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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1298553
審判番号 不服2013-25569  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-26 
確定日 2015-03-12 
事件の表示 特願2011-279523「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月22日出願公開、特開2012- 55757〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年1月15日に出願した特願2008-5384号の一部を平成23年12月21日に新たな特許出願としたものであって、平成25年2月26日付けで拒絶の理由が通知され、平成25年5月1日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成25年9月26日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成25年12月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。

第2 平成25年12月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年12月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
(1)本件補正前
「【請求項1】
ワンチップマイコン及びその他の電子部品を制御基板に実装し、当該制御基板を基板ボックス内に収納した制御装置を備える遊技機において、
前記ワンチップマイコンは、当該ワンチップマイコンの長手方向に対する垂直な断面が幅方向よりも高さ方向が長くなる縦長な形状となるように、前記制御基板の実装面に配置され、
前記基板ボックスは、
遊技機に取り付けられる取付ベースと、
前記取付ベースに取り付けられ、当該取付ベースとの間に前記制御基板を収納する収納空間を画成する蓋部材と、
前記取付ベースと前記蓋部材とを閉じた状態で封止する封止機構と、
を備え、
前記制御基板は、前記ワンチップマイコンが前記蓋部材に対向するように前記収納空間内に収納され、
前記蓋部材に対して前記制御基板を組み付けた後、前記蓋部材を前記取付ベースに対してスライドさせることによって互いに離れる方向への移動が規制されるようにし、
前記蓋部材は、前記ワンチップマイコンの周囲を囲繞する囲繞部材と前記制御基板に備わったコネクタを外部へ露出するために各コネクタに対応した開口部が配設され、
前記囲繞部材は、前記蓋部材の内面から立設する周壁によって形成され、該周壁における前記制御基板の実装面に平行な断面は長方形状をなしており、
前記周壁は、前記蓋部材の内面から前記制御基板の実装面までの高さが、前記周壁の長方形状断面の短辺よりも長く、長辺よりも短くなるように構成していることを特徴とする遊技機。」

(2)本件補正後
「【請求項1】
ワンチップマイコン及びその他の電子部品を制御基板に実装し、当該制御基板を長方形状輪郭の基板ボックス内に収納した制御装置を備える遊技機において、
前記ワンチップマイコンは、当該ワンチップマイコンの長手方向に対する垂直な断面が幅方向よりも高さ方向が長くなる縦長な形状となるように、前記制御基板の実装面に配置され、
前記基板ボックスは、
遊技機に取り付けられる取付ベースと、
前記取付ベースに取り付けられ、当該取付ベースとの間に前記制御基板を収納する収納空間を画成する蓋部材と、
前記取付ベースと前記蓋部材とを閉じた状態で封止する封止機構と、
を備え、
前記制御基板は、前記ワンチップマイコンが前記蓋部材に対向するように前記収納空間内に収納され、
前記蓋部材に対して前記制御基板を組み付けた後、前記蓋部材を前記取付ベースに対してスライドさせることによって互いに離れる方向への移動が規制されるようにし、
前記蓋部材は、前記ワンチップマイコンの周囲を囲繞する囲繞部材と前記制御基板に備わったコネクタを外部へ露出するために各コネクタに対応した開口部が配設され、当該開口部は、前記蓋部材の両側の長辺部に形成され前記制御基板側に一段凹んだ部分にそれぞれ設けられ、 前記囲繞部材は、前記蓋部材の内面から立設する周壁によって形成され、該周壁における前記制御基板の実装面に平行な断面は長方形状をなしており、
前記周壁は、前記蓋部材の内面から前記制御基板の実装面までの高さが、前記周壁の長方形状断面の短辺よりも長く、長辺よりも短くなるように構成していることを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「基板ボックス」に関して、「長方形状輪郭」である点、「開口部」に関して、「部材の両側の長辺部に形成され前記制御基板側に一段凹んだ部分にそれぞれ設けられ」る点を限定したものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)刊行物1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-24268号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
(1-a)「【0002】
【従来の技術】パチンコ機等の遊技機は、遊技の健全性を維持するとともに、遊技の興趣を高めるために、マイクロコンピューター構成の遊技制御装置により制御されている。この遊技制御装置は、遊技制御プログラムを格納したROM、遊技制御プログラムに基づく制御を行うCPU、このCPUの制御実行時に必要な情報を一時的に記憶するRAM等の電子部品を制御基板上に別個に、あるいは一体化したワンチップマイコンとして実装し、この制御基板を箱状の制御基板収納部材内に収納したものである。そして、遊技制御プログラムを格納したROMやワンチップマイコンが不正に交換されることを防止するために、制御基板収納部材は、一旦閉じると、破壊しない限り開かないようにワンウエイネジを用いた封止部材や封印シールにより封止してある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記した従来の遊技機においても、遊技制御装置のセキュリティーの面で問題点があった。すなわち、封止部材や封印シールを破壊することなく制御基板収納部材の合わせ目部分をドライバー等の道具を使用して強引に拡大し、この隙間から正規のROMやワンチップマイコンを取り外し、その代わりに不正な遊技制御プログラムを格納した不正部品と交換される虞れがあった。この様な不正改造が行われると、遊技の健全性を維持することができない。
【0004】本発明は、前記した問題点を解消するためになされたもので、制御基板収納部材内に収納した制御基板上に実装したROM等の記憶媒体が不正に交換されることを確実に防止できる遊技機を提供することを目的とする。」

