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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1298594
審判番号 不服2013-17413  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-09 
確定日 2015-03-11 
事件の表示 特願2008- 30430「データ処理システム並びにその動作方法、データ処理装置、そしてデータ格納装置の動作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月28日出願公開、特開2008-198206〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成20年2月12日(パリ条約による優先権主張2007年(平成19年)2月13日)の出願であり、平成25年4月25日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年9月9日付けで拒絶査定不服の審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成25年3月18日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「【請求項1】
データ格納装置におけるデータ操作を行うために使用される読み出し/書き込み動作単位のサイズを取得するための要求信号をホストから前記データ格納装置に伝送し、前記要求信号に応じて、前記データ格納装置の識別情報を読み出して、前記識別情報に基づいて前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを決定し、前記決定された前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを前記データ格納装置から前記ホストに伝送することによって、前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを取得する段階と、
取得された前記読み出し/書き込み動作単位のサイズに基づいて、前記ホストにおいてメモリ割り当てファイルシステム単位のサイズを前記読み出し/書き込み動作単位のサイズの倍数に設定する段階と、
前記メモリ割り当てファイルシステム単位の開始アドレスを前記データ格納装置で使用された前記読み出し/書き込み動作単位の開始アドレスに設定する段階と、
を含むことを特徴とするデータ処理システムの動作方法。」

第2 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-308240号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【0004】このようなNAND型のフラッシュメモリを利用したアプリケーションとして、いわゆるメモリカードと呼ばれる、リムーバブルな小型ICメモリ装置が知られている。メモリカードは、静止画像データ、動画像データ、音声データ、音楽データ等の各種デジタルデータを格納することができる。そのため、メモリカードは、例えば、情報携帯端末、デスクトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータ、携帯電話機、オーディオ装置、家電装置等々のホスト機器に、外部記憶メディアとして用いられる。
【0005】メモリカードを外部記憶メディアとして利用するホスト機器は、ハードディスク等の内部記憶メディアが備えられる場合がある。ハードディスクは、一般的にMS-DOS(商標)と呼ばれるファイルシステムを媒介として、ホスト機器から論理フォーマットでアクセスがされる。そのため、メモリカードも、このような他の記憶メディアとの互換性を鑑み、MS-DOSといったような一般的なファイルシステムを適用できることが望ましい。」(段落【0004】?【0005】)

(イ)「【0045】メモリカードのデータ格納領域の物理フォーマット つぎに、メモリカード1のデータ格納領域(不揮発性半導体メモリ17)の物理フォーマットについて説明をする。
【0046】メモリカード1は、ユーザに生成されたファイルが格納されるユーザエリアと、本メモリカード1の内部情報等が格納されているシステムエリアとから構成されている。ユーザエリア及びシステムエリアは、ともにコントロールコマンドを用いてホスト機器2からアクセスが可能である。ただし、ユーザエリアとシステムエリアとは、互いに異なるアドレス空間に形成されており、異なるコントロールコマンドによりホスト機器2からアクセスがされる。
【0047】(ユーザエリアの物理フォーマット)ユーザエリアは、例えば64Kバイト又は128Kバイトのブロックと呼ばれる単位で物理的に分割されている。このブロックが本メモリカード1における一括消去の単位となる。つまり、フラッシュメモリにおける消去ブロックが、本ブロックに対応する。
・・・中略・・・
【0050】各ブロックには、ブロックの格納位置を特定する物理ブロック番号が設定されている。この物理ブロック番号は、有効ブロック及び予備ブロックの区別に関わらずユニークに番号が設定されている。有効ブロックには、論理ブロック番号が記録される。論理ブロック番号は、各ブロック内の所定の領域に書き込まれる。論理ブロック番号は、本メモリカード1の初期化時に記録される。ブロックに不良が生じた場合には、未記録の予備ブロックに対して、不良ブロックの論理ブロック番号を書き込んで、論理ブロック番号の代替が行われる。各ブロック内は、ページと呼ばれる書き込み読み出し単位で分割されている。このページが、後述する論理フォーマットにおけるセクタと一対一で対応する。
【0051】各ブロックに付けられる論理ブロック番号は、後述する論理フォーマットにおけるクラスタ番号及びLBAセクタ番号と、一義的に対応することとなる。ホスト機器2側からは、後述する論理フォーマットでデータ格納領域に対して仮想的にアクセスがされるが、メモリI/Fコントローラ16が、論理ブロック番号と物理ブロック番号との対応関係が記述された論理-物理変換テーブルを用いてアドレス変換を行う。そのため、ホスト機器2側は、物理的にデータが記録されている位置を把握しなくても、論理的なアドレス(クラスタ番号やLBAセクタ番号)を用いて不揮発性半導体メモリ17に対してアクセスを行うことが可能となる。」(段落【0045】?【0051】)

