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審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 G01N 審判 全部無効 2項進歩性 G01N |
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管理番号 | 1298070 |
審判番号 | 無効2014-800041 |
総通号数 | 184 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-04-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2014-03-17 |
確定日 | 2015-03-02 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3249628号発明「青果物の内部品質検査用の光透過検出装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件に係る特許第3249628号についての手続の経緯は、つぎのとおりである。 ・平成 5年 3月31日 :特許出願(特願平5-74193号) ・平成13年11月 9日 :特許権の設定登録 ・平成26年 3月17日 :本件特許無効審判請求(無効2014-800041号)<請求人> ・平成26年 4月10日付け:請求書副本送達 答弁指令(特134条1項) (送達日同年4月15日) <審判長> ・平成26年 6月13日 :審判事件答弁書提出<被請求人> ・平成26年 6月30日付け:答弁書副本送付<審判長> ・平成26年 7月 2日付け:審理事項の通知<審判長> ・平成26年 8月20日 :口頭審理陳述要領書提出<請求人> ・平成26年 8月20日 :口頭審理陳述要領書提出<被請求人> ・平成26年 8月21日 :口頭審理陳述要領書副本送付<審判長> ・平成26年 9月 2日付け:上申書の提出<請求人>(被請求人9月3日受領) ・平成26年 9月 3日 :第1回 口頭審理 ・平成26年 9月 3日 :書面審理通知(口頭による告知) ・平成26年 9月17日 :上申書の提出<請求人> ・平成26年10月 2日 :上申書の提出<被請求人> ・平成26年12月19日 :上申書の提出<請求人> ・平成26年12月24日 :審理の終結の通知<審判長> 第2 本件特許発明 本件特許の各請求項に係る発明は、本件特許明細書(甲第1号証)の特許請求の範囲に記載の次のとおりのものである。(下記記載中のAないしLは、後の便宜のために当審により構成要件を分節し、付記した記号) 1 請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明1」という。) 「 【請求項1】 A:搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレーと、 B:この搬送コンベア上のトレーに載った青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し、照射された青果物から出る透過光を受光するように上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段と、 C:この受光手段に上記透過光以外の外乱光が入光するのを阻止するように青果物と上記受光手段の対向位置の間に配置される遮光手段と、 D:複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段と E:を備えたことを特徴とする青果物の内部品質検査用の光透過検出装置。」 なお、上記記載のうち「D:・・・遮光手段のの間を除く青果物の周囲から・・・」は「・・・遮光手段の間を除く青果物の周囲から」の明白な誤記であると認められるから、上記のように認定した。 2 請求項2に係る発明(以下、「本件特許発明2」という。) 「 【請求項2】 請求項1において、 F:青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段は、複数の発光光源をトレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置されていることを特徴とする青果物の内部品質検査用の光透過検出装置。」 3 請求項3に係る発明(以下、「本件特許発明3」という。) 「 【請求項3】 G:コンベアで移送され、中央部に上下に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレーと、 H:外乱光が入らないように形成した上記トレーの上下に貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段と、 I:この青果物から出る透過光を受光するように上記トレー上の青果物に対向される受光手段をもつ受光光学系と、 J:受光された光信号を電気信号に変換する光電変換手段と、 K:該電気信号に含まれる透過光の信号成分を検出する透過光信号成分の検出手段と L:を備えたことを特徴とする青果物の内部品質検査用の光透過検出装置。」 第3 無効理由についての当事者の主張 1 請求人が主張する無効理由の概要 (1)無効理由1-1(本件特許発明1の甲2号証に基づく新規性の欠如について) ア 審判請求書における主張の概要 本件特許発明1は、甲2号証(特開昭50-78378号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当するから無効とすべきものである。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 (ア)本件特許発明1の構成要件Aに関して 甲第2号証の第2頁右上欄8?16行の記載によれば、果実を通過し果実から出射した検査光を、不透明視準板29の孔30-30を通過する前に吸収あるいは散乱するような物質を介在させるようなことは当業者であれば当然避けることである。すなわち、甲第2号証の記載からコンベア台にわざわざ透光性部材を用いていると認識することはなく、透光性部材を用いることなく貫通孔を備えるものと考えるのが通常である。 (イ)本件特許発明1の構成要件Cに関して 甲第2号証第4頁左下欄第12?14行の記載から、孔30によって光増倍管32への光の侵入を制限していることが明らかであり、ここで、不透明視準板29が光を透過するものであるとすると、孔30による光の進入の制限が効果的に行えなくなることからして、不透明視準板29の不透明部分は光の入射を遮る機能を有しているものと考えられる。 また、第4頁右上欄7?12行の記載から、不透明視準板29は果実の心部分31の両側以外を通過する光が通過しないように設けられているものといえる。ここで第4頁左下欄14行?右下欄10行の記載されている、「漂遊周囲光」が本来必要とされる透過光以外の、できるだけ除外する必要がある外乱光であることは明らかであり、そのために設けられている「不透明視準板29」及び「干渉フィルタ」は「遮光手段」に相当するものといえる。 ウ 平成26年9月17日付け上申書における主張の概要 (ア)被請求人は、口頭審理において、本件特許発明1の「トレー」が搬送コンベアとは独立したものであるとの主張の根拠として、本件特許明細書の段落【0029】の上下動機構の作動はトレーの移送状態と同期する旨の記載及び【0036】の押さえローラがトレーの搬送と同期する旨の記載を新たに主張しているが、これらの記載を参酌したとしても被請求人の主張のようにフリートレーに限定的に解釈することはできない。 例えば、A部材の上でB部材が搬送される場合において、A部材とともにB部材が搬送されているのであれば、A部材とB部材が固定されているか否かにかかわらず、ある部材が「B部材と同期する」という表現を取ることは一般的に行われていることであり、むしろ、本件特許発明1に関しては、A部材が搬送コンベア、B部材がトレーという関係であるため、作業者が外部から見たときに目につきやすいのは搬送コンベアよりもトレーの方であることを考慮すると、仮にトレーがフリートレーでない場合であっても、「上下動機構の作動はトレーの搬送と同期する」という表現を取ることにさほど違和感があるとはいえない。 仮にこれらの記載箇所の記載から、トレーが「フリートレー」であるとしても、係る記載箇所は一実施例の説明にすぎず、本件特許発明1の文言において、搬送コンベア上のトレーがフリートレーであるという限定もされていない。 さらに、本件特許発明1の課題等を参酌しても、トレーがフリートレーでなければ解決できない課題ではなく、むしろ、本件特許発明1をフリートレーに限定して解釈するのであれば、青果物にムラのないように光を照射するという課題を解決するためには、フリートレーの位置決め手段は必須の構成となるべきであるが(甲第11号証)、本件特許発明1ではこの点について何ら開示されていないことは、トレーと搬送コンベアの関係については本件発明の対象外としていることを裏付けるものである。 (イ)被請求人は、本件特許発明のトレーは、「コンベア搬送面上」を移送されるものであり、甲2発明にはコンベア搬送面が存在しない旨主張するが、そもそも特許請求の範囲には「コンベア搬送面」という構成は存在せず、仮に「コンベア搬送面」が特許請求の範囲の「搬送面」を指しているとしても、本件特許明細書の段落【0026】の「このトレー1は、図示しない搬送コンベアによって図の矢印に示す方向に水平に搬送面2の上を移送されるようになっている」と記載されているように、本件特許発明1における搬送面は、トレーを水平に移送させるものであればよいことは明らかである。 してみると、甲2発明における果実支持台17の前縁の枢軸18が枢着するリンク15a、15bの上面についても、果実支持台17を支持して水平に移送させるという点において、本件特許発明1の搬送面と何ら変わることはない。 (ウ)口頭審理において、本件特許発明1は搬送コンベアがない検査領域(測定ステージ)において光を照射している旨の主張が被請求によりなされたが、この主張は、本件特許発明1の「搬送コンベア上のトレーに載った青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し」との規定に矛盾する。 (2)無効理由1-2(本件特許発明3の甲第3号証に基づく新規性の欠如について) ア 審判請求書における主張の概要 本件特許発明3は、甲第3号証(米国特許第3773172号明細書)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当するから無効とすべきものである。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 (ア)甲第3号証についての当事者の翻訳について 既に提出の抄訳のとおりである。また、被請求人の翻訳した部分については認める。 (イ)本件特許発明3の構成要件Hについて Fig4に示されているようにランプ62は近接しており、隣の果実に入光する恐れがあるが、カップの開口48により隣接するランプ62の光(外乱光)が入らないようになっている。 そもそも、本件特許発明3では、「外乱光が入らないように形成した上記トレーの上下に貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段」と記載されているのみで、複数の発光光源からの光が同時に1つのトレーの穴を通して青果物に入射すると限定されているわけではない。 (ウ)本件特許発明3の構成要件I,J,Kについて 甲第3号証の「光ファイバ束64」、「光電子倍増管76,80」は、それぞれ、本件特許発明3の「受光光学系」、「光電変換手段」に相当する。 白色光のような外乱光は、甲第3号証の2つの周波数における光学密度の差を取る技術により相殺される。 (3)無効理由2-1(本件特許発明1の甲第2号証に基づく進歩性の欠如について) ア 審判請求書における主張の概要 本件特許発明1は、甲第2号証等に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア)甲第2号証において「トレーの中央部に貫通した穴を有する構成」が認定されないとしても、「中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せる」技術は、甲第3号証(「カップ42における開口48」)、甲第4号証(特開平3-160344号公報、「ゴム遮へい物16の内側」、甲第5号証(特開平4-83148号公報、「青果物載置台8中央の開口部」)に記載されているように、当業者に周知な技術事項にすぎない。 また、光を通過させる部分を貫通した穴とすることは当業者が設計時に当然に考慮することであり、甲2号証の構成において光を通過させる場合に、コンベヤ台17の中央部に貫通した穴を設けることは当業者であれば容易に想到することである。 (イ)青果物の内部品質を測定するための透過光の波長についてのスペクトル幅は狭く、青果物の大きさなど種々のノイズの影響を受けやすく、S/N比が悪いことから、測定を正確に行うため、受光手段に外乱光が入光するのを阻止するように遮光手段を設けることは、光を用いて測定をする場合に当然行うことにすぎない(甲第4ないし第6号証参照)。 (ウ)仮に、複数の光源により周囲から光を照射する構成が、甲第2号証から認定されないとしても、複数の光源により周囲から光を照射する構成は、甲第4号証に複数の投光装置1aとして記載されていることに加え、そもそも、光源の数を増やして明るくすることは、照明を行う際の常套手段にすぎない。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 (ア)本件特許発明1の構成要件Bの容易想到性について 甲第4号証の「青果物2」、「投光装置1a」、「ディテクタアレイ11」は、それぞれ、本件特許発明1の「青果物」、「光源」、「受光手段」に相当する。また、甲第4号証の第4図からみて「投光装置1a」は複数設けられている。 甲第5号証の「青果物a」、「青果物載置台8」、「開口部」、「ランプ3」、「透過光センサ10」は、それぞれ本件特許発明1の「青果物」、「トレー」、「穴」、「光源」、「受光手段」に相当する。 甲第6号証の「測定対象物2」、「クッション材の通孔6」、「光源部3」、「検出器4」は、それぞれ本件特許発明1の「青果物」、「穴」、「光源」、「受光手段」にそれぞれ相当する。 甲第4ないし6号証には、トレーが搬送コンベア上である点は記載されていないが、当該事項は、甲第2号証に記載されている事項である。仮にトレーが搬送コンベアから独立であるとしても搬送コンベア上に独立にトレーを設ける点は甲第7号証にも記載されており、格別の構成ではない。 被請求人は、「甲2発明は1対1の関係の光源と受光手段が2組必要である」ことを理由に阻害要因を主張しているが、そもそも本件特許発明1において、1対多の関係でないといけないとか、受光手段が1つでないといけないということは請求項の記載に規定されていない。 また、甲2発明において光学ビームで走査された果実の両側部分のビーム透過率特性間に有効な差を得るのは、必ずしも光源と受光手段を1対1の関係にしなければならないものではなく、例えば光源を複数として1つの受光手段に入射されるような構成においても達成できるものといえるから、被請求人が主張する阻害要因は存在しない。 一方、果実に光をあてて検出を行うものについては、甲第3?8号証に記載されているように種々のものが知られ、同じ技術分野のどのような検出機構を用いるかは当業者が対象果実等に応じて適宜決めうるものであるから、甲2発明において、光源を複数とすることに格別の困難性があるものではない。 (イ)本件特許発明1の構成要件C及びDの容易想到性について 甲第4号証における「ゴム製外乱光遮へい物20」に加えて、「ゴム製光遮へい物16」についても、本件特許発明1の「遮光手段」に相当する部材である。 (4)無効理由2-2(本件特許発明2の甲第2号証に基づく進歩性欠如について) ア 審判請求書における主張の概要 本件特許発明2は、甲第2号証等に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 トレーの搬送上に発光光源を配置すれば搬送の障害になることは、当業者にとって明らかであるから、甲第7、8号証のように、搬送路上から両横方向に外れて発光光源を配置することは、設計時に当業者が当然に行うことにすぎない。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 甲第2号証の図1Aには、レーザ71(光源)は、その照射先に設けられた鏡又はプリズム73によって下方に反射されている。図1Bには1対のレーザ74,75の2つの光源を用いることが示されている。ここで、図1Aのレーザ71の配置・照射態様を、2つの光源に適用し、各光源の照射先にプリズム(投光手段)を設けて青果物に光を照射する態様とすることは、図1Aと図1Bは、それぞれ同一の文献における別の実施例であるから、特段の困難性もなく互いに適用可能であり、当業者が容易に想到する事項である。 そして、搬送路上から両横方向に外れて各レーザを配置するのは、設計時に当然に行う事項である。 そもそも、果実に光を当てて受光し、果実の品質を検査するものにおいて、どこに光源を置くかは当業者が適宜決め得ることである。そして、光源を搬送路上の果実等と衝突しないように配置することは当然のことであり、その位置を搬送路上から両横方向に外れた配置とすることは、当業者であれば設計時に当然行う事項にすぎない。 例えば、甲第9号証の第6図は、内部品質検査装置の実施例を示す斜視図であり208P及び218Pがぞれぞれ照光器(投光器)であり、いずれも搬送ベルト301から横方向に外れて青果物204の周囲に配置されており、甲第10号証の第1図は、品質測定装置の実施例の概略構成図であり、白色光源3は、コンベア1の横に配置されており、第3図にも、光源22-1、22-2、22-3等がコンベア1の横に配置されているものがそれぞれ記載されている。 以上の公知例から明らかなように、コンベア上を移動する対象物に対して光を照射する光源の場合、それが透過方式の内部品質検査用の光源であったとしても、対象物の搬送に妨げにならない位置に置くことは、周知・慣用技術というべきである。 (5)無効理由2-3(本件特許発明3の甲第2号証に基づく進歩性欠如について) ア 審判請求書における主張の概要 本件特許発明3は、甲第2号証等に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 光源(レーザ74とレーザ75)と内部性質感知器14のどちらを上方に設置し、どちらを下方に設置するかは当業者が設計時に適宜決める事項であるから、甲第2号証に記載された発明において、甲第3号証、甲第5号証のように光源を下方に設置し感知器を上方に設置する構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 甲2発明の「コンベヤCにより水平に移動し、果実10が載置されるコンベヤ台17」、「内部性質感知器14に設けられた光増倍管32」、「雑音フィルタ回路、対数増幅器回路50、高域通過フィルタ回路51など」、「果実の内部特性の変化について光透過特性に基づいて検査する装置」は、それぞれ本件特許発明3の「コンベアで移送され、中央部に上下に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」、「この青果物から出る透過光を受光するように上記トレー上の青果物に対向される受光手段をもつ受光光学系と、受光された光信号を電気信号に変換する光電変換手段」、「該電気信号に含まれる透過光の信号成分を検出する透過光信号成分の検出手段」、「青果物の内部品質検査用の光透過検出装置」にそれぞれ相当するから、本件特許発明3と甲2発明とは、「コンベアで移送され、中央部に上下に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレーと、この青果物から出る透過光を受光するように上記トレー上の青果物に対向される受光手段をもつ受光光学系と、受光された光信号を電気信号に変換する光電変換手段と、該電気信号に含まれる透過光の信号成分を検出する透過光信号成分の検出手段とを備えたことを特徴とする青果物の内部品質検査用の光透過検出装置」である点で一致し、本件特許発明3は「外乱光が入らないように形成した上記トレーの上下に貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段」を備えているのに対して、甲2発明は「コンベヤC上のコンベヤ台17に載置された果実10に対し、レーザ74とレーザ75の2つの光源により光を照射する手段」を備えている点で相違する。 甲第3?5号証に記載されているように、光源を青果物の下方に設置し感知器を青果物の上方に配置することは従来公知の事項であり、甲2発明において、青果物の下方に投光手段を配置し、青果物の上方に受光手段を配置することは当業者にとって容易である。 そして、甲第4号証のゴム製外乱光遮へい物20やゴム製光遮へい物16、甲第5号証の青果物を載せる弾性体9や、甲第6号証の外乱光の進入を防止する果物を載せるクッション材5が用いられているように、外来光の影響を排除する手段を、青果物を載置するトレーを外乱光が入らないように形成することは当業者の適宜設計事項にすぎない。 (6)無効理由3-1(本件特許発明1の甲第3号証に基づく進歩性欠如について) ア 審判請求書における主張の概要 本件特許発明1は、甲3号証等に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア) 下部から照明して上部で受光するか、上部から照明して下部で受光するかは設計時に当業者が適宜決められる程度のことであるから、甲第3号証の発明において、甲第2号証、甲第5号証のように上部から照明して下部で受光して本件特許発明1のようにすることは当業者が容易になし得たものである。 (イ) 中央部の貫通した穴や複数の光源により周囲から光を照射する点等については上述したとおりである。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 本件特許発明1と甲第3号証とは、両者が本件特許発明1の構成要件A,B,D,Eを備えている点で一致し、本件特許発明1がCを備えているのに対して、甲第3号証が遮光手段について言及していない点で相違する。 甲第2号証の「不透明視準板29」は、本件特許発明1の「遮光手段」に対応する。さらに、甲第2号証には干渉フィルタが記載されており、甲3発明(当審注:甲2発明の誤記と思われる。)は受光手段に不要な浮遊光が入射するのを防止するため遮光手段を備えている。 ウ 第1回口頭審理における確認事項 請求人の本件特許発明1と甲3発明との相違点の主張を整理すると、本件特許発明1と甲3発明とは、ア(ア)(イ)で検討した相違点に加えて、甲3発明が構成要件Cを備えていない点で相違するということである。 (7)無効理由3-2(本件特許発明2の甲第3号証に基づく進歩性欠如について) ア 審判請求書における主張の概要 本件特許発明2は、甲第3号証等に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 甲3号証の発明においても、上記(4)で示したように、周囲に発光光源を配置する際に甲第7、8号証のように搬送路上から両方向に外れて配置することは、設計時に当業者が当然に行うことにすぎない。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 当該技術分野において、発光と受光は果物の上方と下方のいずれにおいても当業者の設計的事項の範囲内で配置できるものであるから、甲3発明において上方で発光する場合に、コンベア上を移動する対象物に対して光を照射する光源の場合、それが透過方式の内部品質検査用の光源であったとしても、対象物の搬送に妨げにならない位置に置くことは、周知・慣用技術というべきであるから、甲第7、8号証のように搬送路上から両横方向に外れて配置することは、設計時に当業者が当然に行うことにすぎない。 (8)無効理由3-3(本件特許発明3の甲第3号証に基づく進歩性欠如について) ア 審判請求書における主張の概要 本件特許発明3は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ア)中央部に貫通した穴を有する点は、(2)で示したとおりである。 (イ)トレーの穴に外乱光が入らないように形成する構成は、甲第3号証のような光を用いて測定する装置においては当然に行うことにすぎない(甲第4?6号証参照)。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 本件特許発明3の構成要件Hにおいて「複数の光源からの光が同時に一つのトレーの穴に入射する」と解釈すると、本件特許発明3と甲3発明は、構成要件Hを備えていない点で相違する。 しかし、複数の光源の光を用いることは、甲第4ないし甲第8号証に記載されているように周知であるうえ、光学系を用いて複数の光源からの光を重ね合わせることは当業者にとって単なる設計的事項である。 ウ 第1回口等審理における確認事項 請求人の本件特許発明3と甲3発明との相違点の主張を整理すると、アで検討した相違点及び甲3発明が、構成要件Hを有さない点で相違するとの主張である。 (9)審判請求人は、審判請求書35頁(d-7)の主張は、取り下げた(平成26年8月20日付け審判請求人提出の口頭審理陳述要領書2頁)。 2 被請求人の主張の概要 (1)無効理由1-1(本件特許発明1の甲第2号証に基づく新規性の欠如について) ア 審判事件答弁書における主張の概要 甲2発明には、以下(ア)ないし(オ)のとおり、本件特許発明1の構成AないしDを開示しておらず、本件特許発明1と甲2発明との間には、少なくとも下記相違点2-1及び2-2が存在し、本件特許発明1と甲2発明は同一ではない。 (ア)甲2発明の「コンベヤ台17」は、搬送コンベヤのリンク15a、15bに回動自在に枢着されたものであり、搬送コンベヤの所定の位置に保持されたまま、搬送コンベヤと一体として移動するものであって、甲2発明の「コンベヤ台17」は、搬送コンベヤに設けられた果菜載置部にすぎないのに対して、本件特許発明1の構成要件Aによれば、本件特許発明1の「トレー」は、搬送コンベヤとは独立して設けられ、青果物を載せて搬送コンベヤによって搬送面の上を移送されるものであるから、甲2発明は、構成要件Aを開示していない。 