• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1298564
審判番号 不服2014-9568  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-22 
確定日 2015-03-12 
事件の表示 特願2009-236201「スピン洗浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月28日出願公開、特開2011- 86659〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年10月13日に出願したものであって、平成25年9月19日付けで拒絶理由が通知され、同年11月20日に意見書および手続補正書が提出されたが、平成26年3月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月22日に本件拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成26年5月22日付け手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成26年5月22日付け手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1 補正後の発明
本件補正は、平成25年11月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
円板状の被処理物を水平に保持するためのスピンテーブルと、該スピンテーブルを回転させる回転駆動手段と、前記スピンテーブルに保持される被処理物の上面に洗浄液を供給するための上面洗浄液供給手段と、前記スピンテーブルに保持される基板の下面に洗浄液を供給するための下面洗浄液供給手段とを備えたスピン洗浄装置において、
前記スピンテーブルは、下面に位置する回転支軸に連結される内側円環部と、前記被処理物を保持する外側円環部と、前記内側円環部と前記外側円環部とを連結する放射方向に延びる複数のアームと、を有する骨格形状で構成され、
前記スピンテーブルに保持される被処理物の下面側に、前記被処理物と離間するように前記スピンテーブルの前記外側円環部に組み付けられた着脱可能な円板状の整流板を備えたことを特徴とするスピン洗浄装置。」
と補正することを含むものである。(下線は補正箇所を示す)

そうすると、本件補正は、補正前の請求項1に係る発明の特定事項である「スピンテーブル」について「骨格形状で構成され」との限定を追加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項
(1)本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2003-174008号公報(以下、「刊行物1」という)には、「スピン処理装置及び処理方法」について、図1?4とともに次の事項が記載されている。

(1-ア)
「【請求項1】 基板を回転させて処理するスピン処理装置において、
回転駆動されるとともに上記基板を着脱可能に保持する回転体と、
上記基板の下面側に対向して回転不能に配置されこの基板の下面に処理液を噴射するノズル孔を有するノズルヘッドと、
上記回転体と一体的に設けられこの回転体に保持された上記基板の下面に所定の間隔で離間対向する対向壁部を有する乱流防止カバーと、
この乱流防止カバーを加熱しその対向壁部の上面に残留する処理液を乾燥させる加熱手段とを具備したことを特徴とするスピン処理装置。
【請求項2】 上記ノズルヘッドには上記乱流防止カバーの対向壁部の下面に対向する取付け部が設けられ、この取付け部に上記加熱手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のスピン処理装置。
【請求項3】 上記加熱手段は、上記乱流防止カバーの対向壁部の下面に設けられていることを特徴とする請求項1記載のスピン処理装置。」

(1-イ)
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は基板を周方向に回転させながら処理液で処理した後、乾燥処理するためのスピン処理装置及びスピン処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば、液晶表示装置や半導体装置の製造工程においては、ガラス基板や半導体ウエハなどの基板に回路パターンを形成するための成膜プロセスやフォトプロセスがある。これらのプロセスでは、上記基板に対して成膜処理と洗浄処理とが繰り返し行われる。
【0003】上記基板の洗浄処理および洗浄処理後の乾燥処理を行うためにはスピン処理装置が用いられる。このスピン処理装置はカップ体を有し、このカップ体内には回転駆動される回転体が設けられている。この回転体には保持機構が設けられ、この保持機構には基板が着脱可能に保持される。
【0004】この保持機構に保持された基板は回転体とともに回転しながら洗浄処理および乾燥処理が順次行なわれる。基板の洗浄処理では、回路パターンが形成される上面だけでなく、下面の清浄度が要求されることがある。そのような場合には基板を回転させながらこの基板の下面に向けて処理液を噴射して基板の下面も洗浄処理するということが行なわれる。
【0005】洗浄処理が終了したならば処理液の供給を停止し、回転体を高速度で回転させ、その回転により生じる遠心力を利用して基板に付着した洗浄液を飛散させて乾燥処理することになる。」