(ウ)「【0052】(システムエリアの物理フォーマット)システムエリアには、本メモリカード1を制御するために必要となる情報が記録されるアトリビュート情報エリアが設けられている。
【0053】アトリビュート情報エリアに記録されるデータを図6に示す。
【0054】アトリビュート情報エリアには、図6に示すように、“ATRB info area confirmation”、“Device-Information entry”、“System information”、“MBR Values”、“PBR Values”が記録されている “ATRB info area confirmation”には、当該アトリビュート情報エリアを識別するための識別コードが含まれている。
【0055】“Device-Information entry”は、以下の“Device-Information(System information,MBR Values,PBR Values)”の各記録位置を示す。記録位置は、アトリビュート情報エリアのオフセット値で表される。
【0056】“System information”には、本メモリカード1の内部情報が記録される。例えば、“System information”には、バージョンやクラス情報、1ブロックのバイト数、1ブロックに含まれるセクタ数、トータルブロック数、アセンブリ日時、シリアル番号、アセンブリメーカ番号、フラッシュメモリのメーカ番号、フラッシュメモリのモデル番号、コントローラの番号、コントローラの機能、ブロック境界の開始セクタ番号、デバイスタイプ(リードライト可能、リードオンリー等)等が記録される。
・・・中略・・・
【0058】“MBR Values”には、MS-DOS上で規定されている「MBR」(Master Boot Record)の推奨パラメータが記録されている。例えば、“MBR Values”には、MBR内に記録されるブート識別、開始ヘッド番号、開始シリンダ番号、システム識別、最終ヘッド番号、最終セクタ番号、最終シリンダ番号、開始LBAセクタ番号、パーティションサイズが記録される。開始LBAセクタ番号に示されたセクタが、「PBR」(Partition Boot Record)の記録位置となる。つまり、MS-DOS上で規定されている各パーティションの開始位置となる。なお、MS-DOSでは、1つのストレージメディア内に、複数のパーティションを形成することが可能とされているが、本例では不揮発性半導体メモリ17に形成されるパーティションは1つであるものとしている。もっとも、本発明は、1つのみのパーティションを形成した場合のメモリカードに限定して適用されるものではなく、複数のパーティションを形成した場合のメモリカードに適用してもよい。
【0059】“PBR Values”には、MS-DOS上で規定されている「PBR」の推奨パラメータが記録されている。例えば、“PBR Values”には、PBR内に記録されるジャンプコード、OEM名とバージョン、1セクタあたりのバイト数、1クラスタあたりのセクタ数、予約セクタ数、FAT( File Allocation Table)数、ルートディレクトリエントリのエントリ数、メディア内のセクタの数、メディアID、1FATあたりのセクタ数、1ヘッドあたりのセクタ数、ヘッド数、隠しセクタ数、論理セクタの合計数、物理ドライブ番号、拡張ブート識別、ボリュームのシリアル番号、ボリュームラベル、ファイルシステムタイプが記録される。」(段落【0052】?【0059】)