さらに、甲第2号証には、「コンベヤ台17」が貫通孔を有することは明記されておらず、この点においても構成要件Aを開示していない。 (イ)甲2発明は、本件特許発明1のトレーを開示していないのであるから、構成要件Bにおける「搬送コンベヤ上のトレーに載った青果物」に対し光を照射することも、照射された青果物から出る透過光を受光するように「上記トレーの貫通した穴」を通して青果物の一部表面に対向する受光手段も開示していない。 甲2発明は、単一または1対のレーザーを2か所に照射しそれぞれのビームを1対の感知器14-14で受光するものであるのに対して、本件特許発明1の構成要件Bは、複数の光源に対して一つの受光手段を有するものであるから、甲2発明はこの点においても構成要件Bを開示していない。 (ウ)甲2発明の不透明視準板29の孔30-30は、単なる開口であり、そこを通過する光を透過光に限定し、透過光以外の外乱光が入光するのを阻止するものではないから、甲2発明は、本件特許発明1の構成要件Cを開示するものではない。 (エ)甲2発明は、本件特許発明1の「遮光手段」を開示しないのであるから、受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲から青果物を照射する投光手段を開示していないから、甲2発明は、本件特許発明1の構成要件Dを開示するものではない。 (オ)以上のとおり、本件特許発明1と甲2発明とは、以下の点において少なくとも相違する。 <相違点2-1>本件特許発明1では「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」を備え、「この搬送コンベア上のトレーに載った青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し」、受光手段が「上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向している」のに対して、甲2発明には、かかる構成は開示されていない点 <相違点2-2>本件特許発明1では「受光手段に上記透過光以外の外乱光が入光するのを阻止するように青果物と上記受光手段の対向位置の間に配置される遮光手段」を備え、投光手段が「複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲から該青果物を照射する」のに対し、甲2発明にはかかる構成は開示されていない点 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 (ア)本件特許発明1の構成要件Aについて a 本件特許明細書及び図面の記載 本件特許発明1は、構成要件Aにおいて、「トレー」が「搬送コンベア」により水平に搬送面上を移送される移送物であることを明らかにしているように、本件特許発明1の「トレー」が「搬送コンベア」によって移送されるものであるから、「搬送コンベア」とは別の独立した構成要素であることは自明である。 また、構成要件Bにおいても、トレーが「搬送コンベア」とは別の独立した移送物であることを前提として、「搬送コンベア上のトレー」と記載している。 この点、本件特許明細書の段落【0020】には「・・・青果物を個々トレーに載せて搬送させる方式が好ましく用いられる。・・・」、段落【0026】には「・・・トレー1は、図示しない搬送コンベアによって図の矢印に示す方向に水平に搬送面2の上を移送されるようになっている。」と記載されているように、本件特許明細書には、青果物を個々トレーに載せて搬送コンベアによって水平に搬送面2の上を移送させる方式を採用していることが開示されている。そして、トレー1の構成については、上下貫通孔を有する構成であることを明確にしているが、搬送コンベアの構成については全く述べられておらず、トレー1と搬送コンベアとは別体であり、トレー1が独立した移動物であることが前提とされている。また、図1ないし図3には、搬送面2,32,62とは独立してトレー1,31,61が設けられており、トレー1,31,61が搬送面2,32,62の上を搬送されることが示されている。 b 技術水準 本件特許出願当時、搬送コンベアとは独立して設けたトレー(受皿、パン)に青果物を載せて、搬送コンベアによって搬送する方式は、青果物の搬送装置の技術分野において周知なものであったから、本件発明1の「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され・・・その上部に青果物を載せて移送するトレー」が、かかる方式で使用されるトレーであることは当業者にとって明らかであり、トレーが搬送コンベアとは独立して設けられていることは、当業者にとって自明である。 本件特許出願日以前から「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」を用いて搬送する方式は、乙第1ないし第5号証及び甲第7号証に記載されているように公知であった。 (a)乙第1号証は、本件特許出願日の1週間後に公開された公開特許公報であるが、そこには、「選別行程中、メロン等の被選別物を選別コンベアの供給する受皿(トレー)に載せて移送しながら仕分ける選別装置が公知である(例えば、特開平2-255419号公報)」との記載されているように、乙第1号証の出願の1991年9月27日の時点で、「被選別物を選別コンベアの供給する受皿(トレー)に載せて移送しながら仕分ける選別装置」が公知であり、「選別コンベアによって移送され、被選別物を載せる受皿(トレー)」は、選別コンベアとは独立して設けられることが明らかとされている。 (b)乙第2号証にも、青果物を載置した青果物入り受皿1を選別コンベアによって搬送する方式が従来技術として開示されており、かかる方式において、「選別コンベアによって搬送され、青果物を載置する受皿1」は、選別コンベアとは独立して設けられることが明らかとされている。 (c)乙第3号証には、被選別物をパンに収納し、このパンを搬送コンベヤに対してフリーな状態で移送させる方式が開示されており、かかる方式において、「搬送コンベヤによって移送され、被選別物を収納するパン」は、搬送コンベヤとは独立して設けられることが明らかとされている。 (d)甲第7号証には、青果物100を一個ずつ載せるための多数の受皿10と、この受皿10を搬送面上でフリーな状態(フリートレー式)で搬送するためのコンベア装置15が開示されており、「コンベア装置15によって搬送され、青果物100を載せるための受皿10」は、コンベア装置15とは独立して設けられることが明らかとされている。 (e)また、乙第4号証及び第5号証に記載されているように、フリートレー方式は、青果物を搬送する手段として、本件特許出願当時には実用化されていた周知技術なのである。 (イ)本件特許発明1の構成要件Bに関して 本件特許発明1の検査方法と甲2発明の検査方法とは根本的に異なるものであり、甲2発明は、本件特許発明1の構成要件B及び構成要件Dを開示していない、 a 本件特許発明1は、内部品質の検査・測定技術の中でも、透過光方式によって青果物の糖度などの内部品質を検査、測定できるようにするためのものであり、多くの青果物において透過光の減衰が極めて大きいという問題及び照明ムラ等が原因して果内部の透過光光路が偏っていれば、測定結果が実際の内部品質を正確に表していないという問題を解決するため、単に光源の光量を増大するのではなく、より効率的に透過光の光量を得ることができて、感度のよい光の照明、検出ができることと併せて、実際の果の内部状態とできるだけ一致(対応)した情報をもつ透過光の検出ができるように工夫したものである(段落【0005】、【0008】?【0013】、【0017】?【0018】、【0031】、【0039】?【0041】)。 そして、本件特許発明1は、構成要件Dに規定したように、複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得ることができ、また、複数光源により青果物をその周囲から照明するので透過光の光路が果内部で偏ることが抑制され、ムラの少ない透過光として得ることができるのである。 したがって、構成要件Bにおける「受光手段」によって受光される「青果物から出る透過光」は、青果物に対し複数の光源により周囲から照射された光によるものであり、かかる複数の光源に基づく透過光を受光手段によって受光する構成なのであるから、本件発明1では、一つの受光手段は、複数の光源に対応しているのである。 b 甲2発明は、約300?約4000ナノメートルの波長を有する光学ビームにより果実の両側部分を同時に走査し、果実を透過したそれぞれの光のビーム透過率特性に基づいて、内部のきずや損傷について検査するものであり、このような甲2発明の検査方法では、果実の両側部分を透過した光は、ビーム透過率特性を比較して内部のきずや損傷を検査するため、それぞれ独立して果実を透過する必要があり、複数の光源に基づく透過光ではないのである。また、甲2発明の検査方法においては、光源からの光は、果実を直進して透過したものだけを感知器で受光する構造であり、コンデンサレンズ70を挿入したり、レーザを使用したりして指向性の高い集束光源が採用されており、複数の光源により周囲から光を照射するものではない。 (ウ)本件特許発明1の構成要件Cに関して 甲第2号証の第1図によれば、平板状の不透明視準板29に孔30-30が設けられただけであり、孔30-30の上端部の開口(以下「入光口」という。)には、何らの工夫もなされていない。しかも、甲2発明では、果実10はコンベヤ台17で移送される構成であり、コンベヤ台17の円滑な移動を担保するために、不透明視準板29の上方を離間してコンベヤ台17を移送するのが一般的であり、この場合には、不透明視準板29の孔30-30とコンベヤ台17及び果実10との間の隙間がより大きくなる。このように、不透明視準板29の孔30-30は、入光口に何らの工夫もなされておらず、入光口から透過光以外の外乱光が入光してしまう構造なのである。 これに対して、本件特許発明1には、本件特許明細書の段落【0019】及び【0029】に記載されているように、外乱光の入光を阻止するために特別な構成を採用しているのであるから、甲2発明は、本件特許発明1の構成要件Cを開示するものではない。 (エ)本件特許発明1と甲2発明との一致点について 合議体が審理事項通知書において示した本件特許発明1と甲2発明との一致点のうち、本件特許発明1と甲2発明とは、「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、その上部に青果物を載せて移送する移送部材」及び「青果物と受光手段の対向位置の間に配置される手段」の2点において一致するものとはいえない。 ウ 平成26年10月2日付け上申書における主張の概要 (ア)請求人は、上申書において「A部材が搬送コンベア、B部材がトレーという関係」を前提として、「A部材とともにB部材が搬送されている」という場合を例示しているが、本件特許発明1は、特許請求の範囲に「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」と記載しており、「搬送コンベア」という搬送手段によって、「トレー」及び「トレー上部に載せられた青果物」という搬送対象を搬送するものであることを明示しているのであり、請求人の主張は、搬送手段である搬送コンベアを搬送対象と誤認するものであり、本件特許発明1の認定において重大な誤謬が存在する。 トレーの搬送と同期するのは作業者ではなく、検出装置の上下動機構であるから、作業者の視点を根拠として「作業者が外部から見たときに目につきやすいのは搬送コンベアよりトレーの方である」と主張して、「上下動機構の作動はトレーの搬送と同期する」という表現に違和感はないとの独自の見解は全く理由がない。 (イ)本件特許発明1は、「搬送コンベア」という搬送手段によって、「トレー」及び「トレー上部に載せられた青果物」という搬送対象を搬送することを明確にしており、本件特許発明1がフリートレー方式であることは請求項の記載から明らかである。 また、口頭審理陳述要領書において主張した本件特許明細書の段落【0020】及び【0026】並びに図1ないし図3の開示に加えて、本件特許明細書には、段落【0029】及び【0036】に記載されているように、搬送手段である搬送コンベアと同期させるのではなく、わざわざトレーの移送状態やトレーの搬送と同期させることを開示している点からもトレーの移動状態が搬送コンベアと独立したフリートレー方式であることは明白である。 (ウ)請求人は、甲第11号証を提出して、本件特許発明1をフリートレーに限定して解釈するのであれば、フリートレーの位置決め手段は必須の構成となるべきであると主張するが、本件特許発明1は、複数の光源を設けることによって青果物にムラのないように光を照射するという課題を解決しているのであり、請求人の主張には理由がない。 (エ)請求人は、甲2発明における果実支持台17の前縁の枢軸18が枢着するリンク15a、15bの上面についても、果実支持台17を支持して水平に移送させるという点において、本件特許発明1の搬送面と何ら変わることはないと主張するが、甲2発明のリンク15a、15bの上面が搬送面であるとすれば、甲2発明の「コンベヤ台17」は、前縁の枢軸18がリンク15a,15bに枢着しており、リンク15a,15bの上面よりも下方に位置しているから、甲2発明は、本件特許発明1の「搬送面上を移送される」ことも開示していない。 (オ)請求人は、口頭審理において、本件特許発明1は搬送コンベアがない検査領域(検査ステージ)において光を照射している旨の被請求人の主張が、「搬送コンベア上のトレーに載った青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し」という本件特許発明1の規定と矛盾する旨主張するが、口頭審理調書の記載からも明らかなように、被請求人は「図1ないし3には、トレーの貫通穴の下側には搬送面が図示されていない」と主張しているのであり、請求人の指摘は前提となる被請求人の主張を誤解するものであって、失当である。 (2)無効理由1-2(本件特許発明3の甲第3号証に基づく新規性の欠如について) ア 審判事件答弁書における主張の概要 本件特許発明3と甲3発明とは、少なくとも相違点3-1の相違が存在するから本件特許発明3は甲3発明とは同一ではない。 (ア)甲3発明の「カップ42」は、搬送コンベヤベルト30にしっかり固定されたものであり、搬送コンベヤベルト30の所定の位置に保持されたまま、搬送コンベヤベルト30と一体として移動するものであって、甲3発明の「カップ42」は、搬送コンベヤベルト30に設けられた果菜載置部にすぎない。 これに対し、本件特許発明3の構成要件Gは、「コンベアで移送され、中央部に上下に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」であり、本件特許発明3の「トレー」は、コンベアとは独立して設けられ、青果物を載せてコンベアによって移送されるものである。 (イ)甲3発明は、本件特許発明3の「トレー」を開示していないのであるから、本件特許発明3の構成要件Hにおける「上記トレーの上下に貫通した穴」を通して発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段も開示されていない。 また、甲3発明は、一つのカップ42に対して一つのランプ62が対応しているのであり、一つのカップ42に対して複数のランプ62からの光が入射するものではないので、本件特許発明3の構成要件Hにおける「上記トレーの上下に貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段」を開示するものではない。 したがって、甲3発明は、本件特許発明3の効果である「光量増大の割に電力エネルギーの増大を少なくでき、光源の発熱量を抑制する」という効果を奏し得ない。 甲3発明の「カップ42」は、開口48を有しているが、開口48について外乱光が入らないように形成することは記載されていないから、本件特許発明Hにおける「外乱光が入らないように形成した・・・上下に貫通した穴」も開示されていない。 (ウ)以上のとおり、本件特許発明3と甲3発明とは、少なくとも以下の相違点3-1で相違する。 <相違点3-1>本件特許発明3では「コンベヤで移送され、中央部に上下に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」を備え、投光手段が、「外乱光が入らないように形成した上記トレーの上下に貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する」のに対し、甲3発明には係る構成は開示されていない点 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 (ア)本件特許発明3の構成要件Gに関して a 本件特許発明3の構成要件Gにおいて規定されているように、「トレー」が「コンベア」によって移送されるものであるから、「トレー」は「コンベヤ」とは別の独立した構成要素であることは自明である。 この点、本件特許明細書の段落【0020】、【0026】に「青果物を個々トレーに載せて搬送コンベヤによって水平に搬送面2の上を移送させる方式を採用していること」が開示されており、「トレー1」の構成については、上下貫通孔を有する構成であることを明確にしているが、搬送コンベアの構成については全く述べられておらず、トレー1と搬送コンベアとは別体であり、トレー1が独立した移送物であることが前提とされている。 また、図2には、搬送面32とは独立してトレー31が設けられており、トレー31が搬送面32の上を搬送されることが示されている。 b 本件特許出願当時、搬送コンベアとは独立して設けたトレー(受皿、パン)に青果物を載せて、搬送コンベアによって搬送する方式は、青果物の搬送装置の技術分野において周知なものであった(乙第1号証ないし第5号証、甲第7号証)から、本件特許発明3の「コンベアで移送され、・・・その上部に青果物を載せて移送するトレー」が、かかる方式で使用されるトレーであることは当業者にとって明らかであり、トレーが搬送コンベアとは独立して設けられていることは、当業者にとって自明である。 (イ)本件特許発明3の構成要件I,J,Kに関して 甲3発明には、本件特許発明3の「コンベアで移送され、・・・その上部に青果物を載せて移送するトレー」が開示されていないから、本件特許発明3の構成要件Iを開示するものではない。 ウ 第1回口頭審理における陳述 審判請求書に記載の甲第3号証に係る抄訳について意見はない。 (3)無効理由2-1(本件特許発明1の甲第2号証に基づく進歩性の欠如について) ア 審判事件答弁書における主張の概要 本件特許発明1と甲2発明とは、少なくとも上述した相違点2-1及び2-2の点において相違するものであり、甲2発明ないし甲8発明に相違点2-1及び2-2に係る本件特許発明1の構成は開示されておらず、本件特許発明1は、甲2発明を主引例として、甲3発明ないし甲8発明及び周知技術を組み合わせたとしても当業者が容易に想到し得たものではない。 (ア)本件特許発明1と甲2発明との相違点2-1の想到容易性について 甲2発明の「コンベヤ台17」は、搬送コンベヤの所定の位置に保持されたまま、搬送コンベアとは独立して設けられ、搬送面上を所定の位置に固定されずに移送される「トレー」において適用する動機付けが存在せず、むしろ阻害要因が存在する。 「トレー」を採用した搬送方式では、「トレー」の下には任意の位置の搬送コンベアが存在するので、当業者は、「トレー」を採用した搬送方式において甲2発明を実現する具体的な構成を想到し得ない。 甲3ないし甲6発明は、いずれも本件特許発明1の「トレー」を採用した搬送方式を採用したものではなく、相違点2-1に係る構成も開示しないので、甲3発明ないし甲6発明には、甲2発明を本件特許発明1の「トレー」を採用した搬送方式に適用する動機付けは存在しない。 甲第7号証及び甲第8号証について、請求人は、本件特許発明2の容易想到性との関係においてのみ主張するだけであって、本件特許発明1の容易想到性に関連して具体的な主張はない。 以上のとおり、相違点2-1に係る本件特許発明1の構成は、甲2発明ないし甲8発明のいずれにおいても開示されておらず、本件特許発明1は、甲2発明を主引例として甲3発明ないし甲8発明及び周知技術を組み合わせたとしても当業者が容易に想到し得たものではない。 (イ)本件特許発明1と甲2発明との相違点2-2の想到容易性について a 甲2発明は、「1対の視準孔を用いて光学ビームで走査された果実の両側部分のビーム透過率特性官に有効な差を得ることができる」という事実を利用した発明であるため、1対1の関係の光源と受光手段が2組必要とされるのであり、複数の光源により周囲から光りを照射する構成を適用することができず、阻害要因が存在する。 b 相違点2-2に係る本件特許発明1の構成は、本件特許発明1の「トレー」を対象として実現されたものであるところ、甲2発明ないし甲8発明のいずれにおいても相違点2-2に係る構成は開示されていない。 甲第2号証には遮光手段は存在せず、甲2発明の「コンベヤ台」、「不透明視準板29」及び「孔30-30」との関係で、甲4発明ないし甲6発明のいかなる構成を遮光手段として甲2発明に具体的に適用するのか請求人は、全く明らかにしておらず、さらに、甲2発明は「1対の視準孔を用いて光学ビームで走査された果実の両側部分のビーム透過率特性間に有効な差を得ることができる」という事実を利用した発明であり、異なる検査方法を開示した甲4発明ないし甲6発明の構成を採用する動機付けも存在しないから、甲4発明ないし甲6発明を参酌したとしても、甲2発明において本件特許発明1の構成要件Cを想到することができない。 イ 口頭審理陳述要領書における主張の概要 (ア)本件特許発明1の構成要件Aの容易想到性について a 相違点2-1に係る構成の想到困難性 甲2発明においては、搬送コンベヤと「コンベヤ台17」とは一体不可分であり、「コンベヤ台17」の下方に感知器を配置して、果実の検査を行うことができるように、搬送コンベヤを設計することが可能であり、この点、甲第3号証の果実を保持する「カップ42」も、甲2発明の「コンベヤ台17」と同様に、搬送コンベヤベルト30と一体として移動するものであるが、「カップ42」に開口48を設けるためには、「カップ42」が配置される位置の搬送コンベヤベルト30にも穴41を設ける必要があった。 これに対して、本件特許発明1の「トレー」は、搬送コンベアとは独立して設けられ、青果物を載せて搬送コンベアによって搬送面の上を移送されるものであり、「トレー」の下には搬送コンベア等が存在し、「トレー」は搬送コンベヤ上において固定されておらず、係る方式では、そもそも、青果物の下には、トレーの底及び搬送コンベアが存在するため、青果物の上下方向に光を透過させることができない構成であり、トレーの下方に受光手段を配置する構成を想起しない。 このように動機付けがそもそも存在しないが、この点を措くとしても、「トレー」が搬送コンベア上において固定されていないため、「トレー」が配置される搬送コンベアの位置が特定されず、甲3発明のように、「カップ42」が配置される位置の搬送コンベヤベルト30に穴41を設けることができず、甲2発明においても、搬送コンベヤと「コンベヤ台17」との位置関係が固定されているからこそ、搬送コンベヤと「コンベヤ台17」とを一体として設計できたのであるから、搬送コンベアとは独立した「トレー」方式においては、搬送コンベアと一体として設計できないのであり、本件特許発明1は、甲2発明を主引例として甲3発明ないし甲8発明及び周知技術を組み合わせても当業者が容易に想到し得たものではない。 b 貫通孔の想到困難性 甲2発明では、光を透過させる果実の両側部分に対応させて「不透明視準板29」に一対の「孔30-30」を設けているものにおいて、果実の両側部に対応させて「コンベヤ台17」に一対の孔を設けるのであればともかく、「コンベヤ台17」の中央部に貫通した穴を設けることは、当業者が容易に想到しうるものではない。 (イ)本件特許発明1の構成要件C及びDの容易想到性について a 甲2発明ないし甲6発明及び甲8発明は、いずれも「トレー」自体が開示されておらず、トレーを採用した方式において、「遮光手段」をどのように配置、設計するのか想到することができない。甲7発明には、青果物を載せて移送する「受皿10」は開示されているものの、「受皿10」は貫通した穴を具備しておらず、本件特許発明1の「トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段」は存在しない。 また、甲7発明は、反射光を測定するものであり、光源からの光は投光ファイバーによって上方から青果物の表面に照射され、反射光は受光ファイバによって青果物の上方において受光される構造であって、甲7発明には遮光手段を設けることは開示されていないし、反射光を測定するので、相違点2-2における「受光手段に上記透過光以外の外乱光が入光するのを阻止する遮光手段」を設ける必要もない。 b 請求人は、単に甲4発明ないし甲6発明の構成を部分的に抽出し、それらを「遮光手段を設けること」と抽象化した上で、甲2発明において具体的にどのような遮光手段を設けるのかも特定せずに漫然と容易であると主張するだけであり、本件特許発明1を想到する合理的な理由はない。 甲4発明ないし甲6発明は、いずれも本件特許発明1の「トレー」も、本件特許発明1の「照射された青果物から出る透過光を受光するように上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段」も開示していない。 また、本件特許発明1と甲2発明は、検査方法が根本的に異なるものであり、甲2発明において、仮に複数の発光光源からの照射光を青果物の周囲から照射する構成を採用すると、透過光の光路が果内部で偏ることが抑制され、ムラの少ない透過光となり、果実の両側部分においてビーム透過率特性を比較する甲2発明の検査方法が実現できなくなるから、甲2発明には、本件特許発明1の「投光手段」を採用することを阻害する要因が存在する。 (4)無効理由2-2(本件特許発明2の甲第2号証に基づく進歩性欠如) ア 審判事件答弁書における主張の概要 本件特許発明2は、甲2発明を主引例として、甲3発明ないし甲8発明及び周知技術を組み合わせたとしても当業者が容易に想到し得たものではない。 (ア)甲2発明は、「1対の視準孔を用いて光学ビームで走査された果実の両側部分のビーム透過率特性間に有効な差を得ることができる」という事実を利用した発明であり、甲2発明の光源であるレーザーの配置は孔30-30を照射する構成に限定されているのであるから、甲2発明には、本件特許発明2の構成要件Fにおける「複数の発光光源をトレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置されていること」という構成を採用することを阻害する要因が存在する。 請求人は、甲第7、第8号証のように搬送路上から両横方向に外れて発光光源を配置することは、設計時に当業者が当然に行うことにすぎないと主張しているが、本件特許発明2は、青果物の内部品質検査用の光透過検出装置に関するものであり、「複数の発光光源」も、内部品質を検査するため青果物内を通過させるためのものであるから、甲7発明及び甲8発明の形状寸法及び外観表面状態を計測するための光源とは異なるから、甲7発明及び甲8発明には、本件特許発明2の構成要件Fが開示されていない。 (イ)本件特許発明2は、本件特許発明1を引用するものであるところ、本件特許発明1が、甲2発明ないし甲8発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない以上、本件特許発明2についても当業者が容易に想到し得たものではない。 (5)無効理由2-3(本件特許発明3の甲第2号証に基づく進歩性欠如について) ア 審判事件答弁書における主張の概要 本件特許発明3と甲2発明とは少なくとも相違点2-3において相違するものであり、相違点2-3に係る構成は、甲2発明ないし甲8発明のいずれにおいても開示されておらず、本件特許発明3は、甲2発明を主引例として、甲3発明ないし甲8発明及び周知技術を組み合わせたとしても当業者が容易に想到し得たものではない。 (ア)本件特許発明3と甲2発明との対比 請求人は、本件特許発明3と甲2発明とが、光源と内部性質感知器の配置のみ相違するものと認定していると推測されるが、かかる認定は誤りである。 甲2発明の「コンベヤ台17」は、本件特許発明の「トレー」に相当するものではなく、貫通孔を有することも明記されていないから、甲2発明は、本件特許発明3の構成要件Gを開示していないし、構成要件Hの「トレーの上下に貫通した穴」が開示されていない。 さらに、甲2発明は「コンベヤ台17」によって外乱光を防止することについて開示していないので、構成要件Hの「外乱光が入らないように形成した上記トレーの上下に貫通した穴」をも開示していないし、甲2発明は上方から光を照射しているので「複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段」についても開示していない。 (イ)本件特許発明3と甲2発明とは、少なくとも以下の相違点2-3の点で相違する。 <相違点2-3> 本件特許発明3は、「コンベアで移送され、中央部に上下に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」を備え、投光手段が、「外乱光が入らないように形成した上記トレーの上下に貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する」のに対し、甲2発明にはかかる構成は開示されていない点 (ウ)甲2発明に基づく本件特許発明3の容易想到性について 甲2発明を本件特許発明3の「トレー」において適用する動機付けが存在せずむしろ阻害要因が存在するのであるから、当業者は「トレー」を採用した搬送方式において甲2発明を実現する具体的な構成を想到できない。 甲3発明ないし甲6発明は、いずれも本件特許発明3の「トレー」を採用した搬送方式を採用したものではなく、相違点2-3に係る構成も開示していないので、甲3発明ないし甲6発明は、甲2発明を本件特許発明3の「トレー」を採用した搬送方式に適用する動機付けとなるものではない。 (6)無効理由3-1(本件特許発明1の甲第3号証に基づく進歩性欠如について) ア 審判事件答弁書における主張の概要 本件特許発明1と甲3発明とは、少なくとも相違点3-2及び3-3の点において相違するものであり、甲2発明ないし甲8発明に相違点3-2及び3-3に係る本件特許発明1の構成は開示されておらず、本件特許発明1は、甲3発明を主引例として、甲2発明、甲4発明ないし甲8発明及び周知技術を組み合わせたとしても当業者が容易に想到し得たものではない。 (ア)本件特許発明1と甲3発明との対比 甲3発明の「カップ42」は、本件特許発明の「トレー」に相当するものではないから、甲3発明は、本件特許発明1の構成要件A「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」及び構成要件B「搬送コンベア上のトレーに載った青果物」に対し光を照射することも、照射された青果物から出る透過光を受光するように「上記トレーの貫通した穴」を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段も開示していない。 さらに甲3発明は、一つのカップ42に対して一つのランプ62が対応しているのであり、一つのカップ42に対して複数のランプ62からの光が入射するものではないので、本件特許発明1の構成要件Bにおける「青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射」することを開示するものではないし、「光量増大の割に電力エネルギーの増大を少なくでき、また、光源の発熱量を抑制する」等の効果は奏し得ない。 甲3発明の「カップ42」は、開口48を有しているが、開口48について外乱光が入らないように形成することは記載されていないから、本件特許発明1の構成要件Cについて何ら開示するものではない。 甲3発明は「遮光手段」を開示しないのであるから、構成要件Dも開示しない。 (イ)以上のとおり、本件特許発明1と甲3発明とは、少なくとも以下の相違点3-2,3-3の点において少なくとも相違する。 <相違点3-2>本件特許発明1では「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」を備え、「この搬送コンベア上のトレーに載った青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し」、受光手段が「上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向している」のに対して、甲3発明には、かかる構成は開示されていない点 <相違点3-3>本件特許発明1では「受光手段に上記透過光以外の外乱光が入光するのを阻止するように青果物と上記受光手段の対向位置の間に配置される遮光手段」を備え、投光手段が「複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲から該青果物を照射する」のに対し、甲3発明にはかかる構成は開示されていない点 (ウ)相違点3-2及び3-3の想到容易性について 上記(3)ア(ア)(イ)のとおり、相違点3-2及び3-3に係る構成は、甲2発明ないし甲8発明には開示されていない。 (7)無効理由3-2(本件特許発明2の甲3号証に基づく進歩性欠如について) ア 審判事件答弁書における主張の概要 本件発明2は、甲3発明を主引例として、甲2発明、甲4発明ないし甲8発明及び周知技術を組み合わせたとしても当業者が容易に想到し得たものではない。 (ア)甲3発明は、カップ42の底にわざわざ開口48を設け、カップ42の下方からランプ62によってカップ42の開口48を介して照射し、カップ42の上に配置された光検出プローブ64によって光を受光するものであり、仮に甲3発明において、複数の発光光源を搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置したとすると、カップ42の底に開口48を設けた意味がなくなる上、カップ42の側壁46によって照射された光が遮られ検査することができず、しかも、複数の発光光源からの光が直接又は反射して光検出プローブ64に入ってしまうから、甲3発明に本件発明2の構成要件Fを採用することは阻害要因が存在する。 (イ)甲7発明及び甲8発明の形状寸法及び外観表面状態を計測するための光源を開示するものであり、青果物の内部品質検査用の光透過検出装置に関する本件発明2の構成要件Fを開示していない。 (ウ)本件特許発明2は、本件特許発明1を引用するものであるところ、本件特許発明1が、甲2発明ないし甲8発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない以上、本件特許発明2についても当業者が容易に想到し得たものではない。 (8)無効理由3-3(本件特許発明3の甲3号証に基づく進歩性欠如について) ア 審判事件答弁書における主張の概要 本件特許発明3の相違点3-1に係る構成は、甲2発明ないし甲8発明のいずれにおいても開示されておらず、本件特許発明3は、甲3発明を主引例として、甲2発明、甲4発明ないし甲8発明及び周知技術を組み合わせたとしても当業者が容易に想到し得たものではない。 (ア)甲3発明を搬送コンベアとは独立して設けられ、搬送面上を所定の位置に固定されずに移送される「トレー」において適用する動機付けが存在せず、阻害要因が存在する。 「トレー」を採用した搬送方式では、「トレー」の下には任意の位置の搬送コンベアが存在するので、当業者は、「トレー」を採用した搬送方式において甲3発明を実現する具体的な構成を想到できない。 (イ)甲2発明、甲4発明ないし甲6発明は、いずれも本件特許発明3の「トレー」を採用した搬送方式を採用したものではなく、相違点3-1に係る構成も開示していないので、甲2発明、甲4発明ないし甲6発明には、甲3発明を本件特許発明3の「トレー」を採用した搬送方式に適用する動機付けとなるものではない。 第4 無効理由についての当審の判断 1 各甲号証の記載事項 (1)甲第2号証(特開昭50-78378号公報) ア 甲第2号証に記載の事項 (ア)「本発明は物体をそれらの内部特性の変化について検査し評価する分野に関するものである。」(2頁左上欄8?9行) (イ)「本願発明者は、原特許出願に記載された方法及び装置をX線ビームの代りに光学ビーム、即ち約300?約4000ナノメートルの波長を有する電磁波のビームを用いても満足に作動させ得るという全く驚くべき事実を確かめた。・・・上述した範囲内の光学ビームはX線より大きな吸収を受けるのみならず比較的大きな散乱を受け、著しく散乱した形態で透過するためである。これらの事実にもかヽわらず、本願発明者は十分高感度の感光検知器を果実の透過側に用いれば、ビームは尚充分な指向特性を保持するので1対の視準孔を用いて光学ビームで走査された果実の両側部分のビーム透過率特性間に有効な差を得ることができる事実を確かめた。本発明は物体を自動的に検査し内部特性について評価し、次いで物体を評価した特性に従つて群別する方法及び装置に関するものである。」(2頁左上欄19行?右上欄19行) (ウ)「本発明を具現した装置は第1図に示すように、検査又は検出所A及び選別又は類別所Bを具え、これらは互に離間した所にあるが適当なコンベヤCで互に連結され、このコンベヤにより個々の果実10を連続的に順次に検査所Aを経て選別所Bに移送し、ここで果実10を検査所Aで評価された品質に応じて種々の等級別に放出する。・・・検査又は検出所Aは一般に外匣を具え、その上部隔室11aには光源12を収納し、これを光ビーム13が下部のトンネル状隔室11b内に照射するように配置し、この下部隔室には果実10をコンベヤCにより光ビームをさえぎる通路内に導入し、且つ光源12を14で示す内部性質感知器と関連させる。」(3頁左上欄6?20行) (エ)「光源12としてはレーザを用いるのが好適であり、第1A図に示すように単一のレーザ又は第1B図に示すように1対のレーザとすることができることを確かめた。第1A図において、レーザ71で発生された光ビームは先ず最初ビームスプリツタ72を通り、このビームスプリツタは半銀鏡とすることができるが、第1A図に示すように部分反射表面を直角プリズム内に組み入れた既知の構造のものが好適である。レーザビームの1部分はビームスプリツタ72から下方に直角に反射され、他の部分は鏡又はプリズム73で下方に反射され、略々等強度の2個の平行ビームが得られる。ビームスプリツタ72及び73の中心間隔は視準孔30-30の間隔と略々同一にする必要があり、これについては以下に詳述する。第1B図に示す構成では、下方にビームを発射する2個のレーザ74及び75を用いる。これらは、使用するレーザの機械部分を孔30-30の間隔に整合するように充分に接近配置し得る場合には平行に配置することができる。これが不可能又は不都合の場合には2個のレーザをできるだけ接近配置してそれぞれ孔30-30を射照するように配置する必要がある。」(3頁右上欄9?左下欄12行) (オ)「次にコンベヤについて説明する。コンベヤは図示の例のように構成し、横方向に離れたチエーン又はリンク15a及び15bを設け、これらを適当な駆動歯車装置16及びコンベヤの反対側のアイドラ装置上に引つかけてコンベヤを上下の走行部分に分離し、上側の走行部分を隔室11bに通す。各果実10は検査所に到達する前に予定の向きに向かせ、コンベヤ台17で支持する。このコンベヤ台17はその前縁の枢軸18によりコンベヤの関連するリンク15a及び15bに回動自在に枢着する。台17を、通常は下側レール部材20上に乗るようにした台17の後縁のブラケツト19によつてその枢軸18を中心とする回動を阻止して通常は水平果実支持位置に保持する。果実を検査所又は検査所Aに通し、ここで内部品質計算機により後に詳述するようにその内部損傷について評価し、その等級をつけた後、果実を選別所又は類別所Bに移送し、ここで果実をコンベヤの移動中に適当な等級選別位置で自動的に放出する。」(3頁左下欄13行?右下欄11行) (カ)「各等級位置には更に台17を傾けてその上の果実を移転せしめる装置を設ける。このために用い得る装置の一例を第4図に示し、本例では各等級位置に回動レール部分20aを設け、この部分をその右端で枢軸24に回動自在に支持する。レール部分20aを通常は主レール部分20と長さ方向に整列させるが、連結駆動ソレノイド25の附勢時は時針方向に回動させてその遊端が1点鎖線で示すように上昇した位置となるようにする。この上昇位置ではレール部分20aはブラケツト19で支持した横方向突出ローラ26の走行路にてカム部材として作用する。これがため台17はその枢軸18を中心に反時針方向に回動して果実を関連するコンベヤ21上に放出する。」(4頁左上欄4?17行) (キ)「第2図に示すように、感知器14-14を不透明視準板29の下側に位置させ、視準板29には各別の感知器上方に位置する互に離間した孔30-30を設けて、果実がコンベヤCにより移動路に沿つて運ばれてきたとき果実の心部分31の両側を通過した光線ビームが入射するようにする。第3図に示すように、視準板29により光ビーム13aをその下側に位置する感知器14に入射させる。各感知器には陽極33及び陰極34(第6A図)を有する光増倍管32を設け、この陰極34は感光表面で、入射光を散乱する乳白ガラスやその他の同様の材料に関連する散乱円板35で散乱された入射光を受光するように位置され、この感光表面には入射光が一様に入射する。図示のように、結晶35を光増倍管32の終端に保持蓋36または他の適当な手段で固着する。」(4頁右上欄7?左下欄2行) (ク)「第1図に概略を、第2及び第3図に詳細を示す不透明視準板29は互に離間した孔30-30を有し、これら孔は第1図について前述したように点光源からの光を用いるときは6?7ミリメートル程度とすることができる。単一又は1対のレーザを用いるときは、その本質的に平行なビーム又は極めて幅狭な光束特性の光線はその特性を驚く程維持するので、斯る場合には孔30-30は3?4ミリメートルにすることができる。板29は孔30-30の直径と少くとも同一厚さにする必要がある。如何なる場合にも、孔30は光増倍管32の感光表面より著しく小さい直径とする。光増倍管32の応答を改善し且つその寿命を長くするためには光増倍管32に入射する光線を大面積に散乱させるのが好適であり、これは孔30と光増倍管32の受光端との間に散乱円板35を介挿することにより容易に達成される。散乱円板35は例えば乳白フラツシガラス片又は片面又は両面がつや消し処理された透明ガラス片とすることができる。或は又、散乱円板35は片方又は両方の外表面がつや消し処理された所定の波長のみを通す着色ガラスのような光学フイルタとすることができ、又片方又は両方の外表面がつや消し処理された干渉フイルタとすることもできる。レーザを用いるときは、レーザで発生された光の波長に対し狭い通過帯域を有する干渉フイルタを用いるのが有利である。その理由は、この場合如何なる場合にもできるだけ除外する必要がある漂遊周囲光の影響が減少するためである。」(4頁左下欄3?右下欄10行) (ケ)「評価回路42において、前置増幅器48により、内部特性感知器14の出力を絶縁すると共に光増倍管32の出力電圧を増幅する。この前置増幅器には慣例の基本増幅素子A1を設け、これに帰還路を形成する抵抗R1及びR3を設けて利得を約10に設定すると共にコンデンサC1を設けて高周波では利得を1に減少させる。前置増幅器48の出力端子を抵抗R5を経て雑音フィルタ回路49の入力端子に接続し、果実損傷に関係ない高周波数雑音信号を除去する。この低域通過フィルタ回路には慣例の基本増幅器素子A3を用いる。コンデンサC5及び抵抗R7を並列に接続して抵抗R5と共働する帰還路を構成する。抵抗R9及びコンデンサC3の作用により増幅器の利得を250Hz以上で12db/オクターブ減少させる。雑音フイルタ49の出力を対数増幅器回路50に供給し、この回路を用いて果実の光吸収特性を補償して、損傷による変化によつて小さい果実に対しても大きい果実に対しても同一出力が生ずるようにし、出力電圧が+10ボルトに向かつて上昇するようにする。この回路には平衡制御抵抗R11を有する慣例の基本増幅素子A5を用い、抵抗R11を調整して増幅器オフセツト出力電圧を除去する。抵抗R13を利得制御回路に接続し、これを正確な対数伝達特性に対し調整する。対数増幅器回路50の出力端子を高域通過フイルタ51と接続し、このフイルタ回路を用いてドリフト誤差、0.2インチ以上の果実の形状の凹凸及び果実の片側から反対側までの肉厚の差により生ずる低周波数信号を除去する。この回路には慣例の基本増幅器素子A7を用い、且つコンデンサC9及び抵抗R17によりコンデンサC7、コンデンサC11及び抵抗R15と共働する帰還路を構成して増幅器の利得を75Hz以下で12db/オクターブ程度減少させる。」(5頁右下欄10行から6頁右上欄4行) (コ)「評価回路42及び43の両高域通過フイルタ回路51-51からの出力を共通の差動増幅器回路52に供給し、この回路で評価回路42及び43からのろ波され補償された2つの出力信号の差をとる。この出力は果実の心の片側の評価と反対側の評価との間の差に相当する。良い果実は殆んど差がなく、出力は比較的小さい。不良果実は多数の大きなパルスより成る出力を発生する。差動増幅回路52には夫々抵抗R19及びR20を経て各別の入力信号を受信する基本増幅器素子A9を用いる。抵抗R21及びR22を用いて差動利得を約7に設定する。コンデンサC13及びC14によりAC帰還をかけて500Hz以上の周波数で利得を減少させる。」(6頁右上欄5?17行) (サ)「レーザビームを約633ナノメートルの波長とする。」(10頁左上欄12?13行) (シ)「光線を約633ナノメートルの波長とする。」(10頁左上欄16?17行) (ス)Fig1 (セ)Fig1B (ソ)Fig2 (タ)Fig3 (チ)Fig4 イ 甲第2号証に記載の発明 (ア)上記ア(ア)及び(イ)の記載によれば、甲第2号証に記載の発明は、十分高感度の感光検知器を果実の透過側に用いることにより、光学ビームが尚充分な指向特性を保持し、1対の視準孔を用いて光学ビームで走査された果実の両側部分のビーム透過率特性間に有効な差を得ることができる事実に基づいて、物体の内部特性について評価して、評価特性に基づいて群別する方法及び装置に関するものであると認められる。 (イ)上記ア(ウ)及び第1図によれば、「コンベヤCにより個々の果実10を連続的に順次に検査所Aを経て選別所Bに移送」されることが、「検査所A」は外匣を具え、上部隔室11aに光源12を収納し、光ビーム13が下部トンネル状隔室11b内に照射するように配置し、下部隔室には果実10をコンベヤCにより光ビームをさえぎる通路内に導入し、内部性質感知器14により果実10を透過した光ビームを検出するように構成されていることが読み取れる。 (ウ)上記ア(エ)及び第1B図によれば、「光源12」が下方にビームを発射する2個々のレーザ74及び75により構成されるものであり、同(キ)によれば、各別の感知器上方に位置する互いに離間した不透明視準板29の孔30-30を通過する果実の心部分31の両側を透過した光線ビームを感知器14-14に入射させるものであって、感知器には光増倍管32が設けられており、「感知器14-14」は、それぞれ、レーザ74から、果実の心部分31の一方の側を透過した光線ビームが入射される感知器と、レーザ75から、果実の心部分31の他方の側を透過した光線ビームが入射される感知器からなるものであることが、同(ク)には、孔30と光増倍管32の受光端の間に、散乱円板35が介挿され、この散乱円板は、所定の波長のみを通す着色ガラスのような光学フィルタ、干渉フィルタとすることができること、レーザを用いるときには、レーザで発生された光の波長に対し狭い通過帯域を有する干渉フィルタを用いることにより、漂遊周囲光の影響を減少させることができるものであることが、それぞれ記載されているものと認められる。 (エ)上記ア(オ)によれば、コンベヤは、横方向に離されたチェーン又はリンク15a及び15bと、前縁の枢軸18によりこのリンク15a、15bに回動自在に枢着されたコンベヤ台17からなり、コンベヤ台17の後縁のブラケツト19が下側レール部材20上に乗ることにより回動を阻止して水平果実支持位置に保持されるようにされていることが記載されているものと認められ、第1図によると、コンベヤ台17は、その中心に、少なくとも円形状の穴を具え、その穴に果実が載置された状態で水平果実支持位置にコンベヤ台17が保持されて検査所Aで検査が行われるものであることが見て取れるし、第4図によれば、コンベヤ台17の円形状の穴に果実10の一部分が嵌合していること、また、果実10の嵌合部分の寸法が、ほぼ「コンベヤ台17」の厚みに相当するものであることが見て取れる。また、上記(イ)で認定したように、第1図の検査所Aでは、コンベヤ台17に載置された果実10を透過した光ビームが内部性質感知器14により検出するよう構成されていることからすると、コンベヤ台17は、光ビームが透過するように構成されていることは明らかである。 そして、第1図及び第4図の記載並びに甲第2号証においては、コンベヤ台17を光ビームが透過するための構成について特段の説明がないことから、コンベヤ台17を光ビームが透過するための構成は、特段説明するまでもないありふれた構成であるのであって、上記記載に接した当業者であれば、コンベヤ台17の穴は、コンベヤの下面に通じており、果実10が下面に露出するようにされていると理解することができるものといえる。 以上のことからすれば、コンベヤ台17の「穴」は、貫通穴であると解するのが相当である。 (オ)上記アの(ケ)及び(コ)によれば、「評価回路42(43)」は、前置増幅器48、雑音フィルタ回路49、対数増幅器回路50を備え、果実損傷に関係のない高周波雑音信号、ドリフト誤差、0.2インチ以上の果実の形状の凹凸及び果実の片側から反対側までの肉厚の差により生ずる低周波数信号を除去し、果実の心の片側の評価信号を生成し、評価回路42及び43の両高域通過フイルタ回路51-51からの出力を共通の差動増幅器回路52に供給し、この回路で評価回路42及び43からのろ波され補償された2つの出力信号の差をとることにより果実損傷に関する評価信号とすることが記載されている。 (カ)上記(ア)ないし(オ)において認定したことを前提として、上記アにおいて摘記した記載事実及び図面の記載を総合すると、 甲第2号証には、「横方向に離れたリンク15a及び15bと、リンク15a及び15bにその前縁が枢軸されるとともに、後縁のブラケット19を下側レール部材20上にのるようにして水平果実支持位置に保持され果実10が載置される貫通穴を備えたコンベヤ台17により搬送される果実10に上方から1対のレーザ74及び75により果実10の心の両側部分を透過する光ビームを照射し、不透明視準板29の各別の感知器上方に位置する互いに離間した孔30-30を通過する果実の心部分31の両側を通過した光線ビームを、感知器14-14の光増倍管32に入射させるようにし、それぞれの光増倍管32からの信号を評価回路42(43)により果実損傷に関係のない信号を除去し、両評価回路42の差信号を果実損傷に関する評価信号とする差動増幅器回路52を備えるとともに、不透明視準板の孔30と光増倍管32の受光端の間にレーザで発生された光の波長に対し狭い通過帯域を有する干渉フィルタを用いて漂遊周囲光の影響を減少させるようにした果実の内部損傷特性評価装置」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 (2)甲第3号証(米国特許第3773172号明細書) ア 甲第3号証に記載された事項(下記摘記事項は、請求人又は被請求人がした翻訳による。なお、翻訳内容については、当事者間で争いはない。) (ア)「より具体的には、自動仕分け装置は、キャリアまたは入力コンベヤ手段上のアレイ状に離間して取り付けられ、ハーベスタからの果実または他の農産物が供給される供給部を通過するカップを有するので、個々のカップは1つの果実を搭載して保持する。果実を搭載したカップは、光源が各カップ内の開口部を通って果実を照明する光学読み取りステーションを特定のパターン通過で移動する。次いで、こうしてカップに入射した光は、果実により拡散され、果実に対してある角度で配置された光ファイバによって捕捉される散乱光となる。光ファイバ手段に結合された光学的手段は、選択された複数の波長における果実の透過率に比例した電気信号を発生する。電子的手段は、これらの透過率に関連するシグナルにより活性化し、例えば特定の果実、例えばブルーベリーが、未熟、完熟、熟しすぎといった、果実の内部状態を示す選別信号を生成する。」(第3欄第1行?第20行) (イ)「10?12図に示すように、カップ42の各々は、円筒状または丸みを帯びた形のものであり、開いた前面又は端部44と、対抗する高くて丸い背壁又は端部46であって、頂端が開いた前面から中央が丸い背壁46の頂端部へ傾いた縁である。