(1-ウ)
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】回転体に乱流防止カバーを設ければ、基板の乾燥処理時にこの基板の下面側に乱流が発生するのを防止することが可能となる。しかしながら、基板の洗浄処理時に、基板の下面に噴射された処理液が上記乱流防止カバーの上面に付着残留することが避けられない。
【0010】そのため、基板の乾燥処理時に、乱流防止カバーの上面に付着残留した処理液が飛散して基板の下面に付着し、汚れやウオータマークの発生原因になるということがある。とくに、乱流防止カバーから処理液が飛散して基板に付着する時期が基板の乾燥処理工程の後期(とくに終了間際)であると、その処理液がほとんど乾燥されずに基板の下面に残留することになり、ウオータマークの発生が避けられないということがある。
【0011】この発明は、基板の乾燥処理時の、とくに乾燥処理が終了する間際に、乱流防止カバーの上面に付着残留した処理液が飛散して基板の下面に再付着することがないようにしたスピン処理装置及びスピン処理方法を提供することにある。」

(1-エ)
「【0023】上記動力伝達体3のカップ体1内に突出した上端部には回転体11が取り付けられている。この回転体11は円板状をなした下板12と上板13とを接合してなり、これら下板12と上板13との中心部分には上記動力伝達体3の内部空間に連通する通孔14が形成されている。
【0024】上記回転体11の上板13の周辺部には周方向に所定間隔、たとえば90度間隔で4つの支持筒部15が一体形成されている。上記下板12の上記支持筒部15と対応する部分には通孔16が形成されている。」

(1-オ)
「【0035】上記回転体11の上面および外周面は、撥水性と耐熱性を有する合成樹脂、たとえば塩化ビニールや弗素系の合成樹脂などによって形成された乱流防止カバー41によって覆われている。この乱流防止カバー41は、回転体11に保持される基板Wの下面に僅かな隙間を介して対向する対向壁部42と、この対向壁部42の周縁部に垂設された周壁部43とをする。」

(1-カ)
「【0037】上記回転体11の上面に立設された4本の保持部材18の上端部は、上記乱流防止カバー41の対向壁部42に穿設された通孔44aからその上面側に突出している。
【0038】また、回転体11の上方には、下面と同様、基板Wに洗浄液を噴射する上部洗浄液ノズル45および乾燥気体を供給するクリーンユニット(図示せず)が配置されている。」

(1-キ)
「【0043】上記ノズルヘッド32の外周面には、径方向外方に向かって延出された円盤状の取付け部51が一体形成されている。この取付け部51の上面は、上記回転体11に設けられた乱流防止カバー41の対向壁部42の下面に対向している。取付け部51の上面には加熱手段としての面状の電熱ヒータ52が設けられている。」

(1-ク)
上記記載事項(1-ア)の「基板を回転させて処理するスピン処理装置において、回転駆動されるとともに上記基板を着脱可能に保持する回転体と、上記基板の下面側に対向して回転不能に配置されこの基板の下面に処理液を噴射するノズル孔を有するノズルヘッドと、・・・・・とを具備したことを特徴とするスピン処理装置。」との記載、同(1-イ)の「【0002】【従来の技術】たとえば、液晶表示装置や半導体装置の製造工程においては、ガラス基板や半導体ウエハなどの基板に回路パターンを形成するための成膜プロセスやフォトプロセスがある。これらのプロセスでは、上記基板に対して成膜処理と洗浄処理とが繰り返し行われる。」との記載、同(1-カ)の「【0038】また、回転体11の上方には、下面と同様、基板Wに洗浄液を噴射する上部洗浄液ノズル45・・・・・」との記載および図1の記載からみて、刊行物1には「半導体ウエハを水平に保持するための回転体と、該回転体を回転させる回転駆動手段と、前記回転体に保持される半導体ウエハの上面に洗浄液を供給するための上部洗浄液ノズルと、前記回転体に保持される半導体ウエハの下面に洗浄液を供給するためのノズルヘッドとを備えたスピン洗浄装置」が記載されているといえる。