(エ)「【0061】なお、本メモリカード1には、コントロールコマンドとして、アトリビュート情報を読み出すコマンド(READ_ATRB)が設定されている。ホスト機器2は、“MBR Values”及び“PBR Values”を、READ_ATRBコマンドを用いて読み出すことにより、アセンブリメーカにより推奨される論理フォーマットで、メモリカード1を初期化することが可能となる。また、本メモリカード1には、コントロールコマンドとして、不揮発性半導体メモリ17を初期化するコマンド(FORMAT)が設定されている。ホスト機器2は、メモリカード1に対してFORMATコマンドを与えると、メモリI/Fコントローラ16がアトリビュート情報エリア内に記録されている“MBR Values”及び“PBR Values”を参照し、この“MBR Values”及び“PBR Values”の内容に従い不揮発性半導体メモリ17を初期化する。メモリカード1の初期化については、その詳細を後述する。
【0062】メモリカードのデータ格納領域の論理フォーマット
つぎに、本メモリカード1に適用される論理フォーマットについて説明をする。
【0063】本メモリカードでは、データ格納領域に対する論理フォーマットとして、MS-DOS互換フォーマットを採用している。MS-DOS互換フォーマットは、階層ディレクトリ構造でメディア内に記録されているデータファイルを管理するファイルシステムである。MS-DOS互換フォーマットでは、シリンダ、ヘッド、セクタと呼ばれる単位でメディアに対してデータのアクセスが行われる。メディアに対する実際のデータの読み出し/書き込みの単位はセクタとなる。さらに、MS-DOS互換フォーマットでは、記録されているデータを管理するにあたりクラスタという単位を定めている。クラスタのサイズは、セクタのサイズの倍数となる。例えば、64セクタで1クラスタが構成される。ホスト機器2側のオペレーションシステム上からは、クラスタ単位でファイルの管理が行われる。
【0064】本メモリカード1に適用される論理フォーマットでは、ブロックのサイズよりもクラスタのサイズが小さく、さらに、クラスタのサイズのn倍(nは2以上の整数)が1つのブロックのサイズとなる。例えば、1ブロックのデータサイズが128Kバイトである場合、1クラスタのデータサイズが32Kバイト、つまり、1つのブロック内に4クラスタが記録される。
【0065】また、本メモリカード1に適用される論理フォーマットは、ブロックの境界位置が、必ずクラスタの境界位置と一致するように、設定がされる。つまり、1つのクラスタが、2つのブロックに跨らないように設定がされる。
【0066】論理フォーマットを以上のような条件に設定するには、MS-DOSのファイル管理データ(MBR,PBR,FAT,ルートディレクトリ)の記録位置や、各ファイル管理データ内に記録されるパラメータを調整すればよい。このような条件で論理フォーマットを行うためのパラメータは、アトリビュート情報内の“MBR Values”及び“PBR Values”に記録されている。」(段落【0061】?【0066】)

(オ)「【0077】ホスト機器2による初期化処理及びデータ記録処理つぎに、ホスト機器2によるメモリカード1の初期化処理、並びに、データ記録処理について説明する。
【0078】(初期化処理) メモリカード1をホスト機器2のオペレーションシステムから参照可能とするには、メモリカード1をMS-DOSのファイルシステムで初期化する必要がある。初期化処理は、少なくともファイル管理データ(MBR,PBR,FAT,ルートディレクトリエントリ)の記録を行えばよい。初期化処理は、通常、メモリカード1の工場出荷時に行われているが、必要に応じてユーザが行うこともできる。
【0079】本メモリカード1に対して初期化処理を行うには、2つの方法がある。第1の方法は、書き込み用のコントロールコマンドを用いて必要なデータを所定のセクタに書き込んでいく方法である。第2の方法は、初期化用のコントロールコマンドを用いる方法である。」(段落【0077】?【0079】)

(カ)「【0089】メモリカード1を第1の方法で初期化する場合には、ホスト機器2は、READ_ATRBコマンドを用いて、アトリビュート情報内の“MBR Values”及び“PBR Values”を読み出す。そして、読み出した“MBR Values”及び“PBR Values”に記述されている値を参照し、MBR,PBR,FAT,ルートディレクトリを生成する。そして、さらに、“MBR Values”及び“PBR Values”に記述されている所定のセクタに対して、WRITE_DATAコマンドを用いて、生成したMBR,PBR,FAT,ルートディレクトリエントリを書き込んでいく。このような処理を行うことによって、メモリカード1が初期化され、ホスト機器2により参照可能となる。
【0090】なお、MBR,PBR,FAT,ルートディレクトリエントリの値は、アトリビュート情報内の“MBR Values”及び“PBR Values”に従わず、ホスト機器2が独自に生成してもよい。」(段落【0089】?【0090】)