このように、各カップは区分される対象物の幾何学的形状に近似する断面形状または輪郭で開いた形状である。示されるように、例えば、カップは果実を格納するための円筒形状である。カップの大きさは、いつでもカップ構造の制限する広さが一つの果実で占有されるように選ばれ、それによって搭載部で果実を補足する際に果実を単一とすることができるようにする。カップの底43は垂直の開口部48を有し、それは特定の場合では構造的にカップを搬送ベルト30に取り付ける底部の孔形状からなる。」(第5欄第11行?第28行) (ウ)「カップ42は、一度に一つだけの果実が読み取り部60の下を通過するようにするために千鳥配列内のベルト上に配置されている。カップ42は、それらが傾斜を進行するように果実をすくうように設計されている。」(第6欄第25行?第29行) (エ)「図1、4に示すように、読み取り部は、複数の光源62からなり、それは、ベルト30の行配列したカップの横の間隔と同じ横間隔で行配列の間隔であるベルト30の下に縦横に配置されている。光源の数は、行のカップの数に依存する。本例では、各行に3つのカップがあるため、トンネル要素56に3つの通路58があり、3つの光源があるようにしている。各行に3つのカップがある。しかし、光源は搬送ベルト30の横方向に整列している。ベルトの外側面の上やカップの上には、横方向に3整列され、光検出プローブ64を離間させる。カップと光源と同数のプローブがあるように、プローブは、各光源と行の各カップに設けられている。本実施形態は、3チャンネルのソータと呼ぶことができるものである。光源は、内部領域を照明するために予備集束し、カップの各々の底部の開口48を通した光線によりカップの内部と上部を照らすランプである。本発明において、ソータは、ブルーベリー選別に使用するために開発され、それに関して、タングステンランプは光源として十分に機能することが見いだされた。」(第6欄第38行?第62行) (オ)「個々にフルーツを積み込んだカップは、読み取り部60を通過する。そこでは、ランプ62のうちの一つからの光は、各カップの底に設けられた光の開口48を介してカップに入る。果実は、ほとんどの生物学的材料のように優れた拡散物であるため、光は、開口48を通過してカップに入り、カップにより捕えられて運ばれる果実に入って、図4の拡散光線パターン66で示されるように全方向に散乱する。」(第7欄第15行?第22行) (カ)「図4 , 14A、14Bと16を参照すると、果実52を通過した散乱光は光ファイバ束64によって取り入れられる。本実施形態では、各束64は二股であり、2つのブランチ70、72を有する。ブランチ70は、次に光電子増倍管76に接続されているフィルタ74に接続され、ブランチ72は、次に光電子増倍管80に接続されているフィルタ78に接続されている。」(第9欄第24行?第31行) (キ)「当然のことながら、増幅器82および84からの出力電圧は、フィルタ74および78によって決定される任意の選択された波長での果実の試料の光学密度に比例する。光学密度差、△ODは、差動増幅器86にログアンプ82、84からの出力を供給することによって計算され、増幅器86の出力電圧は、740nmおよび800nmでの果実の光学密度の差に比例し、前述の感知された条件のとおりに果実の成熟の又は成熟度に比例する。」(第9欄第68行?第10欄第6行) (ク)FIG.1 (ケ)FIG.2 (コ)FIG.4 (サ)FIG.10 (シ)FIG.11 (ス)FIG.16 イ 甲3号証記載の発明 (ア)上記ア(イ)及びFIG.10ないし12によれば、「カップ42」は、円筒状又は丸みを帯びた形のものであること、カップの底43は垂直の開口48を有しているものであること、同(エ)、(オ)及びFIG.4によれば、カップの底43の開口48は、貫通孔であって下面から照射される光源62からの光が通過するものであり、この開口48を通過してカップに入る光が果実内に入るように照射されるものであることが、それぞれ読み取れる。 (イ)上記ア(ウ)及びFIG.1には、「カップ42」は、搬送方向に対して直角方向に並列に3列で、それぞれ千鳥配列で「搬送ベルト30」に配置されており、果実を載置して「ベルト30」により搬送されることにより、読み取り部60の下を一度に一つだけの果実が通過するようにされていることが、同(エ)、FIG.1及び4には、読み取り部60が3つの光源62からなり、光源は搬送ベルト30の搬送方向に対して直角方向に整列しており、ベルトの外側面の上やカップの上に光検出プローブ64が離間して配置されており、プローブ64は、各光源に対応して3個設けられていることが、同(オ)には、果実52を積んだカップが読み取り部60を通過し、そこでは、ランプ62のうちの一つからの光が、各カップの底に設けられた光の開口48を通してカップに入り、果実52を通過して拡散光となり全方向に散乱すること、同(カ)によれば、果実52を通過した散乱光が光ファイバ束64によって検出されるものであること、同(カ)及び(キ)によれば、光ファイバ束64は、それぞれ2つのブランチ70及び72を有し、ブランチ70は、フィルタ74を介して光電子増倍管76に接続され、ブランチ72はフィルタ79を介して光電子増倍管80に接続され、光電子増倍管76及び80にそれぞれ接続された増幅器82及び88からの出力の差信号により光学密度差を検出して果実の成熟度を判定するようにしていることが読み取れる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)を前提に上記ア(ア)ないし(キ)の記載及び同(ク)ないし(ス)の図面の記載を総合すると、甲第3号証には、「それぞれのカップ42は円筒状又は丸みを帯びた形に形成されており、その底43には垂直の開口48を有しその搭載部に果実を一つ捕捉するように構成されている複数のカップ42と、搬送ベルト30の搬送方向に対して直角方向に整列した3つの光源62であって、搬送ベルトの下側に配置され下方からそれぞれの上方に対応する位置を通過するカップ42の開口を通して果実53を照射するように構成された光源を備えるとともに、それぞれの光源に対応して、搬送ベルトの外側面のカップの上方に離間して、3つの光ファイバ束64が配置されており、各光ファイバ束64は、それぞれ2つのブランチ70,72を有しており、ブランチ70はフィルタ74を介して光増倍管76に、ブランチ72はフィルタ78を介して光増倍管80に接続されているものであり、2つの光増倍管76及び80からの信号を増幅する増幅器82及び84の差信号である光学密度差を用いて果実の成熟度を検査する読み取り部60とを備えた果実検査装置であって、カップ42は搬送ベルト30により搬送されて読み取り部60の下を一度に一つだけの果実が通過されるように搬送ベルト30の搬送方向と直角の方向に並列に3列でそれぞれ千鳥配列で複数個配置されて固定されており、読み取り部60の下を果実が載置されたカップ42が通過する際、各光源からの光線は、それぞれ対応するカップ42の開口48を通してカップ42の搭載部に捕捉された果実を透過して散乱し光ファイバ束64によって取り入れられるように構成されている果実検査装置」の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。 (3)甲第4号証(特開平3-160344号公報) ア 甲第4号証に記載された事項 (ア)「上記測定ヘッド部11は、第2図に示すように青果物2との接触部分にゴム製外乱光遮へい物20が設けられ、内部には青果物2による反射光を入光し内面が金メッキされたフ-ド17、同フードl7の青果物2との接触する一端に配設されたゴム製光遮へい物16、上記フード17の他端に配設された集光レンズ15、同集光レンズl5を介して青果物2による反射光を受光し第3図に示すように配設された光ファイバ3のファイバ端18、及び上記フード17の外側に第4図に示すように配設された投光装置1aが設けられている。」(2頁右下欄4?14行) (イ)「上記演算部24においては、次式により波長帯毎に吸収率αが求められる 吸収率α=lnA/B 上記吸収率αはgCx (こヽでg;吸光係数、Cx;吸収物質の濃度)に比例するため、上記波長帯毎の吸収率αより青果物の成分とその濃度Cxが求められる。次に本実施例の装置を用いて行った試験の結果について説明する。本実施例の装置を用いて、600nmより2500nmまでの波長につき桃の糖度と吸光度の関係を求めた結果、1784nmの場合には、吸光度より計算した糖度はBrix計で測定した糖変に対する誤差が0.50%糖度で重相関係数は0.95であった。また、その他の糖度と相関の高い波長を試験した結果、1148nm、900nm及び845nmについても同様の結果が得られたため、これらの波長の光の吸収率を用いることによって高い精度で糖度の測定ができることが判った。」(3頁右上欄3?20行) (ウ)第2図 (エ)第4図 (オ)上記(ア)ないし(エ)によれば、甲第4号証には、複数の投光装置1aより下方から青果物2に光を照射し、青果物2からの反射光を、青果物の下方に接触する一端にゴム製光遮へい物16を配設したフード17の他端に配設された集光レンズを介して受光して青果物における吸光度を測定することにより青果物の糖度などを測定するようにした検査装置が記載されている。 (4)甲第5号証(特開平4-083148号公報) ア 甲第5号証に記載された事項 (ア)「第1図において、・・・3は内筒2の中央に横向きに配置する光源としてのランプであり、・・・ランプ3の下方には反射ミラー5を配置し、ランプ3の上方にはレンズ固定板6により固定するレンズ7を配置する。」(2頁右上欄19行?左下欄12行) (イ)「レンズ7の光軸上であって外筒1の上部には、青果物aをのせる青果物載置台8を設ける。この青果物載置台8は、中央に開口部を有し、その開口部の周囲にリング状の弾性体9を取り付け、その弾性体9の上に青果物aをのせるようにする。」(2頁左下欄13?17行) (ウ)「青果物載置台8の上方であってレンズ7の光軸上に、青果物aの透過光を検出する透過光センサ10を配置する。」(2頁左下欄18?20行) (エ)第1図 (オ)上記(ア)ないし(エ)によれば、甲第5号証には、中央に開口部を有し、その開口部の周囲にリング状の弾性体9を取り付けてその弾性体9の上に青果物をのせて、開口部を通して下方から光が青果物に照射され、上方より果実を透過する透過光を検出するよう構成されている青果物の品質検定装置が記載されており、第1図には載置台の開口を通して光が青果物に照射されることが見て取れるものの、ここでのリング状の弾性体9が遮光機能を有するものであることは、甲第5号証には記載されていない。 (5)甲第6号証(実願昭51-102569号(実開昭53-20983号)のマイクロフィルム ア 甲第6号証に記載された事項 (ア)「本考案は、例えばミカン、リンゴ、ジヤガイモ等の熟度或いは含有水分%のような各種測定対象物の内部品質を、非破壊光透過技術によつて分析する光学的内部品質分析装置に関する。」(1頁18行?2頁1行) (イ)「第1、2図において、1は測定対象物(たとえばミカン)2を搬送するベルトコンベア、3は光を照射する光源を内装してある光源部、4は前記コンベア1に近接させて設けた測定光用検出器であつて、その詳細は後述する。5は測定用検出器4に連接した略直方体状又は円筒状のクツシヨン材(たとえばスポンジよりなる)であつて、第3図に示すようにその中央には前記検出器4に通じる通孔6が穿設してあり、さらに通孔6の内面側にはライトシール用のゴムパツド7が貼着してある。尚、ゴムパツド7は柔軟で変形しやすいゴムを用いるが、クツシヨン材5を構成する、たとえばスポンジよりはやや硬いものを選ぶ。次に、8は前記コンベヤ1にて搬送中の測定対象物2を前記クツシヨン材5の通孔6位置に押しつける手段であつて、例えば第1、2図に示すように・・・の回転体が用いられ、その外周部分9はスポンジで形成される。・・・光源から照射された光は、レンズ10、ハーフミラー11を経て、・・・一部は前記通孔6位置に押しつけられた状態にある測定対象物2に照射され、測定対象物2内部で散乱して透過してきた光が通孔6を経て測定光用検出器4へと送られる。」(3頁8行?4頁14行) (ウ)「測定光用検出器4は入射光の軸からずれた位置で前記通過光を検出するもので、・・・測定対象物2を透過した光を平行光線にするレンズ群15・・・と前記平行光線を測定波長の数・・・に分割する手段16と、この分割手段16の後方に配置され、夫々異なつた測定波長・・・を通過帯域とする狭帯域フイルタ17,18とから構成されている。・・・19,20は前記狭帯域フイルタ17,18を通過した光を受ける検出部・・・である。」(4頁14行?5頁11行) (エ)「(b)測定中、外乱光の侵入や電圧変動による光源の明暗変化も各測定波長毎に同1条件なので、相殺され測定精度が向上する。」(7頁14?16行) (オ)「本考案では、前記検出器に通じる通孔を有するクツシヨン材を検出器に連設し、押しつけ手段にて測定対象物をクツシヨン材の通孔位置に押しつけ、測定対象物とクツシヨン材と押しつけ手段とで挟持した状態で測定対象物の内部品質を分析するようにしたので、通孔は測定対象物により閉塞されて誤差要因となる外乱光の侵入は効果的に防止され、一層、精度の高い測定が行なえるという効果がある。」(8頁14行?9頁2行) (カ)上記(ア)ないし(オ)によれば、甲第6号証には、果実の透過光を測定して内部品質分析を行う光学的内部品質分析装置において、外周部分9がスポンジにより構成された回転対8により検出器に通じる通孔を有するクッション材に押しつけることにより測定対象物の表面により通孔を閉塞して外乱光の検出器への侵入を防止するようにする技術が記載されているものと認められる。 (6)甲第7号証(特開平3-137976号公報) ア 甲第7号証に記載された事項 (ア)「本発明の青果物の選別区分判定方法は、青果物を撮像手段を用いて撮像すると共に、内部品質検査装置により該青果物の熟度又は糖度を検出し、演算装置により、前記検出した結果を所定の基準値と比較して熟度又は糖度が所定の基準内にあるが否かを判定し、所定基準内にある青果物に対し、前記撮像した結果を予め設定した選別区分値と比較して選別区分を判定することを特徴とするものである。」(2頁左下欄18行?右下欄6行) (イ)「第1図は本発明を実施するための青果物選別装置の概略平面図。第2図は同じく一部破断した側面図であり、図を用いて選別装置全体の概要を説明する。 1は搬送手段であり、青果物100を一個ずつ載せるための多数の受皿10と、この受皿10を搬送するためのコンベア装置15とから構成されている。このコンベア装置15は、上流側から供給部151、計測部152、仕分け部153の各部が搬送路に沿って設けられている。尚、多数の受皿10夫々には後述の構成によりコード番号付けする如くなした固有情報を有している。 2は前記搬送手段1の計測部152に設けられた読取計測手段であり、受皿10の固有情報を読取る読取装置21と内部品質検査装置22と撮像手段23とから構成されている。」(3頁右上欄11行?左下欄6行) (ウ)「搬送手段1は、受皿10とコンベア装置15とからなるもので、実施例では受皿と10とコンベア装置15とは固定されずフリーな状態で搬送する如く構成している。」(3頁右下欄16?19行) (エ)「受皿10は平面視円形状に構成されており、上面の中央部には、青果物100を安定した状態で載せるため凹んだすりばち状の載せ部11が構成されている。この受皿10の形状及び載せ部11の形状は、実施例に限定するものではなく、方形及び多角形の平面形状であってもよく、載置する青果物100に応じて設定することが好ましい。 12は受皿10の下部に形成された周壁であり、この周壁12の内面を後述する排出作動装置5の係合部材512と係合する係合部121に形成している。」(4頁左上欄11?20行) (オ)「内部品質検査装置22は、青果物の中に含まれるクロロフィルの消失が成熟度と高い相関があることを応用したもので、クロロフィルの特定校領域における吸収帯を利用してこの吸収帯における反射光量を計測する如く構成する。即ち、青果物100に特定波長領域の光を照射したおきの反射光量に基づき内部品質を計数する如く構成する。」(4頁右下欄18行?5頁左上欄5行) (カ)「撮像手段23は、第2図、第7図に示す如く、搬送手段1の搬送路の上方所定位置にカメラ装置231と照明装置232とを組み合わせて光学的撮像手段を構成している。この撮像手段は、・・・青果物100の形状寸法や外観表面状態を計測する如く構成することができる。」(5頁左上欄最下行?右上欄7行) (キ)第2図 (ク)第7図 (ケ)上記(ア)ないし(ク)によれば、 a 甲第7号証には、受皿10が、コンベア装置15に固定されないものであることが明記されており、 b 甲第7号証には、外観検査用の照明装置232が記載されており、第7図によれば、照明装置232が複数の光源からなること、また、果実の搬送に邪魔にならない位置に配置されていることが見て取れるものの、搬送手段1の搬送路の上方所定位置にカメラ装置231と照明装置232とを組み合わせて配置されているものであり、また、第2図において示されている照明装置232の配置を合わせ見ると、照明装置232の配置がトレーの搬送路の横方向に外れて配置されるものであるかは明確でない。 (7)甲第8号証(特開昭63-42411号公報) ア 甲第8号証に記載の事項 (ア)「〔産業上の利用分野〕本発明は、搬送コンベアで搬送される物体の平面と左右両側面の形状寸法及び外観表面状態(色・傷害・汚れ・模様等)を計測検査し、選別仕分けする方法と装置に関するものである。」(2頁左上欄4?8行) (イ)「〔発明の目的〕本発明は上記の欠点を解消し、要望に沿うべく、搬送コンベア上に一列で前後に不定間隔で離隔搬送される物体の大きさを計測すると共に、表面状態は少なくとも球塊状物体の全表面のうち50%(大面のうち三面)の表面を1つのカメラで検査することができる方法と装置を提供するものである。」(2頁左下欄最下行?右下欄7行) (ウ)「照明用の小型ランプ5は、第1図から第5図に示す如く、物体2が搬送コンベア1の走査線31上にあるとき、該物体2の中心から走査線31を挟む前後の各面に向けた放射状の延長線上に、夫々中心方向に向けて配置し光のトンネルを形成する。 該小型ランプ5が球塊状物体2の各走査面を略直角に近い方向から、且つ各面に対して略等しい距離から光を照射する如く配置することによって球塊状物体2の各走査面を均一な照度で照明する。該小型ランプ5は、第4図、第5図に鎖線で示す如く、ボックス51内に納めるのが好ましい。該ボックス51は、物体2に面する側と走査線31に面する側は光を透過するガラス材を用い、他の光を照射しない面は光を透過しない材料で構成する。」(3頁左下欄4行?19行) (エ) 第1図 (オ)第3図 (カ)第5図 (キ)上記(ア)ないし(カ)によれば、甲第8号証には、外観検査用の照明装置が記載されており、第1図及び第5図によれば、照明装置が複数の小型ランプ5からなること、また、果実の搬送に邪魔にならない位置に配置されているものであることは見て取れるものの、小型ランプ5は、カメラ3の走査線31上の物体2の中心から走査線31を挟む戦後の各面に向けた放射状の延長線上に、それぞれの中心方向に向けて配置して光のトンネルを形成するものであるから、搬送コンベアの搬送路の横方向に外れて配置されるものではない。 (8)甲第9号証(特開昭59-87082号公報) ア 甲第9号証に記載の事項 (ア)「第6図は、本実施例の光学系全体を示す。図示した201は、1キロワットのハロゲンランプを内蔵する投光器である。202は、投光器200から照射された光線のうち赤外光のみを通過させると同時に、残りの可視光を被検体204、すなわち「みかん」に向けて反射し、さらにこの被検体204からの反射光をカメラ206に導入するスリット付きのミラーである。」(5頁左欄1?8行) (イ)「搬送されてきた被検体204がカメラ206の直前に到達する時刻を検出するために、一対の照光器208P・・・及び受光器208Rを・・・搬送ベルト301の両側に対向して配置する。なお、カメラ206としては、後に詳述するとおり、2種のCCDラインセンサを備えるのが好適である。本実施例では、被検体204の左右両側について品位(大きさ、きず、色)を測定しているので、更に、別個の投光器212、・・・カメラ218、・・・一対の照光器218P・・・および受光器218R・・・を設ける。」(5頁左欄10行?右欄4行) (ウ)第6図 (エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば、甲第9号証には、搬送ベルトの搬送路から横方向に外れた位置に、被検体204からの反射光を受光するための光源であるハロゲンランプ201及び212を配置すること、また、被検体の所定位置への到達軸を検出するための照光器受光器の対からなる光検出器の光源208P、218Pを搬送ベルトの搬送路から横方向に外れた位置に配置するものが記載されているものといえるが、これらの光源201、212はいずれも被検体の横方向の反射光像を検出するためのものであり、照光器208P、218Pはいずれも被検体の搬送路上の位置を検出するためのものである。 (9)甲第10号証(特開平4-104041号公報) ア 甲第10号証に記載の事項 (ア)「第1図は、本発明の第1の実施例に係る青果物の品質測定装置(みかんの糖度測定装置)の概略構成を示す。この装置は、上記の(1)式を用いたものである。 同図において、1はみかんを載せて移動するコンベア、2はコンベア1に載せられ矢印のように移動するみかんである。コンベア1の後端部には、糖度の高いみかんを運ぶコンベア1Aと、糖度の低いみかんを運ぶコンベア1Bとが、備えられている。2Aは糖度の高いみかん、2Bは糖度の低いみかんを示す。3は白色光源、4は500nm乃至700nmの波長域の光のみを通すフィルタ(バンドパスフィルタ)、5は充電変換素子である受光器、6は500nm乃至11000nの波長域の光を通すフィルタ、7は受光器を示す。 また、8は受光器5からの出力を増幅する増幅器、9は受光器7からの出力を増幅する増幅器、10は除算器、11は計算機(マイクロコンピュータ)、12は計算機11からの指令に基づき糖度の高いみかんと低いみかんとを選別する選別装置、13は選別装置12により駆動される選別駆動機構を示す。」(5頁左上欄16行?右上欄17行) (イ)「第3図は、本発明の第2の実施例に係るみかんの糖度測定装置の概略構成を示す。この装置は、上記の(2)式を用いたものである。 同図において、21-1,21-2,21-3,・・・,21-nはn個の光源制御装置、22-1,22-2,22-3,・・・,22-nはn個の光源を示す。n個の光源22-1,22-2,22-3,・・・,22-nは、それぞれ500nm乃至700nmの範囲のいずれかの波長(それぞれλ1,λ2,・・・,λnとする)の光を発生する光源である。例えば、500nm乃至700nmの範囲を適当な間隔で等分して各波長を設定すればよい。 21-refは光源制御装置21-1,・・・,21-nと同様の光源制御装置、22-refは所定の一波長(λref=740nmとする)の光を発生する光源である。光源22-1,22-2,22-3,・・・,22-nおよび22-rerの点灯や消灯は、それぞれ光源制御装置21-1,21-2,21-3,・・・,21-nおよび2l-refにより制御される。 23は測定すべきみかん、24はみかん23を透過してくる光を受光して電気信号に変換する受光器、25は受光器24の出力信号を増幅する増幅器、27は所定の間隔のクロックパルス信号を発生するクロック発生回路である。26はクロック発生回路27からのクロックパルス信号に基いて各波長λ1,λ2,・・・,λn,λrefの透過光の強度を得る同期化回路、28は同期化回路26の出力である各波長の透過光の強度を正規化する基準化回路、29は基準化回路28の出力である各波長の透過光の強度を正規化した値を加算する加算器、30は計算機である。」(6頁左上欄5行?右上欄16行) (ウ)「なお、この第2の実施例において、みかんを載せるコンベア、および計算機の指令に基づいてみかんを選別する機構などは、第1の実施例と同様であるので図示しない。」(6頁右上欄17?20行) (エ)第1図 (オ)第3図 (カ)上記(ア)ないし(オ)によれば、甲第10号証には、複数の光源22-1・・22-nからなることが記載されており、上記(ウ)の記載、第1図及び第3図をあわせみれば、光源が搬送路から横方向に外れた位置に配置されているものと解されるものの、これらの複数の光源は、みかん23の横方向からそれぞれ光を照射し、横方向において、透過光を検出するものである。 (10)甲第11号証(特開平4-322778号公報) ア 甲第11号証に記載の事項 (ア)「【0016】実施例における各部について詳述すると、前記受皿1は第3図の斜視図に示す如く、平面視で円形状をなしており、その上面には逆円錐型の載部11を形成している。12は抜穴であり青果物Fが通過しない大きさで載部11の中央部から底面に貫通し、載部11に載せられた青果物Fの下部における例えば熟度をその抜穴12を介して検出可能になしている。13はバーコードマークであり各バーを縦にして並設している。夫々の受皿1のバーコードマーク13には、夫々背番号付けする如く固有情報を付与している。この受皿1は例えば樹脂成型等で一体型に成形したものを用いることができる。尚、この受皿1は、熟度等を青果物Fの下部から計測しない場合においては抜穴12のない受皿1を用いることができる。」 (イ)「【0023】5は品質検査装置であり、前記整列装置4の下流側で第7図によく示す如く小巾スラット22の下方に設けられ、小巾スラット22の搬送面に形成された検出用穴25と受皿1の抜穴12とを介して青果物Fの下部における熟度を検査する如く構成する。この品質検査装置5は青果物F中にふくまれるクロロフィルの消失が成熟度と高い相関があることを応用したもので、クロロフィルの特定波長領域における吸収帯を利用してこの吸収帯における反射光量を計測しこの値に基づき内部の品質を検査する如く構成する。即ち、青果物Fの下部に特定波長領域の光を照射してその反射光量を計測し、この値を所定の演算式によりクロロフィルの消失度合を数値化し熟度判定要素とする。尚、実施例では青果物Fの下部における熟度を検出する如く構成したが糖度等の内部品質であってもよく更に、カメラ等によって青果物Fの下部のキズや形状等の外観品質を検査する如く構成してもよい。 【0024】又、この内部品質の検査は、青果物の胴廻りに特定波長領域の光を照射してその反射光量を計測する方式にすることもできる。」 (ウ)第3図 (エ)第5図 (オ)第7図 (カ)上記(ア)ないし(オ)によれば、甲第11号証には、フリートレー式の受皿1を用い、青果物Fが通過しない大きさで細部11の中央部から底面に貫通し、細部11に載せられた青果物Fの下部における熟度をその抜穴12を解して品質検査をするものであり、計測過程では、第5図及び第7図に示されているようにコンベア上で位置決めされる構成が開示されている。 2 無効理由1-1(本件特許発明1の甲第2号証に基づく新規性の欠如について) 審判請求人の、本件特許発明1は、甲2号証(特開昭50-78378号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当するから無効とすべきものであるとの主張について検討する。 (1)本件特許発明1について 本件特許発明は、本件特許明細書(甲第1号証)の段落【0001】において、「【産業上の利用分野】本発明は、青果物の検査,測定用を行なうのに用いられる光透過検出装置に関し、詳しくは、青果物の内部品質を非破壊的に検査,測定するのに有益な青果物透過光を好適に得ることができる光透過検出装置に関する。」と記載されているように、「青果物の内部品質を非破壊的に検査、測定する」ために、「有益な」「透過光」を得ることを目的とするものであるところ、そのような発明の技術的意義を理解するためには、「分析対象」である青果物にどのような光を照射するものであるのかや、分析に利用される分析対象からの受光手段により受光される光が具体的にどのようなものであるのかを把握することが必要不可欠である。 しかしながら、本件特許発明1の構成要件Bとして、単に「青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し、照射された青果物から出る透過光を受光するように上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段」と、構成要件Dとして「複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段」とのみ特定されているだけであるから、当該記載をみても、本件特許発明1において、「青果物」と青果物に対して光を照射する「複数の光源」の関係が不明であり、分析対象である青果物にどのような光を照射するものとなるのかや、受光手段が受光する「照射された青果物から出る透過光」が具体的にどのようなものであるのかは不明であって、把握することができないから、本件特許発明1の要旨をその技術的意義を踏まえて把握することは困難である。 そこで、本件特許発明1と甲2発明との対比をするために、本件特許発明1の構成要件B及びDにつき、その意味内容を、発明の詳細な説明を参酌して、その技術的意義を踏まえた解釈をするため、以下検討することとする。 ア 本件特許明細書(甲第1号証)の段落【0008】ないし【0011】には、本件特許発明1の解決しようとする課題について「【0008】・・・透過光方式によって青果物の果の内部品質を実用的に意味のある程度まで検査,測定できるようにするには、更に解決すべきいくつかの問題がある。【0009】その一つは、透過光の減衰が多くの青果物において極めて大きいという問題である。・・・光源から青果物に照射される光の光量が比較的大きくても、分析しようとする透過光の光量は極めて微弱になってしまい、測定精度が低下し、そのままでは測定結果の信頼性が実際上問題となるからである。【0010】このような透過光の高い減衰という問題に対する対策としては、例えば強力なランプを使用して光源光の光量をより大きくすることや、受光側の受光感度を増大させる方法が考えられるが、光源光量を大きくするとランプの発熱や電力消費が大きくなる問題があり、またランプも大型化してしまう。このため青果物の内部品質検査用の装置として実際に使用できる適当な照明ランプは提供されていない。また後者の受光感度を増大させる方法としては、受光素子の受光面積の拡大や、光電子増倍管,イメージインテンシファイア等を用いて受光した光強度を増倍することが考えられるが、受光面積の拡大は雑音成分の除去のための冷却装置が大型になるし、光学系のムラに由来する精度低下の問題を招き、更に上記光電子増倍管等は、原理的に受光した光に含まれる周波数に依存した情報は消失して光強度のみを比例的に増倍した光情報になってしまうため、増倍後の光情報では内部品質を測定するのに不適で、例えば分光分析ができず、したがって特定波長域の光の吸収程度を利用した糖度測定ができないという致命的な問題がある。・・・【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明者は、上記のような透過光方式で青果物の内部品質を検査・測定しようとする場合の問題を鋭意検討し、単に光源の光量を増大するのではなく、より効率的に透過光の光量を得ることができて、感度のよい光の照明,検出ができる透過光方式の方法を検討して本発明をなすに至ったのであり、本発明の目的の一つはかかる方法を実現できる光透過検出装置を提供するところにある。【0012】また本発明の他の目的は次ぎのことにある。すなわち、透過光に基づいて果の内部品質を精度よく測定,検査するには、上記透過光の減衰の問題とは別に、検出した透過光が果内部の状態に対応した情報を持っていることが求められる。しかし、照明ムラ等が原因して果内部の透過光光路が偏っていれば、測定結果が実際の内部品質を正確に表わしていないことになる。【0013】かかる観点から本発明者は、上記した高い感度で透過光の検出を実現することと併せて、実際の果の内部状態とできるだけ一致(対応)した情報をもつ透過光の検出ができるように工夫した光透過検出装置を提供することを目的として本発明をなすに至ったのである。」と記載されている。 イ そして、本件特許明細書の段落【0017】及び【0018】には、本件特許発明1において、複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することに関して「【0017】そして、本発明の上記光透過検出装置は、複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得ることができる。・・・更に、青果物の形状や品目による透過光量の減衰率の違いなどに応じて、発光光源の数を変更するように設けることもできる。」、「【0018】また本発明装置では、複数光源により青果物をその周囲から照明するので、透過光の光路が果内部で偏ることが抑制され、ムラの少ない透過光として得ることができる。したがって得られた透過光を分析した測定結果は、実際の果の内部状態を十分反映したものとなる。なお、光源は少なくとも2以上あれば有効であるが、例えば桃やリンゴ等の球形果実をムラなく照明するには好ましくは3以上の光源を青果物の周囲に均等に配置することがよい。このように複数の発光光源を用いれば、単一の強力な光源ランプを用いるとその発熱を考慮してレンズ系等で光源を青果物からできるだけ離すことが必要になるのに対し、個々の光源ランプの発熱量を大幅に小さくできるので、青果物の周囲に直接ランプを対向配置することも可能であり、装置の構成を簡易と出来る。」と記載されている。 ウ 上記ア及びイの記載から、本件特許発明1は、高い感度で透過光の検出を実現することと併せて、実際の果の内部状態とできるだけ一致(対応)した情報をもつ透過光の検出ができるように工夫した光透過検出装置を提供することをその目的としているものであり、本件特許発明1において、複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することの技術的意義は、「複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得ること」及び「複数光源により青果物をその周囲から照明し、透過光の光路が果内部で偏ることが抑制され、ムラの少ない透過光により分析し実際の果の内部状態を十分反映したものとすることにあるものと認められる。 上記の理解によれば、本件特許発明1の「複数の光源」が「青果物に対し」その「周囲から光を照射する」ことは、「透過光の光路が果内部で偏ることが抑制され、ムラの少ない透過光」を得ることで、得られた透過光を分析した測定結果が実際の果の内部状態を十分反映できるようにすることにその技術的意義があるものと理解すべきである。 また、本件特許発明1の「受光手段」が受光する「照射された青果物から出る透過光」は、「単一発光光源による照明と同一の電力で」より多い光量であること及び透過光の光路が果内部で偏ることが抑制され、ムラの少ない透過光により分析し実際の果の内部状態を十分反映できるようにする」ことにその技術的意義があるものと理解すべきである。 エ そして、本件特許発明1の実施例の記載について本件特許明細書に「【0028】この測定ステージに次ぎの構成の光透過検出装置が設けられている。すなわち、4,4,4は搬送コンベアの上方に複数配置された発光光源としてのハロゲンランプであり、測定ステージに移入された青果物20に対して照明光を照射するようになっている。また、これらの複数のハロゲンランプの前面には夫々熱線カットフィルター5,5,5が配置されて計測に不必要な赤外線を不透過とし、青果物に熱ダメージを与えないようになっている。なお、各ハロゲンランプ4は、青果物に対する照明が出来るだけ平均的になるように、青果物の周囲に均等に配置することがよい。これらが照明光学系を構成している。」、「【0031】以上のような構成の光透過検出装置によれば、複数の発光光源を用いて青果物を照明することで、単一光源を用いる場合に比べて電力エネルギーが少なく、また市販のハロゲンランプを用いて照明光学系を簡易に構成できるという利点がある。また複数の発光光源を青果物の周囲に配置することができるので、青果物を透過する光の光路が偏ることがなく、内部状態を十分に反映した情報を有する透過光を検出することができるという利点も得られる。」と記載されていることからすれば、本件特許発明1の構成要件Bの「青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し」及び構成要件Dの「複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲から該青果物を照射する照射手段」は、「複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得ること」及び「透過光の光路が果内部で偏ることが抑制され、ムラの少ない透過光」を得るよう青果物の周囲に複数の光源が配置されているものを意味するものであると解することが相当であり、また、本件特許発明1の構成要件Bの「照射された青果物から出る透過光を受光するように上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段」は、少なくとも、そのように配置された「複数の光源」により照射され、青果物を透過した光を受光するものと解すべきである。 (2)本件特許発明1と甲2発明との対比 ア 本件特許発明1の構成要件Aについて (ア)上記1(1)イで認定したように、甲2発明の「コンベヤ台17」は、「横方向に離れたリンク15a及び15bと、リンク15a及び15bにその前縁が枢軸されるとともに、後縁のブラケット19を下側レール部材20上にのるようにして水平果実支持位置に保持され」、「果実10」を「貫通穴に載置して、搬送する」ものであるところ、ここでの「横方向に離れたリンク15a及び15b」及び「コンベヤ台17」は、本件特許発明1の「搬送コンベヤ」に相当するものであるといえる。そして、この「コンベヤ台17」は、その後縁のブラケット19をリンク15a及び15b及びコンベヤ台17の下側に水平に形成されている下側レール部材に水平果実支持位置に保持された状態で移送されるのであって、リンク15a及び15bにより形成されているコンベヤ及び下側レール部材に平行な面に沿って搬送されるものであるから、搬送コンベヤによって水平に搬送面上を移送されるものといえる。 以上のことから、甲2発明の「コンベヤ台17」は、本件特許発明1のA「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」に相当するものといえる。 (イ)被請求人は、本件特許発明1の「トレー」は、「搬送コンベヤとは独立して設けられ、青果物を載せて搬送コンベヤによって搬送面を移送されるものであるのに対して、甲2発明の「コンベヤ台17」は、搬送コンベヤの所定の位置に保持されたまま搬送コンベヤと一体として移動するものであって、搬送コンベヤに設けられた果菜載置部にすぎないので、甲2発明は、本件特許発明1の「トレー」に相当するものではない旨主張する。 そこで、本件特許発明1の「トレー」と搬送コンベヤとの関係について検討する。 a 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1には「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー・・・この搬送コンベア上のトレー」と規定されているところ、当該規定から「トレー」が、「搬送コンベア上に配置される」こと、及び「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送されるもの」であることが特定されているとは認められるものの、「トレー」が、搬送コンベアに対して固定されているものであるのか、固定されていないものであるのかについてまでが特定されているとはいえない。 この点、被請求人は、「トレー」が、搬送コンベアによって、搬送コンベア上を移送されるものであるから「搬送コンベア」とは独立した構成要素であることは自明であると主張するが、トレーが搬送コンベアに固定されているとしても、トレーが搬送コンベアにより移送されること、また、コンベア上に配置されることには変わりはないのであるから、当該規定により、本件特許発明1の「トレー」が搬送コンベアとは独立した構成であることが自明であるとはいえない。 被請求人は、「搬送コンベア上のトレー」という規定もトレーが搬送コンベアとは別の独立した移送物であることを前提とするものと主張するが、搬送コンベアにトレーが固定されているとしても、その固定された面が、搬送コンベアの表面である場合には、搬送コンベア上のトレーと表現されるのであるから、これをもって本件特許発明1の「トレー」が搬送コンベアとは別の独立した移送物を前提としているということはできない。 b 本件特許明細書の本件特許発明1の「トレー」に関しての記載、「【0020】更に、青果物の品質検査は、一般に搬送コンベアで移動させながらその途中に設けた測定ステージで青果物を一旦停止させあるいは移動を連続させながら検査を行なう方式を採用することが望まれるが、このような場合、青果物を個々トレーに載せて搬送させる方式が好ましく用いられる。すなわち、上記の各トレーを上下貫通孔を有する構成とし、このトレーの貫通孔を塞ぐように上記穴開き弾性シートを設ければ、弾性シートによる遮光手段が青果物の傷つき防止用シートを兼ねて好ましく構成できるからである。」 、「【0026】【実施例】実施例1 図1は本発明の実施例1の装置の構成概要を示した図であり、この図において1はトレーであり、矩形平板状のプラスチック製台座形状をなし、その中央部は青果物20が載置され易いように若干窪んだ形状に設けられていると共に、その窪みの底部には上下に貫通した穴3が設けられている。そしてこのトレー1は、図示しない搬送コンベアによって図の矢印に示す方向に水平に搬送面2の上を移送されるようになっている。 【0027】図1はこのトレーが、搬送コンベアの途中に設けられた内部品質の測定ステージに移入された状態を示しており、本例の装置ではこのステージでトレー1は測定のために一旦停止されるようになっている。」、「【0029】6は、搬送面2の下側から、上記測定ステージに停止されたトレー1の貫通穴3を通して青果物20の底部に対向するように配置された吸着パッドであり、本例では、図中に二点鎖線で示した下側の待機位置から、実線で示した上側の青果物20に接触する測定位置の間で、図示しない上下動機構により上動、下動されるように設けられている。この上下動機構の作動は、トレーの移送状態と同期して該トレーが測定ステージに停止された時に上動して測定を行なうように設けることがよい。」、「【0035】・・・実施例3 図3に示す本例は、青果物を移動させながら照射,受光を行う実施例1の変形例を示すものであり、この例では、実施例1と略同様のトレー61の上部全体に、軟質の穴開き弾性シート72を被せ、この弾性シート72の上に青果物20が載せられるようになっている。73は弾性シートの穴である。【0036】そしてこの青果物20の上にスポンジ等の軟質の押えローラー74を押し付けて、該青果物20を下方に押し下げ、これによって青果物と弾性シート72の密着性を高めて光の漏れを防止する。この押えローラー74の押し付けにより、青果物上部から透過光が出ることを抑制して弾性シート72の穴73から出る透過光の光量をできるだけ多くするように工夫されている。なおこの押えローラー74は、トレーの搬送と同期して回転するように設けることが好ましい。」、「【0043】更に、該トレーを青果物の搬送用に利用し、このトレーに弾性シートを設ければ、この弾性シートは遮光と青果物の傷つき防止とを兼ねたものとして利用できるという効果がある。」並びに図1及び図3を参酌しても、本件特許発明1の「トレー」が搬送コンベアとは独立して設けられるものであることは明記されておらず、本件特許発明1の「トレー」が搬送コンベヤとは独立して設けられるものに限られると解釈される根拠となる定義や記載もない。 c 被請求人は、本件特許明細書には、「青果物を個々トレーに載せて搬送コンベアによって水平に搬送面2の上を移送させる方式を採用していることが開示され、トレー1の構成については上下貫通孔を有する構成であることを明確にしているが、搬送コンベアの構成については全く述べられていないことは、トレー1と搬送コンベアとは別体でトレー1が独立した移動物であることが前提とされている」とも主張しているが、本件特許明細書の段落【0019】及び【0020】において記載されているような「トレー1」の構成が奏する効果は、トレーが搬送コンベアとは独立であるか、固定されているかに関係がなく生じるものであって、搬送コンベアの構成に直接関わるものではないことからすると、搬送コンベアの構成について全く述べられていないことが、トレー1と搬送コンベアとが別体であることの根拠となるものともいえない。 d 被請求人は、さらに、段落【0029】に「上下動機構の作動は、トレーの移送状態と同期して該トレーが測定ステージに停止された時に上動して測定を行なうように設ける」、段落【0036】に「押えローラー74は、トレーの搬送と同期して回転するように設ける」と記載されており、搬送コンベアではなく、トレーと同期すると記載されていることからも搬送コンベアとトレーは独立したものである旨主張している(第1回口頭審理調書参照)が、搬送コンベアにトレーが固定されている場合においても、上下動は、トレーの移送に同期して行われることに変わりはなく、また、押さえローラ74もトレーの搬送と同期して回転するようにすることが好ましいことにも変わりはないから、当該記載をもって、搬送コンベアとトレーが独立しているということもできない。 また、被請求人は、本件特許出願当時、搬送コンベアとは独立して設けたトレーに青果物を載せて搬送コンベアによって搬送する方式は、周知のものであったから、本件発明1の「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され・・・その上部に青果物を載せて移送するトレー」が、かかる方式で使用されるトレーであることは当業者にとって明らかであり、トレーが搬送コンベアとは独立して設けられていることは、当業者にとって自明である旨主張するが、本件特許発明1の構成要件Aの発明特定事項から、そのように解釈することができないことは、上記のとおりであり、本件特許出願当時、搬送コンベアと独立して設けたトレーが周知であるとしても、本件特許発明1の「トレー」が、搬送コンベアに固定されていないもののみに特定されるものとはいえないから、上記の判断に影響を与えるものではない。 (ウ)被請求人は、甲2発明の「コンベヤ台17」は、搬送面上を移送されるものではなく、本件特許発明1の「コンベヤ搬送面上」を移送するものとはいえないから、両者はこの点においても相違する旨主張している。 本件特許明細書においては、「搬送面」は、図1においては2の直線で示され、段落【0026】に「トレー1は、図示しない搬送コンベアによって図の矢印に示す方向に水平に搬送面2の上を移送されるようになっている」と記載されているところ、図1及び当該記載からは、搬送コンベアの具体的構成が理解できないのであるから、ここでの搬送面が搬送コンベアのどの部分の水平面を規定するものであるのかは不明であるというほかなく、また、搬送コンベアの具体的構成が不明である以上、その搬送面上をトレー1が移送されるとしても、それによりトレー1と搬送コンベアの相互関係が規定されるものでもない。 以上のことからすれば、ここでの搬送面は、搬送コンベヤの移送する方向に平行な面、すなわち、トレー1が所定の水平面上を移送されるものであることを特定する以上の技術的意義を認めることは妥当でない。 そして、甲2発明のコンベヤ台17は、水平面に沿って搬送されるものであって、搬送コンベヤの搬送面上を搬送されるものといえることは上記(ア)で認定したとおりであるから、被請求人の主張は採用することができない。 (エ)被請求人は、甲2発明の「コンベヤ台17」が貫通孔を有することは明記されていないことから、甲2発明の「コンベヤ台17」は、本件特許発明1の「中央部に貫通した穴を有し」ている「トレー」に相当しないと主張する。 しかしながら、甲2号証の記載から、コンベヤ台17の「穴」が貫通穴であると認めることが相当であることは、上記1(1)イ(エ)において認定したとおりから、被請求人の主張は採用することができない。 (オ)以上のとおりであるから、本件特許発明1において、本件特許発明1の「トレー」が、搬送コンベヤとは別の独立した構成要素であることが特定されているということはできないから、本件特許発明1の「トレー」は、搬送コンベヤに固定されて移送されるものも含まれるものであると解するのが相当であり、甲2発明の「コンベヤ台17」は、その中央部に貫通穴を有するものと解するのが相当であるから、甲2発明の「コンベヤ台」は、本件特許発明1の「トレー」に相当するものであると解することが相当である。 イ 本件特許発明1の構成要件Bについて (ア)本件特許発明1の構成要件Bの意味するところについては、上記(1)エにおいて検討したとおりである。 (イ)甲2発明の 「1対のレーザ74及び75」と本件特許発明1の構成要件Bの「青果物に対し」、「その周囲から光を照射」する光源とは、「青果物に対し光を照射する複数の光源」である点で共通する。 しかしながら、甲2発明の「複数の光源」である「レーザ74及び75」は、甲2発明においては「十分な指向特性を保持するビーム」を用いて果実の両側部分のビーム透過率特性間に有効な差を得ることを目的とし(上記1(1)ア(イ))、「評価回路42及び43からのろ波され補償された2つの出力信号の差」が「果実の心の片側の評価と反対側の評価との間の差」に相当し、「良い果実が殆んど差がなく、出力は比較的小さい」が「不良果実は多数の大きなパルスより成る出力を発生」するもの(上記1(1)ア(コ))であることからすれば、「レーザ74及び75」から照射される各ビームは、本件特許発明1の「複数の光源」のもつ、青果物周囲から照明し、透過光の光路が果内部で偏ることが抑制され、ムラの少ない透過光により分析し実際の果の内部状態を十分反映したものとする技術的意義を有するものではないことは明らかである。 (ウ)甲2発明の「感知器14-14」は、1(1)イ(ウ)で認定したように、それぞれ、レーザ74から、果実の心部分31の一方の側を通過した光線ビームが入射される感知器と、レーザ75から、果実の心部分31の他方の側を通した光線ビームが入射される感知器から構成されるものであるから、甲2発明のそれぞれの「感知器」が、本件特許発明1の構成要件Bの「受光手段」に対応するものであるとしても、当該甲2発明のそれぞれの「感知器」は、「複数の光源により青果物に照射された青果物から出る透過光を受光する受光手段」に相当するものではなく、また、「単一発光光源による照明と同一の電力で」より多い光量を受光し、透過光の光路が果内部で偏ることが抑制され、ムラの少ない透過光を受光する技術的意義を有するものでない。 (エ)以上のことからすれば、本件特許発明1の構成要件Bと甲2発明の「コンベヤ台17により搬送される果実10に上方から1対のレーザ74及び75により果実10の心の両側部分を透過する光ビームを照射し、不透明視準板29の各別の感知器上方に位置する互いに離間した孔30-30を通過する果実の心部分31の両側を通過した光線ビームを、感知器14-14の光増倍管32に入射させる」は、「トレーに載った青果物に複数の光源により光を照射し、照射された青果物から出る透過光を受光するように上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段」の点で共通するものであり、本件特許発明1の構成要件Bが「複数の光源により」「周囲から」「光を照射」し、「複数の光源」による光を受光する受光手段であるのに対して、甲2発明は「果実10に上方から1対のレーザ74及び75により果実10の心の両側部分を透過する光ビームを照射」するものであって、「果実の心部分31の両側を通過した光線ビームを、感知器14-14」で受光するものである点で相違するものである。 (オ)請求人は、甲2発明の「レーザ74とレーザ75の2つの光源」、「内部性質感知器14」は、それぞれ、本件特許発明1の「複数の光源」、「受光手段」に相当すると主張しているが、上記で検討したとおりであるから、請求人の主張は、採用できない。 ウ 本件特許発明1の構成要件Cについて (ア)甲2発明の「不透明視準板29」は、「各別の感知器上方に位置する互いに離間した不透明視準板29の孔30-30を通過する果実の心部分31の両側を通過した光線ビームを、感知器14-14の光増倍管32に入射させるようにし」ているのであるから、この「不透明視準板29」が、不要光が感知器14に入光することを遮へいする機能を有することは明らかである。 