【図1】


(1-ケ)
上記記載事項(1-エ)の「【0023】・・・回転体11は円板状をなした下板12と上板13とを接合してなり」との記載からみて、刊行物1には「回転体は、円板状をなした下板と上板とを接合して構成され」ることが記載されているといえる。

(1-コ)
上記記載事項(1-ア)の「【請求項1】・・・上記回転体と一体的に設けられこの回転体に保持された上記基板の下面に所定の間隔で離間対向する対向壁部を有する乱流防止カバー」との記載、同(1-オ)の「【0035】・・・この乱流防止カバー41は、回転体11に保持される基板Wの下面に僅かな隙間を介して対向する対向壁部42と、この対向壁部42の周縁部に垂設された周壁部43とをする。」との記載、同(1-カ)の「【0037】上記回転体11の上面に立設された4本の保持部材18の上端部は、上記乱流防止カバー41の対向壁部42に穿設された通孔44aからその上面側に突出している。」との記載および図1の記載からみて、刊行物1には「回転体に保持される半導体ウエハの下面側に、前記半導体ウエハと離間するように前記回転体の外縁部に組み付けられた円板状の対向壁部とその周縁部に垂設された周壁部からなる乱流防止カバー」が記載されているといえる。

(1-サ)
そうすると、上記記載事項(1-ア)?(1-キ)および認定事項(1-ク)?(1-コ)を総合すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。

「半導体ウエハを水平に保持するための回転体と、該回転体を回転させる回転駆動手段と、前記回転体に保持される半導体ウエハの上面に洗浄液を供給するための上部洗浄液ノズルと、前記回転体に保持される半導体ウエハの下面に洗浄液を供給するためのノズルヘッドとを備えたスピン洗浄装置において、
前記回転体は、円板状をなした下板と上板とを接合して構成され、
前記回転体に保持される半導体ウエハの下面側に、前記半導体ウエハと離間するように前記回転体の外縁部に組み付けられた円板状の対向壁部とその周縁部に垂設された周壁部からなる乱流防止カバーを備えたスピン洗浄装置。」(以下、「引用発明」という)

(2)本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-102886号公報(以下、「刊行物2」という)には、「基板処理装置」について、図1?7とともに次の事項が記載されている。

(2-ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板およびPDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)用ガラス基板などの各種の被処理基板に対して処理を施すための基板処理装置に関する。」

(2-イ)
「【0024】図4は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理装置において用いられるスピンベース11Aの構成を示す平面図である。このスピンベース11Aは、図1の装置においてスピンベース11に代えて用いられるべきものである。スピンベース11Aは、円板状に形成されていて、その周縁部には、所定の角度間隔で、複数(この実施形態では3個)のチャックピン取り付け孔50が形成されている。このチャックピン取り付け孔50にチャックピン12を立設することにより、ウエハWを保持することができるスピンチャックを構成することができる。この形態のスピンベース11Aは、第1の実施形態におけるアーム状のものに比較して強度を充分に大きくできるという利点がある。
【0025】スピンベース11Aにおいて、薬液ノズル31および純水ノズル32から吐出されてウエハWの下面に至る処理液経路に対応する位置には、円弧形状の開口51,52,53が間隔を開けて形成されている。この開口51,52,53により取り囲まれた中央部の領域は、回転軸15の上端に取り付けられる取り付け部55をなしており、開口51,52,53よりも外側の領域は、チャックピン12を保持するためのチャックピン保持部56をなしている。そして、隣接する開口51,52,53の間の領域は、取り付け部55とチャックピン保持部56とを連結する連結部57をなしている。」