(キ)「【0101】ホスト機器2は、通常であれば、物理フォーマット上のブロックの認識をすることができないが、本メモリカード1では、ブロックの境界位置が必ずクラスタの境界位置となるように論理フォーマットが形成されている。そのため、1ブロック内のクラスタ数(或いはセクタ数)とブロックの境界のクラスタ番号(或いはLBAセクタ番号)がわかれば、論理フォーマット上からブロックを認識することができる。従って、ホスト機器2は、1ブロック内のクラスタ数並びにブロックの先頭クラスタの位置を、ステップS11で参照した「1ブロックに含まれるセクタ数」及び「ブロック境界の開始セクタ番号」から判断することができる。」(段落【0101】)

以上の記載によれば、引用文献には、以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「ホスト機器2がアセンブリメーカにより推奨される論理フォーマットで、メモリカード1を初期化する方法であって、
メモリカード1は、ユーザに生成されたファイルが格納されるユーザエリアと、本メモリカード1の内部情報等が格納されているシステムエリアとから構成され、システムエリアには、本メモリカード1を制御するために必要となる情報が記録されるアトリビュート情報エリアが設けられ、
メモリカード1のデータ格納領域の物理フォーマットは、ユーザエリアがブロックと呼ばれる単位で物理的に分割され、ブロックが本メモリカード1における一括消去の単位となり、フラッシュメモリにおける消去ブロックに対応し、各ブロック内は、ページと呼ばれる書き込み読み出し単位で分割され、ページが、論理フォーマットにおけるセクタと一対一で対応し、
データ格納領域に対する論理フォーマットとして、MS-DOS互換フォーマットを採用し、MS-DOS互換フォーマットは、階層ディレクトリ構造でメディア内に記録されているデータファイルを管理するファイルシステムであり、MS-DOS互換フォーマットでは、シリンダ、ヘッド、セクタと呼ばれる単位でメディアに対してデータのアクセスが行われ、メディアに対する実際のデータの読み出し/書き込みの単位はセクタとなり、記録されているデータを管理するにあたりクラスタという単位を定めており、クラスタのサイズは、セクタのサイズの倍数となるものであり、ホスト機器2側のオペレーションシステム上からは、クラスタ単位でファイルの管理が行われ、
ホスト機器2は、READ_ATRBコマンドを用いて、アトリビュート情報内の“MBR Values”及び“PBR Values”を読み出し、読み出した“MBR Values”及び“PBR Values”に記述されている値を参照し、MBR,PBR,FAT,ルートディレクトリを生成し、“MBR Values”及び“PBR Values”に記述されている所定のセクタに対して、WRITE_DATAコマンドを用いて、生成したMBR,PBR,FAT,ルートディレクトリエントリを書き込んでいく処理を行うことによって、メモリカード1が初期化され、ホスト機器2により参照可能となり、
“PBR Values”には、MS-DOS上で規定されている「PBR」の推奨パラメータ、例えば、“PBR Values”には、PBR内に記録されるジャンプコード、OEM名とバージョン、1セクタあたりのバイト数、1クラスタあたりのセクタ数、予約セクタ数、FAT( File Allocation Table)数、ルートディレクトリエントリのエントリ数、メディア内のセクタの数、メディアID、1FATあたりのセクタ数、1ヘッドあたりのセクタ数、ヘッド数、隠しセクタ数、論理セクタの合計数、物理ドライブ番号、拡張ブート識別、ボリュームのシリアル番号、ボリュームラベル、ファイルシステムタイプが記録されており、
アトリビュート情報内の“System information”には、バージョンやクラス情報、1ブロックのバイト数、1ブロックに含まれるセクタ数、トータルブロック数、アセンブリ日時、シリアル番号、アセンブリメーカ番号、フラッシュメモリのメーカ番号、フラッシュメモリのモデル番号等のメモリカード1の内部情報が記録され、
メモリカード1に適用される論理フォーマットでは、ブロックのサイズよりもクラスタのサイズが小さく、クラスタのサイズのn倍(nは2以上の整数)が1つのブロックのサイズ、例えば、1ブロックのデータサイズが128Kバイトである場合、1クラスタのデータサイズが32Kバイト、つまり、1つのブロック内に4クラスタが記録され、また、本メモリカード1に適用される論理フォーマットは、ブロックの境界位置が、必ずクラスタの境界位置と一致するように、1つのクラスタが、2つのブロックに跨らないように設定がされ、このような条件で論理フォーマットを行うためのパラメータは、アトリビュート情報内の“MBR Values”及び“PBR Values”に記録されていることを特徴とする
ホスト機器がメモリカード1に対して初期化処理を行う方法。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)「データ格納装置におけるデータ操作を行うために使用される読み出し/書き込み動作単位のサイズを取得するための要求信号をホストから前記データ格納装置に伝送し、前記要求信号に応じて、前記データ格納装置の識別情報を読み出して、前記識別情報に基づいて前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを決定し、前記決定された前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを前記データ格納装置から前記ホストに伝送することによって、前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを取得する段階」について

