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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1298120
審判番号 不服2014-3217  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-20 
確定日 2015-03-05 
事件の表示 特願2010- 37406「データ伝送装置およびそれを備えた空気調和機」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 8日出願公開,特開2011-176436〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年2月23日の出願であって,平成25年7月18日付けの拒絶理由通知に対して,同年9月11日に手続補正がされ,同年11月22日付けで拒絶査定がされ,これに対して平成26年2月20日に審判請求がされるとともに,同日に手続補正がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年2月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって,特許請求の範囲の請求項1については,本件補正の前後で以下のとおりである。
・補正前
「【請求項1】
1または複数の他のデータ伝送装置と伝送路により接続され,衝突勝ち残りによる通信プロトコルとしてCSMA/CD方式を用いた通信を行うデータ伝送装置において,
信号衝突の際の優先順位を識別する優先情報を通信フレームの先頭に配置した通信情報を,パルス信号に変調して送信する送信手段と,
前記伝送路から伝送されたパルス信号を受信する受信手段と,
前記優先情報のパルス信号により,前記伝送路を伝送するパルス信号と,前記送信手段から送信されるパルス信号との衝突を検出し,優先順位に応じて勝ち残り制御を行う衝突検出手段と,
前記送信手段の変調速度を切り替える通信速度切替手段と
を備え,
前記通信速度切替手段は,
前記優先情報を第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,
前記優先情報以外の情報を,前記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させ,
前記送信手段は,
前記衝突検出手段が前記衝突を検出した場合であって,
当該送信手段が送信した前記パルス信号に含まれる前記優先順位が,前記伝送路を伝送するパルス信号に含まれる前記優先順位と比べて低い場合,当該送信手段からの前記パルス信号の送信を中止し,
当該送信手段が送信した前記パルス信号に含まれる前記優先順位が,前記伝送路を伝送するパルス信号に含まれる前記優先順位と比べて高い場合,当該送信手段からの前記優先情報以外の情報の前記パルス信号の送信を前記第2の変調速度で継続し,
前記受信手段は,
前記送信手段から前記優先情報のパルス信号が送信されている場合,前記第1の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報のパルス信号を受信し,
前記送信手段から前記優先情報以外の情報の前記パルス信号の送信が継続している場合,前記第2の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報以外の情報の前記パルス信号を受信する
ことを特徴とするデータ伝送装置。」
・補正後
「【請求項1】
複数の空調ユニットのそれぞれが伝送路により相互に接続され,前記複数の空調ユニットのそれぞれに重複しないアドレスが定められているものであり,前記複数の空調ユニットの全部または少なくとも1つに設けられ,1または複数の他のデータ伝送装置と前記伝送路により接続され,前記伝送路での信号の衝突時に調停を行う衝突勝ち残りによる通信プロトコルとしてCSMA/CD方式を用いた通信を行うデータ伝送装置において,
信号衝突の際の優先順位を識別する優先情報を通信フレームの先頭に配置した通信情報を,パルス信号に変調して送信する送信手段と,
前記伝送路から伝送されたパルス信号を受信する受信手段と,
前記優先情報のパルス信号により,前記伝送路を伝送するパルス信号と,前記送信手段から送信されるパルス信号との衝突を検出し,優先順位に応じて勝ち残り制御を行う衝突検出手段と,
前記送信手段の変調速度を切り替える通信速度切替手段と
を備え,
前記通信速度切替手段は,
前記優先情報を第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,
前記優先情報以外の情報を,前記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させ,
前記送信手段は,
前記衝突検出手段が前記衝突を検出した場合であって,
当該送信手段が送信した前記パルス信号に含まれる前記優先順位が,前記伝送路を伝送するパルス信号に含まれる前記優先順位と比べて低い場合,当該送信手段からの前記パルス信号の送信を中止し,
当該送信手段が送信した前記パルス信号に含まれる前記優先順位が,前記伝送路を伝送するパルス信号に含まれる前記優先順位と比べて高い場合,当該送信手段からの前記優先情報以外の情報の前記パルス信号の送信を前記第2の変調速度で継続し,
前記受信手段は,
前記送信手段から前記優先情報のパルス信号が送信されている場合,前記第1の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報のパルス信号を受信し,
前記送信手段から前記優先情報以外の情報の前記パルス信号の送信が継続している場合,前記第2の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報以外の情報の前記パルス信号を受信する
ことを特徴とするデータ伝送装置。」

2 補正事項の整理
本件補正による特許請求の範囲の請求項1についての補正を整理すると次のとおりとなる。(当審注.下線は補正箇所を示し,当審で付加したもの。)
・補正事項
補正前の請求項1の「1または複数の他のデータ伝送装置と伝送路により接続され,衝突勝ち残りによる通信プロトコルとしてCSMA/CD方式を用いた通信を行うデータ伝送装置において,」を,「複数の空調ユニットのそれぞれが伝送路により相互に接続され,前記複数の空調ユニットのそれぞれに重複しないアドレスが定められているものであり,前記複数の空調ユニットの全部または少なくとも1つに設けられ,1または複数の他のデータ伝送装置と前記伝送路により接続され,前記伝送路での信号の衝突時に調停を行う衝突勝ち残りによる通信プロトコルとしてCSMA/CD方式を用いた通信を行うデータ伝送装置において,」と補正すること。

3 補正の適否について
本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0012】ないし【0022】の記載から,補正事項は本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるので,補正事項は,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そして,補正事項1は,補正前の請求項1における「データ伝送装置」を技術的に限定するもので,補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定的に減縮するから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,また,同法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。

4 独立特許要件についての検討
(1)検討の前提
上記3で検討したとおり,本件補正による請求項1についての補正事項は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから,本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かにつき,更に検討する。

(2)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は,次のとおりのものと認める。(再掲)
「【請求項1】
複数の空調ユニットのそれぞれが伝送路により相互に接続され,前記複数の空調ユニットのそれぞれに重複しないアドレスが定められているものであり,前記複数の空調ユニットの全部または少なくとも1つに設けられ,1または複数の他のデータ伝送装置と前記伝送路により接続され,前記伝送路での信号の衝突時に調停を行う衝突勝ち残りによる通信プロトコルとしてCSMA/CD方式を用いた通信を行うデータ伝送装置において,
信号衝突の際の優先順位を識別する優先情報を通信フレームの先頭に配置した通信情報を,パルス信号に変調して送信する送信手段と,
前記伝送路から伝送されたパルス信号を受信する受信手段と,
前記優先情報のパルス信号により,前記伝送路を伝送するパルス信号と,前記送信手段から送信されるパルス信号との衝突を検出し,優先順位に応じて勝ち残り制御を行う衝突検出手段と,
前記送信手段の変調速度を切り替える通信速度切替手段と
を備え,
前記通信速度切替手段は,
前記優先情報を第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,
前記優先情報以外の情報を,前記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させ,
前記送信手段は,
前記衝突検出手段が前記衝突を検出した場合であって,
当該送信手段が送信した前記パルス信号に含まれる前記優先順位が,前記伝送路を伝送するパルス信号に含まれる前記優先順位と比べて低い場合,当該送信手段からの前記パルス信号の送信を中止し,
当該送信手段が送信した前記パルス信号に含まれる前記優先順位が,前記伝送路を伝送するパルス信号に含まれる前記優先順位と比べて高い場合,当該送信手段からの前記優先情報以外の情報の前記パルス信号の送信を前記第2の変調速度で継続し,
前記受信手段は,
前記送信手段から前記優先情報のパルス信号が送信されている場合,前記第1の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報のパルス信号を受信し,
前記送信手段から前記優先情報以外の情報の前記パルス信号の送信が継続している場合,前記第2の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報以外の情報の前記パルス信号を受信する
ことを特徴とするデータ伝送装置。」