(1-b)「【0016】パチンコ機1は、機枠3の前面開口部分に額縁状の前面枠(図示せず)を開閉可能に取り付け、この前面枠の開口部分を裏側から塞ぐようにして遊技盤を取り付け、この遊技盤の表面に、ガイドレール等の区画部材により区画して形成した遊技領域内に、入賞具、始動口に入賞することを条件として図柄合わせ遊技等の別遊技を行う図柄表示装置、別遊技で大当りになると開く大入賞口などを設けてある。また、前面枠の裏側には、裏機構盤の基枠体4(裏メカベース)を取り付け、この基枠体4に裏機構として、貯留タンク5、球誘導路6、球排出ユニット7などを取り付けるとともに、前面枠の裏面下部に設けた球発射装置8および上記球排出ユニット7を制御する排出発射制御ユニット9、前記図柄表示装置や大入賞口などの電気式役物を制御する役物用の制御装置2(役物制御ユニット)などの制御ユニットを取り付ける。
【0017】役物用の制御装置2(以下、制御装置2という。)は、遊技盤に配設されている電気式役物を電気的に制御するもので、図2に示すように、役物制御(遊技制御)を行う制御回路が形成された制御基板10が、制御基板収納部材11内に収納された構成となっている。
【0018】具体的に説明すると、本実施形態では、遊技制御を行うための遊技制御プログラムを格納したROM(読み出し専用メモリ)、遊技制御プログラムに基づく制御を行うCPU(中央演算処理装置)、CPUの制御実行時に必要な情報を適宜記憶するRAM(読み書き可能メモリ)などを一体化してワンチップマイコン12を構成し、このワンチップマイコン12を制御基板10上にソケット13を介して実装し、また、この制御基板10上には他の電子部品14を実装するとともにコネクタ15を取り付ける。そして、このコネクタ15だけが外部に露出した状態で制御基板10を制御基板収納部材11内に収納する。
【0019】制御基板収納部材11は、透明な合成樹脂などのクリア部材よりなる第1ケース部材11aと第2ケース部材11bとを合体させた箱状体であり、制御基板10の全体が外側のいずれの方向からでも、はっきり透視可能となっている。
【0020】第1ケース部材11aは上蓋部材となる部分であり、一方、第2ケース部材11bは下蓋部材あるいは底部材となる部分であり、ソケット13に対応する第2ケースには制御基板10の裏面に当接可能な凸部16を形成し、ワンチップマイコン12をソケット13に差し込む際の制御基板10の撓みを軽減するように構成してある。そして、制御基板収納部材11の側面に位置する第1ケース部材11aと第2ケース部材11bとの接合部分には、図2に示すように、封止部17として設けた複数のかしめ部材により封印できるように構成してある。このかしめ部材は、制御基板収納部材11の上部および下部、あるいは左側面及び右側面に設けてもよい。なお、封止部17は、第1ケース部材11aと第2ケース部材11bとを一旦閉状態に止着して封止したならば、切断するなど破損しない限り開くことができない機能を備えていればどのような構成でもよい。
【0021】また、図2に示す制御基板収納部材11は、記憶媒体として機能するワンチップマイコン12を実装してある側の制御基板10に対向する内面部分、即ち第1ケース部材11aの内面にワンチップマイコン12を囲繞可能な状態で囲繞部材20を突設し、制御基板10を制御基板収納部材11内に収納した状態で囲繞部材20の先端縁が制御基板10に当接乃至近接して、ワンチップマイコン12の周囲を取り囲むように構成してある。
【0022】この囲繞部材20は、ワンチップマイコン12とソケット13を取り囲むことができる大きさであって断面形状が長方形の壁状、あるいは断面四角形の角筒体であり、第1ケース部材11a側は閉塞されているが、先端部分は長方形に開口している。なお、この囲繞部材20の基端から先端までの長さは、第1ケース部材11aを第2ケース部材11bに対して閉じた状態で、先端が制御基板10に当接するか或は当接しなくても僅かな隙間を残して近接する長さに設定してある。また、囲繞部材20は、第1ケース部材11aと同様に、内部を透視可能にしてある。
【0023】この様な構成からなる囲繞部材20を有する第1ケース部材11aを閉じると、図3及び図4に示すように、制御基板10上のワンチップマイコン12がソケット13と共に囲繞部材20により四周を取り囲まれる。そして、万一、不正行為者がドライバー、千枚通し、へら等の道具を第1ケース部材11aと第2ケース部材11bとの合わせ目から制御基板収納部材11の内部に差し込んだとしても、道具の先端が囲繞部材20に進行を阻止されてしまい、ワンチップマイコン12まで到達することはない。このため、ワンチップマイコン12をソケット13から上昇させることができないし、極く薄い板状の道具を囲繞部材20の先端と制御基板10の表面との間の僅かな隙間に差し込んだとしても、この道具を操作してワンチップマイコン12をソケット13から抜くことは殆ど不可能であるし、たとえ抜いたとしてもこのワンチップマイコン12を囲繞部材20内から取り出すことはできない。また、囲繞部材20の先端と制御基板10の表面との隙間はワンチップマイコン12が通過できない極く僅かな寸法(ワンチップマイコンの厚みよりも狭い寸法)でしかないので、不正に改造したワンチップマイコン12を制御基板収納部材11の外部から囲繞部材20の内部に入れてソケット13に装着することはできない。したがって、本実施形態によれば、制御基板収納部材11の外部から囲繞部材20で囲まれたワンチップマイコン12を不正に交換する不正行為を確実に防止することができる。」