引用発明の「メモリカード1」は、本願発明の「データ格納装置」に相当する。
引用発明の「ホスト機器2」は、本願発明の「ホスト」に相当する。
引用発明では、「メディアに対する実際のデータの読み出し/書き込みの単位はセクタ」となるから、引用発明の「セクタ」は、本願発明の「データ格納装置におけるデータ操作を行うために使用される読み出し/書き込み動作単位」に相当し、引用発明の「“PBR Values”」に含まれる「1セクタあたりのバイト数」は、本願発明の「データ操作を行うために使用される読み出し/書き込み動作単位のサイズ」に相当する。
引用発明の「ホスト機器2は、READ_ATRBコマンドを用いて、アトリビュート情報内の“MBR Values”及び“PBR Values”を読み出」す構成は、「“PBR Values”」に「1セクタあたりのバイト数」の情報が含まれているから、本願発明の「データ格納装置におけるデータ操作を行うために使用される読み出し/書き込み動作単位のサイズを取得するための要求信号をホストから前記データ格納装置に伝送し、前記要求信号に応じて、前記データ格納装置の識別情報を読み出して、前記識別情報に基づいて前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを決定し、前記決定された前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを前記データ格納装置から前記ホストに伝送することによって、前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを取得する段階」と、「データ格納装置におけるデータ操作を行うために使用される読み出し/書き込み動作単位のサイズを取得するための要求信号をホストから前記データ格納装置に伝送し、前記要求信号に応じて、前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを前記データ格納装置から前記ホストに伝送することによって、前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを取得する段階」である点で一致する。
ただし、引用発明は「要求信号に応じて、前記データ格納装置の識別情報を読み出して、前記識別情報に基づいて前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを決定」するものではない。

(イ)「取得された前記読み出し/書き込み動作単位のサイズに基づいて、前記ホストにおいてメモリ割り当てファイルシステム単位のサイズを前記読み出し/書き込み動作単位のサイズの倍数に設定する段階」について

本願発明の「取得された前記読み出し/書き込み動作単位のサイズに基づいて、前記ホストにおいてメモリ割り当てファイルシステム単位のサイズを前記読み出し/書き込み動作単位のサイズの倍数に設定する」の下線部分「取得された前記読み出し/書き込み動作単位のサイズに基づいて、メモリ割り当てファイルシステム単位のサイズを前記読み出し/書き込み動作単位のサイズの倍数に設定する」という技術的事項(以下、「技術的事項A」という。)について検討するに、
その文言からすれば、それは、単に、「メモリ割り当てファイルシステム単位のサイズを」「取得された」「前記読み出し/書き込み動作単位のサイズの倍数に設定する」するという技術的事項(以下、「技術的事項B」という。)を(一態様として)含んでいるものと解される。すなわち、技術的事項Bであれば、技術的事項Aであるといえる。

とはいえ、技術的事項Aは、技術的事項Bとは異なり、「(取得された)前記読み出し/書き込み動作単位のサイズに基づいて」の文言を加えていることから、この部分が、上記技術的事項B以上の特定・限定を要求しているかについて、念のため、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参照する。
上記下線部分に対応する記載としては、「ブロック515で、メモリ割り当てファイルシステム435の単位のサイズは読み出し/書き込み動作単位のサイズの倍数に設定される。」(段落【0059】)と記載されているだけで、「メモリ割り当てファイルシステム単位のサイズ」について、特に他の要素に基づいて、これを設定するとの記載はない。
そうすると、本願発明の「取得された前記読み出し/書き込み動作単位のサイズに基づいて、前記ホストにおいてメモリ割り当てファイルシステム単位のサイズを前記読み出し/書き込み動作単位のサイズの倍数に設定する」は、「前記ホストにおいてメモリ割り当てファイルシステム単位のサイズを前記取得された読み出し/書き込み動作単位のサイズの倍数に設定する」といった意味以上に解することはできない。
明細書の記載を参酌しても上記下線部分の記載は、上記技術的事項B以上の特定・限定を要求しているものとはいえない。