(3)引用文献の記載と引用発明
ア 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特表2002-542667号公報(以下「引用文献1」という。)には,図1,図4,並びに図5A及び5Bとともに,次の記載がある。(当審注.下線は当審において付加した。以下同じ。)
(ア)「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項13】バスによって相互に接続された複数のステーション間でデータメッセージを伝送する装置であって,前記メッセージの各々が,データメッセージの内容および優先度の情報を表わすフレーム部と,伝送されるべきデータを表わすデータ部とを備え,その装置は,
その前記フレーム部が第1のデータ伝送速度で伝送されると共に,前記データ部が前記第1のデータ伝送速度以上の第2のデータ伝送速度で伝送されるように,データメッセージをバス上に送信する手段と,
前記第1および/または第2のデータ伝送速度を,前記バス上での伝送から判定される信号品質に応じて調節する手段と,
を備えることを特徴とする装置。」
(イ)「【0001】
本発明は,バスによって相互に接続された複数のステーションを含むデータネットワークにおいてデータメッセージを伝送する方法および装置に関する。また,本発明は,特に,電力線によって相互に接続されたコンピュータの間のデータ伝送方法および装置に関するものであるが,これに限定はされない。
【0002】
少なくも2つのコンピュータと,データメッセージの伝送のためにこれらのコンピュータを相互に接続するバスと,を備えた動力車輌用データ処理機構を動作させる方法が,米国特許第5,001,642号および第5,524,213号に開示されている。
【0003】
これらの特許に開示された方法では,ISO(国際標準化機構)仕様第11898号に詳細が開示されているCAN(controller area network:コントローラエリアネットワーク)というプロトコルに基づいて動作する。
【0004】
図1に示したものは,既知タイプのデータメッセージである。このデータメッセージは,データネットワークに対してフレームの開始を通知するフレーム開始部(1)と,ネットワークの2以上のノードがデータバスの使用に関して競合した際にメッセージの優先度を判断するための調停領域(2)と,を備えている。
【0005】
第1のバージョンでは,調停領域(2)は,11ビットの識別子(3)と,リモート伝送要求(RTR:remote transmission request)ビット(4)と,を含んでいる;・・・
【0006】
これに対し,第2のバージョンでは,識別子(3)は,代替リモート要求(SRR:substitute remote request)ビットと,識別子拡張(IDE:identifier extension)ビットと,を含む29ビットの識別子であっても良い。・・・
【0007】
IDEビット(6)は,29ビット識別子(これは劣性)と11ビット識別子(これは優性)とを区別する。
【0008】
データメッセージは,また,上述の第1のバージョンでは,何れも優性に設定された識別子拡張ビットおよび予備ビット(r0)と,メッセージのデータ領域(8)のバイト数を表わす4ビットのデータ長コード(DLC:data length code)部と,を含む制御領域(7)を有する。
【0009】
第2のバージョンでは,制御領域(7)は,また,優性に設定された予備2ビット(r0およびr1)と,データ領域(8)のバイト数を表わす4ビットのデータ長コードと,を含む。データ領域(8)は0?8バイトのデータを含む。
【0010】
データ領域(8)に続くCRC(cyclic redundancy check:循環的冗長度チェック)領域(9)は,メッセージの有意味部分に対して計算された15ビットのチェックサムを含み,エラー検出に使用される。このCRC領域(9)に続いて,アクノリッジ(acknowledgement)スロット(10)が存在する。
【0011】
データメッセージを正しく受信できたコントローラは,アクノリッジビット時間内にアクノリッジビットを送信し,他方で,このメッセージを送信した装置は,アクノリッジビットが存在することをチェックする。」
(ウ)「【0051】
図4を参照すれば,本発明の実施に係る方法で使用されるデータフレームが,フレーム開始部201と,識別子203を含む調停領域202と,RTRビット204と,代替リモート要求ビット205と,識別子拡張ビット206と,を備える。
【0052】
これらの部分は,図1に示した従来技術によるデータフレームにおける対応部分と同様に機能するが,ただし,調停領203(当審注.「調停領域203」の誤記と認める。)が,送信および受信のノードの識別に関する情報と,データ領域208のサイズと,データ領域208に含まれるデータの伝送速度と,を含んでいても良い点で異なる。
【0053】
メッセージは,データ長コード(DLC:data length code)を含む制御領域207を更に有する;・・・
【0054】
データ領域208にあるデータの伝送速度F2が,調停領域203および制御領域207にあるデータの伝送速度の整数倍である場合には,この倍数を,制御領域207の未使用のr0ビットおよびr1ビットにより設定しても良い。
【0055】
F1ビット速度は,典型的には10Kbit?1Mbitであり,F2ビット速度は,典型的には10Kbit?8Mbitである;ただし,これらのビット速度は,個々のネットワークの構成に応じて任意に変更して良い。
・・・
【0061】
これにより,伝送のビット速度が,信頼性および速度に対して適応的に最適化される。
【0062】
上述の実施例における調停領域202には,送信ノードと受信宛先ノードを識別するために符号化されたいくつかのビットが含まれている。」
(エ)「【0075】
データ伝送速度をF1とF2との間で切り換える方法のフローチャートである図5Aおよび5Bを参照すれば,図4に示したように,フレームヘッダおよびフレームフッタはF1ビット速度で伝送される。
【0076】
フレームの転送の前に,関係する送信装置の送信クロックがF1ビット速度の現在値を記憶した不揮発メモリ内のレジスタをチェックし,送信クロックは,全てのフレームビットに対してこの値に設定される。
【0077】
特に,送信手続きはステップ501で開始される;ステップ502でフレーム開始部201が開始した場合には,ステップ503でカウンタAが始動し,そうでない場合には,送信装置はステップ502に戻る。
【0078】
カウンタAが始動した後,ステップ504で,カウンタAが制御領域208の最終ビットに到達したかどうかが判定される。
【0079】
カウンタが制御領域208の最終ビットの送信完了を検出した場合には,送信クロックがF2ビット速度の現在値を記憶した不揮発メモリ内のレジスタをチェックし,次いで,ステップ505で送信クロックがF2に設定される。
【0080】
ステップ506でカウンタBが始動し,ステップ507でカウンタがCRCの最終ビットの送信完了を検出した場合には,ステップ508で送信クロックが,フレームのその他の部分用にF1にリセットされる。」
イ 引用発明
(ア)上記ア(ア)によれば,引用文献1には,「バスによって相互に接続された複数のステーション間でデータメッセージを伝送する装置」に関する発明が記載されており,また,技術常識に照らせば,「データメッセージを伝送する装置」が「バスによって相互に接続された複数のステーション」それぞれに設けられ,他の「データメッセージを伝送する装置」と「バス」により接続されていることは明らかであるから,引用文献1には,複数のステーションがバスによって相互に接続され,上記複数のステーションそれぞれに設けられ,他のデータメッセージを伝送する装置と上記バスにより接続された,データメッセージを伝送する装置が記載されていると認められる。
そして,上記ア(イ)によれば,引用文献1には,上記データメッセージを伝送する装置は,「CAN(controller area network:コントローラエリアネットワーク)」プロトコルに基づいて動作し,上記データメッセージは,「ネットワークの2以上のノードがデータバスの使用に関して競合した際にメッセージの優先度を判断するための調停領域(2)」を備えることが記載されている。