(1-c)図2から、制御基板収納部材11は長方形状輪郭であることが把握できる。

(1-d)図3から、上蓋部材を構成する第1ケース部材11aは、制御基板10を収納する収納空間を画成しており、制御基板10に配置されたワンチップマイコン12は上蓋部材に対向していることが把握できる。

(1-e)図2?図4から、囲繞部材20の角筒体は、制御基板10の実装面に平行な断面が長方形状をなしていることが把握できる。また、囲繞部材20は、上蓋部材の内面から制御基板10の実装面までの高さが、囲繞部材20の長片よりも短くなるように構成していることが把握できる。

上記の事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。
「ワンチップマイコン12及び他の電子部品14を制御基板10上に実装し、当該制御基板10を長方形状輪郭の制御基板収納部材11内に収納した制御装置2を備える遊技機において、
前記ワンチップマイコン12は、前記制御基板10の実装面に配置され、
前記制御基板収納部材11は、
底部材と、
前記底部材に取り付けられ、当該底部材との間に前記制御基板10を収納する収納空間を画成する上蓋部材と、
前記底部材と前記上蓋部材とを閉状態に止着して封止する封止部17と、
を備え、
前記制御基板10は、前記ワンチップマイコン12が前記上蓋部材に対向するように前記収納空間内に収納され、
前記上蓋部材は、前記ワンチップマイコン12の周囲を取り囲むように構成した囲繞部材20が配設され、前記制御基板10に取り付けたコネクタを外部へ露出した状態とし、
前記囲繞部材20は、前記蓋部材の内面に突設する断面形状が長方形の壁状、あるいは断面四角形状の角筒体であり、該角筒体における制御基板10の実装面に平行な断面は長方形状をなしており、
囲繞部材20は、上蓋部材の内面から制御基板10の実装面までの高さが、囲繞部材20の長片よりも短くなるように構成している遊技機。」