引用発明の「MS-DOS互換フォーマット」は、「メディア内に記録されているデータファイルを管理するファイルシステム」であり、ホスト機器2側のオペレーションシステム上で、ファイル管理を行うものであるから、本願発明の「メモリ割り当てファイルシステム」に相当する。
引用発明の「MS-DOS互換フォーマット」で定めている「記録されているデータを管理する」単位である「クラスタ」は、本願発明の「メモリ割り当てファイルシステム単位」に相当し、「クラスタのサイズ」は、本願発明の「メモリ割り当てファイルシステム単位のサイズ」に相当する。
したがって、引用発明の「MS-DOS互換フォーマットでは、」「クラスタのサイズは、セクタのサイズの倍数となる」構成は、ホスト機器2側において、クラスタのサイズを、読み出した「1セクタあたりのバイト数」の「1クラスタあたりのセクタ数」倍に設定することは明らかであるから、本願発明の「取得された前記読み出し/書き込み動作単位のサイズに基づいて、前記ホストにおいてメモリ割り当てファイルシステム単位のサイズを前記読み出し/書き込み動作単位のサイズの倍数に設定する段階」に相当するといえる。

(ウ)「前記メモリ割り当てファイルシステム単位の開始アドレスを前記データ格納装置で使用された前記読み出し/書き込み動作単位の開始アドレスに設定する段階」について

引用発明の「メモリカード1のデータ格納領域の物理フォーマットは、ユーザエリアがブロックと呼ばれる単位で物理的に分割され」、「各ブロック内は、ページと呼ばれる書き込み読み出し単位で分割され、ページが、論理フォーマットにおけるセクタと一対一で対応」し、「クラスタのサイズは、セクタのサイズの倍数」となり、「メモリカード1に適用される論理フォーマットでは、ブロックのサイズよりもクラスタのサイズが小さく、」、「1つのブロック内に4クラスタが記録され、」、「ブロックの境界位置が、必ずクラスタの境界位置と一致するように、1つのクラスタが、2つのブロックに跨らないように設定」がされる構成は、技術的常識に照らして判断すれば、本願発明の「前記メモリ割り当てファイルシステム単位の開始アドレスを前記データ格納装置で使用された前記読み出し/書き込み動作単位の開始アドレスに設定する段階」に相当するといえる。

(エ)「データ処理システムの動作方法」について

引用発明の「メモリカード1」と「ホスト機器2」とで構成されるシステムは、本願発明の「データ処理システム」に相当し、引用発明の「ホスト機器がメモリカード1に対して初期化処理を行う方法」は「データ処理システムの動作方法」といいえるものである。

したがって、両者は、
「データ格納装置におけるデータ操作を行うために使用される読み出し/書き込み動作単位のサイズを取得するための要求信号をホストから前記データ格納装置に伝送し、前記要求信号に応じて、前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを前記データ格納装置から前記ホストに伝送することによって、前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを取得する段階と、
取得された前記読み出し/書き込み動作単位のサイズに基づいて、前記ホストにおいてメモリ割り当てファイルシステム単位のサイズを前記読み出し/書き込み動作単位のサイズの倍数に設定する段階と、
前記メモリ割り当てファイルシステム単位の開始アドレスを前記データ格納装置で使用された前記読み出し/書き込み動作単位の開始アドレスに設定する段階と、
を含むことを特徴とするデータ処理システムの動作方法。」
で一致するものであり、次の点で相違している。