そうすると,引用文献1には,2以上のノード,すなわち複数のステーションがバスの使用に関して競合した際に調停を行う通信プロトコルとして,データメッセージにメッセージの優先度を判断するための調停領域を備えるCANプロトコルに基づいて,データメッセージを伝送するステーションが記載されていることも認められる。
以上から,引用文献1には,複数のステーションがバスによって相互に接続され,上記複数のステーションそれぞれに設けられ,他のデータメッセージを伝送する装置と上記バスにより接続され,複数のステーションがバスの使用に関して競合した際に調停を行う通信プロトコルとして,データメッセージにメッセージの優先度を判断するための調停領域を備えるCANプロトコルに基づいて,データメッセージを伝送する装置が記載されているということができる。
(イ)上記ア(イ)及び図1より,引用文献1には,複数のステーションがバスの使用に関して競合した際にメッセージの優先度を判断するための調停領域を,データメッセージのフレームの先頭に配置することが記載されていると認められる。
また,上記ア(ア)及び(イ)によれば,引用文献1には,データメッセージを伝送する装置がデータメッセージをバス上に送信する手段を備えること,及びデータメッセージが有する各領域がビットデータを含むことが記載されており,技術常識に照らせば,上記データメッセージをバス上に送信する手段が,上記データメッセージをパルス信号に変調して送信することは明らかである。
そうすると,引用文献1には,データメッセージを伝送する装置が,複数のステーションがバスの使用に関して競合した際にメッセージの優先度を判断するための調停領域をフレームの先頭に配置したデータメッセージを,パルス信号に変調して送信する,データメッセージをバス上に送信する手段を備えることが記載されているということができる。
そして,技術常識に照らせば,引用文献1記載のデータメッセージを伝送する装置が,他のデータメッセージを伝送する装置から送信されたパルス信号を,上記バスから受信する手段を備えることは,引用文献1の記載から明らかである。
(ウ)上記ア(イ)より,引用文献1には,複数のステーションがデータバスの使用に関して競合することを検出し,検出した際に,データメッセージの調停領域により,メッセージの優先度を判断することが記載されていると認められる。
そして,上記(イ)のとおり,引用文献1の記載から,データメッセージを伝送する装置が,上記データメッセージをバス上に送信する手段により,調停領域を含むデータメッセージを,パルス信号に変調してバス上に送信することは明らかである。
そうすると,引用文献1には,データメッセージを伝送する装置が,バス上に送信されたパルス信号と,データメッセージをバス上に送信する手段から送信されるパルス信号との競合を検出し,上記データメッセージの調停領域のパルス信号により,メッセージの優先度を判断する手段を備えることが記載されているということができる。
(エ)上記ア(ア),(ウ)及び(エ)より,引用文献1には,データメッセージをバス上に送信する手段において,データメッセージの調停領域及び制御領域にあるデータが第1のデータ伝送速度で伝送されるとともに,データメッセージのデータ領域及びCRC領域にあるデータが,上記第1のデータ伝送速度より速い第2のデータ伝送速度で伝送されるように,データメッセージの伝送速度を切り換えることが記載されていると認められる。
そして,上記(イ)のとおり,引用文献1の記載から,データメッセージを伝送する装置が,上記データメッセージをバス上に送信する手段により,調停領域を含むデータメッセージを,パルス信号に変調してバス上に送信することは明らかである。
また,データメッセージをパルス信号に変調する際,その変調速度がデータメッセージの伝送速度に応じて決まることは,当該技術分野では技術常識であるから,当該技術常識に照らせば,データメッセージの伝送速度の切り換えの際,データメッセージをパルス信号に変調する変調速度を切り換えることは,引用文献1の記載から明らかである。
そうすると,引用文献1には,データメッセージを伝送する装置が,データメッセージをバス上に送信する手段の変調速度を切り換えるデータメッセージの伝送速度切り換え手段を備えることが記載されているということができる。
そして,引用文献1には,上記データメッセージの伝送速度切り換え手段が,データメッセージの調停領域及び制御領域にあるデータを第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,データメッセージのデータ領域及びCRC領域にあるデータを上記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させるものであることも記載されているということができる。
(オ)上記(イ)のとおり,引用文献1記載のデータメッセージを伝送する装置が,バス上に送信されたパルス信号を受信する手段を備えることは,引用文献1の記載から明らかである。
そして,上記(ウ)のとおり,引用文献1記載のデータメッセージを伝送する装置は,データメッセージをバス上に送信する手段の変調速度を切り替えるデータメッセージの伝送速度切り換え手段により,データメッセージの調停領域及び制御領域にあるデータを第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,データメッセージのデータ領域及びCRC領域にあるデータを上記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させるものと認められる。
そうすると,引用文献1記載のデータメッセージを伝送する装置において,上記バス上に送信されたパルス信号を受信する手段が,上記データメッセージをバス上に送信する手段からデータメッセージの調停領域及び制御領域が送信されている場合,上記第1の変調速度に応じたタイミングで上記調停領域及び制御領域にあるデータのパルス信号を受信し,上記データメッセージをバス上に送信する手段からデータメッセージのデータ領域及びCRC領域にあるデータが送信されている場合,上記第2の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報以外の情報の前記パルス信号を受信することは,技術常識に照らせば,引用文献1の記載から明らかである。
(カ)上記(ア)ないし(オ)より,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数のステーションがバスによって相互に接続され,上記複数のステーションそれぞれに設けられ,他のデータメッセージを伝送する装置と上記バスにより接続され,複数のステーションが上記バスの使用に関して競合した際に調停を行う通信プロトコルとして,データメッセージにメッセージの優先度を判断するための調停領域を備えるCANプロトコルに基づいて,データメッセージを伝送する装置において,
複数のステーションがバスの使用に関して競合した際にメッセージの優先度を判断するための調停領域をフレームの先頭に配置したデータメッセージを,パルス信号に変調して送信する,データメッセージをバス上に送信する手段と,
送信されたパルス信号を上記バスから受信する手段と,
上記バス上に送信されたパルス信号と,上記データメッセージをバス上に送信する手段から送信されるパルス信号との競合を検出し,上記データメッセージの調停領域のパルス信号により,メッセージの優先度を判断する手段と,
上記データメッセージをバス上に送信する手段の変調速度を切り換えるデータメッセージの伝送速度切り換え手段と,
上記データメッセージの伝送速度切り換え手段は,
データメッセージの調停領域及び制御領域にあるデータを第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,
データメッセージのデータ領域及びCRC領域にあるデータを上記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させ,
上記送信されたパルス信号を上記バスから受信する手段は,
上記データメッセージをバス上に送信する手段からデータメッセージの調停領域及び制御領域が送信されている場合,上記第1の変調速度に応じたタイミングで上記調停領域及び制御領域にあるデータのパルス信号を受信し,
上記データメッセージをバス上に送信する手段からデータメッセージのデータ領域及びCRC領域にあるデータが送信されている場合,上記第2の変調速度に応じた検出タイミングで上記データ領域及びCRC領域にあるデータのパルス信号を受信する
データメッセージを伝送する装置。」