(2-ウ)
上記記載事項(2-イ)の「【0024】・・・スピンベース11Aは、円板状に形成されていて、その周縁部には、・・・・・チャックピン取り付け孔50が形成されている。・・・・・円弧形状の開口51,52,53が間隔を開けて形成されている。この開口51,52,53により取り囲まれた中央部の領域は、回転軸15の上端に取り付けられる取り付け部55をなしており、開口51,52,53よりも外側の領域は、チャックピン12を保持するためのチャックピン保持部56をなしている。そして、隣接する開口51,52,53の間の領域は、取り付け部55とチャックピン保持部56とを連結する連結部57をなしている。」との記載および図4の記載からみて、刊行物2には「ウエハを保持するスピンチャックを構成するスピンベースを、複数の円弧形状開口により取り囲まれた中央部の領域である取り付け部と、該開口よりも外側の領域であるチャックピン保持部と、該取り付け部と該チャックピン保持部とを連結する連結部とから形成する」(以下、「刊行物2記載事項」という)ことが記載されているといえる。

【図4】



3 当審の判断
(1)対比
補正発明と引用発明とを比較する。
ア 半導体ウエハが円板状であることは技術常識であるから、引用発明の「半導体ウエハ」は、補正発明の「円板状の被処理物」に相当するといえる。

イ 引用発明の「回転体」、「上部洗浄液ノズル」および「ノズルヘッド」は、その機能からみて、補正発明の「スピンテーブル」、「上面洗浄液供給手段」および「下面洗浄液供給手段」に相当するといえる。

ウ 「乱流防止する」と「整流する」とは技術的に同義であり、補正発明の「外側円環部」は、「スピンテーブルの外縁部」を構成しているのであるから、引用発明の「回転体の外縁部に組み付けられた円板状の対向壁部とその周縁部に垂設された周壁部からなる乱流防止カバー」と補正発明の「スピンテーブルの外側円環部に組み付けられた着脱可能な円板状の整流板」とは、「スピンテーブルの外縁部に組み付けられた整流板」の点で共通するといえる。

そうすると、両発明は、
(一致点)
「円板状の被処理物を水平に保持するためのスピンテーブルと、該スピンテーブルを回転させる回転駆動手段と、前記スピンテーブルに保持される被処理物の上面に洗浄液を供給するための上面洗浄液供給手段と、前記スピンテーブルに保持される基板の下面に洗浄液を供給するための下面洗浄液供給手段とを備えたスピン洗浄装置において、
前記スピンテーブルに保持される被処理物の下面側に、前記被処理物と離間するように前記スピンテーブルの外縁部に組み付けられた円板状の部分を有する整流板を備えたスピン洗浄装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「スピンテーブル」が、補正発明では「下面に位置する回転支軸に連結される内側円環部と、前記被処理物を保持する外側円環部と、前記内側円環部と前記外側円環部とを連結する放射方向に延びる複数のアームと、を有する骨格形状で構成され」ているのに対して、引用発明では「円板状をなした下板と上板とを接合して構成され」ている点。

(相違点2)
補正発明の「整流板」は、「スピンテーブルの外側円環部に組み付けられ」、「着脱可能」であり、そして「整流板」自体の形状が円板状であるのに対して、引用発明の「乱流防止カバー」は、「回転体の外縁部に組み付けられ」るが、「着脱可能」であるかどうか不明であり、そして「乱流防止カバー」を構成する「対向壁部」は円板状であるものの、「対向壁部」の周縁部に「周壁部」が垂設されたものである点。

(2)相違点1について
引用発明の「回転体」のように高速回転する部分を、可能な限り軽量化することは、例えば、特開2005-205250号公報(特に段落【0007】を参照されたい。)、特開2002-359183号公報(特に段落【0061】を参照されたい。)および特開2002-110618号公報(特に段落【0052】を参照されたい。)にそれぞれ記載されているように、スピン処理装置の分野において、従来周知の課題であるといえ、引用発明においても内在しているといえる。
一方、刊行物2記載事項の「スピンベース」が「ウエハを保持し、回転する」点で、補正発明の「スピンテーブル」および引用発明の「回転体」に相当し、刊行物2記載事項の「円弧形状開口」が、洗浄液を通過させるとともに、軽量化の効果も奏しており、さらに、当該「円弧形状開口」をより大きくすれば、すなわち、刊行物2記載事項の「取り付け部」および「チャックピン保持部」を円環状にし、同「連結部」をアーム状とした「骨格形状」とすれば、軽量化の効果が増大することは当業者にとって自明である。
そうすると、刊行物1および2に接した当業者であれば、引用発明において、その「回転体」を、上記従来周知の課題である軽量化のために、刊行物2記載事項のような「スピンベース」に置換し、さらに軽量化するために、「内側円環部」と「外側円環部」と「複数のアーム」を有する「骨格形状」で構成することは、当業者が容易に想到し得た事項である。
してみると、引用発明において、上記従来周知の課題を解決するために、その「回転体」を、刊行物2記載事項を適用して、相違点1に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