<相違点>
本願発明では、ホストからの要求信号に応じて、データ格納装置の識別情報を読み出して、前記識別情報に基づいて読み出し/書き込み動作単位のサイズを決定し、前記決定された前記読み出し/書き込み動作単位のサイズを前記データ格納装置からホストに伝送するのに対して、
引用発明では、データ格納装置の識別情報を読み出して、前記識別情報に基づいて読み出し/書き込み動作単位のサイズを決定するとしていない点。
第4 当審の判断
データ格納装置の識別情報を読み出して、前記識別情報に基づいて読み出し/書き込み動作単位のサイズを決定することは、本願優先権主張の日前に周知の技術(例えば、特開2001-184257号公報、【特許請求の範囲】の「【請求項5】 情報処理装置と着脱可能に接続される可搬型記憶装置であって、一度に読み書きできるページサイズが予め決められている記憶部と、
前記ページサイズの特定が可能な情報を保持する保持部と、
前記情報処理装置からの指示を受けて、当該指示を実行する指示実行部と、を
備え、
当該指示実行部は、
ページサイズの問合せ指示を受けたときは、前記保持部を参照して前記ページサイズの特定が可能な情報を出力し、
前記記憶部の入出力指示を受けたときは、前記記憶部の入出力を実行することを特徴とする可範型記憶装置。
【請求項6】 請求項5記載の可搬型記憶装置において、
前記ページサイズの特定が可能な情報は、
前記記憶部を識別するための識別情報、および、前記識別情報と前記ページサイズとを対応付けたページサイズ情報であって、
前記指示実行部は、当該識別情報及び当該ページサイズ情報に基づいて、前記ページサイズを決定することを特徴とする可搬型記憶装置。」の記載を参照されたい。)である。
引用発明は、データ格納装置の識別情報に相当する「フラッシュメモリのメーカ番号、フラッシュメモリのモデル番号」をメモリカード1に記録しているものである。
そうすると、引用発明の「ホスト機器2は、READ_ATRBコマンドを用いて、アトリビュート情報内の“MBR Values”及び“PBR Values”を読み出」す構成に上記周知技術を適用し、データ格納装置の識別情報を読み出して、前記識別情報に基づいて読み出し/書き込み動作単位のサイズを決定するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明の奏する作用効果も、引用発明に周知技術を適用したものから、当業者であれば予想できる範囲内のものである。

第5 請求人の主張について
請求人は、平成25年10月11日付け手続補正書の「(3)(a)」において、
「本願の請求項1に係る発明は、データ格納装置に記録されている「ページのサイズ」に基づいて、ホストが、「クラスタのサイズ」を決定(設定)しています。そのため、たとえば、「クラスタのサイズ」を、データ格納装置に記録されている「ページのサイズ」の2倍に設定することも3倍に設定することもできます。
これにより、データ格納装置において指定されている「ページのサイズ」を考慮しながらも、ホストの処理能力やホスト内のメモリ容量に応じて「クラスタのサイズ」を最適化できます。」、「本願の請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明とでは上記のような相違があるため、引用文献1の技術を採用しても、データ格納装置で指定されている「ページのサイズ」に基づいて、ホスト側で「クラスタのサイズ」を自由に変更することはできません。以上により、いかに当業者といえども、引用文献1から本願の請求項1に記載の「データ格納装置から取得した読み出し/書き込み動作単位のサイズに基づいて、ホストにおいてメモリ割り当てファイルシステム単位のサイズを読み出し/書き込み動作単位のサイズの倍数に設定する」という構成を容易に想到することはできません。」と主張している。
しかしながら、請求項1には、「「クラスタのサイズ」を、データ格納装置に記録されている「ページのサイズ」の2倍に設定することも3倍に設定することもできる」ことにより「データ格納装置において指定されている「ページのサイズ」を考慮しながらも、ホストの処理能力やホスト内のメモリ容量に応じて「クラスタのサイズ」を最適化する」とは記載されておらず、上記主張は請求項の記載に基づく主張とはいえない。
さらに本願明細書にはも「「クラスタのサイズ」を、データ格納装置に記録されている「ページのサイズ」の2倍に設定することも3倍に設定することもできる」ことにより「データ格納装置において指定されている「ページのサイズ」を考慮しながらも、ホストの処理能力やホスト内のメモリ容量に応じて「クラスタのサイズ」を最適化する」ことは一切記載されておらず、このことからみても、上記請求人の主張が採用できないことは明らかでる。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-09 
結審通知日 2014-10-14 
審決日 2014-10-30 
出願番号 特願2008-30430(P2008-30430)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊池 智紀  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 山田 正文
和田 志郎
発明の名称 データ処理システム並びにその動作方法、データ処理装置、そしてデータ格納装置の動作方法  
代理人 八田国際特許業務法人  

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