(4)周知例の記載と周知技術
ア 周知例1
本願出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平6-319176号公報(以下「周知例1」という。)には,図1及び図6とともに,以下の記載がある。
・「【0017】マルチ型空調機は,図6に示すように,室外機1を有しており,室外機1には,通信ネットワーク5を介して複数台の室内機2a?2nが接続されている。そして,室外機1は,制御装置3を有しており,室内機2a?2nはそれぞれ制御装置4a?4nを有している。
【0018】図1は,本発明に係るマルチ型空調機の室内機2a?2nの制御装置4a?4nの構成を示すブロック図である。
【0019】制御装置4a?4nは,図1に示すように,通信ネットワーク5に接続されたCSMA/CD(衝突検知による勝ち残り)方式の通信手段としての通信処理部11と,それぞれの制御装置3,4a,4bに対して固有のアドレスを設定するアドレススイッチ12とを備えている。・・・」
イ 周知例2
本願出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2001-192132号公報(以下「周知例2」という。)には,図1ないし3とともに,以下の記載がある。
・「【0032】
【発明の実施の形態】本発明の給紙装置,排紙装置,給紙システム,排紙システム,給紙制御方法,排紙制御方法および記憶媒体の実施の形態について説明する。・・・図1は実施の形態における記録装置の搬送路を示す図である。
【0033】図において,101はプリンタ本体である。・・・120,121,122は大容量給紙デッキ(給紙装置)であり,それぞれ給紙トレイ123,124,125を有する。103は1段のフェイスアップビン111および7段のフェイスダウンビン112?118を有する排紙装置(ソータ)である。
・・・
【0037】204,205,206,207は,それぞれ給紙装置120,121,122および排紙装置(ソータ)103内のコントローラに設けられたマイクロコンピュータである。これらのマイクロコンピュータ202,204,205,206,207は,RAM,ROMの他,コントローラエリアネットワーク(以下,CANという)コントローラを内蔵しており,各CANドライバ210を介して差動のシリアルバス(以下,CANバスという)に接続される。
【0038】マイクロコンピュータ204,205,206,207は,CANドライバ210およびCANバスを介して双方向のシリアル通信を行い,情報の授受を行う。・・・」
・「【0044】図3はCANバスを介して行われるシリアル通信の通信データを示す図である。1フレームのデータは,通信のアドレス制御および送受信のぶつかり制御を行うアビトレーションフィールドと,データ長を制御するコントロールフィールドと,データフィールドと,エラー制御を行うCRCおよびACKフィールドとから構成される。・・・
【0045】このアビトレーションフィールドに設定されるアドレスは,システム毎に任意に設定可能であるが,本実施形態では,アビトレーションフィールド中の6ビットをアドレスフィールドとして設定することとした。・・・本実施形態では,アドレスフィールドを2つに分類し,上位2ビット(ビット5,ビット4)を各給紙装置および排紙装置が一斉に受信できるための一斉受信制御(ブロードキャストアドレス)ビットとし,下位4ビット(ビット3?ビット0)を特定の給紙装置あるいは排紙装置が受信できるための装置固有アドレスビットとした。」
ウ 周知例3
本願出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2004-48304号公報(以下「周知例3」という。)には,図1とともに,以下の記載がある。
・「【0012】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明による船舶の情報通信装置の一例を示す概略構成図である。
図中,1は船体であって,その船尾に例えば2機の船外機2A,2Bが取付けられ,これら船外機2A,2Bには内蔵するエンジン3A,3Bを電子制御する電子コントロールユニット機能を有するエンジンノード4A,4Bが設けられている。また,船体1の船尾の船底には船速を検出する船速センサ5が配設され,この船速センサ5で検出した船速データを送信する船速ノード6が設けられている。
【0013】
一方,船体1の船首側には,各船外機2A,2Bに対して,スロットル開度及びシフト切換えを指示するリモコンレバー7が配設され,このリモコンレバー7の前面側に操舵装置8,エンジン回転速度,方位等を表示する各種表示器やキースイッチKS等を組込んだ表示パネル9等が配設され,さらに船首側の船底部に例えば釣りに使用する魚群探知機10が配設されている。リモコンレバー7にはスロットル開度指令データ及びシフト指令データを送信するリモコンノード11が設けられ,操舵装置8にも操舵角データを送信する操舵ノード12が設けられ,表示パネル9にも表示データを受信する表示ノード13が設けられ,魚群探知機10にも魚群探知データを送信する魚群探知ノード14が設けられている。
【0014】
そして,エンジンノード4A,4B,船速ノード6,リモコンノード11,操舵ノード12,表示ノード13及び魚群探知ノード14がローカルエリアネットワークの一種であるコントローラエリアネットワーク(CAN:Controller Area Network)を構成する伝送路としてのバス15に接続されている。このバス15には各ノード4A,4B,6,11?14の物理アドレスを管理するネットワーク管理手段としてのネットワーク管理ノード16が接続されている。・・・」
エ 周知例4
本願出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2001-119416号公報(以下「周知例4」という。)には,図8及び図11とともに,以下の記載がある。
・「【0002】
【従来の技術】CAN通信は,同じバスラインに接続された複数の装置間で,データ送信時に競合(コンテンション)が生じた場合でも,データが破壊されることなく,1の装置のみがデータを送信し,他の装置は次の送信機会を待つように制御するシリアル通信のプロトコルであり,例えば,自動車電装の分野におけるエンジン制御装置,ブレーキ制御装置,各種検知器の接続に使用することで,分散している各装置のリアルタイム制御を,効率的に,かつ高い信頼性で実現することができる。
【0003】用途は自動車などの乗り物に限定されず,工場内の制御システムやビル管理,玩具,ゲーム機などの産業機械分野にも使用可能である。
【0004】以下,図8?図11を用いてCAN通信の概要について説明する。・・・
・・・
【0013】ここで図11を用いて,アービトレーションフィールドについて説明するとともに,CAN通信の基本動作について説明する。
【0014】アービトレーションフィールドは,フレームの始まりを示すSOF(スタートオブフレーム)ビットと,11ビットあるいは29ビットのアイデンティファイアと,データの送信を要求するRTR(リモート送信要求)ビットとを有して構成されている。なお,CAN通信においてはデータフィールドの長さは最大でも8バイト(64ビット)と短い。
【0015】図11においては,2つのノード(第1ノードおよび第2ノード)から出力されるデータの一例を図11(a),(b)として示し,バスレベルの状態を図11(c)として示している。・・・
【0016】図11に示すように第1および第2ノードから同時にデータが出力された場合,図10を用いて説明したように,どちらかがドミナントであるとバスレベルはドミナントとなり,両方がリセッシブであると,バスレベルはリセッシブとなる。
【0017】そして,図11においては,第1および第2ノードとも10番の先頭ビットから4番のビットまでは同じデータであり,バスレベルも同様のデータとなるが,3番のビットでは,第1ノードがドミナントであり第2ノードはリセッシブであるのでバスレベルはドミナントとなる。
【0018】この状態になった段階で,第2ノードの通信制御装置は,バスレベルの状態と自らの出力データとが異なっていることを知得し,自分が第1のノードとの競合に負けたと判断して送信を一時停止し,次の送信機会を待つように動作する。この結果,第1ノードだけが送信を行うことができ,バスレベルは第1ノードの出力データと同じとなる。
【0019】このように,CAN通信においては,複数のノードから同時に送信が行われた場合に,各ノードの送信データに含まれるアービトレーションフィールドの内容に基づいて調停を行い,優先的に送信を行うノードを決める機能を有しており,調停に負けたノードは送信を一時停止するので,データが破壊されるということがない。」
オ 周知例5
原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,田中 基晴,「車内高速LAN用高信頼物理層の開発」,古河電工時報 第88号,古河電気工業株式会社,1991年6月28日,43-50頁(以下「周知例5」という。)には,以下の記載がある。
・「概要 最近,パワートレイン,ブレーキ,サスペンション等のリアルタイムコントロールでは,性能や安全性の向上の要求から,協調制御のため相互間通信が行われるようになってきている。これらのリアルタイムコントロール信号を通信するために,CAN(controller area network)のような高速のCSMA/CD+NDA(Non Destructive Arbitration)方式やトークンパッシング方式のプロトコルが提案されている。・・・」(43頁「概要」)
・「3.伝送速度と距離に関する限界値の考察
CSMA/CD+NDA方式のバス上での調停方式は,バス波形のパッシブ/ドミナントの関係を利用し,プライオリティ・フィールド中のbitにおいて,自ノードがパッシブを出力しているときにバス上の波形がドミナントになっていれば調停に破れたものとして送信をやめ,このフィールドのbitすべてが自ノードが送出したものと同一であれば,競合がないか,あったとしても調停に勝ったものとしてそのまま送信し続ける方式である。・・・
CSMA/CD+NDA方式はプライオリティ・フィールドに送出された信号がすべてのノードに同時に認識できることが前提になって成り立つ。したがって,伝送速度が高速になればなるほど,また伝送距離が長いほど伝送媒体の遅延の影響を受けやすいため,伝送速度と伝送距離の影響を考慮する必要がある。・・・」(44頁右欄「3.伝送速度と距離に関する限界値の考察」)
カ 周知技術
(ア)複数の空調ユニットのそれぞれが伝送路により相互に接続され,通信プロトコルとしてCSMA/CD方式を用いた通信を行うことは,周知例1にみられるように,本願出願時,周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
(イ)同じ伝送路に接続された複数の装置間で,CANプロトコルによる通信を行う際,上記複数の装置それぞれに重複しないアドレスを定めることは,周知例2及び3にみられるように,本願出願時,周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
(ウ)同じ伝送路に接続された複数の装置間での通信で用いられるCANプロトコルが,伝送路での信号の衝突時に調停を行う衝突勝ち残りによる通信プロトコルで,CSMA/CD+NDA(Non Destructive Arbitration)方式のプロトコルであることは,周知例5にみられるように,本願出願時,当業者には周知の事項である。
また,CANプロトコルにおいて,優先度を判断するための調停領域の信号により,伝送路での信号の衝突を検出し,優先順位に応じて勝ち残り制御を行うことは,周知例4及び5にみられるように,本願出願時,当該技術分野では周知の技術(以下「周知技術3」という。)である。
(エ)CANのような高速のCSMA/CD+NDA方式では,調停を行うプライオリティ・フィールドに送出された信号がすべてのノードに同時に認識できることが前提になって成り立つため,伝送速度が高速になればなるほど,伝送媒体の遅延の影響を受けやすいことは,周知例5にみられるように,本願出願時,当該技術分野では技術常識である。

