置される部分と電気接続用ワイヤー13が接続される部分からなっているものと認められる。
発光素子12は、【0024】に記載されるようにLEDである。

以上のことから、引用例には、
「LEDを載置するリードであって、
金属薄板材と
金属薄板材のLEDを載置する面側に設けられた白金族に属する金属元素の金属メッキ層を備え、
金属薄板材は、LEDが載置される部分と電気接続用ワイヤ-が接続する部分からなるリード。」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「リード」は、「LEDを載置するリード」であるから、本願発明と同様に「LED素子を載置するLED用リードフレーム」といえる。
(2)引用発明の「金属薄板材」は、本願発明の「本体部」に相当する。
(3)引用発明の「白金族に属する金属元素の金属メッキ層」は、本願発明の「白金族めっき層」に相当する。引用例には、引用発明の「白金族に属する金属元素の金属メッキ層」がLED素子からの光を反射するための反射層として機能する旨の記載はないが、その厚さに関して、引用例の【0016】に「0.005?0.02μmの範囲が望ましい。」と記載されているところ、本願明細書の【0022】には、本願発明の白金族めっき層の厚さとして「0.005μm?0.2μmとされることが好ましい。」と記載されていることからすれば、引用発明の「白金族に属する金属元素の金属メッキ層」と本願発明の「LED素子からの光を反射するための反射層として機能する白金族めっき層」に構成上の差異は認められない。
(4)引用発明の「LEDが載置される部分」及び「電気接続用ワイヤ-が接続する部分」は、それぞれ、本願発明の「LED素子側の第1の部分」及び「第1の部分から離間した第2の部分」に相当する。
(5)以上のことから、両者は、
「LED素子を載置するLED用リードフレームにおいて、
LED素子を載置する載置面を有する本体部と、
本体部の載置面に設けられ、LED素子からの光を反射するための反射層として機能する白金族めっき層とを備え、
本体部は、LED素子側の第1の部分と、第1の部分から離間した第2の部分とを有するLED用リードフレーム。」の点で一致する。
(6)一方、両者は、次の点で相違する。
a.本願発明では、「第1の部分の底面に第1のアウターリード部が形成され、第2の部分の底面に第2のアウターリード部が形成され」ているのに対し、引用例の図1の形態ではこのようになっていない点。すなわち、引用例の図1では、金属薄板材の先端部が内側に曲げられており、LEDが載置される側の面、すなわち、金属薄板材の上面が本願発明でいうアウターリード部となっていると認められ、金属薄板材の底面がアウターリード部となっていない点。
b.本願発明では、「リードフレームの上面のうち外側樹脂部と接する部分には凹部が設けられ、前記凹部は白金族めっき層によって覆われることなく、前記凹部から本体部が露出している」のに対し、引用発明は、このようなものでない点。

4.相違点についての判断
(1)上記相違点aについて検討するに、引用例の【0023】には、図1に示される実施の形態1に関し、「なお、第一金属被膜21、第二金属被膜22及び第三金属被膜23は、リード11全体ではなく、封止樹脂14と接する部分(図1の15で示す部分)のみに形成することとしてもよい。例えば、リード11の表面全体をパラジウム(Pd)メッキし、封止樹脂14と接する部分のみに、さらに、第一金属被膜21、第二金属被膜22及び第三金属被膜23を形成することとしてもよい。」と記載されている。
ここで、引用例には、実施の形態2の光半導体装置が図5に示されており、このリード31は、【0030】に記載されているように、金属薄板材の表面が例えばパラジウムでメッキされているものであり、図5にみられるように、その先端部が外側に曲げられており、金属薄板材の底面がアウターリード部となっているものと認められる。
してみると、図1に示される実施の形態1においても、引用例の【0023】に記載される上記の構成のリード11とした場合に、引用例の図5に示されるリード31のようにその先端を外側に曲げて、金属薄板材の底面がアウターリード部を形成するようにして、上記相違点aに係る本願発明の発明特定事項とすることに困難性は認められない。
(2)上記相違点bについて検討する。
原査定において指摘したように、リードフレームと樹脂の密着性の観点から、また、水分の侵入に対するバリヤとしての観点から、リードフレームの樹脂に接する部分にスタンピングにより凹部を設けることは、例えば、原査定時に引用した実願平1-68347号(実開平3-8459号)のマイクロフィルムに記載される溝6にみられるように本願の出願時点で周知であるから、引用発明のリードにおいて、外囲樹脂10と接する部分に溝のような凹部を設けることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして、この場合、溝は、引用例におけるメッキを突き抜けて金属薄板材に到達するものと認められるから、当然に、引用発明における金属薄板材は、溝部において露出しているものと認められる(なお、引用発明のリード11を引用例の【0023】に記載される構成とした場合に、白金族めっき層は図1の15で示す部分のみに形成されるから、溝部が白金族めっき層によって覆われることのないことは明らかである。)。
してみると、結局、上記相違点bに係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において、上記周知の技術を適用することにより、実現されるものにすぎない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるところであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-19 
結審通知日 2015-01-06 
審決日 2015-01-19 
出願番号 特願2009-214745(P2009-214745)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北島 拓馬  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 松川 直樹
近藤 幸浩
発明の名称 LED用リードフレームまたは基板、半導体装置、およびLED用リードフレームまたは基板の製造方法  
代理人 村田 卓久  
代理人 永井 浩之  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 勝沼 宏仁  

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