なお、本件特許発明1の構成要件Cは「この受光手段に上記透過光以外の外乱光が入光するのを阻止するように青果物と上記受光手段の対向位置の間に配置される遮光手段」と規定されているのみであり、本件特許明細書の記載においても「【0019】上記本発明装置において用いられる遮光手段は、特に限定されるものではないが、例えば中央部に穴を有しかつ青果物がこの穴を塞ぐように載せられる形状に形成された穴開き弾性シートを好ましく用いることができる。すなわち、この穴開き弾性シートに青果物を載せた状態で、穴の下側がその周囲を適当な遮光部材で囲った暗所となるようにすれば、青果物に対向させる受光手段をこの暗所に配置することが容易となるからである。【0020】更に、青果物の品質検査は、一般に搬送コンベアで移動させながらその途中に設けた測定ステージで青果物を一旦停止させあるいは移動を連続させながら検査を行なう方式を採用することが望まれるが、このような場合、青果物を個々トレーに載せて搬送させる方式が好ましく用いられる。すなわち、上記の各トレーを上下貫通孔を有する構成とし、このトレーの貫通孔を塞ぐように上記穴開き弾性シートを設ければ、弾性シートによる遮光手段が青果物の傷つき防止用シートを兼ねて好ましく構成できるからである。【0021】また、照明された青果物からの透過光を出来るだけ効率よく受光するための構成として、照明を行なう部位と受光を行なう部位を除いた青果物の表面からの透過光の漏洩を抑制することも好ましく、このために青果物の該部位表面を遮光部材で覆う構成を採用できる。具体的には、例えばスポンジ等の軟質部材や軟質弾性ロールを青果物表面に押し当てることで受光光学系で受光する光量を大きくさせることができる。軟質ロールを用いる場合には、青果物を移動させながら照明,受光を行なうこともできる。」と記載されているように、本件特許発明1の構成要件Cは、透過光をできるだけ効率良く受光するための構成として用いられるものである。 そして、甲2発明の「不透明視準板29」はこのような技術的意義を有することから「遮光手段」であって、「果実10」と「感知器14」の対向位置の間に配置されるものであるといえ、また、甲2発明の「孔30と光増倍管32の受光端の間にレーザで発生された光の波長に対し狭い通過帯域を有する干渉フィルタ」も、「果実10」と「感知器14」の光増倍管32の受光端の間に配置される「遮光手段」であるといえる。 したがって、甲2発明の「不透明視準板29」や「干渉フィルタ」は、本件特許発明1の「この受光手段に上記透過光以外の外乱光が入光するのを阻止するように青果物と上記受光手段の対向位置の間に配置される遮光手段」に相当するものである。 エ 本件特許発明1の構成要件Dについて a 本件特許発明1の構成要件D「複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段」の意味するところについては、上記(1)エで検討したとおり、「複数光源により青果物をその周囲から照明」することにより、「複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得ること」及び「透過光の光路が果内部で偏ることが抑制され」、「ムラの少ない透過光」を得ることにあるから、本件特許発明1の構成要件Dの「周囲」は、単に、複数の光源が「受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲」に偏らずに配置されるものであると解するのが相当である。 b 甲2発明の「レーザ74及び75」は、それぞれ、「果実10」の「上方から照射光を照射する光源」であって、「受光手段及び遮光手段」の間を除く青果物の周囲の一部分から光を照射するものであるから、本件特許発明1の構成要件Dの「投光手段」と甲2発明の「レーザ74及び75」は、「複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く箇所から該青果物を照射する手段」である点で共通するものの、本件特許発明1が「複数の発光光源からの照射光を青果物の周囲から」「該青果物を照射する」ものであるのに対して、甲2発明の「レーザ74及び75」は、「果実10」の「上方から照射光を照射する」ものである点で相違する。 オ 本件特許発明1の構成要件Eについて 甲2発明は、「レーザ74及び75」を「果実10」に照射し、その透過光を受光して果実の内部損傷特性を評価する装置であるから、本件特許発明1の「青果物の内部品質検査用の光透過検出装置」に相当するものといえる。 カ 以上アないしオで検討したことをまとめると、本件特許発明1と甲2発明とは、つぎの一致点1で一致し、相違点1において相違するものと認められる。 <一致点1> 「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレーと、この搬送コンベア上のトレーに載った青果物に複数の光源により光を照射し、照射された青果物から出る透過光を受光するように上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段、この受光手段に上記透過光以外の外乱光が入光するのを阻止するように青果物と上記受光手段の対向位置の間に配置される遮光手段と、複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く箇所から該青果物を照射する手段とを備えたことを特徴とする青果物の内部品質検査用の光透過検出装置。」である点 <相違点1-1> 本件特許発明1が「複数の発光光源からの照射光を青果物の周囲から」「該青果物を照射する」ものであって「青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し、照射された青果物から出る透過光を受光するように上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段」を備えるのに対して、甲2発明は、「果実10」の周囲の「上方」から、複数の光源「1対のレーザ74及び75」により「果実10の心の両側部分を透過する光ビームを照射し、不透明視準板29の各別の感知器上方に位置する互いに離間した孔30-30を通過する果実の心部分31の両側を通過した光線ビームを、感知器14-14の光増倍管32に入射させるようにし」ている点 (3)小活 上記のとおり、本件特許発明1と甲2発明との間には、相違点1-1が存在する。 したがって、本件特許発明1は、甲2号証に記載された発明に該当するものとはいえない。 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由1-1によっては、本件特許発明1に係る特許を無効とすることはできない。 3 無効理由1-2(本件特許発明3の甲第3号証に基づく新規性の欠如について) 審判請求人の、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当するから無効とすべきものであるとの主張について検討する。 (1)本件特許発明3について 本件特許発明は、本件特許明細書(甲第1号証)の段落【0001】において、「【産業上の利用分野】本発明は、青果物の検査,測定用を行なうのに用いられる光透過検出装置に関し、詳しくは、青果物の内部品質を非破壊的に検査,測定するのに有益な青果物透過光を好適に得ることができる光透過検出装置に関する。」と記載されているように、「青果物の内部品質を非破壊的に検査、測定する」ために、「有益な」「透過光」を得ることを目的とするものであるところ、そのような発明の技術的意義を理解するためには、「分析対象」である青果物にどのような光を照射するものであるのかや、分析に利用される分析対象からの受光手段により受光される光が具体的にどのようなものであるのかを把握することが必要不可欠である。 しかしながら、本件特許発明3では、構成要件H「外乱光が入らないように形成した上記トレーの上下に貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段」と、構成要件I「この青果物から出る透過光を受光するように上記トレー上の青果物に対向される受光手段をもつ受光光学系」と単に特定されているのみであるから、当該記載をみても、本件特許発明3において、「青果物」と青果物に対して光を照射する「複数の光源」の関係が不明であり、分析対象である青果物にどのような光を照射するものとなるのかや、受光手段が受光する「照射された青果物から出る透過光」が具体的にどのようなものであるのかは不明であって、把握することができないから、本件特許発明3の要旨をその技術的意義を踏まえて把握することは困難である。 そこで、本件特許発明3と甲3発明との対比をするために、本件特許発明3の構成要件H及びIにつき、その意味内容を、発明の詳細な説明を参酌して、その技術的意義を踏まえた解釈をするため、以下検討することとする。 ア 本件特許明細書(甲第1号証)の段落【0008】ないし【0011】には、本件特許発明の解決しようとする課題について「【0008】・・・透過光方式によって青果物の果の内部品質を実用的に意味のある程度まで検査,測定できるようにするには、更に解決すべきいくつかの問題がある。【0009】その一つは、透過光の減衰が多くの青果物において極めて大きいという問題である。・・・光源から青果物に照射される光の光量が比較的大きくても、分析しようとする透過光の光量は極めて微弱になってしまい、測定精度が低下し、そのままでは測定結果の信頼性が実際上問題となるからである。【0010】このような透過光の高い減衰という問題に対する対策としては、例えば強力なランプを使用して光源光の光量をより大きくすることや、受光側の受光感度を増大させる方法が考えられるが、光源光量を大きくするとランプの発熱や電力消費が大きくなる問題があり、またランプも大型化してしまう。このため青果物の内部品質検査用の装置として実際に使用できる適当な照明ランプは提供されていない。また後者の受光感度を増大させる方法としては、受光素子の受光面積の拡大や、光電子増倍管,イメージインテンシファイア等を用いて受光した光強度を増倍することが考えられるが、受光面積の拡大は雑音成分の除去のための冷却装置が大型になるし、光学系のムラに由来する精度低下の問題を招き、更に上記光電子増倍管等は、原理的に受光した光に含まれる周波数に依存した情報は消失して光強度のみを比例的に増倍した光情報になってしまうため、増倍後の光情報では内部品質を測定するのに不適で、例えば分光分析ができず、したがって特定波長域の光の吸収程度を利用した糖度測定ができないという致命的な問題がある。・・・【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明者は、上記のような透過光方式で青果物の内部品質を検査・測定しようとする場合の問題を鋭意検討し、単に光源の光量を増大するのではなく、より効率的に透過光の光量を得ることができて、感度のよい光の照明,検出ができる透過光方式の方法を検討して本発明をなすに至ったのであり、本発明の目的の一つはかかる方法を実現できる光透過検出装置を提供するところにある。」と記載されている。 イ そして、本件特許明細書の段落【0017】には、本件特許発明3において、複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することに関して「【0017】そして、本発明の上記光透過検出装置は、複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得ることができる。・・・更に、青果物の形状や品目による透過光量の減衰率の違いなどに応じて、発光光源の数を変更するように設けることもできる。」と記載されている。 ウ 上記ア及びイの記載から、本件特許発明3は、高い感度で透過光の検出を実現する光透過検出装置を提供することをその目的としているものであり、本件特許発明3において、構成要件Hの「外乱光が入らないように形成した上記トレーの上下に貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段」の技術的意義は、「複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得ること」にあるものと認められる。 また、本件特許発明3の構成要件Iの「上記トレー上の青果物に対向される受光手段をもつ受光光学系」が受光する「青果物から出る透過光」は「単一発光光源による照明と同一の電力で」より多い光量であることにその技術的意義があるものと理解すべきである。 エ そして、本件特許発明3の実施例の記載について本件特許明細書に「【0031】・・・実施例2 図2に示される本例は、上記実施例1とは異なって、トレーの貫通穴を通して下方から青果物に複数の発光光源からの照明光を照射し、分光カメラで青果物からの透過光を検出する構成の例を示している。【0032】すなわち、本例では、実施例1と略同様の台座形状のトレイ31の窪み部の表面に、易変形性の弾性パッド41を設け、この上に青果物が載るように設けられている。そして、ハロゲンランプ34,34,34からなる光源からの照射光を光ファイバー36,36,36で夫々トレイの貫通穴33部分に導いて、測定ステージの下側より該貫通穴33を通して青果物を照明するように構成されている。」と記載されていることからすれば、本件特許発明3の構成要件Hの「トレーの上下に貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段」は、「複数の発光光源からの光を同時に単一の青果物にトレーの上下に貫通した穴を通して照射する」ものと解すべきであり、また、本件特許発明3の構成要件Iの「この青果物から出る透過光を受光するように上記トレー上の青果物に対向される受光手段をもつ受光光学系」は、少なくとも、「複数の光源」により照射され青果物を透過した光を受光するものと解すべきである。 (2)本件特許発明3と甲3発明との対比 ア 本件特許発明3の構成要件Gについて (ア)甲3発明の「カップ42」は、その「底43に垂直の開口48を有しその搭載部に果実を一つ捕捉するように構成されて」おり、「搬送ベルト30により搬送されて読み取り部60の下を一度に一つだけの果実が通過されるように搬送ベルト30の搬送方向と直角の方向に並列に3列でそれぞれ千鳥配列で複数個配置されて固定されて」いるものであって、搬送ベルト30により搬送されるものであることは明らかである。 そして、「カップ42」は、「搭載部に果実を一つ捕捉」し「搬送」する機能を有するものであることから、本件特許発明3の「コンベアで移送され、中央部に上下に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」に相当するものといえる。 (イ)被請求人は、本件特許発明3の構成要件Gの「トレー」は、コンベヤとは独立して設けられ、青果物を載せてコンベアによって移送されるものであるのに対して、甲3発明の「カップ42」は、搬送コンベヤベルト30にしっかり固定されたものであり、搬送コンベヤベルト30の所定の位置に保持されたまま、搬送コンベヤベルト30と一体として移動するものであって、搬送コンベヤベルト30に設けられた果菜載置部にすぎないので、両者は相違する旨主張している。 しかしながら、構成要件Gには、「コンベアで移送され、中央部に上下に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」と規定されているのみであり、当該規定によれば、「トレー」が、「その上部に青果物を載せて移送する」されること、「コンベアにより移送される」ことが特定されるのみであって、「トレー」がコンベアに対して独立しているか否かについては何ら規定されていない。 そして、本件特許発明3の実施例である実施例2に関して記載された本件特許明細書の段落【0032】においても、本件特許発明3の「トレー」がコンベアに対して独立して設けられていることは明記されておらず、実施例2を示す第2図においても「搬送面32」が記載されているのみであって、「トレー」を搬送するコンベアについては具体的に記載されていないから、第2図及びそれに関する本件特許明細書の記載を参酌しても、本件特許発明3の「トレー」をコンベアとは独立に設けられているものと解すべき根拠は見受けられない。 (ウ)被請求人は、さらに、本件特許明細書の段落【0020】や【0026】の記載、本件特許出願当時の技術水準に基づいて、本件特許発明3の「トレー」がコンベアとは独立に設けられているものであることが明らかであると主張するが、これらの記載を勘案してもそのように解すべき理由がないことは、上記2ア(イ)において検討したとおりである。 (エ)以上のとおりであるから、本件特許発明3において、本件特許発明3の「トレー」が、搬送コンベヤとは別の独立した構成要素であることが特定されているということはできないから、本件特許発明3の「トレー」は、搬送コンベヤに固定されて移送されるものも含まれると解するのが相当であるから、甲3発明の「カップ42」は、本件特許発明3の「トレー」に相当するものである。 イ 本件特許発明3の構成要件Hについて (ア)本件特許発明3の構成要件Hの意味する点については、上記3(1)エにおいて検討したとおりである。 (イ)甲3発明の「搬送ベルト30の搬送方向に対して直角方向に整列した3つの光源62であって、搬送ベルトの下側に配置され下方からそれぞれの上方に対応する位置を通過するカップ42の開口を通して果実53を照射するように構成された光源」と、本件特許発明3の構成要件Hの「外乱光が入らないように形成した上記トレーの上下に貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段」とは、「トレーの上下に貫通した穴を通して発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段」である限りにおいて共通するものの、本件特許発明3の構成要件Hの「投光手段」が、「外乱光が入らないようにした」「トレーの上下に貫通した穴を通して」「複数の発光光源からの光を照射する」ものであるのに対して、甲3発明の「3つの光源」は、それぞれの上方に対応する位置を通過する「カップ42の開口を通して果実を照射するように構成された」複数の光源である点で異なるものであり、本件特許発明3の「複数の光源からの光」を「投光する投光手段」のような「青果物から出る透過光」が「単一発光光源による照明と同一の電力で」より多い光量となる技術的意義を有するものではない。 (ウ)請求人は、甲第3号証のFig.4に示されているように、甲3発明においては、ランプ62が近接して設けられていることから、隣の果実に入光するおそれがあることから、カップの開口48により隣接するランプ62の光(外乱光)が入らないようになっている」と主張する。しかしながら、甲第3号証には、カップ42に外乱光の入光を阻止する構成については記載されておらず、Fig4においても、外乱光の入光を阻止するための構成が特段示されているわけではない。 また、甲第3号証には、上記1(2)ア(エ)に摘記したように、「ランプ62」の光は「予備集束」されるものであることが記載されていることに照らせば、ランプ62の光が隣の果実に入光するおそれがあることが自明であるとただちに認められるものでもない。 なお、本件特許発明3の「外乱光が入らないように形成した」「トレー」は、どのような外乱光を対象としたものであるのかが明確でないため、その技術的意義が明らかでないので,この点につき本件特許明細書の発明の詳細な説明を参酌して、その技術的意義を検討するに、本件特許明細書の段落【0024】に「照明光が青果物を透過せずに直接受光手段に入ることを避ける適宜の遮光手段、例えば上記穴開き弾性シート等を照明光学系に用いることや、光源光を光ファイバーで青果物に導く構成等が好ましく採用される」と記載されているように、「光源からの光が、青果物を透過せずに直接受光手段に入ることを避ける」という技術的意義を持つものであるから、カップ開口48により隣接するランプ62が入らないようにすることと技術的意義を異にするものである。 (ウ)請求人は、本件特許発明3は、複数の発光光源からの光が同時に1つのトレーの穴を通して青果物に入射するものに限定されているものではない旨主張しているが、本件特許発明3の構成要件Hが「複数の発光光源からの光を同時に単一の青果物にトレーの上下に貫通した穴を通して照射する」ものと解すべきであることは、上記(1)エのとおりである。 ウ 本件特許発明3の構成要件I及びJについて 本件特許発明3の構成要件Iの「受光手段」が受光する「この青果物から出る透過光」が、「複数の光源により青果物に照射され」「青果物を透過した光」と解すべきことは上記(1)エのとおりである。 してみると、甲3発明の「それぞれの光源に対応する位置であって搬送ベルトの外側面の上やカップの上に離間して3つの光ファイバ束64が配置されており、各光ファイバ束64は、それぞれ2つのブランチ70,72を有しており、ブランチ70はフィルタ74を介して光増倍管76に、ブランチ72はフィルタ78を介して光増倍管80に接続されているもの」は、「読み取り部60の下を果実が載置されたカップ42が通過する際、各光源からの光線は、それぞれ対応するカップ42の開口48を通してカップ42の搭載部に捕捉された果実を透過して散乱し光ファイバ束64によって取り入れられる」よう構成されているのであるから、甲3発明の3つの「光ファイバ束64、2つのブランチ70,72、フィルタ74,78、光増倍管76、80」からなる受光系のそれぞれと、本件特許発明3の構成要件I「この青果物から出る透過光を受光するように上記トレー上の青果物に対向される受光手段をもつ受光光学系」とは、「青果物から出る透過光を受光するように上記トレー上の青果物に対向される受光手段をもつ受光光学系」である点で共通するものであるが、本件特許発明3の構成要件Iの「受光手段」が、「複数の光源により青果物に照射され」「青果物を透過した光」を受光するものであるのに対して、甲3発明の3つの「光ファイバ束64、2つのブランチ70,72、フィルタ74,78、光増倍管76、80」は、「読み取り部60の下を果実が載置されたカップ42が通過する際、各光源からの光線は、それぞれ対応するカップ42の開口48を通してカップ42の搭載部に捕捉された果実を透過して散乱し光ファイバ束64によって取り入れられる」よう構成されているもの、すなわち、「光ファイバ束64により取り入れられる光は、「光源の上方に対応する位置を通過するカップ42の開口を通して果実を照射し、果実から出る透過光」を受光するものである点で相違するものである。 また、甲3発明の3つの「光ファイバ束64、2つのブランチ70,72、フィルタ74,78、光増倍管76、80」からなる受光系のそれぞれは、本件特許発明3の構成要件Jの「受光された光信号を電気信号に変換する光電変換手段」に相当するものといえる。 エ 本件特許発明3の構成要件Kについて 甲3発明の「2つの光増倍管76及び80からの信号を増幅する増幅器82及び84の差信号である光学密度差を用いて果実の成熟度を検査する読み取り部60」は、本件特許発明3の「該電気信号に含まれる透過光の信号成分を検出する透過光信号成分の検出手段」といい得るものである。 オ 本件特許発明3の構成要件Lについて 甲3発明は、果実を通過した散乱光を受光して、「果実の完熟度を検査する」「果実検査装置」であるから、本件特許発明3の構成要件L「青果物の内部品質検査用の光透過検出装置」といえる。 カ 以上アないしオで検討したことをまとめると、本件特許発明3と甲3発明とは、つぎの一致点2で一致し、相違点1-2において相違するものと認められる。 <一致点2> 「コンベアで移送され、中央部に上下に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレーと、上記トレーの上下に貫通した穴を通して発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段と、この青果物から出る透過光を受光するように上記トレー上の青果物に対向される受光手段をもつ受光光学系と、受光された光信号を電気信号に変換する光電変換手段と、該電気信号に含まれる透過光の信号成分を検出する透過光信号成分の検出手段とを備えたことを特徴とする青果物の内部品質検査用の光透過検出装置」である点 <相違点1-2> 本件特許発明3の「投光手段」が、「外乱光が入らないようにした」「トレーの上下に貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を照射する」ものであり、「受光手段」が「この青果物から出る光」を受光するものであるのに対して、甲3発明の「光源」は、それぞれの上方に対応する位置を通過する「カップ42の開口を通して果実を照射するように構成された」複数の光源であって、「光ファイバ束64」は光源の上方に対応する位置を通過するカップ42の開口を通して果実を照射し、果実から出る透過光を受光するものである点 (3)小活 上記のとおり、本件特許発明3と甲3発明との間には、相違点1-2が存在する。 したがって、本件特許発明3は、甲3号証に記載された発明に該当するものとはいえない。 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1-2によっては、本件特許発明3に係る特許を無効とすることはできない。 4 無効理由2-1(本件特許発明1の甲2発明に基づく進歩性欠如について) 審判請求人の、仮に本件特許発明1が、甲第2号証に記載された発明に該当しないとしても、本件特許発明1は、甲2発明及び甲3号証ないし甲第8号証に記載された発明ないし技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないものであるから、同法123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものであるとの主張について検討する。 (1)本件特許発明1と甲2発明との対比について 本件特許発明1と甲2発明とは、上記2の(2)のカにおいて認定したとおりの一致点1で一致し、相違点1-1において相違するものである。 (2)相違点1-1についての想到容易性についての検討 ア 甲2発明においては「十分な指向特性を保持するビーム」を用いて果実の両側部分のビーム透過率特性間に有効な差を得ることを目的とし(上記1(1)ア(イ))、「評価回路42及び43からのろ波さ補償された2つの出力信号の差」が「果実の心の片側の評価と反対側の評価との間の差」に相当し、「良い果実が殆んど差がなく、出力は比較的小さい」が「不良果実は多数の大きなパルスより成る出力を発生」するものである(上記1(1)ア(コ))ところ、このような甲2発明の果実の内部特性評価は、果実の心の両側をそれぞれのビームの経路が通過する領域の組織が良品の場合は、それぞれ同じような性質を備えていること、すなわち、果実の対称性を前提とするものであると解される。 