(5)本願補正発明と引用発明との対比
ア 引用発明における「バス」,「それぞれに設けられ」,「他の」,「データメッセージを伝送する装置」,及び「上記バスの使用に関して競合した際」は,それぞれ,本願補正発明の「伝送路」,「全部または少なくとも1つ」,「1または複数の他の」,「データ伝送装置」,及び「前記伝送路での信号の衝突時」に相当するといえる。
そして,本願補正発明の「空調ユニット」と引用発明の「ステーション」とは,後述する相違点に係る構成を除き,「ユニット」である点で共通するといえる。
また,本願補正発明の「衝突勝ち残りによる通信プロトコル」である「CSMA/CD方式」と,引用発明の「データメッセージにメッセージの優先度を判断するための調停領域を備えるCANプロトコル」とは,後述する相違点に係る構成を除き,「伝送路での信号の衝突時に調停を行う」「通信プロトコル」である点で共通するといえる。
そうすると,本願補正発明と引用発明とは,後述する相違点に係る構成を除き,複数のユニットのそれぞれが伝送路により相互に接続され,上記複数のユニットの全部または少なくとも1つに設けられ,1または複数の他のデータ伝送装置と上記伝送路により接続され,上記伝送路での信号の衝突時に調停を行う通信プロトコルを用いた通信を行うデータ伝送装置,である点で共通するといえる。
イ 引用発明における「複数のステーションがバスの使用に関して競合した際」,「メッセージの優先度」,「判断する」,「調停領域」,「フレーム」,「データメッセージ」,及び「データメッセージをバス上に送信する手段」は,それぞれ,本願補正発明の「信号衝突の際」,「優先順位」,「識別する」,「優先情報」,「通信フレーム」,「通信情報」,及び「送信手段」に相当するといえる。
そうすると,引用発明は,本願補正発明の「信号衝突の際の優先順位を識別する優先情報を通信フレームの先頭に配置した通信情報を,パルス信号に変調して送信する送信手段」に相当する構成を備えるということができる。
ウ 引用発明における「送信」は,本願補正発明の「伝送」に相当するといえるから,引用発明における「送信されたパルス信号を上記バスから受信する手段」は,本願補正発明の「前記伝送路から伝送されたパルス信号を受信する受信手段」に相当するということができる。
エ 引用発明における「上記バス上に送信されたパルス信号」及び「上記データメッセージをバス上に送信する手段から送信されるパルス信号」は,それぞれ,本願補正発明の「前記伝送路を伝送するパルス信号」及び「前記送信手段から送信されるパルス信号」に相当するといえる。
そして,本願補正発明の「前記優先情報のパルス信号により,」「優先順位に応じて勝ち残り制御を行う」ことと,引用発明の「上記データメッセージの調停領域のパルス信号により,メッセージの優先度を判断する」こととは,後述する相違点に係る構成を除き,優先情報のパルス信号により,優先順位に応じて制御を行うものである点で共通するといえる。
そうすると,本願補正発明と引用発明とは,後述する相違点に係る構成を除き,伝送路を伝送するパルス信号と,送信手段から送信されるパルス信号との衝突を検出し,優先情報のパルス信号により,優先順位に応じて制御を行う手段を備える点で共通するということができる。
オ 引用発明における「上記データメッセージをバス上に送信する手段の変調速度を切り換える」及び「データメッセージの伝送速度切り換え手段」は,それぞれ,本願補正発明の「前記送信手段の変調速度を切り替える」及び「通信速度切替手段」に相当するといえる。
そして,本願補正発明の「前記優先情報を第1の変調速度によりパルス信号に変調させ」ることと,引用発明の「データメッセージの調停領域及び制御領域にあるデータを第1の変調速度によりパルス信号に変調させ」ることとは,後述する相違点に係る構成を除き,優先情報を第1の変調速度によりパルス信号に変調させる点で共通するといえる。
また,本願補正発明の「前記優先情報以外の情報を,前記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させ」ることと,引用発明の「データメッセージのデータ領域及びCRC領域にあるデータを上記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させ」ることとは,後述する相違点に係る構成を除き,優先情報以外の情報の少なくとも一部を,第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させる点で共通するといえる。
そうすると,本願補正発明と引用発明とは,後述する相違点に係る構成を除き,送信手段の変調速度を切り替える通信速度切替手段を備え,上記通信速度切替手段は,優先情報を第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,上記優先情報以外の情報の少なくとも一部を,上記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させる点で共通するということができる。
カ 本願補正発明の「前記送信手段から前記優先情報のパルス信号が送信されている場合,前記第1の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報のパルス信号を受信」することと,引用発明の「上記データメッセージをバス上に送信する手段からデータメッセージの調停領域及び制御領域が送信されている場合,上記第1の変調速度に応じたタイミングで上記調停領域及び制御領域にあるデータのパルス信号を受信」することとは,後述する相違点に係る構成を除き,送信手段から優先情報のパルス信号が送信されている場合,第1の変調速度に応じた検出タイミングで上記優先情報のパルス信号を受信する点で共通するといえる。
また,本願補正発明の「前記送信手段から前記優先情報以外の情報の前記パルス信号の送信が継続している場合,前記第2の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報以外の情報の前記パルス信号を受信する」ことと,引用発明の「上記データメッセージをバス上に送信する手段からデータメッセージのデータ領域及びCRC領域にあるデータが送信されている場合,上記第2の変調速度に応じた検出タイミングで上記データ領域及びCRC領域にあるデータのパルス信号を受信する」こととは,後述する相違点に係る構成を除き,送信手段から優先情報以外の情報の少なくとも一部のパルス信号の送信が継続している場合,第2の変調速度に応じた検出タイミングで上記優先情報以外の情報の少なくとも一部の上記パルス信号を受信する点で共通するといえる。
そうすると,本願補正発明と引用発明とは,後述する相違点に係る構成を除き,受信手段は,送信手段から優先情報のパルス信号が送信されている場合,第1の変調速度に応じた検出タイミングで上記優先情報のパルス信号を受信し,上記送信手段から上記優先情報以外の情報の少なくとも一部のパルス信号の送信が継続している場合,第2の変調速度に応じた検出タイミングで上記優先情報以外の情報の少なくとも一部の上記パルス信号を受信する点で共通するということができる。
キ 以上から,本願補正発明と引用発明との一致点と相違点は,次のとおりである。
(ア)一致点
「複数のユニットのそれぞれが伝送路により相互に接続され,上記複数のユニットの全部または少なくとも1つに設けられ,1または複数の他のデータ伝送装置と上記伝送路により接続され,上記伝送路での信号の衝突時に調停を行う通信プロトコルを用いた通信を行うデータ伝送装置において,
信号衝突の際の優先順位を識別する優先情報を通信フレームの先頭に配置した通信情報を,パルス信号に変調して送信する送信手段と,
上記伝送路から伝送されたパルス信号を受信する受信手段と,
上記伝送路を伝送するパルス信号と,上記送信手段から送信されるパルス信号との衝突を検出し,上記優先情報のパルス信号により,優先順位に応じて制御を行う手段と,
送信手段の変調速度を切り替える通信速度切替手段と
を備え,
上記通信速度切替手段は,
上記優先情報を第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,
上記優先情報以外の情報の少なくとも一部を,上記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させ,
上記受信手段は,
上記送信手段から上記優先情報のパルス信号が送信されている場合,上記第1の変調速度に応じた検出タイミングで上記優先情報のパルス信号を受信し,
上記送信手段から上記優先情報以外の情報の少なくとも一部のパルス信号の送信が継続している場合,上記第2の変調速度に応じた検出タイミングで上記優先情報以外の情報の少なくとも一部の上記パルス信号を受信する
データ伝送装置。」
(イ)相違点
・相違点1
一致点に係る構成の「複数のユニット」について,本願補正発明は「複数の空調ユニット」で「それぞれに重複しないアドレスが定められている」と特定されているのに対し,引用発明では上記の特定はされていない点。
・相違点2
一致点に係る構成の「伝送路での信号の衝突時に調停を行う通信プロトコル」について,本願補正発明では,「伝送路での信号の衝突時に調停を行う衝突勝ち残りによる通信プロトコルとしてCSMA/CD方式を用いた」と特定されているのに対し,引用発明では,データメッセージにメッセージの優先度を判断するための調停領域を備えるCANプロトコルが用いられる点。
・相違点3
一致点に係る構成の「上記伝送路を伝送するパルス信号と,上記送信手段から送信されるパルス信号との衝突を検出し,上記優先情報のパルス信号により,優先順位に応じて制御を行う手段」について,本願補正発明における「衝突検出手段」は,「前記優先情報のパルス信号により,前記伝送路を伝送するパルス信号と,前記送信手段から送信されるパルス信号との衝突を検出し,優先順位に応じて勝ち残り制御を行う」ことが特定されているのに対し,引用発明では,「優先情報のパルス信号」により,「前記伝送路を伝送するパルス信号と,前記送信手段から送信されるパルス信号との衝突を検出」すること,及び「優先順位に応じて勝ち残り制御を行う」ことは,特定されていない点。
・相違点4
一致点に係る構成の「通信速度切替手段」について,本願補正発明では,「前記優先情報を第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,前記優先情報以外の情報を,前記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させ」るのに対し,引用発明では,データメッセージの調停領域(本願補正発明の「優先情報」に相当。)及び制御領域にあるデータを第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,データメッセージのデータ領域及びCRC領域にあるデータを上記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させており,「優先情報以外の情報を,第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させ」るとはいえない点。
・相違点5
一致点に係る構成の「送信手段」について,本願補正発明では,「前記衝突検出手段が前記衝突を検出した場合であって,当該送信手段が送信した前記パルス信号に含まれる前記優先順位が,前記伝送路を伝送するパルス信号に含まれる前記優先順位と比べて低い場合,当該送信手段からの前記パルス信号の送信を中止し,当該送信手段が送信した前記パルス信号に含まれる前記優先順位が,前記伝送路を伝送するパルス信号に含まれる前記優先順位と比べて高い場合,当該送信手段からの前記優先情報以外の情報の前記パルス信号の送信を前記第2の変調速度で継続」すると特定されているのに対し,引用発明では上記の特定はされていない点。
・相違点6
一致点に係る構成の「受信手段」について,本願補正発明では,「前記送信手段から前記優先情報のパルス信号が送信されている場合,前記第1の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報のパルス信号を受信し,前記送信手段から前記優先情報以外の情報の前記パルス信号の送信が継続している場合,前記第2の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報以外の情報の前記パルス信号を受信する」のに対し,引用発明では,データメッセージの調停領域及び制御領域が送信されている場合,第1の変調速度に応じたタイミングで上記調停領域及び制御領域にあるデータのパルス信号を受信し,データメッセージのデータ領域及びCRC領域にあるデータが送信されている場合,上記第2の変調速度に応じた検出タイミングで上記データ領域及びCRC領域にあるデータのパルス信号を受信しており,「前記第2の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報以外の情報の前記パルス信号を受信する」とはいえない点。