(2)刊行物2に記載された事項
前置報告書に引用された特開2007-267772号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(2-a)「【0033】
図3は本発明における遊技機1が備える遊技制御装置14の斜視図、図4は後述するコネクタカバーを外した状態の斜視図、図5は分解斜視図、を各々示す。遊技制御装置14は、例えば、図5に示すように、遊技機1の動作に関わる電気的制御を実行するための電子部品(図示省略)と取付コネクタ24を実装したほゞ四角形状の制御基板20を、ベース部材30と収納部材40よりなる制御基板ボックス50に収納したものである。
【0034】
制御基板ボックス50は、ほゞ板状のベース部材30と、該ベース部材30によって塞がれるほゞ四角形状の開口を一面に有し、該開口より制御基板20を収納する収納部40aを形成した収納部材40と、これらベース部材30と収納部材40とを固着する第1固着手段53とから構成する。また、51は、制御基板ボックス開封履歴シールで、第1固着手段53を開封した履歴を記入し、例えば、開封日、開封者、認印等を記入する。52は、コネクタカバー開封履歴シールで、後述するコネクタカバーを開封した履歴を記入する。
【0035】
本実施例で示すベース部材30および収納部材40は、透光性の合成樹脂からなるものとし、内部に収容された制御基板20を外から視認できる。また、制御基板ボックス50は、平板なベース部材30を下にして置かれる状態が常態となるので、内部に収納された制御基板20を基準にした場合、収納部材40は上部に、ベース部材30は下部に位置するものとなる。
【0036】
収納部材40は、収納部40aの奥側から開口縁に向って起立する4つの収納側壁41を備え、これら収納側壁41の内側面に沿って制御基板20が収納されることとなる。一方、ベース部材30は、ベース部30aの周囲に高さの低い周壁部31が起立している。また、ベース部30aには、リブ30bが適宜設けてある。
【0037】
また、収納部材40には、収納部40aの最奥部であり、制御基板20のコネクタ実装面21と対向する上面42の一部を開口側に向けて膨出させて3つの段部或いは開口部、即ち第1接続部43、第2接続部44、第3接続部45を形成している。具体的には、第1接続部43は、上辺の長手方向に沿う横長な開口部43bとして形成され、膨出部分に起立壁43cが存在し、コネクタ実装面21との間を塞いでいる。一方、第2及び第3接続部44、45は階段状の段部として形成され、これら第2及び第3接続部44、45の収納部40a側には、制御基板20のコネクタ実装面21の一部が当接する平坦な制御基板載置部44a,45aを各々形成すると共に、制御基板20に設けた取付コネクタ24…を挿通するコネクタ挿通開口部44b,45bを各々設ける。なお、これら第1?第3接続部43?45は、収納部材40の正面側(収納部40aが開口していない側)から見ると、凹部になる。」

(2-b)図5、7から、開口部が、収納部材の両側の長片部に形成され、制御基板20側に一段凹んだ部分にそれぞれ設けられていることが把握できる。

上記の事項を総合すると、刊行物2には、「制御基板20を、ベース部材30と収納部材40とからなる制御基板ボックス50に収納し、収納部材40には、コネクタ実装面と対向する開口部が、収納部材の両側の長片部に形成され、制御基板20側に一段凹んだ部分にそれぞれ設けられている遊技機」という事項が記載されていると認められる。

(3)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

ア 刊行物1発明における「ワンチップマイコン12」は、本願補正発明における「ワンチップマイコン」に相当し、以下同様に、「電子部品14」は、「電子部品」に、「制御基板10」は、「制御基板」に、「制御基板収納部材11」は、「基板ボックス」に、「底部材」は、「取付ベース」に、「上蓋部材」は、「蓋部材」に、それぞれ、相当する。

イ 刊行物1発明における「ワンチップマイコン12及び他の電子部品14を制御基板10上に実装し、当該制御基板10を長方形状輪郭の制御基板収納部材11内に収納した制御装置2を備える遊技機において」は、本願補正発明における「ワンチップマイコン及びその他の電子部品を制御基板に実装し、当該制御基板を長方形状輪郭の基板ボックス内に収納した制御装置を備える遊技機において」に相当する。