甲2発明がこのように解されることは、甲2発明で用いられる1対の光ビームが好適にはレーザビームであるとされ、その一対のレーザが「視準孔30-30の間隔と略々同一の間隔」の、「略々等強度の2個の平行ビーム」とする必要がある(上記1(1)ア(オ))とされていることからも裏付けられる。 イ してみると、甲2発明の2つの「光増倍管32-32」には、それぞれ、果実の片側のみの評価結果となる光が入力される必要があるものであり、かつ、その経路は、それぞれのビームが果実の心に対して対称となる位置を通過するようにしなければならないものであり、これを実現するために、甲2発明においては、用いる光ビームを十分な指向性を有するレーザとし、果実の上方から果実の心部分の両側を通過するように、レーザ74及び75により上方から果実に照射し、各光増倍管には、それぞれ不透明視準板29の孔30-30を通過する果実の心部分31の両側を通過した一方の光ビームのみが入射するように構成されているものと認められる。 ウ つぎに、甲2発明において、各光増倍管32に不透明視準板29の孔30を介して入射されるレーザ光を果実の周囲から複数照射するように構成することについて検討する。 甲2発明のレーザ光をこのように構成した場合には、各光増倍管に入射する複数のレーザ光のそれぞれは、果実内の異なる経路を透過してきたものとなり、その結果、その入力は、果実の心の片側における複数の部分を平均した透過率を反映するものとなってしまうことから、不良な果実における評価回路42及び43の差信号は、それぞれの各光増倍管に入力されるレーザが単一のものと比較して小さくなる場合が多くなってしまう。 エ 以上のことからすると、甲2発明の「果実10に上方から1対のレーザ74及び75により果実10の心の両側部分を透過する光ビームを照射し、各別の感知器上方に位置する互いに離間した不透明視準板29の孔30-30を通過する果実の心部分31の両側を通過した光ビームを、感知器14-14の光増倍管32に入射させるようにし」ているものにおいて、レーザ74及び75をそれぞれ複数のものとして、それぞれに対応する不透明視準板の穴30を通し光増倍管35に複数のレーザを入射するようにすることにより、本件特許発明1のように構成することに動機づけがなく、また、甲2発明において、そのようにすることには、阻害要因があるというべきであるから、上記相違点1-1は、当業者が容易に想到し得るものということはできない。 オ そして、本件特許発明1の「複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得るという」効果に関して、甲第2ないし11号証のいずれにも記載されておらず、本件特許発明1の効果は、甲第2号証ないし11号証に記載の事実から当業者が予測可能なものということはできない。 カ 請求人は、甲2発明において光学ビームで走査された果実の両側部分のビーム透過率特定間に有効な差を得るには、必ずしも光源と受光手段を1対1の関係にしなければならないものではなく、例えば光源を複数として1つの受光手段に入射されるような構成においても達成できるものといえるから、阻害要因は存在しないと主張するが、当該主張に理由がないことは上記のとおりである。 また、請求人が提出した甲第3ないし甲第11号証のうち、甲第4号証、甲第7号証及び甲第8号証には、それぞれ、果実の検査装置において複数の光源を果実の周囲に配置するものが記載されているが、甲第4号証は、果実内での複数の特定波長の吸収率を測定するものであり、甲第7号証及び第8号証は、いずれも果実の外観検査をするための照明として構成されているものであって、その検出原理は、甲2発明とは明らかに相違するものであるから、これらの技術が知られていたからといって、上記相違点1-1を当業者が容易に想到し得るとすることはできない。 そして、その他の各証拠においても、相違点1-1を当業者が容易に想到し得るものとする根拠は見受けられない。 (3)小活 上記のとおり、本件特許発明1と甲2発明との間には、相違点1-1が存在し、当該相違点1-1は、請求人が提出した甲第3号証ないし甲第11号証を勘案しても当業者が容易に想到し得るものということはできない。 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由2-1によっては、本件特許発明1に係る特許を無効とすることはできない。 5 無効理由2-2(本件特許発明2の甲2発明に基づく進歩性欠如) 審判請求人の、本件特許発明2は、甲2発明及び甲第3号証ないし甲第8号証に記載された発明ないし技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないものであるから、同法123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものであるとの主張について検討する。 (1)本件特許発明2と甲2発明の対比 ア 本件特許発明2について 本件特許発明2は、上記第2の2において認定したとおり、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載の発明特定事項により特定されるとおりのものである。 イ 本件特許発明2と甲2発明との対比 (ア)本件特許発明2は、本件特許発明1を引用するものであるから、本件特許発明2と甲2発明とは、少なくとも上記2の(2)のカにおいて認定したとおりの一致点1で一致するものであり、相違点1-1において相違するものである。 (イ)本件特許発明2の構成要件Fについて a 本件特許発明2の構成要件Fの「複数の光源」が「トレーの搬送路上から両横方向に外れて配置されている」は、ここでの両横方向が搬送路の搬送方向に対してどのような関係にあるのかが不明であることから、その意味内容について検討する。 本件特許明細書には、本件特許発明2に対応する実施例として、「【0035】・・・実施例3 図3に示す本例は、青果物を移動させながら照射,受光を行う実施例1の変形例を示すものであり、この例では、実施例1と略同様のトレー61の上部全体に、軟質の穴開き弾性シート72を被せ、この弾性シート72の上に青果物20が載せられるようになっている。73は弾性シートの穴である。【0036】そしてこの青果物20の上にスポンジ等の軟質の押えローラー74を押し付けて、該青果物20を下方に押し下げ、これによって青果物と弾性シート72の密着性を高めて光の漏れを防止する。この押えローラー74の押し付けにより、青果物上部から透過光が出ることを抑制して弾性シート72の穴73から出る透過光の光量をできるだけ多くするように工夫されている。なおこの押えローラー74は、トレーの搬送と同期して回転するように設けることが好ましい。【0037】なお64,64は青果物の側方に配置された複数の光源ランプであり、これらは例えば青果物の搬送に邪魔とならないように搬送路上からは横方向に外れて配置されていることがよい。」及び図3の記載から、「トレーの搬送路を構成する搬送面に対して垂直方向から搬送路を見た場合に、トレーが搬送路上に重ならないように配置されている」ことを意味するものと解される。 b これに対して、甲2発明において「レーザ74及び75」は、果実を上方から照射するよう構成されているものである。 また、甲第2号証の図には、「レーザ74及び75」の配置は明確に示されてはいないものの、甲第2号証に「検査所A」の「外匣」の「上部隔室11a」に「光源12」を収納することが記載され(上記1(1)ア(ウ))、「光源12」は「果実」を「上方」から照射するものであることが記載されていることからすれば、甲2発明の「レーザ74及び75」は、「コンベヤ台17及びチェーン15a及び15bから構成される搬送コンベヤ」上方に配置されているものであることは明らかであるから、甲2発明の「レーザ74及び75」は、搬送コンベヤの「搬送路上から横方向に外れて設置」されているものではない。 (ウ)してみると、本件特許発明2と甲2発明とは、上記2(2)カにおいて認定したとおりの一致点1で一致し、相違点1-1及びつぎの相違点2-1で相違する。 <相違点2-1> 本件特許発明2の「青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段は、複数の発光光源をトレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置されている」のに対して、甲2発明の「レーザ74及び75」は、そのように配置されていない点 (3)相違点についての検討 ア 相違点1-1が当業者が容易に想到し得るものとはいえないことは、上記4(2)で検討したとおりである。 イ 相違点2-1の想到容易性について (ア)搬送路上を搬送される物体を照射する光源を配置するにあたって、その搬送の邪魔にならない位置に光源を配置するようにすることは当業者であれば当然考慮すべきことにすぎず、そのことは、甲第7号証及び甲第8号証には果実の外観を検査するものについての例ではあるものの、複数の光源が物体の搬送の邪魔にならないように配置(ただし、甲第7号証及び甲第8号証のものは、必ずしも搬送ベルトの上に配置しないものとはいえない)されているものが、また、甲第9号証には、搬送路から両横方向に外れて投光器201や212が設置されているものが記載されていることからも裏付けられる。 なお、請求人は、甲第9号証の第6図の「照光器208P及び218P」が搬送ベルト301から横方向に外れて青果物の204の周囲に配置されている」と主張しているが、この「照光器208P及び218P」は、いずれも「搬送された被検体204がカメラ206の直前に到達する時刻を検出するため」(上記1(8)ア(イ))のものであって、検査用の光源についてのものではない。 甲第9号証には、搬送ベルトの搬送路から横方向に外れた位置に、被検体204からの反射光を受光するための光源であるハロゲンランプ201及び212を配置すること、また、被検体の所定位置への到達軸を検出するための照光器受光器の対からなる光検出器の光源208P、218Pを搬送ベルトの搬送路から横方向に外れた位置に配置するものが記載されているものといえるが、これらの光源201、212はいずれも被検体の横方向の反射光像を検出するためのものである。 また、甲第10号証には、複数の光源22-1・・22-nからなることが記載されており、上記1(9)ア(ウ)の記載並びに第1図及び第3図をあわせみれば、光源が搬送路から横方向に外れた位置に配置されているものと解されるものの、これらの複数の光源は、みかん23の横方向からそれぞれ光を照射し、横方向において、透過光を検出するものである。 (イ)甲2発明は、果実10の上方よりレーザ74及び75を果実の心の両側部分に照射して、果実の心の両側部分をそれぞれ透過した透過光をコンベヤの下方に設置した感知器14-14により検出することを必要とするものであり、また、甲2発明においては、レーザ74及び75は、すでに青果物の上方に配置されており、搬送路上を搬送される果実の搬送に邪魔にならない位置に配置されているものであるし、また、レーザ74及び75の「使用するレーザの機械部分を孔30-30の間隔に整合するように充分に接近配置し得る場合には平行に配置する」ようにし、これが「不可能又は不都合の場合には2個のレーザをできるだけ接近配置してそれぞれ孔30-30を射照するように配置する必要がある」(1(1)ア(エ))ものであるのであるから、甲2発明において、ことさら「トレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置する」構成をわざわざ採用する必要性は見い出せず、そのようにする動機づけはない。 また、その他の各甲号証の記載を勘案しても、上記相違点2-1を当業者が容易に想到し得るとする根拠は見い出せない。 (ウ)請求人は、検査用光源を対象物の搬送の妨げとならない位置に置くことは周知慣用技術であると主張するが、検査用光源を対象物の搬送の妨げとならない位置に置くことが周知慣用技術であるとしても、甲2発明において、そのような周知技術を採用する動機づけがないことは上記のとおりである。 (エ)したがって、上記相違点2-1は、当業者が容易に想到し得るものということはできない。 (4)小活 上記で検討したとおり、本件特許発明2と甲2発明との間には、相違点1-1及び相違点2-1が存在し、これらの相違点は、請求人が提出した甲第3号証ないし甲第11号証を勘案しても、いずれも当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由2-2によっては、本件特許発明2に係る特許を無効とすることはできない。 6 無効理由2-3(本件特許発明3の甲2発明に基づく進歩性欠如) 審判請求人の、本件特許発明3は、甲2発明及び甲第3号証ないし甲第8号証に記載された発明ないし技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないものであるから、同法123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものであるとの主張について検討する。 (1)本件特許発明3と甲2発明の対比 ア 本件特許発明3の構成要件Gについて (ア)上記1(2)イで認定したように、甲2発明の「コンベヤ台17」は、「横方向に離れたリンク15a及び15bと、リンク15a及び15bにその前縁が枢軸されるとともに、後縁のブラケット19を下側レール部材20上にのるようにして水平果実支持位置に保持され」、「果実10」を「貫通穴に載置して、搬送する」ものであるところ、ここでの「横方向に離れたリンク15a及び15b」及び「コンベヤ台17」は、本件特許発明3の「搬送コンベヤ」に相当するものであるといえる。そして、この「コンベヤ台17」は、その後縁のブラケット19をリンク15a及び15b及びコンベヤ台17の下側に水平に形成されている下側レール部材に水平果実支持位置に保持された状態で移送されるのであるから、この水平に形成されている下側レール部材に平行な面に沿って搬送されるものであるから、搬送コンベヤによってに搬送面上を移送されるものといえる。 以上のことから、甲2発明の「コンベヤ台17」は、本件特許発明3の構成要件G「コンベアで移送され、中央部に上下に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」に相当するものといえる。 (イ)被請求人は、甲2発明の「コンベヤ台17」は、本件特許発明3の「トレー」に該当するものではなく、貫通孔を有することも明記されていないことから、本件特許発明3の構成要件Gを開示しない旨主張するが、上記主張に理由がないことは、上記2(2)アの(イ)ないし(エ)で検討したとおりである。 イ 本件特許発明3の構成要件Iについて (ア)甲2発明の「コンベヤ台17により搬送される果実10に上方から1対のレーザ74及び75により果実10の心の両側部分を透過する光ビームを照射し、各別の感知器上方に位置する互いに離間した不透明視準板29の孔30-30を通過する果実の心部分31の両側を通過した光線ビームを、感知器14-14の光増倍管32に入射させるようにし」た「感知器14-14」は、1(1)イ(ウ)で認定したように、それぞれ、レーザ74から、果実の心部分31の一方の側を通過した光線ビームが入射される感知器と、レーザ75から、果実の心部分31の他方の側を通過した光線ビームが入射される感知器から構成されるものであるところ、ここでの、それぞれの「感知器14-14」が本件特許発明3の「受光手段」に対応するものであって、「青果物から出る透過光を受光する」ものである点で共通するものであるとはいえる。 しかしながら、甲2発明の「感知器14-14」と本件特許発明3の構成要件Iとは、本件特許発明3の「受光手段」が、「上記トレー上の青果物に対向される」ものであって、「トレーの貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段」により「青果物に照射された光による透過光を受光する」もの、すなわち、上記3(1)において検討したように、本件特許発明3の「受光手段」は「複数の光源により照射され青果物を透過した光を受光する」ものであるのに対して、甲2発明の「感知器14-14」は、「果実の上方から照射されたレーザ74及び75による果実の透過光をそれぞれ、個別にトレーの下方において受光する」ものである点で相違するものである。 (イ)請求人は、甲2発明の「感知器14-14」は、本件特許発明3の「受光手段」に相当すると主張しているが、本件特許発明3の「受光手段」が、「複数の光源により」「照射された青果物から出る透過を受光する」ものであるのに対して、甲2発明の「感知器14」は、それぞれ、「レーザ74又は75」により照射され果実を透過した透過光の一方のみを受光するものである点で相違するものであることは上記のとおりである。 ウ 本件特許発明3の構成要件Hについて 甲2発明の「レーザ74及び75」は、それぞれ、果実10の上方から照射光を照射するのであるから、本件特許発明3の構成要件H「外乱光が入らないように形成した上記トレーの上下に貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段」とは、「複数の発光光源により青果物を照射する投光手段」である点で共通するものの、本件特許発明3が「外乱光が入らないように形成した上記トレーの貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する」ものであるのに対して、甲2発明は「果実10」の「上方」から、「1対のレーザ74及び75」により「果実10の心の両側部分を透過する光ビームを照射し」ているものである点で相違する。 エ 本件特許発明3の構成要件J、Kについて 甲2発明の「感知器14-14の光増倍管32」は、不透明視準板の孔を通過した光ビームを受光して電気信号に変換するものであるから、本件特許発明3の構成要件Jの「受光された光信号を電気信号に変換する光電変換手段」といえるものであるし、甲2発明の「評価回路42」には、「前置増幅器、雑音フィルタ回路、対数増幅器および高域通過フィルタ回路」を備え、果実損傷に関係ない高周波数雑音信号やドリフト誤差、0.2インチ以上の果実の形状の凹凸および果実の片側から反対側までの肉厚の差により生じる低周波数信号を除去し、果実の心の片側の評価信号とし、差動増幅器回路52により差信号を果実損傷に関する評価信号とするものであるから、本件特許発明3の構成用件Kの「該電気信号含まれる透過光の信号成分を検出する透過光信号成分の検出手段」に相当するものを備えているものであるといえる。 オ 本件特許発明3の構成要件Lについて 甲2発明は、「レーザ74、75」を果実10に照射し、その透過光を受光して果実の内部損傷特性を評価する装置であるから、本件特許発明3の「青果物の内部品質検査用の光透過検出装置」に相当するものといえる。 カ 以上アないしオで検討したことをまとめると、本件特許発明3と甲2発明とは、つぎの一致点3で一致し、相違点2-2及び相違点2-3において相違するものと認められる。 <一致点3> 「コンベアで移送され、中央部に上下に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレーと、複数の発光光源からの光を青果物に照射する投光手段と、青果物から出る透過光を受光する受光手段をもつ受光光学系と、受光された光信号を電気信号に変換する光電変換手段と、該電気信号に含まれる透過光の信号成分を検出する透過光信号成分の検出手段とを備えたことを特徴とする青果物の内部品質検査用の光透過検出装置。」 <相違点2-2> 本件特許発明3の「受光手段」が、「上記トレー上の青果物に対向される」ものであって、「トレーの貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する投光手段」により「青果物に照射された光による透過光を受光する」もの、すなわち、本件特許発明3の「受光手段」は、下方からトレーの貫通した穴を通して青果物に照射された複数の発光光源の透過光を上方で受光するものであるのに対して、甲2発明の「感知器14-14」は、果実の上方から照射されたレーザ74及び75による果実の透過光をそれぞれ、個別にトレーの下方において受光するものである点 <相違点2-3> 本件特許発明3が「外乱光が入らないように形成した上記トレーの貫通した穴を通して複数の発光光源からの光を下方から青果物に照射する」ものであるのに対して、甲2発明は「果実10」の「上方」から、「1対のレーザ74及び75」により「果実10の心の両側部分を透過する光ビームを照射し」ているものである点で相違する。 (2)相違点についての検討 ア 相違点2-2の想到容易性についての検討 甲2発明において、感知器14-14を複数光源による透過光を受光するようにすることに動機づけがなく、また、阻害要因が存在することは、上記4(2)において既に検討したとおりである。 してみると、下記イ(ウ)で説示するように、甲2発明の「感知器14」をコンベヤ台の上方に配置するようにし、それとともに、コンベヤ台の下方に「レーザ74及び75」を配置して、果実の下方からトレーの貫通した穴を通して果実にレーザを照射するようにすることは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得るものとはいえるとしても、甲2発明の「感知器14-14」を、本件特許発明3の上記相違点2-2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものということはできない。 イ 相違点2-3の想到容易性についての検討 (ア)甲第3号証には、トレーに載置した果実に対して下方から光を照射し、果実からの散乱光を上方に配置した光ファイバ束64により受光するように構成したものが、甲第4号証には、複数の投光手段により下方から光を照射し、果実からの反射光を下方に設けた受光手段である光ファイバで受光するよう構成したものが、甲第5号証には、下方より果実に対して光を照射し、果実の上方から透過光を受光するように構成したものが記載されているように、本件特許出願前において、果実の下方より光を照射して、果実の上方においてその透過光を受光するようにすることは、甲第3号証や甲第5号証に記載されているように周知の技術といえる。 なお、これら甲第3号証及び甲第5号証には、「複数の光源」からの光を果実下方より照射し、それらの光源からの透過光を上方において受光手段により受光する点については記載されていない。 (イ)甲第4号証においては、ゴム製外乱光遮へい物やゴム製光遮へい物などを備える点が、また、甲第5号証においては、青果物載置台8の中央に有する開口部の周囲にリング状の弾性体9を備える点が、甲第6号証には、検出器に連接されており、当該検出器に通じる通孔を有するクッション材の通孔位置に測定対象物を押しつけて分析することにより、通孔を測定対象物で閉塞して外乱光の侵入を防止するものが記載されている。 (ウ)上記(ア)の周知技術に鑑みれば、甲2発明の「感知器14」をコンベヤ台の上方に配置するようにし、それとともに、コンベヤ台の下方にレーザ74及び75を配置して、果実の下方からトレーの貫通した穴を通して果実にレーザを照射するようにすることは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得るものとはいえる。 (エ)つぎに、「コンベヤ台の穴を外乱光が入らないように形成する」ことの想到容易性について検討する。 甲2発明の「感知器14」には、不透明視準板及び干渉フィルタが備えられており、それにより、果実の心の両側部分を通った透過光をそれぞれ感知器14の一方のみが受光するよう構成されているものであること、また、レーザ74及び75は、不透明視準板の孔30-30をそれぞれ照射するものであり、そのビームは十分に集束されているものであることから、甲2発明において、下方からコンベヤ台の穴を通してレーザ74及び75により果実にレーザを照射するように構成した際に、当該コンベヤ台の穴に外乱光が入らないように形成することの必要性は認められない。 すなわち、本件特許発明3のように、投光手段からの光であって果実を透過した光以外のものが受光手段により受光されることを防止する必要性は、甲2発明においては認められず、そのようにする動機付けはない。 (オ)請求人は、甲第4号証ないし甲第6号証に記載されているような周知の遮へい部材を採用することにより、甲2発明のコンベヤ台を本件特許発明3のようにすることは適宜設計し得ることである旨主張している。 しかしながら、甲第4号証ないし甲第6号証に記載のものは、いずれも甲2発明のようにレーザのように集束された光ビームを受光するものではなく、また、果実の心の両側部分のみを透過する光ビームを検出する際に必要とされるものとして開示されているものではないから、請求人の主張を勘案しても、甲2発明において、下方からコンベヤ台の穴を通してレーザ74及び75により果実を照射する」ように構成するにあたり、「外乱光が入らないように「コンベヤ台」を形成することにより、本件特許発明3の相違点2-3に係る構成とすることを当業者が容易に想到し得るものということはできない。 また、当事者が提出したその他の各証拠の記載を勘案しても、上記相違点2-3を当業者が容易に想到し得るとする根拠は見い出せない。 ウ なお、本件特許発明3の「複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得るという」効果に関して、甲第2ないし11号証のいずれにも記載されていない。 (3)小活 上記で検討したとおり、本件特許発明3と甲2発明との間には、相違点2-2及び相違点2-3が存在し、これらの相違点は、請求人が提出した甲第3号証ないし甲第11号証を勘案しても、いずれも当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由2-3によっては、本件特許発明3に係る特許を無効とすることはできない。 7 無効理由3-1(本件特許発明1の甲3発明に基づく進歩性欠如) 審判請求人の、本件特許発明1は、甲3発明並びに甲第2号証及び第4号証ないし第8号証に記載された発明ないし技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないものであるから、同法123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものであるとの主張について検討する。 (1)本件特許発明1と甲3発明との対比 ア 本件特許発明1の構成要件Aついて (ア)甲3発明の「カップ42」は、その「底43に垂直の開口48を有しその搭載部に果実を一つ捕捉するように構成されて」おり、「搬送ベルト30により搬送されて読み取り部60の下を一度に一つだけの果実が通過されるように搬送ベルト30の搬送方向と直角の方向に並列に3列でそれぞれ千鳥配列で複数個配置されて固定されて」いるものであって、搬送ベルト30により搬送されるものであることは明らかであるから、本件特許発明1の構成要件A「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレーコンベアで移送され、中央部に上下に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレー」に相当するものといえる。 (イ)被請求人は、本件特許発明1の構成要件Aの「トレー」は、コンベヤとは独立して設けられ、青果物を載せてコンベアによって移送されるものであるのに対して、甲3発明の「カップ42」は、搬送コンベヤベルト30にしっかり固定されたものであり、搬送コンベヤベルト30の所定の位置に保持されたまま、搬送コンベヤベルト30と一体として移動するものであって、搬送コンベヤベルト30に設けられた果菜載置部にすぎないので、両者は相違する旨主張し、また、本件特許明細書の段落【0020】や【0026】の記載、本件特許出願当時の技術水準に基づいて、本件特許発明1の「トレー」がコンベアとは独立に設けられているものであることが明らかであると主張するが、被請求人のこれらの主張を採用することができないことは、上記2のア(イ)で検討したとおりである。 (ウ)以上のとおりであるから、本件特許発明1において、本件特許発明1の「トレー」が、搬送コンベヤとは別の独立した構成要素であることが特定されているということはできないから、本件特許発明1の「トレー」は、搬送コンベヤに固定されて移送されるものも含まれるものであって、甲3発明の「カップ42」は、本件特許発明1の構成要件Aの「トレー」に相当するものである。 イ 本件特許発明1の構成要件Bについて (ア)本件特許発明1の構成要件Bについては、2(1)において検討したとおりであるところ、甲3発明の「それぞれの光源に対応する位置であって搬送ベルトの外側面のカップの上に離間して3つの光ファイバ束64が配置されており、各光ファイバ束64は、それぞれ2つのブランチ70,72を有しており、ブランチ70はフィルタ74を介して光増倍管76に、ブランチ72はフィルタ78を介して光増倍管80に接続されているもの」は、「読み取り部60の下を果実が載置されたカップ42が通過する際、各光源からの光線は、それぞれ対応するカップ42の開口48を通してカップ42の搭載部に捕捉された果実を透過して散乱し光ファイバ束64によって取り入れられる」よう構成されているのであるから、本件特許発明1の構成要件Bの「この搬送コンベア上のトレーに載った青果物に対し複数の光源により周囲から光を照射し、照射された青果物から出る透過光を受光するように上記トレーの貫通した穴を通して該青果物の一部表面に対向する受光手段」とは、「搬送コンベヤ上のトレーに載った青果物に対して光源から光を照射し、照射された青果物から出る透過光を受光するよう青果物の一部表面に対向する受光手段」である点で共通するものといえるものの、本件特許発明1が「複数の光源により周囲から光が照射された青果物から出る透過光を受光するようにトレーの貫通した穴を通して青果物の一部表面に対向する受光手段」であるのに対して、甲3発明は「対応するカップ42の開口48を通して照射され、果実を透過して散乱した光を受光するように対応する果実の一部表面に」それぞれ「対向する」「それぞれのブランチはフィルタを介して光増倍管に接続されている」2つのブランチを有する」3つの「光ファイバ束」により構成されているものである点で相違する。 (イ)請求人は、甲3発明の「光電子増倍管76、80」が、本件特許発明1の構成要件Bに相当すると主張しているが、甲3発明の「光電子増倍管76、80」は、「複数の光源により周囲から光が照射された青果物から出る透過光を受光する」ものではなく、また、「トレーの貫通した穴を通して青果物の一部表面に対向する」ものでもないから、請求人の主張を採用することはできない。 ウ 本件特許発明1の構成要件Cについて 甲3発明の「カップ42」が、外乱光を阻止する構成を有することについて明記されておらず、また、甲第3号証には、受光手段に透過光以外の外乱光が入光することを阻止するように青果物と受光手段の対向位置の間に配置される遮光手段について記載されていないことは、上記の3(1)イ(イ)で説示したとおりである。 なお、甲第3号証が遮光手段に言及していないことは請求人も認めるところである。 してみると、甲3発明が、本件特許発明1の構成要件Cを備えるものとはいえない。 エ 本件特許発明1の構成要件Dについて (ア)本件特許発明1の構成要件Dについては、2(1)において検討したとおりであるところ、甲3発明の「搬送ベルト30の搬送方向に対して直角方向に整列した3つの光源62であって、搬送ベルトの下側に配置され下方からそれぞれの上方に対応する位置を通過するカップ42の開口を通して果実53を照射するように構成された光源」と、構成要件D「複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段」とを対比すると、甲3発明の「3つの光源」と本件特許発明1の構成要件びDにおける「投光手段」とは、「搬送コンベア上のトレーに載った青果物に対して、光を照射する」「投光手段」であって、「複数の光源」を備えるものである点で共通するものの、本件特許発明1の「投光手段」は、「複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲から該青果物に照射する」ものであって、青果物の上方から複数の光を青果物の周囲から照射するものであるのに対して、甲3発明の「3つの光源」は、それぞれの上方に対応する位置を通過するカップ42の開口を通して果実53を照射するように構成された複数の光源であって、果実の下方から光を照射するものである点で相違するものである。 (イ)請求人は、甲3発明の複数の「ランプ62」が本件特許発明1の構成要件Dに相当するものであると主張しているが、甲3発明の「ランプ62」が、本件特許発明1の構成要件Dに相当するものとはいえないことは、上記認定のとおりである。 オ 本件特許発明1の構成要件Eについて 甲3発明は、果実を通過した散乱光を受光して、「果実の完熟度を検査する」「果実検査装置」であるから、本件特許発明1の構成要件E「青果物の内部品質検査用の光透過検出装置」といえる。 カ 以上アないしオで検討したことをまとめると、本件特許発明1と甲3発明とは、つぎの一致点4で一致し、相違点3-1ないし相違点3-3において相違するものと認められる。 <一致点4> 「搬送コンベアにより水平に搬送面上を移送され、中央部に貫通した穴を有し、その上部に青果物を載せて移送するトレーと、この搬送コンベヤ上のトレーに載った青果物に対して光源から光を照射し、照射された青果物から出る透過光を受光するよう青果物の一部表面に対向する受光手段と、搬送コンベア上のトレーに載った青果物に対して、光を照射する投光手段であって複数の光源を備えるものと、を備えたことを特徴とする青果物の内部品質検査用の光透過検出装置。」である点 <相違点3-1> 本件特許発明1が「複数の光源により周囲から光が照射された青果物から出る透過光を受光するようにトレーの貫通した穴を通して青果物の一部表面に対向する受光手段」であるのに対して、甲3発明は「対応するカップ42の開口48を通して照射され、果実を透過して散乱した光を受光するように対応する果実の一部表面に」それぞれ「対向する」「それぞれのブランチはフィルタを介して光増倍管に接続されている2つのブランチを有する」3つの「光ファイバ束」により構成されているものである点 <相違点3-2> 本件特許発明1が「受光手段に上記透過光以外の外乱光が入光するのを阻止するように青果物と上記受光手段の対向位置の間に配置される遮光手段」を備えるのに対して、甲3発明はそのような手段を備えていない点 <相違点3-3> 本件特許発明1の「投光手段」は、「複数の発光光源からの照射光を上記受光手段及び遮光手段の間を除く青果物の周囲から該青果物に照射する」ものであって、青果物の上方から光を照射するものであるのに対して、甲3発明の「3つの光源」は、それぞれの上方に対応する位置を通過するカップ42の開口を通して果実53を照射するように構成された複数の光源であって、果実の下方から光を照射するものである点 (2)相違点の検討 ア 相違点3-1の想到容易性について (ア)甲3発明の「光ファイバ束64」は、果実の上方に位置し、散乱光を受光するものであるが、甲2発明や甲第4号証に記載されているもののように、果実の透過光を受光して果実内部の品質を評価する装置において、果実の上方から光を照射して、その透過光をトレーや果実を搭載する載置台の穴を通して受光するようにすることは本件特許出願前に周知の技術であることからすると、甲3発明の「光ファイバ束64」をカップ42の開口穴を通して青果物の一部表面に対向するように構成することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことといえる。 しかしながら、その際に、当該「光ファイバ束64」が受光する透過光を複数の光源からの光とすることの想到容易性については、相違点3-3において以下検討するように、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 (イ)なお、上記1(2)ア(ウ)及び甲3のFIG.1によれば、甲3発明においては、「カップ42」が、搬送方向に対して直角方向に並列に3列で、それぞれ千鳥配列で「搬送ベルト30」に配置されており、果実を載置して「ベルト30」により搬送されることにより、読み取り部60の下を一度に一つだけの果実が通過するようにすることで、甲3発明の「読み取り部60」の「光ファイバ束64」は、それぞれ対応する位置を通過するカップ42の果実からの散乱光のみを受光するようにされているのであるから、甲3発明において「光ファイバ束64」が対応するカップの果実の散乱光と同時にその他のカップの果実からの散乱光を受光するように構成することができないことは明らかである。 (ウ)以上のとおりであるから、相違点3-1は当業者が容易に想到し得るものではない。 イ 相違点3-2の想到容易性について (ア)甲3発明において遮光手段について特に記載されておらず、また、甲3発明は、上記ア(イ)で説示したように、読み取り部60の「光ファイバ束64」が、それぞれ、対応する位置を通過するカップ42の果実からの散乱光のみを受光するものとして構成されているものであって、対応するカップ以外のものからの光を同時に受光することはできないよう構成されているのであるから、甲3発明において、対応する位置に配置された光源からの光以外を受光しないように、新たな遮光手段を設ける必要性がないことは明らかであり、これは、受光手段である「光ファイバ束」を果実の下側に対向するように構成したとしても変わるものではない。 (イ)また、甲3発明は、光学密度差としてΔODを任意に選択された2波長の差分として求めるものであるから、光ファイバ束64に、光源からの光(白色光)が受光したとしても、その外乱光成分は、差分を取ることによりキャンセルされるものである(甲第6号証に光学密度差を用いて検出する場合外乱光の侵入が同1条件となり相殺される旨が記載されている(上記1(5)ア(エ)))ことからも、甲3発明において遮へい部材を備えるようにすることの必要性を見出すことができない。 (ウ)なお、甲第4号証においては、分光手段は、複数波長成分を時系列で取得するものであるから、甲3発明のように透過光以外の白色光成分はキャンセルされないものであり、さらに、投光装置と受光手段が同じ側に形成されているものである点で、甲3発明とは事情が異なるものである。 また、甲第5号証に記載のものも、透過光を検出するものであるものの、その検出原理は、甲3発明とは異なるものであり、また、開口部の周囲のリング上の弾性体9が光遮へい部材であるかは不明である。 そして、甲第6号証には、甲3発明と同様に果実からの透過光の光学密度差を用いて検出するものにおいて、さらに外乱光の侵入を防止するために遮光手段を設けるものが記載されているが、甲3発明において、「受光手段であるファイバ束64」をカップ42の開口48の下部に設置した場合において、甲3発明のカップ42とファイバ束64が相対的に移動するものであることからすると、甲第6号証に記載されたものをそのまま適用することができないから、甲第6号証のものを甲3発明に適用することが当業者にとって容易であるということもできない。 (エ)その他当事者の提出する各証拠においては、相違点3-2を当業者が容易なし得るとする根拠となる記載はない。 以上のとおりであるから、甲3発明を相違点3-2に係る本件特許発明1のように構成しようとする動機付けはない。 してみると、相違点3-2を当業者が容易に想到し得るものということはできない。 (オ)請求人は、甲第2号証の「不透明視準板29」が本件特許発明1の遮光手段に対応し、さらに甲第2号証には干渉フィルタが記載されていると主張している。 しかしながら、甲第2号証の「不透明視準板29」は、果実を透過する光ビームを受光するためのものであるのに対して、甲3発明は、果実からの散乱光の一部を受光するものであるから、甲3発明に甲第2号証の不透明視準板29を適用することが容易であるとはいえない。 また、甲第2号証の干渉フィルタは、レーザを用いた場合に、レーザ波長のみを選択的に受光するためのものであるから、レーザ光を用いることを前提とするものと解されるところ、甲3発明は、レーザ光を用いるものではない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 ウ 相違点3-3の想到容易性について (ア)甲3発明の3つの光源のそれぞれを複数の光源により構成することの想到容易性について検討する。 甲3号証には、甲3発明において、3つの光源を、それぞれ複数の光源とすることを示唆することは記載されておらず、また、甲第4号証には、複数の投光装置から青果物に光を投射するものが記載されているが、甲第4号証のものは、果実からの透過光を受光する受光手段に対して光を下方から照射して下方において透過光を受光するように構成していることから、果実に対して広い範囲で光を入射させるためには、受光手段の周囲に複数の投光手段を配置することが必然となるものである(例えば、中心に投光手段を配置する第5図のものは、単一の投光手段により構成されている)から、それぞれの果実に対して光源からの光を予備集束させた光が照射される甲3発明(上記3(1)イ(イ)参照)に対して、そのまま適用できるものではない。 また、甲第7号証や甲第8号証に記載されている複数の照明手段についてみても、それらは、外観検査のためのものであり、また、光源と受光手段に対応するカメラとは、いずれも搬送コンベアの上側であって、受光手段であるカメラの光軸を中心としてそのまわりに配置されるものである点は、上記甲第4号証と同様である。 そうすると、甲第4号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載されたものを勘案しても、甲3発明において、3つの光源をそれぞれ複数の光源により構成することが当業者が容易に想到し得るものということはできない。 なお、甲2発明のレーザ74及び75が、本件特許発明1の構成要件Bに相当するものといえないことも上記2(1)イで説示したとおりであるから、甲第2号証に記載されたものを勘案しても、相違点3-3を当業者が容易に想到し得るものということはできない。 そして、当事者が提出したその他の証拠においても、上記の点を当業者が容易に想到し得るものとする根拠は見いだせない。 (イ)してみると、上記ア(イ)で検討したように、甲3発明を、上方から光源による光を照射し、下方において受光手段により果実の透過光を受光するように構成することが適宜なし得る程度のことといえるとしても、上記相違点3-3を当業者が容易に想到し得るものということはできない。 (ウ)以上のとおりであるから、上記相違点3-3は、当業者が容易に想到し得るものということはできない。 エ なお、本件特許発明1「複数の発光光源を用いて照明光学系を構成することで、単一発光光源による照明と同一の電力で、より多い光量を得るという」効果に関しては、甲第2ないし11号証のいずれにも記載されていない。 (3)小活 上記で検討したとおり、本件特許発明1と甲3発明との間には、相違点3-1ないし3-3が存在し、これらの相違点は、請求人が提出した甲第3号証並びに甲第2号証及び甲4号証ないし甲第11号証を勘案しても、いずれも当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由3-1によっては、本件特許発明1に係る特許を無効とすることはできない。 8 無効理由3-2(本件特許発明2の甲3発明に基づく進歩性欠如) 審判請求人の、本件特許発明2は、甲3発明並びに甲第2号証及び第4号証ないし第8号証に記載された発明ないし技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないものであるから、同法123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものであるとの主張について検討する。 (1)本件特許発明2と甲3発明の対比 ア 本件特許発明2は、本件特許発明1を引用するものであるから、本件特許発明2と甲3発明とは、少なくとも上記7の(1)のカにおいて認定したとおりの一致点4で一致し、相違点3-1ないし3-3において相違するものである。 イ 本件特許発明2の構成要件Fについて 本件特許発明2の構成要件Fにより規定されるところの「複数の光源」が「トレーの搬送路上から両横方向に外れて配置されている」が「トレーの搬送路を構成する搬送面に対して垂直方向から搬送路を見た場合に、トレーが搬送路上に重ならないように配置されている」ことを意味するものと解すべきであることは、上記5(1)イ(イ)aで説示したとおりである。 これに対して、上記7(1)(イ)で説示したように、甲3発明の「3つの光源」は、それぞれの上方に対応する位置を通過するカップ42の開口を通して果実53を照射するように構成された複数の光源であって、青果物の下方から光を照射するものであるから、この「3つの光源」は、それぞれのカップの位置に対応して配置されているものであって、トレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置されているものではない。 ウ してみると、本件特許発明2と甲3発明とは、上記7の(1)のカにおいて認定したとおりの一致点4で一致し、相違点3-1ないし3-3及びつぎの相違点3-4において相違する。 <相違点3-4> 本件特許発明2の「青果物の周囲から該青果物を照射する投光手段は、複数の発光光源をトレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置されている」のに対して、甲3発明の「3つの光源」は、そのように配置されていない点 (2)相違点についての検討 ア 相違点3-1ないし3-3が、それぞれ当業者が容易に想到し得るものとはいえないことは、上記7(2)で検討したとおりである。 イ 相違点3-4の想到容易性について (ア)搬送路上を搬送される物体を照射する光源を配置するにあたって、その搬送の邪魔にならない位置に光源を配置するようにすることは当業者であれば当然考慮すべきことにすぎないことは、上記5(3)イで説示したとおりである。 (イ)しかしながら、甲3発明の「3つの光源」は、「搬送ベルト30の搬送方向に対して直角方向に整列して」配置されており、かつ「搬送ベルトの下側に配置され下方からそれぞれの上方に対応する位置を通過するカップ42の開口を通して果実53を照射するように構成されている」から、光源の配置は、すでに搬送の邪魔にならないものである。 また、これらの光源を搬送路上から両横方向に外れて配置するようにして、それぞれが、対応するカップ42の開口を通して果実53を照射するように構成することが適宜なし得るものとはいえない。 そして、この点は、甲3発明の「3つの光源」を果実の上方に配置する場合も同様であると考えられる。 してみると、甲3発明において、「3つの光源」を「トレーの搬送路上から両横方向に外れて青果物の周囲に配置する」ようにする必要性は見い出せず、動機づけがない。 (ウ)請求人は、検査用光源を対象物の搬送の妨げとならない位置に置くことは周知慣用技術であることを理由に、甲3発明において、本件特許発明2の構成要件Fを採用することが容易である旨主張するが、上記(ア)(イ)で検討したように、検査用光源を対象物の搬送の妨げとならない位置に置くことが周知慣用技術であったとしても相違点3-4が当業者にとって容易に想到し得るものということはできない。 (エ)その他の当事者が主張する証拠においても、相違点3-4を当業者が容易に想到し得るものであるとする根拠は見出せない。 (オ)したがって、上記相違点3-4は、当業者が容易に想到し得るものということはできない。 (3)小活 上記で検討したとおり、本件特許発明2と甲3発明との間には、相違点3-1ないし3-4が存在し、これらの相違点は、請求人が提出した甲第3号証並びに甲第2号証及び甲4号証ないし甲第11号証を勘案しても、いずれも当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由3-2によっては、本件特許発明2に係る特許を無効とすることはできない。 9 無効理由3-3(本件特許発明3の甲3発明に基づく進歩性欠如) 審判請求人の、本件特許発明3は、甲3発明並びに甲第2号証及び第4号証ないし第8号証に記載された発明ないし技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないものであるから、同法123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものであるとの主張について検討する。 (1)本件特許発明3と甲3発明の対比 本件特許発明3と甲3発明とは、上記3(2)カにおいて認定したように、一致点2において一致し相違点1-2において相違するものである。 (2)相違点1-2の想到容易性についての検討 ア 上記7(2)イで検討したように、甲3発明において、さらに新たな遮光手段を設ける必要性は見出せず、甲3発明において、カップの開口48を、甲3発明のように、外乱光が入らないよう形成することについての動機付けはない。 また、上記7(2)ウ(ア)で検討したように、甲3発明の「(3つの)光源」のそれぞれを複数の光源とすることが当業者に容易に想到し得るものということはできない。 イ 請求人は、光学系を用いて複数の光源からの光を重ね合わせることは当業者にとって単なる設計的事項であると主張しているが、本件特許発明3において、複数の発光光源からの光を用いることにより、単一光源による照明と同一の電力でより多い光量を得ることができることから、光量増大の割に電力エネルギーの増大を少なくできるという効果を奏するものであるから、上記相違点1-2を単に複数の光源からの光を重ね合わせる設計的事項であるということもできない。 ウ その他の当事者が主張する証拠においても、相違点1-2を当業者が容易に想到し得るものであるとする根拠は見出せない。 エ したがって、上記相違点1-2を当業者が容易に想到し得るものということはできない。 (3)小活 上記で検討したとおり、本件特許発明3と甲3発明との間には、相違点1-2が存在し、当該相違点は、請求人が提出した甲第3号証並びに甲第2号証及び甲4号証ないし甲第11号証を勘案しても当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由3-3によっては、本件特許発明3に係る特許を無効とすることはできない。 第5 むすび 本件特許発明1は、請求人が主張するように甲第2号証に記載された発明に該当するものではなく、また、本件特許発明3は、請求人が主張するように甲第3号証に記載された発明に該当するものではない。 また、本件特許発明1ないし3は、いずれも請求人が主張するように、甲第2号証記載の発明に、甲第3号証ないし甲第11号証記載の発明及び周知技術を適用して当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲第3号証記載の発明に、甲第2号証及び甲第4号証ないし甲第11号証記載の発明及び周知技術を適用して当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、本件特許発明1ないし3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定に違反してされたものではないから、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、これらの特許を無効とすることができない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-12-24 |
結審通知日 | 2015-01-07 |
審決日 | 2015-01-20 |
出願番号 | 特願平5-74193 |
審決分類 |
P
1
113・
113-
Y
(G01N)
P 1 113・ 121- Y (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 俊光、森 竜介、横井 亜矢子 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
三崎 仁 右▲高▼ 孝幸 |
登録日 | 2001-11-09 |
登録番号 | 特許第3249628号(P3249628) |
発明の名称 | 青果物の内部品質検査用の光透過検出装置 |
代理人 | 白石 光男 |
代理人 | 楠本 高義 |
代理人 | 安國 忠彦 |
代理人 | 永島 孝明 |
代理人 | 若山 俊輔 |
代理人 | 浅野 哲平 |
代理人 | 久米川 正光 |
代理人 | 竹本 松司 |
代理人 | 磯田 志郎 |
代理人 | 一宮 誠 |