(5)相違点についての検討
ア 相違点1について
(ア)上記(4)カ(ア)のとおり,複数の空調ユニットのそれぞれが伝送路により相互に接続され,通信プロトコルとしてCSMA/CD方式を用いた通信を行うことは,本願出願時,周知の技術(周知技術1)であり,引用発明における「複数のステーション」を,本願補正発明のように「複数の空調ユニット」とすることは,単なる用途の限定であって,当業者が適宜なし得たものといえる。
(イ)引用文献1には,「上述の実施例における調停領域202には,送信ノードと受信宛先ノードを識別するために符号化されたいくつかのビットが含まれている。」(段落【0062】,(3)ア(エ))との記載があり,当該記載より,引用発明における「複数のステーション」それぞれに重複しないアドレスを定めるとの構成は,引用文献1に開示されていると認められるから,上記の構成が,本願補正発明と引用発明との実質的な相違点であるとはいえない。
仮にそうでないとしても,上記(4)カ(イ)のとおり,同じ伝送路に接続された複数の装置間で,CANプロトコルによる通信を行う際,上記複数の装置それぞれに重複しないアドレスを定めることは,本願出願時,周知の技術(周知技術2)であるから,引用発明における「複数のステーション」それぞれに重複しないアドレスを定めることは,引用文献1の段落【0062】の記載から,当業者が適宜なし得たものといえる。
(ウ)以上から,引用発明において,相違点1に係る構成とすることは,当業者が適宜になし得たものである。
イ 相違点2について
上記(4)カ(ウ)のとおり,同じ伝送路に接続された複数の装置間での通信で用いられるCANプロトコルが,伝送路での信号の衝突時に調停を行う衝突勝ち残りによる通信プロトコルで,CSMA/CD+NDA(Non Destructive Arbitration)方式のプロトコルであることは,本願出願時,当業者には周知の事項であるから,引用発明において,データメッセージにメッセージの優先度を判断するための調停領域を備えるCANプロトコルを用いることで,「伝送路での信号の衝突時に調停を行う衝突勝ち残りによる通信プロトコルとしてCSMA/CD方式」を用いたものと認められる。
そうすると,伝送路での信号の衝突時に調停を行う通信プロトコルに関する相違点である,本願補正発明と引用発明との相違点2は,実質的な相違点とは認められない。
仮にそうでないとしても,引用発明において,データメッセージにメッセージの優先度を判断するための調停領域を備えるCANプロトコルとして,「伝送路での信号の衝突時に調停を行う衝突勝ち残りによる通信プロトコルとしてCSMA/CD方式」を用いること(相違点2に係る構成とすること)は,上記周知の事項に接した当業者が,普通に行い得るものといえる。
以上から,相違点2は,本願補正発明と引用発明との実質的な相違点とは認められず,また,そうでないとしても,引用発明において当業者が普通に行い得るものである。
ウ 相違点3について
上記(4)カ(ウ)のとおり,CANプロトコルにおいて,優先度を判断するための調停領域の信号により,伝送路での信号の衝突を検出し,優先順位に応じて勝ち残り制御を行うことは,本願出願時,当該技術分野では周知の技術(周知技術3)である。
そうすると,引用発明において,データメッセージの調停領域(本願補正発明の「優先情報」に相当。)のパルス信号により,バス上に送信されたパルス信号(本願補正発明の「前記伝送路を伝送するパルス信号」に相当。)と,データメッセージをバス上に送信する手段から送信されるパルス信号(本願補正発明の「前記送信手段から送信されるパルス信号」に相当。)との競合(本願補正発明の「衝突」に相当。)を検出し,メッセージの優先度(本願補正発明の「優先順位」に相当。)に応じて勝ち残り制御を行う衝突検出手段を備えること(相違点3に係る構成とすること)は,当業者が普通に行い得るものである。
以上から,引用発明において,相違点3に係る構成とすることは,当業者が普通に行い得るものである。
エ 相違点4について
上記(3)イ(オ)のとおり,引用発明では,データメッセージのデータのうち,調停領域及び制御領域にあるデータを第1の変調速度によりパルス信号に変調させている。
そして,上記ウのとおり,引用発明において,データメッセージの調停領域のパルス信号により,バス上に送信されたパルス信号と,データメッセージをバス上に送信する手段から送信されるパルス信号との競合を検出し,メッセージの優先度に応じて勝ち残り制御を行うことは,当業者が普通に行い得るものであるが,その際に,上記データメッセージの調停領域にあるデータの変調速度を高速にして伝送速度を高速にするほど,伝送媒体の遅延の影響を受けやすいことは,上記(4)カ(ウ)のとおり,本願出願時,当該技術分野では技術常識である。
そうすると,引用発明において,データメッセージの調停領域のパルス信号により,バス上に送信されたパルス信号と,データメッセージをバス上に送信する手段から送信されるパルス信号との競合を検出し,メッセージの優先度に応じて勝ち残り制御を行うようにする際に,データメッセージのデータのうち,調停領域にあるデータは第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,調停領域以外の領域にあるデータは,上記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させること(相違点4に係る構成とすること)は,上記技術常識に照らせば,伝送媒体の遅延による影響を抑制するために,当業者が当然に行い得るものといえる。
以上から,引用発明において,相違点4に係る構成とすることは,当業者が普通に行い得るものである。
オ 相違点5について
上記ウのとおり,引用発明において,データメッセージの調停領域(本願補正発明の「優先情報」に相当。)のパルス信号により,バス上に送信されたパルス信号(本願補正発明の「前記伝送路を伝送するパルス信号」に相当。)と,データメッセージをバス上に送信する手段から送信されるパルス信号(本願補正発明の「前記送信手段から送信されるパルス信号」に相当。)との競合(本願補正発明の「衝突」に相当。)を検出し,メッセージの優先度(本願補正発明の「優先順位」に相当。)に応じて勝ち残り制御を行う衝突検出手段を備えることは,当業者が普通に行い得るものである。
また,上記エのとおり,引用発明において,データメッセージのデータのうち,調停領域にあるデータは第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,調停領域以外の領域にあるデータは,上記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させることも,当業者が普通に行い得るものである。
そうすると,引用発明のデータメッセージをバス上に送信する手段(本願補正発明の「送信手段」に相当。)について,上記衝突検出手段が衝突(上記の競合)を検出した場合であって,上記データメッセージをバス上に送信する手段が送信したパルス信号に含まれるメッセージの優先度が,上記バス上に送信されたパルス信号に含まれるメッセージの優先度と比べて低い場合,当該手段からの上記パルス信号の送信を中止することは,メッセージの優先度に応じて勝ち残り制御を行うようにすることは,上記メッセージの優先度に応じて勝ち残り制御を行う際,当業者が当然に行い得るものである。
そして,引用発明のデータメッセージをバス上に送信する手段について,上記衝突検出手段が衝突を検出した場合であって,上記データメッセージをバス上に送信する手段が送信したパルス信号に含まれるメッセージの優先度が,上記バス上に送信されたパルス信号に含まれるメッセージの優先度と比べて高い場合,当該手段からの上記メッセージの優先度以外のデータの上記パルス信号の送信を第2の変調速度で継続することも,上記メッセージの優先度に応じて勝ち残り制御を行う際,当業者が当然に行い得るものである。
以上から,引用発明において,相違点5に係る構成とすることは,当業者が普通に行い得るものである。
カ 相違点6について
上記エのとおり,引用発明において,データメッセージのデータのうち,調停領域にあるデータは第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,調停領域以外の領域にあるデータは,上記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させることは,当業者が普通に行い得るものである。
そうすると,引用発明の送信されたパルス信号を上記バスから受信する手段(本願補正発明の「前記伝送路から伝送されたパルス信号を受信する受信手段」に相当。)について,データメッセージをバス上に送信する手段からデータメッセージの調停領域が送信されている場合,上記第1の変調速度に応じたタイミングで上記調停領域にあるデータのパルス信号を受信し,上記データメッセージをバス上に送信する手段からデータメッセージの調停領域以外の領域にあるデータが送信されている場合,上記第2の変調速度に応じた検出タイミングで上記調停領域以外の領域にあるデータのパルス信号を受信すること(相違点6に係る構成とすること)も,上記エと同様の理由により,当業者が普通に行い得るものである。
以上から,引用発明において,相違点6に係る構成とすることは,当業者が普通に行い得るものである。
キ 小括
上記アないしカより,引用発明において,相違点1ないし6に係る構成とすることは,周知技術1ないし3に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
そして,本願補正発明が奏する作用効果も,引用発明,及び周知技術1ないし3から,当業者が容易に予測し得るものであって,格別なものとはいえない。