ウ 刊行物1発明における「ワンチップマイコン12は、制御基板10の実装面に配置され」る構成と、本願補正発明における「ワンチップマイコンは、当該ワンチップマイコンの長手方向に対する垂直な断面が幅方向よりも高さ方向が長くなる縦長な形状となるように、制御基板の実装面に配置され」る構成とは、「ワンチップマイコンは、制御基板の実装面に配置され」る構成で共通する。

エ 刊行物1発明の制御装置2はパチンコ機(遊技機)に取り付けられるものであり(段落【0016】参照)、取り付ける際に制御基板収納部材11の「底部材」を遊技機に取り付けることは自明な事項であるから、刊行物1発明における「底部材」は、本願補正発明における「遊技機に取り付けられる取付ベース」に相当する。

オ 刊行物1発明における「底部材と上蓋部材とを閉状態に止着して封止する封止部17」は、本願補正発明における「取付ベースと前記蓋部材とを閉じた状態で封止する封止機構」に相当する。

カ 刊行物1発明の「ワンチップマイコン12の周囲を取り囲むように構成した囲繞部材20」は、本願補正発明の「ワンチップマイコンの周囲を囲繞する囲繞部材」に相当し、刊行物1発明における「上蓋部材は、ワンチップマイコン12の周囲を取り囲むように構成した囲繞部材20が配設され、制御基板10に取り付けたコネクタを外部へ露出した状態」とする構成と、本願補正発明における「蓋部材は、前記ワンチップマイコンの周囲を囲繞する囲繞部材と前記制御基板に備わったコネクタを外部へ露出するために各コネクタに対応した開口部が配設され」る構成とは、「蓋部材は、前記ワンチップマイコンの周囲を囲繞する囲繞部材と前記制御基板に備わったコネクタを外部へ露出するための部材が配設され」る構成で共通する。

キ 刊行物1発明における「囲繞部材20は、前記蓋部材の内面に突設する断面形状が長方形の壁状、あるいは断面四角形状の角筒体であり、該角筒体における制御基板10の実装面に平行な断面は長方形状をなして」いる構成は、本願補正発明における「囲繞部材は、蓋部材の内面から立設する周壁によって形成され、該周壁における制御基板の実装面に平行な断面は長方形状をなして」いる構成に相当する。

ク 刊行物1発明の「囲繞部材20の角筒体は、上蓋部材の内面から制御基板10の実装面までの高さが、角筒体の長片よりも短くなるように構成している」点と、本願補正発明の「周壁は、蓋部材の内面から制御基板の実装面までの高さが、周壁の長方形状断面の短辺よりも長く、長辺よりも短くなるように構成している」点とは、「周壁は、蓋部材の内面から制御基板の実装面までの高さが、周壁の長方形状断面の長辺よりも短くなるように構成している」点で共通する。

したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「ワンチップマイコン及びその他の電子部品を制御基板に実装し、当該制御基板を基板ボックス内に収納した制御装置を備える遊技機において、
前記ワンチップマイコンは、前記制御基板の実装面に配置され、
前記基板ボックスは、
遊技機に取り付けられる取付ベースと、
前記取付ベースに取り付けられ、当該取付ベースとの間に前記制御基板を収納する収納空間を画成する蓋部材と、
前記取付ベースと前記蓋部材とを閉じた状態で封止する封止機構と、
を備え、
前記制御基板は、前記ワンチップマイコンが前記蓋部材に対向するように前記収納空間内に収納され、
前記蓋部材は、前記ワンチップマイコンの周囲を囲繞する囲繞部材と前記制御基板に備わったコネクタを外部へ露出するための部材が配設され、
前記囲繞部材は、前記蓋部材の内面から立設する周壁によって形成され、該周壁における前記制御基板の実装面に平行な断面は長方形状をなしており、
前記周壁は、前記蓋部材の内面から前記制御基板の実装面までの高さが、前記周壁の長方形状断面の長辺よりも短くなるように構成している遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
ワンチップマイコンの制御基板の実装面への配置に関して、本願補正発明は、「ワンチップマイコンの長手方向に対する垂直な断面が幅方向よりも高さ方向が長くなる縦長な形状となるように」配置されるのに対し、刊行物1発明は、そのような特定がない点。

[相違点2]
本願補正発明は、「蓋部材に対して前記制御基板を組み付けた後、前記蓋部材を前記取付ベースに対してスライドさせることによって互いに離れる方向への移動が規制されるようにし」ているのに対し、刊行物1発明は、制御基板10を制御基板収納部材11内に収納し、底部材と上蓋部材とを閉状態に止着して封止するものの、そのような構成は明示されていない点。