(3)相違点2について
引用発明において、その「回転体」に刊行物2記載事項および上記従来周知の事項を適用した場合でも、引用発明の「乱流防止カバー」が、回転体の外側円環部に組み付けられることになるのは、明らかである。
また、引用発明の「乱流防止カバー」は、図1を見ると、「回転体」上方を覆うものであるから、「回転体」に対するメンテナンス等を考慮するならば、引用発明の「乱流防止カバー」を「着脱可能」としたほうが、当該メンテナンスにおいて都合がよいことは、当業者にとって自明である。
ところで、「半導体ウエハ」下面への洗浄時の汚れを防止するために、「半導体ウエハ」の下面に対向して設けられる板状体の形状を「円板状」とすることは、例えば、特開平7-130695号公報(特に段落【0015】等に記載された「上下移動部材6」を参照されたい。)や特開2004-39843号公報(特に段落【0034】等に記載された「防滴板14」を参照されたい。)の記載から、従来周知の構成であるといえる。そして、上記(1)で示したとおり、スピン装置処理の分野において、引用発明の「回転体」のように高速回転する部分を可能な限り軽量化することは、従来周知の課題であり、かつ、引用発明の「乱流防止カバー」を「周壁部」を有しない円板状の「対向壁部」のみで構成した方がより軽量となることは明らかであるから、引用発明の「乱流防止カバー」の形状を「円板状」することは、当業者にとって格別困難なことではない。
してみると、引用文献において、相違点2に係る補正発明の構成とすることは、引用発明、刊行物2記載事項及び従来周知の事項から当業者が容易になし得たものである。

(4)効果について
補正発明が奏する効果は、引用発明、刊行物2記載事項および従来周知の事項から、当業者が予測し得る範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものとはいえない。

(5)したがって、補正発明は、引用発明、刊行物2記載事項および従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 本件補正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成25年11月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されたとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明は、次のとおりである。

「【請求項1】
円板状の被処理物を水平に保持するためのスピンテーブルと、該スピンテーブルを回転させる回転駆動手段と、前記スピンテーブルに保持される被処理物の上面に洗浄液を供給するための上面洗浄液供給手段と、前記スピンテーブルに保持される基板の下面に洗浄液を供給するための下面洗浄液供給手段とを備えたスピン洗浄装置において、
前記スピンテーブルは、下面に位置する回転支軸に連結される内側円環部と、前記被処理物を保持する外側円環部と、前記内側円環部と前記外側円環部とを連結する放射方向に延びる複数のアームと、を有し、
前記スピンテーブルに保持される被処理物の下面側に、前記被処理物と離間するように前記スピンテーブルの前記外側円環部に組み付けられた着脱可能な円板状の整流板を備えたことを特徴とするスピン洗浄装置。」(以下、「本願発明」という)

2 引用刊行物およびその記載事項
本願出願前に頒布された刊行物1、2およびその記載事項は、上記「第2 2 引用刊行物およびその記載事項」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は、補正発明の特定事項である「スピンテーブル」について、「骨格形状で構成され」との限定を除いたものである。
そして、本願発明の構成を全て備えた補正発明が、上記「第2 3 当審の判断」にて検討したとおり、引用発明、刊行物2記載事項および従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、刊行物2記載事項および従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-09 
結審通知日 2015-01-13 
審決日 2015-01-29 
出願番号 特願2009-236201(P2009-236201)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 刈間 宏信
久保 克彦
発明の名称 スピン洗浄装置  
代理人 杉村 憲司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