(6)まとめ
本件補正後の請求項1に係る発明(本願補正発明)は,引用文献1記載の発明(引用発明),及び周知例1ないし5にみられるような周知技術(周知技術1ないし3)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明の容易想到性について

1 本願発明について
平成26年2月20日に提出された手続補正書による手続補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成25年9月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める。(再掲)
「【請求項1】
1または複数の他のデータ伝送装置と伝送路により接続され,衝突勝ち残りによる通信プロトコルとしてCSMA/CD方式を用いた通信を行うデータ伝送装置において,
信号衝突の際の優先順位を識別する優先情報を通信フレームの先頭に配置した通信情報を,パルス信号に変調して送信する送信手段と,
前記伝送路から伝送されたパルス信号を受信する受信手段と,
前記優先情報のパルス信号により,前記伝送路を伝送するパルス信号と,前記送信手段から送信されるパルス信号との衝突を検出し,優先順位に応じて勝ち残り制御を行う衝突検出手段と,
前記送信手段の変調速度を切り替える通信速度切替手段と
を備え,
前記通信速度切替手段は,
前記優先情報を第1の変調速度によりパルス信号に変調させ,
前記優先情報以外の情報を,前記第1の変調速度より速い第2の変調速度によりパルス信号に変調させ,
前記送信手段は,
前記衝突検出手段が前記衝突を検出した場合であって,
当該送信手段が送信した前記パルス信号に含まれる前記優先順位が,前記伝送路を伝送するパルス信号に含まれる前記優先順位と比べて低い場合,当該送信手段からの前記パルス信号の送信を中止し,
当該送信手段が送信した前記パルス信号に含まれる前記優先順位が,前記伝送路を伝送するパルス信号に含まれる前記優先順位と比べて高い場合,当該送信手段からの前記優先情報以外の情報の前記パルス信号の送信を前記第2の変調速度で継続し,
前記受信手段は,
前記送信手段から前記優先情報のパルス信号が送信されている場合,前記第1の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報のパルス信号を受信し,
前記送信手段から前記優先情報以外の情報の前記パルス信号の送信が継続している場合,前記第2の変調速度に応じた検出タイミングで前記優先情報以外の情報の前記パルス信号を受信する
ことを特徴とするデータ伝送装置。」