[相違点3]
蓋部材に配設されるコネクタを外部へ露出するための部材に関して、本願補正発明は、「各コネクタに対応した開口部」であるのに対し、刊行物1発明は、その構成が不明である点。

[相違点4]
本願補正発明は、「開口部は、蓋部材の両側の長辺部に形成され制御基板側に一段凹んだ部分にそれぞれ設けられ」ているのに対して、刊行物1発明は、そのような構成を有していない点。

[相違点5]
ワンチップマイコンの周囲を囲繞する囲繞部材を形成する周壁における蓋部材の内面から制御基板の実装面までの高さに関して、本願補正発明は、「周壁の長方形状断面の短辺よりも長くなる」のに対して、刊行物1発明は、短辺よりも長いかどうか不明である点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
ア [相違点1]、[相違点5]について
遊技機の技術分野において、ワンチップマイコンの長手方向に対する垂直な断面が幅方向よりも高さ方向が長くなる縦長な形状となるように制御基板の実装面へ配置することは、本願出願前において周知の技術である(例えば、特開2006-68252号公報の図1、特開2001-314622号公報の図12、13参照。)。
そして、刊行物1発明に周知の技術のワンチップマイコンを適用するにあたり、囲繞部材を形成する周壁における蓋部材の内面から制御基板の実装面までの高さを、ワンチップマイコンの形状に合わせて周壁の長方形状断面の短辺よりも長くなるように設定することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
よって、刊行物1発明に周知の技術を適用し、上記相違点1及び5に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ [相違点2]について
遊技機の技術分野において、制御基板を収容した蓋部材と底部材とをその一方に設けたガイド部を用いてスライドさせて封止部材により着脱不能に封止することは、本願出願前において周知の技術である(例えば、特開2006-87593号公報の段落【0027】、特開2007-44551号公報の段落【0209】?【0212】参照。)。
そして、上記周知の技術におけるガイド部は蓋部材と底部材とが互いに離れる方向への移動を規制するものであるといえる。
よって、刊行物1発明に周知の技術を適用し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ [相違点3]について
遊技機の技術分野において、制御基板を収容する蓋部材にコネクタを外部に露出する開口部を設けることは、本願出願前において周知の技術である(例えば、特開2006-87593号公報の段落【0027】、【0028】、図2)、特開2006-263008号公報の段落【0009】、図1参照。)。
よって、刊行物1発明に周知の技術を適用し、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

エ [相違点4]について
刊行物2には、「制御基板20を、ベース部材30と収納部材40とからなる制御基板ボックス50に収納し、収納部材40には、コネクタ実装面と対向する開口部が、収納部材の両側の長片部に形成され、制御基板20側に一段凹んだ部分にそれぞれ設けられている遊技機」という事項が記載されている(上記2(2)参照。)。
刊行物1発明と刊行物2に記載された事項とは、制御基板を収納する制御基板収納部材を備えた遊技機である点で共通するから、刊行物1発明に刊行物2に記載された事項を適用し、上記相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

オ 本願補正発明が奏する効果について
上記相違点1ないし5によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明、刊行物2に記載された事項、周知の技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

カ まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が刊行物1発明、刊行物2に記載された事項、周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成25年5月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、特に、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、「第2 1(1)」に記載したとおりである。

2 刊行物
刊行物1及びその記載事項並びに刊行物1発明は、上記「第2 2(1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から「長方形状輪郭」及び「部材の両側の長辺部に形成され前記制御基板側に一段凹んだ部分にそれぞれ設けられ」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と刊行物1発明とを対比したときに相違点は、上記「第2 2(3)」で述べた相違点1?3、5と同様のものになるから、上記「第2 2(4)」において検討したとおり、本願発明は、刊行物1発明、周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-05 
結審通知日 2015-01-13 
審決日 2015-01-27 
出願番号 特願2011-279523(P2011-279523)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼藤 啓  
特許庁審判長 杉浦 淳
特許庁審判官 中田 誠
平城 俊雅
発明の名称 遊技機  
代理人 飯田 雅昭  
代理人 後藤 政喜  
代理人 高山 裕志  

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