2 引用文献の記載と引用発明
引用文献1の記載は,前記第2の4(3)アのとおりであり,引用発明は,前記第2の4(3)イで認定したとおりである。

3 本願発明と引用発明との対比及び判断
前記第2の1及び2から明らかなように,本願発明は,本願補正発明から,平成26年2月20日に提出された手続補正書による補正事項に係る技術的限定(前記第2の2参照。)を取り除いたものであるから,本願発明は,本願補正発明を包含する。
そして,前記第2の4(5)で検討したとおり,本願補正発明は,引用文献1記載の発明(引用発明)及び周知例1ないし5にみられるような周知技術(周知技術1ないし3)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると,本願補正発明を包含する本願発明も,前記第2の4(5)で検討した理由により,引用文献1記載の発明(引用発明),及び原査定の拒絶の理由に引用された周知例5にみられるような周知技術(周知技術3)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
また,前記第2の4(5)の理由により,本願発明が奏する作用効果は,格別のものとはいえない。

4 まとめ
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明(本願発明)は,引用文献1記載の発明(引用発明),並びに周知例5にみられるような周知技術(周知技術3)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

第4 結言

したがって,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-26 
結審通知日 2015-01-06 
審決日 2015-01-20 
出願番号 特願2010-37406(P2010-37406)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森谷 哲朗  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 山中 実
河口 雅英
発明の名称 データ伝送装置およびそれを備えた空気調和機  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  

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